説明

イオン発生歯ブラシ

【課題】長期間使用してもマイナスイオンの効果が持続するイオン発生歯ブラシを提供する。
【解決手段】合成樹脂製の柄11と、その柄に植毛されるブラシ毛13とを有し、前記柄11が、ブラシ毛が設けられているヘッド部12またはその近辺のネック部18の表面に、イオン発生物質を含有するイオン発生層15を備えているイオン発生歯ブラシ10。イオン発生層15は、ゴム、軟質樹脂または熱可塑性エラストマーにイオン発生物質の微粉末を加えた材料を、基材の表面に2色成形によって設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン発生歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ブラシの毛を石英安山岩を配合したナイロンで構成した電動歯ブラシを開示している。このものは石英安山岩から常時放出されるマイナスイオン、遠赤外線などにより、血行をよくするなどの効果を生ずる。また、ヘッド部を交換できるようにしている。特許文献2はマイナスイオンを発生するゲルマニウムを合成樹脂に配合して得られる合成樹脂繊毛材をブラシの毛として採用することを開示している。
【0003】
特許文献3は、歯ブラシの握り部の先端にシリコーンゴム製の細い円柱状の多数の突起などを取り付け、それらの突起の先端に短いブラシ毛を植設すると共に、シリコーンゴムの中にトルマリンなどのマイナスイオンを発生する物質の粉末を混合しておく技術を開示している。このものは細い円柱状のシリコーンゴムによるマッサージ効果とトルマリンから放出されるマイナスイオンの血行をよくする効果を相乗的に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−24805号公報
【特許文献2】特開2007−89985号公報
【特許文献3】特開2003−225122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のマイナスイオンを発生する歯ブラシは、歯と直接接触するブラシ毛やシリコーンゴムの突起にマイナスイオンを発生する天然鉱石粉末を混合している。そのため、歯に対してマイナスイオンの効果を直接、かつ、充分に与えることができる。しかしブラシ毛やシリコーンゴムの突起は摩耗しやすく、天然鉱石粉末などは短期間で毛の表面から脱落し、マイナスイオンの効果がなくなってしまう。
【0006】
本発明は、長期間使用してもマイナスイオンの効果が持続するイオン発生歯ブラシを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のイオン発生歯ブラシは、合成樹脂製の柄と、その柄の先端近辺に植毛されるブラシ毛とを有し、前記柄が、ブラシ毛が設けられている植毛部またはその近辺の表面にイオン発生物質を含有していることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
このようなイオン発生歯ブラシにおいては、前記イオン発生物質が、植毛部またはその近辺に一体に練り込まれたイオン発生粉末であるものが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、前記柄は、イオン発生物質を含有しない合成樹脂製の基材と、植毛部またはその近辺に設けられるイオン発生物質を含有するゴムまたは合成樹脂製のイオン発生層との2色成形品とするのが好ましい(請求項3)。
【0010】
さらに前記柄が、握り兼用のケースと、そのケースに対し、収容状態と延長状態の両方で着脱自在に取り付けられる先端側とからなるものであってもよい(請求項4)。また前
記柄は、電動式の駆動部を備えた握り部と、その握り部の先端に着脱自在に取り付けられ、前記駆動部によって回転または振動させられる先端側とを有し、その先端側がイオン発生物質を含有する合成樹脂によって成形されているものであってもよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
本発明のイオン発生歯ブラシ(請求項1)は、使用者の口内に触れる植毛部またはその近辺の表面にイオン発生物質を含有しているので、この歯ブラシで歯を磨くと、使用者の口中の唾液や水がプラスイオンとマイナスイオンとに分かれて電解質化する。そのため、歯垢は歯の表面から浮いて掻き取りやすくなり、容易に除去することができる。そしてほとんどの場合、練り歯磨きや歯磨き粉を用いなくても、たとえば水だけで磨いても、ツルツルの歯にすることができる。さらに本発明のイオン発生歯ブラシは、イオン発生物質が柄自体に含有されているため、ブラシ毛が摩耗してもマイナスイオン効果は失われない。
【0012】
さらにとくに油を多く含む食事やニンニクなどのにおいが強いものを食べた場合を除き、練り歯磨きや歯磨き粉などの歯磨き剤が不要である。そのため、要介護者にうがいをさせなくてもよく、誤って歯周病菌を含む水が肺に入るといった事故のおそれがない。
【0013】
このようなイオン発生部材において、前記イオン発生物質が、植毛部またはその近辺に一体に練り込まれたイオン発生粉末である場合(請求項2)は、製造が容易で、しかも使
用途中にイオン発生物質が脱落しにくい。
【0014】
また、前記柄が、イオン発生物質を含有しない合成樹脂製の基材と、植毛部またはその近辺に設けられるイオン発生物質を含有するゴムまたは合成樹脂製のイオン発生層との2色成形品である場合(請求項3)は、製造が容易で、しかも使用感が優れている。
【0015】
前記柄が、握り兼用のケースと、そのケースに対し、収容状態と延長状態の両方で着脱自在に取り付けられる先端側とからなる場合(請求項4)は、OLや学生、出張族など、歯ブラシを持ち運ぶ使用者にとって、小さくして化粧ポーチなどに収容することができるので便利である。とくに練り歯磨きや歯磨き粉が不要で、小さくした歯ブラシを1本持ち運ぶだけでよいので便利である。
【0016】
前記柄が、電動式の駆動部を備えた握り部と、その握り部の先端に着脱自在に取り付けられ、前記駆動部によって回転または振動させられる先端側とを有し、その先端側がイオン発生物質を含有する合成樹脂によって成形されている場合(請求項5)は、電動で歯磨きをすることができる。また、比較的体積が小さい先端側にイオン発生物質を含有させるので、高価なイオン発生物質の使用量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のイオン発生歯ブラシの一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】本発明のイオン発生歯ブラシの他の実施形態を示す要部断面図である。
【図4】図4aおよび図4bはそれぞれ本発明のイオン発生歯ブラシのさらに他の実施形態を示す平面図および側面図である。
【図5】図5aは本発明のイオン発生歯ブラシのさらに他の実施形態を示す使用時の一部断面側面図であり、図5bはケース収容時の一部断面側面図である。
【図6】本発明のイオン発生歯ブラシのさらに他の実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すイオン発生歯ブラシ10は、合成樹脂製の柄11と、その柄のヘッド部(植
毛部)12の上面に植毛されたブラシ毛13とからなる。前記柄11は、イオン発生粉末などのイオン発生物質を含有しない合成樹脂製の基材14と、図2に示すようにヘッド部12の側面から裏面にかけて設けられた、イオン発生物質を含有するイオン発生層(イオン発生部)15とから構成されている。イオン発生層15は、ゴム、軟質樹脂または熱可塑性エラストマーなどの弾力性を有する材料からなる母剤と、その母剤に含有されるイオン発生物質とから構成されている。柄11の後端側は握り部16である。
【0019】
イオン発生層15は、柄11の基材14を射出成形した後、ヘッド部12の表面に、イオン発生物質を含有させたゴム、軟質樹脂あるいは熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性の材料を射出成形するという、いわゆる2色成形により製造するのが好ましい。なお、イオン発生層15とは別に、従来と同様に握り部16などに滑り止め層17を2色成形することもできる。滑り止め層17は、イオン発生層と同様のゴム、合成樹脂または熱可塑性エラストマーを採用しうる。ただしイオン発生物質は含有しない。滑り止め層17は基材14よりも鮮やかな色とし、装飾を兼ねさせる。ただし基材14と同色であってもよい。
【0020】
前記基材14は、たとえばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、それらの混合物など、通常の歯ブラシの柄に用いられる熱可塑性樹脂を用い、射出成形で成形する。柄11のヘッド部12と握り部(ハンドル)16の間には、弾力的に撓みやすい細いネック部18を設けるのが好ましい(図4a参照)。
【0021】
イオン発生層15の母材としては、たとえば天然ゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどの合成ゴムを採用することができる。また、軟質ポリアミド樹脂、軟質ポリエチレン樹脂等の軟質ポリオレフィン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂などの軟質樹脂を用いることもできる。
【0022】
また、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ニトリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
【0023】
前記イオン発生層15に含有されるイオン発生物質としてはトルマリン、ゲルマニウム、ブラックシリカ、それらの一種または二種以上の混合物など、水分をプラスイオンとマイナスイオンに分離して電解質化する天然または人工鉱物の微粉末が用いられる。また、同様の性質を備えたセラミックスの微粉末であってもよい。微粉末の大きさは、通常は平均粒径1μm以下とする。イオン発生層15の厚さは0.5〜5mm程度、好ましくは1〜3mm程度である。薄すぎると強度が不足し、厚過ぎると表面に現われないイオン発生物質が多くなるため、不経済である。イオン発生層15が剥がれにくいように、基材14に凹凸や孔を形成し、それらの凹凸や孔にイオン発生層15の材料を2色成形によって埋め込むようにしてもよい。
【0024】
ヘッド部12の基材14には、従来の歯ブラシと同様に多数の深穴19が形成され、それぞれの深穴にブラシ毛13が植毛されている。ブラシ毛13は従来と同様に、複数本ずつ束ねた状態で、あるいは束ねた上で2つに折り返した状態で、ヘッド部12に形成した多数の深穴19に打ち込まれ、接着剤などで接合されている。毛先は山形など、従来公知の形状に切りそろえるようにしてもよい。
【0025】
ブラシ毛13は合成樹脂製のフィラメント、ブタやタヌキなどの動物の体毛など、従来用いられているものを使用できる。本発明のイオン発生歯ブラシは、ブラシ毛13にイオン発生物質を含有させなくてよいので、種々の材料から選択できる。
【0026】
上記のようにして得られるイオン発生歯ブラシ10を使用するには、通常の歯ブラシのように先端のヘッド部12を口に入れてブラシ毛13の先端で歯の表面を磨く。それにより、唾液や水分でぬれている弾性層15のイオン発生物質が水をプラスイオンとマイナスイオンに分離して電解質化する。それによりマイナス化して歯に付着しているカルシウムなどの歯垢成分が中性化し、歯ブラシで容易に掻き取ることができるようになる。
【0027】
したがってクリーム状の練り歯磨きや粉末状の歯磨き粉などを用いなくても、水だけできれいに歯を磨くことができ、歯の表面が陶器のように滑らか(ツルツル)になり、白色に輝くようになる。なお、強い油分を含む食事をしたとき、あるいはニンニクなどの強いにおい成分を有する食事をしたときは、歯磨き粉や練り歯磨きなどの界面活性剤を含有する歯磨き剤は使用したほうが汚れがとれるが、できれば使用しないほうが好ましい。また歯磨き剤を使用しないことにより水の汚れが緩和され、環境汚染防止に役立つ。さらに要介護者の口腔内ケアのときも、うがいをさせなくてよく、安心して介護者が歯を磨くことができる。また、口腔内の殺菌作用を有するうがい薬とは異なり、いわゆる常在菌まで滅菌してしまうことがないため、健康維持に役立つ。
【0028】
図2に示すイオン発生歯ブラシ10は、ヘッド部12が基材14とイオン発生層15とに分かれているが、図3に示すイオン発生歯ブラシ20のように、ヘッド部12の全体を微粉末状のイオン発生物質を含有させた合成樹脂で一体成形してもよい。この場合はヘッド部12全体がイオン発生部となる。このイオン発生歯ブラシ20は、表面に現われないイオン発生物質が多くなるため、不経済であるが、全体の強度が高くなる。また、図2のイオン発生層15の母材として、弾性材料に代えて、基材14と同様な硬質樹脂でイオン発生物質を含有する層(イオン発生層)を2色成形などで形成することもできる。その場合はイオン発生層を構成する合成樹脂の溶融温度を基材14の溶融温度よりも低いものを選択する。このものも全体の強度が高い。
【0029】
図4aおよび図4bに示すイオン発生歯ブラシ21は、ヘッド部12ではなく、ネック部18にイオン発生層15を設けている。この場合もイオン発生層15を2色成形によって形成するのが好ましい。このイオン発生歯ブラシ21では、イオン発生層15をブラシ毛13が植毛されている側の面(図4bの上側)に設けているが、ブラシ毛13の反対側の面に設けてもよく、全周に設けてもよい。すなわちイオン発生層15は、使用者の口腔内に入れられて、唾液や水分などで濡れる部位に設ければよい。
【0030】
図5aに示すイオン発生歯ブラシ23は、握り兼用のケース24と、そのケースに対し、収容状態と延長状態の両方で着脱自在に取り付けられる先端側25とに分かれている。イオン発生層15はネック部18の周囲に一体成形されている。ケース24は一端に開口26を備えた有底筒状の形態を有する。好ましくは透明とする。先端側25は、ブラシ毛13が植毛されたヘッド部12と、そのヘッド部に連続するネック部18と、そのネック部の後端に設けられた嵌合部27とからなる。嵌合部27にはケース24の開口25の端縁と当接する環状のフランジ28が設けられており、嵌合部27はそのフランジ28によって外部側27aと内部側27bとに分けられている。
【0031】
このイオン発生歯ブラシ23は、図5aに示すように、先端側25をケース24から取り出して嵌合部27の外部側27aをケース24の開口26に嵌合させると、全体が長くなり、ケース24が握り部を兼ねた状態となる。使用しないときは、図5bに示すように、先端側25をケース24内に収容し、嵌合部27のの内部側27bをケース24の開口26に嵌合させる。それにより全体の長さをほぼ半分近くにすることができる。
【0032】
そしてこのイオン発生歯ブラシ23もイオン発生層15を備えているので、練り歯磨きや歯磨き粉を使用する必要がない。したがってきわめてコンパクトな形態で持ち運ぶ頃が
でき、たとえば化粧ポーチにも簡単に収容することができる。
【0033】
図6に示すイオン発生歯ブラシ29は、握り部30内のモータMで駆動される、いわゆる電動歯ブラシである。そして握り部30の先端に、モータMによって回転または振動させられる駆動軸31が突出しており、ブラシ毛13を有する先端側32は、その駆動軸31に対して着脱自在に取り付けられる。このイオン発生歯ブラシ20は、握り部30と先端側32とが分離しているので、先端側32のみをイオン発生物質を含有する合成樹脂で成形することができる。そのため、先端側32の全体を合成樹脂とイオン発生物質の均等な混合物で成形しても、高価なイオン発生物質の使用量を少なくすることができる。ただし2色成形などで先端側32の表面のみにイオン発生物質を設けることもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 イオン発生歯ブラシ
11 柄
12 ヘッド部
13 ブラシ毛
14 基材
15 イオン発生層(イオン発生部)
16 握り部
17 滑り止め層
18 ネック部
19 深穴
20 イオン発生歯ブラシ
21 イオン発生歯ブラシ
23 イオン発生歯ブラシ
24 ケース
25 先端側
26 開口
27 嵌合部
27a 外部側
27b 内部側
28 フランジ
29 イオン発生歯ブラシ
30 握り部
M モータ
31 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の柄と、その柄の先端近辺に植毛されるブラシ毛とを有し、
前記柄が、ブラシ毛が設けられている植毛部またはその近辺の表面にイオン発生物質を含有しているイオン発生歯ブラシ。
【請求項2】
前記イオン発生物質が、植毛部またはその近辺に一体に練り込まれたイオン発生粉末である請求項1記載のイオン発生歯ブラシ。
【請求項3】
前記柄が、イオン発生物質を含有しない合成樹脂製の基材と、植毛部またはその近辺に設けられるイオン発生物質を含有するゴムまたは合成樹脂製のイオン発生層との2色成形品である請求項1記載のイオン発生歯ブラシ。
【請求項4】
前記柄が、握り兼用のケースと、そのケースに対し、収容状態と延長状態の両方で着脱自在に取り付けられる先端側とからなる請求項1、2または3記載のイオン発生歯ブラシ。
【請求項5】
前記柄が、電動式の駆動部を備えた握り部と、その握り部の先端に着脱自在に取り付けられ、前記駆動部によって回転または振動させられる先端側とを有し、その先端側がイオン発生物質を含有する合成樹脂によって成形されている請求項1記載のイオン発生歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−135390(P2012−135390A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288976(P2010−288976)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(510030744)
【Fターム(参考)】