説明

イオン発生装置

【課題】空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができ、ウイルス菌の除菌効果が大きく、カーテン,衣類等に付着している付着臭の除去効果が大きいイオン発生装置を提供する。
【解決手段】軸方向の両方に出力軸21,21を有するモータ2及び出力軸21,21夫々に装着されている二つの羽根車3,3を有する送風機と、羽根車3,3夫々の回転により送出する空気を同方向へ個別に通流させて外部へ放出する二つのダクト5,5とを備え、ダクト5,5夫々の一部又は全部は、前記空気の通流が層流となるようになしてある層流部を設けてあり、層流部夫々にイオン発生部を配することにより、イオン発生部が発生したイオンを、前記空気に効率的に含ませることができ、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン発生部が発生したイオンを、送風機が送出する空気とともに室内に放出し、室内に浮遊するインフルエンザウイルス等のウイルス菌の感染を低減し、カーテン,衣類等に付着している付着臭を除去するためのイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
居住室内にはセラチア菌,バチルス菌等の細菌、ウイルス菌等が浮遊しており、また、室内に吊下げられているカーテン,衣類等には異臭が付着しているため、室内の空気を清浄にする空気清浄機を室内に配してある。特許文献1に記載された空気清浄機は、プラスイオンのH+ (H2 O)n及びマイナスイオンのO2-(H2 O)nを発生させる誘電体と、該誘電体が発生したH+ (H2 O)n及びO2-(H2 O)nを室内に放出する送風機とを備える。
【0003】
この空気清浄機はH+ (H2 O)n及びO2-(H2 O)nを同時に発生させることにより、化学反応によって活性種である過酸化水素H2 2 又は水酸化ラジカル(・OH)を生成する。この過酸化水素H2 2 又は水酸化ラジカル(・OH)は極めて強力な活性を示すため、この過酸化水素H2 2 、水酸化ラジカル(・OH)を室内の空気中に放出することにより、浮遊細菌を分解して除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3770784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の空気清浄機が空気とともに室内に放出するイオンの室内でのイオン濃度は、1000〜2000個/cm3 であるため、セラチア菌,バチルス菌等の細菌に関してはある程度の除菌効果がある。しかし、ウイルス菌に関しては1cm3 当たりのイオンの個数が少なく、ウイルス菌を分解して除菌する除菌効果が小さいし、また、カーテン,衣類等に付着している付着臭を除去する除去効果も小さい。因って、室内でのイオン濃度を高くすることができるイオン発生装置が要望されていた。
【0006】
ところで、室内でのイオン濃度を高めるには、送風機が送風する空気の通流路に配されるイオン発生部が発生するイオンの個数を多くすることが考えられる。しかし、一つの通流路に配されるイオン発生部の個数を多くしてもイオンの個数が複数倍になるわけではなく、通流路においてイオンの個数が飽和状態となり、イオンの個数を著しく高めることが困難である。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は、軸方向の両方に出力軸を有するモータ及び前記出力軸夫々に装着されている二つの羽根車を有し、羽根車夫々の回転により発生する気流を同方向へ個別に誘導して外部へ放出する二つの通流路を備え、通流路夫々にイオン発生部を配することにより、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができ、ウイルス菌の除菌効果が大きく、カーテン,衣類等に付着している付着臭の除去効果が大きいイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るイオン発生装置は、送風機と、イオンを発生させるイオン発生部とを備え、該イオン発生部が発生したイオンを、前記送風機が送出する空気とともに外部に放出するようになしてあるイオン発生装置において、前記送風機は、軸方向の両方に出力軸を有するモータ及び前記出力軸夫々に装着されている二つの羽根車を有し、羽根車夫々の回転により送出する空気を同方向へ個別に通流させて装置の外部へ放出する二つの通流路を備え、通流路夫々に前記イオン発生部を配してあることを特徴とする。
【0009】
この発明にあっては、一つのモータが二つの羽根車を回し、羽根車夫々の回転により発生する気流を二つの通流路から外部へ放出し、通流路夫々にイオン発生部を配してあるため、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができる。因って、ウイルス菌を分解して除菌する除菌効果を大きくすることができ、室内でウイルスに感染するのを低減できる。また、カーテン,衣類等に付着している付着臭を除去する除去効果を大きくすることができる。
【0010】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記通流路夫々の一部又は全部は、前記空気の通流が層流となる層流部を有し、層流部夫々に前記イオン発生部を配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、羽根車夫々の回転により発生する気流が個別に層流となる層流部にイオン発生部を配してあるため、イオン発生部が発生したイオンを、通流路夫々を通流する層流の空気に効率的に含ませることができ、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができる。因って、ウイルス菌を分解して除菌する除菌効果を大きくすることができ、室内でウイルスに感染するのを低減できる。また、カーテン,衣類等に付着している付着臭を除去する除去効果を大きくすることができる。
【0011】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記羽根車の回転により送出する空気を整風する整風体を備え、該整風体に前記イオン発生部を配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、整風体により整風にされて層流に通流する空気にイオンを効率的に含ませることができるため、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができ、ウイルス菌の除菌効果を大きくすることができる。
【0012】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記整風体は前記羽根車を収容してあるケーシングである構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、ケーシング内の比較的狭い通路を通流する層流の空気にイオンを効率的に含ませることができるため、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度をより一層増すことができる。
【0013】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記ケーシングは、前記羽根車夫々の回転により送出する空気を誘導する二つの円弧形誘導壁及び該円弧形誘導壁夫々の一部から円弧形誘導壁夫々の接線方向一方へ開放されている二つの吹出口を有し、前記円弧形誘導壁夫々に前記イオン発生部を配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、ケーシング内の比較的狭い通路を高風速で通流する層流の空気にイオンを含ませることができるため、イオン発生部が発生したイオンをより一層効率的に空気に含ませることができ、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度をより一層増すことができる。
【0014】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記通流路夫々は、前記吹出口夫々から吹出された空気の上方への通流が層流となるようになしてある筒部を有し、筒部夫々に前記イオン発生部を配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、吹出口夫々に連なる筒部夫々に層流部があり、筒部夫々にイオン発生部を配してあるため、送風機の周りを大形に形成することなくイオン発生部を配することができ、イオン発生装置を小形化できる。
【0015】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記通流路夫々の放出側端に二つの風向体を配してあり、該風向体の少なくとも一つは取外しが自在である構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、二つの風向体の風向を異ならせることにより、室内での生活状況に対応してイオンの放出方向を変更することができ、イオンを室内に効率的に放出することができる。
【0016】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記風向体夫々は、前記筒部夫々から上方へ放出される空気の放出方向に対して斜め方向へ前記空気の放出方向を変える風向部を有する構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、二つの風向体の風向を等しくすることにより、総量のイオンを同方向に放出することができ、また、二つの風向体の風向を反対にすることにより、半分のイオンを一方向へ放出し、残り半分のイオンを他方向へ放出することができる。因って、二つの風向体から放出されたイオン同士が室内で干渉するのを防ぐことができる。
【0017】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記風向体夫々は、断面倒立台形をなす角枠部を有し、該風向体の少なくとも一つは、一方向へ放出する第1の放出部と、他方向へ放出する第2の放出部とを有する構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、一方向及び他方向へ放出することができ、しかも、一方向への放出量を多くするか、又は一方向及び他方向への放出量を等しくするとともに、一方向又は一方向及び他方向への放出幅を広くすることができるため、室内での生活状況に対応してイオンを室内の広範囲に効率的に行き渡らせることができる。
【0018】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記風向体の少なくとも一つは、一方向へ放出する第1の放出部と、他方向へ放出する第2の放出部とを有する構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、一方向及び他方向へ放出することができ、しかも、一方向への放出量を多くするか、又は一方向及び他方向への放出量を等しくするとともに、一方向又は一方向及び他方向への放出幅を広くすることができるため、室内での生活状況に対応してイオンを室内の広範囲に効率的に行き渡らせることができる。
【0019】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記第1及び第2の放出部の一方の風量は他方の風量よりも多い構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、少なくとも一つの風向体から一方向及び他方向へ放出することができるため、室内での生活状況に対応してイオンの一方向への放出量を多くするとともに、一方向への放出幅を広くし、イオンの他方向への放出量を少なくするとともに、他方向への放出幅を狭くし、イオンを室内の広範囲に効率的に行き渡らせることができる。また、二つの風向体の夫々から一方向及び他方向へ放出することも可能であり、この場合、室内での生活状況に対応してイオンの一方向への放出量を多くするか、又は一方向及び他方向への放出量を等しくするとともに、一方向又は一方向及び他方向への放出幅を広くすることができるため、イオンを室内の広範囲に効率的に行き渡らせることができる。
【0020】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記風向体は枠部を有し、前記第1の放出部は、離隔して対向する複数の風向板を有し、前記第2の放出部は前記風向板の一つと前記枠部の内面との間に配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、一方向へ放出する第1の放出部及び他方向へ放出する第2の放出部が前記通流路に開放されているため、第1及び第2の放出部に塵埃等が溜るのを防ぐことができる。
【0021】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン発生部は、前記空気が通流する通流方向と交差する方向に離隔して複数配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、イオン発生部が発生したイオンを、比較的狭い通流路を通流する層流の空気に含ませる箇所を多くすることができるため、イオン発生部が発生したイオンをより一層効率的に空気に含ませることができる。因って、空気とともに放出口から放出されるイオンのイオン濃度をより一層増すことができる。
【0022】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン発生部は、前記通流方向に離隔して複数配してある構成とするのが好ましい。
この発明にあっては、比較的狭い通流路を通流する層流の空気に含ませる箇所をより一層多くすることができるため、イオン発生部が発生したイオンをより一層効率的に空気に含ませることができ、空気とともに放出口から放出されるイオンのイオン濃度をより一層増すことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一つのモータが二つの羽根車を回し、羽根車夫々の回転により発生する気流を二つの通流路から外部へ放出し、通流路夫々にイオン発生部を配してあるため、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができる。因って、ウイルス菌の除菌効果を大きくすることができ、室内でウイルスに感染するのを低減できる。また、カーテン,衣類等に付着している付着臭を除去する除去効果を大きくすることができる。
【0024】
また、本発明によれば、羽根車夫々の回転により発生する気流を個別に層流に通流させるようになしてある層流部にイオン発生部を配してあるため、イオン発生部が発生したイオンを、通流路夫々を通流する空気に効率よく含ませることができ、空気とともに室内に放出するイオンのイオン濃度を高くすることができる。因って、ウイルス菌の除菌効果を大きくすることができるとともに、カーテン,衣類等に付着している付着臭を除去する除去効果を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るイオン発生装置の構成を示す縦断正面図である。
【図2】本発明に係るイオン発生装置の構成を示す縦断側面図である。
【図3】本発明に係るイオン発生装置のイオン発生器の構成を示す一部を省略した正面図である。
【図4】本発明に係るイオン発生装置の構成を示す平面図である。
【図5】室内の床面に据えられたイオン発生装置の風向体から放出された空気を室内で測定する見取平面図である。
【図6】室内の床面に据えられたイオン発生装置の風向体から放出された空気を室内で測定する見取側面図である。
【図7】本発明に係るイオン発生装置の他の構成を示す縦断側面図である。
【図8】本発明に係るイオン発生装置の他の構成を示す縦断側面図である。
【図9】本発明に係るイオン発生装置の他の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1
図1は本発明に係るイオン発生装置の構成を示す縦断正面図、図2はイオン発生装置の構成を示す縦断側面図、図3はイオン発生器の構成を示す一部を省略した正面図、図4はイオン発生装置の構成を示す平面図である。
【0027】
図1に示したイオン発生装置は、離隔して対向する両側壁1a,1bの下部に吸込口11,11を有し、天壁1cの中央部に二つの嵌合孔12,12を有するハウジング1と、該ハウジング1内の下部に配され、出力軸方向の両側に出力軸21,21を有するモータ2と、該モータ2の出力軸21,21に装着されている二つの羽根車3,3と、羽根車3,3夫々を回転自在に収容する二つのケーシング4,4と、羽根車3,3夫々の回転により発生する気流を個別に上方へ通流させる筒部としての二つのダクト5,5と、二つのイオン発生部61,62を有し、ダクト5,5夫々の途中に配されたイオン発生器6,6と、嵌合孔12,12に取外しを可能に配置された風向体7,7とを備える。尚、モータ2と、羽根車3,3とケーシング4,4とが送風機を構成している。
【0028】
ハウジング1は平面視矩形をなす底壁1dと、該底壁1dの二辺に連なる前壁1e、後壁1f及び底壁1dの他の二辺に連なる側壁1a,1bと、天壁1cとを有する略直方体をなす。両側壁1a,1b下部の吸込口11,11には、羽根車3,3が吸込口11,11から吸込む空気を通過させ、該空気中の異物を除去して清浄空気にするフィルタ8,8が取付けられている。天壁1cの嵌合孔12,12はその長手方向が前後となる長方形をなし、前側の内面が鉛直に対して前方へ傾斜し、後側の内面が鉛直に対して後方へ傾斜している。また、ハウジング1は上下方向の途中で上分体と下分体とに分断され、下分体にケーシング4,4が装着され、上分体にダクト5,5が装着されている。
【0029】
羽根車3,3は、外縁に対し回転中心側が回転方向へ変位する複数の羽根3aを有する多翼羽根車、換言すると円筒形状をなすシロッコ羽根車である。この羽根車3,3の一端には軸受板を有し、該軸受板の中心に開設されている軸孔にモータ2の出力軸21,21が取付けられ、他端の開口から中心部の空洞へ吸込んだ空気を外周部の羽根3a間から放出するように構成されている。
【0030】
ケーシング4,4は、羽根車3,3の回転により発生する気流を羽根車3,3の回転方向へ誘導し、気流の速度を速めるための円弧形誘導壁41,41及び該円弧形誘導壁41,41の一部から円弧形誘導壁41,41の接線方向一方へ上向きに開放された吹出口42,42とを有する。吹出口42,42は円弧形誘導壁41,41の一部から円弧形誘導壁41,41の接線方向一方で、且つ鉛直に対して斜め方向へ突出する角筒形状をなしている。また、ケーシング4,4は、深皿形をなし、円弧形誘導壁41,41及び吹出口42,42用の開放部を有するケーシング本体4a,4aと、羽根車3,3の前記開口と対応する箇所が開放され、ケーシング本体4a,4aの開放側を閉塞する蓋板4b,4bとを備える。ケーシング4,4は、ケーシング本体4a,4a夫々の対向側が仕切り用の連結壁43にて一体に連結されている。また、蓋板4b,4bの開放部とフィルタ8,8との間に、複数の通気孔を有する通気板9,9が設けられている。なお、羽根車3,3の周面と、円弧形誘導壁41,41及び前壁5aとの間の通気路41a,41aが層流部Fになっている。
【0031】
連結壁43のモータ2と対応する箇所は一方のケーシング本体4a側へ窪む凹所を有し、該凹所の縁部に深皿状の支持板44が取付けられている。凹所及び支持板44の中央部間にはゴム板45,45を介してモータ2を挾着保持し、凹所及び支持板44の中央部に開設されている軸孔に出力軸21,21が挿通され、出力軸21,21に羽根車3,3を取付けてある。また、連結壁43の上端はケーシング4,4よりも上方へ延出されている。
【0032】
ダクト5,5は、その下端が吹出口42,42に連なり、その上端が嵌合孔12,12に連なり、上下方向の途中が絞られている角筒形の筒部からなる。また、ダクト5,5は、吹出口42,42から円弧形誘導面41,41の接線方向一方に沿って配された前壁5a,5aと、吹出口42,42からほぼ鉛直に配された後壁5b,5bと、前壁5a,5a及び後壁5b,5bに連なり、ほぼ鉛直に配された二つの側壁5c,5c、5d,5dとを有する。ダクト5,5は、前壁5a,5aの羽根車3に面する側が層流部F,Fになっており、吹出口242,42から吹出された空気を、前壁5a,5a及び側壁5c,5c、5d,5dに沿って層流とし、鉛直に沿わせて通流させるように構成されている。
【0033】
前壁5a,5aにはイオン発生部61,62に対応する貫通孔が開設されており、該貫通孔にイオン発生器6,6が嵌込みにより取付けられている。後壁5b,5bにはモータ2、イオン発生器6,6及び電源線に接続されている回路基板10及び該回路基板10を被覆するカバー20が取付けられている。また、ダクト5,5は上下方向の途中でダクト上分体51とダクト下分体52とに分断されている。ダクト下分体52は角筒形をなし、横方向の中央が連結壁43にて仕切られている。ダクト上分体51は、横方向に離隔して並置される角筒部51a,51aの下部が連結部51bにて一体に連なっており、連結部51b及び連結壁43にて仕切られている。また、ダクト上分体51の上端には、外部から指等の異物が挿入されるのを防ぐための防護網30,30を配してある。
【0034】
イオン発生器6,6は、羽根車3,3の回転により発生する空気の通流方向と交差する方向へ離隔した二つのイオン発生部61,62と、イオン発生部61,62に電圧を供給する給電部と、イオン発生部61,62及び給電部を保持する保持体63とを備える。イオン発生器6,6は、給電部がイオン発生部61,62に電圧を供給することにより、イオン発生部61,62がコロナ放電し、イオンを発生するように構成されている。
【0035】
イオン発生部61,62は、尖鋭状をなす放電電極凸部61a,62a、及び該放電電極凸部61a,62aを囲繞する誘導電極環61b,62bを有し、誘導電極環61b,62b夫々の中心部に放電電極凸部61a,62aを配してある。イオン発生器6,6は、一方のイオン発生部61がプラスのイオンを発生し、他方のイオン発生部62がマイナスのイオンを発生するように構成されている。
【0036】
イオン発生器6,6は、2個を一つの保持体63に保持してある。2個のイオン発生器6,6はダクト5,5夫々の前壁5a,5aに取付けられ、前記通流方向へ離隔して並置されている。また、2個のイオン発生器6,6夫々のイオン発生部61,62は、前記通流方向と交差する位置に並べて配され、隣合う側の極性を等しくしてあり、イオン発生器6,6夫々のイオン発生部61,62が前記貫通孔からダクト5,5内に臨んでいる。また、保持体63のダクト5,5への取付側はイオン発生部61,62夫々に対応する4箇所が開口63aされており、開口63a夫々にイオン発生部61,62を配してある。
【0037】
風向体7,7は、前後方向の断面形状が逆台形をなす角枠部71,71、及び該角枠部71,71内に前後方向へ離隔して並置され、鉛直に対して前後方向一方へ傾斜する複数の風向板72,72を有し、等形状に形成されている。角枠部71,71の前後の壁は鉛直に対して前後方向へ傾斜している。
【0038】
以上のように構成されたイオン発生装置は居住室内に据えられる。送風機のモータ2の駆動により、羽根車3,3が回転し、室内の空気が両側の吸込口11,11から二つのケーシング4,4内へ吸込まれ、吸込まれた空気中の塵埃等の異物はフィルタ8,8により除去される。この際、ケーシング4,4内に吸込まれた空気は、羽根車3,3周りの円弧形誘導壁41,41に沿う気流となりつつ該円弧形誘導壁41,41により整流される。整流された空気は通気路41a,41aの層流部Fにて層流となる。この層流の空気は円弧形誘導壁41,41に沿って図2の二点鎖線の矢印Xで示す如く吹出口42,42へ通流し、該吹出口42,42からダクト5,5内へ吹出される。
【0039】
層流部F,Fは、側面視においてダクト5,5の前壁5a,5a及び円弧形誘導壁41,41が羽根車3に面する側の通気路41a,41aに存在する。前壁5a,5a、側壁5c,5c、及び、側壁5d,5dに囲まれる層流部F,Fを図2の矢印Xで示す空気の層流が通流する。この層流の状態で通流させる前壁5a,5aにイオン発生器6,6を配してある。以上のとおり、イオン発生器6,6のイオン発生部61,62が発生したプラス及びマイナスのイオンを、前壁5a,5aに沿って比較的狭い通路を層流の状態で通流する空気に効率的に含ませることができる。また、ダクト5,5の上下方向の途中は絞られて空気が高風速で通流するように構成されているため、プラスイオン及びマイナスイオンを空気に効率的に含ませることができる。また、イオン発生器6,6は、空気の通流方向に離隔して複数配し、空気にイオンを含ませる箇所を多くしてあるため、イオンを効率よく空気に含ませることができる。なお、本実施の形態においてはイオン発生器6,6を吹出口42,42に臨ませて円弧形誘導壁41,41の端部となる前壁5a,5aに配置する例を挙げたがこれに限るものではない。イオン発生器6,6,が、ダクト5,5内部の矢印Xで示す空気の層流が通流する層流部F,Fに臨むのであれば、他の場所に配置しても良い。例えば、側面視において円弧形誘導壁41,41の曲率が一定の円の部分から、曲率が上方に向けて徐々に小さくなる弧の部分または曲率が無限大となる直線部分にイオン発生器6,6を配置しても良い。
【0040】
因に、ダクト5,5の前壁5a,5aに二つのイオン発生器6,6を前記通流方向へ離隔して配してある構成において、室内に放出された空気の1cm3 当たりのイオン濃度を測定した結果、7000個/cm3 程度のイオン濃度を得ることができた。因って、室内のウイルス菌の除菌効果、及びカーテン,衣類等に付着している付着臭の除去効果を高めることができる。
【0041】
従来から正イオンH+ (H2 O)m(mは任意の整数)、負イオンO2-(H2 O)n(nは任意の整数)を空気中に送出し、イオンの反応によって浮遊細菌等を殺菌することは知られていた。しかし、前記イオンは各々が再結合して消滅するため、イオン発生素子の極近傍では高濃度が実現できても、送出する距離が遠くなればなるほど急激にその濃度が減少してしまっていた。従って、実験装置のような小容量の空間ではイオン濃度を数万個/cm3 とすることが出来ても、実際の居住空間や作業空間等の大きな空間ではせいぜい2〜3,000個/cm3 の濃度とするのが限度であった。
【0042】
一方発明者らは、実験室レベルで前記イオン濃度が7,000個/cm3 の時には、トリインフルエンザウイルスが10分間で99%、50,000個/cm3 においては99.9%除去できることを発見した。双方の除去率が持つ意味は、空気中に1,000個/cm3 のウイルスが存在したと仮定すると、各々10個/cm3 および1個/cm3 が残留することを示す。つまり、イオン濃度を7,000個/cm3 から50,000個/cm3 に高めることによって、残留するウイルスが1/10になるのである。
【0043】
このことから、人などが生活する居住空間や作業空間において、高濃度のイオンを送出するだけではなく、空間全体にイオン濃度を高濃度にすることが感染症予防や環境浄化において非常に重要なことであることがわかる。
【0044】
図5は室内の床面に据えられた本発明に係るイオン発生装置の風向体から放出された空気を室内で測定する見取平面図、図6は室内の床面に据えられた本発明に係るイオン発生装置の風向体から放出された空気を室内で測定する見取側面図である。表1は実施の形態1におけるイオン発生装置の室内でのイオン濃度を測定した結果を示すデータである。
【0045】
【表1】

【0046】
実施の形態1におけるイオン発生装置の室内A〜C点で、且つ室内の床面に対する高さH1〜H3点でのイオン濃度を測定したところ、表1に示す結果が得られた。図5及び図6において、室内は、300cm×350cmの床面積、250cmの高さであり、イオン発生装置は300cm側の一の壁に対し20cm離隔し、且つ床面に対し55cm離隔した支持台に据えてある。
【0047】
測定点Aは室内の300cm側の一の壁に対し87.5cm離隔した箇所で、350cm側の両側壁から75cm離隔した箇所及び両側壁間の中央箇所である。測定点Bは室内の300cm側の一の壁に対し175cm離隔した箇所で、350cm側の両側壁から75cm離隔した箇所及び両側壁間の中央箇所である。測定点Cは室内の300cm側の一の壁に対し262.5cm離隔した箇所で、350cm側の両側壁から75cm離隔した箇所及び両側壁間の中央箇所である。また、測定点A,B,Cにおける高さH1は62.5cm、高さH2は125cm、高さH3は187.5cmである。また、イオン発生装置の発生風量は1.2m3 /min である。
【0048】
表1の測定結果により、測定点A,Bの高さH3点ではいずれもイオン濃度を21,400個/cm3 〜67,500個/cm3 に高めることができており、また、測定点Cの高さH3点における最低イオン濃度でも8,000個/cm3 に高めることができている。また、測定点A〜Cにおける高さH3の平均値では24,022個/cm3 及び26,544個/cm3 、高さH2の平均値では12,156個/cm3 及び13,111個/cm3 、高さH1の平均値では11,333個/cm3 及び12,067個/cm3 のイオン濃度に高められている。また、測定点Aの壁から横方向へ離隔した位置別の平均値では15,900個/cm3 及び32,567個/cm3 、測定点Bの壁から横方向へ離隔した位置別の平均値では14,200個/cm3 及び21,033個/cm3 、測定点Cの壁から横方向へ離隔した位置別の平均値では9,833個/cm3 及び11,200個/cm3 のイオン濃度に高められている。表1の測定結果により明らかなとおり、室内へ放出されたイオンの濃度を高くすることができることを実証することができた。
【0049】
実施の形態2
図7、図8は本発明に係るイオン発生装置の他の構成を示す縦断側面図、図9はイオン発生器の他の構成を示す平面図である。
【0050】
図7〜図9に示したイオン発生装置は、前後方向の断面形状が逆台形をなす角枠部71,71を有する風向体7,7に、一方向へ風向する第1の放出部7a,7aと、他方向へ風向する第2の放出部7b,7bとを設けたものである。
【0051】
角枠部71,71は、前壁71a及び後壁71bが鉛直に対して前後方向へ傾斜し、前壁71a及び後壁71bに連なる両側壁71c,71cが鉛直に沿う略長円筒形をなし、ハウジング1の嵌合孔12,12に上方への取外しを可能に嵌合されている。
【0052】
第1の放出部7a,7aは、角枠部71,71内に前後方向へ離隔して並置され、鉛直に対して前後方向一方へ傾斜する2数の風向板72,72の間及び一方の風向板72と前壁71aとの間に形成されている。
【0053】
第2の放出部7b,7bは、角枠部71,71の傾斜する後壁71bと1枚の風向板72との間に形成されている。角枠部71及び風向板72は合成樹脂材にて一体に成形されている。
【0054】
第1及び第2の放出部7a,7bの風量は、約3:1の比率で第1の放出部7aが第2の放出部7bよりも多くなるようになしてある。
【0055】
以上のように構成されたイオン発生装置にあっては、ダクト5,5から上方へ放出される空気は、第1の放出部7aにて一方向へ放出されるとともに、第2の放出部7bにて他方向へ風向され、第1及び第2の放出部7a,7bから室内へ放出される。因って、一方向及び他方向への放出幅(横方向の幅)を広くすることができ、広範囲に放出することができる。
【0056】
風向体7,7は、第1の放出部7aの風量が第2の放出部7bの風量よりも多いため、風向体7,7における第1の放出部7a,7aの方向、及び第2の放出部7b,7bの方向を等しくすることにより、一方向への風量を例えば3:1の比率で多くし、他方向への風量を少なくし、一方向及び他方向への放出幅を広くして広範囲に放出することができる。また、図6に示すように、風向体7,7における第1の放出部7a,7aの方向を反対にすることにより、一方向及び他方向への風量を等しくし、一方向及び他方向への放出幅を広くして広範囲に放出することができる。
【0057】
また、風向体7,7における第1及び第2の放出部7a,7bは、ダクト5,5内に開放されているため、第1及び第2の放出部7a,7bに塵埃等が溜るのを防ぐことができる。
【0058】
表2は実施の形態2におけるイオン発生装置の室内でのイオン濃度を測定した結果を示すデータである。測定条件及び測定点は図5、図6に示す実施の形態1と同じである。
実施の形態2におけるイオン発生装置の室内A〜C点で、且つ高さH1〜H3点でのイオン濃度を測定したところ、表2に示す結果が得られた。
【0059】
【表2】

【0060】
表2の測定結果により、測定点A,Bの高さH3点ではいずれもイオン濃度を18,200個/cm3 〜123,200個/cm3 高めることができており、また、測定点Aの高さH1点における最低イオン濃度でも9,500個/cm3 に高めることができている。また、測定点A〜Cにおける高さH3の平均値では30,411個/cm3 及び34,333個/cm3 、高さH2の平均値では14,167個/cm3 及び16,056個/cm3 、高さH1の平均値では12,233個/cm3 及び13,611個/cm3 のイオン濃度に高められている。また、測定点Aの壁から横方向へ離隔した位置別の平均値では18,667個/cm3 及び49,367個/cm3 、測定点Bの壁から横方向へ離隔した位置別の平均値では14,433個/cm3 及び24,433個/cm3 、測定点Cの壁から横方向へ離隔した位置別の平均値では11,500個/cm3 及び13,467個/cm3 のイオン濃度に高められている。表2の測定結果により明らかなとおり、室内へ放出されたイオンの濃度をより一層高くすることができることを実証することができた。
【0061】
また、実施の形態2のイオン発生装置にあっては、表1及び表2に現れているように、実施の形態1のイオン発生装置よりも室内へ放出されたイオンの濃度を高くすることができ、また、イオンを室内の広範囲に効率的に行き渡らせることができた。
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用効果の説明を省略する。
【0062】
尚、以上説明した実施の形態では、羽根車3,3夫々の回転により送出する空気の通流が層流となる層流部F,Fをダクト5,5が有し、ダクト5,5夫々の層流部F,Fにイオン発生部61,62を配してある。その他、イオン発生部61,62は、羽根車3,3夫々の回転により送出する空気の通流が層流となる層流部F,Fを有する円弧形誘導壁に配してもよく、イオン発生部を配する箇所は特に制限されない。
【0063】
また、以上説明した実施の形態では、二つのダクト5,5内の通流方向と交差する位置に、前記通流方向へ離隔する二つのイオン発生器6,6を並置したが、その他、二つの通流路のイオン発生器6,6は、前記通流方向へ離隔して配してもよい。
【0064】
また、以上説明した実施の形態では、二つの風向体7,7を取外し自在としたが、その他、風向体7,7の一つを取外し自在とし、他の風向体をハウジング1に固定、又はハウジング1と一体に成形する構成としてもよい。
【0065】
また、以上説明した実施の形態では、風向体7,7は角枠部71を有する構成としたが、その他、風向体7,7は空気の放出方向を変える一つ風向板72、又は、離隔して連結された複数の風向板72を有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
2 モータ
21 出力軸
3 羽根車(送風機)
4 ケーシング(整風体)
41 円弧形誘導壁
42 吹出口
5 ダクト(通流路、筒部)
6 イオン発生器
61,62 イオン発生部
7 風向体
7a 第1の放出部
7b 第2の放出部
71 角枠部(枠部)
72 風向部
F 層流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、イオンを発生させるイオン発生部とを備え、該イオン発生部が発生したイオンを、前記送風機が送出する空気とともに外部に放出するようになしてあるイオン発生装置において、前記送風機は、軸方向の両方に出力軸を有するモータ及び前記出力軸夫々に装着されている二つの羽根車を有し、羽根車夫々の回転により送出する空気を同方向へ個別に通流させて装置の外部へ放出する二つの通流路を備え、通流路夫々に前記イオン発生部を配してあることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記通流路夫々の一部又は全部は、前記空気の通流が層流となる層流部を有し、層流部夫々に前記イオン発生部を配してある請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記羽根車の回転により送出する空気を整風する整風体を備え、該整風体に前記イオン発生部を配してある請求項1又は2記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記整風体は、前記羽根車夫々の回転により送出する空気を誘導する二つの円弧形誘導壁及び該円弧形誘導壁夫々の一部から円弧形誘導壁夫々の接線方向一方へ開放されている二つの吹出口を有し、前記円弧形誘導壁夫々に前記イオン発生部を配してある請求項3記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記通流路夫々は、前記吹出口夫々から吹出された空気の上方への通流が層流となるようになしてある筒部を有し、筒部夫々に前記イオン発生部を配してある請求項4記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記通流路夫々の放出側端に二つの風向体を配してあり、該風向体の少なくとも一つは取外しが自在である請求項1から5のいずれか一つに記載のイオン発生装置。
【請求項7】
前記風向体夫々は、前記筒部夫々から上方へ放出される空気の放出方向に対して斜め方向へ前記空気の放出方向を変える風向部を有する請求項6記載のイオン発生装置。
【請求項8】
前記風向体夫々は、断面倒立台形をなす角枠部を有し、該風向体の少なくとも一つは、一方向へ放出する第1の放出部と、他方向へ放出する第2の放出部とを有する請求項7記載のイオン発生装置。
【請求項9】
前記風向体の少なくとも一つは、一方向へ放出する第1の放出部と、他方向へ放出する第2の放出部とを有する請求項6記載のイオン発生装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の放出部の一方の風量は他方の風量よりも多い請求項8又は9記載のイオン発生装置。
【請求項11】
前記風向体は枠部を有し、前記第1の放出部は、離隔して対向する複数の風向板を有し、前記第2の放出部は前記風向板の一つと前記枠部の内面との間に配してある請求項9又は10記載のイオン発生装置。
【請求項12】
前記イオン発生部は、前記空気が通流する通流方向と交差する方向に離隔して複数配してある請求項1から11のいずれか一つに記載のイオン発生装置。
【請求項13】
前記イオン発生部は、前記通流方向に離隔して複数配してある請求項12記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−80425(P2010−80425A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76493(P2009−76493)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【特許番号】特許第4404948号(P4404948)
【特許公報発行日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】