説明

イネ科植物類から選ばれた植物種の処理におけるコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用。

本発明は、イネ科植物類(Poaceae)の植物種の止葉、葉F−1及び/又は葉F−2の生物量を増大させるための、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種の処理におけるコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の特別な使用に関する。
【0002】
本発明は、より特別に、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種の処理におけるコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の、その植物の生物量(biomass)を増大させることを目的とした使用に関する。更に特別に、本発明は、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種の処理におけるコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の、その植物の止葉、葉F1及び/又は葉F2の生物量を増大させることを目的とした使用に関する。
【背景技術】
【0003】
植物病原菌及び微生物を防除するためのコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用は先行技術により知られている:
たとえば、WO 03/070705 A1にはコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤であるN−(3’,4’−ジクロロ−5−フルオロ−1,1’−ビフェニル−2−イル)−3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド (以降、一般名:ビキサフェン(bixafen)と参照される)の望まない微生物及び植物病原菌を防除するため使用が記載されている。
【0004】
WO 2009/106633 A1によれば、植物病原菌及び植物病原性微生物がビキサフェン及びエポキシコナゾール(epoxiconazole)又はメトコナゾール(metconazole)の混合物によって効果的に処理されることが知られている。それらの混合物は、WO 2009/106633 A1の教示に従って、植物の種子又は土壌に直接施用される。
【0005】
WO 2006/131221 A1は、病原菌防除のため、特に大豆さび病;ファコプソラ類(Phakopsora species)、たとえば、ファコプソラ ソジャエ(Phakopsora sojae)、ファコプソラ パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)及びファコプソラ ビグナエ(Phakopsora vignae);ウレド ソジャエ(Uredo sojae)及びウロミセス ソジャエ(Uromyces sojae);さらにまた、別のさび病類、例えば、コーヒーさび病、ヘミレイア バスタトリクス(Hemileia vastatrix)防除のためのビキサフェンの使用を教示する。
【0006】
これらの刊行物に、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の収量増加における効果についの言及は無い。
【0007】
WO 01/64928 A2には、例えばイネ、コムギ、オオムギ、オートムギ又はキビ(millet)など単子葉植物の生物量増大のための方法、及び、例えば エンドウ豆、アルファルファ(alfalfa)、ヒヨコ豆、チコリー、ケール又は平豆(lentils)など双子葉植物の生物量増大のための方法、及び種子の生産及び植物の生物量の観点でこれら植物の収量増大のため方法が記載されている。コムギの場合、収穫指数(the harvest index)がその効果を記述する目的に用いられている。その植物の機能活性は、穀粒の総数の増加、個々の穀粒の重量の増加、植物体毎の穀粒総重量及び地上部の生物量の増加、収穫指数の増加及び高温安定性の改善を基礎にして記述された。WO 01/64928 A2に記載の植物生物量を増加させるための方法は植物の遺伝子組み換え技術に基づいているものであり、そして、今回のケースで後述されるように、特定の活性成分の使用に関するものでは無い。同様に、WO 01/64928 A2は遺伝子組み換え植物と殺菌活性成分の組み合わせによる処理についての一切の示唆を含まない。
【0008】
生物量を増加させる目的で遺伝子組み換え植物を生産するための遺伝子法を包含する同様な方法は、WO 2003/096797 A2、 WO 2006/013010 A2又はWO 2008/142163 A2により知られている。
【0009】
WO 2009/098218 A2は、多様なSDH阻害剤による処理によって植物の健康を改善する方法及びSDH阻害剤と他の農薬との組み合わせも開示されている。WO 2009/098218における定義によれば、用語「植物の健康(plant thealth)」は植物の収量及び活力、及び非生物的ストレス因子に対する耐性も包含する。止葉の成長に関する処理の影響については示されていない。
【0010】
EP 2 039 771 A2には遺伝子組み換え植物の、特にトウモロコシを、ビキサフェンの処理によって、生産能力を改良する方法が開示されている。その植物の生産能力の改善について言及されている指標のひとつは、その植物の非生物的ストレスに対する抵抗性である。この効果を実証する生物データはEP 2 039 771 A2に存在しない。
【0011】
WO 2005/018324 A2には、アミド化合物類、例えば、ボスカリド(boscalid)による植物成長を促進させるための方法が開示されている。ビキサフェンは開示されていない。その出願において止葉の成長に関するその処理の効果についても同様に示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
今回、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種の収量を増大させる目的でコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤を採用することが特に有利であることが見出された。特に効果が実証されるのは、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の施用が発育ステージ(the development stages)BBCH12から70においてであり、望ましいのは発育ステージBBCH17から70、より望ましいのは発育ステージBBCH20から65、より望ましいのは発育ステージBBCH29から60そして、非常に望ましいのは発育ステージBBCH33から55においてである。収量の増大のみならず、同時に、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤は、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物の生理的状態を改善する場合に特に有効であること、及び、特定の植物病原体、より特定的にプクキニア・トリチシナ(Puccinia triticina)、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)及びセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)を防除する場合において特に有効であることが実証された。
【0013】
本発明の目的のために、処理されるべき植物はより特定には発育ステージBBCH12から先の植物であり、望ましくは発育ステージBBCH20から、より望ましくは発育ステージBBCH20から、より望ましくは生育ステージBBCH29から、そして、更により望ましいのは発育ステージBBCH33からである。BBCHステージの定義は、地方と林業の生物学的連邦機関によるBBCHモノグラム、第2版、2001年(the BBCH monograph of the Biologische Bundesanstalt fur Land− und Forstwirtschaft, 2nd edition, 2001)に与えられている。
【0014】
したがって、本発明はイネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種の収量を増大させる方法を提供する。一般に、同時に起こる植物の生理的状態の改善は、例えば、植物のより長い緑色(green coloration)維持期間に見られるように、一般に、植物の一部における生理的活性の増大と関連する。植物の生理に関する本発明使用の効果は、下記以降に詳述される。
【0015】
本発明は、その一側面として、その植物の止葉、葉F−1及び/又は葉F−2の生物量の増大を通じて収量の増大を目的とした、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種への少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用に関連する。
【0016】
コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の施用によって達成される収量の押し上げは、望ましくはコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の植物病原体に対する既知の殺菌活性に帰属されない;特に、植物病原体が存在しない場合においてさえ本発明において採用される方法によって収量の押し上げが達成されうる。
【0017】
本発明の中で、既に言及されているように、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤が、望ましくは発育ステージBBCH12から70の一に、望ましくは発育ステージBBCH20から65の一に、より望ましくは発育ステージBBCH29から60の一に、非常に望ましくは発育ステージBBCH33から55の一に対応する時点に施用されることが明らかになった。
【0018】
加えて、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤が植物種の発育期間中の2以上の時期に施用される場合が、さらに望ましい。第2の処理は、望ましくは処理される植物上の少なくとも葉F−2、より望ましくは少なくとも葉F−2及び葉F−1、より望ましくは止葉、葉F−1及び葉F−2が依然として発育している時点に行われる。この場合、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の施用は、より特定的にスプレー施用による方法で前述の葉類、言い換えれば止葉、葉F−1及び/又は葉F−2に行われる。総じて、この方法により、これらの葉類のより大きい成長が達成される。望ましくは、第一の施用はその植物種の発育ステージBCHH17から42の時点に行われ、第二の施用はその植物種の生育ステージBCHH43から70の時点に行われる。しかし、対応する成長の押し上げは、このコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の2−ステージ施用だけでなく、上記に認定される発育ステージにおいて、第一の施用のみの場合であっても達成可能である。
【0019】
それ故に、本発明により、より特別に、止葉、葉F−1及び/又は葉F−2の大きさ及び/又は面積の改善がより特別に可能である。このことは、その葉類の全長と全幅から確かめられる。
【0020】
それ故、本発明の他の側面として、本発明は、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種において、止葉、葉F−1及び/葉F−2からなる群から選択された少なくとも一の葉の大きさ及び/又は面積を増大させるための、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用に関連する。
【0021】
少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の本発明の使用において、前述の葉の大きさ及び/又は面積が増大するので、一般的に、本発明に関連して、その植物の生物量の増大もまた存在する。それ故、他の面において、本発明は植物の生物量の増大のための少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用に関する。
【0022】
より特別に、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の本発明の使用により、処理された植物の穂、禾穀類の穀粒又は穂及び禾穀類の穀粒の生物量の増大、又は禾穀類の穂毎の穀粒(穂毎の穀粒の数)の改良が可能である。
【0023】
さらに、他の特徴によれば、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の本発明による特別な施用は、処理された植物の生物量及び/又は収量を増大させるのみならず、植物の全体的な生理的状態の改善も可能である。
【0024】
改善された植物の生理機能は、例えば、植物の緑葉着色(green leaf coloration)のより長い持続により明らかである。したがって、本発明に関連して、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の本発明による特別な施用によって緑葉面積の持続を延長させることが可能であることが見出された。これは植物の成熟(老化)を遅らせ、このことは農家にとって収穫時期についてのより高い柔軟性という基準から有利な点を意味する。同時に、そのような植物の黄化は同様に遅れる。
【0025】
それ故、本発明は、緑葉面積の持続を延長させることを目的とした、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種への施用のための、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用にも関連する。
【0026】
本発明は、さらに、遅延化された植物の成熟(老化)を達成することを目的とした、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種への施用のための、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用にも関連する。
【0027】
特に、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の本発明で提供されるような施用によって穀草類植物の穂の発育が遅延されること又は画一化(これは遅い時期の出穂と早期の出穂の終了によって特徴付けられる)されることが可能である。従って、調査が行われた結果、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の本発明の施用の長所により、穂の出現を一週間まで遅延させることが可能であることが示された。 一般的にBBCHマクロステージ(macrostage)5 の時期に起こり、BBCH発育ステージの時期に始まる遅延化された出穂(穂の出現)の利点は、この遅延が増大された生物量を生み出すことである。
【0028】
より均一な出穂の利点は、本発明により注目されている植物に関して、フザリウム(Fusarium)病原体の感染が出穂期間に頻繁に起こること、及びより均一な出穂、すなわち、より短期の出穂期間それ自体がその期間中のフザリウム病原体を標的化した防除を可能にすることである。
【0029】
本発明との関連で、さらに、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の特別な本発明の施用により、植物内で生産される葉緑素含有量が増大されることが見出された。少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の施用により、植物内の葉緑素含有量が安定化されることも発見された。本発明に関連した安定化された葉緑素含有量は、無処理の植物と比較して、本発明の施用により、植物内での葉緑素の破壊がより遅いことを意味する。
【0030】
本発明は、従って、植物内の増大された葉緑素含有量及び/又は安定化された葉緑素含有量を達成することを目的とした、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種への施用のための、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用にも関連する。
【0031】
さらに、本発明の施用の長所により、光合成率の増大が植物内で起こりうることが解明された。従って、植物内の増大された光合成率を達成することを目的とした、イネ科植物(Poaceae)類から選ばれた植物種への施用のための、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用にも関連する。
【0032】
この植物内の光合成率の増大は、植物の老化の遅延化によって達成されうる。
【0033】
さらに、本発明に関連して、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の特別な本発明による施用によって、最終的に、非生物的ストレス因子に対する植物の抵抗性又は耐性の改善が可能であることが見出された。熱ストレスの場合、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤で処理された植物は、改善された蒸散率及び結果として改善された蒸発冷却を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
非生物的ストレスに対する耐性及び抵抗性の用語は、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤による既知の殺菌活性に直接的に関連付けられない植物への多様な種類の利点を包含すると理解されている。そのような有用な特性は、例えば、以下のように特定される改善された植物の特性によって明らかにされる:地表域及び地中の改善された根の伸張、増大されたひこばえの出芽又は匍匐茎の形成、より強化、そして、より生産的なひこばえ及び匍匐茎、芽の成長における改善、増強された立脚力、増大された芽元の直径、増大された葉の面積、より高い栄養及び構成要素の収量、例えば、炭水化物類、脂肪類、オイル、タンパク質類、ビタミン類、ミネラル類、エッセンシャルオイル類、色素類、繊維類、例えば、より良い繊維の性質、より早い開花、増大された花の数、例えばマイコトキシンのような毒性生産物の低減されたレベル、あらゆる種類の不利益な構成要素又は残渣の低減されたレベル、又はより良い消化性、保存時の収穫作物の改善された安定性、厳しい温度への改善された耐性、干ばつ及び乾燥、さらに浸水の結果としての酸素の欠乏に対する改善された耐性、土壌及び水中の増大した塩レベルに対する改善された耐性、オゾンストレスに対する増大した耐性、除草剤及び他の植物処理製品に対する改善された耐性、改善された水吸収及び光合成率、有利な植物特性、例えば、改変された熟成、より均一な熟成、有用生物に対するより強い誘引、改善された受粉又は当業者によって良く知られている他の利点。
【0035】
上記のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤による効果は独立して又は他と同時に起こりうる、そして、一般的な妥当性を有した用語によって特徴的に説明することが可能である。そのような用語は、以下のように提示された表示を含む:ファイトトニック効果(Phytotonic effect)、ストレス因子への抵抗性(resistance to stress factors)、レスプラントストレス(less plant stress)、プラントヘルス(plant healt)、ヘルシープラント(healthy plants)、プラントフィットネス(plant fitness)、プラントウェルネス(plant wellness)、プラントコンセプト(plant concept)、ビガー効果(vigour effect)、ストレスシールド(stress shield)、プロテクティブシールド(protective shield)、クロップヘルス(crop health)、クロップヘルスプロパティー(crop health properties)、クロップヘルスプロダクト(crop health products)、クロップヘルスマネージメント(crop health management)、クロップヘルスセラピー(crop health therapy)、プラントヘルス(plant health)、プラントヘルスプロパティー(plant health properties)、プラントヘルスプロダクツ(plant health products)、プラントヘルスマネージメント(plant health management)、プラントヘルスセラピー(plant health therary)、グリーニング効果(greening effect)、再グリーニング効果(re−greening effect)、フレッシュネス(freshness)又は当業者によって良く知られている他の用語。
【0036】
さらに、本発明上想定されるコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の施用は、関連する病原体の成功裏な防除によって完成する。これは既知のビキサフェンの殺菌剤として防除のための施用と関連するが、止葉、葉類F−1及び/又はF−2に対するビキサフェンの特定な施用により、特別に効果的な病原体の防除が可能である。
【0037】
本発明に従って、防除されるべき病原体は、アスコキタ・トリチシ(Ascochyta tritici)、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)、クラドスポリウム・ヘルバレム(Cladosporium herbarum)、コクリオボルス・サチブス(Cochliobolus sativus)、エピコッカム属(Epicoccum spp.)、エリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis)、フサリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フサリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、ガエウマノミセス・グラミニス(Gaeumannomyces graminis)、レプトスフェエリア・ノドルム(Leptosphaeria nodorum)、ミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)、シュードセルコスポラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercospora herpotrichoides)、シュードセルコスポレラ・フルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)、プクキニア・ストリルホルミス(Puccinia striiformis)、プクキニア・トリチシナ(Puccinia triticina)、プクキニア・ホルデイ(Puccinia hordei)、プクキニア・レコンジタ(Puccinia recondite)、ピレノフォラ・グラミネア(Pyrenophora graminea)、ピレノフォラ・テレス(Pyrenophora teres)、ピレノフォラ・トリチシ・レペンチス(Pyrenophora tritici repentis)、ラムラリア・コロ−シグニ(Ramularia collo−cygni)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、リゾクトニア・セレアリス(Rhizoctonia cerealis)、リンコスポリウム・セカリス(Rhynchosporium secalis)、セプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)、セプトリア・トリチシ(Septoria tritici)、スタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum)、チレチア・カリエス(Tilletia caries)、チフラ・インカルナテ(Typhula incarnate)、ウロミセス・アペンジクラツス(Uromyces appendiculatus)、(Ustilago avenae)及びウスチラゴ・アベナエ(Ustilago nuda)からなる群から選択される。
【0038】
本発明は、プクキニア・トリチシナ(Puccinia triticina)、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)及びセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)からなる群から選択される病原体を、より特別に、同時に防除するために適当である。
【0039】
発明上のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の集合は、www.FRAC.info (Mode of Action Poster, subgroup C2: inhibition of complex II: succinate dehydrogenase, # 7 SDHI uccinate DeHydrogenase Inhibitors)上に見られる。
【0040】
本発明の特に望ましいコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤は以下に示す化合物からなる群から選ばれうる:
(1)フルオピラム(Fluopyram)、化学名 N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]エチル}−2,6−ジクロロベンズアミドを有するピリジルエチルベンズアミド系の殺菌剤である。フルオピラム及びそれの既知で且つ市販の構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 EP 1 389 614 A に記載されている。
(2)ペンフルフェン(Penflufen)、化学名は N−[2−(1,3−ジメチルブチル)フェニル]−5−フルオロ−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド。ペンフルフェン及びそれの既知で且つ市販されている構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 WO 2003/010149 A に記載されている。
(3)ビキサフェン(Bixafen)、化学名はN−(3’,4’−ジクロロ−5−フルオロ−1,1’−ビフェニル−2−イル)−3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド。 ビキサフェン及びそれの既知且つ市販されている構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 WO 2003/070705 A に記載されている。
(4)セダキサン(Sedaxane)、 2種のシス−異性体 2′−[(1RS,2RS)−1,1′−ビシクロプロポ−2−イル]−3−(ジフルオロメチル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシアニリド及び2種のトランス−異性体 2′−[(1RS,2SR)−1,1′−ビシクロプロプ−2−イル]−3−(ジフルオロメチル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシアニリドの混合物である。 セダキサン及びそれの既知且つ市販されている構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 WO 2003/074491 A、 WO 2006/015865 A 及び WO 2006/015866 A に記載されている。
(5)イソピラザム(Isopyrazam)、 2種のシン−異性体(syn−isomers)3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−N−[(1RS,4SR,9RS)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−イソプロピル−1,4−メタノナフタレン−5−イル]ピラゾール−4−カルボキサミド及び2種のアンチ−異性体(anti−isomers) 3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−N−[(1RS,4SR,9SR)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9−イソプロピルl−1,4−メタノナフタレン−5−イル]ピラゾール−4−カルボキサミドの混合物である。イソピラザム及びそれの既知且つ市販されている構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 WO 2004/035589 Aに記載されている。
(6)ペンチオピラド(Penthiopyrad)、化学名は(RS)−N−[2−(1,3−ジメチルブチル)−3−チエニル]−1−メチル−3−(トリフルオロメチル)ピラゾール−4−カルボキサミド。ペンチオピラド及びそれの既知且つ市販されている構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 EP 0 737 682 A に記載されている。
(7)ボスカリド(Boscalid)、化学名は2−クロロ−N−(4′−クロロビフェニル−2−イル)ニコチンアミド。ボスカリド及びそれの既知且つ市販の構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 DE 195 31 813 A に記載されている。
(8)フルキサピロキサド(Fluxapyraxad)、化学名は3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−N−(3’,4’,5’−トリフルオロビフェニル−2−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド。フルキサピロキサド及びそれの既知且つ市販されている構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 WO 2006/087343 A に記載されている。
(9)N−[1−(2,4−ジクロロフェニル)−1−メトキシプロパン−2−イル]−3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド、 これの既知且つ市販されている構成要素から始まる調製プロセスは刊行物 WO 2010/000612 A に記載されている。
【0041】
本発明との関連でビキサフェン(化学名N−(3’,4’−ジクロロ−5−フルオロ−1,1’−ビフェニル−2−イル)−3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミドを有する)をコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤として使用する場合が特に望ましい。
【0042】
ビキサフェンが少なくとも一以上の他の活性成分と組み合わされて使用する場合がさらに望ましい。該他の活性成分が、スピロキサミン(spiroxamine)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)及びプロチオコナゾール(prothioconazole)からなる群から選択される場合が望ましい。特に望ましいのはビキサフェンとプロチオコナゾールとの組み合わせである。
【0043】
本発明において想定されるコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用は、0.01から3 kg/haの用量で行われるのが望ましく、0.01から1.5kg/haの用量で行われるのがより望ましく、そして、0.1から0.5 kg/haの用量で行われるのが特に望ましい。
【0044】
本発明の目的において、特に適当な対象作物はイネ科植物類:コムギ(wheat)、ライ(rye)、オオムギ(barley)、オートムギ(oats)、キビ(millet)、トウモロコシ(maize)、イネ(rice)、ライコムギ(triticale)、タケ(bamboo)及びサトウキビ(sugarcane)から選ばれる。
【0045】
本発明は、さらに、冬穀物(winter cereal)及び春穀物(spring cereal)の処理に適当である。
【0046】
特に望ましくは、市販されているか又は使用されているそれぞれの植物品種の植物を本発明により処理する。植物品種とは、従来の品種改良より、又は、突然変異生成若しくは遺伝子組み換え技術により育成された新しい特性(形質)を有する植物を意味する。したがって、作物植物は、従来の品種改良及び最適化方法により、又は、バイオテクノロジー及び組み替え技術により、又は、それらの方法の組み合わせにより得られうる植物であって、トランスジェニック植物を含み、品種財産権(varietal property right)(育成者権(plant breeders’right))による保護に従う義務があるかもしれない又はないかもしれない植物品種を含む。
【0047】
本発明により、遺伝子組み換え生物(GMOs)もまた処理されうる。遺伝子組み換え植物(又は、トランスジェニック植物)は、異種遺伝子がゲノム上に安定に取り込まれた植物である。用語「異種遺伝子」は、本質的に、提供されたか又は当該植物の外部で構築された遺伝子であって、核のゲノム、葉緑体のゲノム又はミトコンドリアのゲノムに導入されたとき、興味深いポリペプチド又はたんぱく質を発現することにより、又は、当該植物中に存在している他の一つもしくは複数の遺伝子をダウンレグレートもしくはスイッチングオフすることにより(例えば、アンチセンス技術、コサプレッション技術又はRNAi「RNA干渉」技術の方法による)、組み込まれた植物に新しい若しくは改善された作物若しくは他の特性を付与する遺伝子を示す。ゲノム内に存在する異種遺伝子は、導入遺伝子とも称される。植物ゲノム内でのその特異的な存在で定義される導入遺伝子は形質転換イベント又は遺伝子導入イベントと称される。
【0048】
本発明に従って好ましく処理される植物及び植物品種は、特に有利で、有用な形質を植物に与える遺伝物質を有している全ての植物(それらが育種及び/又は生物工学的手法により達成されたにはかかわらず)を包含する。
【0049】
本発明に従って同様に処理されうる植物及び植物品種は、一以上の非生物的ストレス因子に対して抵抗性を有する植物である。非生物的ストレス状態には、例えば、干ばつ、低温及び高温の状態、浸透ストレス、浸水、増大した土壌塩濃度、鉱物への増大した暴露、オゾン状態、強い光の状態、窒素栄養分の限られた利用可能性、リン栄養分の限られた利用可能性又は日陰の忌避などが含まれうる。
【0050】
本発明に従って同様に処理されうる植物及び植物品種は、増大された収量特性によって特徴付けられる植物である。これら植物の増大した収量は、例えば、改善された植物の生理状態、改善された植物の成長及び改善された植物の発育、例えば、水の利用効率、水の保持効率、改善された窒素の利用、強化された炭素同化作用、改善された光合成、増大された発芽効率及び変化された成熟などにより促進されうる。収量は、さらに、早期の開花、ハイブリッド種子を産生するための開花の制御、苗木の活力、植物の大きさ、節間の数と距離、根の成長、種子の大きさ、果実の大きさ、鞘の大きさ、鞘又は穂の数、鞘又は穂ごとの種子の数、種子の質量、増大された種子の充填、減少された種子分散、減少された鞘の裂開及び耐倒伏性などの改善された構造(ストレス及び非ストレス状態下での)により影響を受ける。さらに、収量特性には、炭水化物含有量、たんぱく質含有量、油含有量及び油組成、栄養価、非栄養化合物の低減、改善された加工特性及び改善された貯蔵性などの種子組成を含む。
【0051】
本発明に従って同様に処理されうる植物は、通常、より高い収量、向上した活力、向上した健康状態並びに生物的及び非生物的ストレス因子に対する向上した抵抗性をもたらすという雑種強勢又は雑種効果の特性をすでに呈しているハイブリッド植物である。そのような植物は、典型的には雄性不稔交配母体近交系(inbred male−sterile parent line)(雌性親)を別の雄性稔性交配母体近交系(inbred male−fertile parent line)(雄性親)と異種交雑させることによって作られる。ハイブリッド種子は、典型的には雄性不稔植物から収穫され、そして栽培者に販売される。雄性不稔植物は、場合により(例えば、トウモロコシにおいて)穂を取り除く(例えば、雄性繁殖器又は雄花の機械的な除去)ことにより作ることができうる;しかし、より通常は、雄性不稔性は、植物ゲノム内の遺伝的決定基からもたらされる。この場合、特に種子がハイブリッド植物から収穫される望むべき生産物である場合、典型的には、雄性不稔性に関与する遺伝的決定基を有するハイブリッド植物において雄性稔性を完全に回復させることを確実にするのは有用である。これは、雄性不稔性に関与する遺伝的決定基を有するハイブリッド植物において雄性念性を回復させることが可能な対応する稔性回復遺伝子を雄性親が有していることを確実にすることによって達成することができる。雄性不稔に関する遺伝的決定基は細胞質内に存在しうる。細胞質不稔性(CMS)の例は、例えば、アブラナ属種(Bassica species)について記載されている(WO 1992/005251, WO 1995/009910, WO 1998/27806, WO 2005/002324, WO 2006/021972 and US 6,229,072)。しかし、雄性不稔に関連する遺伝的決定基は核ゲノム内にも存在しうる。雄性不稔性植物は遺伝子工学などの植物バイオテクノロジーの手法により得ることもできる。不稔性植物を得る特に有用な方法は、WO 89/10396に記載されており、ここでは、例えば、バルナーゼのようなリボヌクレアーゼが、雄しべの中のタペターム細胞内で選択的に発現させられている。そして、稔性はタペターム細胞内でバルスターなどのリボヌクレアーゼインヒビターの発現により回復させることができる(例えば、WO 1991/002069)。
【0052】
本発明によればコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤は製剤の形態で使用されうる。
【0053】
本発明の活性成分は、その標準的な市販用製剤中に、また、それらの製剤から調製される施用形態中に存在し、他の活性成分、例えば、殺虫剤、誘引薬、滅菌剤、殺バクテリア剤、ダニ駆除剤、線虫駆除剤、殺菌剤、成長調整剤、除草剤、セーフナー、肥料又は半化学物質などの混合物中に存在しうる。
【0054】
本発明の方法による使用に関して、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤は通例の製剤、例えば溶液、エマルジョン、水和剤、水ベース及びオイルベースの懸濁液及びサスペンジョン−エマルジョン濃縮液で使用されうる。
【0055】
本発明に従って、本発明により予想されるコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤がスプレー製剤で使用されることが特に望ましい。
【0056】
対応する製剤及びそれらの構成要素は、それ自体、当業者に知られている。
【実施例】
【0057】
以下に続く例は本発明を詳細に説明する、しかし、一切本発明を限定するものではない。
【0058】
実験の記載:
【実施例1】
【0059】
例1:
実際の農業の条件下でのコムギ植物の生理、形態及び非生物ストレス耐性に関するビキサフェンの影響を調査するためにドイツにおいて小麦品種「Ritmo」を使用した小規模試験が組まれた。
試験における化合物は、連続スプレーの手順(BBCH 39及び59)によって植物に施用された。そのスプレー量はヘクタールあたり400Lの水溶液であった。各試験構成ごとに5反復行われた。
【表1】

【0060】
続いて、植物発育及び植物生理を記録するために非破壊的及び破壊的方法が採用された。加えて、収量に対応するパラメーターが記録された。
【0061】
例1の結果:
葉面積における緑着色の持続は、緑葉面積の割合の通常の視覚的採点法によって記録された。
【0062】
試験によりコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤ビキサフェンはコムギ植物の緑葉面積の持続に関して顕著な効果があることが示された。ビキサフェン単独の効果は、殺菌剤との組み合わせ、特に殺菌剤であるプロチオコナゾールとの組み合わせによりいっそう向上させられうる。
【表2】

【表3】

【表4】

【0063】
処理された及び無処理の植物の葉緑素含有量はツィーグラーとエール(Ziegler and Ehle)の色素抽出法によって決定した。記録された収量に対応する因子は穀粒の収量、千粒重(the thousand−kernel mass)、穂/プロットの数、及び麦わら重であった。
【0064】
少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤、例えば、ビキサフェン、が単独で又は他の活性殺菌成分、例えば、特にプロチオコナゾールとの組み合わせで使用された場合、全体の葉緑素含有量はより高く、そして、葉緑素の破壊はより遅い;それゆえ植物中の葉緑素は安定化されることがわかる。このことはその植物の異なる発育ステージ(参照 テーブル4)における葉緑素含有量の比較から明らかである。
【表5】

【0065】
本発明の少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤単独又は他の殺菌剤との組み合わせによる使用により、コムギの個別の収量構成要素も改善されうる(参照 テーブル5)。これは収量、千粒重及び平方メートル毎の穂数に関連する。
【表6】

【実施例2】
【0066】
例2:
制御された条件下の温室試験において、未感染コムギ植物(品種「Passat])の生理、生態及び非生物的ストレス耐性に関するビキサフェンの影響に関して調査された。
【0067】
そのコムギ植物は10−リットルコンテナで4ヶ月間に渡って生育された。使用された基材は標準土タイプED73(Frondenberg、ドイツ)(standard earth type ED 73 (Frondenberg, Germany))+C−ホリゾン(C−Horizont)+砂(4:2:1)である。栄養分の供給は、0.2%強度フローリー2液体肥料溶液(ミュンヘン、Euflorから)(a 0.2% strength Flory 2 liquid fertilizer solution (from Euflor, Munich))を2週間に1度与えることにより行った。植物体は必要に応じて給水された。各試験構成ごとに、10反復行われた。
【0068】
ウドンコ病(powdery mildew)の感染防止のためプロキナジド(Proquinazid){Talius(登録商標)}を一度施用した。アブラムシ類及びハダニ類の発生はKarate(登録商標)、Bulldock(登録商標)及びSumicidin(登録商標)の処理によって回避された。試験において製品は連続スプレーの手順(BBCH 39及び59)によって植物に施用された。そのスプレー量は1ヘクタールあたり300Lの水溶液であった。
【表7】

【0069】
続いて、植物発育及び植物生理を記録するために非破壊的及び破壊的方法が採用された。加えて、形態学的パラメータ及び収量に対応するパラメーターが記録された。
【0070】
例2の結果:
葉面積における緑着色の持続は、緑葉面積の割合の通常の視覚的採点法によって記録された。
【0071】
試験によりコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤ビキサフェンはコムギ植物の緑葉面積の持続に関して顕著な効果があることが示された。
【表8】

【表9】

【表10】

【0072】
収量に対応する付加的な因子であって記録されたものは、穀粒の収量、千粒重、穂/コンテナの数、及び穀粒/穂の数(参照テーブル17)であった。
【0073】
コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤ビキサフェンは、他の比較殺菌剤より、高い収量、高い穀粒/穂の数、高い千粒重及び低い麦わらの割合をもたらすことが見出された。ビキサフェンは高い収穫収量を示し、それは収穫された部分の植物の使用に適さない部分に対する比率(技術用語でハーベストインッデックスという)として明示される。
【表11】

【0074】
加えて、測定された形態学的パラメーターは全長と全幅、すなわち止葉の大きさであった。これについては他の比較殺菌剤と比較して、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤ビキサフェンが最も大きかった。
【表12】

【0075】
加えて、コムギの出穂時期に関する殺菌剤処理の効果についても評価された。ビキサフェンを使用することにより、出穂の時期がより均一化することが見出された。スポットライト下にある植物は出穂期間に頻繁にフザリウム(Fusarium)病原体に感染するので、この時点の、より均一な出穂はフザリウムを標的とした防除が可能となる。
【0076】
【表13】

【0077】
下記テーブル12における結果から、少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤が改善された蒸散率、それゆえの改善された蒸発冷却を示すことが説明される。
【表14】

【0078】
下記テーブル13に示されているように、コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤を使用することによりイネ科植物類から選択された植物の増大された光合成率の達成が可能である。
【表15】

【実施例3】
【0079】
例3:
葉面積に関するビキサフェンの効果−ビキサフェンの一回及び二回処理の比較
試験手順:コムギ植物は異なった発育ステージにおいてビキサフェンにより一度また二度(それぞれ125g/ha)処理され、止葉及び葉F−1のBBCH75における対応する大きさが測定された。破壊計測法のために、葉は植物から分離された。非破壊計測は無損傷の葉において行われた。
【表16】

【表17】

【表18】

【0080】
例4:
【表19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科植物類(Poaceae)から選択される植物種の生物量を増大させる少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤の使用。
【請求項2】
イネ科植物類(Poaceae)から選択される植物種の止葉、葉F1及び/又は葉F2の生物量を増大させる請求項1に記載の使用。
【請求項3】
イネ科植物類(Poaceae)から選択される植物種の止葉の生物量を増大させるる請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
植物種の発育ステージBBCH17から70における請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
少なくとも一のコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤が植物種の発育中に2回以上施用され、一度目の施用が植物種の育成ステージBBCH17から42の時期に行われ、二回目の施用が生育ステージBBCH43から70の時期に行われる、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
穂、禾穀類の穀粒及び/又は穂毎の禾穀類の穀粒の生物量を増大させるための請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
植物の生理的状態を同時に改善するための請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
植物の緑葉面積の維持を長引かせるための請求項7に記載の使用。
【請求項9】
植物の光合成率を増大させるための請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
植物の葉緑素含有量を増大させるため及び/又は葉緑素含有量を安定化させるための請求項7から9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
植物の老化を遅らせるための請求項7から10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
非生物的ストレス因子に対する植物の抵抗性及び耐性を改善するための請求項7から11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤が、フルオピラム(fluopyram)、ペンフルフェン(penflufen)、ビキサフェン(bixafen)、セダキサン(sedaxane)、イソピラザム(isopyrazam)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、ボスカリド(boscalid)、フルキサピラキサダ(fluxapyraxad)及びN−[1−(2,4−ジクロロフェニル)−1−メトキシプロパン−2−イル]−3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミドからなる群から選ばれる、請求項1から12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
ビキサフェンがコハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤として使用され、かつ、スピロキサム、フルオキサストロビン及びプロチオコナゾールからなる群から選択される少なくとも一の他の活性成分との組み合わせで使用される、請求項1から13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
コハク酸脱水酵素(SDH)阻害剤を用量0.01から3Kg/haで施用されることを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
適切な対象作物がコムギ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、キビ(millet)、トウモロコシ、イネ、ライコムギ(triticale)、タケ及びサトウキビからなるイネ科植物群から選択されることを特徴とする、請求項1から15のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2013−518847(P2013−518847A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551601(P2012−551601)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051424
【国際公開番号】WO2011/095496
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512151078)バイエル・インテレクチユアル・プロパテイー・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【Fターム(参考)】