説明

イメージング部材を形成するための方法

【課題】ペーパーエッジゴーストに対してロバスト性を有するイメージング部材を形成するための方法を提供する。
【解決手段】モールドの1つの面上に、周期的に並べられた突起または凹みのアレイを備えるパターンを有するモールドを、インプリンティングのために提供する工程と、基材と、前記基材上に配置された、インプリントされる柔らかい外層コーティングと、を備えるイメージング部材を提供する工程と、前記モールドの前記パターニングされた面と前記イメージング部材の前記外層コーティングを、前記モールドの前記パターン構造が前記外層コーティング上に複製されるように、共にプレスする工程と、前記外層コーティングを硬化させ、前記イメージング部材の外表面上にパターニングされた構造を形成させる工程と、を含む、外層内にパターニングされた表面を有するイメージング部材を形成するための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで開示した実施形態は、一般に、デジタルを含む電子写真装置において使用するための、イメージング装置部材および構成要素において有用な層に関する。より詳細には、実施形態は、クリーニングブレードとの摩擦を低下させ、印刷品質および性能を改善するためにその表面内にインプリントされたnm〜μmスケールのパターンを有する外層を備える改善された電子写真イメージング部材に関する。実施形態はまた、改善された電子写真イメージング部材を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーニング障害および高トルクによる印刷欠陥は、電子写真サブシステムにおける主な問題のうちのいくつかであり、典型的には低摩耗性のオーバーコートされたフォトレセプタが使用される場合に観察される。転写ステーションからの正帯電応力(positive charge stress)がペーパーエッジゴースト(PEG)と関連する。より一般的にはフォトレセプタの異なる領域が異なる応力を受けた場合、それらの領域におけるフォトレセプタの性能の変化に特徴づけられるエージング差(differential aging)効果が生じる。そのような性能変化は、フォトレセプタの光誘起除電曲線(PIDC)を測定することにより特徴づけることができる。現場でPEGに直面した場合の典型的な対抗手段は、フォトレセプタを交換することであるので、エージング差、例えばPEGに対してロバスト性であるフォトレセプタ設計を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,387,980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ペーパーエッジゴーストに対してロバスト性を有するイメージング部材を形成するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モールドの1つの面上に、周期的に並べられた突起または凹みのアレイを備えるパターンを有するモールドを、インプリンティングのために提供する工程と、基材と、前記基材上に配置された、インプリントされる柔らかい外層コーティングと、を備えるイメージング部材を提供する工程と、前記モールドの前記パターニングされた面と前記イメージング部材の前記外層コーティングを、前記モールドの前記パターン構造が前記外層コーティング上に複製されるように、共にプレスする工程と、前記外層コーティングを硬化させ、前記イメージング部材の外表面上にパターニングされた構造を形成させる工程と、を含む、外層内にパターニングされた表面を有するイメージング部材を形成するための方法である。
【0006】
また、前記方法において、前記モールド上の前記凹みまたは突起は、円形、棒、卵形、正方形、三角形、多角形、それらの混合物からなる群より選択される規則的な形状を有することが好ましい。
【0007】
また、前記方法において、前記凹みおよび突起の各々は、5nmから200μmまでの周囲を有することが好ましい。
【0008】
また、前記方法において、前記凹みは5nmから5μmまでの深さを有し、前記突起は5nmから5μmまでの高さを有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態によるドラム構造のイメージング部材の断面図である。
【図2】本実施形態によるベルト構造のイメージング部材の断面図である。
【図3】本実施形態によるイメージング部材を製造するための工程を示す図である。
【図4】本実施形態により製造したイメージング部材におけるトルク減少を示すグラフである。
【図5】本実施形態により製造したイメージング部材におけるペーパーエッジゴースト(paper edge ghost)(PEG)の減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記論考は負に帯電したシステムに対処したものであるが、本開示のイメージング部材は正に帯電したシステムにおいて使用してもよい。
【0011】
図1はドラム構造を有する多層電子写真イメージング部材の例示的な実施形態である。図示されるように、例示的なイメージング部材は、剛性支持基材10と、導電性接地板12と、アンダーコート層14と、電荷発生層18と、電荷輸送層20と、を含む。剛性基材は、金属、金属合金、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、それらの混合物からなる群より選択される材料から構成されてもよい。電荷発生層18と電荷輸送層20とは、ここでは2つの別個の層として記載されるイメージング層を形成する。図面で示したものの代替案では、電荷発生層はまた、電荷輸送層の上面に配置してもよい。これらの層の機能的構成要素を、代わりに、結合させて単一の層としてもよいことは認識されるであろう。
【0012】
図2は実施形態によるベルト構造を有するイメージング部材を示す。図示されるように、ベルト構造には、カール防止バックコーティング1と、支持基材10と、導電性接地板12と、アンダーコート層14と、接着層16と、電荷発生層18と、電荷輸送層20とが設けられる。必要に応じて用いられるオーバーコート層32およびグランドストリップ19もまた含有させてもよい。
【0013】
本実施形態では、前記の問題に対処する1つの方法は、フォトレセプタ上に独特の表面形態を付与することであることが発見されている。例えば、機械的研磨により作製された粗い表面を有するオーバーコートされたフォトレセプタを使用すると、クリーニングブレードとフォトレセプタとの間の滑らかな相互作用を助ける表面が提供され、ブレードの損傷および不均一なフォトレセプタの摩耗が最小に抑えられる。印刷が続くにつれ、フォトレセプタはその天然の粗い表面を生成し、その結果、初期表面構造が摩耗されてしまった後であっても、クリーニングブレードとの良好な相互作用を維持する。ベルトフォトレセプタ用途に関しては、研磨したフォトレセプタベルトは低いゴーストレベルを示ことも以前に証明されている。しかしながら、機械的研磨により所望の表面を作製するには、さらなる時間が必要で、経費がかかり、表面形態の制御に欠ける繰返しプロセスが必要とされる。
【0014】
本実施形態は、ミクロ/ナノインプリンティング法を使用することにより、nm〜μmスケールで表面構造化された外層を含む電子写真フォトレセプタを提供する。実施形態では、インプリントされた外層はオーバーコートまたは電荷輸送層とすることができる。インプリンティングにより、表面がむら、隆起、または畝により特徴づけられ、滑らかでなくなるように粗化された、均一な粗面が外層に提供される。さらに、粗さは、外層の表面全体にわたって、程度が均質であり、または規則的であり、均等である。このインプリントされた表面は、クリーニングブレードとのより低い摩擦、このため、改善された印刷品質、およびより滑らかな相互作用を提供し、ブレードの損傷が最小に抑えられる。インプリントされた表面はまた、電子写真フォトレセプタのぺーパーエッジゴースト(帯電応力サイクリング)を低減させる。正帯電応力サイクリングに供せされると、表面はより低いエージング差を提供する。このように、制御されたフォトレセプタ形態により、顧客交換ユニット(CRU)寿命の延長を助けることが期待される。
【0015】
ミクロ/ナノインプリンティング法は、外層表面に均質に周期的で広いパターンを与えることができる。可撓性モールドの設計によっては、表面形態を制御することができ、改善されたシステム相互作用、例えば、低減されたトルク、最小化されたブレード損傷および最小化された非均一フォトレセプタ摩耗に対し、「設計された粗」面が得られる。この開示では、nmまたはμmスケールのインプリントされた表面パターンを有する外層を使用するフォトレセプタは改善されたPEG挙動を示すことも示される。本実施形態は、インプリンティングのためのモールドを提供する工程と、インプリントするための外層コーティングを提供する工程と、モールドを外層コーティング上に配置しモールドと外層コーティングが架橋するまで接触させる工程と、その後、モールドを外層コーティングから除去し、nmまたはμmスケールでインプリントされた表面パターンを備える外層を形成させる工程と、を含むフォトレセプタ外層を形成するための方法を提供する。実施形態では、モールドは、nmまたはμmスケールのパターンを基材上に印刷して、マスターパターンを生成させ、可撓性材料をマスターパターン上で硬化させモールドを形成させることにより作製される。
【0016】
開示した方法では、マスターパターンのために使用される基材は、任意の適した基材、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ケイ素、ガラス、マイラー(MYLAR)、プラスチック、それらの混合物などを含んでもよい。さらに、可撓性材料は、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエステル、フルオロシリコーン、およびそれらの混合物、などを含んでもよい。実施形態では、フォトレセプタ上で形成される外層コーティングは、実施形態では、有機フィルムおよび架橋剤、例えば、アミノ樹脂、ゾル−ゲルシロキサン、メラミン樹脂、など、およびそれらの混合物を含む。
【0017】
特に、可撓性モールドおよびミクロ/ナノインプリンティングのための作製工程、該工程に対応する走査電子顕微鏡(SEM)像を図3に示す。モールドはnmまたはμmスケールのパターンを基材、例えば、ポリエチレンテレフタレート上にインクジェット印刷し、フォトマスクマスターパターンを形成することにより作製される(工程5)。可撓性材料、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)材料をその後、マスターパターン上に硬化させモールドを形成させる(工程10)。フォトマスクマスターパターンを除去した後、可撓性モールドを使用して外層コーティング上に配置し(工程15)−最初に半架橋(工程20)、および最終的には完全架橋(工程25)−その後、可撓性モールドと外層コーティングを完全に接触させる。その後、モールドを除去すると、nmまたはμmスケールでインプリントされた表面パターンを有する外層が得られる(工程30)。
【0018】
1つの実施形態では、モールドの1つの面上に、周期的に並べられた突起または凹みのアレイを備えるパターンを有するモールドを、インプリンティングのために提供する工程と、基材と、基材上に配置され、インプリントされる柔らかい外層コーティングと、を備えるイメージング部材を提供する工程と、モールドのパターニングされた面とイメージング部材の外層コーティングを、モールドのパターン構造が外層コーティング上に複製されるように、共にプレスする工程と、外層コーティングを硬化させ、イメージング部材の表面上にパターニングされた構造を形成させる工程と、を含む、外層内にパターニングされた表面を有するイメージング部材を形成するための方法が提供される。硬化工程は、熱乾燥、熱硬化、光誘起硬化、電子ビーム硬化、およびそれらの混合法からなる群より選択されるプロセスにより実現される。
【0019】
特定の実施形態では、イメージング部材の外層コーティングは、電荷輸送成分と、ポリマバインダと、を含む。そのような実施形態では、電荷輸送成分は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’−ジアミン、およびN,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’−ジアミン、およびそれらの混合物からなる群より選択される第三級アリールアミンを含む。
【0020】
さらに、実施形態では、外層コーティングは、電荷輸送成分と硬化剤とを有する硬化性組成物を含む。硬化剤は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、イソシアレート(isocyalate)またはマスキングイソシアレート化合物、アクリレート樹脂、ポリオール樹脂、またはそれらの混合物からなる群より選択してもよい。
【0021】
1つの実施形態では、外層は、電荷輸送成分をさらに有する架橋組成物を含むオーバーコート層である。実施形態では、架橋組成物は、ヒドロキシル、ヒドロキシメチル、アルコキシメチル、1から約15の炭素を有するヒドロキシアルキル、アクリレート、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの硬化性官能基を有する第三級アリールアミンをさらに含む電荷輸送成分の硬化および重合の結果物である。
【0022】
実施形態では、モールドはポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエステル、フルオロ−シリコーン、およびそれらの混合物からなる群より選択されるものなどの弾性材料を含んでもよい。モールドはさらに、実施形態では、パターン層を支持するための基材を含んでもよく、基材は、金属、ポリマ、ガラス、セラミック、および木材からなる群より選択される材料から作製される。実施形態では、インプリンティング前にモールドに離型剤を適用する別の工程を包含させてもよい。離型剤は、低表面エネルギ材料を含んでもよい。
【0023】
特定の実施形態では、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、およびアルキルヒドロキシガリウムフタロシアニンとヒドロキシガリウムフタロシアニンの混合物、およびペリレン、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される感光性顔料を含む電荷発生層が基材と外層コーティングとの間に配置されるようなイメージング部材が提供される。この場合、前記基材は円筒、ドラム、またはベルト構造である。
【0024】
別の実施形態では、表面パターンは特定の形状および寸法を含んでもよい。例えば、表面パターン設計は、円形、棒、正方形、三角形、多角形、それらの混合物などを含んでもよい。寸法は、数nmから数千μmまでのスケールとしてもよい。実施形態では、表面パターンは約5nmから約5μmまで、または約10nmから約5μmまで、または約50nmから約5μmまで、または約100nmから約2μmまでの深さを有する凹みアレイを含んでもよい。別の実施形態では、凹みはそれぞれ、約5nmから約200μmの周囲を有する。凹みは、円形、棒、正方形、三角形、多角形、それらの混合物などの形状であってもよい。凹みアレイは外層の表面上に規則的に配置される。これらの表面パターンは、帯電応力サイクルプロセス(process of charge stress cycling)中、外層と帯電排出物との間の空気リザーバまたはギャップとして機能し、PEGを減少させるのを助ける。別の実施形態では、表面パターンは1つまたは複数の凹みを含み、さらに、外層の表面全体に均一に配置された凹みアレイを含んでもよい。凹みは特定の寸法を含んでもよい。例えば、1つの実施形態では、凹みアレイは、約5nmから約100μmまで、または約10nmから約100μmまでの直径を有する。別の実施形態では、凹みアレイは、約5nmから約500μm、または約10nmから約100μmの中心−中心距離を有する。表面パターンは、フォトレセプタの外層の表面全体に均一に分散されたパターン中、互いに等距離にあり、フォトレセプタの表面上で均一な粗化パターンを形成する凹みを含んでもよい。
【0025】
さらに、表面パターンは突起または隆起のアレイを含んでもよい。これらの隆起は同様に、円形、棒、正方形、三角形、多角形、それらの混合物などの形状であってもよい。寸法は、上記凹みで記載したものと同じままであるが、深さ寸法は高さ寸法に逆転される。このように、突起は約5nmから約5μmまで、または約10nmから約5μmまで、または約50nmから約5μmまで、または約100nmから約2μmまでの高さを有してもよい。突起を製造するための方法は同様に、凹みで記載したものと同じ工程を含むが、マスターパターンおよびモールドの形状(例えば、凹対凸)はそれに応じて逆転される。
【0026】
別の実施形態では、上記のようなイメージング部材と、イメージング部材に静電荷を適用する帯電ユニットと、トナー像をイメージング部材上に現像させる現像ユニットと、トナー像をイメージング部材から媒体に転写する転写ユニットと、イメージング部材を清浄にするクリーニングユニットと、を備える画像形成装置が提供される。そのような実施形態では、凹みまたは突起は約0.1μmから約5μmまでの深さまたは高さを有してもよく、凹みまたは突起のアレイはそれぞれ、約0.1μmから約200μmまでの周囲を有してもよい。別の実施形態では、凹みまたは突起のアレイはさらに、約0.5μmから約200μmまでの中心−中心距離を有してもよい。実施形態では、画像形成装置のクリーニングユニットは、弾性ポリマから構成されるブレード型のクリーナを備えてもよい。
【0027】
<オーバーコート層>
イメージング部材の他の層としては、例えば、必要に応じて用いられるオーバーコート層32が挙げられる。必要に応じて用いられるオーバーコート層32は、所望であれば、電荷輸送層20上に配置されてもよく、イメージング部材表面保護が提供され、ならびに耐摩耗性が改善される。実施形態では、オーバーコート層32は約0.1μmから約25μmまでの範囲の厚さを有してもよい。これらのオーバーコート層は電荷輸送成分および必要に応じて用いられる有機ポリマ類または無機ポリマ類を含んでもよい。
【0028】
実施形態では、オーバーコート層は、電荷輸送成分を含んでもよい。特定の実施形態では、オーバーコート層は、自己架橋またはポリマ樹脂と反応して硬化組成物を形成することができる置換基を含む第三級アリールアミンを含む電荷輸送成分を含む。オーバーコート層に適した電荷輸送成分の特定の例は、下記一般式を有する第三級アリールアミンを含む。
【0029】
【化1】


(式において、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立して、約6から約30の炭素原子を有するアリール基を示し、Arは約6から約30の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を示し、kは0または1を示し、ここで、Ar、Ar、Ar、Ar、およびArの少なくとも1つは、ヒドロキシル(−OH)、ヒドロキシメチル(−CHOH)、アルコキシメチル(−CHOR、式において、Rは1から約10の炭素を有するアルキルである)、1から約15または1から約10の炭素を有するヒドロキシアルキル、およびそれらの混合物からなる群より選択される置換基を含む)。別の実施形態では、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立して、フェニルおよび置換フェニル基を示し、Arはビフェニルまたはテルフェニル基を示す。
【0030】
第三級アリールアミンを含む電荷輸送成分の追加の例としては、下記などが挙げられる。
【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
【化4】


(式において、Rは、水素原子、1から約6の炭素を有するアルキルからなる群より選択される置換基であり、mおよびnはそれぞれ独立して、0または1を示し、ここで、m+m>1である)。
【0034】
特定の実施形態では、オーバーコート層は硬化オーバーコート組成物を形成するための追加の硬化剤を含んでもよい。硬化剤の例示的な例は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、イソシアレートまたはマスキングイソシアレート化合物、アクリレート樹脂、ポリオール樹脂、またはそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0035】
特定の実施形態では、オーバーコート層はその表面上にnm〜μmスケールのパターンがインプリントされている。インプリントされた表面は多くの予想外の利益、例えば、クリーニングブレードとのより低い摩擦、改善された印刷品質およびブレード損傷を最小に抑えるより滑らかな相互作用、および、結果として、より長い耐用年数を提供する。
【0036】
このように、本実施形態は、基材と、基材上に配置されたイメージング層と、イメージング層上に配置されたオーバーコート層と、を備え、オーバーコート層はnm〜μmスケールでインプリントされた表面パターンを含む、イメージング部材を提供する。表面パターンは特定の形状および寸法を含んでもよい。例えば、表面パターンは円形、棒、正方形、三角形、卵形、多角形、それらの混合物などを含んでもよい。1つの実施形態では、表面パターンは1つまたは複数の凹みを含んでもよい。実施形態では、表面パターンは約5nmから約5μmまで、または約10nmから約5μmまで、または約50nmから約5μmまで、または約100nmから約2μmまでの深さを有する凹みアレイを含んでもよい。実施形態では、表面パターンは約5nmから約100μmまで、または約10nmから約100μmまでの直径を有する凹みアレイを含む。別の実施形態では、凹みアレイは約5nmから約500μm、または約10nmから約100μmの中心−中心距離を有する。表面パターンは、フォトレセプタのオーバーコート層の表面全体に均一に分散されたパターン中、互いに等距離にあり、フォトレセプタの表面上で均一な粗化パターンを形成する凹みを含んでもよい。凹みは円形、棒、正方形、三角形、多角形、それらの混合物などの形状であってもよい。代わりのパターンは、周期または非周期穴アレイ、二次元六方晶パターン、長方形パターンアレイ、準結晶パターンアレイ、または直線パターンアレイが挙げられる。
【0037】
本実施形態は、作製されたモールドを使用してインプリントされた表面パターンを有するオーバーコート層を形成する工程を含む方法により製造される。例えば、本実施形態は、インプリントするためのモールドを提供する工程であって、モールドは、nm〜μmスケールのパターンを基材上に印刷することによりマスターパターンを生成させ、可撓性材料をマスターパターン上で硬化させモールドを形成させることにより作成される工程と、インプリントされるためのオーバーコート層コーティングを提供する工程と、モールドをオーバーコート層コーティング上に配置し、モールドとオーバーコート層コーティングが架橋されるまで接触させる工程と、モールドをオーバーコート層コーティングから除去し、nm〜μmスケールでインプリントされた表面パターンを含むオーバーコートが形成させる工程と、を含む、フォトレセプタオーバーコートを形成するための方法を提供する。この方法により製造されたイメージング部材はトルクの減少を示すことが発見された。例えば、表面パターンを有するオーバーコート層を備えるイメージング部材は、表面パターンを有さないオーバーコート層を備えるイメージング部材と比べ、約10%から約90%のトルクの減少を示す。特定の実施形態は、表面パターンを有さないオーバーコート層を備えるイメージング部材と比べ、約40%のトルクの減少を示す。
【0038】
<電荷輸送層>
ドラムフォトレセプタでは、電荷輸送層は同じ組成の単一層を含む。そのようなものとして、電荷輸送層20は単一層の観点で具体的に記載するが、詳細はまた、電荷輸送二重層を有する実施形態にも適用可能である。電荷輸送層20はその後、電荷発生層18上に適用され、光発生したホールまたは電子の電荷発生層18からの注入を支持することができ、これらのホール/電子の電荷輸送層を通る輸送を可能にし、イメージング部材表面上の表面電荷を選択的に除電させる、任意の適した透明な有機ポリマまたは非ポリマ材料を含んでもよい。1つの実施形態では、電荷輸送層20はホールを輸送するように機能するだけでなく、電荷発生層18を摩耗または化学的攻撃から保護し、そのため、イメージング部材の耐用年数を延長させることができる。電荷輸送層20は、実質的に非光導電性材料とすることができるが、光発生されたホールの電荷発生層18からの注入を支持するものとすることができる。
【0039】
電荷輸送層20は、露光が実施された場合、確実に入射放射線のほとんどが下にある電荷発生層18に使用されるように、電子写真イメージング部材が使用される波長領域において普通、透明である。電荷輸送層は、電子写真で使用される光の波長、例えば、400から900nmに露光された場合、光吸収がごくわずかで、電荷発生がなく、優れた光透過性を示すべきである。フォトレセプタが透明な支持基材10と、透明な、または部分的に透明な導電層12とを用いて調製される場合、支持基材10を通して、全ての光を基材の裏側を通過させ、画像様露光または消去を達成することができる。この場合、電荷輸送層20の材料は、電荷発生層18が基材と電荷輸送層20との間に挟まれている場合、使用波長領域内の光を透過させる必要はない。電荷輸送層20は電荷発生層18と併せて、電荷輸送層上に配置された静電荷が照射なしでは伝導されない程度まで絶縁物である。電荷輸送層20は、除電プロセス中に、電荷がそれを通る時に最小の電荷を捕捉するべきである。
【0040】
電荷輸送層20は、固溶体を形成するように、電気的に不活性なポリマ材料、例えば、ポリカーボネートバインダ中に溶解される、または分子分散される添加物として有用な任意の適した電荷輸送成分または活性化化合物を含んでもよく、これによりこの材料が電気的に活性となる。「溶解された」という用語は、例えば、小分子がポリマ中に溶解され均質な相を形成している溶液を形成することを示し、実施形態では、分子分散されたという用語は、例えば、ポリマ中に分散された電荷輸送分子、小分子がポリマ中に分子スケールで分散されていることを示す。電荷輸送成分を、そうでなければ光発生したホールの電荷発生材料からの注入を支持することができず、これらのホールを通過させて輸送することができない膜形成ポリマ材料に添加してもよい。この添加により電気的に不活性なポリマ材料を、光発生したホールの電荷発生層18からの注入を支持することができ、それらのホールを、電荷輸送層20を通して輸送し、電荷輸送層上の表面電荷を除電させることができる材料に変換させる。高移動度電荷輸送成分は、分子間で、最終的には電荷輸送層の表面まで電荷を輸送するように協働する有機化合物の小分子を含んでもよい。例えば、N,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、トリフェニルアミンのような他のアリールアミン類、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TM−TPD)などであるが、それらに限定されない。
【0041】
多くの電荷輸送化合物を電荷輸送層中に含ませることができ、この層は一般に約5から約75μmの厚さ、より特定的には、約15から約40μmの厚さを有する。
【0042】
電荷輸送成分の例は下記式/構造のアリールアミン類:
【化5】


および
【化6】


(式において、Xはアルキル、アルコキシ、アリール、およびそれらの誘導体のような適した炭化水素、ハロゲン、またはそれらの混合物、とりわけ、ClおよびCHからなる群より選択される置換基である)、および下記式の分子である:
【化7】


および
【化8】


(式において、X、YおよびZは独立してアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはそれらの混合物であり、ここで、YおよびZの少なくとも1つが存在する)。
【0043】
アルキルおよびアルコキシは、例えば、1から約25の炭素原子、より特定的には、1から約12の炭素原子を含み、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、および対応するアルコキシド類である。アリールは6から約36の炭素原子を含むことができ、例えばフェニルなどである。ハロゲンは塩化物、臭化物、ヨウ化物およびフッ化物を含む。適したアルキル類、アルコキシ類、およびアリール類もまた、実施形態で選択することができる。
【0044】
電荷輸送層のために選択することができる特定のアリールアミン類の例としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン(ここで、アルキルはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどからなる群より選択される)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(ハロフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(ここで、ハロ置換基はクロロ置換基である)、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−テルフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−テルフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4”−ジアミン、などが挙げられる。他の公知の電荷輸送層分子を実施形態において選択してもよく、例えば、米国特許第4,921,773号および同第4,464,450号を参照されたい。これらの開示は参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0045】
電荷輸送層のために選択されるバインダ材料の例はとしては、米国特許第3,121,006号において記載されているものなどの成分が挙げられ、この開示は参照により全体が本明細書に組み入れられる。ポリマバインダ材料の特定の例としては、ポリカーボネート類、ポリアリーレート類、アクリレートポリマ類、ビニルポリマ類、セルロースポリマ類、ポリエステル類、ポリシロキサン類、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリ(シクロオレフィン類)、およびエポキシ類、ならびにそれらのランダムまたは交互コポリマ類が挙げられる。実施形態では、電荷輸送層、例えばホール輸送層は、少なくとも約10μm、または約40μm以下の厚さを有してもよい。電荷輸送層において、アリールアミン類およびバインダ材料は、約10/90から約90/10の比で存在することができる。
【0046】
例えば、改善された側方電荷移動(LCM)耐性を可能にするために、複数の電荷輸送層または少なくとも1つの電荷輸送層に必要に応じて組み入れられる成分または材料の例としては、ヒンダードフェノール酸化防止剤、ヒンダードアミン酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤などが挙げられる。電荷輸送層の少なくとも1つ中の酸化防止剤の重量%は、約0から約20、約1から約10、または約3から約8重量%である。
【0047】
電荷輸送層は、ホール輸送層上に配置された静電荷が照射なしでは、その上での静電潜像の形成および保持を阻止するのに十分な速度で伝導されない程度まで絶縁物であるべきである。電荷輸送層は、目的用途の領域の可視光または放射線を実質的には吸収しないが、電荷発生層である光導電性層からの光発生ホールの注入を可能にする、およびこれらのホールを、それ自体を通して輸送させ、活性層の表面上の表面電荷を選択的に除電させることができるという点で、電気的に「活性」である。
【0048】
さらに、ベルト構造を使用する本実施形態では、電荷輸送層は、シングルパス電荷輸送層または、同じもしくは異なる輸送分子比を有するデュアルパス電荷輸送層(または二重層電荷輸送層)から構成されてもよい。これらの実施形態では、二重層電荷輸送層は、約10μmから約40μmの総厚を有する。別の実施形態では、二重層電荷輸送層の各層は2μmから約20μmの個々の厚さを有してもよい。さらに、電荷輸送層は、電荷輸送層とオーバーコート層との界面での結晶化を阻止するために、フォトレセプタの最上層として使用されるように構成されてもよい。別の実施形態では、電荷輸送層は、第1パスと第2パス層との間の界面で起こる微結晶化を阻止するために第1パス電荷輸送層として使用されるように構成されてもよい。
【0049】
特定の実施形態では、電荷輸送層はその表面にnm〜μmスケールのパターンをインプリントされている。インプリントされた表面は多くの予想外の利益、例えば、クリーニングブレードとのより低い摩擦、改善された印刷品質およびブレード損傷を最小に抑えるより滑らかな相互作用、および、結果として、より長い耐用年数を提供する。
【0050】
このように、本実施形態は、基材と、基材上に配置された電荷発生層と、電荷発生層上に配置された電荷輸送層と、を備え、電荷輸送層はnmまたはμmスケールでインプリントされた表面パターンを含む、イメージング部材を提供する。表面パターンは特定の形状および寸法を含んでもよい。例えば、表面パターンは、円形、棒、正方形、三角形、多角形、それらの混合物などを含んでもよい。1つの実施形態では、表面パターンは1つまたはそれ以上の凹みを含んでもよい。実施形態では、表面パターンは、約5nmから約5μmまで、または約10nmから約5μmまで、または約50nmから約5μmまで、または約100nmから約2μmまでの深さを有する凹みアレイを含んでもよい。実施形態では、表面パターンは、約5nmから約100μmまで、または約10nmから約100μmまでの直径を有する凹みアレイを含む。別の実施形態では、凹みアレイは、約5nmから約500μm、または約10nmから約100μmの中心−中心距離を有する。
【0051】
表面パターンは、フォトレセプタの電荷輸送層の表面全体に均一に分散されたパターン中、互いに等距離にあり、フォトレセプタの表面上で均一な粗化パターンを形成する凹みを含んでもよい。凹みは、円形、棒、正方形、三角形、多角形、それらの混合物などの形状であってもよい。
【0052】
本実施形態は、作製したモールドを使用してインプリントさせた表面パターンを有する電荷輸送層を形成する工程を含む方法により製造される。例えば、本実施形態は、インプリントするためのモールドを提供する工程であって、モールドはnmまたはμmスケールのパターンを基材上に印刷し、マスターパターンを生成させ、可撓性材料をマスターパターン上で硬化させモールドを形成させることにより作製される工程と、インプリントさせるために電荷輸送層コーティングを提供する工程と、モールドを電荷輸送層コーティング上に配置しモールドと電荷輸送層コーティングが架橋されるまで接触させる工程と、モールドを電荷輸送層コーティングから除去し、nm〜μmスケールでインプリントされた表面パターンを含む電荷輸送層を形成させる工程と、を含む、フォトレセプタ電荷輸送層を形成するための方法を提供する。
【0053】
任意の適した、従来の技術を使用して、電荷輸送層混合物を形成し、その後それを支持基材層に適用してもよい。電荷輸送層は単一コーティング工程、または複数のコーティング工程で形成されてもよい。浸漬コーティング、リングコーティング、噴霧、グラビアまたは任意の他のドラムコーティング法を使用してもよい。
【0054】
堆積させたコーティングの乾燥は、任意の適した従来技術、例えば、オーブン乾燥、赤外線照射乾燥、空気乾燥などにより実施してもよい。乾燥後の電荷輸送層の厚さは、最適な光電および機械的結果のためには、約10μmから約40μmまで、または約12μmから約36μmまでである。
【実施例】
【0055】
<実施例1>
[モールドの作製]
フォトリソグラフィによりシリコンウエハ上でマスターパターンを作製するために、透明基材上でドットインクジェットプリンタを用いてフォトマスクを作製した。印刷されたドットパターンは凹みアレイを含み、この場合、各凹みの直径は40μmであり、凹み間の中心−中心距離は100μmであった。最初にSU−8樹脂(マイクロケム(MicroChem)、マサチューセッツ州ニュートンから入手可能)をシリコンウエハ上にスピンコートした。SU−8膜を65度(degree)で30分間露光前加熱した。ドット印刷された透明フォトマスクをSU−8膜上に接触させ、3分間100mW UV光(325nm)に露光させた。その後、SU−8膜を65度で30分間露光後加熱した。SU−8膜をSU−8現像溶媒でウエットエッチし、続いてイソプロパノールで洗浄し、マスターパターンを達成した。マスターパターン上に可撓性ポリジメチルシロキサン(PDMS)材料を硬化させることによりマスターパターンを複製させた。形成させたモールドはマスターパターンの凹みに対応する突起アレイを含んだ。可撓性モールドの各突起は10μmの高さを有した。複製させた可撓性PDMSモールドを、オーバーコート層の上面で直接インプリントするために使用した。オーバーコート層の上面で得られた凹みは1μmの深さを有した。1μmの深さは、実際の印刷プロセス中インクスミアを生じさせないのに合理的である。しかしながら、上記のように、マスターパターンまたはモールドの設計は様々な形状、例えば、円形、棒、正方形、卵形、三角形、多角形、それらの混合物など、ならびに様々な寸法を含んでもよい。
【0056】
[パターニングされたオーバーコート層を備える円筒/ドラム型フォトレセプタの作製]
電子写真フォトレセプタを下記様式で作製した。100部のジルコニウム化合物(商標名:オルガティクス(Orgatics)ZC540)と、10部のシラン化合物(商標名:A110、日本ユニカー株式会社製)と、400部のイソプロパノール溶液と、200部のブタノールとを含む、アンダーコート層のためのコーティング溶液を調製した。コーティング溶液を、ホーニング処理に供した円筒アルミニウム(Al)基材上に浸漬コーティングにより適用し、150℃で10分間加熱することにより乾燥させ、0.1μmの膜厚を有するアンダーコート層を形成させた。
【0057】
0.5μmの厚さの電荷発生層をその後、アンダーコート層の上面に、475部のn−ブチルアセテート中に分散させた、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン(12部)と、アルキルヒドロキシガリウムフタロシアニン(3部)と、ダウケミカル(Dow Chemical)から入手可能な塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマ、VMCH(Mn=27,000、約86重量%の塩化ビニルと、約13重量%の酢酸ビニルと、約1重量%のマレイン酸)(10部)との分散物から浸漬コートさせた。
【0058】
その後、25μmの厚さの電荷輸送層(CTL)を、電荷発生層の上面に、546部のテトラヒドロフラン(THF)と234部のモノクロロベンゼンの混合物中に溶解させた、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(82.3部)と、2.1部のアルドリッチからの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)と、ポリカーボネート、三菱ガス化学株式会社から入手可能なPCZ−400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン)、Mw=40,000](123.5部)の溶液から浸漬コートさせた。CTLを115℃で60分間乾燥させた。
【0059】
オーバーコート調合物を、1−メトキシ−2−プロパノール(20.9部)の溶媒に溶解した、アクリルポリオール(1.5部、ジョンクリル(JONCRYL)−587、米国ウィスコンシン州スターテバントのジョンソンポリマーズ(Johonson Polymers)LLCから入手可能)と、メラミン樹脂(2.1部、米国ニュージャージー州ウエストパターソンのサイテックインダストリーズ社(Cytec Industries,Inc.)から入手可能なサイメル(CYMEL)−303)と、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(THM−TBD)(1.16部)/N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−ヒドロキシフェニル)−テルフェニル−ジアミン(DHTER)(1.93部)の電荷輸送成分と、酸触媒(0.05部、キングケミカルインダストリーズ(King Chemical Industries)から入手可能なナキュア(Nacure)5225)との混合物から調製した。溶液をフォトレセプタ表面上、より詳細には電荷輸送層上に、カップコーティング技術を用いて適用し、続いて、可撓性モールドを用いてミクロ/ナノインプリンティングを実施した。オーバーコート材料が乾燥する前の可能なインプリンティング時間ウインドウは約3分であった。最後に、140℃で40分間熱硬化を実施し、約6μmの平均膜厚を有するインプリントされたオーバーコート層を形成させた。証明および比較実験のために、各ドラムを2度、ある幅、例えば4cm幅および5cm幅で、2つのインプリント幅間にインプリントしていない基準幅を有するようにインプリントさせた。工学観点から、ミクロ/ナノインプリンティングは効果的なロール−トゥ−ロールプロセスにより実行することができる。
【0060】
<比較例>
パターンを含まないオーバーコートを有する電子写真フォトレセプタを、オーバーコート層の調製においてパターンをインプリントしないことを除き、実施例1で記載したものと同様の様式で作製した。
【0061】
[電子写真フォトレセプタ性能の評価]
電子写真感度および短期間サイクル安定性などの、上記で調製した電子写真フォトレセプタの電気性能特性をスキャナにおいて試験した。スキャナは当業界において公知であり、電気的に帯電および除電させながらドラムを回転させる手段が取り付けられている。光導電体サンプル上の電荷を、装置の周囲の周りの的確な位置に配置された静電プローブを用いることによりモニタする。フォトレセプタを500ボルトの負電位に帯電させる。装置が回転するにつれ、初期帯電電位を電圧プローブ1により測定する。光導電体サンプルをその後、公知の強度の単色光を露光させ、表面電位を電圧プローブ2および3により測定する。最後に、サンプルに適当な強度および波長の消去ランプを露光させ、電圧プローブ4により全ての残留電位を測定する。プロセスを、スキャナのコンピュータの制御下で繰り返し、データをコンピュータに保存する。電圧プローブ2および3での電位を光エネルギの関数としてプロットすることによりPIDC(光誘起除電曲線)が得られる。実施例1および2において調製したフォトレセプタは全て、対照または比較例装置と同様のPIDC特性を示した。表1における試験結果は、インプリントしたサンプルの電気的性能がインプリントしていない参照サンプルとほとんど同じであることを証明している。
【0062】
【表1】

【0063】
[トルク測定]
オーバーコートを有さない対照ドラム、パターニングされていないオーバーコートを有するドラム、2つのインプリントされたドラムに対し測定を実施した。複数の測定を行い、平均した。図4に示した結果により、ミクロ/ナノインプリントされたドラムは、パターニングされていないオーバーコートドラムよりも低いトルクを示したことが明確に示される。より広い(5cm幅)領域がインプリントされたドラムは、パターニングされていないオーバーコートドラムに比べ40%のトルク減少を示す。
【0064】
マスターパターンに対する特別な表面パターンのパターンおよびサイズの設計についての将来の最適化が、最大トルク減少のために可能である。初期の印刷試験では、対照と同様の良好なベタ領域、ハーフトーンおよび直線再現が示された。周期的なインプリントパターンの存在に対し、主な印刷欠陥は起こらなかった。
【0065】
要約すれば、本発明は、フォトレセプタ表面の「周期的にパターニングされた」表面形態により、トルクの減少を可能にするオーバーコート表面のミクロ/ナノインプリンティングを記載する。ミクロ/ナノインプリンティング法は簡単で、再利用可能なモールドを用いて再現可能であり、フォトレセプタ表面の上面で均質に制御する、およびフォトレセプタ表面の摩耗サイクル中形態を誘導するのに重要である。
【0066】
<実施例2>
[パターニングされたCTL層を有するベルト型フォトレセプタの作製]
下記手順にしたがい、イメージングまたは光導電性部材を調製した。金属化マイラー基材を提供し、HOGaPc/ポリ(ビスフェノール−Zカーボネート)光発生層を基材上に機械コートさせた。光発生層を、琥珀ガラス瓶に約50重量%のN,N’−(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、5重量%の酸化防止剤と、45重量%のマクロロン(MAKROLON)5705、約50,000から約100,000の分子量平均を有し、ファーベンファブリケンバイエル(Farbenfabriken Bayer)A.G.から市販されている、公知のポリカーボネート樹脂とを導入することにより調製した電荷輸送層でコートした。得られた混合物をその後、塩化メチレンに溶解し、15重量%の固体を含む溶液を形成させた。この溶液を光発生層に適用し、層コーティングを形成させ、その後、フォトリソグラフィによりマスターパターンから複製されたPDMSモールドを用いて被覆およびインプリントさせた。中程度の圧力でプレスすることにより、表面パターンをCTL上にインプリントした。CTLの最終硬化(120℃で1分間)後、凹みアレイの表面パターンが永久にCTL上に残った。穴の深さは1μmであり、直径は40μmであった。このコーティングおよびインプリンティングプロセス中、湿度は約15%以下であった。
【0067】
<比較例>
パターンを含まないCTLを有する電子写真フォトレセプタを、CTL層の調製においてパターンをインプリントしなかったことを除き、実施例2で記載したのと同様の様式で作製した。
【0068】
[電子写真フォトレセプタ性能の評価]
2組のサンプル、1つの対照サンプル(パターンなし)および1つのパターニングされたサンプルを調製した。サンプルを3つの等しいサイズのストリップに切断し、ドラムスキャナ内での同時評価のために84mm(未コート)ドラム上に6×構成で載置した。対照はa、bおよびcストリップにより表され、パターニングされたサンプルはd、eおよびfストリップにより表された。
【0069】
再現性および均一性の確認のために、PIDCを標準条件下、時間0で取得した。長期(30k)電気サイクルをその後実施し、このサイクル中、bおよびeストリップのみが正帯電応力を受けた。ひとまとめのストリップ(a、cおよびd、f)は基準値を提供する。サンプルは全て、このサイクル中、同じ負電荷および露光に供した。最後に、サイクル後、PIDCを取得し、正帯電応力ストリップを非−正帯電ストリップと比較した。結果を下記表2(PIDCパラメータ:時間0測定および出力電圧(V))および3(PIDCパラメータ:30Kサイクル後応力、bおよびeのみで正帯電、フィードバックにより一定に保持されたV)に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
光除電特性はE1/2およびE7/8値により表される。E1/2は暗現像電位(Vddp)からVddpの2分の1までの光除電を達成するのに必要とされる露光エネルギであり、E7/8は、VddpからVddpの8分の1までの除電のためのエネルギである。イメージング部材を露光工程中に光除電させるのに使用される光エネルギを、露出計を用いて測定した。感光性が高いほど、E1/2およびE7/8値が小さい。
【0073】
図5はパターニングされたサンプルの著しく減少したPEG挙動を示す。PEGシグナルは、PIDCのテール領域(2.0erg/cm超過)で著しい改善があることを示す。実施形態では、改善されたイメージング部材は、表面パターンを有さない電荷輸送層を含むイメージング部材に比べ、ペーパーエッジゴーストの約10%から約90%の減少を示す。例えば、パターニングされたサンプルは、対照サンプルに比べ半分の差動サイクルアップ(differential cycle−up)を示す。PEGに対するnmまたはμmスケールパターニングの改善はベルトアーキテクチャならびにドラムに適用することができることに注意しなければならない。
【符号の説明】
【0074】
1 カール防止バックコーティング、10 剛性支持基材(支持基材)、12 導電性接地板(導電層)、14 アンダーコート層、16 接着層、18 電荷発生層、19 グランドストリップ、20 電荷輸送層、32 オーバーコート層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドの1つの面上に、周期的に並べられた突起または凹みのアレイを備えるパターンを有するモールドを、インプリンティングのために提供する工程と、
基材と、前記基材上に配置された、インプリントされる柔らかい外層コーティングと、を備えるイメージング部材を提供する工程と、
前記モールドの前記パターニングされた面と前記イメージング部材の前記外層コーティングを、前記モールドの前記パターン構造が前記外層コーティング上に複製されるように、共にプレスする工程と、
前記外層コーティングを硬化させ、前記イメージング部材の外表面上にパターニングされた構造を形成させる工程と、
を含む、外層内にパターニングされた表面を有するイメージング部材を形成するための方法。
【請求項2】
前記モールド上の前記凹みまたは突起は、円形、棒、卵形、正方形、三角形、多角形、それらの混合物からなる群より選択される規則的な形状を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記凹みおよび突起の各々は、5nmから200μmまでの周囲を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記凹みは5nmから5μmまでの深さを有し、前記突起は5nmから5μmまでの高さを有する、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−22579(P2011−22579A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160263(P2010−160263)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】