イヤパッド及びヘッドホン装置
【課題】携帯性を維持ししつつ、密閉性を高めることができるイヤパッド及びヘッドホンを提供すること。
【解決手段】音響回路を収納可能なハウジング4に取り付け可能であり、環状緩衝部材8と当該環状緩衝部材8を覆う被覆部材71とを含むイヤパッド7を提供する。このイヤパッド7において、環状緩衝部材8は、外環部材81と中環部材82と内環部材83とから構成され、少なくとも中環部材82の硬度は、外環部材81と内環部材83と異なる。
【解決手段】音響回路を収納可能なハウジング4に取り付け可能であり、環状緩衝部材8と当該環状緩衝部材8を覆う被覆部材71とを含むイヤパッド7を提供する。このイヤパッド7において、環状緩衝部材8は、外環部材81と中環部材82と内環部材83とから構成され、少なくとも中環部材82の硬度は、外環部材81と内環部材83と異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤパッド及びヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からユーザが装着して音声を聴くためにヘッドホンが使用されている。このヘッドホンは、スピーカを収容した左右2つのハウジングを有する。そして、ユーザの頭部と対向するハウジングの一面には、ハウジングがユーザの頭部に直接当接することを防ぐ緩衝材としてイヤパッドが配置されている。
【0003】
イヤパッドは、緩衝材としての役割と共に、ハウジングとユーザの耳との間の空間を密閉して、音声の音質を向上させ、かつ、音声が外部に漏れることを防ぐ役割を担う。ヘッドホンには、開放型と密閉型があるが、特に密閉型の場合に、イヤパッドの密閉性が重要になる。イヤパッドの密閉性は、装着時にユーザの頭部の形状に追随してイヤパッドの形状が変形し、ユーザの頭部との接触面積が大きくなることにより、高められる。よって、従来では、イヤパッド自体を大きくしユーザの頭部との接触面積を大きくしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このイヤパッドが使用されるヘッドホンは、携帯性が重要であり、大きなイヤパッドは、携帯性を損ねるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、携帯性を維持ししつつ、密閉性を高めることが可能な、新規かつ改良されたイヤパッド及びヘッドホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、音響回路を収納可能なハウジングに取り付け可能であり、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドにおいて、環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、少なくとも中環部材の硬度は、外環部材と内環部材と異なることを特徴とする、イヤパッドが提供される。また、中環部材の硬度は、少なくとも外環部材よりも低くてもよい。また、中環部材の硬度は、少なくとも内環部材よりも低くてもよい。
【0007】
この構成によれば、中環部材の硬度が、内環部材及び外環部材よりも低くなる。よって、環状緩衝部材が、被覆部材に覆われた場合、当該被覆部材の張力により、外環部材と内環部材は、中環部材側に歪む。その結果、かかる歪みに被覆部材の張力が吸収されて、外環部材と内環部材との上面(ユーザの頭部に当接する面)は、略平坦となる。よって、かかる平坦面にユーザの頭部が当接することになり、ユーザ頭部とイヤパッドとの接触面積が増加して、イヤパッドによる密閉性を高めることができる。
【0008】
また、内環部材の硬度は、少なくとも外環部材よりも低くてもよい。この構成によれば、内環部材の硬度は、外環部材によりも低いので、被覆部材の張力は、主に内環部材の歪みにより吸収される。よって、外環部材の歪み量が低減される。一方、ユーザの耳の周りの頭部の形状は、耳から離れるほどイヤパッドが取り付られたハウジングから離隔する。上記構成によれば、かかる耳の周りの頭部の形状に合わせて、外環部材が、内環部材よりも頭部側に突出して、密閉性を向上させることができる。
【0009】
また、中環部材には孔が穿設されていてもよい。この構成によれば、中環部材に孔を穿設することにより、中環部材の硬度を、外環部材及び内環部材に比べて低下させることができる。尚、この孔は、例えば環状緩衝部材が発泡ウレタン等の多孔物質で形成されている場合、かかる孔とは別途形成される。また、この孔は、貫通孔であってもよく、貫通していなくてもよい。また、この孔は、ユーザの頭部からハウジング方向に穿設されてもよい。つまり、この孔は、環状緩衝部材の形成面と略垂直な方向に形成されてもよい。更に孔の断面形状は、例えば、略円形・略長円形・略楕円形・略四角形・略多角形等であってもよい。
【0010】
また、中環部材は、外環部材と内環部材とを連結する橋架部材として構成されてもよい。この構成によれば、外環部材と内環部材とを橋架部材により連結することにより、橋架部材の材質や配置、大きさ等により、中環部材の硬度を調整することができる。つまり、橋架部材の材質や大きさを変更することにより、上記孔を穿設するのと同様に、中環部材の硬度を調整することが可能である。
【0011】
また、中環部材の硬度は、前方側よりも後方側が低くてもよい。この構成によれば、後方側の中環部材の硬度を低くすることにより、前方側に比べてユーザの頭部の形状への追従性を向上させることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、音響回路を収納可能なハウジングと、ハウジングに取り付けられ、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドとを有するヘッドホンであって、イヤパッドの環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、少なくとも中環部材の硬度は、外環部材と内環部材と異なることを特徴とする、ヘッドホンが提供される。この構成によれば、ユーザ頭部とイヤパッドとの接触面積が増加して、イヤパッドによる密閉性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、携帯性を維持ししつつ、密閉性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<ヘッドホン>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンの概要について説明し、その後に、各実施形態に係るイヤパッドについて詳しく説明する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンを説明するための説明図である。図1に示すように、ヘッドホン1は、ヘッドバンド2と、左右のスライダ3,ハンガ4,ハウジング5,及びイヤパッド7と、コード6とを有する。
【0017】
尚、図1におけるx軸正の方向が、ユーザにとっての右方向を表し、y軸正の方向が、ユーザにとっての上方向を表す。そして、図2におけるz軸負の方向が、ユーザにとっての前方向を表す。つまり、x軸正の方向にあるスライダ3,ハンガ4,ハウジング5及びイヤパッド7が、ユーザの右耳用であり、x軸負の方向にあるスライダ3,ハンガ4,ハウジング5及びイヤパッド7が、ユーザの左耳用である。
【0018】
ヘッドバンド2は、左右のスライダ3間を接続する接続部材であり、ユーザがヘッドホン1を装着した場合、通常、このヘッドバンド2の少なくとも一部がユーザの頭頂部に接して、ヘッドホン1を支持する。また、ヘッドバンド2は、所定の剛性及び弾性を有しており、ヘッドホン1は、ヘッドバンド2の湾曲した形状が引き延ばされることにより、両イヤパッド7の間の空間が拡大されて、ユーザの頭部に装着可能となる。
【0019】
スライダ3は、ヘッドバンド2とハンガ4とを連結すると共に、ハンガ4をヘッドバンド2に対して軸方向に摺動可能に支持する摺動部材である。つまり、スライダ3は、伸縮することができ、このスライダ3の伸縮により、ハンガ4より下方の各部材が、ヘッドバンド2に対して下方に移動することができる。よって、装着時には、ヘッドホン1は、ユーザの頭部の大きさや耳と頭頂部との距離などに合わせてスライダ3の伸縮を調整して、ハウジング5をユーザの耳に対向した状態で装着される。一方、使用しない場合などには、ヘッドホン1は、スライダ3を縮めた状態で保管することができるので、保管スペースを節約することができる。
【0020】
ハンガ4は、スライダ3とハウジング5とを連結すると共に、略前後方向(z軸)を回転軸としてハウジング5を回動可能に支持する回動部材である。また、このハンガ4は、略上下方向(y軸)を回転軸としてスライダ3に回動可能に支持される。このハンガ4により、ハンガ4自身がy軸回りに回動し、かつ、ハウジング5がz軸回りに回動するので、ヘッドホン1は、装着時においてユーザの耳周囲の形状に合わせてハウジング5の向きを変更し、ハウジング5を耳に対向させることができる。
【0021】
ハウジング5は、その内部に小型のスピーカ(図示せず)を収容する収容部である。また、このハウジング5には、スピーカを駆動する音声信号に対して、例えば音像定位処理・ノイズキャンセリング処理・信号増幅処理などの信号処理を施す所定の音響用の電気回路等(「音響回路」ともいう。)が配置されてもよい。また、右又は左のハウジング5には、一端に入力端子(図示せず)が接続された入力信号用のコード6が接続され、このコード6の他端は、ハウジング5に収容されたスピーカや音響回路に接続される。コード6が接続されてないハウジング5内のスピーカを駆動するために、コード6が接続されたハウジング5と、コード6が接続されていないハウジング5との間には、接続コード(図示せず)が配置される。尚、この接続コードは、ハンガ4,スライダ3,及びヘッドバンド2の内部に配置される。換言すれば、コード6を介して一方のハウジング5に入力した音声信号は、接続コードを介して他方のハウジング5にも入力し、左右両スピーカを駆動させる。そして、音声信号は、スピーカが駆動することにより、音声に変換されてユーザの耳へと提供される。
【0022】
イヤパッド7は、ハウジング5のユーザの耳に対向する面に取り付けられて、ハウジング5とユーザの頭部との間の緩衝の役割を担う。つまり、変形しにくい硬い素材で形成されたハウジング5が直接ユーザの頭部に接すると、ユーザの装着時の快適性を著しく損ねるが、イヤパッド7は、弾力性を有してハウジング5が直接ユーザに接することを防ぎ、両者の間で緩衝の役割を担う。また、本発明の各実施形態に係るヘッドホン1のイヤパッド7は、ユーザの頭部とハウジング5の内部のスピーカとの間の空間を密閉し、ユーザが聴く音の音質を向上させ、かつ、この音が外部に漏れることを防ぐことができる。このイヤパッド7は、ハウジング5から取り外すこともでき、交換することもできる。尚、ハウジング5とイヤパッド7とを合わせて、イヤカップともいう。
【0023】
本発明の各実施形態に係るイヤパッド7は、他のイヤパッドと異なり、この密閉性を更に高めることができる。以下、このイヤパッド7について詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態に係るイヤパッドの構成について説明するための説明図である。尚、図3には、左側のイヤパッド7を示し、図3(A)には、イヤパッド7をユーザの耳側、つまり、右側のイヤパッド側からx軸負の方向へと見た場合を示し、図3(B)には、イヤパッド7を前方(z軸負の方向、ユーザの前方向)から後方に向けて見た場合を示し、図3(C)には、イヤパッド7を外側、つまり、ハウジング5側から右側のイヤパッド7の方向へと見た場合を示す。また、図3(C)では、一部にイヤパッド7の断面形状を示している。
【0025】
図3に示すように、イヤパッド7は、環状に形成され、大きく分けて、カバー71とクッション部材8とを有して、弾力性を有する。
【0026】
クッション部材8は、環状緩衝部材の一例であって、例えば発泡ウレタン・綿・化学繊維などの弾力性のある材質により環状に形成される。尚、このクッション部材8の材質は、かかる例に限定されずに、適度な弾力性を有していればいかなる材質であってもよい。このクッション部材8は、ヘッドホン1の密閉性を向上させるために、特殊な構成を有するが、このクッション部材8の構成については、詳しく後述する。
【0027】
カバー71は、被覆部材の一例であって、例えばレザー・化繊等の肌触りのよい材質で形成されことが好ましい。そして、カバー71は、上記クッション部材8を覆う。また、カバー71は、図3(B)及び図3(C)に示すように、ハウジング5側にハウジング5への接続部72及び通気部73を有する。
【0028】
接続部72は、図3(B)に示すように、イヤパッド7のハウジング5側の外周に接続され、環の中心方向に開いた略コの字状の形状を有する。つまり、接続部72は、ハウジング方向に延長形成され、その先端に環の中心方向に向けて更に延長形成される。そして、環の中心方向に向けて延長形成された部位が、ハウジングの外周に形成されたグルーブ(溝、図示せず。)に挿入され、イヤパッド7は、ハウジング5に固定される。
【0029】
図4に、このイヤパッド7の内部の構成を示す。
通気部73は、図4に詳細に示すように、例えばメッシュ状の空気が貫通する材質により形成され、張出部74等においてカバー71等と縫い合わされる。そして、この通気部73は、内部のクッション部材8が圧縮・膨張する際にクッション部材8の空気を排出又は流入させる。つまり、クッション部材8は、弾力性を有して緩衝作用を担うが、クッション部材8が伸縮したとしても、カバー71が密閉された状態では、内部の空気がカバー71の内部に閉じこめられて、クッション部材8の緩衝作用を阻害する。よって、通気部73は、カバー71に通気性を持たせることにより、クッション部材8に緩衝作用を十分に発揮させることができる。尚、この通気部73は、カバー71の内部空間と、イヤパッド7により密閉された空間との間を通気させることが望ましい。また、この通気部73は、カバー71に孔を穿設することにより形成されてもよい。尚、このクッション部材8の管の径方向とは、図3(A)のyz平面内において、環の中心Oから外側に向けた方向を意味する。
【0030】
(クッション部材について)
次に、本実施形態に係るイヤパッド7のクッション部材8の構成について、図5を参照して、詳しく説明する。図5は、本実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。図5にも、左側のイヤパッド7のクッション部材8を示し、図5(A)には、クッション部材8をユーザの耳側、つまり、右側のイヤパッド側からx軸負の方向へと見た場合を示し、図5(B)には、クッション部材8のA−A線による断面を示している。
【0031】
図5に示すように、クッション部材8は、大きく分けて、外環部材81、中環部材82、及び内環部材83とにより構成される。尚、本実施形態では、外環部材81、中環部材82、及び内環部材83は、同一の材質により一体形成される。
【0032】
外環部材81は、環状のクッション部材8の外周に配置され、内環部材83は、環状のクッション部材8の内周に配置される。そして、中環部材82は、この外環部材81と内環部材83との間に配置される。また、外環部材81、中環部材82、及び内環部材83それぞれの断面は、図5(B)に示すように、略四角形状に形成される。
【0033】
中環部材82には、ユーザの左右方向、つまり、ハウジング5からユーザとの接触面に向けた方向(x軸方向)に穿設された複数の貫通孔91が形成されている。この孔91は、図5のクッション部材8−1に示すように、環の周方向に沿って所定間隔を明けて穿設される。この中環部材82における孔91と、それに隣接した他の孔91との間のクッション部材を、ここでは橋架部材92と呼ぶ。つまり、橋架部材92は、外環部材81と内環部材83との間を連結(橋渡し)し、相互の位置関係を維持する。
【0034】
この孔91が穿設されることにより、中環部材82の硬度は、他の外環部材81及び内環部材83よりも低くなる。つまり、中環部材82は、孔91が穿設されていない状態では、外環部材81及び内環部材83と同じ材質であるため、外環部材81及び内環部材83と同じ硬度で外環部材81と内環部材83とを連結することとなる。しかしながら、孔91が穿設されることにより、外環部材81と内環部材83と連結する部位が橋架部材92に限られるため、中環部材82における外環部材81と内環部材83と連結する硬度は、低下することとなる。換言すれば、中環部材82は、外環部材81及び内環部材83と比べて弾力性や圧縮性が増すことになる。
【0035】
上記のような構成を有するクッション部材8が、カバー71の内部に収容された状態を図6に示す。図6は、本実施形態に係るイヤパッドについて説明するための説明図である。尚、図6(A)には、上記のクッション部材8がカバー71の内部に収容された状態を示し、図6(B)には、ユーザがヘッドホン1を装着してイヤパッド7がユーザの頭部に当接した状態を示す。つまり、x軸正の方向にユーザの頭部が当接することになる。
【0036】
図6(A)に示すように、カバー71に収容されたクッション部材8は、その先端(x軸正の方向)がカバー71の張力によってつぼんだ状態となる。より具体的には、外環部材81と内環部材83は、中環部材82の硬度(剛性)が低下したことにより、中環部材82側に湾曲された状態となる。しかし、カバー71の張力は、この外環部材81と内環部材83の湾曲により吸収されて、外環部材81と内環部材83の上面(ユーザに当接する面)は、略平坦となる。よって、図6(B)に示すように、ユーザの頭部Bがイヤパッド7−5に当接すると、頭部Bの形状に追従して、外環部材81と内環部材83の上面は撓む。つまり、イヤパッド7−5は、接触面Cでユーザの頭部Bと当接することになる。
【0037】
一方、図7に、本実施形態に関連したイヤパッド17を示す。図7は、本実施形態の関連技術に係るイヤパッドの断面形状を示す断面図である。尚、図7(A)には、関連技術に係るイヤパッド17のクッション部材171を示し、図7(B)には、クッション部材171がカバー71に収容されたイヤパッド17を示す。そして、図7(C)には、ユーザがヘッドホンを装着してイヤパッド17がユーザの頭部に当接した状態を示す。
【0038】
関連技術に係るイヤパッド17のクッション部材171は、上記クッション部材17と同材料により、断面形状が略四角形状に形成される。このクッション部材17がカバー71に収容されると、図7(B)に示すように、クッション部材171の上面(ユーザに当接する面)は、カバー171の張力により、略円弧形状に変形される。ユーザがヘッドホンを装着して、略円弧形状を有するイヤパッド17がユーザの頭部に当接すると、図6の(C)に示すように、イヤパッド17の上方(ユーザ方向)の一部が、ユーザの頭部Bの形状に追従して変形する。しかしながら、この追従した変形部は、イヤパッド17の円弧形状の先端部分に限定され、イヤパッド17−2は、接触面Dのみがユーザの頭部Bと当接した状態となる。
【0039】
図6(B)に示す本実施形態に係るイヤパッド7と、図7(C)に示す関連技術に係るイヤパッド17とを比較すると判るように、本実施形態に係るイヤパッド7の接触面Cの面積は、関連技術に係るイヤパッド17の接触面Dの面積よりも増加する。従って、本実施形態に係るイヤパッド7によれば、ユーザの頭部の形状に追従して変形して接触面積を増やすことができるので、ヘッドホン1の密閉性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態に係るイヤパッド7は、中環部材82の硬度が低下しているので、ユーザの頭部の形状に柔軟に追従することができる。よって、例えば、イヤパッド7が耳全体を覆うヘッドホン1(例えば密閉型)に使用された場合、イヤパッド7は、ユーザの耳周囲の頭部の形状に追従することが可能である。一方、イヤパッド7が耳に当接するヘッドホン1(例えば開放型)に使用される場合、イヤパッド7は、ユーザの耳の形状に応じて変形することが可能である。しかも、このイヤパッド7は、耳周囲の形状は、耳の形状に追従して変形した後も、大きな接触面積を損ねることがないため、密閉状態を維持して、音質を向上させることができる。
【0041】
更に、本実施形態に係るイヤパッド7は、孔91を穿設するのみで中環部材82の硬度を変更することができ、密閉性を高めることができる。よって、イヤパッド7は、非常に容易に作成することができる。加えて、イヤパッド7は、硬度を調整するために多数の材料を用意する必要もないので、製造段階でストックしておくべき在庫の点数を低減することもでき、製造コストの削減をすることもできる。
【0042】
<第1実施形態に係る変更例>
また、本実施形態に係るイヤパッド7は、クッション部材8の中環部材82に孔91を穿設することにより、中環部材82の硬度を低下させているが、孔91の大きさや数を調整することにより、クッション部材8における硬度分布を調整することも可能である。よって、この硬度分布を調整した変更例について、図8及び図9を参照して説明する。
【0043】
図8は、本実施形態に係るクッション部材の第1の変更例を説明するための説明図である。尚、図8には、左側のイヤパッドのクッション部材8−1を示している。
【0044】
図8に示すように、第1の変更例に係るクッション部材8−1は、孔91の数を、前方(装着時におけるユーザの前方向、z軸負の方向)に行くほど減少させている。つまり、前方では中環部材82の単位長さあたりの孔91の数を減少させ、環の周回りに後方に向かうに従い、孔91の数を増加させている。本変形例における他の構成は、上記第1実施形態に係るクッション部材8と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0045】
かかる構成によれば、前方に比べて孔91の密度が高い後方において、前方の中環部材82の硬度よりも、後方の中環部材82の硬度を低くすることができる。よって、後方のクッション部材8−1におけるユーザ頭部の形状への追従性を向上させることができる。
【0046】
一般的に耳の形状は、前方よりも後方の方が複雑である。よって、例えば、ユーザの耳に当接するイヤパッドの場合、後方における追従性を向上させることにより、イヤパッドの密閉性を更に向上させることができる。
【0047】
一方、ユーザの耳の周囲を覆うイヤパッドの場合、イヤパッドは、耳の周囲に当接されるが、耳の前方の頭部の形状よりも、耳の後の頭部の形状の方が、耳の外形に対して傾斜が急になり、当該傾斜に対する追従性が要求されることになる。本変更例に係るクッション部材8−1は、耳の後方における急な傾斜面にも追従することができるため、イヤパッドの密閉性を更に向上させることができる。
【0048】
このように、中環部材82の硬度分布の変更は、本実施形態の第2の変更例においても実現することができる。以下、図9を参照して、この第2の変更例について説明する。
【0049】
図9は、本実施形態に係るクッション部材の第2の変更例を説明するための説明図である。尚、図9にも、左側のイヤパッドのクッション部材8−2を示している。
【0050】
図9に示すように、第2の変更例に係るクッション部材8−2は、孔91の大きさを、後方(装着時におけるユーザの後方向、z軸負の方向)に行くほど大きくしている。つまり、前方では中環部材82の孔91の大きさは、上記第1実施形態における孔91の大きさと同様であるが、環の周回りに後方に向かうに従い、孔91の大きさを大きくしている。本変形例における他の構成は、上記第1実施形態に係るクッション部材8と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0051】
この第2の変更例に係るクッション部材8−2も、上記の第1の変更例に係るクッション部材8−1と同様に、前方の中環部材82の硬度よりも、後方の中環部材82の硬度を低くすることができる。よって、後方のクッション部材8−2におけるユーザ頭部の形状への追従性を向上させることができる。従って、第2の変更例でも、第1の変更例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0052】
上記第1の変更例及び第2の変更例からも明らかなように、本実施形態に係るイヤパッドによれば、中環部材82に穿設する孔91の大きさや数を変更することにより、中環部材82の硬度を容易に変更することが可能である。よって、上記の変更例で示した例以外にも、孔91の大きさや数を変更し、所望の硬度を達成することが可能である。尚、これらの第1の変更例及び第2の変更例においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができることは、言うまでもない。
【0053】
<第2実施形態>
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態に係るイヤパッドが有するクッション部材について説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。尚、図10にも、左用のイヤパッドのクッション部材8−3を示している。そして、図10(A)には、クッション部材8−3をユーザの耳側、つまり、右側のイヤパッド側からx軸負の方向へと見た場合を示し、図10(B)には、クッション部材8のE−E線による断面を示している。
【0054】
上記第1実施形態においては、中環部材82に孔91を穿設することにより、中環部材82の硬度を相対的に低減させたが、本実施形態に係るクッション部材8−3では、中環部材82−1の材質を変更することにより、中環部材82−1の硬度を相対的に低減させる。より具体的に説明する。
【0055】
本実施形態に係るクッション部材8−3は、上記第1実施形態に係るクッション部材8と同様に、3層構造を有する。つまり、クッション部材8−3は、外環部材81、中環部材82−1、及び内環部材83−1を有する。そして、外環部材81は、上記第1実施形態に係るクッション部材8が有する外環部材81と同様の材質により構成される。
【0056】
しかしながら、本実施形態に係る中環部材82−1は、この外環部材81よりも硬度の低い材質により形成される。そして、内環部材83−1も、外環部材81よりも硬度の低い材質により形成される。また、中環部材82−1と内環部材83−1との硬度は、中環部材82−1の方が低い。つまり、硬度は、高い順に、
外環部材81>内環部材83−1>中環部材82−1
となる。
【0057】
かかる構成によれば、上記第1実施形態と同様に、カバーの張力により、外環部材81及び内環部材83−1が中環部材82−1側にゆがむことができ、接触面積を増やすことができる。よって、本実施形態に係るクッション部材8−3を有するイヤパッドによっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
また、本実施形態では、内環部材83−1は、外環部材81よりも硬度の低い部材により形成されるが、外環部材81と内環部材83−1とを同一の材質、つまり同一の硬度で形成したとしても、上記第1実施形態と同様に十分な密閉性を確保することが可能である。
しかし、本実施形態によれば、更に、外環部材81の硬度を内環部材83−1の硬度よりも高くすることにより、外環部材81は、ユーザの頭部とより密着することができる。よって、このクッション部材8−3を有するイヤパッドは、更に、密閉性を高めることができる。つまり、内環部材83−1の硬度が外環部材81よりも低いことにより、内環部材83−1の中環部材82−1側への歪みは、外環部材81よりも大きくなる。よって、外環部材81のユーザ頭部に接触する面の平坦度合が更に維持される。一般にヘッドホンに対してユーザの耳の位置の頭部が一番突出しており、この耳の位置から離れるにつれて、ユーザの頭部はヘッドホンから離隔する。上記の構成によれば、このような頭部の外形に更に追従して、外環部材81が、より頭部に密着することができる。よって、イヤパッドは、更に密閉性を向上させることができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、第1実施形態では、孔91は、貫通孔であるとして説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図11に示すように、孔91は、貫通孔でなくてもよい。この場合、孔91は、ユーザの頭部に当接する面から穿設することにより形成される。また、橋架部材92は、孔91の底部(x軸負の方向)にも配置される。
【0061】
また、第1実施形態では、孔91は、図8等に示すように、略円柱形であるとしたが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、図11に示すように、孔91は、断面が長円状に形成されてもよく、図示しないが、断面が略四角形状であってもよい。尚、図11には孔91が貫通孔でない場合を示しているが、孔91は、長孔形状を有し、かつ、貫通孔であってもよい。
【0062】
また、第2実施形態では、中環部材82−1の材質等を変更することにより硬度を調整したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図12に示すように、中環部材82−1の材質等を変更すると共に、孔91を穿設してもよい。また、この孔91の形状は、上記同様様々な変更例が適用しうることは言うまでもない。
【0063】
尚、図11及び図12には、左用のイヤパッドが有するクッション部材8−4、8−5を示しており、一部を切断した切断面をも示している。切断していない状態においてクッション部材8−4、8−5は、孔91の形状等を除けば上記第1実施形態又は第2実施形態と同様に形成される。
【0064】
また、上記実施形態では、イヤパッドがヘッドホンに使用される場合について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。上記各実施形態に係るイヤパッドは、ヘッドセット、イヤマフラー、ヘルメット等、イヤパッドがユーザの耳又はその周囲の頭部と当接し、内部空間の密閉性が要求される装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンを説明するための説明図である。
【図2】本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンを説明するための説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るイヤパッドの構成について説明するための説明図である。
【図4】同実施形態に係るイヤパッドの内部構成について説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係るイヤパッドについて説明するための説明図である。
【図7】同実施形態の関連技術に係るイヤパッドの断面形状を示す断面図である。
【図8】同実施形態に係るクッション部材の第1の変更例を説明するための説明図である。
【図9】同実施形態に係るクッション部材の第2の変更例を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。
【図11】本発明の変更例に係るクッション部材を説明するための説明図である。
【図12】本発明の変更例に係るクッション部材を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ヘッドホン
2 ヘッドバンド
3 スライダ
4 ハンガ
5 ハウジング
6 コード
7 イヤパッド
8,8−1,8−2,8−3,8−4,8−5 クッション部材
71 カバー
72 接続部
73 通気部
74 張出部
81 外環部材
82,82−1 内環部材
83,83−1 中環部材
91 孔
92 橋架部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤパッド及びヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からユーザが装着して音声を聴くためにヘッドホンが使用されている。このヘッドホンは、スピーカを収容した左右2つのハウジングを有する。そして、ユーザの頭部と対向するハウジングの一面には、ハウジングがユーザの頭部に直接当接することを防ぐ緩衝材としてイヤパッドが配置されている。
【0003】
イヤパッドは、緩衝材としての役割と共に、ハウジングとユーザの耳との間の空間を密閉して、音声の音質を向上させ、かつ、音声が外部に漏れることを防ぐ役割を担う。ヘッドホンには、開放型と密閉型があるが、特に密閉型の場合に、イヤパッドの密閉性が重要になる。イヤパッドの密閉性は、装着時にユーザの頭部の形状に追随してイヤパッドの形状が変形し、ユーザの頭部との接触面積が大きくなることにより、高められる。よって、従来では、イヤパッド自体を大きくしユーザの頭部との接触面積を大きくしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このイヤパッドが使用されるヘッドホンは、携帯性が重要であり、大きなイヤパッドは、携帯性を損ねるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、携帯性を維持ししつつ、密閉性を高めることが可能な、新規かつ改良されたイヤパッド及びヘッドホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、音響回路を収納可能なハウジングに取り付け可能であり、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドにおいて、環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、少なくとも中環部材の硬度は、外環部材と内環部材と異なることを特徴とする、イヤパッドが提供される。また、中環部材の硬度は、少なくとも外環部材よりも低くてもよい。また、中環部材の硬度は、少なくとも内環部材よりも低くてもよい。
【0007】
この構成によれば、中環部材の硬度が、内環部材及び外環部材よりも低くなる。よって、環状緩衝部材が、被覆部材に覆われた場合、当該被覆部材の張力により、外環部材と内環部材は、中環部材側に歪む。その結果、かかる歪みに被覆部材の張力が吸収されて、外環部材と内環部材との上面(ユーザの頭部に当接する面)は、略平坦となる。よって、かかる平坦面にユーザの頭部が当接することになり、ユーザ頭部とイヤパッドとの接触面積が増加して、イヤパッドによる密閉性を高めることができる。
【0008】
また、内環部材の硬度は、少なくとも外環部材よりも低くてもよい。この構成によれば、内環部材の硬度は、外環部材によりも低いので、被覆部材の張力は、主に内環部材の歪みにより吸収される。よって、外環部材の歪み量が低減される。一方、ユーザの耳の周りの頭部の形状は、耳から離れるほどイヤパッドが取り付られたハウジングから離隔する。上記構成によれば、かかる耳の周りの頭部の形状に合わせて、外環部材が、内環部材よりも頭部側に突出して、密閉性を向上させることができる。
【0009】
また、中環部材には孔が穿設されていてもよい。この構成によれば、中環部材に孔を穿設することにより、中環部材の硬度を、外環部材及び内環部材に比べて低下させることができる。尚、この孔は、例えば環状緩衝部材が発泡ウレタン等の多孔物質で形成されている場合、かかる孔とは別途形成される。また、この孔は、貫通孔であってもよく、貫通していなくてもよい。また、この孔は、ユーザの頭部からハウジング方向に穿設されてもよい。つまり、この孔は、環状緩衝部材の形成面と略垂直な方向に形成されてもよい。更に孔の断面形状は、例えば、略円形・略長円形・略楕円形・略四角形・略多角形等であってもよい。
【0010】
また、中環部材は、外環部材と内環部材とを連結する橋架部材として構成されてもよい。この構成によれば、外環部材と内環部材とを橋架部材により連結することにより、橋架部材の材質や配置、大きさ等により、中環部材の硬度を調整することができる。つまり、橋架部材の材質や大きさを変更することにより、上記孔を穿設するのと同様に、中環部材の硬度を調整することが可能である。
【0011】
また、中環部材の硬度は、前方側よりも後方側が低くてもよい。この構成によれば、後方側の中環部材の硬度を低くすることにより、前方側に比べてユーザの頭部の形状への追従性を向上させることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、音響回路を収納可能なハウジングと、ハウジングに取り付けられ、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドとを有するヘッドホンであって、イヤパッドの環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、少なくとも中環部材の硬度は、外環部材と内環部材と異なることを特徴とする、ヘッドホンが提供される。この構成によれば、ユーザ頭部とイヤパッドとの接触面積が増加して、イヤパッドによる密閉性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、携帯性を維持ししつつ、密閉性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<ヘッドホン>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンの概要について説明し、その後に、各実施形態に係るイヤパッドについて詳しく説明する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンを説明するための説明図である。図1に示すように、ヘッドホン1は、ヘッドバンド2と、左右のスライダ3,ハンガ4,ハウジング5,及びイヤパッド7と、コード6とを有する。
【0017】
尚、図1におけるx軸正の方向が、ユーザにとっての右方向を表し、y軸正の方向が、ユーザにとっての上方向を表す。そして、図2におけるz軸負の方向が、ユーザにとっての前方向を表す。つまり、x軸正の方向にあるスライダ3,ハンガ4,ハウジング5及びイヤパッド7が、ユーザの右耳用であり、x軸負の方向にあるスライダ3,ハンガ4,ハウジング5及びイヤパッド7が、ユーザの左耳用である。
【0018】
ヘッドバンド2は、左右のスライダ3間を接続する接続部材であり、ユーザがヘッドホン1を装着した場合、通常、このヘッドバンド2の少なくとも一部がユーザの頭頂部に接して、ヘッドホン1を支持する。また、ヘッドバンド2は、所定の剛性及び弾性を有しており、ヘッドホン1は、ヘッドバンド2の湾曲した形状が引き延ばされることにより、両イヤパッド7の間の空間が拡大されて、ユーザの頭部に装着可能となる。
【0019】
スライダ3は、ヘッドバンド2とハンガ4とを連結すると共に、ハンガ4をヘッドバンド2に対して軸方向に摺動可能に支持する摺動部材である。つまり、スライダ3は、伸縮することができ、このスライダ3の伸縮により、ハンガ4より下方の各部材が、ヘッドバンド2に対して下方に移動することができる。よって、装着時には、ヘッドホン1は、ユーザの頭部の大きさや耳と頭頂部との距離などに合わせてスライダ3の伸縮を調整して、ハウジング5をユーザの耳に対向した状態で装着される。一方、使用しない場合などには、ヘッドホン1は、スライダ3を縮めた状態で保管することができるので、保管スペースを節約することができる。
【0020】
ハンガ4は、スライダ3とハウジング5とを連結すると共に、略前後方向(z軸)を回転軸としてハウジング5を回動可能に支持する回動部材である。また、このハンガ4は、略上下方向(y軸)を回転軸としてスライダ3に回動可能に支持される。このハンガ4により、ハンガ4自身がy軸回りに回動し、かつ、ハウジング5がz軸回りに回動するので、ヘッドホン1は、装着時においてユーザの耳周囲の形状に合わせてハウジング5の向きを変更し、ハウジング5を耳に対向させることができる。
【0021】
ハウジング5は、その内部に小型のスピーカ(図示せず)を収容する収容部である。また、このハウジング5には、スピーカを駆動する音声信号に対して、例えば音像定位処理・ノイズキャンセリング処理・信号増幅処理などの信号処理を施す所定の音響用の電気回路等(「音響回路」ともいう。)が配置されてもよい。また、右又は左のハウジング5には、一端に入力端子(図示せず)が接続された入力信号用のコード6が接続され、このコード6の他端は、ハウジング5に収容されたスピーカや音響回路に接続される。コード6が接続されてないハウジング5内のスピーカを駆動するために、コード6が接続されたハウジング5と、コード6が接続されていないハウジング5との間には、接続コード(図示せず)が配置される。尚、この接続コードは、ハンガ4,スライダ3,及びヘッドバンド2の内部に配置される。換言すれば、コード6を介して一方のハウジング5に入力した音声信号は、接続コードを介して他方のハウジング5にも入力し、左右両スピーカを駆動させる。そして、音声信号は、スピーカが駆動することにより、音声に変換されてユーザの耳へと提供される。
【0022】
イヤパッド7は、ハウジング5のユーザの耳に対向する面に取り付けられて、ハウジング5とユーザの頭部との間の緩衝の役割を担う。つまり、変形しにくい硬い素材で形成されたハウジング5が直接ユーザの頭部に接すると、ユーザの装着時の快適性を著しく損ねるが、イヤパッド7は、弾力性を有してハウジング5が直接ユーザに接することを防ぎ、両者の間で緩衝の役割を担う。また、本発明の各実施形態に係るヘッドホン1のイヤパッド7は、ユーザの頭部とハウジング5の内部のスピーカとの間の空間を密閉し、ユーザが聴く音の音質を向上させ、かつ、この音が外部に漏れることを防ぐことができる。このイヤパッド7は、ハウジング5から取り外すこともでき、交換することもできる。尚、ハウジング5とイヤパッド7とを合わせて、イヤカップともいう。
【0023】
本発明の各実施形態に係るイヤパッド7は、他のイヤパッドと異なり、この密閉性を更に高めることができる。以下、このイヤパッド7について詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態に係るイヤパッドの構成について説明するための説明図である。尚、図3には、左側のイヤパッド7を示し、図3(A)には、イヤパッド7をユーザの耳側、つまり、右側のイヤパッド側からx軸負の方向へと見た場合を示し、図3(B)には、イヤパッド7を前方(z軸負の方向、ユーザの前方向)から後方に向けて見た場合を示し、図3(C)には、イヤパッド7を外側、つまり、ハウジング5側から右側のイヤパッド7の方向へと見た場合を示す。また、図3(C)では、一部にイヤパッド7の断面形状を示している。
【0025】
図3に示すように、イヤパッド7は、環状に形成され、大きく分けて、カバー71とクッション部材8とを有して、弾力性を有する。
【0026】
クッション部材8は、環状緩衝部材の一例であって、例えば発泡ウレタン・綿・化学繊維などの弾力性のある材質により環状に形成される。尚、このクッション部材8の材質は、かかる例に限定されずに、適度な弾力性を有していればいかなる材質であってもよい。このクッション部材8は、ヘッドホン1の密閉性を向上させるために、特殊な構成を有するが、このクッション部材8の構成については、詳しく後述する。
【0027】
カバー71は、被覆部材の一例であって、例えばレザー・化繊等の肌触りのよい材質で形成されことが好ましい。そして、カバー71は、上記クッション部材8を覆う。また、カバー71は、図3(B)及び図3(C)に示すように、ハウジング5側にハウジング5への接続部72及び通気部73を有する。
【0028】
接続部72は、図3(B)に示すように、イヤパッド7のハウジング5側の外周に接続され、環の中心方向に開いた略コの字状の形状を有する。つまり、接続部72は、ハウジング方向に延長形成され、その先端に環の中心方向に向けて更に延長形成される。そして、環の中心方向に向けて延長形成された部位が、ハウジングの外周に形成されたグルーブ(溝、図示せず。)に挿入され、イヤパッド7は、ハウジング5に固定される。
【0029】
図4に、このイヤパッド7の内部の構成を示す。
通気部73は、図4に詳細に示すように、例えばメッシュ状の空気が貫通する材質により形成され、張出部74等においてカバー71等と縫い合わされる。そして、この通気部73は、内部のクッション部材8が圧縮・膨張する際にクッション部材8の空気を排出又は流入させる。つまり、クッション部材8は、弾力性を有して緩衝作用を担うが、クッション部材8が伸縮したとしても、カバー71が密閉された状態では、内部の空気がカバー71の内部に閉じこめられて、クッション部材8の緩衝作用を阻害する。よって、通気部73は、カバー71に通気性を持たせることにより、クッション部材8に緩衝作用を十分に発揮させることができる。尚、この通気部73は、カバー71の内部空間と、イヤパッド7により密閉された空間との間を通気させることが望ましい。また、この通気部73は、カバー71に孔を穿設することにより形成されてもよい。尚、このクッション部材8の管の径方向とは、図3(A)のyz平面内において、環の中心Oから外側に向けた方向を意味する。
【0030】
(クッション部材について)
次に、本実施形態に係るイヤパッド7のクッション部材8の構成について、図5を参照して、詳しく説明する。図5は、本実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。図5にも、左側のイヤパッド7のクッション部材8を示し、図5(A)には、クッション部材8をユーザの耳側、つまり、右側のイヤパッド側からx軸負の方向へと見た場合を示し、図5(B)には、クッション部材8のA−A線による断面を示している。
【0031】
図5に示すように、クッション部材8は、大きく分けて、外環部材81、中環部材82、及び内環部材83とにより構成される。尚、本実施形態では、外環部材81、中環部材82、及び内環部材83は、同一の材質により一体形成される。
【0032】
外環部材81は、環状のクッション部材8の外周に配置され、内環部材83は、環状のクッション部材8の内周に配置される。そして、中環部材82は、この外環部材81と内環部材83との間に配置される。また、外環部材81、中環部材82、及び内環部材83それぞれの断面は、図5(B)に示すように、略四角形状に形成される。
【0033】
中環部材82には、ユーザの左右方向、つまり、ハウジング5からユーザとの接触面に向けた方向(x軸方向)に穿設された複数の貫通孔91が形成されている。この孔91は、図5のクッション部材8−1に示すように、環の周方向に沿って所定間隔を明けて穿設される。この中環部材82における孔91と、それに隣接した他の孔91との間のクッション部材を、ここでは橋架部材92と呼ぶ。つまり、橋架部材92は、外環部材81と内環部材83との間を連結(橋渡し)し、相互の位置関係を維持する。
【0034】
この孔91が穿設されることにより、中環部材82の硬度は、他の外環部材81及び内環部材83よりも低くなる。つまり、中環部材82は、孔91が穿設されていない状態では、外環部材81及び内環部材83と同じ材質であるため、外環部材81及び内環部材83と同じ硬度で外環部材81と内環部材83とを連結することとなる。しかしながら、孔91が穿設されることにより、外環部材81と内環部材83と連結する部位が橋架部材92に限られるため、中環部材82における外環部材81と内環部材83と連結する硬度は、低下することとなる。換言すれば、中環部材82は、外環部材81及び内環部材83と比べて弾力性や圧縮性が増すことになる。
【0035】
上記のような構成を有するクッション部材8が、カバー71の内部に収容された状態を図6に示す。図6は、本実施形態に係るイヤパッドについて説明するための説明図である。尚、図6(A)には、上記のクッション部材8がカバー71の内部に収容された状態を示し、図6(B)には、ユーザがヘッドホン1を装着してイヤパッド7がユーザの頭部に当接した状態を示す。つまり、x軸正の方向にユーザの頭部が当接することになる。
【0036】
図6(A)に示すように、カバー71に収容されたクッション部材8は、その先端(x軸正の方向)がカバー71の張力によってつぼんだ状態となる。より具体的には、外環部材81と内環部材83は、中環部材82の硬度(剛性)が低下したことにより、中環部材82側に湾曲された状態となる。しかし、カバー71の張力は、この外環部材81と内環部材83の湾曲により吸収されて、外環部材81と内環部材83の上面(ユーザに当接する面)は、略平坦となる。よって、図6(B)に示すように、ユーザの頭部Bがイヤパッド7−5に当接すると、頭部Bの形状に追従して、外環部材81と内環部材83の上面は撓む。つまり、イヤパッド7−5は、接触面Cでユーザの頭部Bと当接することになる。
【0037】
一方、図7に、本実施形態に関連したイヤパッド17を示す。図7は、本実施形態の関連技術に係るイヤパッドの断面形状を示す断面図である。尚、図7(A)には、関連技術に係るイヤパッド17のクッション部材171を示し、図7(B)には、クッション部材171がカバー71に収容されたイヤパッド17を示す。そして、図7(C)には、ユーザがヘッドホンを装着してイヤパッド17がユーザの頭部に当接した状態を示す。
【0038】
関連技術に係るイヤパッド17のクッション部材171は、上記クッション部材17と同材料により、断面形状が略四角形状に形成される。このクッション部材17がカバー71に収容されると、図7(B)に示すように、クッション部材171の上面(ユーザに当接する面)は、カバー171の張力により、略円弧形状に変形される。ユーザがヘッドホンを装着して、略円弧形状を有するイヤパッド17がユーザの頭部に当接すると、図6の(C)に示すように、イヤパッド17の上方(ユーザ方向)の一部が、ユーザの頭部Bの形状に追従して変形する。しかしながら、この追従した変形部は、イヤパッド17の円弧形状の先端部分に限定され、イヤパッド17−2は、接触面Dのみがユーザの頭部Bと当接した状態となる。
【0039】
図6(B)に示す本実施形態に係るイヤパッド7と、図7(C)に示す関連技術に係るイヤパッド17とを比較すると判るように、本実施形態に係るイヤパッド7の接触面Cの面積は、関連技術に係るイヤパッド17の接触面Dの面積よりも増加する。従って、本実施形態に係るイヤパッド7によれば、ユーザの頭部の形状に追従して変形して接触面積を増やすことができるので、ヘッドホン1の密閉性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態に係るイヤパッド7は、中環部材82の硬度が低下しているので、ユーザの頭部の形状に柔軟に追従することができる。よって、例えば、イヤパッド7が耳全体を覆うヘッドホン1(例えば密閉型)に使用された場合、イヤパッド7は、ユーザの耳周囲の頭部の形状に追従することが可能である。一方、イヤパッド7が耳に当接するヘッドホン1(例えば開放型)に使用される場合、イヤパッド7は、ユーザの耳の形状に応じて変形することが可能である。しかも、このイヤパッド7は、耳周囲の形状は、耳の形状に追従して変形した後も、大きな接触面積を損ねることがないため、密閉状態を維持して、音質を向上させることができる。
【0041】
更に、本実施形態に係るイヤパッド7は、孔91を穿設するのみで中環部材82の硬度を変更することができ、密閉性を高めることができる。よって、イヤパッド7は、非常に容易に作成することができる。加えて、イヤパッド7は、硬度を調整するために多数の材料を用意する必要もないので、製造段階でストックしておくべき在庫の点数を低減することもでき、製造コストの削減をすることもできる。
【0042】
<第1実施形態に係る変更例>
また、本実施形態に係るイヤパッド7は、クッション部材8の中環部材82に孔91を穿設することにより、中環部材82の硬度を低下させているが、孔91の大きさや数を調整することにより、クッション部材8における硬度分布を調整することも可能である。よって、この硬度分布を調整した変更例について、図8及び図9を参照して説明する。
【0043】
図8は、本実施形態に係るクッション部材の第1の変更例を説明するための説明図である。尚、図8には、左側のイヤパッドのクッション部材8−1を示している。
【0044】
図8に示すように、第1の変更例に係るクッション部材8−1は、孔91の数を、前方(装着時におけるユーザの前方向、z軸負の方向)に行くほど減少させている。つまり、前方では中環部材82の単位長さあたりの孔91の数を減少させ、環の周回りに後方に向かうに従い、孔91の数を増加させている。本変形例における他の構成は、上記第1実施形態に係るクッション部材8と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0045】
かかる構成によれば、前方に比べて孔91の密度が高い後方において、前方の中環部材82の硬度よりも、後方の中環部材82の硬度を低くすることができる。よって、後方のクッション部材8−1におけるユーザ頭部の形状への追従性を向上させることができる。
【0046】
一般的に耳の形状は、前方よりも後方の方が複雑である。よって、例えば、ユーザの耳に当接するイヤパッドの場合、後方における追従性を向上させることにより、イヤパッドの密閉性を更に向上させることができる。
【0047】
一方、ユーザの耳の周囲を覆うイヤパッドの場合、イヤパッドは、耳の周囲に当接されるが、耳の前方の頭部の形状よりも、耳の後の頭部の形状の方が、耳の外形に対して傾斜が急になり、当該傾斜に対する追従性が要求されることになる。本変更例に係るクッション部材8−1は、耳の後方における急な傾斜面にも追従することができるため、イヤパッドの密閉性を更に向上させることができる。
【0048】
このように、中環部材82の硬度分布の変更は、本実施形態の第2の変更例においても実現することができる。以下、図9を参照して、この第2の変更例について説明する。
【0049】
図9は、本実施形態に係るクッション部材の第2の変更例を説明するための説明図である。尚、図9にも、左側のイヤパッドのクッション部材8−2を示している。
【0050】
図9に示すように、第2の変更例に係るクッション部材8−2は、孔91の大きさを、後方(装着時におけるユーザの後方向、z軸負の方向)に行くほど大きくしている。つまり、前方では中環部材82の孔91の大きさは、上記第1実施形態における孔91の大きさと同様であるが、環の周回りに後方に向かうに従い、孔91の大きさを大きくしている。本変形例における他の構成は、上記第1実施形態に係るクッション部材8と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0051】
この第2の変更例に係るクッション部材8−2も、上記の第1の変更例に係るクッション部材8−1と同様に、前方の中環部材82の硬度よりも、後方の中環部材82の硬度を低くすることができる。よって、後方のクッション部材8−2におけるユーザ頭部の形状への追従性を向上させることができる。従って、第2の変更例でも、第1の変更例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0052】
上記第1の変更例及び第2の変更例からも明らかなように、本実施形態に係るイヤパッドによれば、中環部材82に穿設する孔91の大きさや数を変更することにより、中環部材82の硬度を容易に変更することが可能である。よって、上記の変更例で示した例以外にも、孔91の大きさや数を変更し、所望の硬度を達成することが可能である。尚、これらの第1の変更例及び第2の変更例においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができることは、言うまでもない。
【0053】
<第2実施形態>
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態に係るイヤパッドが有するクッション部材について説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。尚、図10にも、左用のイヤパッドのクッション部材8−3を示している。そして、図10(A)には、クッション部材8−3をユーザの耳側、つまり、右側のイヤパッド側からx軸負の方向へと見た場合を示し、図10(B)には、クッション部材8のE−E線による断面を示している。
【0054】
上記第1実施形態においては、中環部材82に孔91を穿設することにより、中環部材82の硬度を相対的に低減させたが、本実施形態に係るクッション部材8−3では、中環部材82−1の材質を変更することにより、中環部材82−1の硬度を相対的に低減させる。より具体的に説明する。
【0055】
本実施形態に係るクッション部材8−3は、上記第1実施形態に係るクッション部材8と同様に、3層構造を有する。つまり、クッション部材8−3は、外環部材81、中環部材82−1、及び内環部材83−1を有する。そして、外環部材81は、上記第1実施形態に係るクッション部材8が有する外環部材81と同様の材質により構成される。
【0056】
しかしながら、本実施形態に係る中環部材82−1は、この外環部材81よりも硬度の低い材質により形成される。そして、内環部材83−1も、外環部材81よりも硬度の低い材質により形成される。また、中環部材82−1と内環部材83−1との硬度は、中環部材82−1の方が低い。つまり、硬度は、高い順に、
外環部材81>内環部材83−1>中環部材82−1
となる。
【0057】
かかる構成によれば、上記第1実施形態と同様に、カバーの張力により、外環部材81及び内環部材83−1が中環部材82−1側にゆがむことができ、接触面積を増やすことができる。よって、本実施形態に係るクッション部材8−3を有するイヤパッドによっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
また、本実施形態では、内環部材83−1は、外環部材81よりも硬度の低い部材により形成されるが、外環部材81と内環部材83−1とを同一の材質、つまり同一の硬度で形成したとしても、上記第1実施形態と同様に十分な密閉性を確保することが可能である。
しかし、本実施形態によれば、更に、外環部材81の硬度を内環部材83−1の硬度よりも高くすることにより、外環部材81は、ユーザの頭部とより密着することができる。よって、このクッション部材8−3を有するイヤパッドは、更に、密閉性を高めることができる。つまり、内環部材83−1の硬度が外環部材81よりも低いことにより、内環部材83−1の中環部材82−1側への歪みは、外環部材81よりも大きくなる。よって、外環部材81のユーザ頭部に接触する面の平坦度合が更に維持される。一般にヘッドホンに対してユーザの耳の位置の頭部が一番突出しており、この耳の位置から離れるにつれて、ユーザの頭部はヘッドホンから離隔する。上記の構成によれば、このような頭部の外形に更に追従して、外環部材81が、より頭部に密着することができる。よって、イヤパッドは、更に密閉性を向上させることができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、第1実施形態では、孔91は、貫通孔であるとして説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図11に示すように、孔91は、貫通孔でなくてもよい。この場合、孔91は、ユーザの頭部に当接する面から穿設することにより形成される。また、橋架部材92は、孔91の底部(x軸負の方向)にも配置される。
【0061】
また、第1実施形態では、孔91は、図8等に示すように、略円柱形であるとしたが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、図11に示すように、孔91は、断面が長円状に形成されてもよく、図示しないが、断面が略四角形状であってもよい。尚、図11には孔91が貫通孔でない場合を示しているが、孔91は、長孔形状を有し、かつ、貫通孔であってもよい。
【0062】
また、第2実施形態では、中環部材82−1の材質等を変更することにより硬度を調整したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図12に示すように、中環部材82−1の材質等を変更すると共に、孔91を穿設してもよい。また、この孔91の形状は、上記同様様々な変更例が適用しうることは言うまでもない。
【0063】
尚、図11及び図12には、左用のイヤパッドが有するクッション部材8−4、8−5を示しており、一部を切断した切断面をも示している。切断していない状態においてクッション部材8−4、8−5は、孔91の形状等を除けば上記第1実施形態又は第2実施形態と同様に形成される。
【0064】
また、上記実施形態では、イヤパッドがヘッドホンに使用される場合について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。上記各実施形態に係るイヤパッドは、ヘッドセット、イヤマフラー、ヘルメット等、イヤパッドがユーザの耳又はその周囲の頭部と当接し、内部空間の密閉性が要求される装置に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンを説明するための説明図である。
【図2】本発明の各実施形態に係るイヤパッドが取り付けられるヘッドホンを説明するための説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るイヤパッドの構成について説明するための説明図である。
【図4】同実施形態に係るイヤパッドの内部構成について説明するための説明図である。
【図5】同実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。
【図6】同実施形態に係るイヤパッドについて説明するための説明図である。
【図7】同実施形態の関連技術に係るイヤパッドの断面形状を示す断面図である。
【図8】同実施形態に係るクッション部材の第1の変更例を説明するための説明図である。
【図9】同実施形態に係るクッション部材の第2の変更例を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るクッション部材について説明するための説明図である。
【図11】本発明の変更例に係るクッション部材を説明するための説明図である。
【図12】本発明の変更例に係るクッション部材を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ヘッドホン
2 ヘッドバンド
3 スライダ
4 ハンガ
5 ハウジング
6 コード
7 イヤパッド
8,8−1,8−2,8−3,8−4,8−5 クッション部材
71 カバー
72 接続部
73 通気部
74 張出部
81 外環部材
82,82−1 内環部材
83,83−1 中環部材
91 孔
92 橋架部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響回路を収納可能なハウジングに取り付け可能であり、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドにおいて、
前記環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、
少なくとも前記中環部材の硬度は、前記外環部材と前記内環部材と異なることを特徴とする、イヤパッド。
【請求項2】
前記中環部材の硬度は、少なくとも前記外環部材よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載のイヤパッド。
【請求項3】
前記中環部材の硬度は、少なくとも前記内環部材よりも低いことを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項4】
前記内環部材の硬度は、少なくとも前記外環部材よりも低いことを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項5】
前記中環部材には孔が穿設されていることを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項6】
前記中環部材は、前記外環部材と前記内環部材とを連結する橋架部材として構成されることを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項7】
前記中環部材の硬度は、前方側よりも後方側が低いことを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項8】
音響回路を収納可能なハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドとを有するヘッドホンであって、
前記イヤパッドの前記環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、
少なくとも前記中環部材の硬度は、前記外環部材と前記内環部材と異なることを特徴とする、ヘッドホン。
【請求項1】
音響回路を収納可能なハウジングに取り付け可能であり、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドにおいて、
前記環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、
少なくとも前記中環部材の硬度は、前記外環部材と前記内環部材と異なることを特徴とする、イヤパッド。
【請求項2】
前記中環部材の硬度は、少なくとも前記外環部材よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載のイヤパッド。
【請求項3】
前記中環部材の硬度は、少なくとも前記内環部材よりも低いことを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項4】
前記内環部材の硬度は、少なくとも前記外環部材よりも低いことを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項5】
前記中環部材には孔が穿設されていることを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項6】
前記中環部材は、前記外環部材と前記内環部材とを連結する橋架部材として構成されることを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項7】
前記中環部材の硬度は、前方側よりも後方側が低いことを特徴とする、請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項8】
音響回路を収納可能なハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、環状緩衝部材と当該環状緩衝部材を覆う被覆部材とを含むイヤパッドとを有するヘッドホンであって、
前記イヤパッドの前記環状緩衝部材は、外環部材と中環部材と内環部材とから構成され、
少なくとも前記中環部材の硬度は、前記外環部材と前記内環部材と異なることを特徴とする、ヘッドホン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−105841(P2009−105841A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277971(P2007−277971)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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