説明

イヤパッド

【課題】蒸れを防止することができるイヤパッドを提供する。
【解決手段】イヤパッド7は、内部が空洞に形成された環状の外装体9および外装体9内に設けられた通気性部材とからなる。外装体9は、少なくともヘッドホン装着時においてユーザの耳または側頭部に接する接触面が通気性を有するように構成されている。外装体9において、通気性有するように構成された面以外の面は気密性を有するように構成されている。外装体9が通気性を有するように構成されるとともに、外装体9内部には通気性部材が設けられているため、空気の流動が可能となる。これにより、イヤパッド装着時における蒸れを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、イヤパッドに関し、詳しくは、ヘッドホンなどに設けられる緩衝部材としてのイヤパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯型音楽プレーヤ、テレビジョン受像機などの各種の音声再生装置から出力される音声を聴くためにヘッドホンが使用されている。このヘッドホンは一般的に、ユーザの頭部に接するヘッドバンドと、ヘッドバンドの左右両端に設けられ、ドライバユニットなどからなる音声出力手段を収容したハウジングとを備える。そして、ハウジングにおけるユーザの側頭部に対向する側の面には、ハウジングがユーザの側頭部に直接当接することを防ぐ緩衝部材としてのイヤパッドが設けられている。
【0003】
イヤパッドは、ヘッドホンを装着した際のユーザの耳、側頭部などへの接触による不快感を低減する緩衝部材として働く。また、イヤパッドは通常、ウレタン、スポンジなどのクッション材を合成皮革などで覆うことにより、高い気密性を有するように構成されている。イヤパッドは、高い気密性を有し、ユーザの側頭部との隙間を密閉することにより、外部からの騒音を遮断してドライバユニットからの音声を聴取し易くする役割も担う。さらに、ドライバユニットからの音声が外部に漏れることを防ぐ役割も担う。
【0004】
しかし、気密性が高いということは、一方では通気性が悪いということもできる。したがって、そのような気密性が高いイヤパッドを備えるヘッドホンを長時間使用し続けると、耳周辺および側頭部が蒸れてユーザに不快感を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、スピーカユニットに通気孔を設けることにより、耳が収容されるイヤパッドの開口部内の蒸れを抑制するヘッドホン装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−61593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術によれば、耳が収容されるイヤパッドの開口部内の蒸れを軽減することが可能である。しかし、イヤパッドとユーザの皮膚との接触部分における蒸れは防止することができない、という未解決の問題がある。
【0008】
したがって、本技術の目的は、蒸れを防止することができるイヤパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本技術は、ヘッドホンに装着され、内部が空洞の環状に形成され、少なくとも、ユーザによるヘッドホンの装着時においてユーザの側頭部に接する接触面が通気性を有するように構成された外装体と、外装体内に配された通気性部材とからなるイヤパッドである。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、ヘッドホン装着時においてイヤパッドと接触する耳および側頭部などにおける蒸れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本技術に係るイヤパッドを備えるヘッドホンの外観構成を示す図である。
【図2】図2Aは、本技術に係るイヤパッドの内部構成を示す断面斜視図であり、図2Bはイヤパッドを構成する外装体の視断面図であり、図2Cは外装体の他の例を示す断面図である。
【図3】図3は、イヤパッドにおける空気の流動および音抜けについて説明するための断面斜視図である。
【図4】図4は、本技術に係るイヤパッドと、全面が通気性を有するように構成されたイヤパッドとにおける音圧感度の比較結果を示すグラフである。
【図5】図5Aおよび図5Bは、本技術に係るイヤパッドの変形例を示す外装体の側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本技術は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.実施の形態>
[1−1.ヘッドホンの構成]
[1−2.イヤパッドの構成]
<2.変形例>
【0013】
<1.実施の形態>
[1−1.ヘッドホンの構成]
まず、図1および図2を参照してヘッドホン1の構成について説明する。図1は、本技術に係るイヤパッド7を備えるヘッドホン1の外観構成を示す図である。図2Aは、ヘッドホン1のRチャンネル側のハウジング5およびイヤパッド7の断面斜視図であり、図2Bはイヤパッドを構成する外装体9の側面視断面図である。なお、Lチャンネル側のハウジング5およびイヤパッド7もRチャンネル側と同様に構成されている。
【0014】
ヘッドホン1は、ヘッドバンド2、スライダ3、3、ハンガ4、4、ハウジング5、5、コード6、イヤパッド7、7およびハウジング5内に設けられたドライバユニット8とから構成されている。
【0015】
ヘッドバンド2はユーザの頭部に沿うように湾曲状に形成されており、装着状態においてユーザの頭頂部に接することによりヘッドホン1全体を支持するものである。ヘッドバンド2はプラスチックなどの合成樹脂、金属などを用いて構成されており、所定の剛性および弾性を有することにより可撓性を備えている。これにより、装着時にはハウジング5およびイヤパッド7をユーザの側頭部方向に押圧してヘッドホン1の装着状態を維持することができる。なお、ヘッドバンド2の内面におけるユーザの頭頂部に当接する部分に緩衝材としてゴムなどを設けるようにしてもよい。また、携帯時に中央で折り畳めるようにヒンジを備えるようにしてもよい。
【0016】
スライダ3は、ヘッドバンド2の両端に設けられている。そして、スライダ3にはハンガ4が設けられている。スライダ3はヘッドバンド2内部において摺動可能に構成されている。スライダ3をヘッドバンド2内部で摺動させることにより、ハンガ4をヘッドバンド2に対して下方または上方に移動させることができる。ヘッドホン1の装着時には、ユーザの頭部の大きさや耳と頭頂部との距離などに合わせてスライダ3の伸縮度合いを調整することにより、ハウジング5およびイヤパッド7をユーザの耳に対向する位置に合わせる事ができる。これにより、ユーザは自らの身体的特徴や嗜好に応じた装着感を得ることができる。一方、ヘッドホン1を使用しない場合には、スライダ3を縮めた状態にすることにより、保管スペースを節約することができる。
【0017】
ハンガ4はスライダ3の先端に設けられており、ハウジング5を回動自在に支持するものである。ハンガ4は、例えば、一対の先端からそれぞれ内向きに突出する支持ピン(図示せず。)で軸支することによりハウジング5を回動自在に支持する。これにより、ヘッドホン1の装着時においては、ユーザの耳および側頭部の形状に合わせてハウジング5の向きが変わるため、ハウジング5をユーザの側頭部の形状に適した状態で耳に対向させることができる。
【0018】
ハウジング5は、内部に電気信号を音波に変換して出力する音声出力部としてのドライバユニット8などを収容する収容部として機能するものである。ハウジング5は例えば、プラスチックなどの合成樹脂を用いて形成されている。ハウジング5のイヤパッド7が設けられる側の反対側の面にはドライバユニット8の背面からハウジング5を通じて音抜けが生じるように複数の音抜け孔5Aが形成されている。ただし、音抜け孔5Aは必ずしも設ける必要はない。ヘッドホン1をいわゆるオープンエアー型(開放型)ヘッドホンとして構成する場合には、ハウジング5に音抜け孔を設けるとよい。一方、ヘッドホン1をいわゆるクローズド型(密閉型)ヘッドホンとして構成する場合には音抜け孔は設ける必要はない。
【0019】
コード6は、内部に左チャンネル用導線L、右チャンネル用導線R、グランド線Gなどが挿通しており、携帯型音楽プレーヤ、テレビジョン受像機などの音声再生装置(図示せず。)からの音声信号をヘッドホン1に伝送するためのものである。コード6の一端は一対のハウジング5のうち一方のハウジング5内に収容されたドライバユニット8に接続される。また、コード6の他端にはプラグ(図示せず。)が設けられている。そのプラグが音声再生装置に接続されることにより、ヘッドホン1が音声再生装置に接続される。
【0020】
コード6が接続されてない他方のハウジング5内のドライバユニット8を駆動するために、コード6が接続された一方のハウジング5と、コード6が接続されていない他方のハウジング5との間には、接続コード(図示せず)が設けられている。この接続コードは、コード6またはコード6が接続されたハウジング5内のドライバユニット8に接続されるとともに、ハンガ4、スライダ3及びヘッドバンド2の内部を挿通して他方のハウジング5内のドライバユニット8に接続される。この接続コードによって、コード6が接続されていない他方のハウジング5内のドライバユニット8に音声信号が伝送される。ただし、左右両方のハウジング5内のドライバユニット8にそれぞれ音声信号を供給するように2本のコードをそれぞれ左右のハウジング5に接続する構成としてもよい。
【0021】
イヤパッド7は、ハウジング5におけるユーザの側頭部に対向する側の面に設けられている。イヤパッド7は、ハウジング5とユーザの側頭部との間に介在することにより、ハウジング5とユーザの側頭部間の緩衝部材として機能するものである。すなわち、イヤパッド7は、ヘッドホン1の装着時において、変形しにくい硬い素材で形成されたハウジング5が直接ユーザの耳および側頭部に接してユーザに不快感や痛みを与えることを防止するものである。
【0022】
また、イヤパッド7は、音抜けを抑制することにより、低音域の再現性の向上などの音質の向上を図る役割も担う。また、ドライバユニット8から出力される音声が外部に漏れることを防ぐ役割も担う。さらに、イヤパッド7は外部からの騒音を遮断してドライバユニット8からの音声を聴取し易くする働きも担う。
【0023】
なお、イヤパッド7とハウジング5との間には防護ネットを設けてもよい。この防護ネットは、ハウジング5に収容されているドライバユニット8などへの塵埃の侵入を防止するためのものである。
【0024】
[1−2.イヤパッドの構成]
イヤパッド7は中央にユーザの耳を収納するための開口部7Aを有する平面視略円形の環状に形成されている。イヤパッド7は、内部が空洞の環状に形成された外装体9と、イヤパッド7をハウジング5に接続するための接続部13と、外装体9内に充填された複数の小片体14、14、・・・とから構成されている。
【0025】
なお、本実施の形態においては、図2Aおよび図2Bに示すように、外装体9は断面形状が略八角形状に形成されている。以下の説明では、八角形を構成する各面のうち、ヘッドホン1の装着時にユーザの側頭部に接触する面を接触面9A、接触面9Aと反対のハウジング側の面を底面9B、外周側の面を外周側面9C、内周側の面を内周側面9Dと称する。さらに、4つの斜面のうち、外周における接触面9A側の面を接触面側外周斜面9E、内周における接触面9A側の面を接触面側内周斜面9F、外周における底面9B側の面を底面側外周斜面9G、内周における底面9B側の面を底面側内周斜面9Hと称する。
【0026】
外装体9は、第1外装部10、第2外装部11、第3外装部12とから構成されている。第1外装部10は、外装体9における接触面9A側を構成するものである。第1外装部10は、例えば、メッシュ加工が施された布、メッシュ加工が施された合成皮革などの薄状体を用いて形成されることにより、通気性を有するように構成されている。また、多数の通気孔を形成することにより布、皮革などの薄状体が通気性を備えるようにしてもよい。さらに、例えば、ハニカム構造などの特殊な構造により通気性を有する素材を採用して薄状体を構成することにより、第1外装部10が通気性を有するようにしてもよい。すなわち、第1外装部10を構成する薄状体としては、通気性を備えるとともに、ユーザの耳および側頭部に接した際にユーザに不快感を与えない肌触りのものであればどのようなものでも採用することができる。
【0027】
第2外装部11は、外装体9における外周側面9C側を構成するものである。第3外装部12は、外装体9における底面9Bおよび内周側面9D側を構成するものである。第2外装部11および第3外装部12は例えば、天然皮革、合成皮革などの気密性の高い素材からなる薄状体により構成されている。
【0028】
第1外装部10、第2外装部11および第3外装部12は長手方向両端がそれぞれ内向きに折り曲げられている。そして、その折り曲げ部分はそれぞれ例えば縫い合わせにより連結されている。これにより、外装体9は内部が空洞の環状に構成されている。
【0029】
具体的には、第1外装部10の一端と第2外装部11の一端とが連結されている。また、第2外装部11の他端と第3外装部12の一端とが連結されている。さらに、第3外装部12の他端と第1外装部10の他端とが連結されている。
【0030】
このように、本実施の形態においては、外装体9は第1外装部10、第2外装部11および第3外装部12という3つの部材を連結させることにより構成されている。それら3つの外装部のうちの1つ(本実施の形態においては第1外装部10)を通気性を有するように構成することにより、少なくとも接触面9A側のみが通気性を有するという構成を容易に実現することができる。これにより、本技術に係る製品の製造を迅速かつ容易に行うことができる。
【0031】
なお、接触面9Aに加え、さらに、他の面が通気性を有するように構成してもよい。この点について図2Bを参照して説明する。
【0032】
図2Bに示すように、外装体9は、接触面9A、底面9B、外周側面9C、内周側面9D、接触面側外周斜面9E、接触面側内周斜面9F、底面側外周斜面9G、底面側内周斜面9Hを有し、断面形状が略八角形状になるように構成されている。断面形状が略八角形状である場合には、接触面9Aに加え、例えば、接触面側外周斜面9Eの全体または一部、外周側面9Cの全体又は一部も通気性を有するように構成してもよい。さらに、接触面側内周斜面9Fの全体または一部、内周側面9Dの全体または一部も通気性を有するように構成してもよい。
【0033】
図2Bに示す外装体9においては、接触面9Aに加え、接触面側外周斜面9Eの全体および接触面側内周斜面9Fの全体が通気性を有するように構成されている。このように構成することにより、ヘッドホン1の装着時において通気性を有する接触面9Aがユーザの耳および側頭部によって閉塞されても、通気性を有する接触面側外周斜面9Eおよび接触面側内周斜面9Fを通じて開口部7A内と外部とが常に連通することになる。これにより、常に高い通気性を維持することができる。
【0034】
なお、接触面9Aと隣接する面である接触面側外周斜面9Eおよび接触面側内周斜面9Fが通気性を有する構成にすることにより、接触面9A、接触面側外周斜面9Eおよび接触面側内周斜面9Fを一部材で構成することができる。これにより通気性を有するイヤパッドの形成を容易に行うことができる。本実施の形態においては、図2Aおよび図2Bに示すように、接触面9A、接触面側外周斜面9Eおよび接触面側内周斜面9Fが第1外装部10によって構成されている。
【0035】
なお、上述の記載は接触面9Aのみを通気性を有するように構成することを否定するものではない。すなわち、図2Cに示すように、接触面9Aのみが通気性を有するように構成してもよい。この構成によっても接触面9Aにおける蒸れを防止することができる。また、接触面9Aおよび接触面9Aに隣接する面の全体または一部が通気性を有するように構成してもよい。
【0036】
ただし、外装体において通気性を有する部分が大きくなりすぎるとそこからの音抜けの量が増大することになる。これにより、音質、特に低音の再現性などが低下してしまう。したがって、通気性を有する部分の大きさは、外装体9の通気性を確保しつつ、音抜けを最小限に抑えることができるように適宜設定するとよい。
【0037】
イヤパッド7の構成の説明に戻る。外装体9にはイヤパッド7をハウジング5に接続するための接続部13が設けられている。本実施の形態においては、第2外装部11の折り曲げ部分と第3外装部12の折り曲げ部分の間に接続部13の一端が挟み込まれており、その状態で縫い合わせることにより接続部13が外装体9に結合されている。
【0038】
接続部13は、イヤパッド7のハウジング5側に設けられており、イヤパッド7の中心方向に開いた断面略コの字状に形成されている。接続部13は、ハウジング5方向に延長形成され、その先端がイヤパッド7の中心方向に向くように形成されている。そして、イヤパッド7の中心方向に向けて延長形成された部位が、ハウジング5の外周に形成されたイヤパッド取り付け用溝(図示せず。)に挿入されることにより、イヤパッド7は、ハウジング5に固定される。イヤパッド7は、ハウジング5から取り外して、交換することもできる。接続部13は第2外装部11および第3外装部12と同様に天然皮革、合成皮革などを用いて構成されている。ただし、接続部13の構成はこのような構成に限られるものではない。イヤパッド7をハウジング5に接続することが出来ればどのような構成であってもよい。
【0039】
外装体9の内部には通気性部材としての複数の小片体14が充填されている。小片体14は本実施の形態においては、孔を有する短尺の筒状体として構成されている。また、小片体14は、例えば、ポリエチレンなどを材料として、柔軟性または弾力性を有するように構成されている。
【0040】
なお、小片体14を構成する材料としては、ポリエチレンの他に、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、シリコン、塩化ビニル樹脂、ナイロンなど、柔軟性または弾力性を有する材料であればどのような材料でも採用可能である。ただし、ヘッドホン1の重量によるユーザへの負担を軽減すべく、小片体14は軽量なものが好ましい。なお、小片体14は外装体9がイヤパッド7としての形状を維持することができるよう適切な量を充填するとよい。以上のようにして本技術に係るイヤパッド7が構成されている。
【0041】
なお、例えば、第1外装部10がメッシュ加工が施された布で構成されている場合、デザイン上の観点から第2外装部11、第3外装部12および接続部13も第1外装部10と同様のメッシュ加工が施された布で被覆するようにしてもよい。また、第1外装部10、第2外装部11、第3外装部12および接続部13に同一の色を付してもよい。これにより、第1外装部10、第2外装部11、第3外装部12および接続部13が全てメッシュ加工が施された布により構成されているような統一ある美感を備えるイヤパッドを実現することができる。
【0042】
次に、図3を参照して本技術に係るイヤパッド7の通気性について説明する。外装体9の内部に複数の小片体14が充填されており、小片体14間には多数の隙間が形成される。さらに、外装体9における接触面9A側、接触面側外周斜面9Eおよび接触面側内周斜面9Fを構成する第1外装部10は通気性を有するように構成されている。この小片体14間の隙間および通気性を有する第1外装部10を通じて開口部7A内と外部とで矢印Aに示すような空気の流動が可能となる。これにより、ユーザの耳が収容される開口部7A内と外装体9の接触面9Aにおける蒸れを防止することができる。
【0043】
さらに、小片体14は貫通する孔を有する筒型状に形成されているため、その孔を通じても空気の流動が可能となる。これにより、イヤパッド1の通気性がさらに高まり、イヤパッド1とユーザの耳および側頭部との間における蒸れをより確実に防止することができる。
【0044】
次に、イヤパッド7における音抜けについて説明する。ドライバユニット8から音声が出力されると図3中の矢印Bに示すように、音声はイヤパッド7の開口部7Aを通じて直接ユーザの耳へ伝達される。また、矢印Cに示すようにドライバユニット8の背面からハウジング5の音抜け孔5Aを通じても音抜けが生じる。
【0045】
第1外装部10は通気性を有するように構成されているとともに、外装体9内部にも通気性を有する複数の小片体14が充填されている。これにより矢印Dで示すように、イヤパッド7内部の小片体14および第1外装部10を通じてわずかではあるが音抜けが生じる。
【0046】
一方、第2外装部11および第3外装部12は合成皮革などの気密性が高い材料を用いて構成されている。これにより、矢印Eおよび矢印Fに示すようにドライバユニット8からの音は第2外装部11および第3外装部12により遮断される。したがって、第2外装部11および第3外装部12部分で構成されている面からは音抜けは生じない。これにより、不要な音抜けを防止し、音質、特に低音域の再現性を維持することができる。
【0047】
このように、本技術に係るイヤパッド7は、外装体9内に通気性を有する通気性部材が充填されており、また、少なくとも接触面9Aを構成する第1外装部10が通気性を有するように構成されている。さらに、第2外装部11および第3外装部12が気密性を有するように構成されている。これにより、蒸れの防止と、不要な音抜けを最小限に抑えることによる音質の維持とを両立させることが可能となっている。
【0048】
本実施の形態においては、小片体14はポリエチレンなどの柔軟性または弾力性を有する素材を用いて形成されており、さらに円筒状に構成されている。よって、ヘッドホン1の装着時にはイヤパッド7はユーザの耳および側頭部の凹凸形状に追従して変形する。これにより、ヘッドホン1を長時間装着してもイヤパッド7が耳および側頭部を圧迫してユーザに不快感を与えるということがない。また、イヤパッド7はユーザの耳および側頭部の凹凸形状に追従して変形するため、耳および側頭部の凹凸とイヤパッド7との間に余分な隙間が生じることを防いで、不要な音抜けおよび騒音の侵入などを抑制することができる。
【0049】
図4は、横軸を周波数(Hz)、縦軸を音圧感度(dB/mW)として、本技術に係るイヤパッドと、外装体全面が通気性を有するように構成されたイヤパッドとにおいて音圧感度を比較した結果を示すグラフである。図4のグラフにおける縦軸の1メモリは5dBを示している。音圧感度の比較は、上述の実施の形態において説明を行った本技術に係るイヤパッド、全面が通気性を有するイヤパッドを共に図1に示すような頭の上を跨ぐヘッドバンドを有するヘッドホンに装着して、同一の音声を出力させ、それを測定することにより行った。
【0050】
図4において、実線で示されているのは本技術に係るイヤパッドの特性である、また、破線で示されているのは、外装体全面が通気性を有するように構成されており、その外装体内に通気性部材としての小片体であるポリエチレン製の筒状体が充填されたイヤパッドの特性である。
【0051】
全面が通気性を有するように構成されたイヤパッドは、低音域において音圧感度が低下している。一方、本技術に係るイヤパッドは、外装体全面が通気性を有するように構成されたイヤパッドに比べて低音域において約10dB音圧感度が高くなっている。また、高音域においては、本技術に係るイヤパッドは、全面が気密性を有する(通気性なし)ように構成されたイヤパッドとほぼ同等の音圧感度特性を有している。
【0052】
この結果から、本技術に係るイヤパッドは、外装体全面が通気性を有するように構成されたイヤパッドに比べて音質の面(特に低音域の再現性)で優れているということができる。これは、本技術においては、外装体の全面が通気性を有するようには構成せず、外装体の一部が通気性を有するように構成し、その他の部分は通気性を有さないように構成したことによるものである。
【0053】
また、実線で示す特性は、本技術に係るイヤパッドは全音域において、外装体全面が気密性を有するように構成されたイヤパッドを使った開放型のヘッドホンとほぼ同等の音圧感度特性を有していることを示すものでもある。したがって、本技術に係るイヤパッドは、全面が通気性を有するように構成されたイヤパッドに比べて低音域の再現性などの音質が優れていると同時に、蒸れを防止しつつ、外装体全面が気密性を有するように構成されたイヤパッドと同等の音圧感度を実現できているということができる。
【0054】
本実施の形態では、通気性部材としての複数の小片体14は、ポリエチレンを用いた筒状体として構成されているが、通気性部材としては筒状以外の形状を有するものを採用することも可能である。以下、通気性部材としての小片体についての検討結果について説明する。
【0055】
<サンプル1>
外装体を第1外装部、第2外装部および第3外装部の計3つの外装部により構成した。また、第1外装部をメッシュ加工が施された布で構成し、第2外装部および第3外装部を合成皮革で構成した。そして、外装体内部に小片体として、ポリエチレンを材料とする筒状体を複数充填することによりイヤパッドを構成した。
【0056】
<サンプル2>
市販のストローを所定の長さに切断して短尺の筒型状にしたもの(以下、ストローカット体と称する。)を外装体内に複数充填した以外は、サンプル1と同様にして、イヤパッドを作製した。
【0057】
<サンプル3>
外装体内にそば殻を充填した以外は、サンプル1と同様にして、イヤパッドを作製した。
【0058】
<サンプル4>
外装体内にポリプロピレンを材料とするビーズを複数充填した以外は、サンプル1と同様にして、イヤパッドを作製した。
【0059】
<サンプル5>
外装体内に丸型の硬質プラスチックを複数充填した以外は、サンプル1と同様にして、イヤパッドを作製した。
【0060】
以上のサンプル1乃至サンプル5について、重量、装着感、雑音、音質、蒸れ感の観点から検討を行った。検討は上記サンプルのイヤパッドを備えるヘッドホンを実際に使用することにより行った。
【0061】
検討項目の重量とは、イヤパッドとしての形状を保持することが出来る程度の量の小片体を外装体内に充填した状態におけるイヤパッドの重量について検討したものである。ヘッドホンは通常、長時間使用するものであるから、軽量であることが好ましい。
【0062】
装着感とは、ヘッドホンを装着した際に、小片体が耳および側頭部に外装体を介して接触することによりユーザに不快感を与えないか、小片体が硬質であるためにユーザの痛みなどを与えないか、などイヤパッドの耳当たりが良好であるか否かを検討したものである。
【0063】
雑音とは、イヤパッドを構成する小片体が発生させる音について検討したものである。外装体内に複数の小片体を充填させた場合、小片体同士が擦れて雑音が発生するおそれがあるからである。雑音が生じるとヘッドホンから出力される音声の聴取に悪影響を及ぼすため、雑音は少ないほうが好ましい。
【0064】
音質とは音抜けによる音質の変化、特に低音の再現性について検討したものである。蒸れ感とは、ヘッドホンの装着により主にイヤパッドが接触する耳および側頭部における蒸れ具合について検討したものである。
【0065】
試験結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
重量については、円筒体、ストローカット体および丸型硬質プラスチックが軽量であり良好であるという結果が得られた。
【0068】
装着感については、円筒体およびそば殻が特に良好であり、ストローカット体およびビーズが次いで良好であるという結果が得られた。
【0069】
雑音については、円筒体およびストローカット体が雑音が少なく特に良好であり、ビーズ、丸型硬質プラスチックが次いで雑音が少なく良好であるという結果が得られた。これは、ポリエチレンで構成された円筒体およびストローカット体は柔軟性または弾力性を有しているため、円筒体同士が衝突、接触などをしても摩擦音が発生しにくいからであると考えられる。
【0070】
音質については、円筒体、ストローカット体および丸型硬質プラスチックが音、特に低音の再現性が高く特に良好であり、そば殻およびビーズが次いで良好であるという結果が得られた。
【0071】
蒸れ感については、円筒体およびストローカット体および丸型硬質プラスチックが蒸れが少なく特に良好であり、ビーズが次いで良好であるという結果が得られた。
【0072】
以上の検討結果から、通気性部材としての小片体は、通気性を有し、軽量であり、小片体同士の接触による摩擦音の発生が少なく、さらに柔軟性または弾力性を有するものが望ましいと考えられる。なお、それらの条件を満たすものであれば、あらゆる材料、あらゆる形状を採用することが可能であると考えられる。
【0073】
<3.変形例>
以上、本技術の一実施の形態について具体的に説明したが、本技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0074】
上述した実施の形態では、外装体9は第1外装部10、第2外装部11および第3外装部12の計3つの外装部により構成されている。ただし、外装体9は必ずしも3つの外装部で形成されている必要はない。1または2つの外装部で本技術に係る効果を奏することができる、少なくとも接触面が通気性を有する外装体を実現できる場合には、1または2つの外装部で外装体を構成してもよい。
【0075】
上述の説明では、外装体9は略八角形状の断面形状を有するものとして説明を行った。しかし、外装体の断面形状は略八角形に限られるものではない。
【0076】
図5に外装体の変形例を示す。図5Aは第1の変形例に係る外装体の側面視断面図である。図5Bは第2の変形例に係る外装体の側面視断面図である。なお、図5Aおよび図5Bにおいては、向かって右側がハウジング側、向かって左側がユーザの耳および側頭部に接する側である。
【0077】
例えば、図5Aに示す外装体21のように、接触面21A、底面21B、外周側面21C、内周側面21Dを備える略四角形状の断面形状を有するように構成してもよい。
【0078】
この場合、少なくとも接触面21Aは通気性を有するように構成される。また、接触面21Aに加え、外周側面21Cの接触面21A側の一部である接触面側外周側面21C1と、内周側面21Dの接触面21A側の一部である接触面側内周側面21D1とが通気性を有するように構成してもよい。これにより、接触面21Aがユーザの耳または側頭部などにより閉塞されても接触面側外周側面21C1および接触面側内周側面21D1を通じて、イヤパッドの開口部内と外部とが連通する。したがって、イヤパッドの通気性を高めることができる。
【0079】
また、接触面側外周側面21C1と接触面側内周側面21D1とは接触面21Aに隣接する面であるため、接触面21A、接触面側外周側面21C1と接触面側内周側面21D1を一部材で構成することができる。これにより通気性を有するイヤパッドの形成を容易に行うことができる。
【0080】
さらに、図5Bに示す外装体31のように、接触面31A、斜面31B、底面31C、外周側面31D、内周側面31Eを備える略台形状の断面形状を有するように構成してもよい。この場合、少なくとも接触面31Aは通気性を有するように構成される。また、接触面31Aに加え、斜面31B、内周側面31Dの接触面31A側の一部である接触面側内周側面31E1が通気性を有するように構成するとよい。
【0081】
これにより、接触面31Aがユーザの耳または側頭部などにより閉塞されても斜面31Bおよび接触面側内周側面31E1を通じて、イヤパッドの開口部内と外部とが連通する。したがって、イヤパッドの通気性を高めることができる。
【0082】
また、斜面31Bと接触面側外周側面31E1とは接触面31Aに隣接する面であるため、接触面31A、斜面31Bおよび接触面側外周側面31E1を一部材で構成することができる。これにより通気性を有するイヤパッドの形成を容易に行うことができる。
【0083】
上述した実施の形態では通気性部材として複数の小片体を例として挙げたが、通気性部材は、複数の小片体に限られず、多数の通気用孔が形成された一部材であってもよい。また、図2などに示される小片体よりもサイズが小さい粒状体を採用し、外装体内にその粒状体を多数充填するようにしてもよい。
【0084】
さらに、上述した実施の形態では、本技術に係るイヤパッドを頭の上を跨ぐヘッドバンドを有するヘッドホンに適用する場合を例にして説明を行った。しかし、本技術に係るイヤパッドは、ヘッドバンドを使わずに耳に引っ掛ける形式でハウジングを耳に装着するタイプのヘッドホンにも適用することができる。また、マイクロホンを備えるヘッドホンであるいわゆるヘッドセットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1・・・・ヘッドホン
7・・・・イヤパッド
9・・・・外装体
9A・・・接触面
10・・・第1外装部
11・・・第2外装部
12・・・第3外装部
14・・・小片体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドホンに装着され、
内部が空洞の環状に形成され、少なくとも、ユーザによる前記ヘッドホンの装着時において該ユーザの側頭部に接する接触面が通気性を有するように構成された外装体と、
該外装体内に配された通気性部材と
からなるイヤパッド。
【請求項2】
前記通気性部材は、複数の小片体であり、前記外装体内に充填されることにより配されている請求項1に記載のイヤパッド。
【請求項3】
前記小片体は、管状に形成されている請求項2に記載のイヤパッド。
【請求項4】
前記通気性部材は、柔軟性または弾力性を有する材料で構成されている請求項1に記載のイヤパッド。
【請求項5】
前記外装体は、
少なくとも前記接触面を構成する第1外装部と、
該第1外装部により構成される面以外の面を構成する第2外装部および第3外装部と
から構成されている請求項1に記載のイヤパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−160787(P2012−160787A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17156(P2011−17156)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】