説明

イヤーパッドの製造方法

【課題】外観の良い折れ皺の入ったイヤーパッドの生産性を向上する。
【解決手段】表皮成形工程では、外側治具52によって表皮26Aを金型40に形成したリング状凹部42の外側面42Aに沿って押し込むことで表皮26Aの外周部の形状を成形する。また、内側治具54によって表皮26Aをリング状凹部42の内側面42Cに沿って押し込むことで表皮26Aの内周部の形状を成形する。次に、一体化工程では、金型40にセットされた表皮26Aの凹部内にリング状のクッション体を嵌め込み、金型40にセットされた表皮26A及びクッション体に基材をセットし、ホットメルトによって、表皮26A、クッション体及び基材を貼り合わせ一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホン等のハウジングに装着するイヤーパッドの製造方法に関する。詳しくは、表皮に折れ皺のついたイヤーパッドの製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドフォン等のハウジングに装着するイヤーパッドとしては、表皮がレザー、内部がウレタン等のクッション材で構成されているものが知られている。
例えば、特許文献1〜3には、表皮とクッション材とを有するイヤーパッドを用いたヘッドフォンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−85190号公報
【特許文献2】特開平6−78386号公報
【特許文献3】特開2008−124734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3のようなイヤーパッドでは、例えば、人手による縫製によって表皮とクッション材とを一体化している。このため、イヤーパッドの表皮に均一に折れ皺を形成し外観を良くするには、作業者の熟練度と慎重な作業を要するので、生産性を向上する点において改良が求められている。
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、外観の良い折れ皺の入ったイヤーパッドの生産性を向上できるイヤーパッドの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明のイヤーパッドの製造方法は、型に形成したリング状の凹部内に表皮を押し込み、前記凹部の外側面に形成した凹凸によって前記表皮に折り皺を成形する表皮成形工程と、成形された前記表皮にクッション体を挿入すると共に、前記表皮と前記クッション体とを一体化する一体化工程と、を有する。
【0006】
表皮成形工程において、型に形成したリング状の凹部内に表皮を押し込み、凹部の外側面に形成した凹凸によって表皮に折り皺を成形する。次に、一体化工程において、成形された表皮にクッション体を挿入すると共に、表皮とクッション体とを一体化する。このため、リング状の凹部の外側面に凹凸が形成された型によって、表皮の外周部に折り皺を成形することができる。この結果、人手による縫製によって表皮とクッション材とを一体化し、表皮の外周部に折り皺を成形する方法に比べて、外観の良い折れ皺の入ったイヤーパッドの生産性を向上できる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のイヤーパッドの製造方法において、前記表皮成形工程では、外側治具によって表皮を凹部の外側面に沿って押し込み、その後、内側治具によって表皮を凹部の外側面に対向する内側面に沿って押し込む。
【0008】
表皮成形工程において、外側治具によって表皮を凹部の外側面に沿って押し込み、その後、内側治具によって表皮を凹部の外側面に対向する内側面に沿って押し込む。このため、型に治具を挿入し、表皮の外周部と表皮の内周部とを同時に成形する方法に比べて、表皮に応力が集中し難くなる。この結果、表皮成形工程において表皮が破れ難くなる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のイヤーパッドの製造方法において、前記凹部の外側面にはイヤーパッドの外周部の高さに相当する複数の溝が、前記凹部の高さ方向に沿って形成されている。
【0010】
凹部の外側面に、イヤーパッドの外周部の高さに相当する複数の溝が、凹部の高さ方向に沿って形成されているめ、これらの溝に沿って外観の良い折れ皺が形成される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のイヤーパッドの製造方法において、前記凹部の底部は前記イヤーパッドの外周部の高さより深くなっている。
【0012】
凹部の底部がイヤーパッドの外周部の高さより深くなっているため、表皮成形工程において、凹部の底部に表皮が当たらない。この結果、型と当接することで表皮が潰れるのを防止できる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のイヤーパッドの製造方法において、前記表皮は、表面側を構成する皮革部と、裏面側を構成する基布と、が接合されており、前記基布には、外周部側から内周部側に向かって延びる複数の切込みが形成されている。
【0014】
表皮の表面側が皮革部で構成されており、皮革部に接合され表皮の裏面側を構成する基布には、外周部側から内周部側に向かって延びる複数の切込みが形成されている。このため、表皮成形工程において、基布が複数の切込みを起点にして確実に折曲がる。この結果、表皮の外側面に外観の良い折り皺をさらに成形し易くなる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のイヤーパッドの製造方法において、前記表皮の外周部には余肉部が設けられており、前記余肉部には外周部側から内周部側に向かって延びる複数の切欠が形成されている。
【0016】
表皮の外周部に余肉部が設けられており、余肉部には外周部側から内周部側に向かって延びる複数の切欠が形成されている。このため、表皮成形工程において、余肉部が外周部側から内周部側に向かって延びる複数の切欠を起点に確実に折曲がる。この結果、表皮、余肉部に邪魔されることなく確実に折曲がる。この結果、表皮の外側面の折り皺がさらに成形し易くなる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のイヤーパッドの製造方法において、一体化した前記表皮と前記クッション体とから、前記余肉部を切り離す余肉部切断工程を有する。
【0018】
余肉部切断工程において、一体化した表皮とクッション体とから、余肉部を切り離すため、イヤーパッドにおける外周縁部の外観品質を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように請求項1に記載の本発明のイヤーパッドの製造方法は、外観の良い折れ皺の入ったイヤーパッドの生産性を向上できるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2に記載の本発明のイヤーパッドの製造方法は、表皮成形工程において表皮が破れ難くなるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3に記載の本発明のイヤーパッドの製造方法は、外観の良い折れ皺が形成されるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4に記載の本発明のイヤーパッドの製造方法は、型との当接で表皮が潰れるのを防止できるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項5に記載の本発明のイヤーパッドの製造方法は、表皮の外側面に外観の良い折り皺をさらに成形し易くなるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項6に記載の本発明のイヤーパッドの製造方法は、表皮の外側面の折り皺がさらに成形し易くなるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項7に記載の本発明のイヤーパッドの製造方法は、イヤーパッドにおける外周縁部の外観品質を向上できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法に使用する型を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型に表皮をセットした状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型に治具をセットした状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型に治具の外側を押し込んだ状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型に治具の内側を押し込んだ状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型から治具を取外した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型内の表皮にクッション材を入れた状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型内の表皮及びクッション材に基材をセットした状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型内から取り出したイヤーパッドを示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型内から取り出したイヤーパッドのトリミングした状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における表皮を示す平面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法に使用する型を示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型と治具と表皮との関係を示す図12の13−13断面線に沿った拡大断面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型と治具と表皮との関係を示す図13に対応する断面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドの製造方法における型と治具と表皮との関係を示す図13に対応する断面図である。
【図16】本発明の一実施形態に係るイヤーパッドが使用されたヘッドフォーンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面にしたがって本発明の一実施形態を説明する。
(イヤーパッドが使用されたヘッドフォンの構成)
図16に示すように、本実施形態のイヤーパッド10はヘッドホン12に使用されている。このヘッドホン12は、図示を省略したドライバーユニットを内蔵する左右のヘッド本体14と、これらのヘッド本体14を固定するヘッドバンド18と、音響機器に接続するためのプラグ(図示省略)から左右のヘッド本体14に内蔵されたドライバーユニットに音声信号を供給するケーブル22とを備えている。また、ヘッド本体14にイヤーパッド10を装着することで、耳への装着感の向上、外部への音漏れ防止等が図られている。
なお、本実施形態のイヤーパッド10は、ヘッドホン12以外の防音用耳あて具等にも適用可能である。
【0028】
(イヤーパッドの構成)
図10に示すように、本実施形態のイヤーパッド10はリング状(ドーナツ形状)となっており、基材24、表皮26及び基材24と表皮26とで覆われたクッション体28とを備えている。また、表皮26には折れ皺25がついている。
【0029】
より具体的に説明すると、リング状(ドーナツ形状)のクッション体28における一方側の端面28Aと外周面28Bとが折れ皺25がついた表皮26で覆われており、クッション体28の他方の端面(イヤーパッド10のハウジング14への装着面)28Cに基材24が配置されている。また、クッション体28と表皮26とが基材24に固定されている。
【0030】
基材24は接着剤としてのフィルム状または不財布状のホットメルト30と、基体31とを接合させた構成となっている。
なお、ホットメルト30の一例としては、ポリアミド不織布PA1541(日東紡製)を使用することができる。
また、基体31の一例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)基材入りの両面テープT771(株式会社ブリヂストン製)、直径70mm、厚さ0.5mmを使用することができる。
【0031】
一方、表皮26は、表面側を構成する皮革部32と、裏面側を構成する基布34とが接合されている。
なお、表皮26の一例としては、シャモニー伸縮タイプ(小松精練株式会社製)を使用することができる。
【0032】
図11に示すように、製品となる前の表皮26Aは、円形に裁断されたフラット(平坦)な布状となっており、表皮26Aの外周部には所定幅M1の余肉部26Bが設けられている。また、表皮26Aの余肉部26Bには外周から表皮26Aの中心P1側に向かって狭幅となる複数の三角形状の切欠35が形成されており、表皮26Aの中心P1には位置決め孔60が形成されている。一方、基布34には、各切欠35の底部35Aから中心P1に向かって延びる長さL1の複数の切込み36が形成されている。また、基布34の中央部近傍にも半径方向に延びる複数の切込み37が形成されており、切込み37は切込み36の延長線上の位置に形成されている。また、切込み35、37は基布34にのみ形成されており、皮革部32には形成されていない。
なお、クッション体28の一例としては、ウレタンフォーム製、外径55mm、内径15mm、厚さ20mmを使用することができる。
【0033】
(イヤーパッド製造用の型の構成)
図1には本実施形態のイヤーパッド製造用の型(金型)の斜視図が示されており、図12には本実施形態のイヤーパッド製造用の金型の平面図が示されている。また、図13には本実施形態のイヤーパッド製造用の金型と治具と表皮との関係を示す図12の13−13断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0034】
図1及び図12に示すように、本実施形態のイヤーパッド製造用の金型40には、イヤーパッド10(図10参照)の表皮26の形状を成形するためのリング状凹部42が形成されており、リング状凹部42の中央部には円柱部43が立設されている。また、リング状凹部42の外周面42Aは、イヤーパッド10の表皮26の外周部26Cを成形する部位となっており、リング状凹部42の外周面42Aには周方向に沿って所定のピッチS1(図12参照)で凹凸が形成されている。
【0035】
より具体的に説明すると、リング状凹部42の外周面42Aには周方向に沿って所定のピッチS1で複数の溝(凹部)44が、リング状凹部42の軸方向(金型の高さ方向)に沿って形成されている。また、隣接する溝44の間がそれぞれ凸部46となっており、凹部44と凸部46の平面視形状(図12に示す形状)はそれぞれ矩形状となっている。
【0036】
図13に示すように、各溝44の高さ(深さ)H2は、イヤーパッド10(図10参照)の外周部の高さH1に相当(一致又は略一致)している。また、金型40におけるリング状凹部42の底部42Bの高さ(深さ)H3は、イヤーパッド10の外周部の高さH1より深くなっている(H1<H3)。
【0037】
リング状凹部42の内周面42C(円柱部43の外周面)と凸46の頂面46Aとは、リング状凹部42の開口部42D側から底部42B側に向かって、対向する部位の間隔が徐々に広くなる方向に傾斜している(テーパー加工されている)。このため、リング状凹部42の内周面42Cと凸46の頂面46Aとの間隔は、開口部42Dの間隔N1が底部42Bの間隔N2に比べて狭くなっている(N1<N2)。なお、金型40における円柱部43の端面43Aの中央には円柱形状の位置決めピン45が立設されている。
【0038】
(イヤーパッド製造用の治具の構成)
図14及び図15には、本実施形態のイヤーパッド製造用の金型と治具と表皮との関係を示す図13に対応する断面図が示されている。
【0039】
図14に示すように、本実施形態のイヤーパッド製造用の治具50は、筒形状とされた外側治具52と内側治具54とで構成されている。外側治具52は外側面形成部52Aと、外側面形成部52Aの上端外周部に形成されたリング状の鍔部52Bと、外側面形成部52Aの上端内周部に形成されたリング状の凸部52Cとで構成されている。一方、内側治具54は、内側面形成部54Aと、内側面形成部54Aの下端外周部に形成されたリング状の鍔部54Bとで構成されている。
【0040】
内側治具54は外側治具52に対して軸方向(図14の上下方向)へ相対移動可能に挿入されており、内側治具54の鍔部54Bが、外側治具52の凸部52Cに当接するようになっている。また、内側治具54に対しては、金型40の円柱部43が挿通可能となっている。
【0041】
従って、図14に示すように、一体とした外側治具52と内側治具54において、内側治具54に対して外側治具52を下方(図14の矢印A方向)へ相対移動させ、外側治具52の外側面形成部52Aによって表皮26Aを金型40の外側面42Aに沿って押し込むことで表皮26Aの外周部の形状を成形できるようになっている。
【0042】
次に、図15に示すように、外側治具52に対して内側治具54を下方(図15の矢印B方向)へ相対移動させ、内側治具54の内側面形成部54Aによって表皮26Aを金型40の内側面42Cに沿って押し込むことで表皮26Aの内周部の形状を成形できるようになっている。
【0043】
(イヤーパッド製造方法)
次に、上述したイヤーパッド10の製造方法について図2〜図10に従って説明する。なお、イヤーパッド10の製造工程は大きく分けて表皮成形工程と一体化工程とからなり、表皮成形工程を経て一体化工程に移る。
【0044】
・表皮成形工程
表皮成形工程はイヤーパッド10の表皮26Aを成形する工程であり、この表皮成形工程では、表皮26Aを治具50によって金型40に押し込んで表皮26Aの外周部に折り皺を成形する。
より具体的に説明すると、図2に示すように、金型40に製品となる前の表皮26Aを、基布34を上面側にしてセットする。この際、金型40における円柱部43の端面43Aの中央に立設された位置決めピン45に、表皮26Aの中央部に形成された位置決め孔60を通し、金型40のリング状凹部42と、表皮26Aとの位置決めを行う。
【0045】
次に、図3に示すように、表皮26Aを介して(挟んで)金型40の上方に治具50をセットする。この際、位置決めピン45の軸心位置と治具50の軸心位置を一致させる。なお、治具50の外側治具52と内側治具54とは、互いに軸心方向へ相対移動可能な状態で一体となっている。
【0046】
次に、図4に示すように、表皮26Aに熱を加え、治具50の外側治具52を内側治具54に対してを下方(図4の矢印A方向)へ相対移動させる。この外側治具52の移動により、図14に示すように、外側治具52の外側面形成部52Aによって表皮26Aが金型40の外側面42Aに沿って押し込まれ、表皮26Aの外周部の形状が成形される。
【0047】
次に、図5に示すように、表皮26Aに熱を加え、治具50の内側治具54を外側治具52に対して下方(図5の矢印B方向)へ相対移動させる。この内側治具54の移動により、図15に示すように、内側治具54の内側面形成部54Aによって表皮26Aが金型40の内側面42Cに沿って押し込まれ、表皮26Aの内周部の形状が成形される。
なお、表皮成形工程(予備成形)において、表皮26Aに熱を加えるための加熱温度の一例としては、上型(治具50)が80℃、下型(金型40)が140℃で、120秒とすることができる。
次に、図6に示すように、金型40のリング状凹部42から治具50(図示省略)を取外す。この状態で金型40にセットされた表皮26Aには、金型40のリング状凹部42に対応した軸方向から見た形状がリング状の凹部59が形成されている。
【0048】
・一体化工程
一体化工程は成形された表皮26Aにクッション体28を挿入すると共に、表皮26Aとクッション体28とを一体化する工程である。
より具体的に説明すると、図7に示すように、金型40にセットされた表皮26Aの凹部59内にリング状のクッション体28を嵌め込む(挿入する)。
【0049】
次に、図8に示すように、金型40にセットされた表皮26A及びクッション体28に基材24をセットする。この際、基材24は矩形板状となっており、中央部に位置決め孔27が形成されている。従って、金型40の位置決めピン45を、基材24の中央部に形成した位置決め孔27に通し、金型40のリング状凹部42と、基材24との位置決めを行う。その後、基材24側から熱プレス成形により、ホットメルト30を加熱し、表皮26A、クッション体28及び基材24を貼り合わせ一体化する。
なお、一体化工程(熱プレス成形)において、ホットメルト30に熱を加えるための加熱温度の一例としては、上型(プレス側)が80℃、下型(金型40)が140℃で、10秒とすることができる。
【0050】
次に、図9に示すように、表皮26Aとクッション体28と基材24とが一体化された最終製品形状となる前のイヤーパッド10を金型40内から取り出す。
その後、金型40内から取り出した最終製品形状となる前のイヤーパッド10における、表皮26Aの外周部に残る余肉部26Bをプレス加工により取り除くと同時に、表皮26Aの中央部に円孔66をプレス加工により形成する。即ち、金型40内から取り出した最終製品形状となる前のイヤーパッド10(図9)に余肉部切断工程(トリミング)を行いイヤーパッド10を図10に示す最終形状とする。
【0051】
(作用及び効果)
以上説明したように、本実施形態では、表皮成形工程において、製品となる前のフラットな表皮26Aを金型40内に治具50で押し入れることで、金型40にセットされた表皮26Aに、金型40のリング状凹部42に対応した軸方向から見た形状が円形の凹部59が図6に示すように形成される。このため、図7に示すように、表皮26Aに形成されたこの凹部59にリング状のクッション体28を嵌め込むことで、リング状のクッション体28を表皮26Aの内部にその全領域において均一に配置することができる。この結果、最終形状(製品)のイヤーパッド10の外観品質が向上する。
【0052】
また、本実施形態では、製品となる前の表皮26Aの余肉部26Bに、外周から表皮26Aの中心P1側に向かって狭幅となる複数の三角形状の切欠35が形成されている。このため、表皮成形工程において、金型40に設けた複数の溝(凹部)44によって表皮26に折れ皺を形成する際に、表皮26の一部に応力が集中するのを防止でき、表皮26に均一な折れ皺を形成することができる。
【0053】
また、本実施形態では、製品となる前の表皮26Aの基布34には、各切欠35の底部35Aから中心P1に向かって延びる長さL1の複数の切込み36が形成されている。このため、表皮成形工程において、これらの切込み36を起点とすることで(これらの切込み36がガイドの役割を果たすことで)、表皮26に均一な折れ皺が形成される。さらに、基布34の中央部近傍にも半径方向に延びる長さL2の複数の切込み37が形成されており、切込み37は切込み36の延長線上の位置に形成されている。このため、表皮成形工程において、これらの切込み37を起点とすることでも(これらの切込み37がガイドの役割を果たすことでも)、表皮26に均一な折れ皺が形成される。
【0054】
また、本実施形態では、治具50を外側治具52と内側治具54とし、外側治具52と内側治具54とそれぞれの軸方向に相対移動させ、外側治具52と内側治具54とを金型40のリング状凹部42に順次押し込むことで、表皮26Aの外周部の形状を成形した後に表皮26Aの内周部の形状を成形する。このため、表皮成形工程において、表皮26Aの外周部及び内周部に応力が集中するのを抑制できる。この結果、表皮26Aが破れ難くなり、表皮26Aに均一な折れ皺を形成することができる。
【0055】
また、本実施形態では、イヤーパッド製造用の金型40において、リング状凹部42の外周面42Aに周方向に沿って所定のピッチで複数の溝(凹部)44が、リング状凹部42の軸方向(金型の高さ方向)に沿って形成されている。このため、これらの溝(凹部)44のピッチや深さを調整することで、表皮26Aに外観品質の良い均一な折れ皺を形成することができる。この結果、人手による縫製によって表皮とクッション材とを一体化し、表皮の外周部に折り皺を成形する方法に比べて、外観の良い折れ皺の入ったイヤーパッド10の生産性を向上できる。
【0056】
また、本実施形態では、イヤーパッド製造用の金型40において、図13に示すように、リング状凹部42の内周面42C(円柱部43の外周面)と凸46の頂面46Aとが、リング状凹部42の開口部42D側から底部42B側に向かって、対向する部位の間隔が徐々に広くなる方向に傾斜しており、リング状凹部42の内周面42Cと凸46の頂面46Aとの間隔は、開口部42Dの間隔N1が底部42Bの間隔N2に比べて狭くなっている(N1<N2)。この結果、図10に示すように、イヤーパッド10の根元部(基材24側部)に深い折れ皺25を発生させ、イヤーパッド10の耳当部(基材24と反対側部)においては浅い折れ皺25を発生させる(折れ皺25を発生し難くする)ことができる。
【0057】
また、本実施形態では、図13に示すように、金型40のリング状凹部42に形成した、溝44の高さ(深さ)H2が、イヤーパッド10(図10参照)の外周部の高さH1に相当(一致又は略一致)しており、金型40におけるリング状凹部42の底部42Bの高さ(深さ)H3は、イヤーパッド10の外周部の高さH1より深くなっている(H1<H3)。このため、表皮成形工程において、図15に示すように、リング状凹部42の底部42Bに表皮26Aが当たらない。この結果、金型40と治具50とで表皮26Aが潰されるのを防止できる。よって、表皮26Aに凹凸模様(皮革部32のシボ)がある場合には、凹凸模様が消えるのを防止できる。
【0058】
また、本実施形態では、一体化工程において、基材24側からホットメルト30を加熱することで、表皮26A、クッション体28及び基材24を貼り合わせることができる。このため、ホットメルト30の温度を短時間に上昇させることができ、表皮26A及びクッション体28に基材24を短時間で貼り合わせることができる。
【0059】
[その他の実施形態]
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、図示を省略したが、表皮成形工程において、表皮26Aを吸引方式にによって金型40に押し込んで表皮26Aの外周部に折り皺を成形するようにしてもよい。
また、製品となる前の表皮26Aの余肉部26Bに形成した切欠35は、三角形状に限定されず、半円形状等の他の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 イヤーパッド
12 ヘッドホン
24 基材
26 表皮
26A 製品となる前の表皮
26B 製品となる前の表皮の余肉部
28 クッション体
30 ホットメルト
31 基体
32 皮革部
34 基布
35 切欠
36 切込み
40 金型(型)
42 金型のリング状凹部
42A 金型のリング状凹部の外周面
42B 金型のリング状凹部の底部
42C 金型のリング状凹部の内周面
42D 金型のリング状凹部の開口部
43 金型の円柱部
44 溝(凹部)
46 凸部
50 治具
52 外側治具
54 内側治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型に形成したリング状の凹部内に表皮を押し込み、前記凹部の外側面に形成した凹凸によって前記表皮に折り皺を成形する表皮成形工程と、
成形された前記表皮にクッション体を挿入すると共に、前記表皮と前記クッション体とを一体化する一体化工程と、
を有するイヤーパッドの製造方法。
【請求項2】
前記表皮成形工程では、外側治具によって前記表皮を前記凹部の外側面に沿って押し込み、その後、内側治具によって前記表皮を前記凹部の外側面に対向する内側面に沿って押し込む請求項1に記載のイヤーパッドの製造方法。
【請求項3】
前記凹部の外側面にはイヤーパッドの外周部の高さに相当する複数の溝が、前記凹部の高さ方向に沿って形成されている請求項2に記載のイヤーパッドの製造方法。
【請求項4】
前記凹部の底部は前記イヤーパッドの外周部の高さより深くなっている請求項3に記載のイヤーパッドの製造方法。
【請求項5】
前記表皮は、表面側を構成する皮革部と、裏面側を構成する基布と、が接合されており、前記基布には、外周部側から内周部側に向かって延びる複数の切込みが形成されている請求項4に記載のイヤーパッドの製造方法。
【請求項6】
前記表皮の外周部には余肉部が設けられており、前記余肉部には外周部側から内周部側に向かって延びる複数の切欠が形成されている請求項5に記載のイヤーパッドの製造方法。
【請求項7】
一体化した前記表皮と前記クッション体とから、前記余肉部を切り離す余肉部切断工程を有する請求項6に記載のイヤーパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−41051(P2011−41051A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187240(P2009−187240)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】