説明

イヤーパッド及びそれを有するイヤホン

【課題】外耳道に挿入された際に弾性変形部が変形しても、外耳道の内外の連通を維持することができ、環境音が遮断されることがなく、音の抜けが良好で、切れの良い低音及びクリアな中高音を再現することができ、装着感が良好で、音質が高くなるようにする。
【解決手段】弾性変形可能な材料から成り、先端部が外耳道に挿入可能なイヤーパッドであって、イヤホンの発生する音を外耳道に入射させる音導孔が形成された筒状の本体部と、本体部の先端に接続され、先端から後端に向けて斜めに広がる弾性変形部とを有し、弾性変形部は、本体部の先端側から観て放射状に延在する複数のスリット状の開口部を備え、本体部は、その外周面における開口部の各々に対応する位置に形成された軸方向に延在する溝を備え、弾性変形部が変形して本体部の外周面に押付けられると、開口部とそれに対応する溝とが重なり合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が外耳道に挿入されるイヤーパッド及び該イヤーパッドを有するイヤホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耳介に装着されて使用されるイヤホンとして、耳介の凹部から外耳道に挿入される部分に、弾性を備える軟質のゴム等から成るイヤーパッドを取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなイヤホンは、イヤーパッドを耳介の凹部から外耳道に挿入して装着するので、耳介に確実に装着することができる。また、イヤーパッドが弾性を備える材料から成るので、外耳道の形状に合せて容易に弾性変形させることができ、良好な装着感を得ることができる。
【0003】
図6は従来のイヤホンの構造を示す部分断面図である。
【0004】
図において、811はイヤホンのハウジングであり、その内部には振動板等を備える図示されないドライバユニットが装着され、その下端には、音楽プレーヤ、テレビ、ラジオ、ビデオデッキ等の図示されない音響機器に他端接続される電線ケーブル891の一端が接続されている。また、前記ハウジング811の右端には、右方へ向けて延出する音導管815の基端が一体的に接続されている。なお、前記音導管815内には、ハウジング811内の空間に連通する音導孔(こう)816が形成されている。
【0005】
そして、前記音導管815の周囲には、軟質のゴム等から成るイヤーパッド850の基部851が嵌(かん)着されている。前記イヤーパッド850は、基部851から右方へ向けて延出する導管部852と、該導管部852の先端から周囲へ広がる肉薄の笠(かさ)部855とを備え、前記導管部852には音導孔816に連通するとともに笠部855の中心に開口する導孔部853が形成されている。また、前記笠部855には、複数の小孔(あな)856が穿(せん)設されている。
【0006】
イヤホンを装着すると、イヤーパッド850の先端部が外耳道に挿入され、笠部855によって外耳道の内外が遮断されるが、小孔856の存在によって外耳道の内外が連通するので、イヤホン装着時であっても、警報等の外部の環境音が外耳道の内部に入射して鼓膜に到達し、安全性が低下することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3121893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のイヤホンにおいては、笠部855が肉薄なので、イヤーパッド850の先端部を外耳道に挿入すると、該外耳道によって押圧され変形した笠部855が導管部852の外周に押付けられ、小孔856が塞(ふさ)がれてしまう。そのため、笠部855によって外耳道の内外が遮断され、外部の環境音が鼓膜に到達しなくなってしまう。また、音導孔816及び導孔部853を通して外耳道に入射したドライバユニットからの音が外に抜けないので、いわゆる、音の抜けが悪くなり、音にこもり感、もごつき感等が生じ、音質が低下してしまう。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、筒状の本体部の先端に接続された笠状の弾性変形部に、先端側から観て、放射状に延在する複数のスリット状の開口部を形成するとともに、前記本体部の外周に、前記開口部に連通するとともに軸方向に延在する複数の溝を形成することによって、外耳道に挿入された際に弾性変形部が変形しても、外耳道の内外の連通を維持することができ、環境音が遮断されることがなく、音の抜けが良好で、切れの良い低音及びクリアな中高音を再現することができ、装着感が良好で、音質が高いイヤーパッド及びそれを有するイヤホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明のイヤーパッドにおいては、弾性変形可能な材料から成り、イヤホンの筐(きょう)体に取付けられ、少なくとも先端部が外耳道に挿入可能なイヤーパッドであって、前記イヤホンの発生する音を外耳道に入射させる音導孔が形成された筒状の本体部と、該本体部の先端に接続され、該先端から後端に向けて斜めに広がる弾性変形部とを有し、該弾性変形部は、前記本体部の先端側から観て放射状に延在する複数のスリット状の開口部を備え、前記本体部は、その外周面における前記開口部の各々に対応する位置に形成された軸方向に延在する溝を備え、前記弾性変形部が変形して前記本体部の外周面に押付けられると、前記開口部とそれに対応する溝とが重なり合う。
【0011】
本発明の他のイヤーパッドにおいては、さらに、前記開口部の先端は前記音導孔の先端に連通する。
【0012】
本発明の更に他のイヤーパッドにおいては、さらに、前記開口部の先端は前記溝の先端と連続する。
【0013】
本発明のイヤホンにおいては、本発明のイヤーパッドを有するイヤホンであって、筒状の耳介挿入部を含む筐体と、該筐体内に配設された音を発生するドライバユニットとを有し、前記耳介挿入部に前記イヤーパッドの本体部が取付けられる。
【0014】
本発明の他のイヤホンにおいては、さらに、前記筐体は、前記耳介挿入部の基端に接続された円錐(すい)部を含み、該円錐部は、その表面における前記開口部の各々に対応する位置に形成された軸方向に延在する溝を備え、該溝の先端は、前記イヤーパッドの本体部が備える溝の後端と連通する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、イヤーパッドは、筒状の本体部の先端に接続された笠状の弾性変形部に、先端側から観て、放射状に延在する複数のスリット状の開口部が形成されているとともに、本体部の外周に、開口部に連通するとともに軸方向に延在する複数の溝が形成されている。これにより、外耳道に挿入された際に弾性変形部が変形しても、外耳道の内外の連通を維持することができ、環境音が遮断されることがなく、音の抜けが良好で、切れの良い低音及びクリアな中高音を再現することができ、装着感が良好となり、音質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるイヤホンの斜視図であって部分破断図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるイヤホンの五面図であって、(a)は上面図、(b)は左側面図、(c)は背面図、(d)は右側面図、(e)は正面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるイヤホンの断面図であって図2(c)におけるA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるイヤーパッドの四面図であって、(a)は左側面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は正面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるイヤーパッドの断面図であって、(a)は図4(b)におけるB−B矢視断面図、(b)は図4(b)におけるC−C矢視断面図、(c)は図4(c)におけるD−D矢視断面図、(d)は図4(c)におけるE−E矢視断面図である。
【図6】従来のイヤホンの構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態におけるイヤホンの斜視図であって部分破断図、図2は本発明の実施の形態におけるイヤホンの五面図、図3は本発明の実施の形態におけるイヤホンの断面図であって図2(c)におけるA−A矢視断面図である。なお、図2において、(a)は上面図、(b)は左側面図、(c)は背面図、(d)は右側面図、(e)は正面図である。
【0019】
図において、10は本実施の形態におけるイヤホンであり、使用者の耳介に装着されて使用され、電気信号である音声信号によって駆動され、該音声信号を再生する小型の音声発生器である。そして、前記イヤホン10は、音声信号を再生して音を発生するスピーカユニットとしてのドライバユニット41を内蔵するハウジングとしての筐体11と、該筐体11に取付けられ、少なくともその先端部55が使用者の外耳道に挿入可能なイヤーパッド50とを有する。
【0020】
前記筐体11は、その正面側に位置する前筐体12と、該前筐体12の基部12aの後側に結合される円錐台状の後筐体13と、該後筐体13の後側に結合される蓋(ふた)筐体14とを備える。そして、ドライバユニット41は、図3に示されるように、前筐体12と後筐体13とによって前後(図3における上下)が挟込まれた状態で、前記筐体11内に保持される。また、後筐体13の後面は、蓋筐体14によって塞がれ、これにより、筐体11内におけるドライバユニット41の後方(図3における下方)に、円錐台と円筒とを組合せた形状の空間である後方空間24が形成される。該後方空間24におけるドライバユニット41と対向する面は、蓋筐体14の内面であってドライバユニット41の図示されない振動板と平行な平面である。また、前記ドライバユニット41は、いわゆるダイナミック型のものであって、前記振動板を振動させて音を発生する。
【0021】
なお、図に示される例において、蓋筐体14は、後筐体13と別個の部材であるが、後筐体13と一体的に形成されたものであってもよい。また、前記筐体11は、例えば、合成樹脂等の樹脂から成るが、アルミニウム、鋼、銅等の金属から成るものであってもよいし、樹脂、カーボン、金属等を複合した複合材から成るものであってもよい。
【0022】
さらに、前記蓋筐体14には、ドライバユニット41に一端が接続された電線ケーブル91の一部を取囲んで保持する筒状のケーブル保持部15の上端が取付けられている。なお、該ケーブル保持部15は、蓋筐体14と一体的に形成されたものであってもよい。そして、ケーブル保持部15の下端からは、電線ケーブル91が延出する。なお、図1及び2においては、図示の都合上、電線ケーブル91は、ケーブル保持部15に近接する部分のみが描画され、他の部分は描画が省略されている。そして、電線ケーブル91の図示されない他端には、音楽プレーヤ、テレビ、ラジオ、ビデオデッキ等の図示されない音響機器が接続される。
【0023】
前記前筐体12は、円筒状の基部12aに加えて、該基部12aから前方に向けて突出する円錐台状の円錐部16と、該円錐部16の先端から突出する筒状の耳介挿入部としてのパッド取付部17とを含んでいる。前記円錐部16は、その先端の径がその基端(基部12aに接続される部分)よりも小さく、これにより、筐体11内におけるドライバユニット41の前方(図3における上方)に、円錐台状の空間である前方空間21が形成される。また、前記パッド取付部17には、後端が前方空間21に連通し、前端が開放された円筒状開口である音導孔としての筐体音導孔22が形成されている。これにより、ドライバユニット41が発生した音が、前方空間21及び筐体音導孔22を通して使用者の外耳道に入射する。なお、図に示される例において、円錐部16は、その先端の軸心が基端の軸心に対して右方に傾斜するように形成されているが、その先端の軸心は基端の軸心に対していずれの方向に傾斜していてもよいし、また、必ずしも傾斜している必要もなく、先端の軸心は基端の軸心に対して平行であってもよい。
【0024】
そして、前筐体12の円錐部16には空気抜きとしての前方エアダクト25が形成されている。該前方エアダクト25は、円錐部16を貫通するように形成された断面円形の孔であり、前方空間21と外部とを連通し、前方空間21内の空気が外部に逃げることを可能とする。なお、前方エアダクト25は、円錐部16における基部12aに近接した部分、すなわち、前方を向いた面の部分に形成されている。つまり、前方エアダクト25は、前方を向くように形成され、前方空間21内の空気を前方に向けて逃がすようになっている。なお、前方エアダクト25の径は、例えば、1.2〔mm〕であるが、ドライバユニット41の性能、前方空間21の大きさ等に応じて変更することができる。
【0025】
また、後筐体13には、空気抜きとしての後方エアダクト28と、音質調整孔としての第1調整孔27a及び第2調整孔27bとが形成されている。なお、第1調整孔27a及び第2調整孔27bを統括的に説明する場合には、調整孔27として説明する。
【0026】
前記後方エアダクト28は、後筐体13を貫通するように形成された断面円形の孔であり、後方空間24と外部とを連通し、後方空間24内の空気が外部に逃げることを可能とする。なお、後方エアダクト28は、後筐体13における側方を向いた面の部分に形成されている。つまり、後方エアダクト28は、側方を向くように形成され、後方空間24内の空気を側方に向けて逃がすようになっている。なお、後方エアダクト28の径は、前記前方エアダクト25と等しくなるように設定されているが、ドライバユニット41の性能、後方空間24の大きさ等に応じて変更することができる。このように、同一径の空気抜き、すなわち、前方エアダクト25及び後方エアダクト28を前方空間21及び後方空間24に配設することによって、音の歪(ひず)みや反響を是正することができるとともに、ドライバユニット41の振動板にかかる負荷を軽減することができる。
【0027】
また、前記第1調整孔27a及び第2調整孔27bは、後筐体13を貫通するように形成された断面円形の孔であり、後方空間24と外部とを連通するとともに、後方エアダクト28に隣接し、かつ、後筐体13における同一円周上に一列となるように並んで配設される。そして、第1調整孔27aの径は後方エアダクト28の径より小さく、第2調整孔27bの径は第1調整孔27aの径より小さくなるように形成されている。
【0028】
第1調整孔27aの径は、例えば、0.8〔mm〕である。第1調整孔27aの径をこのような値とすることによって、1200〔Hz〕を中心とした周波数帯の音をコントロールし、周波数レスポンスをよりスムーズにし、音質を向上させることができる。また、第2調整孔27bの径は、例えば、0.4〔mm〕である。第2調整孔27bの径をこのような値とすることによって、200〔Hz〕を中心とした周波数帯の音をコントロールし、周波数レスポンスをよりスムーズにし、音質を向上させることができる。
【0029】
なお、図に示される例において、調整孔27は第1調整孔27a及び第2調整孔27bの2つであるが、調整孔27は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、調整孔27の径は、コントロールの対象となる音の周波数帯に応じて変更することができる。すなわち、低周波数帯域の音をコントロールするためには、調整孔27の径を小さくすればよく、高周波数帯域の音をコントロールするためには、調整孔27の径を大きくすればよい。
【0030】
そして、前記パッド取付部17には、イヤーパッド50が取付けられている。該イヤーパッド50は、例えば、シリコーンゴム等の軟質の弾性変形可能な材料から成り、一体成形された部材であり、パッド取付部17の周囲に嵌着された筒状の本体部51と、該本体部51の先端から後端に向けて斜めに広がる弾性変形部としての笠部53とを備える。なお、本体部51の後端には、内方に向けて突出する肉厚のフランジ状の係合凸部52が形成されている。該係合凸部52は、パッド取付部17の基端部(円錐部16の先端との接続部)に形成された溝状の係合凹部17aと係合し、パッド取付部17からイヤーパッド50が外れることを防止する。
【0031】
該イヤーパッド50は、全体としてキノコ又は傘のような形状を有し、その先端部55において、本体部51の先端に笠部53の先端が接続され、本体部51の外周面と笠部53の内周面との間には空洞部65が形成されている。そして、本体部51の中心には、前後端が開放された円筒状開口である音導孔としてのパッド音導孔61が形成されている。パッド取付部17にイヤーパッド50が取付けられた状態で、パッド音導孔61は筐体音導孔22と連通する。
【0032】
また、笠部53は後方に向けて広がるような円錐台状の前半部53aと、該前半部53aの後端から後方に延出する円筒状の後半部53bとを備える。笠部53は、本体部51よりも肉薄であって柔軟性を備え、力を受けることによって容易に弾性変形するようになっている。したがって、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際、笠部53は、外耳道の内面形状に適合するように弾性変形し、外耳道に損傷を与えることがなく、外耳道の内面に反力を加えることなく密着するので、装着感、フィット感等が良好となる。
【0033】
さらに、笠部53の前半部53aには、先端側から観て、放射状に延在する複数(図に示される例においては6つ)のスリット状の開口部62が形成されている。使用者がイヤホン10を装着すると、イヤーパッド50が外耳道に挿入され、笠部53によって外耳道の内外が遮断される。しかし、開口部62の存在によって外耳道の内外が連通するので、イヤホン10を装着したときであっても、警報等の外部の環境音が外耳道の内部に入射して鼓膜に到達し、安全性が低下することがない。また、外耳道の内部の空気が開口部62を通して外部に抜けるので、ドライバユニット41から筐体音導孔22及びパッド音導孔61を通って外耳道の内部に入射した音の圧迫感、こもり感等が低減される。そのため、低音の切れが良好となり、中高音がクリアとなる。また、ドライバユニット41からの音が鼓膜を圧迫しないので、健康面でも良好である。
【0034】
なお、本体部51の外周面には、前記開口部62の各々に対応する位置に、前後方向、すなわち、本体部51の軸方向に延在する溝としてのパッド溝63が形成されている。そのため、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際、笠部53が変形して本体部51の外周面に押付けられた状態となっても、開口部62とそれに対応するパッド溝63とが互いに重なり合うので、外耳道の内外の連通が維持される。
【0035】
さらに、前筐体12の円錐部16の表面における少なくともパッド取付部17との接続部近傍には、前記パッド溝63の各々に対応する位置に、前後方向、すなわち、円錐部16の軸方向に延在する溝としての筐体溝31が形成されている。そして、該筐体溝31は、その先端が前記パッド溝63の後端と連通するとともに、笠部53の後端よりも後方にまで延在する。そのため、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際、笠部53が変形して、本体部51の外周面のみならず、円錐部16の表面に押付けられた状態となっても、開口部62とそれに対応するパッド溝63及び筐体溝31とが互いに連通するので、外耳道の内外の連通が維持される。
【0036】
次に、前記イヤーパッド50の構成について詳細に説明する。
【0037】
図4は本発明の実施の形態におけるイヤーパッドの四面図、図5は本発明の実施の形態におけるイヤーパッドの断面図である。なお、図4において、(a)は左側面図、(b)は背面図、(c)は右側面図、(d)は正面図、図5において、(a)は図4(b)におけるB−B矢視断面図、(b)は図4(b)におけるC−C矢視断面図、(c)は図4(c)におけるD−D矢視断面図、(d)は図4(c)におけるE−E矢視断面図である。
【0038】
本体部51の先端と笠部53の先端とは先端接続部54によって接続され、各開口部62の先端は、連通凹部64を介して、パッド音導孔61の先端に連通している。そして、イヤーパッド50の円周状の先端部55において、先端接続部54と連通凹部64とが交互に配置されている。そのため、ドライバユニット41から筐体音導孔22及びパッド音導孔61を通って外耳道の内部に入射した音は、その一部が連通凹部64を介して開口部62から外部に抜けるので、圧迫感、こもり感等が低減され、クリアとなる。
【0039】
なお、先端接続部54は、図5(a)に示されるように、笠部53よりも肉厚であるから、該笠部53よりも剛性が高く、変形しにくい。また、先端接続部54の間に挟まれたように配設されている連通凹部64は、側面から観て、先端部55の先端縁、すなわち、先端接続部54の先端縁よりも後方に凹入するように形成されている。そのため、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際に笠部53が変形しても、連通凹部64が閉塞(そく)されることがなく、パッド音導孔61と開口部62との連通が維持される。なお、前述のように、笠部53が変形して、本体部51の外周面のみならず、円錐部16の表面に押付けられた状態となっても、開口部62とパッド溝63と筐体溝31とが連通する。したがって、パッド音導孔61から連通凹部64、開口部62、パッド溝63及び筐体溝31を通って外部までの音の通り道が安定的に確保されるので、圧迫感、こもり感等が安定的に低減され、クリアな音質が維持される。
【0040】
また、図5(b)に示されるように、開口部62は、その先端においてパッド溝63の先端と連続するように形成されていることが望ましい。この場合、笠部53が大きく変形しても、開口部62とパッド溝63との連通は安定的に維持される。
【0041】
さらに、笠部53の前半部53aには、図4(d)に示されるように、正面から観て放射状に延在する複数のスリット状の開口部62が形成されている。そのため、該開口部62の存在によって前半部53aの剛性が低下して変形しやすくなり、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際、前半部53aのみならず、笠部53の全体が柔軟に弾性変形して外耳道の内面形状に適合する。したがって、外耳道に損傷を与えることがなく、安全性が高く、また、笠部53が外耳道の内面に反力を加えることなく密着するので、装着感、フィット感等が良好となる。
【0042】
なお、図に示される例において、開口部62、パッド溝63、筐体溝31及び連通凹部64の数は、各々、6つであるが、必ずしも6つである必要はなく、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
【0043】
このように、本実施の形態において、イヤーパッド50は、イヤホン10の発生する音を外耳道に入射させるパッド音導孔61が形成された筒状の本体部51と、本体部51の先端に接続され、先端から後端に向けて斜めに広がる笠部53とを有し、笠部53は、本体部51の先端側から観て放射状に延在する複数のスリット状の開口部62を備え、本体部51は、その外周面における開口部62の各々に対応する位置に形成された軸方向に延在するパッド溝63を備え、笠部53が変形して本体部51の外周面に押付けられると、開口部62とそれに対応するパッド溝63とが重なり合う。
【0044】
これにより、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際、笠部53が変形して本体部51の外周面に押付けられた状態となっても、外耳道の内外の連通が維持される。したがって、警報等の外部の環境音が外耳道の内部に入射して鼓膜に到達するので、安全性が低下することがない。また、外耳道の内部の空気が開口部62を通して外部に抜けるので、イヤホン10から外耳道の内部に入射した音の圧迫感、こもり感等が低減される。そのため、低音の切れが良好となり、中高音がクリアとなる。さらに、イヤホン10からの音が鼓膜を圧迫しないので、健康面でも良好である。
【0045】
また、開口部62の先端はパッド音導孔61の先端に連通する。これにより、パッド音導孔61を通って外耳道の内部に入射した音は、その一部が連通凹部64を介して開口部62から外部に抜けるので、圧迫感、こもり感等が低減され、クリアとなる。
【0046】
さらに、開口部62の先端はパッド溝63の先端と連続する。これにより、笠部53が大きく変形しても、開口部62とパッド溝63との連通が安定的に維持される。
【0047】
また、イヤホン10は、筒状のパッド取付部17を含む筐体11と、筐体11内に配設された音を発生するドライバユニット41とを有し、パッド取付部17にイヤーパッド50の本体部51が取付けられる。
【0048】
これにより、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際、笠部53が変形して本体部51の外周面に押付けられた状態となっても、外耳道の内外の連通が維持される。したがって、警報等の外部の環境音が遮断されることがなく、音の抜けが良好で、切れの良い低音及びクリアな中高音を再現することができ、装着感が良好となり、音質が向上する。
【0049】
また、筐体11は、パッド取付部17の基端に接続された円錐部16を含み、円錐部16は、その表面における開口部62の各々に対応する位置に形成された軸方向に延在する筐体溝31を備え、筐体溝31の先端は、イヤーパッド50の本体部51が備えるパッド溝63の後端と連通する。これにより、イヤーパッド50が外耳道に挿入された際、笠部53が変形して、本体部51の外周面のみならず、円錐部16の表面に押付けられた状態となっても、開口部62とそれに対応するパッド溝63及び筐体溝31とが互いに連通するので、外耳道の内外の連通が維持される。
【0050】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、少なくとも一部が外耳道に挿入されるイヤーパッド及び該イヤーパッドを有するイヤホンに適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 イヤホン
11 筐体
12 前筐体
12a、851 基部
13 後筐体
14 蓋筐体
15 ケーブル保持部
16 円錐部
17 パッド取付部
17a 係合凹部
21 前方空間
22 筐体音導孔
24 後方空間
25 前方エアダクト
27 調整孔
27a 第1調整孔
27b 第2調整孔
28 後方エアダクト
31 筐体溝
41 ドライバユニット
50、850 イヤーパッド
51 本体部
52 係合凸部
53、855 笠部
53a 前半部
53b 後半部
54 先端接続部
55 先端部
61 パッド音導孔
62 開口部
63 パッド溝
64 連通凹部
65 空洞部
91、891 電線ケーブル
811 ハウジング
815 音導管
816 音導孔
852 導管部
853 導孔部
856 小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)弾性変形可能な材料から成り、イヤホンの筐体に取付けられ、少なくとも先端部が外耳道に挿入可能なイヤーパッドであって、
(b)前記イヤホンの発生する音を外耳道に入射させる音導孔が形成された筒状の本体部と、
(c)該本体部の先端に接続され、該先端から後端に向けて斜めに広がる弾性変形部とを有し、
(d)該弾性変形部は、前記本体部の先端側から観て放射状に延在する複数のスリット状の開口部を備え、
(e)前記本体部は、その外周面における前記開口部の各々に対応する位置に形成された軸方向に延在する溝を備え、
(f)前記弾性変形部が変形して前記本体部の外周面に押付けられると、前記開口部とそれに対応する溝とが重なり合うことを特徴とするイヤーパッド。
【請求項2】
前記開口部の先端は前記音導孔の先端に連通する請求項1に記載のイヤーパッド。
【請求項3】
前記開口部の先端は前記溝の先端と連続する請求項1又は2に記載のイヤーパッド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のイヤーパッドを有するイヤホンであって、
筒状の耳介挿入部を含む筐体と、該筐体内に配設された音を発生するドライバユニットとを有し、
前記耳介挿入部に前記イヤーパッドの本体部が取付けられるイヤホン。
【請求項5】
前記筐体は、前記耳介挿入部の基端に接続された円錐部を含み、
該円錐部は、その表面における前記開口部の各々に対応する位置に形成された軸方向に延在する溝を備え、
該溝の先端は、前記イヤーパッドの本体部が備える溝の後端と連通する請求項4に記載のイヤホン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−49654(P2011−49654A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194328(P2009−194328)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】