説明

インイヤ式ヘッドホン

耳穴(b)を外部領域(c)に対して封止するための弾性封止部(2)および硬質封止部(3)を備えるインイヤ式ヘッドホン(1)において、硬質封止部(3)は、耳穴(b)と外部領域(c)とを相互連通する少なくとも1個の減衰ベント(4)を備え、この減衰ベント(4)が音響摩擦を生ずるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インイヤ式ヘッドホンに関する。さらに本発明は、インイヤ式ヘッドホンの硬質封止部、並びにインイヤ式ヘッドホンの弾性封止部に関する。
【背景技術】
【0002】
インイヤ式ヘッドホンは、耳の外耳道を塞ぎ、このインイヤ式ヘッドホンおよび外耳道は、耳内にキャビティ(空洞)すなわち、耳穴を画定する。音の再生は、この耳穴の共鳴特性によって、極めて大きな影響を受ける。高品質な音の再生のためには、耳穴の共鳴を減衰する必要がある。通常インイヤ式ヘッドホンは、耳穴の共鳴を減衰する目的で外耳道を塞ぐための発泡材のキャップを備え、このキャップはヘッドホンのハウジングに引き被せる。このキャップには、2つの機能があり、1つ目は、外部領域に対して耳を封止することで、2つ目は、若干の通気を行うことで、耳穴の共鳴周波数を減衰することである。この従来技術によるヘッドホンには、封止機能と減衰機能とが、互いに依存し、また、発泡材をより多くまたはより少なく圧迫する装着者の耳のサイズにも依存するという問題点がある。従って、音の再生は、キャップの実際の装着状態によって、図らずも影響を受ける。このことが、良好な音の再生が保証され得ない理由である。
【0003】
特許文献1は、封止部が突出している基体を持つ補聴器を開示しており、この封止部によって、使用者の耳の外耳道を塞ぐ。この封止部は、耳穴と耳の外側の外部空間とを連通する閉鎖可能な貫通孔を備える。この貫通孔は、音響質量を形成し、この貫通孔の一方の機能としては、耳の密閉感を回避することにより、補聴器の装着の快適さを向上することである。この貫通孔の他の機能としては、電気的増幅出力を増加させることなく、300Hz〜1kHzの周波数帯域内の音レベルを増加することである。従って、この貫通穴は、耳穴中において音響周波数の増幅器として機能する。この補聴器の問題は、この補聴器が寸法および構造上、耳穴における共鳴を減衰するのには適さないことである。
【特許文献1】特開平08−037697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上述の問題点を回避しつつ、冒頭で述べた種類のインイヤ式ヘッドホンと、第2段落で述べた種類のインイヤ式ヘッドホンの硬質封止部と、第3段落で定めた種類のインイヤ式ヘッドホンの弾性封止部とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を達成するために、本発明は、耳穴を外部領域に対して封止するための弾性封止部と硬質封止部とを備えるインイヤ式ヘッドホンにおいて、硬質封止部は、耳穴と外部領域とを相互連通するための少なくとも1個の減衰ベントを備え、この減衰ベントが音響摩擦を生ずる構成としたことを特徴とする。
【0006】
上述の課題を達成するために、本発明は、弾性封止部との連結のために用意した領域であって、耳穴と外部領域とを相互連通するための少なくとも1個の減衰ベント備える該領域を有するインイヤ式ヘッド用の硬質封止部において、減衰ベントが音響摩擦を生ずる構成としたことを特徴とする。
【0007】
上述の課題を達成するために、本発明は、耳穴を外側領域に対して封止するインイヤ式ヘッドホン用の弾性封止部において、硬質封止部に連結するために用意した領域を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるこれらの特徴的構成によって、広周波数帯域での良好な音の再生ができるという利点を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
少なくとも1個の減衰ベントを、孔またはスリットとして実現する場合、このベントを極めて簡単に作製できる利点がある。
【0010】
この少なくとも1個の減衰ベントを0.5mm以下の幅にすると、さらに有利である。これによって、良好な減衰機能が得られる効果がある。
【0011】
本発明のさらにまた有利な実施形態においては、弾性封止部を、空気を通さない材料によって形成するインイヤ式ヘッドホンである。これによって、良好な封止機能が得られる効果がある。
【0012】
そして、弾性封止部をシリコン製の円錐体とすると有利であり、ヘッドホンの良好な封止機能が得られる。その上、シリコンは装着するのに快適な材料である。
【0013】
本発明を以下に好適な実施例につき詳述するが、本発明はこの実施例に限定するものではない。添付の図面は、本発明インイヤ式ヘッドホンの断面を示す。
【0014】
この図面は、線図的に描いており、縮尺通りではない。本発明の他の等価な変更例が、本発明の趣旨から逸脱することなく実施可能であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されることは、当業者にとって明らかであろう。
【実施例】
【0015】
本発明によるインイヤ式ヘッドホン1は、外部領域cに対して耳穴bを封止するための弾性封止部2および硬質封止部3を備える。硬質封止部3は、ハウジング6内に配置するスピーカ5の音放射面をカバーする硬質のプレートとして製造する。音放射のための貫通孔7をこのプレートの中心部分に配置するとともに、このプレートのハウジング6から側方に突出する部分に減衰ベント4を設ける。減衰ベント4を設ける部分は、ハウジング6の半径方向外側を包囲する端縁をなす。
【0016】
音放射のための貫通穴7を有する中心部分と、減衰ベント4を有する部分とは、代案として、別個の部品として形成することができる。硬質封止部3は、好適には、プラスチックで形成する。
【0017】
硬質封止部3の減衰ベント4は、インイヤ式ヘッドホン1の装着状態において、耳穴bを外部領域cに連通し、減衰ベント4はそれぞれ、音響摩擦を生ずる。このことは、各減衰ベント4が、耳穴b内の音響波、特に耳穴bの共鳴周波数の範囲にある音響波を減衰することを意味する。本発明による減衰ベント4は、耳穴b内の音圧レベルの周波数特性(レスポンス)を平滑化する。すなわち、音圧レベルの周波数特性は、ほぼ一定または安定になる。
【0018】
図示するように、減衰ベント4は円筒状の孔またはスリットの形状をしており、それぞれの孔またはスリットはダクトをなす。減衰ベント4はそれぞれ、0.5mm以下の幅dとし、良好な減衰効果を得るようにする。しかしながら、製造上の理由から、減衰ベント4は、0.1〜0.5mmの幅dとするのが好ましい。
【0019】
原則として、1個のみの減衰ベント4を設けることが可能である。この場合、減衰ベント4を、例えば長いスリットとして形成する。
【0020】
弾性封止部2を硬質封止部3の周りに配置し、この弾性封止部2と硬質封止部3とを、例えば、接着剤による接着によって互いに連結する。また、単に弾性封止部2と硬質の部分3とを粘着することもできる。この弾性封止部2を硬質封止部3に連結するのは、インイヤ式ヘッドホン1を耳内に装着するときに、弾性封止部2が硬質封止部3から外部領域cに向かって突出するように行う。
【0021】
更に、弾性封止部2を、空気を通さない材料から形成することにより、弾性封止部2の封止機能を向上する。弾性封止部2をシリコンで形成するとよく、すなわち、このシリコンは使用者の耳に良好にフィットするからである。ただし、原則として空気を通さない他の弾性材料、例えばゴムを使用して、弾性封止部2を製造することもできる。
【0022】
弾性封止部2を円錐形状に形成することにより、弾性封止部2の封止機能を向上し、また外側領域cに対して耳穴bを極めて効果的に遮蔽する。
【0023】
上述の実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、特許請求の範囲によって定義する本発明の範囲から逸脱することなく、多くの他の実施例を設計し得ることに留意されたい。特許請求の範囲においては、カッコ付き参照符号は、請求の範囲を限定するものとして解釈すべきものではない。「備えている」、「備える」等の用語は、特許請求の範囲または明細書全体で列挙する構成要素または工程以外の構成要素または工程の存在排除するものではない。単独として言及する構成要素は、複数存在することを排除するものではなく、またこの逆も同様である。装置請求項(クレーム)において列挙する複数個の手段、またこれら手段のうちのいくつかは、全く同一のハードウェアによって実施され得る。ある特定の手法が、相互に異なる従属請求項において詳述されるという単なる事実は、これら特定手法の組み合わせを有効に用いることができないということを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のインイヤ式ヘッドホンの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳穴(b)を外部領域(c)に対して封止するための弾性封止部(2)と硬質封止部(3)とを備えるインイヤ式ヘッドホン(1)において、硬質封止部(3)は、耳穴(b)と外部領域(c)とを相互連通する少なくとも1個の減衰ベント(4)を備え、この減衰ベント(4)が音響摩擦を生ずる構成としたことを特徴とするインイヤ式ヘッドホン。
【請求項2】
請求項1に記載のインイヤ式ヘッドホンにおいて、少なくとも1個の減衰ベント(4)を、孔またはスリットとして形成したインイヤ式ヘッドホン。
【請求項3】
請求項2に記載のインイヤ式ヘッドホンにおいて、少なくとも1個の減衰ベント(4)は、0.5mm以下の幅を有する構成としたインイヤ式ヘッドホン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインイヤ式ヘッドホンにおいて、弾性封止部(2)を、空気を通さない材料によって形成したインイヤ式ヘッドホン。
【請求項5】
請求項4に記載のインイヤ式ヘッドホンにおいて、弾性封止部(2)を、シリコン製の円錐体としたインイヤ式ヘッドホン。
【請求項6】
弾性封止部(2)との連結のために用意した領域であって、耳穴(b)と外部領域(c)とを相互連通するための少なくとも1個の減衰ベント(4)備える該領域を有するインイヤ式ヘッド(1)用の硬質封止部(3)において、減衰ベント(4)が音響摩擦を生ずる構成としたことを特徴とする硬質封止部。
【請求項7】
耳穴(b)を外部領域(c)に対して封止するインイヤ式ヘッドホン(1)用の弾性封止部(2)において、硬質封止部(3)に連結するために用意した領域を備えることを特徴とする弾性封止部。

【図1】
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【公表番号】特表2008−521320(P2008−521320A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542417(P2007−542417)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053783
【国際公開番号】WO2006/056913
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】