説明

インクジェットの感圧転写プリント方法

【課題】 紙、木材、金属、陶器類などの被転写物に文字、図形、模様などを手軽に転写プリントする方法の提供。
【解決手段】 基材1、離型層2、及び水溶性粘着層4を積層して構成した感圧転写シートAの水溶性粘着層面をインクジェットプリンターで印刷し、そして文字、図形、模様などを印刷した上記感圧転写シートAの印刷面を被転写物に相対させ、その反対面を指で擦り押さえることで被転写物にプリントする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットプリンターによって得られる電子画像を感圧転写シートに支持させ、この画像を紙、木材、金属、陶器類などに転写プリントする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各家庭においては、インクジェットプリンターで印刷の出来ない形状の紙、木材、金属、陶器類などは、インジェット用の粘着シートに印刷し、その台紙を剥し、紙、木材、金属、陶器類の表面に貼り付けている。又、文字、図形の入り込んだところは切り取ることが出来ない。又後で、表面を耐水性を有する為のフイルムなどを張ってカバーしなくてはならないなどの複雑な手間をかけなければ、市販されているような鮮明なプリントを施すことが出来ない。紙類においても、紙を選んでしまい、特に市販の和紙などは、色が滲んでしまったり色が薄くなったりしてプリントが容易でない。よって、紙の上に紙を貼り付けるといった方法が採用されている。
【0003】
特開2004−17635号に係る「タック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法」は、和紙や不織布などの表面にインクジェット記録方式により印刷が施され、裏面には粘着層及び該粘着層を被覆する剥離紙を備えたもので、上記インクジェット記録用の顔料インクを表面に凝集させる性質を付与している。従って、印刷された表面のインクは滲むことなく、鮮明な画質を形成することが出来る。
【0004】
特開2003−127515号に係る「建材の模様形成方法」は、平面的な建材、或いは凹凸面を有する建材の表面に、如何なる種類の模様であっても効率的かつ美麗に模様を形成することが出来る。すなわち、「多孔質体の表面を、模様を形成する部分以外の部分を溶融することによって、溶融せずに残った多孔質体の表面から着色剤が滲み出すように加工された多孔質体を、建材表面に押付けることにより、建材表面へ模様を形成することが出来る。」すなわち、この印刷方法は「タコ印刷」と称され、凹版から弾力性のあるシリコンパッドに、文字、絵柄などを転写し、このパッドを凹凸面のある建材に押付けて印刷する。
【0005】
特開2000−141991号に係る「ガラス等被転写体へのカラー印刷方法」は、ガラス、陶器、ホーロウなどの製品に印刷する技術であり、カラーの絵や写真などが美しく鮮明に印刷され、転写した図柄が被転写体の表面に強固に密着する方法である。すなわち、基体シートと、該基体シート上に積層された少なくとも剥離層と図柄層と接着層とを有する絵付け層とからなり、かつグラビヤ印刷で形成された転写フイルムを転写すべき被転写体に当てて絵付け層を転写すると共に基体シートを剥離した後に、焼付け処理を行う。
【0006】
しかし、これら従来の印刷方法は、個人が家庭で手軽に行うことが出来る方法ではない。あくまでも生産工場においてプロが行う方法であり、この方法を用いて各個人が色々な図形や模様などを木材、金属、陶器類などに印刷することは出来ない。
【特許文献1】特開2004−17635号に係る「タック紙及び該タック紙を用いたインクジェット記録方法」
【特許文献2】特開2003−127515号に係る「建材の模様形成方法」
【特許文献3】特開2000−141991号に係る「ガラス等被転写体へのカラー印刷方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来のインクジェットのプリント方法には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、感圧転写シートにインクジェットプリンターの文字や図形を切り抜くことなく、又コンピュータでアウトラインデーターを作成してカッティングプロッターで切り抜く必要がなく、さらに図形の大きさに左右されることなく、低コストで短時間に木材、金属、陶器類などの被転写物に転写プリントすることが出来るインクジェットの感圧転写プリント方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転写方法はインクジェットの液体インクを熱などを使わず感圧にて被転写物に転写プリントすることが出来る方法であり、被転写物の表面には文字、図形、又は模様などを形成することが出来る。水溶性粘着層と離型層、又は水溶性粘着層と耐水性皮膜層と離型層からなる転写シートにインクジェットプリンターにて文字や図形、模様などを印刷する。インクの載った部分は水溶性粘着層の為に切手などの裏糊を濡らした状態になり、インク部分が粘着性を有する粘着インクとなる。そこで、印刷された上記転写シートを木材、金属、陶器などの上に印刷面を下にしてあてがい、裏面より指で擦り押えることにより印刷された文字や図形のところが離型層より剥がれて被転写物表面に転写される。
【発明の効果】
【0009】
本発明はインクジェットプリント用紙に少なからずとも水溶性粘着層と離型層を有した感圧転写シートを使用し、今までインクジェット受容層がコートされていない普通紙やインクが滲んでしまう和紙やプリンターに直接プリントの出来ない形状の木材、金属、陶器類などに印刷面をあてがい、反対面より擦り押えることによりインクで描かれたところの文字や図形を簡単にプリントすることが出来る。又、金属箔を転写後の文字、図形の上より擦り押えることで、今まで必要であった金属箔の樹脂型を要しなく、容易に箔押しプリントも可能と成る。
【実施例】
【0010】
図1は感圧転写シートの断面を拡大して示した実施例であり、基材1と離型層2、及び水溶性粘着層4が積層して構成している。ここで基材1としてはフイルム又はコート紙が用いられ、該基材1にシリコンなどを用いた離型層2(例えば、信越シリコンKS3502)を設け、その上にPVA系又はMC系やデンプン糊、デキストリン、アラビヤゴムなどの水溶性粘着層4を10μ程度(例えば、新中村化学工業社のバナレジンMO−1などの水溶性糊類)の厚さでスクリーン印刷機を用いて塗布して作られる。
【0011】
また、図4は感圧転写シートの断面拡大図を表している他の実施例である。この感圧転写シートは、転写後の耐水性、耐光性を付与したものであり、前記図1に示した感圧転写シートの離型層2と水溶性粘着層4との間に耐水・耐光性樹脂層3を介在して積層構造と成っている。この耐水・耐光性樹脂層3としてはアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂(例えば、互応化学社のカバーコートレジンLO−300)を5μ程度の厚さに設けている。
【0012】
ところで、上記図1に示した感圧転写シートAを、キャノン社製 BJ S330インクジェットプリンターで文字や図形を鏡像印刷する。インク5の載った部分は水溶性粘着層4の為に切手などの裏糊を濡らした状態になり、インク部が粘着性を有する粘着インク6となる。図2はインク5が水溶性粘着層4に付着する状態と、付着して粘着インク6とを表し、該粘着インク6にて文字や図形が形成される。
【0013】
そして、インクジェットプリンターにて図2のように印刷された感圧転写シートAを紙7の上に印刷面を下にしてあてがい、裏面より指で擦り押さえる。従って印刷された文字や図形の粘着インク6が離型層2より剥がれ、紙7の上に転写される。又、転写された文字の表面は粘着剤のままと成るので、更に上から金箔や銀箔を押付けることで、箔押しプリントが出来上がる。図3は感圧転写シートAを剥して紙7に粘着インク6,6・・が転写された場合を示している。該粘着インク6,6・・は所定の文字や図形を形成している為に、該紙7には同じ文字や図形が転写される。
【0014】
一方、図4に示す感圧転写シートBの場合も同じく、キャノン社製BJ S330インクジェットプリンターで文字や図形を鏡像印刷される。インク5の載った部分は水溶性粘着層4の為に切手などの裏糊を濡らした状態に成り、インク部が粘着性を有する粘着インク6となる。図5はインク5が水溶性粘着層4に付着する状態と、付着した粘着インク6とを表し、該粘着インク6にて文字や図形が形成される。
【0015】
このように印刷された感圧転写シートBは紙7の上に印刷面を下にしてあてがい、裏面より指で擦り押さえることにより印刷された文字や図形のところが耐水・耐光性樹脂層3と共に離型層2より剥がれ、紙7の上に転写される。表面には耐水・耐光性樹脂層3があるために、水などがかかっても色が流れたり滲んだりしない。耐水・耐光性のあるプリント物が得られる。
【0016】
図6は感圧転写シートBを剥して紙7に耐水・耐光性樹脂層3,3・・を積層した粘着インク6,6・・が転写された場合を示している。該粘着インク6,6・・は所定の文字や図形を形成している為に、該紙7には同じ文字や図形が転写される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】感圧転写シートの断面拡大図。
【図2】感圧転写シートの水溶性粘着層側にプリントした場合。
【図3】プリントした感圧転写シートを紙に転写した場合。
【図4】感圧転写シートの断面拡大図。
【図5】感圧転写シートの水溶性粘着層側にプリントした場合。
【図6】プリントした感圧転写シートを紙に転写した場合。
【符号の説明】
【0018】
1 基材
2 離型層
3 耐水・耐光性樹脂層
4 水溶性粘着層
5 インク
6 粘着インク
7 紙
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、木材、金属、陶器類などの被転写物に文字、図形、模様などを転写プリントする方法において、基材、離型層、及び水溶性粘着層を積層して構成した感圧転写シートの水溶性粘着層面をインクジェットプリンターで印刷し、そして文字、図形、模様などを印刷した上記感圧転写シートの印刷面を被転写物に相対させ、その反対面を指で擦り押さえることで被転写物にプリントすることを特徴とする感圧転写プリント方法。
【請求項2】
紙、木材、金属、陶器類などの被転写物に文字、図形、模様などを転写プリントする方法において、基材、離型層、及び水溶性粘着層を積層して構成した感圧転写シートの水溶性粘着層面をインクジェットプリンターで印刷し、そして文字、図形、模様などを印刷した上記感圧転写シートの印刷面を被転写物に相対させ、その反対面を指で擦り押さえることで被転写物にプリントし、さらに転写された文字、図形、模様などの表面に金箔や銀箔を貼着したことを特徴とする感圧転写プリント方法。
【請求項3】
紙、木材、金属、陶器類などの被転写物に文字、図形、模様などを転写プリントする方法において、基材、離型層、耐水・耐光性樹脂層、及び水溶性粘着層を積層して構成した感圧転写シートの水溶性粘着層面をインクジェットプリンターで印刷し、そして文字、図形、模様などを印刷した上記感圧転写シートの印刷面を被転写物に相対させ、その反対面を指で擦り押さえることで被転写物にプリントすることを特徴とする感圧転写プリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−192725(P2006−192725A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7007(P2005−7007)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(392027748)
【Fターム(参考)】