説明

インクジェットヘッドの製造方法

【目的】 インク滴を安定して噴射させることができ、且つ、低コストのノズルプレートの製造方法を提供すること。
【構成】 この目的を達成するために本発明では、ノズルプレート3は、アクチュエータープレート1の端部62に導電性膜を形成する工程と、前記アクチュエータープレート1のインク室12に導電性のレジスト40を充填する工程と、前記端面62に非導電性の感光レジスト42による膜を形成する工程と、所定のパターン72が設けられた硝子マスク70を前記感光レジスト42膜上にかぶせて露光を行い、ついで現像処理を施し、ノズル位置に対応した樹脂部分のみからなるレジストパターン42aを形成する工程と、電解メッキ法にて、前記レジストパターン42aが形成されたアクチュエータープレート1の端面62にメッキ膜を形成する工程と、前記レジスト40,42を除去する工程とから形成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インク室が形成されたアクチュエーター部材と、前記インク室に連通し、インクが噴射されるノズルが形成されたノズルプレートとを有するインクジェットヘッドを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、インクジェットプリンタ等に利用されるオンデマンド方式の印字ヘッドとして電気−熱変換素子である発熱素子を利用した、いわゆるバブルジェット方式印字ヘッドや、電気−機械変換素子である圧電素子を利用したピエゾ方式印字ヘッドが実用化されている。基本素子10の概略構成は図5に示すように、圧電セラミックスのアクチュエータープレート1とカバープレート2とノズルプレート3とから構成されている。
【0003】圧電セラミックスのアクチュエータープレート1は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料によって形成されている。そして、そのアクチュエータープレート1は矢印5の方向に分極処理されており、さらに、ダイヤモンドカッターブレードの回転によって溝8が切削加工されている。そして、溝の一部には蒸着等により電極13が形成されている。
【0004】次に、カバープレート2は、セラミックス材料または樹脂材料等から形成されている。そして、カバープレート2と、アクチュエータープレート1の溝8加工側の面がエポキシ等の接着剤によって接着される。さらに、アクチュエータープレート1及びカバープレート2が接着された後の端面に、各インク室12の位置に対応した位置にノズル32が設けられたノズルプレート3が接着されている。このノズルプレート3は、ポリアルキレン(例えばエチレン)、テレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、酢酸セルロース等のプラスチックによって形成されている。
【0005】前記ノズルプレート3のノズル32は、接着前にエキシマレーザにより形成される。発振器より発振されたレーザ光を所望の形に照射するためのマスクを通過させて、前記ノズルプレートに結像させ、ノズルプレート材を除去して形成される。そして、ノズル32が形成されたノズルプレート3の片面に撥水処理を、もう一方の面に親水化処理を各々行い、前述したように接着剤を用いて、ノズル32がインク室12の中央にくるように位置合わせを行い貼り合わせていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ノズルプレートをアクチュエーター側に接着する際には、一般的には、接着剤をアクチュエーター側あるいはノズルプレート側に適当量形成し、均一に圧力をかけて保持しベークにより硬化させる。しかしながら、現実には、余剰接着剤がノズルに進出してノズルの径が狭くなったり、ノズルの境界に付着してノズルの形が変形したりする。これにより、噴射液滴の方向が曲がったり、液適量が安定しなかったり、最悪噴射しない等と言った問題が発生していた。
【0007】また、接着の工程では、ノズルプレートとアクチュエーターとの位置合わせや、プレートへの加圧が必要である。しかし、硬化する前の接着剤は柔らかく且つ不安定な状態であることや、硬化する際に接着剤の体積の経時変化に起因して、位置精度が出なかったり、接着強度がバラついたりする等、制御が困難で歩留まりが悪かった。
【0008】さらにエキシマレーザーによるノズルの形成は、エキシマレーザー装置が非常に高価であり、また、その装置の不安定さから熟練者による定期的な微調整も必要となるため、製造コストが高くついてしまい生産性が悪かった。
【0009】本発明は上述したような問題を解決するためになされたものであり、全チャンネルの液滴方向,液滴量にばらつきがなく、良好にインク噴射を行うことができ、かつ低コストで製造可能なインクジェットヘッドの製造方法を提示することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明のインクジェットの製造方法は、インク室が形成されたアクチュエーター部材に対して、前記インク室内のインクを噴射させるノズルを備えたノズルプレートを形成する手法であり、更に、前記アクチュエーター部材に犠牲層を設けてインク室を埋めた後に、前記ノズルプレートを堆積法にて前記アクチュエーター部材上に形成する。
【0011】尚、前記堆積法は、メッキ法であってもよい。
【0012】尚、前記ノズルプレートは、前記アクチュエーター部材の端部に導電性膜を形成する工程と、前記アクチュエーター部材のインク室に導電性の充填物質を充填する工程と、前記アクチュエーター部材の端面に非導電性の感光性樹脂による膜を形成する工程と、所定のパターンが設けられたマスクを前記感光性樹脂膜上にかぶせて露光を行い、ついで現像処理を施し、ノズル位置に対応した樹脂部分のみからなる凸型を形成する工程と、電解メッキ法にて、前記凸型が形成されたアクチュエーター部材の端面にメッキ膜を形成する工程と、前記感光性樹脂及び充填物質を除去する工程とから形成されてもよい。
【0013】また、前記ノズルプレートは、前記アクチュエーター部材のインク室に充填物質を充填する工程と、無電解メッキ法にて、前記アクチュエーター部材の端面にメッキ膜を形成する工程と、前記メッキ膜上に感光性樹脂による膜を形成する工程と、所定のパターンが設けられたマスクを前記感光性樹脂膜上にかぶせて露光を行い、ついで現像処理を施し、ノズル位置に対応する樹脂部分を除去してノズルパターンを形成する工程と、エッチングにより、前記ノズルパターンを通してメッキ膜にノズル孔を空ける工程と、前記感光性樹脂及び充填物質を除去する工程とから形成されてもよい。
【0014】尚、前記ノズルプレートは、真空成膜法により前記アクチュエーター部材上に形成されてもよい。ここで言う真空成膜法とは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、気相成長、ガスソースMBE(Molecular Beam Epitaxy)、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)を総称するものとしている。
【0015】尚、前記ノズルプレートは、樹脂材料を用いて、プラズマ重合法により前記アクチュエーター部材上に形成されてもよい。
【0016】
【作用】上記の構成を有する本発明の請求項1に係るインクジェットヘッドの製造方法においては、先ず、インク室のために溝部が形成されたアクチュエーター部材に、犠牲層を設けてインク室を埋める。すると、前記アクチュエーター部材の前記溝部を含めた端面を覆う膜を形成可能になる。インク室を埋めた後は、ノズルプレートを堆積法にて前記アクチュエーター部材上に形成する。この手法を取ることにより、アクチュエーター部材とノズルプレートとを接着させる接着剤や接着工程を必要としないので、ノズルの目詰まり等の不具合が生じないと共に製造工程が簡単になり、コストを低減することが出来る。又、直接ノズルプレートを形成することで、ノズルプレートの位置精度が良いインクジェットヘッドを製造する。
【0017】請求項2に係るインクジェットヘッドの製造方法においては、ノズルプレートはメッキ法により前記アクチュエーター部材上に形成される。よって、金属系材料等を用いて、容易にノズルプレートが形成される。
【0018】請求項3に係るインクジェットヘッドの製造方法においては、ノズルプレートは、アクチュエーター部材の端部に導電性膜を形成する工程と、前記アクチュエーター部材のインク室に導電性の充填物質を充填する工程と、前記アクチュエーター部材の端面に非導電性の感光性樹脂による膜を形成する工程と、所定のパターンが設けられたマスクを前記感光性樹脂膜上にかぶせて露光を行い、ついで現像処理を施し、ノズル位置に対応した樹脂部分のみからなる凸型を形成する工程と、電解メッキ法にて、前記凸型が形成されたアクチュエーター部材の端面にメッキ膜を形成する工程と、前記感光性樹脂及び充填物質を除去する工程とから形成される。この手法に従えば、ノズルプレートのメッキ膜を形成すると同時にノズルも形成されるため、製造工程が更に簡単にできると共に、ノズルの位置精度を高くできる。
【0019】請求項4に係るインクジェットヘッドの製造方法においては、ノズルプレートは、前記アクチュエーター部材のインク室に充填物質を充填する工程と、無電解メッキ法にて、前記アクチュエーター部材の端面にメッキ膜を形成する工程と、前記メッキ膜上に感光性樹脂による膜を形成する工程と、所定のパターンが設けられたマスクを前記感光性樹脂膜上にかぶせて露光を行い、ついで現像処理を施し、ノズル位置に対応する樹脂部分を除去してノズルパターンを形成する工程と、エッチングにより、前記ノズルパターンを通してメッキ膜にノズル孔を空ける工程と、前記感光性樹脂及び充填物質を除去する工程とから形成される。この手法に従えば、各工程に用いられるメッキ材料や充填物質、感光性樹脂として使用される素材の自由度が高いため、製造における制御管理が容易であると共に、コストを更に低減することが出来る。
【0020】請求項5に係るインクジェットヘッドの製造方法においては、ノズルプレートは真空成膜法により前記アクチュエーター部材上に形成される。よって、金属系材料等を用いて、容易にノズルプレートが形成される。
【0021】請求項6に係るインクジェットヘッドの製造方法においては、ノズルプレートは、樹脂材料を用いて、プラズマ重合法により前記アクチュエーター部材上に形成される。
【0022】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1はアクチュエータープレート1の斜視図である。
【0023】本発明のアクチュエーター部材に相当するアクチュエータープレート1には、溝加工により複数のインク室12が形成されており、インク室12は幅約85μm、深さ485μmで、インク室12を形成する隔壁18は幅約85μmである。溝はあるところから端面60に向かってなだらかに浅くなり、浅溝部を持つ。隔壁18を利用した斜め蒸着及びリフトオフにより、電極13を隔壁18の一部に形成する。この方法は従来の手法と同じであるが、本発明においては、蒸着の際、端面62からわずかに離れて電極13が形成されるように、端面62側の隔壁18の一部を高くしておく。これは、形成されるノズルプレート3により電極どうしが短絡するのを防ぐためである。つぎに、カバープレート2を前記アクチュエータープレート1に接着剤により接合する。
【0024】その後、カバープレート2も含めた端面62の面のみに、0.2μmほどのニッケル膜を周知の技術の蒸着法を用いて堆積させる。尚、このニッケル膜が本発明の導電性膜に相当する。
【0025】そして、図2に示すように、前記インク室12に、感光性がポジ型で、しかも導電性を持つ、粘度が30cps位の感光レジスト40を、毛細管現象を利用して端面60から充填し、ノズル面となる端面62に一次的に蓋50を押しつけて密閉し、120℃、30分加熱して反応硬化させる(図3a)。このレジスト40は100℃以上に加熱すると固化するとともに、全部感光したものと同じ反応が起こり、これ以降は光が照射されても現像溶解しない。尚、前記レジスト40が本発明の充填物質に相当し、上記工程において、前記レジスト40によりインク室に形成される層40aが本発明の犠牲層に相当する。
【0026】次に、インク室12に形成された層40aにより平らな面となった基本素子ヘッドの端面62に、通常の非導電性のポジ型感光レジスト42をスプレー塗布により、数十μm程形成する(図3b)。レジスト42は、厚膜化するために粘度の高いものを用いるとよい。尚、レジスト42が本発明の感光性樹脂に相当する。
【0027】続いて、レジスト42付き素子をノズル32位置に対応するように遮蔽部パターン72を形成した硝子マスク70を介して波長400nm近辺の光80を照射し(図3c)、専用の現像液により現像する。すると、光80が照射された所は現像液に溶解し除去され、ノズル32となる部分のレジストパターン42aが残る(図3d)。このとき光軸の調整等によって、各レジストパターン42aの断面をインク室12に向かって広がる台形にするとよい。尚、前記レジストパターン42が本発明の凸型に相当する。
【0028】続いて、電解メッキを行う。周知の技術であるため詳細な説明は省くが、メッキ浴にスルファミン酸ニッケルを用い、添加剤として界面活性剤を微量用い、pHを4に調整し、温度を50℃に保つ。前記レジストパターン42a付き素子の端面62をカソードに接続し、それより数cm離してアノードとして純Niをセットし、前記浴中で両電極間に電流密度が数アンペア(A/Dm2)の電流を流して、前記素子にNi膜90を析出させる。すると、素子表面の非導電性のレジストパターン42a上にはNi膜が析出しないが、下地の導電レジスト40上およびアクチュエータープレート1上にはNi膜90が密着良く析出する。そして、レジストパターン42aの膜厚よりも薄い膜厚が形成されたところで析出を終了させる(図3e)。例えば、レジスト膜厚が30μmでNi膜厚を25μm位でよい。最後に、レジストパターン42a及び層40aのレジスト42,40を専用の除去剤で取り除き、ノズル32と共にノズルプレート3が形成される(図3f)。
【0029】以上のように、ノズル32と共にノズルプレート3を接着剤を用いることなくアクチュエータープレート1上に形成できるので、従来例のように余剰接着剤がノズル32の径や形状を変えることはない。従って、液滴の噴射方向や液滴量を安定させることができる。また、本発明におけるレジスト42のパターニングは、50μmレベルであり、マスク70からのレジスト転写精度は±2%以内と精度は良好であった。また、最終的に形成される電解メッキによるノズル径のばらつきは±3%以内で、歩留まりはほぼ100%であった。そして、これらの一連のパターニング装置、メッキ装置のコストはエキシマレーザーに比べると安価である。
【0030】以上の工程により作製したインクジェットヘッドの端面60に図示しないマニホールド部材を取り付けてインク供給源(図示せず)に連結する。これにより、前記インク供給源から前記マニホールドを介してインク室12にインクが供給される。また、インクジェットヘッドの電極13を図示しない駆動回路に接続し、前記駆動回路により電極13に電圧を印加することによって、隔壁18が変形してインク室12内のインクに圧力波が発生してインクがノズル32から噴射される。
【0031】そして、このインクジェットヘッドを用いて、印字を行ったところ、噴射液滴方向や液滴量が安定しており、印字品質が良好であった。即ち、優れたヘッドを歩留まりよく低コストで作製することができた。
【0032】本発明を具体化した第二の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0033】上記第一の実施例と同様に、本実施例に使用されるアクチュエータープレート1には、図1に示すように、溝加工により複数のインク室12が形成されており、インク室12は幅約85μm、深さ485μmで、インク室12を形成する隔壁18は幅約85μmである。まず、図2に示すように、前記インク室12に、粘度30cps位のポジ型感光レジスト44を、毛細管現象を利用して端面60から充填し、ノズル面となる端面62に一次的に蓋50を押しつけて密閉し、120℃、30分加熱して反応硬化させる。このレジストは100℃以上に加熱すると固化するとともに全部感光したものと同じ反応が起こり、これ以降は光が照射されても現像溶解しない。尚、前記レジスト44が本発明の充填物質に相当し、上記工程において、前記レジスト44によりインク室に形成される層44aが本発明の犠牲層に相当する。
【0034】次に、インク室12に形成された層44aにより平らな面となった基本素子ヘッドの端面62に無電解メッキによりNi膜を30μmほど析出させる(図4a)。周知の技術であるため詳細な説明は省くが、前処理として、前記基本素子をセンシタイザー、アクチベイターの順に浸す。その後、硫酸ニッケルのメッキ浴に浸すと、Ni膜92が全面に密着良く析出してくる。
【0035】次に、前記Ni膜92上に、ポジ型感光レジスト46をスプレー塗布により、1μm程形成する(図4b)。尚、レジスト46が本発明の感光性樹脂に相当する。
【0036】続いて、前記レジスト46付き素子をノズル32に対応するように開口部パターン76を形成した硝子マスク74を介して波長400nm近辺の光80を照射し(図4c)、専用の現像液により現像する。すると、光80が照射された所は現像液に溶解し除去されて、ノズル32以外の部分のレジスト46が残り、ノズルパターン46aが形成される(図4d)。
【0037】前記ノズルパターン46a付き素子を塩化第二鉄溶液に浸しウェットエッチングを行う。すると、溶液が前記ノズルパターン46aを通してNi膜に浸食し、レジスト被覆部を残してNi膜90がエッチング除去される(図4e)。
【0038】最後に、層41aのレジスト40及びレジスト46を除去することでノズル32とノズルプレート3が形成される(図4f)。
【0039】以上説明したように、第二の実施例においても、ノズル32と共にノズルプレート3を接着剤を用いることなくアクチュエータープレート1上に作製できるので、余剰接着剤がノズル32の径や形状を変えることはない。従って、液滴の噴射方向や液滴量を安定させることができる。また、レジスト46のパターニングおよび、エッチング精度も良好で最終的に形成されるノズル径のばらつきは±2%で歩留まりはほぼ100%であった。そして、これらの一連のパターニング装置、メッキ装置のコストはエキシマレーザーに比べると安価である。また、第一の実施例と同様に、前記ヘッドにインクを供給し印字を行ったところ、噴射液滴方向や液滴量が安定しており、印字品質が良好であった。即ち、優れたヘッドを歩留まり良く低コストで作製することができた。
【0040】尚、上記実施例のノズルプレート3の材質としてNi膜を用いたが、その他の金属、チタン(Ti)、ステンレスでもよく、また、堆積方法としてはイオンプレーティング,スパッタリング,真空蒸着,気相成長,ガスソースMBE,プラズマCVD等の真空製膜法でもよい。さらに、ノズルプレート3の材質はテフロン等の樹脂でもよく、堆積方法としてプラズマ重合等を用いてもよい。
【0041】尚、ノズルプレート3の下地としてレジストを用いたが、その他に紫外線硬化樹脂など、硬化,除去が簡単な液体であれば何でもよい。レジストもネガ型でもよい。
【0042】また、上記実施例では、せん断モード型のインクジェットヘッドにノズルプレート3形成を行っていたが、特公昭53ー12138号公報に開示されているカイザー型や、特公昭61ー59914号公報に開示されているサーマルジェット型のインクジェットヘッドに、上記実施例と同様な手法を用いてノズルプレートの形成を行ったところ、歩留まりの良い製造が行われ、また、印字を行った結果も、噴射液滴方向や液滴量が安定し、同様の効果が得られた。
【0043】また、上記実施例では、アクチュエータープレート1上に直接ノズルプレート3を形成していたが、まず、ノズル32より大きな穴のあいた部材をアクチュエータープレート1上に接着し、その後に、ノズルプレート3をその部材上に各種堆積方法を用いて形成してもよい。
【0044】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本発明のノズルプレートの製造方法によれば、ノズルとともにノズルプレートがアクチュエーター部材に直接形成される。即ち接着剤を用いることなくノズルプレートが作製できるので、余剰接着剤がノズルの径や形状を変えることはない。このようにして形成したインクジェットヘッドは液滴の噴射方向や液滴量が安定し、印字品質が良好である。
【0045】さらに、本発明のノズル及びノズルプレート形成の工程は、高価なエキシマレーザーを用いず、また歩留まりの悪い、接着剤による貼合わせ工程もなく、安価で、歩留まりの良い、パターニング装置及びメッキ装置による工程となるため、低コストでヘッドを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクチュエータープレートの構造を示す斜視図である。
【図2】インク室にレジストを充填する工程を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施例に係る各工程を示すインクジェットヘッドの断面図である。
【図4】本発明の第二の実施例に係る各工程を示すインクジェットヘッドの断面図である。
【図5】従来のインクジェットヘッドの組立の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
1 アクチュエータープレート
3 ノズルプレート
12 インク室
32 ノズル
40a,44a 層
42,46 レジスト
42a レジストパターン
46a ノズルパターン
62 端面
70,74 硝子マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インク室が形成されたアクチュエーター部材に対して、前記インク室内のインクを噴射させるノズルを備えたノズルプレートを形成するインクジェットヘッドの製造方法において、前記アクチュエーター部材に犠牲層を設けてインク室を埋めた後に、前記ノズルプレートを堆積法にて前記アクチュエーター部材上に形成することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項2】 前記堆積法は、メッキ法であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項3】 前記ノズルプレートは、前記アクチュエーター部材の端部に導電性膜を形成する工程と、前記アクチュエーター部材のインク室に導電性の充填物質を充填する工程と、前記アクチュエーター部材の端面に非導電性の感光性樹脂による膜を形成する工程と、所定のパターンが設けられたマスクを前記感光性樹脂膜上にかぶせて露光を行い、ついで現像処理を施し、ノズル位置に対応した樹脂部分のみからなる凸型を形成する工程と、電解メッキ法にて、前記凸型が形成されたアクチュエーター部材の端面にメッキ膜を形成する工程と、前記感光性樹脂及び充填物質を除去する工程とから形成されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項4】 前記ノズルプレートは、前記アクチュエーター部材のインク室に充填物質を充填する工程と、無電解メッキ法にて、前記アクチュエーター部材の端面にメッキ膜を形成する工程と、前記メッキ膜上に感光性樹脂による膜を形成する工程と、所定のパターンが設けられたマスクを前記感光性樹脂膜上にかぶせて露光を行い、ついで現像処理を施し、ノズル位置に対応する樹脂部分を除去してノズルパターンを形成する工程と、エッチングにより、前記ノズルパターンを通してメッキ膜にノズル孔を空ける工程と、前記感光性樹脂及び充填物質を除去する工程とから形成されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項5】 前記ノズルプレートは、真空成膜法により前記アクチュエーター部材上に形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項6】 前記ノズルプレートは、樹脂材料を用いて、プラズマ重合法により前記アクチュエーター部材上に形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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