説明

インクジェットヘッド駆動装置

【課題】本発明は、インクジェットヘッドを円滑に駆動することができるインクジェットヘッド駆動装置に関する。
【解決手段】本発明は、予め設定された利得で増幅される電圧レベルを有する信号を予め設定された周期でそれぞれ出力する複数の増幅器を有する増幅部と、制御信号により上記複数の増幅器からの出力信号を一つの駆動信号に結合する結合部と、上記結合部での信号結合を制御する制御部と、上記駆動信号がインクジェットヘッドに伝達される信号伝達経路をスイッチングするスイッチング部と、を含むインクジェットヘッド駆動装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド駆動装置に関し、より詳細には、圧電方式のインクジェットヘッドを円滑に駆動することができるインクジェットヘッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電方式のインクジェットヘッドは、産業用インクジェットプリンタでも用いられている。
【0003】
例えば、印刷回路基板(PCB)上に金、銀等の金属を溶かして作ったインクを噴射して回路パターンを直接形成させる方式で、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)の製造、産業用グラフィックス、太陽電池等に用いられている。
【0004】
このような圧電方式のインクジェットヘッドは、圧力チャンバー、ノズル、流路及び駆動圧力を発生させるピエゾアクチュエータで構成されることができる。
【0005】
ピエゾアクチュエータは一般的に圧力チャンバーの周囲に密着して接着され、電気信号が印加された当該ピエゾアクチュエータの変位の変化によって当該圧力チャンバーに圧力が伝達されて液滴がノズルから吐出される。
【0006】
上述したピエゾアクチュエータの変位の変化によって伝達される電気信号は電圧駆動波形を有し、このような電圧駆動波形を生成するために駆動装置が用いられる。
【0007】
このような駆動装置は、主に一つのドライバ回路で構成されてインクジェットヘッドを駆動するが、インクジェットヘッド一つ当たり10〜1,000個程度のノズルで構成され当該ノズルのそれぞれにピエゾアクチュエータが取り付けられてノズル数又は吐出周波数が増加する場合、ドライバの電力量が増えて一つのドライバ回路では駆動が困難となるか又は回路が複雑な高価のドライバ回路を用いなければならないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、一つの駆動信号を生成するために複数の増幅器及び増幅された信号を結合する結合器を採用することにより増幅器の低動作周波数でも動作が円滑なインクジェットヘッド駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の課題を解決するために、本発明の一実施形態は、予め設定された利得で増幅される電圧レベルを有する信号を予め設定された周期でそれぞれ出力する複数の増幅器を有する増幅部と、制御信号により上記複数の増幅器からの出力信号を一つの駆動信号に結合する結合部と、上記結合部での信号結合を制御する制御部と、上記駆動信号がインクジェットヘッドに伝達される信号伝達経路をスイッチングするスイッチング部と、を含むインクジェットヘッド駆動装置を提供する。
【0010】
本発明の一実施形態によると、デジタル信号をアナログ信号に変換して上記複数の増幅器にそれぞれ提供する複数のDAC(Digital−Analog Converter)を有する変換部をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の一実施形態によると、上記スイッチング部は、上記結合部と上記インクジェットヘッドとの間に形成されて上記駆動信号の信号伝達経路をスイッチングすることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によると、上記スイッチング部は、上記インクジェットヘッドと接地との間に形成されて上記駆動信号の信号伝達経路をスイッチングすることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によると、上記複数の増幅器のそれぞれは、上記周期で予め設定された時間の間にハイレベル信号を出力することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によると、上記複数の増幅器のそれぞれの利得は、同一であることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によると、上記複数の増幅器のそれぞれの利得は、相違することができる。
【0016】
本発明の一実施形態によると、上記駆動信号は、予め設定された電圧レベルを有するメインハイレベル信号と、当該メインハイレベル信号より電圧レベルが低いサブハイレベル信号と、を有することができる。
【0017】
本発明の一実施形態によると、上記複数の増幅器のそれぞれは、1〜10KHzの周波数で上記ハイレベル信号を出力することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、上記駆動信号は、30〜50KHzの周波数と予め設定された電圧レベルとを有するメインハイレベル信号を有することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、一つの駆動信号を生成するために複数の増幅器及び増幅された信号を結合する結合器を採用することにより、増幅器の低動作周波数でも動作が円滑になって電力消費を低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置を示す構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置を示す構成図である。
【図3】本発明のインクジェットヘッド駆動装置の駆動波形が生成される原理を示す図である。
【図4】本発明のインクジェットヘッド駆動装置の駆動波形のタイミングダイヤグラムである。
【図5】本発明のインクジェットヘッド駆動装置のサブ波形が含まれた駆動波形が生成される原理を示す図である。
【図6】本発明のインクジェットヘッド駆動装置のノズル構成図である。
【図7】サブ波形が含まれた駆動波形によるピエゾアクチュエータの振動特性を示すグラフである。
【図8】本発明のインクジェットヘッド駆動装置のグレースケールを形成するための駆動波形のタイミングダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置を示す構成図である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置100は、増幅部110と結合部120と制御部130とスイッチング部150とを含み、変換部140をさらに含むことができる。
【0024】
増幅部110は、1〜n(nは、自然数)個の複数の増幅器を備え、第1〜第nの増幅器のそれぞれは、予め設定された利得で入力信号をそれぞれ増幅させることができる。
【0025】
結合部120は、増幅部110の第1〜第nの増幅器のそれぞれの増幅された信号を一つの駆動信号に結合してインクジェットヘッド160を駆動させることができる。
【0026】
制御部130は、増幅部110に入力信号を提供し、結合部120の上記駆動信号の結合のための結合経路スイッチングを制御することができる。
【0027】
スイッチング部150は、インクジェットヘッド160の複数のノズルのそれぞれに形成された複数のピエゾヘッドに上記駆動信号が伝達されるように信号伝達経路をスイッチングすることができる。
【0028】
図1に示されるように、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置100は、スイッチング部150がインクジェットヘッド160と接地との間に連結された構造を有するローサイド(low side)スイッチング方式で構成されることができる。
【0029】
また、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置100は、変換部140をさらに含むことができる。
【0030】
変換部140は、複数の第1〜第nのDAC(Digital−Analog Converter)を含み、制御部130からのデジタル信号をアナログ信号に変換して増幅部110の複数の増幅器のそれぞれに提供することができる。
【0031】
図2は、本発明の他の実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置を示す構成図である。
【0032】
図1と共に図2を参照すると、本発明の他の実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置200の増幅部210、結合部220、制御部230、変換部240及びスイッチング部250の機能は、図1に示される本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置100の増幅部110、結合部120、制御部130、変換部140及びスイッチング部150の機能と同一であるため、これに関する詳細な説明は省略する。
【0033】
但し、本発明の他の実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置200は、スイッチング部250がインクジェットヘッド260と結合部220との間に連結された構造を有するハイサイド(high side)スイッチング方式で構成されることができる。
【0034】
上述したように、本発明の他の実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置200は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置100と比較してスイッチング方式のみが相違し基本的な動作は同一であるため、以下では図1に示される本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド駆動装置100を中心に本発明を説明する。
【0035】
図3は、本発明のインクジェットヘッド駆動装置の駆動波形が生成される原理を示す図である。
【0036】
図3と共に図1を参照すると、増幅部110の第1〜第nの増幅器のそれぞれは、制御部130からの入力信号を、予め設定された利得で増幅させることができる。
【0037】
これにより、上記第1〜第nの増幅器のそれぞれは、一定時間の間にインクジェットヘッドを駆動させることができる電圧レベルを有するハイレベル信号を出力することができる。
【0038】
この際、上記第1〜第nの増幅器のそれぞれは、互いに異なるタイミングで上記ハイレベル信号を出力し、結合部120は、複数のスイッチを備えることができる。
【0039】
これにより、結合部120の上記複数のスイッチは、制御部130の制御によりスイッチングして互いに異なるタイミングで出力される上記ハイレベル信号を結合して駆動信号をインクジェットヘッド160に伝達することにより当該インクジェットヘッド160のピエゾアクチュエータを駆動させることができる。
【0040】
図4は、本発明のインクジェットヘッド駆動装置の駆動波形のタイミングダイヤグラムである。
【0041】
図4と共に図1及び図3を参照すると、本発明のインクジェットヘッド駆動装置100の増幅部110の上記第1〜第nの増幅器のそれぞれは、予め設定された周期で一定時間の間に上記ハイレベル信号を出力することができる。上記一定時間以外の時間にはローレベル信号を出力することができる。
【0042】
結合部120の上記複数のスイッチのそれぞれは、制御部130の制御により上記第1〜第nの増幅器のそれぞれが上記ハイレベル信号を出力するタイミングでスイッチングオンして、当該第1〜第nの増幅器のそれぞれのハイレベル信号が当該結合部120から一つの駆動信号として出力されるようにすることができる。
【0043】
即ち、本発明のインクジェットヘッド駆動装置は、複数の増幅器及び増幅された信号を結合する結合器を採用することにより、増幅器の低動作周波数でもその駆動信号の周波数は高く設定することができて所望の速度でインクジェットヘッドを駆動することができ、高く設定された駆動信号の周波数に比べて低動作周波数で動作する増幅器によって電力消費及び増幅器の発熱を低減させることができる。
【0044】
図5は、本発明のインクジェットヘッド駆動装置のサブ波形が含まれた駆動波形が生成される原理を示す図である。
【0045】
図1と共に図5を参照すると、増幅部110の上記第1〜第nの増幅器のそれぞれは、予め設定された互いに異なる利得を有するように設定されることができる。
【0046】
これにより、上記第1〜第nの増幅器のそれぞれのハイレベル信号は、メインハイレベル信号とサブハイレベル信号とに分けられ、上記メインハイレベル信号の電圧レベルは上記サブハイレベル信号の電圧レベルより高いことができる。
【0047】
ハイレベル信号の電圧レベルが高いと、一つの駆動信号に結合されてインクジェットヘッド160に伝達される際にピエゾアクチュエータの変位力を大きくすることができる。
【0048】
図6は、本発明のインクジェットヘッド駆動装置のノズル構成図である。
【0049】
図6を参照すると、インクジェットヘッドは、複数のノズルを有し、当該複数のノズルにはそれぞれピエゾアクチュエータが取り付けられるため、当該ピエゾアクチュエータの変位に応じてノズル内部のチャンバーに圧力が加えられ、これにより、チャンバーに含まれたインクが吐出される。
【0050】
インクジェットヘッド駆動装置は、このようなインクジェットヘッドのピエゾアクチュエータの駆動のために駆動信号を提供する。なお、ノズルにおいてインクと空気との界面をメニスカス(meniscus)といい、液滴が形成された後に当該メニスカスがノズルの前後に動きすぎるようになると、空気がノズルからチャンバーに流入されるか又は次のインク吐出が不安定になることがある。したがって、上記メインハイレベル信号の次のタイミングで上記サブハイレベル信号を形成してピエゾアクチュエータを駆動すると、メニスカスの動きを安定化することができる。
【0051】
図7は、サブ波形が含まれた駆動波形によるピエゾアクチュエータの振動特性を示すグラフである。
【0052】
図7を参照すると、ピエゾアクチュエータの振動特性を示すグラフ中、符号aは駆動信号にサブハイレベル信号がない場合のピエゾアクチュエータの振動特性を示すものであり、符号bは駆動信号にサブハイレベル信号がある場合のピエゾアクチュエータの振動特性を示すものである。
【0053】
図7を参照すると、約40usecで液滴の吐出が終わり、その後のピエゾアクチュエータの振動はチャンバー内に残っている残余圧力によって発生する。駆動信号にサブハイレベル信号がない場合は、吐出後にピエゾアクチュエータの振動が多いのに対し、駆動信号にサブハイレベル信号がある場合は、吐出後にピエゾアクチュエータの振動が顕著に減少することが分かる。
【0054】
上述したように、メインハイレベル信号の次のタイミングでサブハイレベル信号が形成されるように駆動信号を生成することにより、残余振動が大きい場合にメニスカスが不要にノズルの前後に移動しながら次の液滴吐出が非正常的に行われるか又は空気がノズルからチャンバーに流入されて吐出が止まる現象を防止することができる。
【0055】
図8は、本発明のインクジェットヘッド駆動装置のグレースケールを形成するための駆動波形のタイミングダイヤグラムである。
【0056】
図8と共に図1を参照すると、本発明のインクジェットヘッド駆動装置の増幅部110の第1〜第nの増幅器のそれぞれは、一定時間の間にハイレベル信号を出力し、当該ハイレベル信号が出力される周期を決める周波数は、約1〜10KHz程度であることができる。
【0057】
この際、制御部130は、結合部120の複数のスイッチを調整して、第1〜第nの増幅器のそれぞれの上記ハイレベル信号が出力されるタイミングに合わせてスイッチをオンさせることができる。上記ハイレベル信号が複数個連続するほど、ノズルから吐出される液滴のサイズは大きくなり、これにより、グレースケールが調整されることができる。
【0058】
グレースケールが調整されることができるように連続する上記ハイレベル信号を有するハイレベル信号群の周期を決める周波数は、約30〜50KHz程度であることができる。
【0059】
上述したように、本発明によると、一つの駆動信号を生成するために複数の増幅器及び増幅された信号を結合する結合器を採用することにより、増幅器の低動作周波数でも動作が円滑になって電力消費を低減することができ、複数の増幅器で一つの駆動信号を生成することができて高吐出周波数でも動作が円滑になることができる。
【0060】
また、サブハイレベル信号によって液滴の吐出を安定的に行うことができ、駆動信号のメインハイレベル信号の回数及び液滴のサイズを調節してグレースケールを調整することもできる。
【0061】
本発明は、上述した実施形態及び添付図面によって限定されることなく、後述する特許請求の範囲によって限定される。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で本発明の構成を多様に変更及び変形することができることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に自明なことである。
【符号の説明】
【0062】
100、200 インクジェットヘッド駆動装置
110、210 増幅部
120、220 結合部
130、230 制御部
140、240 変換部
150、250 スイッチング部
160、260 インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された利得で増幅される電圧レベルを有する信号を予め設定された周期でそれぞれ出力する複数の増幅器を有する増幅部と、
制御信号により前記複数の増幅器からの出力信号を一つの駆動信号に結合する結合部と、
前記結合部での信号結合を制御する制御部と、
前記駆動信号がインクジェットヘッドに伝達される信号伝達経路をスイッチングするスイッチング部と
を含む、インクジェットヘッド駆動装置。
【請求項2】
デジタル信号をアナログ信号に変換して前記複数の増幅器にそれぞれ提供する複数のDAC(Digital−Analog Converter)を有する変換部をさらに含む、請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記スイッチング部は、前記結合部と前記インクジェットヘッドとの間に形成されて前記駆動信号の信号伝達経路をスイッチングする、請求項1または2に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項4】
前記スイッチング部は、前記インクジェットヘッドと接地との間に形成されて前記駆動信号の信号伝達経路をスイッチングする、請求項1または2に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項5】
前記複数の増幅器のそれぞれは、前記周期で予め設定された時間の間にハイレベル信号を出力する、請求項1から4の何れか1項に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項6】
前記複数の増幅器のそれぞれの利得は、同一である、請求項5に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項7】
前記複数の増幅器のそれぞれは、1〜10KHzの周波数で前記ハイレベル信号を出力する、請求項6に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項8】
前記複数の増幅器のそれぞれの利得は、相違する、請求項5に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項9】
前記駆動信号は、予め設定された電圧レベルを有するメインハイレベル信号と、当該メインハイレベル信号より電圧レベルが低いサブハイレベル信号と、を有する、請求項8に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
【請求項10】
前記駆動信号は、30〜50KHzの周波数と予め設定された電圧レベルとを有するメインハイレベル信号を有する、請求項8または9に記載のインクジェットヘッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95134(P2013−95134A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19030(P2012−19030)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】