説明

インクジェットヘッド

【課題】 低い接合温度で、貼り合わせ工程の歩留まりが高く、量産性に優れるインクジェットヘッドの基板接合方法。
【解決手段】 シリコン基板1、シリコン基板2を、洗浄・乾燥後、シリコン基板1の貼り合わせ面側に、スピンコートでポリシラザン層7を形成する。ポリシラザン層7形成後、直ちにシリコン基板1とシリコンシリコン基板2を貼り合わせ、貼り合わせ面の反対側より荷重をかけ、摂氏450度の大気中で、1時間加熱を行い接合ウエハ8を得る。この後、電極を形成した基板と接合ウエハ8を接合する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインクジェットプリンタ用印字ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェットプリンタ用ヘッドは、近年その普及とともに急速に低価格化が進んでおり、この中でヘッドのコスト削減の要求が高まっている。
【0003】従来用いられている振動板形成ウエハとしては、特開平6−8449号公報の実施例3に示されるような2枚のシリコン基板を貼り合わせた方法が挙げられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の従来技術では、接合温度が摂氏900度から1100度ではないと十分な接合強度が得られないという課題があった。また、前記の従来技術では、貼り合わせ面の表面荒さが数10ナノメートル以下である必要があるため、鏡面のウエハを用いる必要があり、製造コストが高くなるという課題があった。また、前記の従来技術では、貼り合わせ面のゴミ、パーティクル等により不良が発生し、貼り合わせ工程の歩留まりが低く量産性に対して課題があった。
【0005】そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、その目的とするところは、表面が鏡面でない基板を使用可能とすることにより、製造コストを大幅に低減し、貼り合わせ面のゴミ、パーティクル等による影響を少なくすることにより歩留まりのインクジェットヘッドを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のインクジェットヘッドは、複数のノズル孔と、該ノズル孔の各々に連通する複数の独立の吐出室と、該吐出室の少なくとも一方の壁の一部が機械的に変形をおこすようになっている振動板と、該振動板を駆動する駆動手段と、該複数の吐出室にインクを供給する共通のインクキャビティを有し、該駆動手段に電気パルスを印加することにより、該駆動手段に対応する該振動板を該吐出室の圧力が上昇する方向に変形させ、該ノズル孔よりインク滴を記録紙に向け吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記振動板を形成した基板と、前記ノズルを形成した基板をポリシラザンを用いて貼り合わされていることを特徴とする。また、前記振動板を形成した基板が、2枚のシリコン基板をポリシラザンを用いて貼り合わせていることをも特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】図1に示したように、本実施例のインクジェットヘッドは、ノズルが形成された第1の基板、振動板が形成された第2の基板、及び電極の形成された第3の基板を積層してなる構造を有する。第1の基板は、厚み220ミクロン、面方位が(110)である単結晶シリコン基板1であって、複数のノズル5を有している。第2の基板は、面方位が(110)である単結晶シリコン基板2であってノズル5に対応した複数のキャビティー6を有している。第3の基板は、厚み500ミクロンの電極ガラス基板3であり、ITO電極薄膜4が形成されている。本図は断面図であり、ノズル5とキャビティー6はそれぞれひとつずつ記載されている。本実施例では、シリコン基板1及びシリコン基板2として、両面ポリッシュ基板を用いているが、片面ポリッシュウエハ及び、両面ブライトエッチウエハのいずれのウエハを用いた組み合わせでも可能である。次に、図2のインクジェットヘッドの断面図を用いて、第1の基板と第2の基板の接合方法を説明する。まず、シリコン基板1、シリコン基板2を硝酸98%水溶液、摂氏100度により10分間洗浄する。次に、シリコン基板1、シリコン基板2を超純水により15メガオーム・センチメートルの純度まで水洗する。さらに、防爆型スピンドライヤーにより乾燥する。次に、シリコン基板1、シリコン基板2をクリーンオーブンにて乾燥する。本実施例では、乾燥温度摂氏150度、30分を用いている。次に、シリコン基板1の貼り合わせ面側に、ポリシラザン層7を形成する(図2(a))。本実施例ではポリシラザン層7の形成にはスピンコートを用いており、スピン回転数1000rpm、ポリシラザン粘度1.6cp、により約8000オングストロームのポリシラザン層7を形成している。ポリシラザン層7形成後、直ちにシリコン基板1とシリコンシリコン基板2を貼り合わせ、貼り合わせ面の反対側より、1から10Kg/cm2の荷重をかけ、摂氏450度の大気中で、1時間加熱を行い接合ウエハ8を得る(図2(b))。この後、電極を形成した第3の基板と接合ウエハ8を接合する。本実施例では第3の基板は硼珪酸ガラスを用いており、接合ウエハ8と電極ガラス基板3との接合は陽極接合を用いて行なっている。本実施例ではシリコン基板1とシリコン基板2を接合した後に、接合ウエハ8と電極ガラス基板3を接合しているが、シリコン基板2と電極ガラス基板3を陽極接合した後に、シリコン基板1とポリシラザン層7を介して接合することも可能である。本実施例に用いられている数値は最も好適な例でありこれ以外の条件でも可能である。
【0009】図3、図4は、本発明の第2の実施例におけるインクジェットヘッド製造工程の説明断面図である。まず、厚さ220ミクロン、(110)面方位のシリコン基板21、シリコン基板31を熱酸化炉にて摂氏1100度でウエット酸化を行い、厚さ1.2ミクロンの熱酸化膜22、32を形成する(図3(a)、(b))。次に、シリコン基板21、31を摂氏95度の硫酸により10分間洗浄し、超純水により15メガオーム・センチメートルの純度まで水洗する。さらに、防爆型スピンドライヤーにより乾燥する。次に、シリコン基板21、シリコン基板31をクリーンオーブンにて乾燥する。本実施例では乾燥温度摂氏150度、30分を用いている。次に、シリコン基板31の貼り合わせ面側に、ポリシラザン層33を形成する(図3(c))。本実施例ではポリシラザンの塗布にはスピンコートを用いており、スピン回転数1000rpm、ポリシラザン粘度1.6cp、により約8000オングストロームのポリシラザン層33を形成している。ポリシラザン層33形成後、直ちにシリコン基板21とシリコン基板31を貼り合わせ、貼り合わせ面の反対側より、1から10Kg/cm2の荷重をかけ、摂氏450度の大気中で、1時間加熱を行い接合ウエハ23を得る(図3(d))。次に、接合ウエハ23のシリコン基板31側にレジストを塗布し、パターニングを行ない、フッ酸によりエッチングを行ない、熱酸化膜32に開口部34を形成する(図4(a))。次に、接合ウエハ23をシリコン基板21側より研磨を行ない、貼り合わせ界面より5ミクロンの厚さとする(図4(b))。次に、接合ウエハ23をアルカリ異方性エッチングし、振動板35を形成する(図4(c))。本実施例ではエッチング液として、水酸化カリウム水溶液35%摂氏70度を用いている。エッチングは接合界面でポリシラザンが転化した酸化珪素薄膜により停止し、振動板5ミクロンが形成される。
【0010】
【発明の効果】以上記したように、本発明によれば、振動板を形成した基板とノズルを形成した基板をポリシラザンを用いて貼り合わせることにより、表面が鏡面でない基板を使用可能とし、製造コストを大幅に低減し、また、貼り合わせ面のゴミ、パーティクル等による影響を少なくすることで歩留まりの高いインクジェットヘッドを提供できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における一実施例のインクジェットヘッド断面図。
【図2】本発明における一実施例のインクジェットヘッド製造工程を説明する断面図。
【図3】本発明における第2の実施例のインクジェットヘッド製造工程を説明する断面図。
【図4】本発明における第2の実施例のインクジェットヘッド製造工程を説明する断面図。
【符号の説明】
1 (110)シリコン基板
2 (110)シリコン基板
3 電極ガラス基板
4 ITO電極薄膜
5 ノズル
6 キャビティー
7 ポリシラザン層
8 接合ウエハ
21 (110)シリコン基板
22 熱酸化膜
23 接合ウエハ
31 (110)シリコン基板
32 熱酸化膜
33 ポリシラザン層
34 開口部
35 振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のノズル孔と、該ノズル孔の各々に連通する複数の独立の吐出室と、該吐出室の少なくとも一方の壁の一部が機械的に変形をおこすようになっている振動板と、該振動板を駆動する駆動手段と、該複数の吐出室にインクを供給する共通のインクキャビティを有し、該駆動手段に電気パルスを印加することにより、該駆動手段に対応する該振動板を該吐出室の圧力が上昇する方向に変形させ、該ノズル孔よりインク滴を記録紙に向け吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記振動板を形成した基板と、前記ノズルを形成した基板がポリシラザンを用いて貼り合わされていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】 前記振動板を形成した基板が、2枚のシリコン基板をポリシラザンを用いて貼り合わされていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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