説明

インクジェット捺染装置

【課題】被捺染材のセットの際に支持面の中央領域で発生した皺を容易に伸ばして均すことができ、且つその均した状態からずれるのを抑制できるようにすること。
【解決手段】被捺染材Tをセットする支持面23を有するセットトレイ3と、前記セットトレイにセットされた被捺染材にインクを吐出して印捺画像を形成する捺染ヘッド13とを備え、前記セットトレイの前記支持面は、該支持面の周辺領域27に設けられ、セットされた前記被捺染材に対して第1の静止摩擦力を及ぼす第1摩擦部と、前記支持面の中央領域25に設けられ、前記被捺染材に対して前記第1の静止摩擦力よりも小さい第2の静止摩擦力を及ぼす第2摩擦部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛すなわち被捺染材に対してインクジェット方式で捺染を行うインクジェ
ット捺染装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からTシャツ等の布帛の表面に対して、捺染ヘッドから各色のインクを吐出して所
望の画像を印捺するインクジェット捺染装置が開発され、広く使用されている。そして、
該インクジェット捺染装置には、Tシャツ等の布帛をセットして前記捺染ヘッドのノズル
開口面と当該布帛との間隔を所定のギャップに規定するセットトレイが設けられている。
【0003】
前記セットトレイは、下記の特許文献1に示すように平面形状が正方形あるいは長方形
の平板形状に一般に形成されており、該セットトレイの上面には印捺する布帛をセットす
る支持面が設けられている。
また、前記支持面は、布帛をセットする際は皺が残らないように表面を均すことができ
るように平坦面に形成されている。また、布帛のセット後は前記均した状態を維持して布
帛の位置ずれ等が生じないようにする保持するための静止摩擦力を布帛に及ぼすように構
成されている。
【0004】
下記の特許文献1に開示されているセットトレイでは、布帛の支持面における中央領域
の静止摩擦係数をその周辺領域の静止摩擦係数よりも大きくした構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−291430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に示すように布帛の支持面における中央領域に静止摩擦
係数の大きな部分を形成すると、布帛のセット時に発生した皺をその後に均して取り除こ
うとしても前記中央領域での摩擦力が邪魔をして皺を伸ばすことが容易でない問題があっ
た。
【0007】
本発明の目的は、被捺染材のセットの際に支持面の中央領域で発生した皺を容易に伸ば
して均すことができ、且つその均した状態からずれるのを抑制できるようにすることにあ
る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るインクジェット捺染装置の第1の態様は、被捺
染材をセットする支持面を有するセットトレイと、前記セットトレイにセットされた被捺
染材にインクを吐出して印捺画像を形成する捺染ヘッドとを備え、前記セットトレイの前
記支持面は、該支持面の周辺領域に設けられ、セットされた前記被捺染材に対して第1の
静止摩擦力を及ぼす第1摩擦部と、前記支持面の中央領域に設けられ、前記被捺染材に対
して前記第1の静止摩擦力よりも小さい第2の静止摩擦力を及ぼす第2摩擦部と、を備え
ていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで「被捺染材」とは、捺染の対象となる「布地」を意味し、綿、絹、羊毛等の天然
繊維やナイロン等の化学繊維あるいはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が
含まれ、ロール状に巻かれた長尺のものと、所定の長さにカットされたものの両方が含ま
れる。更に、縫製後のTシャツ等の衣類や縫製後のハンカチ、スカーフ、タオル、カーテ
ン、シーツ、ベッドカバー等のファニチャーの類の他、縫製前の状態のパーツとして存在
する裁断前後の布地等も含まれる。
【0010】
本態様によれば、支持面の周辺領域に第1摩擦部が設けられており、支持面の中央領域
には前記第1摩擦部の第1の静止摩擦力よりも小さい第2の静止摩擦力を被捺染材に及ぼ
す第2摩擦部が設けられている。これにより、セットトレイにセットされた被捺染材には
中央領域からは小さい静止摩擦力しか作用しないように構成できるので、皺を伸ばす際に
従来のように邪魔されることがなく、円滑に皺を伸ばすことができる。
また、被捺染材の皺を伸ばして均した後は、支持面の周辺領域に設けられている第1摩
擦部によって、当該被捺染材は外方に引っ張られた緊張状態で保持されることになり、そ
の均した状態から崩れ難くなっている。
【0011】
本発明に係るインクジェット捺染装置の第2の態様は、前記第1の態様において、前記
第1摩擦部は、前記周辺領域において前記中央領域を間にして対向する位置に対を成して
少なくとも一組設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、支持面の周辺領域に設けられている第1摩擦部の前記緊張状態での保
持力が、最も効果的に発揮されるようになり、被捺染材の保持力の向上が図られる。
【0013】
本発明に係るインクジェット捺染装置の第3の態様は、前記第1の態様または第2の態
様において、前記第1摩擦部は、前記セットトレイの外周端部を覆うように配設されてい
ることを特徴とするイものである。
【0014】
本態様によれば、被捺染材は、セットトレイの外周縁のエッジを引張り起点として緊張
状態で保持されることになるから、より強い引張り力によってセット後の被捺染材の保持
力が得られるようになる。
また、セットトレイの外周端部を覆う態様として、第1摩擦部の一部をセットトレイの
外周端部をくるむように配置した場合には、第1摩擦部の摩擦作用面積の拡大とセットト
レイの上下のエッジによる食い付き保持作用とによってセット後の被捺染材の保持力が一
層向上する。
【0015】
本発明に係るインクジェット捺染装置の第4の態様は、前記第1の態様から第3の態様
の何れか1つの態様において、前記第1摩擦部は、長手方向に複数個に分割された単位摩
擦部の集合体として構成され、各単位摩擦部は隣同士隙間をあけて並んでいることを特徴
とするものである。
【0016】
本態様によれば、当該第1摩擦部の設置部位において被捺染材は前記隙間の部分からは
摩擦力を受けないので容易に皺を伸ばす均し作業を行うことができ、それでいて皺を伸ば
した状態を複数本の単位摩擦部でずれないように保持することができる。
【0017】
本発明に係るインクジェット捺染装置の第5の態様は、前記第1の態様から第3の態様
の何れか1つの態様において、前記第1摩擦部は、長手方向に伸びる複数本の単位摩擦部
の集合体として構成され、各単位摩擦部は隣同士隙間をあけて並んでいることを特徴とす
るものである。
【0018】
本態様によれば、長手方向に伸びる複数本の単位摩擦部の集合体に形成された隙間の存
在によって、当該第1摩擦部の設置部位において被捺染材は前記隙間の部分からは摩擦力
を受けないので容易に皺を伸ばす均し作業を行うことができ、それでいて皺を伸ばした状
態を複数本の単位摩擦部でずれないように保持することができる。
【0019】
本発明に係るインクジェット捺染装置の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様
の何れか1つの態様において、前記セットトレイは、被捺染材がセットされた状態のセッ
トトレイに嵌って前記被捺染材をセットトレイの外周部との間に挟持する枠体を備えてい
ることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、セットトレイにセットされる被捺染材には、第1摩擦部から受ける摩
擦力に加えて、枠体との間に挟まれて保持される別途の保持力が作用するようになる。
従って、被捺染材が滑り易い材料によって形成されていて、第1摩擦部の摩擦力だけで
はセットトレイの移動時等に被捺染材の位置ずれ等が発生する虞れがある場合でも、前記
セットトレイと枠体との間で発生する挟持力に基づく別途の保持力の作用で被捺染材の均
し状態が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の概略の構成を示す側断面図。
【図3】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置の概略の構成を示す平面図。
【図4】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置用セットトレイを示す斜視図。
【図5】本発明の実施例1に係るインクジェット捺染装置用セットトレイの変形例を示す斜視図。
【図6】本発明の実施例2に係るインクジェット捺染装置用セットトレイを示す斜視図。
【図7】本発明の実施例2に係るインクジェット捺染装置用セットトレイの変形例を示す斜視図。
【図8】本発明の実施例3に係るインクジェット捺染装置用セットトレイを示す分解斜視図。
【図9】本発明の実施例3に係るインクジェット捺染装置用セットトレイの変形例を示す要部拡大斜視図。
【図10】本発明の他の実施例に係るインクジェット捺染装置用セットトレイを示す斜視図。
【図11】本発明の他の実施例に係るインクジェット捺染装置用セットトレイの変形例を示す要部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1から図5に示す実施例1と、図6及び図7に示す実施例2と、図8及び図9
に示す実施例3とを例にとって、本発明に係るインクジェット捺染装置1の構成を具体的
に説明する。
尚、以下の説明では被捺染材(以下、「布帛」ともいう)Tとして、胴部Taと袖部T
bが筒状に縫製されたTシャツを例にとり、該Tシャツに印捺画像Gを形成する表側の面
を第一の面9、該第一の面9と反対側の裏側の面を第二の面11として説明する。
【0023】
最初に、本発明に係るインクジェット捺染装置1の一実施例の概略の構成を図1から図
3に基づいて説明する。
本実施例のインクジェット捺染装置1は、被捺染材Tの第一の面9にインクを吐出して
所望の印捺画像Gを形成する捺染ヘッド13と、被捺染材Tをセットし、前記第一の面9
と反対側の被捺染材Tの第二の面11を支持するセットトレイ3と、前記セットトレイ3
を、被捺染材Tをセットするセット位置Sと、前記捺染ヘッド13の存する捺染実行領域
15を挟んで存する被捺染材Tの捺染開始位置Kとの間で移動させる移動部17と、を備
えている。
【0024】
また、図示のインクジェット捺染装置1にあっては、前記捺染ヘッド13が前記セット
トレイ3の移動方向Aと交差する走査方向Bに往復移動可能なキャリッジ21に搭載され
ている。
以下、インクジェット捺染装置1を構成している前述した諸部材の概要を説明する。
【0025】
捺染ヘッド13は、一例として装置本体2の向って左側に位置するインクカートリッジ
41からチューブ等を介して供給されるインクを被捺染材Tの第一の面9に向けて吐出し
て直接、捺染を実行する捺染実行部材である。そして、図示のインクジェット捺染装置1
ではキャリッジ21の走査方向Bに往復移動しながらインクを吐出する、いわゆるシリア
ル型の捺染ヘッド13が一例として採用されている。
セットトレイ3は、一例として矩形平板状の部材で、その上面には被捺染材Tをセット
する支持面23が形成されている。尚、該支持面23は被捺染材Tの第二の面11を直接
、支持する部位であり、被捺染材Tに皺を発生させることなくセットできるセット時の均
し容易性と、皺とり後の被捺染材Tのずれを防止し得る保持力を兼ね備えた材料ないし構
造によって形成されている。
【0026】
移動部17は、インクジェット捺染装置1の装置本体2の前方から奥部側にかけて移動
方向Aに沿って延びる支持ベース29と、該支持ベース29の上方の一例として左右方向
の中央部において、移動方向Aに沿って往復移動可能に設けられているスライダーと所定
高さの支柱とを有する支持台31と、該支持台31を駆動する一例としてタイミングベル
ト43を使用した駆動機構と、を備えることによって一例として構成されている。
【0027】
また、前記支持台31の上面には、前述したセットトレイ3が一例としてセンター基準
合わせで着脱可能な状態で取り付けられている。そして、該セットトレイ3はセットされ
た被捺染材Tと共に前記支持台31と一体になって移動方向Aに沿って移動し、前述した
セット位置Sと捺染開始位置Kとの間で往復移動できるように構成されている。
【0028】
[実施例1](図1から図5参照)
実施例1に係るインクジェット捺染装置は、被捺染材Tをセットする支持面23を有す
るセットトレイ3Aと、セットトレイ3Aにセットされた被捺染材Tにインクを吐出して
印捺画像Gを形成する捺染ヘッド13とを備え、前記セットトレイ3Aの前記支持面23
は、該支持面23の周辺領域27に設けられ、セットされた前記被捺染材Tに対して第1
の静止摩擦力を及ぼす第1摩擦部33と、前記支持面23の中央領域25に設けられ、前
記被捺染材Tに対して前記第1の静止摩擦力よりも小さい第2の静止摩擦力を及ぼす第2
摩擦部24とを備えている。第2摩擦部24は積極的に摩擦力を及ぼすことは求められず
、セットトレイの素材そのままで形成され、該素材を磨いた低摩擦面に形成されている。

実施例1に係るインクジェット捺染装置用のセットトレイ3Aは、移動方向Aに沿った
長さ方向の寸法が長く、幅方向の寸法が短い矩形平板状の部材によって構成されている。

また、前記セットトレイ3Aの上面には前述したように被捺染材Tの第二の面11を支
持する支持面23が形成されている。
【0029】
前記支持面23は、セットトレイ3Aの外周縁に沿った近傍領域である周辺領域27と
、該周辺領域27に囲まれた内部領域である中央領域25と、を備えることによって構成
されている。
そして、本実施例では、前記支持面23の周辺領域27に、前記支持面23の中央領域
25の有する静止摩擦係数よりも大きな静止摩擦係数を有し、被捺染材Tに第1の静止摩
擦力を及ぼす第1摩擦部33を設けたことが特徴的構成になっている。
ここで周辺領域27は、支持面23の端部から1mm〜20mm離れた位置までの領域
であることが好ましい。こうすることで、布帛に対する静止摩擦力が相対的に大きな周辺
領域における布帛の保持面積を確保し、かつ、中央領域での布帛をスムーズに滑らすこと
が可能となる。
【0030】
また、第1摩擦部33の材料としては、EPT(エチレンプロビレンゴム)、コルク、
クラリーノ等が一例として使用できる。本実施例では、幅が一例として19mmの長尺な
一枚の摩擦部材を前記周辺領域27の対向する位置である左辺部35と右辺部37に対し
て対になる態様で一組貼設することによって構成されている。
また、セットトレイ3Aの平面形状を矩形状にしたことからセットトレイ3Aの前記左
辺部35と右辺部37は平行に設けられている。
【0031】
また、前記第1摩擦部33は、前記セットトレイ3Aの外周縁となる前記左辺部35と
、右辺部37との間に隙間が形成されないように設けられており、本実施例ではセットト
レイ3の左辺部35側に設けられる第1摩擦部33Lの左辺36がセットトレイ3の左辺
部35の上側のエッジと一致し、セットトレイ3の右辺部37側に設けられる第1摩擦部
33Rの右辺38がセットトレイ3の右辺部37の上側のエッジと一致する位置に設けら
れている。
【0032】
そして、このようにして構成される本実施例に係るインクジェット捺染装置用のセット
トレイ3Aを使用して被捺染材Tを該セットトレイ3Aにセットする場合には、支持面2
3の周辺領域27の左右何れかに設けられている第1摩擦部33L、33Rの一方に、被
捺染材Tの例えば幅方向の一方の端縁を被せるようにして宛てがい、該一方の端縁を引張
り起点として他方の第1摩擦部33R、33L側に引っ張り、該被捺染材Tの幅方向の他
方の端縁を前記他方の第1摩擦部33R、33L上に被せるようにしてセットする。
【0033】
尚、このようにしてセットトレイ3Aにセットされた被捺染材Tは、支持面23の中央
領域25において緊張状態で保持されており、該中央領域25では通常は被捺染材Tには
皺の発生は生じない。
また、前記中央領域25において誤って被捺染材Tに皺が発生してしまった場合でも、
当該中央領域25には摩擦保持部材33が設けられていないから被捺染材Tの円滑な展伸
性によって発生した皺は容易に伸ばされて除去される。
【0034】
そして、このようにして被捺染材Tがセットされたセットトレイ3Aは移動部17を駆
動することで手前側のセット位置Sから奥部側の捺染開始位置Kに向けて移動方向Aに沿
って送られ、捺染開始位置Kに到着後、移動方向Aを逆方向に切り換えて奥部側から手前
側に向けて移動されながら、前記キャリッジ21によって走査方向Bに走査され、捺染ヘ
ッド13からインクが吐出されて所望の記録を実行する。
【0035】
また、本実施例の変形例として図5に示すような第1摩擦部33の分割構造をとること
も可能である。即ち、図示のように左右の第1摩擦部33L、33Rをそれぞれ長さ方向
に隙間61を隔てて分断された短寸の複数の単位摩擦部63を組み合わせることによって
構成することも可能である。
因みに、このような構成の変形例を採用した場合には、短寸の単位摩擦部63を使用し
た効率的な配置の第1摩擦部33が構成でき、前記隙間61が被捺染材Tの逃げ部となっ
て、被捺染材Tの周辺領域27における皺の発生を少なくし、発生した皺も取り除き易く
なる。
【0036】
[実施例2](図6及び図7参照)
実施例2に係るインクジェット捺染装置用のセットトレイ3Bは、前記第1摩擦部33
の配設位置を除き、前記実施例1に係るインクジェット捺染装置用セットトレイ3Aと同
様の構成を有している。
従って、ここでは、前記実施例1と異なる実施例2に特有の第1摩擦部33の配置を中
心にして説明する。
【0037】
即ち、本実施例では、セットトレイ3Bの左辺部35と右辺部37に加えて、セットト
レイ3Bの前辺部45と奥辺部47の近傍の支持面23の周辺領域27にも対になる態様
で第1摩擦部33F、33Bが配設されている。
従って、本実施例では直交する方向に二組の第1摩擦部33がそれぞれ対になる態様で
配置されている。
【0038】
そして、このような構成のインクジェット捺染装置用のセットトレイ3Bによっても前
記実施例1と同様の作用、効果が発揮され、更に対になる態様の第1摩擦部33をもう一
組追加したことによって、被捺染材Tのセット後の保持力が向上する。
また、二組の第1摩擦部33を直交する方向に配置したことによって、被捺染材Tの幅
方向だけでなく、長さ方向にも引張り力が働き、当該2方向での被捺染材Tの位置ずれが
防止されるようになる。
【0039】
また、本実施例の変形例として図7に示すような第1摩擦部33の設置構造をとること
も可能である。即ち、図示のように前後左右の第1摩擦部33F、33B、33L、33
Rをそれぞれ幅方向に隙間65を隔てて分断された筋状の複数の単位摩擦部67を組み合
わせることによって構成することも可能である。即ち、前記第1摩擦部33F、33B、
33L、33Rは、長手方向に伸びる複数本の単位摩擦部67の集合体として構成され、
各単位摩擦部67は隣同士隙間65をあけて並んでいる。
因みに、このような構成の変形例を採用した場合には、筋状の単位摩擦部67を使用し
た効率的な配置の第1摩擦部33を構成でき、前記隙間65の存在によって第1摩擦部3
3の幅方向でのグリップ力が向上する。
【0040】
[実施例3](図8及び図9参照)
実施例3に係るインクジェット捺染装置用のセットトレイ3Cは、セットトレイ3Cの
構造自体は前記実施例1に係るインクジェット捺染装置用のセットトレイ3Aと同様であ
り、セットトレイ3Cと枠体71とを組み合わせて使用する点において前記実施例1と相
違している。
従って、ここでは前記実施例1では使用しなかった枠体71の構成を中心にして説明す
る。
【0041】
即ち、本実施例では、被捺染材Tがセットされた状態のセットトレイ3Cに嵌め込まれ
る、セットトレイ3と同形状でほぼ同じ大きさの、前記セットトレイ3Cと別体の枠体7
1が使用されている。該枠体71と前記セットトレイ3Cを組み合わせることによって被
捺染材Tの左辺51と右辺53と上辺55と下辺57とを狭持してセット後の被捺染材T
の保持力を高める構成が採用されている。
【0042】
尚、本実施例の枠体71は被捺染材Tがセットされた状態のセットトレイ3Cを収容す
る収容凹部73が形成された構造の枠体が使われているが、収容凹部73は無い貫通構造
の枠体(図示せず)もし使用することができる。
【0043】
そして、このような構成のインクジェット捺染装置用のセットトレイ3Cと枠体71と
の組み合わせによっても前記実施例1と同様の作用、効果が発揮され、更にセットトレイ
3Cと枠体71との挟持作用によってセット後の被捺染材Tの保持力が強化されている。

従って、被捺染材Tを形成する材料としてポリエステル等の滑り易い材料を使用した場
合でも前記強化された被捺染材Tの保持力によって移動中の被捺染材Tの位置ずれが防止
されて高品質の捺染が実行されるようになる。
【0044】
また、本実施例の変形例として図9に示すような第1摩擦部33の設置構造をとること
も可能である。即ち、第1摩擦部33をセットトレイ3Cの外周端部との間に隙間が形成
されない態様で設けるに当たって、図示のようにセットトレイ3Cの外周端面を覆うよう
に包んで被捺染材Tの端部をセットトレイ3Cの下面側まで回り込ませる設置構造をとる
ことも可能である。
因みに、このような構成の変形例を採用した場合には、第1摩擦部33の摩擦力を発揮
する摩擦接触面積が拡大し、セットトレイ3Cの外周縁でのエッジによる被捺染材Tに対
する食い付きによる保持効果が加わって、セット後の被捺染材Tの保持力が一層向上する

【0045】
[他の実施例]
本発明に係るインクジェット捺染装置1は、以上述べたような構成を有することを基本
とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を
行うことも勿論可能である。
例えば、セットトレイ3の平面形状は矩形状に限らず、四角形以外の多角形状や円板形
状であっても構わない。図10は、被捺染材TであるTシャツの胴部Taの形状に馴染む
ように奥辺部47を傾斜した左右の肩辺部47L、47Rと、前記前辺部45と平行な中
央辺部47Cとの三辺で構成した平面形状が六角形状のセットトレイ3Dを図示している

【0046】
そして、この実施例の場合にはTシャツの胴部Taの内に前記セットトレイ3Dを挿し
込んで使用することができるように構成されている。
また、前記図10に示すセットトレイ3Dの外周縁部75の高さをセットトレイ3Dの
他の部位の高さよりも幾分低くした図11(B)に示すような段差状の外周縁部75を備
えたセットトレイ3Eを採用することも可能である。
また、前記外周縁部75には上方から内フランジ状の押さえ部77を備えた枠体79が
図11(A)(C)に示すように当接し、前記押さえ部77と前記外周縁部75との間で
も被捺染材Tに対する狭持作用が働いてセット後の被捺染材Tの保持力の更なる強化が図
られている。
【0047】
また、本発明のインクジェット捺染装置1において使用する捺染ヘッド13は、走査方
向Bに往復移動可能なキャリッジ21に搭載される図1から図3に示すいわゆるシリアル
型の捺染ヘッド13に限らず、被捺染材Tの幅方向の捺染範囲を一挙に捺染する、いわゆ
るライン型の捺染ヘッド13を適用することが可能である。
この他、第1摩擦部33は、シート状の第1摩擦部33をセットトレイ3の支持面23
に貼設する構成の他、ネジ止めによって固定する構成や係合や嵌込み構造によって取り付
ける構成が採用可能である。また、セットトレイ3の周辺領域27に凹凸を付ける等して
構造的に静止摩擦係数を向上させてセットトレイ3と一体の第1摩擦部33とすることも
可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェット捺染装置、2 装置本体、
3 (インクジェット捺染装置用)セットトレイ、9 第一の面、
11 第二の面、13 捺染ヘッド、15 捺染実行領域、17 移動部、
21 キャリッジ、23 支持面、25 中央領域、27 周辺領域、
29 支持ベース、31 支持台、33 摩擦保持部材、35 左辺部、
36 左辺、37 右辺部、38 右辺、41 インクカートリッジ、
43 タイミングベルト、45 前辺部、47 奥辺部、51 左辺、53 右辺、
55 上辺、57 下辺、61 隙間、63 摩擦保持部材要素、65 隙間、
67 摩擦保持部材要素、71 枠体、73 収容凹部、75 外周縁部、
77 押さえ部、79 枠体、T 被捺染材(布帛)、Ta 胴部、Tb 袖部、
G 印捺画像、A 移動方向、 B 走査方向、S セット位置、K 捺染開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被捺染材をセットする支持面を有するセットトレイと、
前記セットトレイにセットされた被捺染材にインクを吐出して印捺画像を形成する捺染
ヘッドと、を備え、
前記セットトレイの前記支持面は、
該支持面の周辺領域に設けられ、セットされた前記被捺染材に対して第1の静止摩擦
力を及ぼす第1摩擦部と、
前記支持面の中央領域に設けられ、前記被捺染材に対して前記第1の静止摩擦力より
も小さい第2の静止摩擦力を及ぼす第2摩擦部と、
を備えていることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記第1摩擦部は、前記周辺領域において前記中央領域を間にして対向する位置に対を
成して少なくとも一組設けられていることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記第1摩擦部は、前記セットトレイの外周端部を覆うように配設されていることを特
徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記第1摩擦部は、長手方向に複数個に分割された単位摩擦部の集合体として構成され
、各単位摩擦部は隣同士隙間をあけて並んでいることを特徴とするインクジェット捺染装
置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記第1摩擦部は、長手方向に伸びる複数本の単位摩擦部の集合体として構成され、各
単位摩擦部は隣同士隙間をあけて並んでいることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記セットトレイは、被捺染材がセットされた状態のセットトレイに嵌って前記被捺染
材をセットトレイの外周部との間に挟持する枠体を備えていることを特徴とするインクジ
ェット捺染装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−43420(P2013−43420A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184472(P2011−184472)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】