説明

インクジェット記録媒体の製造方法、及びインクジェット記録媒体

【課題】耐水性に優れたインクジェット記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する塗布層を形成し、減率乾燥を示した後の該塗布層に、ホウ素化合物を含有する液をホウ素化合物の付与量がホウ酸換算量で0.25g/m〜2.0g/mとなるように付与して、ホウ素化合物の含有量が水溶性樹脂1に対しホウ酸換算質量で0.25〜1.0の範囲であるインク受容層を形成するインクジェット記録媒体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体の製造方法、及びそれにより得られたインクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報システムに適した記録方法及び装置も開発され、各々実用化されている。そのような記録方法の中でも、インクジェット記録方法は、多種の記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価であること、コンパクトであること、静粛性に優れること等の点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきた。さらに、ハード(装置)の発展に伴って、インクジェット記録用の記録シート(インクジェット記録媒体)も各種開発されてきている。
【0004】
インクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐光性、耐水性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存で黄変着色を起こさないこと、長期保存で画像がにじまないこと)、(10)変形しにくく、寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途としては、上記特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も、インクジェット記録用の記録シートに要求される。
【0005】
例えば、ひび割れ、濃度、光沢の改良されたインクジェット記録媒体として、インク受容層に無機微粒子、水溶性樹脂、ホウ素化合物を含有し、pH8以上の塩基性溶液を(1)受容層の塗布と同時、(2)受容層の減率乾燥前、(3)受容層を塗布乾燥後のいずれかに付与するインクジェット記録媒体が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、面状、インク吸収性の改良されたインクジェット記録媒体として、受容層減率乾燥後に塩基性溶液を付与するインクジェット記録媒体が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、従前のインクジェット記録媒体に対しては、耐水性の観点からは更なる改良が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−191607号公報
【特許文献2】特開2008−183824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の状況に鑑みてなされたものであり、耐水性に優れたインクジェット記録媒体の製造方法、及びそれにより得られたインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0010】
<1> 支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する塗布層を形成し、減率乾燥を示した後の該塗布層に、ホウ素化合物を含有する液をホウ素化合物の付与量がホウ酸換算量で0.25g/m〜2.0g/mとなるように付与して、ホウ素化合物の含有量が水溶性樹脂1に対しホウ酸換算質量で0.25〜1.0の範囲であるインク受容層を形成するインクジェット記録媒体の製造方法。
<2> 前記塗布層に含有されるホウ素化合物が、前記インク受容層に含有される全ホウ素化合物の質量に対し1質量%〜50質量%の範囲である前記<1>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
<3> 前記塗布層が、支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する第1の液を塗布して層を形成すると同時、又は、該第1の液を塗布して形成した層の乾燥途中であって該層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH7.1以上の第2の液を付与し、乾燥して形成される前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
<4> 前記水溶性化合物が、ポリビニルアルコールである前記<1>〜<3>のいずか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
<5> 前記塗布層が含有する水溶性樹脂とホウ素化合物との含有比が、質量比で、水溶性樹脂1に対しホウ素化合物が0.10〜0.25の範囲である前記<1>〜<4>のいずか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
<6> 前記ホウ素化合物が、硼砂、硼酸、及び硼酸塩からなる群から選択されたホウ素化合物である前記<1>〜<5>のいずか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたインクジェット記録媒体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐水性に優れたインクジェット記録媒体の製造方法、及びそれにより得られたインクジェット記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法(以下、適宜、「本発明の製造方法」称する。)は、支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する塗布層を形成し、減率乾燥を示した後の該塗布層に、ホウ素化合物を含有する液をホウ素化合物の付与量がホウ酸換算量で0.25g/m〜2.0g/mとなるように付与して、ホウ素化合物の含有量が水溶性樹脂1に対しホウ酸換算質量で0.25〜1.0の範囲であるインク受容層を形成することを特徴とする。
【0013】
<インク受容層>
本発明の製造方法において形成するインク受容層は、ホウ素化合物の含有量が水溶性樹脂1に対しホウ酸換算質量で0.25〜1.0の範囲であるインク受容層である。
かかるインク受容層の形成は、先ず、支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する塗布層を形成し、次いで、該塗布層が減率乾燥を示した後に、該塗布層にホウ素化合物を含有する液(以下、適宜、「ホウ素化合物含有液」と称する。)をホウ酸換算量が前記所定の範囲になるように付与することにより行われる。このように形成されたインク受容層を有するインクジェット記録媒体は、その表面に水が接触した場合などにおいても、インク受容層にひび割れなどが生じることが抑制され、耐水性に優れたものとなる。
【0014】
以下では、先ず、本発明の製造方法における塗布層の形成について説明する。
本発明の製造方法において形成される塗布層は、支持体上に形成される層であり、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有し、必要に応じて、他の任意成分を含有してもよい。
【0015】
本発明の製造方法において、塗布層を形成する態様としては、下記に示す(1)及び(2)の態様が好適に挙げられる。
(1)支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する第1の液を塗布して層を形成すると同時、又は、該第1の液を塗布して形成した層の乾燥途中であって該層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH7.1以上の第2の液を付与し、乾燥して塗布層を形成する態様。
(2)支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する塗布液を塗布し、乾燥して塗布層を形成する態様。
【0016】
本発明の製造方法における塗布層の形成について、その好適な態様である前記(1)及び(2)の態様について詳細に説明する。
【0017】
<(1)の態様による塗布層の形成>
以下、前記(1)の態様に用いられる第1の液及び第2の液について、それぞれが含有する各成分について説明した後、(1)の態様による塗布層の形成について説明する。
【0018】
〜第1の液〜
(無機微粒子)
第1の液は、無機微粒子の少なくとも1種含有する。前記無機微粒子は、インク受容層を形成した際に多孔質構造を形成し、インクの吸収性能を向上させる役割を持つ。
【0019】
特に、前記無機微粒子のインク受容層における固形分含有量が50質量%以上、より好ましくは60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えたインクジェット記録媒体が得られるので好ましい。ここで、無機微粒子のインク受容層における固形分含有量とはインク受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
【0020】
無機微粒子としては、気相法シリカ、含水シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
これらの中でも気相法シリカが好ましく、該気相法シリカと他の無機微粒子とを併用する場合、全無機微粒子中、気相法シリカの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0022】
ここで、シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。
一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流である。「気相法シリカ」とは当該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。
【0023】
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
【0024】
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。インク受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性光沢を得る観点で重要である。
【0025】
気相法シリカの平均一次粒子径としては、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、3nm〜10nmであることが最も好ましい。
気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が20nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができる。
【0026】
(水溶性樹脂)
第1の液は、水溶性樹脂の少なくとも1種含有する。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基またはアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
これらの水溶性樹脂の中でもポリビニルアルコールが好ましい。
また、ポリビニルアルコールと他の水溶性樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコールの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
上記ポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコール(PVA)に加えて、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールおよびその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。
上記水溶性樹脂は1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
PVAは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。これは上記三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造のインク受容層を形成しうると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得た多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インクニジミのない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0030】
水溶性樹脂の含有量としては、該含有量の過少による、膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、さらに、該含有量の過多によって、該空隙が樹脂によってふさがれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がさらに好ましい。
【0031】
水溶性樹脂は、インク受容層のひび割れ防止の観点から、数平均重合度が1800以上が好ましく、2000以上がさらに好ましい。中でも、光沢度や印画濃度の観点から、鹸化度88%以上のPVAが好ましく、鹸化度89〜97.5%のPVAがさらに好ましく、鹸化度91〜96%のPVAが特に好ましい。
【0032】
−無機微粒子と水溶性樹脂との含有比−
無機微粒子(例えば、気相法シリカ;i)と水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール;p)との含有比〔PB比(i:p)、水溶性樹脂1質量部に対する無機微粒子の質量〕は、インク受容層の膜構造にも大きな影響を与える。即ち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。具体的には、PB比(i:p)としては、該PB比が大きすぎることに起因する膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、さらに、該PB比が小さすぎることによって、該空隙が水溶性樹脂によってふさがれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。2.5:1〜8:1がさらに好ましく、3.5:1〜6.5:1が最も好ましい。
【0033】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の無水シリカ微粒子と水溶性樹脂とをPB比2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%〜80%、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0034】
(ホウ素化合物)
第1の液は、インク受容層のひび割れの抑制、画像印画濃度及び光沢感向上の観点から、ホウ素化合物を少なくとも1種含有する。該ホウ素化合物によって、前記水溶性樹脂が架橋され塗布層が硬化する。
【0035】
また、ホウ素化合物は、後述する第2の液に加えてもよい。
【0036】
なお、第1の液中のホウ素化合物の濃度としては、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.05〜7質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることが最も好ましい。
【0037】
ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二硼酸塩(例えば、Mg、Co)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四硼酸塩(例えば、Na・10HO)、五硼酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等が挙げられる。中でも、水溶性樹脂(特に、ポリビニルアルコール)と速やかに架橋反応を起こす点で、四硼酸のアルカリ金属塩、硼酸、硼酸塩が好ましく、中でも四硼酸ナトリウム、ホウ砂、硼酸がより好ましく、ホウ砂、ホウ酸が最も好ましい。
ホウ素化合物は、1種単独でも、2種以上を組合わせて併用してもよい。
【0038】
水溶性樹脂の架橋剤として、ホウ素化合物に併用可能な化合物としては、グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン)、メチロール尿素、レゾール樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0039】
更に、水溶性樹脂としてポリビニルアルコールにゼラチンを併用する場合には、ゼラチンの硬膜剤として知られている下記化合物を併用することができる。
【0040】
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;
【0041】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。
【0042】
第1の液中におけるホウ素化合物の含有量は、膜強度の向上及びひび割れ防止の点で、質量比で、水溶性樹脂1に対して、質量比で、0.05〜0.40含有されていることが好ましく、0.08〜0.30含有されていることがより好ましい。
【0043】
(カチオン性樹脂)
第1の液は、カチオン性樹脂の少なくとも1種含有することが好ましい。前記無機微粒子は、カチオン性樹脂で分散して用いることが好ましい。
【0044】
カチオン性樹脂は、特に限定されないが、水溶性、または、水性エマルションタイプなどを好適に使用できる。該カチオン性樹脂としては、例えば、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合体等のポリカチオン系カチオン樹脂などが挙げられ、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、モノメチルジアリルアンモニウムクロライドおよびポリアミジンが好ましく、耐水性の点からジメチルジアリルアンモニウムクロライド、及びモノメチルジアリルアンモニウムクロライドが特に好ましい。該カチオン性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
カチオン樹脂の第1の液中の含有量としては、無機微粒子100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲である。
また、カチオン樹脂の第1の液へ添加態様としては、粉砕分散前に少量添加して、所望の粒径になるまで粉砕分散した後、さらに添加してもよい。
【0046】
(界面活性剤)
第1の液は、ノニオン又は両性界面活性剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリーコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセロールモノオレート等)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等)、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が好ましい。ノニオン系界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型、カルボキシアンモニウムベタイン型、スルホンアンモニウムベタイン型、アンモニウム硫酸エステルベタイン型、イミダゾリウムベタイン型等が挙げられ、例えば、米国特許第3,843,368号明細書、特開昭59−49535号公報、同63−236546号公報、特開平5−303205号公報、同8−262742号公報、同10−282619号公報等に記載されているものを好適に使用できる。該両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましく、該アミノ酸型両性界面活性剤としては、特開平5−303205号公報に記載されているように、例えば、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン酸等)から誘導体化されたものであり、長鎖のアシル基を導入したN−アミノアシル酸およびその塩が挙げられる。両性界面活性剤は1種で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、さらに、ノニオン系界面活性剤と併用してもよい。
【0048】
第1の液におけるノニオン若しくは両性界面活性剤の含有量としては、0.01〜1質量%が好ましく、特に好ましくは0.03〜0.6質量%である。
【0049】
(高沸点有機溶媒)
第1の液は、高沸点有機溶媒を含有してもよい。
第1の液に、ノニオン若しくは両性界面活性剤と高沸点有機溶剤とを含有させることで、インクジェット記録媒体のカールを平坦に保つことができる。
ここで、高沸点溶媒とは大気圧下での沸点が150℃以上である有機溶媒をさす。
【0050】
高沸点有機溶剤としては、水溶性のものが好ましい。水溶性の高沸点有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール(重量平均分子量が400以下)等)、多価アルコールエーテル類(ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル等)、水酸基を複数持つアルコールアミン類(トリエタノールアミン等)が挙げられ、好ましくは多価アルコールエーテル類であり、さらに好ましくはジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)である。
【0051】
高沸点有機溶剤の第1の液中における含有量としては、0.05〜1質量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.6質量%である。
【0052】
(他の成分)
第1の液は、他の媒染剤や必要に応じて下記成分を含んでいてもよい。
インクに含まれる色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。
【0053】
褪色性防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この上記褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。
【0054】
また、第1の液は、無機微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。
【0055】
第1の液の一例としては、例えば、気相法シリカ(無機微粒子)と、ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)と、カチオン性樹脂と、ホウ酸と、ノニオン若しくは両性界面活性剤と、高沸点有機溶剤とを含むものが挙げられ、以下のようにして調製できる。
即ち、気相法シリカを水中に添加して、カチオン性樹脂を更に添加して、高圧ホモジナイザー、サンドミル等で分散した後、ホウ酸を加え、ポリビニルアルコール水溶液(例えば、気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え、さらにノニオン性界面活性剤若しくは両性界面活性剤、高沸点有機溶剤を添加し、攪拌することで調製することができる。得られた塗布液は均一ゾルであり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布することにより、三次元網目構造を有する多孔質層を形成することができる。
また、上記のように、ホウ酸をうすめた後にポリビニルアルコールを加えることにより、ポリビニルアルコールの部分的なゲル化を防止することができる。
【0056】
第1の液は、酸性溶液であることが好ましい。
第1の液のpHは、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。第1の液のpHは、前記カチオン性樹脂の種類や添加量を適宜選定することで調整することができる。また、有機又は無機の酸を添加して調整してもよい。第1の塗布液のpHが5.0以下であることにより、第1の液中におけるホウ素化合物による水溶性樹脂の架橋反応を、より十分に抑制することができる。
【0057】
第1の液の支持体上への塗布は、例えば、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法によりおこなうことができる。
第1の塗布液の塗布量としては、50g/m〜300g/mであることが一般的であり、100g/m〜250g/mであることが好ましい。
【0058】
〜第2の液〜
第2の液は、pHが7.1以上の塩基性溶液であり、pH7.5以上の塩基性溶液あることが好ましい。第2の液のpHが7.1未満であるとインク受容層における問題となる傷が発生する傾向が顕著になる。
【0059】
第2の液のpHは、塩基性物質を添加することにより調整できる。
第2の液に添加される塩基性物質としては、アミン系化合物が挙げられ、例えば、アンモニア、第一級アミン(エチルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等で、好ましくはポリアリルアミン)、第二級アミン(ジメチルアミン)、第三級アミン(N−エチル−N−メチルブチルアミン、トリエチルアミン等)、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物および/または該塩基性物質の塩(好ましくはアンモニウム塩)が挙げられる。また、その他のエチレンジアミン等の多価アミンを添加することもできる。
【0060】
これら塩基性物質の中でも耐傷性、湿熱にじみや保存性といった性能の観点から、アンモニア、第一級〜第三級アミンから選択される少なくとも1種が好ましく、更に、アンモニア、ポリアリルアミン、アンモニウム塩が好ましい。
【0061】
第2液は、更に、架橋剤、界面活性剤、有機媒染剤、その他の塩基性化合物を含有してもよい。架橋剤、界面活性剤は、第1の液の説明において詳述したものを同様に用いることができる。
【0062】
(有機媒染剤)
第2の液は、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、有機媒染剤(以下、単に「媒染剤」という場合がある。)を含有してもよい。有機媒染剤は、前記第1の液に含有されていてもよい。また、有機媒染剤は、塗布層の形成後に、該塗布層に付与する後述するホウ素化合物含有液に含有されていてもよい。
【0063】
媒染剤としては、カチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)が好ましく、該媒染剤をインク受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や経時ニジミを向上させることができる。
【0064】
第2の液の付与の時期は、第1の液を塗布して層を形成すると同時、又は、該第1の液を塗布して形成した層の乾燥途中であって該層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときであり、第1の液の塗布により形成された層が、減率乾燥を示すようになる前に付与することが好ましい。
【0065】
ここで、「第1の液を塗布して形成した層が、減率乾燥を示すようになる前」とは、通常、第1の液の塗布直後から数分間を指し、この間においては、塗布された層中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥を示す。該恒率乾燥を示す時間については、化学工学便覧(pp.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0066】
第1の液の塗布により形成された層は、減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、該乾燥は、一般に40℃〜180℃で0.5分間〜10分間(好ましくは、0.5分間〜5分間)おこなわれる。また、乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが上記範囲が適当である。
【0067】
第1の液を塗布して形成した層が、減率乾燥を示すようになる前に第2の液を付与する方法としては、(I)第2の液を第1の液により形成された層上に更に塗布する方法、(II)スプレー等の方法によって第2の液を噴霧する方法、(III)第2の液中に、該第1の液により形成された層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0068】
上記方法(I)において、第2の液を塗布する方法としては、例えば、カーテンフローコータ、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコーター、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコータ、カーテンフローコータ、バーコータ等のように、既に形成されている塗布層にコータが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0069】
第2の液の付与(塗布)量としては、5g/m〜50g/mであることが一般的であり、10g/m〜40g/mであることが好ましい。
【0070】
また、第2の液の付与を、第1の液を塗布すると同時に付与する場合については、第1の液及び第2の液を、該第1の液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることにより行うことができる。
【0071】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコータ、カーテンフローコータを用いた塗布方法によりおこなうことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40℃〜150℃で0.5分間〜10分間加熱することによりおこなわれ、好ましくは、40℃〜100℃で0.5〜5分間加熱することによりおこなわれる。
本発明においては、ホウ素化合物を使用することから、60℃〜100℃で5分間〜20分間加熱することが好ましい。
【0072】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコータによりおこなった場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコータの吐出口附近で、即ち、支持体上に移る前に重層形成され、その状態で支持体上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、支持体に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコータの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、第1の塗布液および第2の液(塩基性溶液)の塗布と共に、更に架橋剤と反応しない材料からなるバリアー層液(中間層液)を上記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0073】
上記バリアー層液は、ホウ素化合物と反応せず液膜を形成できるものであれば、特に制限なく選択できる。例えば、ホウ素化合物と反応しない水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。上記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。
尚、バリアー層液には、前記媒染剤を含有させることもできる。
【0074】
<(2)の態様による塗布層の形成>
本発明の製造方法における塗布層を、支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する塗布液を塗布し、乾燥して塗布層を形成する態様(前記(2)の態様)によりの形成する場合について説明する。
【0075】
(2)の態様において用いられる塗布液に適用される、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物としては、前記(1)の態様の説明において詳述したものを同様に用いることができる。
【0076】
−無機微粒子と水溶性樹脂との含有比−
無機微粒子(例えば、気相法シリカ;i)と水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール;p)との含有比〔PB比(i:p)、水溶性樹脂1質量部に対する無機微粒子の質量〕は、インク受容層の膜構造にも大きな影響を与える。即ち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。具体的には、PB比(i:p)としては、該PB比が大きすぎることに起因する膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、さらに、該PB比が小さすぎることによって、該空隙が水溶性樹脂によってふさがれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、(2)の様態においては 1.5:1〜8:1が好ましい。
【0077】
(2)の態様における塗布液は、カチオン性樹脂の少なくとも1種含有することが好ましく、さらに、ノニオン又は両性界面活性剤を少なくとも1種含有することが好ましい。また、高沸点有機溶媒を含有してもよい。カチオン性樹脂、界面活性剤、高沸点有機溶媒としては、前記(1)の態様の説明において詳述したものを同様に用いることができる。
【0078】
(2)の態様において用いられる塗布液は、必要に応じて、更に下記成分を含んでいてもよい。
インクに含まれる色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等の任意成分を含有してもよい。
【0079】
(2)の態様による塗布層の形成方法としては、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法によりおこなうことができる。
【0080】
以上のようにして、(1)又は(2)の態様により形成された塗布層に含有されるホウ素化合物は、インク受容層に含有される全ホウ素化合物の全質量に対し、1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜50質量%の範囲であることがより好ましく、20質量%〜50質量%の範囲であることが更に好ましい。
塗布層が含有するホウ素化合物を、上記範囲とすることで、塗布層の塗布性がより良好になると共に、インクジェット記録媒体の耐水性を向上させることができる。
【0081】
また、塗布層が含有する水溶性樹脂とホウ素化合物との含有比は、質量比で、水溶性樹脂:ホウ素化合物=1:0.01〜1:0.40の範囲であることが好ましく、1:0.05〜1:0.30の範囲であることがより好ましく、1:0.1〜1:0.25の範囲であることが更に好ましい。塗布層に含有される水溶性樹脂とホウ素化合物との含有比が、上記範囲であることで、塗布層の強度がより向上する。
【0082】
次に、本発明の製造方法におけるホウ素化合物を含有する液(ホウ素化合物含有液)の付与について説明する。
【0083】
本発明の製造方法においては、前述のごとく形成された塗布層が減率乾燥を示した後に、該塗布層に、ホウ素化合物を含有する液(ホウ素化合物含有液)を、ホウ素化合物の付与量がホウ酸換算量で0.25g/m〜2.0g/mとなるように付与する。
塗布層が減率乾燥を示した後に、該塗布層に、ホウ素化合物含有液を付与することで、塗布層の形成性を良好に保ちつつも、塗布層の硬膜化が促進され、耐水性に優れたインクジェット記録材料を得ることができる。
【0084】
ホウ素化合物含有液が含有するホウ素化合物としては、第1の液が含有するホウ素化合物として前述したホウ素化合物を同様に挙げることができる。
【0085】
ホウ素化合物含有液におけるホウ素化合物の含有量としては、ホウ素化合物含有液全量に対し、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、1〜8質量%であることが更に好ましい。
【0086】
ホウ素化合物含有液は、インク受容層の耐水性、耐傷性の観点から、pH7.1以上の塩基性溶液であることが好ましい。ホウ素化合物含有液のpHとしては、pHが7.3以上がより好ましく、pHが7.5以上が更に好ましく、7.8以上であることが特に好ましい。pH値が高いほど耐傷性が向上する傾向である。
【0087】
なお、このホウ素化合物含有液のpH調整は、塩基性物質を添加することにより調整できる。
ホウ素化合物含有液に添加される塩基性物質としては、上記第2の液に添加される塩基性物質と同様のものが挙げられる。また、好ましい例も同様である。
これら塩基性物質の中でも、耐傷性、湿熱にじみや保存性といった性能の観点から、アンモニア、第一級〜第三級アミンが好ましく、更に、アンモニア、ポリアリルアミン、アンモニウム塩が好ましい。
【0088】
ホウ素化合物含有液の塗布層への付与の時期は、塗布層が減率乾燥を示した後である。
ここで、「減率乾燥後」とは、前記した塗布層を、塗布し、乾燥して、恒率乾燥から減率乾燥を経て減率乾燥の終点となるときの乾燥終点以降をいう。「乾燥終点」とは、塗布層中から水を含む揮発成分を蒸発した後をいう。
【0089】
ホウ素化合物含有液の塗布層への付与後、乾燥は、一般に40〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは60〜100℃で0.5〜10分間行なわれる。この乾燥時間としては、当然付与量により異なるが上記範囲が適当である。
【0090】
ホウ素化合物含有液の付与方法としては、第2の液の付与方法として前記した方法と同様の方法が挙げられ、好ましい方法も同様である。
【0091】
ホウ素化合物含有液は、ホウ素化合物の付与量がホウ酸換算量で0.25g/m〜2.0g/mとなるように、塗布層に付与されることを要する。耐水性の向上、耐傷性の向上および印画濃度の観点からは、ホウ素化合物の付与量は、0.6g/m〜1.9g/mが好ましく、0.8g/m〜1.1g/mがより好ましい。
【0092】
また、本発明において使用できる溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。前記付与(特に、塗布)に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0093】
本発明の製造方法においては、以上のごとく、塗布層を形成した後、該塗布層にホウ素化合物含有液を付与することにより、支持体上にインク受容層が形成される。
【0094】
支持体上にインク受容層を形成した後、該インク受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0095】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50kg/cm〜400kg/cmが好ましく、100kg/cm〜200kg/cmがより好ましい。
【0096】
インク受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mmで、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、インク受容層の層厚としては、10μm〜50μmが好ましい。
【0097】
また、インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005μm〜0.030μmが好ましく、0.01μm〜0.025μmがより好ましい。
空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0098】
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0099】
<支持体>
本発明に用いる支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体または高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
また、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用いレーベル面側にインク受容層を付与することもできる。
【0100】
透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、ポリエチレンテレフタレートは特に好ましい。
透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い性の点で、50μm〜200μmが好ましい。
【0101】
高光沢性の不透明支持体としては、インク受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0102】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるRC紙、バライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、各種紙支持体、透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体が挙げられる。
更に、白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙も好適である。
【0103】
不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50μm〜300μmが好ましい。
【0104】
また、支持体の表面には、濡れ特性及び接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0105】
次に、紙支持体に用いられる原紙について詳述する。
原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
【0106】
パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0107】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0108】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200ml〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ算分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0109】
原紙の坪量としては、30g〜250gが好ましく、特に50g〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40μm〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7g/m〜1.2g/m(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20g〜200gが好ましい。
【0110】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0111】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0112】
特に、インク受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤、群青をポリエチレン中に添加し、不透明度、白色度および色相を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。
ポリエチレン層の厚みは特に限定はないが、表裏面層とも10μm〜50μmが好適である。さらにポリエチレン層上にインク受容層との密着性を付与するために下塗り層を設けることもできる。該下塗り層としては、水性ポリエステル、ゼラチン、PVAが好ましい。また、該下塗り層の厚みとしては、0.01μm〜5μmが好ましい。
【0113】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0114】
支持体にはバックコート層を設けることもでき、このバックコート層に添加可能な成分としては、白色顔料や水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0115】
バックコート層に用いられる水性バインダーとしては、例えば、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。
バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0116】
<その他>
本発明により得られるインクジェット記録媒体(本発明のインクジェット記録媒体)は、インク受容層に加えて、更に、インク溶媒吸収層、中間層、保護層等を有してもよい。また、支持体上には、前記インク受容層と支持体との間の接着性を高め、電気抵抗層を適切に調整する等の目的で、下塗り層を設けてもよい。
【0117】
本発明のインクジェット記録媒体の構成層(例えば、インク受容層あるいはバックコート層など)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。このポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止等のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、特開平10−228076号の各公報に記載がある。尚、ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を、前記媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止することができる。
【0118】
尚、インク受容層は、支持体の片面のみに設けてもよいし、カール等の変形を防止する等の目的で、支持体の両面に設けてもよい。OHP等で用いる場合であって、前記インク受容層を支持体の片面のみに設ける場合は、その反対側の表面、或いはその両面に、光透過性を高める目的で反射防止膜を設けることもできる。
【0119】
また、前記インク受容層が設けられる側の支持体の表面に、ホウ酸又はホウ素化合物を塗工し、その上にインク受容層を形成することにより、インク受容層の光沢度や表面平滑性を確保し、かつ高温高湿環境下における印画後の画像の経時ニジミを抑制することもできる。
【実施例】
【0120】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明の範囲は以下に示す実施例を限定されるものではない。尚、実施例中の「%」は、特に指定しない限り「質量%」を表し、「Mw」に続く数字は「重量平均分子量」を表し、「重合度」は「重量平均重合度」を表す。
【0121】
[実施例1]
−原紙・支持体の作製−
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/mの原紙を抄造した。
【0122】
原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾重量質量換算で0.5g/mとなるように上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05に調整した基紙を得た。
【0123】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなる様にコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、この樹脂層面を「ウラ面」と称する。)。このウラ側の樹脂層に更にコロナ放電処理を施した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)を質量比1:2で水に分散した分散液を、乾燥重量質量が0.2g/mとなるように塗布した。
【0124】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、及び蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み29μmとなるように溶融押し出しし、高光沢の熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、樹脂被覆紙を得た。
これを本実施例に用いる支持体とした。
なお、支持体のオモテ面は塗布液を塗布する前にコロナ放電処理をして使用した。
【0125】
−第1の液の調製−
下記組成中のイオン交換水に気相法シリカ微粒子を混合し、これにモノメチルジアリルアンモニウムクロライドをさらに混合し、ナノマイザーLA31(ナノマイザー(株)製)を用いて、500kg/mの圧力で2回処理をおこなった。その後、60分間攪拌をおこない、撹拌しながらホウ酸溶液(5%)を添加した。そこに、下記組成中のポリビニルアルコール5%水溶液を攪拌しながら加え、さらにポリオキシエチレンラウリルエーテルとジエチレングリコールモノブチルエーテルとを加え、第1の液を調製した。無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、4.9:1であった。
【0126】
〔第1の液の組成〕
・イオン交換水 …140.0kg
・気相法シリカ微粒子(無機微粒子) …30kg
(平均一次粒子径7nm、レオロシール QS−30、(株)トクヤマ製)
・モノメチルジアリルアンモニウムクロライド …2.5kg
(カチオン性樹脂;日東紡(株)製、PAS−M−1、Mw:2万、固形分濃度:60%)
・ホウ酸(5%水溶液) …11.6kg
・ポリビニルアルコール(5%水溶液) …123.5kg
(日本酢ビ・ポバール製、「JM−33」、鹸化度94.3mol%、重合度3300)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル …18.2kg
(ノニオン系界面活性剤;エマルゲン109P 2%水溶液)、花王(株)製)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE) …1.0kg
(高沸点有機溶剤)
さらに、イオン交換水を加えて、全量を350.0kgに調整した。
【0127】
−インクジェット記録媒体の作製−
上記組成を有する第1の液を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて170g/mの塗布量で塗布し、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/sec)で層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。第1の液により形成された層は、この間恒率乾燥を示した。その直後に、下記組成の第2の液(塩基性溶液)に30秒浸漬して、該塗布層上に第2の液を20g/m付着させた(減率乾燥前の塩基性溶液の付与)。そして、更に80℃下で10分間乾燥させた。
以上のようにして、本発明に係る塗布層を形成した。
【0128】
〔第2の液(塩基性溶液)の組成〕
・イオン交換水 …30.0kg
・ホウ酸 …0.24kg
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル …5.0kg
(ノニオン系界面活性剤;エマルゲン109P(2%)、花王(株)製)
・炭酸アンモニウム 塩基性溶液のpHが7.3になるように添加
さらにイオン交換水を加えて、全量が40.0kgになるように調整した。
【0129】
−ホウ素化合物含有液の塗布−
上記塗布層の乾燥後、エクストルージョンダイコーターを用いて該塗布層の上に下記組成のホウ素化合物含有液を塗布して、ホウ素化合物含有液を20g/m付着させ(減率乾燥後のホウ素化合物含有液の付与)、熱風乾燥機にて80℃で乾燥させた。
これにより、実施例1のインクジェット記録媒体を作製した。
【0130】
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・イオン交換水 …80.0kg
・ホウ砂 …3.86kg(ホウ酸換算量:2.50kg)
さらにイオン交換水を加えて、全量を100kgにした。
【0131】
[実施例2]
−塗布層形成用塗布液の調製−
下記組成中のイオン交換水に気相法シリカ微粒子を混合し、これにモノメチルジアリルアンモニウムクロライド、ホウ酸をさらに混合し、ナノマイザーLA31(ナノマイザー(株)製)を用いて、500kg/mの圧力で2回処理を行った。その後、60分間攪拌を行い、下記組成中のポリビニルアルコール7%水溶液を攪拌しながら加え、さらにポリオキシエチレンラウリルエーテルとジエチレングリコールモノブチルエーテルとを加え、塗布層形成用塗布液を調製した。無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、4.2:1であった
【0132】
〔塗布層形成用塗布液の組成〕
・イオン交換水 … 145.0kg
・気相法シリカ微粒子(無機微粒子) …30kg
(平均一次粒子径7nm、レオロシール QS−30、(株)トクヤマ製)
・モノメチルジアリルアンモニウムクロライド …2.5kg
(カチオン性樹脂;日東紡(株)製、PAS−M−1、Mw:2万、固形分濃度:60%)
・ホウ酸 …0.96kg
・ポリビニルアルコール(7%水溶液) … 102.6kg
(日本酢ビ・ポバール製、「JM−33」、鹸化度94.3mol%、重合度3300)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル …3.6kg
(ノニオン系界面活性剤;エマルゲン109P 10%水溶液)、花王(株)製)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE) …1.0kg
(高沸点有機溶剤)
さらにイオン交換水を加えて、全量を287.3kgに調整した。
【0133】
−インクジェット記録媒体の作製−
上記組成を有する塗布層形成用塗布液を、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて120g/mの塗布量で塗布し、5℃20秒間冷却後、40℃10%RHで乾燥した。
以上のようにして、本発明に係る塗布層を形成した。
【0134】
−ホウ素化合物含有液の塗布−
上記塗布層の乾燥後、実施例1と同様にして、該塗布層の上にホウ素化合物含有液を付着させ、乾燥して、実施例2のインクジェット記録媒体を作製した。
【0135】
[実施例3]
実施例1において、第1の液、第2の液、及びホウ素化合物含有液の組成を、以下に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録媒体を作製した。
【0136】
〔第1の液の組成〕
・ホウ酸5%水溶液11.6kgの代わりに、ホウ酸5%水溶液18.8kgを使用した。
〔第2の液(塩基性溶液)の組成〕
・ホウ酸0.24kgの代わりに、ホウ酸0.39kgを使用した。
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂1.93kgを使用した。
【0137】
[実施例4]
実施例1において、第1の液、第2の液、及びホウ素化合物含有液の組成を、以下に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録媒体を作製した。
【0138】
〔第1の液の組成〕
・ホウ酸5%水溶液11.6kgの代わりに、ホウ酸5%水溶液18.8kgを使用した。
〔第2の液(塩基性溶液)の組成〕
・ホウ酸0.24kgの代わりに、ホウ酸0.39kgを使用した。
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂4.58kgを使用し、ホウ素化合物含有液を20g/m付着させる代わりに32g/m付着させた。
【0139】
[実施例5]
実施例1において、ホウ素化合物含有液の組成を以下に示すものに変更し、更にホウ素化合物含有液の塗布量を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のインクジェット記録媒体を作製した。
【0140】
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂4.63kgを使用した。
【0141】
−ホウ素化合物含有液の塗布−
塗布層の上に、ホウ素化合物含有液を20g/m付着させるかわりに、40g/m付着させた
【0142】
[実施例6]
実施例1において、第1の液、第2の液、及びホウ素化合物含有液の組成を、以下に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6のインクジェット記録媒体を作製した。
【0143】
〔第1の液の組成〕
・ホウ酸5%水溶液11.6kgの代わりに、ホウ酸5%水溶液26.0kgを使用した。
〔第2の液(塩基性溶液)の組成〕
・ホウ酸0.24kgの代わりに、ホウ酸0.54kgを使用した。
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂4.50kgを使用し、ホウ素化合物含有液を20g/m付着させる代わりに24g/m付着させた。
【0144】
[実施例7]
実施例1において、第1の液、第2の液、及びホウ素化合物含有液の組成を、以下に示すものに変更し、更にホウ素化合物含有液の塗布量を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例7のインクジェット記録媒体を作製した。
【0145】
〔第1の液の組成〕
・ホウ酸5%水溶液11.6kgの代わりに、ホウ酸5%水溶液18.8kgを使用した。
〔第2の液(塩基性溶液)の組成〕
・ホウ酸0.24kgの代わりに、ホウ酸0.39kgを使用した。
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂4.51kgを使用した。
【0146】
−ホウ素化合物含有液の塗布−
塗布層の上に、ホウ素化合物含有液を20g/m付着させるかわりに、65g/m付着させた
【0147】
[比較例1]
実施例1において、第1の液、及び第2の液の組成を、以下に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録媒体を作成した。
【0148】
〔第1の液の組成〕
・ホウ酸5%水溶液11.6kgの代わりに、ホウ酸5%水溶液21.6kgを使用した。
〔第2の液(塩基性溶液)の組成〕
・ホウ酸0.24kgの代わりに、ホウ酸0.45kgを使用した。
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂1.16kgを使用した。
【0149】
[比較例2]
実施例1において、第1の液、第2の液、及びホウ素化合物含有液の組成を、以下に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2のインクジェット記録媒体を作成した。
【0150】
〔第1の液の組成〕
・ポリビニルアルコール5%水溶液の代わりに、ポリビニルアルコール7.5%水溶液を使用した。
・ホウ酸5%水溶液11.6kgの代わりに、ホウ酸5%水溶液8.7kgを使用した。
無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、3.2:1であった
〔第2の液(塩基性溶液)の組成〕
・ホウ酸0.24kgの代わりに、ホウ酸0.18kgを使用した。
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂4.63kgを使用した。
【0151】
[比較例3]
実施例1において、第1の液、及びホウ素化合物含有液の組成を、以下に示すものに変更し、更にホウ素化合物含有液の塗布量を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のインクジェット記録媒体を作製した。
【0152】
〔第1の液の組成〕
・ポリビニルアルコール5%水溶液123.5kgの代わりに、ポリビニルアルコール5%水溶液51.5kgを使用した。
〔ホウ素化合物含有液の組成〕
・ホウ砂3.86kgの代わりに、ホウ砂4.63kgを使用した。
【0153】
無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、11.7:1であった。
【0154】
−ホウ素化合物含有液の塗布−
塗布層の上に、ホウ素化合物含有液を20g/m付着させるかわりに、40g/m付着させた
【0155】
表1に、以上により作製した各インクジェット記録媒体について、塗布層中の水溶性樹脂(PVA)の総量(g/m)及びホウ素化合物(ホウ酸)の量(g/m)、ホウ素化合物含有液により付与したホウ素化合物(ホウ酸)の量(g/m)、インク受容層中のホウ素化合物(ホウ酸)の総量(g/m)、ホウ素化合物の総量/水溶性樹脂の総量、塗布層中のホウ素化合物量/インク受容層のホウ素化合物量、塗布層中のホウ素化合物(ホウ酸)の量(g/m)/水溶性樹脂の量(g/m)をまとめて示す。
【0156】
[性能評価]
上記より得られた各インクジェット記録媒体について、以下の評価を行なった。結果を表1に併記する。
【0157】
<耐水性>
各インクジェット記録媒体を10cm×10cmに裁断し、蒸留水200mlに2時間、1日間、3日間浸漬し、自然乾燥した。
〔評価基準〕
AA:浸漬2時間、1日間、3日間のいずれも塗布層に割れは発生しなかった
A:浸漬2時間、1日間では塗布層に割れが発生しなかったが、浸漬3日間では割れが発生した
C:浸漬2時間、1日間、3日間のいずれも塗布層に割れが発生した
【0158】
<耐傷性>
各インクジェット記録媒体をA4サイズに裁断した。該A4サイズに裁断したインクジェット記録媒体を水平で平面の試験台上に2枚重ね合わせた。この際、各インクジェット記録媒体は、下側のインクジェット記録媒体のインク受容層面と上側のインクジェット記録媒体の裏面が接触するように重ね合わされている。重ね合わせた上側のインクジェット記録媒体の上から1kg/A4サイズの荷重をかけながら、下側のインクジェット記録媒体を1cm/秒の速度で引き出し、下側のインクジェット記録媒体のインク受容層表面にできた傷を下記の基準に従って評価した。
〔評価基準〕
AA:全く傷の発生が見られない
A:わずかに傷の発生が見られる
C:傷の発生が問題となる
【0159】
耐水性、耐傷性が良好な結果(評価基準で○及び◎)が得られたインクジェット記録媒体(実施例のインクジェット記録媒体)について、更に以下の評価を行った。
【0160】
<光沢度>
インクジェットプリンターA820(セイコーエプソン(株)製)を用い、23℃、50%RHの環境下で各インクジェット記録媒体上に黒ベタ画像をプリントした。インク受像層の最表面における60°光沢度を、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP、スガ試験機社製)で計測し、下記基準にて評価した。
〔評価基準〕
AA:光沢度が60以上
A:光沢度が55以上60未満
B:光沢度が50以上55未満
C:光沢度が50未満
【0161】
<画像濃度>
インクジェットプリンターA820(セイコーエプソン(株)製)を用い、23℃、50%RHの環境下で各インクジェット記録媒体上に黒ベタ画像をプリントした。プリント後、23℃、50%環境下で1晩放置し、濃度計(X−rite 310TR)にてビジュアル反射濃度を測定した。
〔評価基準〕
AA:濃度が2.40以上
A:濃度が2.30以上2.40未満
B:濃度が2.10以上2.30未満
C:濃度が2.10未満
【0162】
【表1】

【0163】
表1から明らかな通り、実施例1〜5のインクジェット記録媒体については、いずれの評価項目においても良好な評価結果が得られた。
一方、比較例1〜3のインクジェット記録媒体は、いずれも耐水性及び耐傷性に劣ったインクジェット記録媒体であることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する塗布層を形成し、減率乾燥を示した後の該塗布層に、ホウ素化合物を含有する液をホウ素化合物の付与量がホウ酸換算量で0.25g/m〜2.0g/mとなるように付与して、ホウ素化合物の含有量が水溶性樹脂1に対しホウ酸換算質量で0.25〜1.0の範囲であるインク受容層を形成するインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記塗布層に含有されるホウ素化合物が、前記インク受容層に含有される全ホウ素化合物の質量に対し、1質量%〜50質量%の範囲である請求項1に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記塗布層が、支持体上に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びホウ素化合物を含有する第1の液を塗布して層を形成すると同時、又は、該第1の液を塗布して形成した層の乾燥途中であって該層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、pH7.1以上の第2の液を付与し、乾燥して形成される請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性化合物が、ポリビニルアルコールである請求項1〜請求項3のいずか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記塗布層が含有する水溶性樹脂とホウ素化合物との含有比が、質量比で、水溶性樹脂1に対しホウ素化合物が0.10〜0.25の範囲である請求項1〜請求項4のいずか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記ホウ素化合物が、硼砂、硼酸、及び硼酸塩からなる群から選択されたホウ素化合物である請求項1〜請求項5のいずか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたインクジェット記録媒体。

【公開番号】特開2011−51309(P2011−51309A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204753(P2009−204753)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】