説明

インクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置

【課題】 インク保存安定性、にじみ耐性、印刷後の安定性(耐擦性など)、平滑性を向上し、記録媒体の変形を抑え、記録媒体の種類(特にインク吸収性のない記録媒体)に関係なく良好な画像が得られ、且つ、安定した高精細な画像を印字できるインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】 光重合性化合物、光重合開始剤及び色剤を含有するインク組成物に何らかの噴射エネルギーを付与することによりインク液滴を噴射させ画像形成し、記録媒体上に画像を定着した後、紫外線を照射するインクジェット記録方法であり、該インク組成物が重合禁止剤を100〜10,000ppm含有することを特徴とするインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紙、プラスティックフィルム、金属等の記録媒体の種類に関係なく、記録媒体上への記録に適したインク組成物を用いるインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来よりインクジェット記録用インク組成物(以下、単にインク組成物、インクともいう)としては、水溶性液体インク組成物が広く使われている。
【0003】また、室温で固体のワックス等を素材としたホットメルト型インク組成物を用いて、加熱等により液化し、何らかのエネルギーを加えて噴射させ、記録媒体上に付着しつつ冷却固化し記録ドットを形成するホットメルト型インクジェット記録方式が提案されている。
【0004】このインクは室温で固体状であるため取扱い時に汚れないし、また、溶融時のインクの蒸発量を最小限にできるためノズルの目詰まりがない。
【0005】更に、付着後直ちに固化するためにじみもなく、和紙から画用紙、葉書、プラスチックシートといったさまざまな記録媒体を前処理等なしで用いることができる等の利点がある。
【0006】米国特許第4,391,369号、同第4,484,948号には、紙質に関係なく良好な印刷品質を提供するインク組成物が記述されている。
【0007】また、特開昭56−93776号公報においては、金属面に接着性の良い紫外線硬化樹脂型インク組成物が開示されており、更に、紫外線を露光することによって硬化するインクジェット記録用インクとして、米国特許第4,228,438号に開示されているように、エポキシ変性アクリル樹脂およびウレタン変性アクリル樹脂をバインダーとして使用し、かつ5μm以下の粒子径の顔料を着色成分としたインク、あるいは特開昭58−32674号公報に開示されているカチオン重合性のエポキシ樹脂をバインダーに用いたインク、特開平5−186725号公報に記載されている様に、水溶性または非水溶性染料を使用したものがあり、普通紙、再生紙への印字を容易にしたものが開示されている。
【0008】しかし、水系インクを印刷に用いた場合、特にインク吸収性のない記録媒体に対しては印刷が困難で、専用紙を使用する場合にも大型のインク乾燥装置が必要であり、又、にじみの問題から高精細印刷は困難で解像度に限界があるため用途が限られる。
【0009】ワックスを用いたホットメルトタイプのインクはインク吸収性のない記録媒体に対しても印刷は可能で、しかも、高速印刷が可能であるが、耐擦性が非常に低く印刷後の信頼性を得るのが難しかった。また、被写体に付着したインクが盛り上がってしまい、画像品質を上げることが難しい。
【0010】紫外線等の光で記録液を硬化させる方式は、インク吸収性のない記録媒体に対しては印刷が可能となるが、硬化速度不足によるにじみの問題で高精細印刷は困難で解像度に限界があった。
【0011】また、インクの長期保存が難しい、ヘッド部でのインクの硬化によるヘッドの目詰まりを起こしやすい、更には、紫外線照射による記録媒体の発熱といった問題があった。
【0012】有機顔料を着色剤として用いたインクジェット記録方式は、特に耐光性の点で染料を用いたインクジェット記録方式に比べて多くの利点があるので、OA機器、一般家庭用プリンタやファクシミリ等のオフィスプリンタにとどまらず室内外用ポスター、大型看板、車、ガラス、エレベータ、壁および建物の装飾、さらには布へのプリントなどへ応用が期待されている。
【0013】従って、有機顔料を用いたインクジェット記録方式は耐光性の点で優れているので、併せて、インク保存安定性、にじみ耐性、印刷後の安定性(耐擦性)、平滑性を向上し、記録媒体の変形を抑え、紙、プラスティックフィルム、金属等の記録媒体の種類(特にインク吸収性のない記録媒体)に関係なく良好な画像が得られ、且つ、安定して高精細な画像を印字できるインクジェット記録方式が求められていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、インク保存安定性、にじみ耐性、印刷後の安定性(耐擦性など)、平滑性を向上し、記録媒体の変形を抑え、紙、プラスティックフィルム、金属等の記録媒体の種類(特にインク吸収性のない記録媒体)に関係なく良好な画像が得られ、且つ、安定した高精細な画像を印字できるインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0016】1.光重合性化合物、光重合開始剤及び色剤を含有するインク組成物に何らかの噴射エネルギーを付与することによりインク液滴を噴射させ画像形成し、記録媒体上に画像を定着した後、紫外線を照射するインクジェット記録方法であり、該インク組成物が重合禁止剤を100〜10,000ppm含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0017】2.前記色剤が顔料であり、該顔料の添加量が全インク組成物に対して0.5〜30質量%であることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録方法。
【0018】3.前記顔料が分散体であり、且つ、分散体の平均分散粒径が200nm以下であることを特徴とする前記1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【0019】4.前記光重合開始剤を全インク組成物に対して0.1〜20質量%含有することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0020】5.30℃におけるインク組成物の粘度が40〜500mPa・sであることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0021】6.前記インク組成物を40〜150℃加熱した後、何らかの噴射エネルギーを付与することによりインク液滴を記録媒体上に噴射させ画像形成し、15〜40℃に保たれた記録媒体上に画像を定着した後、活性光線を付与することを特徴とする前記1〜5の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0022】7.照射する全紫外線量が10〜10000mJ/cm2であることを特徴とする前記1〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0023】8.インクジェット方式により形成したインク滴を記録媒体に付着させて記録することを特徴とする前記1〜7の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0024】9.インクジェット記録方式が、圧電体の圧電作用を利用する記録方式であることを特徴とする前記1〜8の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0025】10.記録媒体がインク吸収性のないものであることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0026】11.インクを収容したインク収容部及びインクをインク滴として吐出するためのヘッド部を有する記録ユニットにおいて、前記9又は10に記載のインクジェット記録方法を使用することを特徴とする記録ユニット。
【0027】12.前記ヘッド部が圧電体の圧電作用を利用する方式によりインク吐出を行うことを特徴とする前記11に記載の記録ユニット。
【0028】13.前記11又は12に記載の記録ユニットが紫外線を照射する手段を具備していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【0029】以下、本発明を更に詳細に述べる。先ず、重合禁止剤について説明する。
【0030】本発明の重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メトキシベンゾキノン、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、などが挙げられ、特にp−メトキシフェノール、カテコール類、フェノール類が好ましい。
【0031】カテコール類としては、例えばp−t−ブチルカテコールが挙げられる。また、フェノール類としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、2,2’メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’−5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートなどが挙げられ、本発明においては油溶性であることが好ましい。
【0032】重合禁止剤は単独で使用しても、2種以上併用しても良い。重合禁止剤の添加量は、全インク総質量に対して、100〜10,000ppmであり、好ましくは、300〜2000ppm、更には、500〜1,000ppmがより好ましい。
【0033】100ppm未満であると、本発明の効果が十分に得られなく、10,000ppmを越えると色にごりの原因となる。
【0034】本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクを40〜150℃に加熱後、何らかの噴射エネルギーを付与することによりインク液滴を記録媒体上に噴射させ画像を形成し、且つ、15〜40℃に保たれた記録媒体上に画像定着した後、活性光線を付与することが好ましい。ここで、活性光線とは、紫外線のことを言う。
【0035】また、本発明において、インク組成物に何らかの噴射エネルギーを付与することとは、本発明においては、圧電体の圧電作用によるエネルギーを付与する方法が好ましく、その他に、例えば、熱により気泡を発生することにより、噴射エネルギーを付与させるバブルジェット(登録商標)方法がある。
【0036】インク滴を噴射させる時のインクの温度は、40〜150℃であるが、更に好ましくは、50〜100℃である。40℃未満、150℃を越えると、射出が困難になる。また、インク滴が噴射され画像形成される記録媒体の温度は、15〜40℃であることが好ましい。40℃を越えると画像のにじみの劣化が大きい。
【0037】本発明においては、前述した如く、インクジェットプリンターのインク吐出の駆動力(エネルギー)としては、インクに対しての適用範囲が広い高速射出が可能な圧電体の圧電作用を利用する方式が好ましい。該方式は具体的には、例えば特公平4−48622号に記載される様に、圧電性基体上に形成された微細な溝の内部に電極膜が形成され、更に絶縁膜で覆われてインク流路とするインクジェットヘッド方式である。
【0038】本発明のインクジェット記録方法は、インク組成物を記録媒体に付着させた後に、紫外線照射を行うことを特徴としている。該紫外線照射はインク液滴を噴射させた後、340〜380nmの波長の紫外線を0.1〜10秒の間に照射し、その後、280〜340nmの波長の紫外線を10〜1000秒の間に照射することがより好ましい。
【0039】紫外線照射を行う場合、全紫外線照射量は、10〜10000mJ/cm2であることが好ましく、より、好ましくは100〜1000mJ/cm2である。
【0040】紫外線照射は、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等のランプが挙げられ、例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
【0041】メタルハライドランプは高圧水銀ランプ(主波長は365nm)に比べてスペクトルが連続しており、200〜450nmの範囲に良好な発光効率を有し、かつ、長波長域でも発光効率が良好である。従って、本発明のインク組成物に顔料を使用する場合はメタルハライドランプが適している。
【0042】紫外線を照射するタイミングは、インク液滴を噴射した0.1〜100秒後に行うことが好ましい。更に好ましくは、1〜10秒後である。
【0043】紫外線の波長の制御は、紫外線吸収剤等を配合したフィルムに紫外線を透過させることによりおこなうことができる。紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸フェニルエステル、サリチル酸p−tertブチルフェニルエステル、サリチル酸p−オクチルフェニルエステル等のサリチル酸系化合物を挙げることができる。
【0044】インク吸収性のない記録媒体、インク吸収性の低い記録媒体又はインク非吸収性記録媒体とは、インク吸収性のない基材、インク吸収性の悪い基材、インク非吸収性材料を有する記録媒体、インク吸収性のない基材又はインク吸収性の低い材料(あるいは、インク非吸収性材料)からなる表面層(印字層)を有する記録媒体であり、インク吸収性のない材料、インク吸収性の低い材料(あるいは、インク非吸収性材料)は、例えば、各種のプラスチックや金属である。
【0045】本発明のインク組成物中の光重合性化合物、光重合開始剤について説明する。光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物、例えば特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特願平7−231444号等の各号公報及び特願平7−231444号明細書に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料と、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も例えば、特開平6−43633号、特開平8−324137公報等に公開されている。
【0046】ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0047】ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0048】具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0049】上記ラジカル重合性化合物の添加量は好ましくは1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。
【0050】ラジカル重合開始剤としては、特公昭59−1281号、特公昭61−9621号、及び特開昭60−60104号等の各公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号及び特開昭61−243807号等の各公報に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、特公昭44−6413号、特公昭44−6413号及び特公昭47−1604号等の各公報並びに米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、同第2,852,379号及び同2,940,853号各明細書に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、特公昭37−13109号、特公昭38−18015号、特公昭45−9610号等の各公報に記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号等の各公報及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)」、第10巻、第1307頁(1977年)に記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、ヨーロッパ特許第126,712号等の各明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)に記載の金属アレン錯体、特願平4−56831号明細書及び特願平4−89535号明細書に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤はラジカル重合可能なエチレン不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で含有されるのが好ましい。
【0051】カチオン重合系光硬化樹脂としては、カチオン重合により高分子化の起こるタイプ(主にエポキシタイプ)のエポキシタイプの紫外線硬化性プレポリマー、モノマーは、1分子内にエポキシ基を2個以上含有するプレポリマーを挙げることができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物類およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらのプレポリマーは、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0052】カチオン重合性組成物中に含有されるカチオン重合性化合物としては、他に例えば下記の(1)スチレン誘導体、(2)ビニルナフタレン誘導体、(3)ビニルエーテル類及び(4)N−ビニル化合物類を挙げることができる。
【0053】(1)スチレン誘導体例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン等。
【0054】(2)ビニルナフタレン誘導体例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等。
【0055】(3)ビニルエーテル類例えば、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、α−メチルフェニルビニルエーテル、β−メチルイソブチルビニルエーテル、β−クロロイソブチルビニルエーテル等。
【0056】(4)N−ビニル化合物類例えばN−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール等。
【0057】上記カチオン重合性化合物のカチオン重合性組成物中の含有量は1〜97質量%が好ましく、より好ましくは30〜95質量%である。
【0058】カチオン重合系光硬化樹脂の開始剤としては、芳香族オニウム塩を挙げることができる。この芳香族オニウム塩として、周期表第Va族元素の塩たとえばホスホニウム塩(たとえばヘキサフルオロリン酸トリフェニルフェナシルホスホニウムなど)、第VIa族元素の塩たとえばスルホニウム塩(たとえばテトラフルオロホウ酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロリン酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロリン酸トリス(4−チオメトキシフェニル)、スルホニウムおよびヘキシサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウムなど)、および第VIIa族元素の塩たとえばヨードニウム塩(たとえば塩化ジフェニルヨードニウムなど)を挙げることができる。
【0059】これらの芳香族オニウム塩をエポキシ化合物の重合におけるカチオン重合開始剤として使用することは、米国特許第4,058,401号、同第4,069,055号、同第4,101,513号および同第4,161,478号公報に詳述されている。
【0060】好ましいカチオン重合開始剤としては、第VIa族元素のスルホニウム塩が挙げられる。その中でも、紫外線硬化性と紫外線硬化性の組成物の貯蔵安定性の観点からすると、ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスホニウムが好ましい。
【0061】またフォトポリマーハンドブック(フォトポリマー懇話会編 工業調査会発行1989年)の39〜56頁に記載の公知の光重合開始剤、特開昭64−13142号、特開平2−4804号に記載されている化合物を任意に用いることが可能である。
【0062】<他の添加剤>本発明のインク組成物の添加剤として、反応希釈剤、充填剤、流動助剤、チキソトロピー剤、湿潤剤、消泡剤、可塑剤のような他の添加剤を含有することができる。又、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、腐食防止剤のような安定化剤又は、Si系化合物、ワックス等を添加しても良い。
【0063】本発明のインク組成物における色剤としては、従来から知られている染料および顔料が使用できる。本発明における色剤としては、顔料がより好ましい。
【0064】水溶性染料として、例えば、C.I.ダイレクトブラック−2、−4、−9、−11、−17、−19、−22、−32、−80、−151、−154、−168、−171、−194;C.I.ダイレクトブルー−1、−2、−6、−8、−22、−34、−70、−71、−76、−78、−86、−112、−142、−165、−199、−200、−201、−202、−203、−207、−218、−236、−287;C.I.ダイレクトレッド−1、−2、−4、−8、−9、−11、−13、−15、−20、−28、−31、−33、−37、−39、−51、−59、−62、−63、−73、−75、−80、−81、−83、−87、−90、−94、−95、−99、−101、−110、−189;C.I.ダイレクトイエロー−1、−2、−4、−8、−11、−12、−26、−27、−28、−33、−34、−41、−44、−48、−58、−86、−87、−88、−135、−142、−144;C.I.フードブラック−1、−2;C.I.アシッドブラック−1、−2、−7、−16、−24、−26、−28、−31、−48、−52、−63、−107、−112、−118、−119、−121、−156、−172、−194、−208;C.I.アシッドブルー−1、−7、−9、−15、−22、−23、−27、−29、−40、−43、−55、−59、−62、−78、−80、−81、−83、−90、−102、−104、−111、−185、−249、−254;C.I.アシッドレッド−1、−4、−8、−13、−14、−15、−18、−21、−26、−35、−37、−110、−144、−180、−249、−257;C.I.アシッドイエロー−1、−3、−4、−7、−11、−12、−13、−14、−18、−19、−23、−25、−34、−38、−41、−42、−44、−53、−55、−61、−71、−76、−78、−79、−122等があげられる。
【0065】油溶性染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料等があげられるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0066】水に不溶性染料および顔料としては、特に限定されるものではないが、有機顔料、無機顔料、着色ポリマー粒子、水不溶性染料、分散染料、油溶性染料等があげられる。
【0067】黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等があげられ、例えば、Raven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000−ULTRAII、Raven3500、Raven2000、Raven1500、Raven1250、Raven1200、Raven1190−ULTRAII、Raven1170、Raven1255、Raven1080、Raven1060(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul−L、Black−Pearls−L、Monarch700、Monarch800、Monarch、880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1、Color BlackFW2、Color Black FW2V、Color Black 18、ColorBlack FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Pritex35、PritexU、Pritex Vrintex140U、Printex140V、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等を使用することができる。また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子、チタンブラック等を黒色顔料として用いることもできる。
【0068】シアン色顔料としては、C.I.ピグメント・ブルー−1、C.I.ピグメント・ブルー−2、C.I.ピグメント・ブルー−3、C.I.ピグメント・ブルー−15、C.I.ピグメント・ブルー−15:1、C.I.ピグメント・ブルー−15:3、C.I.ピグメント・ブルー−15:34、C.I.ピグメント・ブルー−16、C.I.ピグメント・ブルー−22、C.I.ピグメント・ブルー−60等があげられる。
【0069】マゼンタ色顔料としては、C.I.ピグメント・レッド−5、C.I.ピグメント・レッド−7、C.I.ピグメント・レッド−12、C.I.ピグメント・レッド−48、C.I.ピグメント・レッド−48:1、C.I.ピグメント・レッド−57、C.I.ピグメント・レッド−112、C.I.ピグメント・レッド−122、C.I.ピグメント・レッド−123、C.I.ピグメント・レッド−146、C.I.ピグメント・レッド−168、C.I.ピグメント・レッド−184、C.I.ピグメント・レッド−202等があげられる。
【0070】黄色顔料としては、C.I.ピグメント・イエロー−1、C.I.ピグメント・イエロー−2、C.I.ピグメント・イエロー−3、C.I.ピグメント・イエロー−12、C.I.ピグメント・イエロー−13、C.I.ピグメント・イエロー−14、C.I.ピグメント・イエロー−16、C.I.ピグメント・イエロー−17、C.I.ピグメント・イエロー−73、C.I.ピグメント・イエロー−74、C.I.ピグメント・イエロー−75、C.I.ピグメント・イエロー−83、C.I.ピグメント・イエロー−93、C.I.ピグメント・イエロー−95、C.I.ピグメント・イエロー−97、C.I.ピグメント・イエロー−98、C.I.ピグメント・イエロー−114、C.I.ピグメント・イエロー−128、C.I.ピグメント・イエロー−129、C.I.ピグメント・イエロー−151、C.I.ピグメント・イエロー−154等があげられる。
【0071】前記の黒色およびシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料、金、銀色等の金属光沢顔料、無色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用することもできる。
【0072】また、上記以外に新たに合成した顔料を用いることもできる。さらに、これらの顔料は、表面処理されたものであってもよい。
【0073】表面処理方法としては、例えば、アルコール、酸、塩基、シラン化合物等のカップリング剤による処理、ポリマーグラフト化処理、プラズマ処理等があげられる。
【0074】本発明において使用する色剤は、有機および無機不純物の含有量が少ないものが好ましい。一般に市販されている色剤は不純物の含有量が多いので、その精製品を使用することが望ましい。本発明の上記固体インク組成物に用いられる色剤は、インク全質量に対し通常0.1〜30質量%、好ましくは0.4〜10質量%の範囲で使用される。
【0075】本発明は、分散された顔料を用いることがより好ましい。顔料を分散するために使用される分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいは、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。
【0076】顔料の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。また、遠心分離装置を使用して、あるいは、フィルターを使用して顔料分散体から粗粒分を除去することも好ましい。
【0077】本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は200nm以下が好ましく、50〜100nmがより好ましい。
【0078】本発明のインクに使用する顔料分散体の添加量は、一般に0.5〜30質量%の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは1〜20%の範囲である。
【0079】本発明のインクには、必要に応じて、水溶性有機溶剤を添加することができる。好ましく用いられる水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0080】本発明のインクには、この他に、防腐剤、防黴剤、粘度調整剤等を必要に応じて含有させてもよい。
【0081】本発明におけるインクのpHは、4〜10であることが好ましい。更に、好ましくは、5〜9である。
【0082】本発明の効果の理由については明瞭ではないが、顔料と光重合性化合物の相溶性が顔料の分散安定性に寄与していると推定している。
【0083】本発明のインクにおいては、インクの表面張力が、記録媒体およびヘッドノズル部材に対する濡れ性を考慮すると、20〜60mN/mの範囲にあることが必要であり、好ましくは25〜50mN/mの範囲に設定される。インクの表面張力が25mN/m未満であると、ノズルからインクが溢れだしやすくなり、また、60mN/mを越えると乾燥時間が長くなり、生産性上問題である。
【0084】表面張力を調整するために、必要に応じて、界面活性剤を含有させてもよい。本発明のインクに好ましく使用される界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中で特に、アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0085】本発明におけるインクは、30℃での粘度が40〜500mPa・sの液体であることが好ましい。より好ましくは、50〜500mPa・sであり、更に好ましくは100〜500mPa・sである。40mPa・s未満では、にじみが劣化、また、500mPa・sを越えると、画質の平滑性が失われる。
【0086】次に、本発明のインクジェット記録装置の一例を図1を用いて説明する。キャリッジ2にはインクジェットヘッド1が搭載され、このキャリッジ2はプラテン3に対向して平行に設置されたガイドレール4、5に沿って左右に往復運動するよう駆動される。インクジェットヘッド1には記録信号パルスを伝えるフレキシブル基板等による接続線6と、インクタンク8からインクをインクジェットヘッド1へ供給するインクチューブ7が接続されている。記録時にはプラテン3の表面に沿って記録媒体9が逐次上方に移動しつつ副走査が行われている。プラテン3によって記録媒体9が上方に送られ、対向して装着されたインクジェットヘッド1の複数のノズル16から画像信号に対応してインク滴を噴射して記録媒体9上に画像を形成する。
【0087】なお、1はインクジェットヘッドであるが、これに限られず、従来知られている任意の多チャンネルインクジェットヘッドを使用することができる。
【0088】そしてインクジェット装置の開始時や待機時等の非印字時にはキャリッジ2と共にインクジェットヘッド1は対向しているプラテン3の位置から外れ、キャップ20の位置まで移動し、キャップ20がノズルに密着される。
【0089】本発明は、さらに記録中もしくは記録後に印字がなされた記録媒体を紫外線照射する装置(手段)が図1に設けられている(図は省略)。
【0090】図2〜図4は本発明の記録ユニットの一例を示す平面断面図、側面断面図、模式図である。
【0091】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0092】実施例1インク組成物の調製下記のインク組成物を50℃に加熱して混合攪拌した後、得られた液体を加熱下、フィルターでろ過し、冷却してインク組成物を得た。なお、比較試料の固形インクは150℃に加熱、混合を行い作製した。また、比較試料の紫外線硬化インクは、加熱せず混合を行い、作製した。
【0093】
固形インク(インク1:比較)
色剤CI pigment Blue 15:3 5質量部 (平均分散粒径:100nm)
パラフィンワックス(日本精蝋製、155) 45質量部 ベヘン酸(和光純薬製) 30質量部 オレイン酸アミド(花王製、脂肪酸アマイドON) 20質量部 紫外線硬化インク(インク2:比較)
色剤CI pigment Blue 15:3 5質量部 (平均分散粒径:100nm)
光重合性化合物 1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 15質量部 2−フェノキシエチルアクリレート 20質量部 ポリプロピレングリコールジアクリレート 20質量部 オクチルアクリレート 29質量部 重合開始剤イルガキュア184(日本チバガイギー社製) 5質量部 2−フェノキシエタノール 1質量部 重合禁止剤p−メトキシフェノール、ハイドロキノン 添加量は表記載 本発明のインク(インク3)
色剤CI pigment Blue 15:3 5質量部 (平均分散粒径:100nm)
光重合性化合物 1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 表記載の質量部 2−フェノキシエチルアクリレート 10質量部 ポリプロピレングリコールジアクリレート 10質量部 新中村化学社製 A−9300 表記載の質量部 重合開始剤イルガキュア184(日本チバガイギー社製) 5質量部 2−フェノキシエタノール 1質量部 重合禁止剤p−メトキシフェノール、ハイドロキノン 添加量は表記載 本発明のインク(インク4)
色剤CI pigment Blue 15:3 5質量部 (平均分散粒径:100nm)
光重合性化合物 1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 表記載の質量部 2−フェノキシエチルアクリレート 10質量部 ポリプロピレングリコールジアクリレート 10質量部 AT−600(共栄社化学社製) 表記載の質量部 重合開始剤イルガキュア184(日本チバガイギー社製) 5質量部 2−フェノキシエタノール 1質量部 重合禁止剤メトキシベンゾキノン、フェノチアジン 添加量は表記載以下のインクジェットプリンター、記録媒体、インクを準備し、検討した結果を以下に示す。
【0094】(インクジェットプリンター(インクジェット記録装置))図1のインクジェット記録装置を使用した。
【0095】(記録媒体)記録媒体は、50μmの厚みのPETシートを使用した。該PETシートは常温(25℃)に保持した。
【0096】これらを図1のインクジェットプリンターにセットし、出力評価した。なお、本発明のインクは、インク温度を表記載の温度で、比較試料固形インクは150℃で、比較試料UV硬化インクは25℃にて、それぞれ記録媒体に印字した。
【0097】(紫外線照射)印字出力した後、以下の条件で紫外線を照射した。
【0098】(340〜400nm、280〜400nmの波長の紫外線)照射ランプはメタルハライドタイプを使用し、照射エネルギーは1000mJ/m2、照射タイミングは、印字後0.5秒後に行った。
【0099】(出力)インクジェットプリンターを用い画像出力を行なった。印字時のインク温度は、紫外線硬化インクは25℃、固形インクは150℃、本発明のインクは60℃であった。
【0100】(保存安定性試験の評価)インク組成物について、60℃恒温槽中に6ケ月間放置した後、以下の評価を行った。
【0101】1−1.分散安定性試験沈澱物、液分離を以下の評価基準で目視にて評価した。
【0102】液分離や沈澱物は確認されないものを◎、僅かに液分離が見られるが、弱い振とうにより元に戻るものを○、僅かに沈澱が確認されるものを△、液分離及び沈澱が激しく、振とうしても元に戻らないものを×、結果を表に示した。
【0103】1−2.物性変化試験放置前と後で粘度を測定し、その物性変化を以下の評価基準で目視にて評価した。尚、粘度は30℃における粘度を回転粘度計(トキメック製EDLモデル)を用いて測定した。
【0104】粘度変化が見られないものを◎、粘度上昇が初期に対して10%未満であるものを○、粘度上昇が初期の10〜50%であるものを△、ゲル或いは固い沈澱を形成しているものを×、結果を表に示した。
【0105】(プリンター印字性試験)インク組成物を図1のインクジェットプリンターに用いて、以下の検討を行った。
【0106】2−1.連続印字(インク吐出安定性)試験(にじみ評価)
図1のインクジェットプリンターにて100枚連続印字し、印字性を以下の評価基準で目視にて評価した。
【0107】にじみもなく印字性も良好なものを◎、僅かににじみと印字の乱れが生じるものを○、にじみはあるが文字の識別は可能であるものを△、にじみで文字の識別が不能であるものを×、結果を表に示した。
【0108】2−2.(再起動(インク目詰まり性)試験)
図1のインクジェットプリンターにて印字した後に、40℃で1日インクキャップを開放状態で放置して再度印字を行い、目詰まり性を印字物で以下の評価基準で目視評価した。
【0109】目詰まりもなく印字性も良好なものを◎、僅かに抜けが観察できるものを○、目詰まりがあるが簡単な復帰操作で印字可能なものを△、印字が不能であるものを×、結果を表1に示した。
【0110】(画像耐久性試験)図1のインクジェットプリンターにて印字したベタ部に対して、スクラッチ強度試験機 HEIDON−18[HEIDON社製]を用い、測定針は0.8mmRのサファイヤ針を用いて測定した。測定は一定荷重で10cmの引掻き試験を3回行い、支持体まで傷が入った箇所が存在しない限度荷重を本発明のスクラッチ強度とし、以下の評価基準で評価した。
【0111】◎・・・200g以上○・・・150〜200g未満△・・・100〜150g未満×・・・100g未満。
【0112】(基材温度変化)図1のインクジェットプリンターにてベタ部(黒)を印字し、紫外線照射を行った後、熱による基材の変形の度合いを目視にて以下の評価基準で評価した。
【0113】変形が無く良好なものを◎、僅かに変形が観察できるものを○、変形はあるが、実用上問題のないものを△、変形が大きく、使用不可レベルであるものを×。
【0114】(平滑性)図1のインクジェットプリンターにてベタ部(黒)を印字し、紫外線照射を行った後、インク膜厚を測定し、平滑性を目視評価した。
【0115】厚みが薄く良好なものを◎、厚みはあるが高精細印字に問題ないものを○、厚みの下限のものを△、厚みが、使用不可レベルであるものを×。
【0116】
【表1】


【0117】
【表2】


【0118】
【発明の効果】実施例で実証した如く、本発明によるインクジェット記録方法、記録ユニット及びインクジェット記録装置は、インク保存安定性、にじみ耐性、印刷後の安定性(耐擦性など)、平滑性を向上し、記録媒体の変形を抑え、紙、プラスティックフィルム、金属等の記録媒体の種類(特にインク吸収性のない記録媒体)に関係なく良好な画像が得られ、且つ、安定した高精細な画像を印字でき、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット装置の一例の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の記録ユニットの一例を示す平面断面図である。
【図3】本発明の記録ユニットの一例を示す側面断面図である。
【図4】本発明の一例を示す記録ユニットの模式図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
14 流路
15 圧力室
16 ノズル
17 電極
18 圧電素子
19 インク室
20 キャップ
21 排気口
22 排気パイプ
23 排気ポンプ
P 圧パルス
B 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光重合性化合物、光重合開始剤及び色剤を含有するインク組成物に何らかの噴射エネルギーを付与することによりインク液滴を噴射させ画像形成し、記録媒体上に画像を定着した後、紫外線を照射するインクジェット記録方法であり、該インク組成物が重合禁止剤を100〜10,000ppm含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】 前記色剤が顔料であり、該顔料の添加量が全インク組成物に対して0.5〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】 前記顔料が分散体であり、且つ、分散体の平均分散粒径が200nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】 前記光重合開始剤を全インク組成物に対して0.1〜20質量%含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】 30℃におけるインク組成物の粘度が40〜500mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】 前記インク組成物を40〜150℃加熱した後、何らかの噴射エネルギーを付与することによりインク液滴を記録媒体上に噴射させ画像形成し、15〜40℃に保たれた記録媒体上に画像を定着した後、活性光線を付与することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】 照射する全紫外線量が10〜10000mJ/cm2であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】 インクジェット方式により形成したインク滴を記録媒体に付着させて記録することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】 インクジェット記録方式が、圧電体の圧電作用を利用する記録方式であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】 記録媒体がインク吸収性のないものであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】 インクを収容したインク収容部及びインクをインク滴として吐出するためのヘッド部を有する記録ユニットにおいて、請求項9又は10に記載のインクジェット記録方法を使用することを特徴とする記録ユニット。
【請求項12】 前記ヘッド部が圧電体の圧電作用を利用する方式によりインク吐出を行うことを特徴とする請求項11に記載の記録ユニット。
【請求項13】 前記請求項11又は12に記載の記録ユニットが紫外線を照射する手段を具備していることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−127518(P2003−127518A)
【公開日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−329202(P2001−329202)
【出願日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】