説明

インクジェット記録材料

【課題】フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性に優れ、塗布ムラのない、かつ生産性の高いインクジェット用記録材料及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】下塗り層を有する耐水性支持体上に少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録材料において、前記インク受容層が無機微粒子と、カルボキシ基、スルホ基、アセトアセチル基及び反応性ケトン基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーを含有し、前記下塗り層が前記水溶性樹脂バインダーの架橋剤と、部分ケン化の未変性ポリビニルアルコールとを含有することを特徴とするインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用記録材料に関し、更に詳しくは、フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性に優れ、インク受容層のひび割れや塗布ムラのない、かつ生産性の高いインクジェット用記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、紙やプラスチック樹脂フィルム等の支持体上にインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。インク受容層は2つのタイプに大別される。1つのタイプは、水溶性ポリマーを主成分とするインク受容層であり、もう一つのタイプは無機顔料と樹脂バインダーを主成分とするインク受容層である。
【0003】
前者のタイプのインク受容層は、水溶性ポリマーが膨潤することによってインクを吸収する。後者のタイプのインク受容層は、無機顔料によって形成された空隙にインクを吸収する。このようなインク吸収のメカニズムの違いから前者のタイプは膨潤タイプ(あるいはポリマータイプ)、後者のタイプは空隙タイプと呼ばれている。
【0004】
前者のポリマータイプのインク受容層は、連続的な均一な被膜となるので光沢に優れるが、インク吸収性(インク吸収速度:印字後の乾燥速度)が劣る。一方、後者の空隙タイプはインク吸収性は優れるが光沢が劣る。
【0005】
近年、インク吸収性と光沢の両方に優れる記録材料が要望されており、顔料として極微細な無機微粒子を使用した空隙タイプの記録材料が提案されている。例えば、平均二次粒子径500nm以下になるように粉砕・分散した気相法シリカや湿式法シリカ等の無機超微粒子をインク受容層の顔料成分として用いることが提案されている。例えば、特公平3−56552号、特開平10−119423号、特開2000−211235号、同2000−309157号公報に気相法シリカの使用例が、特開平9−286165号、同平10−181190号公報に粉砕沈降法シリカの使用例が、特開2001−277712号公報に粉砕ゲル法シリカの使用例が開示されている。また、特開昭62−174183号、特開平2−276670号、同平5−32037号、同平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。
【0006】
しかし、上記した極微細な無機微粒子を使用すると高い光沢が得られる反面、塗布乾燥時に乾燥ムラやひび割れ等の表面欠陥が発生しやすくなる。特に、高い光沢や良好な質感を得るためにポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の耐水性支持体を使用した場合、支持体がインクを吸収できないため、支持体上に設けられたインク受容層のインク吸収性が重要である。従って、インク受容層の空隙率及び空隙容量を高めるために、インク受容層は多量の顔料と低比率のバインダーで構成する必要があり、その結果、インク受容層の塗布・乾燥時に乾燥ムラ及びひび割れが益々発生しやすくなった。
【0007】
このような表面欠陥を防止するため、架橋剤を含むインク受容層の塗布液を支持体に塗布した後、乾燥を比較的穏やかな条件で行う方法が知られている。例えば、特開平10−119423号、特開2000−27093号、同2001−96900号公報等では、ポリビニルアルコールの架橋剤としてほう酸、ほう酸塩、ほう砂等のほう素化合物を用い、塗布液を塗布し一時冷却して塗布後の粘度を上昇させた後、比較的低温で乾燥する方法が開示されている。また、架橋剤としてアルデヒド系化合物やエポキシ化合物、イソシアナート類等も知られている。しかし、架橋性とインクジェット用記録材料としての諸特性を両立することが難しく、塗工・乾燥時の条件によってはしばしば塗膜に欠陥を生じ、少しの乾燥温度変化で塗布故障が顕著になる場合があった。また、膜質が剛直となるため記録材料を曲げたときに塗膜が割れる所謂折り割れ等の欠点がある。さらに、特に乾燥工程に長い時間が必要であるため、生産性を高くできないという問題点がある。
【0008】
一方、カルボキシ基、スルホ基、あるいはケト基を有する水溶性樹脂バインダーをインクジェット用記録材料に使用することが知られており、例えば特開2000−280600号(特許文献1)、同2001−72711号(特許文献2)、同2001−213045号(特許文献3)同2003−335043(特許文献4)に記載されている。
【0009】
しかしながら、上述したような従来から知られている記録材料は、高い光沢、高いインク吸収性、ひび割れが生じず、塗布ムラのないという品質面に加えて、生産性の向上をいう面で充分に満足するまでには至っていなかった。
【特許文献1】特開2000−280600号公報
【特許文献2】特開2001−72711号公報
【特許文献3】特開2001−213045号公報
【特許文献4】特開2003−335043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性に優れ、ひび割れの問題がなく、塗布ムラのない、かつ効率の良い生産が可能なインクジェット用記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は以下の発明によって達成された。
(1)耐水性支持体上に下塗り層とインク受容層とを有するインクジェット記録材料において、前記インク受容層が平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子とカルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーを含有し、前記下塗り層が前記水溶性樹脂バインダーの架橋剤と、部分ケン化の未変性ポリビニルアルコールとを含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
(2)前記架橋剤が、ジヒドラジド化合物及びジルコニウム塩の中から選ばれる少なくとも一種である上記(1)に記載のインクジェット記録材料。
(3)前記下塗り層が架橋剤としてジルコニウム塩を含有し、前記インク受容層が水溶性樹脂バインダーとしてケト基で変性されたポリビニルアルコールを含有し、更にホウ素化合物を含有する上記(1)に記載のインクジェット記録材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクジェット記録材料は、フォトライクな高い光沢を有し、インク受容層のひび割れがなく、かつインク吸収性に優れ、更に高い生産効率での製造を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のインク受容層に用いられる平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子としては、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種微粒子が挙げられるが、インク吸収性と生産性の点で非晶質合成シリカ、アルミナ又はアルミナ水和物が好ましい。
【0014】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0015】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0016】
本発明には、特に気相法シリカが好ましく使用できる。本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い光沢を得るためには、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nm(特に3〜10nm)でかつBET法による比表面積が200m2/g以上(好ましくは250〜500m2/g)のものを用いることである。尚、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0017】
本発明のインク受容層には、気相法シリカをカチオン性化合物の存在下で、該気相法シリカの平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは30〜300nm、更に好ましくは30〜200nmに分散したものが使用できる。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。尚、本発明でいう平均二次粒子径とは、得られた記録材料のインク受容層を電子顕微鏡で観察することにより、観察される分散された凝集粒子の粒子径の平均値を求めたものである。
【0018】
本発明では、平均二次粒子径が500nm以下になるように粉砕した湿式法シリカも好ましく使用できる。本発明に用いられる湿式法シリカ粒子としては、平均一次粒子径50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカ粒子が好ましく、これをカチオン性化合物の存在下で平均二次粒子径500nm以下、好ましくは30〜400nm、更に好ましくは30〜300nm程度まで微粉砕した湿式法シリカ微粒子を使用することが好ましい。
【0019】
通常の方法で製造された湿式法シリカは、1μm以上の平均凝集粒子径を有するため、これを微粉砕して使用する。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。この際、分散液の初期粘度上昇が抑制され、高濃度分散が可能となり、粉砕・分散効率が上昇してより微粒子に粉砕することができることから、吸油量が210ml/100g以下、平均凝集粒子径5μm以上の沈降法シリカを使用することが好ましい。高濃度分散液を使用することによって、記録用紙の生産性も向上する。吸油量は、JIS K−5101の記載に基づき測定される。
【0020】
本発明の平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず水中でシリカ粒子とカチオン性化合物を混合(添加はどちらが先であっても、また同時でも良い)しても良く、又それぞれの分散液あるいは水溶液を混合しても良く、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。シリカ予備分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。次に、より強い機械的手段を与えることによって、平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカ微粒子分散液が得られる。機械的手段としては公知の方法が採用でき、例えばボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用することができる。
【0021】
上記気相法シリカ及び湿式法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーを好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
【0022】
本発明に使用するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
【0023】
本発明のアルミナ水和物はAl23・nH2O(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロボキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
【0024】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ギ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
【0025】
本発明のインク受容層において、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子の含有量は、インク受容層の全固形分に対して50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上がより好ましく、特に65〜90質量%の範囲が好ましい。
【0026】
本発明において、インク受容層中に含まれる水溶性樹脂バインダーは、カルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂である。
【0027】
カルボキシ基を有する重合体は、例えばカルボキシ基を有する単量体の(共)重合により得られる。カルボキシ基を有する単量体として(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸 等が挙げられる。また、高分子反応により重合体中にカルボキシ基を付与してもよい。例えば、カルボン酸エステル基を有する単量体(例えば(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等)の(共)重合により得られる重合体を加水分解する方法、あるいはカルボン酸無水物(例えば、無水マロン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸など)を付加させる方法が挙げられる。が挙げられる。さらにカルボキシ基を有する重合体は、多糖類(例えば、アルギン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース等)あるいはゼラチン類を使用しても良い。好ましい重合体はカルボキシ基変性のポリビニルアルコールである。
【0028】
スルホ基を有する重合体は、スルホ基を有する単量体の(共)重合により得られる。スルホ基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸等が挙げられる。さらにスルホ基を有する水溶性樹脂として、多糖類を使用しても良く、その具体例としては、カラギーナン、アガロース等が挙げられる。好ましい重合体はスルホ基変性のポリビニルアルコールである。
【0029】
ケト基を有する水溶性樹脂バインダーは、ケト基を有するモノマーと他のモノマーを共重合する方法等により得られる。ケト基を有するモノマーの具体例としては、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクレート、4−ビニルアセトアセトアニリド、アセトアセチルアリルアミド等が挙げられる。また、ポリマー反応でケト基を導入してもよく、例えばヒドロキシ基やアミノ基とジケテンとの反応等によってアセトアセチル基を導入することができる。ケト基を有する水溶性樹脂バインダーの具体例としては、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性セルロース誘導体、アセトアセチル変性澱粉、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール、特開平10−157283号公報に記載の樹脂バインダー等が挙げられる。
【0030】
本発明では、特にケト基を有する変性ポリビニルアルコールが好ましい。ケト基を有する変性ポリビニルアルコールとしては、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0031】
アセトアセチル変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールとジケテンの反応等の公知の方法によって製造することができる。アセトアセチル化度は0.1〜20モル%が好ましく、更に1〜15モル%が好ましい。鹸化度は80モル%以上が好ましく、更に85モル%以上が好ましい。重合度としては、500〜5000のものが好ましく、特に1000〜4500のものが好ましい。
【0032】
ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールは、ジアセトンアクリルアミド−酢酸ビニル共重合体を鹸化する等公知の方法によって製造することができる。ジアセトンアクリルアミド単位の含有量としては、0.1〜15モル%の範囲が好まし く、更に0.5〜10モル%の範囲が好ましい。鹸化度としては85モル%以上、重合度としては500〜5000のものが好ましい。
【0033】
本発明ではカルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーに加えて、更に他の公知の樹脂バインダーを併用してもよい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉や各種変性澱粉、カゼイン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールや各種変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等を必要に応じて併用することができる。更に、バインダー樹脂として各種ラテックスを併用しても良い。
【0034】
この際光沢性の点で、カルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーと相溶性の高い水溶性樹脂バインダーを併用することが好ましい。ケト基を有する変性ポリビニルアルコールを使用する場合、完全または部分ケン化ポリビニルアルコール、またはカチオン変性ポリビニルアルコールが好ましく併用できる。特に、ケン化度が80%以上で、平均重合度200〜5000のものが好ましく使用できる。
【0035】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0036】
カルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダー(A)と他の水溶性樹脂バインダー(B)を併用する場合の比率(B/A)は、1/1以下が好ましく、1/2以下がより好ましい。
【0037】
水溶性樹脂バインダーの総含有量は、少ないほどインク受容層中の空隙容積が大きくなりインク吸収性が高くなる面で好ましいが、少なすぎるとインク受容層が脆弱となりひび割れ等の表面欠陥が多くなったり、光沢が低下するため、無機微粒子に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、特に10〜30質量%が好ましい。
【0038】
本発明において、下塗り層には、上述したカルボキシ基、スルホ基、またはケト基を有する水溶性樹脂バインダーの架橋剤を含有する。かかる架橋剤としては、下記の化合物が挙げられる。
【0039】
(1)ポリアミン類
脂肪族ポリアミン類;
・アルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)、
・ポリアルキレンポリアミン(例えば、ジエチレントリアミン、イミノビス(プロピルアミン)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど)、
・これらのアルキルまたはヒドロキシアルキル置換体(例えば、アミノエチルエタノールアミン、メチルイミノビス(プロピルアミン)など)
・脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン(例えば、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど)
・芳香環含有脂肪族アミン類(例えば、キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)
【0040】
C4〜C15の脂環式ポリアミン;
例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)等。
【0041】
C4〜C15の複素環式ポリアミン;
例えば、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノピペラジン等。
【0042】
C6〜C20の芳香族ポリアミン類;
・非置換芳香族ポリアミン(たとえば1,2−,1,3−および1,4−フェニレンジアミン、2,4´−および4,4´−ジフェニルメタンジアミン、ポリフェニルポリメチレンポリアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン,チオジアニリン,ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4´,4”−トリアミン、ナフチレンジアミンなど)
・核置換アルキル基(たとえばC1〜C4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミン(例えば、2,4−および2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン,4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、4,4´−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジン、3,3´,5,5´−テトライソプロピルベンジジン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトライソプロピル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラブチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3´−メチル−2´,4−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジイソプロピル−3´−メチル−2´,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジエチル−2,2´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン、3,3´,5,5´−テトライソプロピル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´,5,5´−テトライソプロピル−4,4´−ジアミノジフェニルスルホンなど)
【0043】
ポリアミドポリアミン;
例えば、ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類:(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量(例えば分子量200〜5000)ポリアミドポリアミンなど)
【0044】
ポリエーテルポリアミン;
例えば、分子量100〜5000のポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物など)
【0045】
(2)ジシアンジアミド誘導体;
ジシアンジアミド、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合物など。
【0046】
(3)ヒドラジン化合物;
ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ヒドラジンの無機塩類(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、チオシアン酸、炭酸などの無機塩類)、ヒドラジンの有機塩類(例えば、ギ酸、シュウ酸などの有機塩類)。
【0047】
(4)ポリヒドラジド化合物(ジヒドラジド、トリヒドラジド);
カルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等。
【0048】
(5)アルデヒド類;
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド等のモノアルデヒド、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、1,8−オクタンジアール、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、両末端アルデヒド化PVA等のジアルデヒド類、アリリデン酢酸ビニルジアセテート共重合体をケン化して得られる側鎖アルデヒド含有共重合体、ジアルデヒド澱粉、ポリアクロレイン等。
【0049】
(6)メチロール化合物;
メチロールホスフィン、ジメチロール尿素、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、尿素樹脂初期重合物、メラミン樹脂初期重合物等。
【0050】
(7)活性化ビニル化合物;
ジビニルスルホン系化合物、β−ヒドロキシエチルスルホン系化合物等。
【0051】
(8)エポキシ化合物;
エピクロルヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ又はトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、ポリエポキシ化合物等。
【0052】
(9)イソシアネート系化合物;
トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス−4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
(10)フェノール系化合物;
フェノール系樹脂初期縮合物、レゾルシノール系樹脂等。
【0054】
(11)多価金属塩;
・ジルコニウム塩(硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、フッ化ジルコニウム化合物等)
・チタン塩(4塩化チタン、乳酸チタン、テトライソプロピルチタネート等)
・アルミニウム塩(塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム等)
・カルシウム塩(塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等)
・マグネシウム塩(塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等)
・亜鉛塩(塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等)
【0055】
インク受容層に含有する水溶性樹脂バインダーが、カルボキシ基またはスルホ基を有する水溶性樹脂の場合、好ましい架橋剤としては、ポリアミン類、ヒドラジン化合物、ポリヒドラジド化合物、メチロール化合物、エポキシ化合物、多価金属塩が挙げられる。
【0056】
インク受容層に含有する水溶性樹脂バインダーが、ケト基を有する水溶性樹脂の場合、好ましい架橋剤としては、ポリアミン類、ポリヒドラジド化合物、多価金属塩が挙げられる。特に好ましい架橋剤は、ポリヒドラジド化合物、及び多価金属塩であり、ポリヒドラジド化合物の中でも特にジヒドラジド化合物が好ましく、更にアジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドが好ましい。多価金属塩としては、特にジルコニウム塩が好ましく、更に、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウムが好ましい。
【0057】
下塗り層における架橋剤の含有量は、インク受容層に含有する上述した水溶性樹脂バインダーに対して、0.1〜50質量%の範囲が好ましく、特に1〜20質量%の範囲が好ましい。
【0058】
本発明のインクジェット記録材料には、支持体として耐水性支持体が用いられる。本発明の下塗り層は、耐水性支持体(プラスチック樹脂フィルム支持体やポリオレフィン樹脂被覆紙支持体)に予め設けられるサブコート層(インク受容層との接着強化のための下引き層)を兼ねるものであってもよい。
【0059】
本発明の下塗り層は、部分ケン化の未変性ポリビニルアルコールを含有する。該ポリビニルアルコールのケン度は、80〜95%の範囲が好ましく、平均重合度は500〜5000の範囲が好ましい。
【0060】
インク受容層の塗布液を下塗り層上に塗布する場合、下塗り層とインク受容層との相性が塗布安定性に影響する場合がある。即ち、インク受容層に上述したカルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーを用いた場合、下塗り層に部分ケン化の未変性ポリビニルアルコールを用いると安定して塗布ができる。下塗り層中における部分ケン化の未変性ポリビニルアルコールの含有量は、0.02〜2g/m2の範囲が好ましく、0.05〜1.5g/m2の範囲がより好ましく、特に0.1〜1g/m2の範囲が好ましい。
【0061】
本発明では、下塗り層及びインク受容層に他の公知の硬膜剤を使用してもよい。例えば、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、あるいは、ほう酸、ほう酸塩、ほう砂の如きホウ素化合物等が使用できる。
【0062】
本発明の下塗り層とインク受容層との関係において好ましい態様を以下に説明する。
1)インク受容層が水溶性樹脂バインダーとしてケト基を有する変性ポリビニルアルコールを含有し、下塗り層が架橋剤としてポリヒドラジド化合物を含有する。
2)下塗り層が架橋剤としてジルコニウム塩を含有し、インク受容層が水溶性樹脂バインダーとしてケト基を有する変性ポリビニルアルコールを含有し、かつホウ素化合物を含有する。
【0063】
下塗り層には、界面活性剤、水溶性バインダーの硬膜剤、pH調整剤、防腐剤等を含有することができる。
【0064】
本発明のインクジェット記録材料を得るために下塗り層を設けた支持体上にインク受容層を塗布する。塗工液を塗布後、加熱してゲル化させてから乾燥することによって、より光沢が高くインク吸収性が良好なインクジェット用記録材料を得ることができる。また、高温で乾燥できることから、ポリビニルアルコールとほう酸を使用し、低温でゲル化させた後比較的穏やかな条件で乾燥する製造方法と比較して高い生産性が得られる。
【0065】
下塗り層に含有する架橋剤は、インク受容層の塗布乾燥時にその多くがインク受容層に拡散する。従って、本発明のインクジェット記録材料は、インク受容層の塗布液を架橋剤を含有する下塗り層を持つ耐水性支持体上に塗布して得られたものである。
【0066】
インク受容層の塗工液を塗布後加熱する方法としては、高温空気中を通過させる方法、ヒートロールに密着させる方法、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置等を用いる方法等が使用できる。加熱温度としては、カルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーの使用量等の塗工液組成によるが、塗工液が水系である場合には、30〜100℃が好ましく、特に40〜95℃の範囲が好ましい。ケト基とアミノ基の反応は比較的速やかに進行し、特にケト基とヒドラジンやヒドラジド基との反応は速やかに進行するため、また生産性の面から、加熱時間としては1秒〜10分が好ましく、更に5秒〜5分が好ましい。
【0067】
本発明のインク受容層の乾燥塗布量としては、インク吸収性、インク受容層の強度、及び生産性の面で、無機微粒子の固形分として8〜40g/m2の範囲、特に10〜30g/m2の範囲が好ましい。
【0068】
本発明において、インクジェット用記録材料には、少なくとも1つの上記インク受容層に加え、さらに他の構成のインク吸収層、あるいは保護層等の他の機能を有する層を設けてもよい。
【0069】
本発明において、インク受容層にはカルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーの架橋剤は含有しないのが好ましい。特に、架橋剤としてジヒドラジド化合物はインク受容層には含有しないのが好ましい。ジヒドラジド化合物は、ケト基を有する樹脂バインダー、特にアセトアセチル変成ポリビニルアルコールとの反応速度が速いので塗布液中に凝集物が出来やすく、従ってインク受容層にジヒドラジド化合物は含有しない方が、生産安定性の面で好ましい。
【0070】
本発明において、各層のインク受容層には、更に界面活性剤、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0071】
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の耐水性支持体が用いられる。耐水性支持体の中でも特にポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましい。これらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
【0072】
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0073】
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
【0074】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【実施例1】
【0075】
《記録シート1》
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100部の樹脂に対して、10部のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆して、インク受容層塗設面側の樹脂層を形成した。もう一方の面には、密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0076】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下塗り層をバインダー(ゼラチン)が0.3g/m2となるように塗布乾燥した。
【0077】
<下塗り層1>
ゼラチン 100部
界面活性剤 2部
(スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩)
【0078】
<シリカ分散液1>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m2/g)100部を添加し予備分散液を作成した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20%のシリカ分散液1を製造した。
【0079】
<インク受容層塗工液1>
シリカ分散液1と水に溶解した他の薬品を混合して下記組成のインク受容層用塗工液1を、固形分濃度が8.5%になるように調整した。
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
ポリビニルアルコール 20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 4部
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0080】
上記のインク受容層塗工液1を、上記支持体の下塗り層上にシリカ粒子の塗布量が23g/m2になるように、スライドビード塗布方式で塗布し、先ず80℃で15秒間加熱し、次いで70℃の空気を吹き付けて乾燥した。
【0081】
《記録シート2》
上記インク受容層用塗工液1を下記のインク受容層用塗工液2に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート2を得た。
<インク受容層塗工液2>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール 20部
(アセトアセチル化度3%、ケン化度98%、平均重合度2500)
ほう酸 4部
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0082】
《記録シート3》
上記インク受容層用塗工液1を下記のインク受容層用塗工液3に変更し、下塗り層1を下記の下塗り層の組成2に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート3を得た。
<下塗り層2>
ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
アジピン酸ジヒドラジド 150部
【0083】
<インク受容層塗工液3>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール 20部
(アセトアセチル化度3%、ケン化度98%、平均重合度2500)
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0084】
《記録シート4》
上記インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液3に変更し、下塗り層1を下記の下塗り層3に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート4を得た。
<下塗り層3>
ポリビニルアルコール 100部
(ケン化度99%、平均重合度500)
アジピン酸ジヒドラジド 150部
【0085】
《記録シート5》
上記インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液3に変更し、下塗り層1を下記の下塗り層4に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート5を得た。
<下塗り層4>
ポリビニルアルコール 100部
(ケン化度88%、平均重合度500)
アジピン酸ジヒドラジド 150部
【0086】
《記録シート6》
上記インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液3に変更し、下塗り層1を下記の下塗り層5に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート6を得た。
<下塗り層5>
ポリビニルアルコール 100部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
アジピン酸ジヒドラジド 150部
【0087】
《記録シート7》
上記インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液3に変更し、下塗り層1を下記の下塗り層6に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート7を得た。
<下塗り層6>
ポリビニルアルコール 100部
(ケン化度80%、平均重合度500)
アジピン酸ジヒドラジド 150部
【0088】
《記録シート8》
上記インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液3に変更し、下塗り層1を下記下塗り層7に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート8を得た。
<下塗り層7>
ポリビニルアルコール 100部
(ケン化度80%、平均重合度500)
オキシ塩化ジルコニウム 150部
【0089】
《記録シート9》
上記インク受容層用塗工液1を下記インク受容層用塗工液4に変更し、下塗り層1を下塗り層7に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート9を得た。
<インク受容層塗工液4>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール 20部
(アセトアセチル化度3%、ケン化度98%、平均重合度2500)
ほう酸 2部
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0090】
《記録シート10》
上記インク受容層用塗工液1を下記インク受容層用塗工液5に変更し、下塗り層1を下記下塗り層8に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート10を得た。
<インク受容層塗工液5>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
カルボキシ基変性PVA 20部
(ケン化度85〜90%、平均重合度1800)
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
<下塗り層8>
ポリビニルアルコール 100部
(ケン化度80%、平均重合度500)
アジピン酸ジヒドラジド 83部
オキシ塩化ジルコニウム 67部
【0091】
《記録シート11》
上記インク受容層用塗工液1を下記インク受容層用塗工液6に変更し、下塗り層1を下塗り層8に変更した以外は記録シート1と同様にして記録シート11を得た。
<インク受容層塗工液6>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
スルホ基変性PVA 20部
(ケン化度43.5〜49.5%)
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0092】
得られた各々のインクジェット記録シートについて下記の評価を行った。下塗り層のバインダーと架橋剤、インク受容層のバインダーの組み合わせを表1に、その評価結果を表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
架橋剤
ADH: アジピン酸ジヒドラジド(0.45g/m2
ZrO2: オキシ塩化ジルコニウム(0.45g/m2
ADH+ZrO2: (0.25+0.20g/m2
インク受容層バインダー
A: ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500)
B: アセトアセチル変性ポリビニルアルコール
(アセトアセチル化度3%、ケン化度98%、平均重合度2500)
C: カルボキシ基変性PVA(ケン化度85〜90%、平均重合度1800)
D: スルホ基変性PVA(ケン化度43.5〜49.5%)
【0095】
【表2】

【0096】
<塗布ムラの評価>
塗布・乾燥した下塗り層、及びインク受容層の塗布ムラを観察し以下の基準で評価した。
○:塗布ムラが全くなく、均一な塗布面である。
△:目視では判別し難いくらいの塗布ムラが発生している。
×:塗布ムラが全面に発生している。
【0097】
<塗布面のひび割れの評価>
塗布・乾燥したインク受容層の塗布面を観察し、以下の基準で評価した。
○:ひび割れが全くなく、均一な塗布面である。
△:塗布ムラが部分的にわずかに発生しているが大きく目立たない。
×:目視で明らかに判別できる大きなひび割れが発生している。
【0098】
<白紙部光沢性>
記録シートの印字前の白紙部光沢感を斜光で観察し、下記の基準で評価した。
◎:カラー写真並の高い光沢感が有る。
○:◎よりわずかに劣るが高い光沢感が有る。
△:少し光沢感が有る。
×:光沢感が無い。
【0099】
<インク吸収性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM−950C)にてレッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。下記の基準で評価した。
○:転写しない。
△:印字部全体に薄い転写が観察される。
×:印字部全体に濃い転写が観察される。
【0100】
上記結果より、本発明により、高光沢で、インク吸収性に優れるインクジェット用記録材料を効率良く生産することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性支持体上に下塗り層とインク受容層とを有するインクジェット記録材料において、前記インク受容層が平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と、カルボキシ基、スルホ基、及びケト基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する水溶性樹脂バインダーを含有し、前記下塗り層が前記水溶性樹脂バインダーの架橋剤と、部分ケン化の未変性ポリビニルアルコールとを含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【請求項2】
前記架橋剤が、ジヒドラジド化合物及びジルコニウム塩の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のインクジェット記録材料。
【請求項3】
前記下塗り層が架橋剤としてジルコニウム塩を含有し、前記インク受容層が水溶性樹脂バインダーとしてケト基で変性されたポリビニルアルコールを含有し、更にホウ素化合物を含有する請求項1に記載のインクジェット記録材料。