説明

インクジェット記録材料

【課題】 発色性、インク吸収性、光沢性、生産性がよいインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】 支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層が表面を遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録材料に関し、詳しくは製造時に発色性に優れ、インク吸収性の低下がなく、光沢性に優れたインクジェット記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェット記録材料(以下、単に記録材料ともいう)に光沢を付与する方法としては、スーパーカレンダー等の装置を用い、圧力や温度をかけたロール間に通紙することによって塗工層表面を平滑化する方法(カレンダー仕上げ)が知られている。
【0003】
しかし、カレンダー仕上げにより得られる記録材料は、光沢度が不十分であるうえに、塗工層の空隙が減少してしまうため、インク吸収性が低下し、結果として印字のにじみを生じやすくなるという問題を有している。
【0004】
このようなカレンダー仕上げの他に、光沢度を向上させるために、光沢を有する平滑なプラスティックフィルムまたは樹脂被覆紙の表面に、澱粉、ゼラチン、水溶性セルロース樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、変性ポリウレタン等のインク吸収性樹脂によるインク受容層を設ける方法も数多く提案されている。
【0005】
しかし、このような方法で得られる記録材料は、ある程度の光沢度は得られるものの、インク吸収性は十分ではなく、インクの乾燥も遅いために、ハンドリングが悪く、インクの吸収ムラが発生しやすく、耐水性やカールも劣るという問題がある。
【0006】
例えば、特許文献1〜5等においては、平均粒子径の小さなコロイダルシリカなどの超微粒子顔料を主成分とした塗工層を設ける方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法により得られる記録材料は、ある程度の光沢は有しているものの、超微粒子顔料を使用しているために、塗工層に十分な空隙が形成されず、依然として、満足できるインク吸収性は得られなかった。
【0008】
また、特許文献4では、支持体に近い方から、一次粒子の平均粒径が50nm以下の気相法による合成シリカを含有する層及びコロイダルシリカを含有する層を少なくとも有するインクジェット記録用シートが提案されている。しかしながら、光沢性、耐擦傷性は向上するが、コロイダルシリカのような一次粒子体は空隙率が低くなるため、インク吸収性が低下しやすい。インク吸収性を持たせるために塗布量を低下させると、干渉縞を生じて光沢面の品質が低下したり、十分な光沢性が得られない。
【0009】
また、特許文献5では、支持体上に、該支持体に近い側から、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の気相法による合成シリカを含有する層とカチオン性コロイド粒子を含有する層とを少なくとも有するインクジェット記録用シートが提案されている。カチオン性コロイド粒子を用いることにより、印画後の画像の経時による滲み及び耐水性が改善されるものの、特許文献4と同様に、インク吸収性が低下する問題がある。
【0010】
つまり、特許文献1〜5等には、インク吸収速度をなるべく低下させずに光沢性を向上するための方法については何ら記載されていない。
【0011】
その他に光沢を付与する方法として、鏡面を有する加熱した光沢ロールに湿潤塗工層を圧着させ、乾燥することにより、その鏡面を写し取ることによって得られる、いわゆるキャスト塗工法が知られている(例えば、特許文献6及び7参照)。
【0012】
また、キャスト塗工紙においては、湿潤した塗料を光沢ロールに接触させて乾燥するため、塗料中の水分が蒸気となって裏面に抜けることが必要である。そのため、樹脂被覆紙やフィルムのような、著しく透気性の低い支持体を使用すると、蒸気が塗工層内部に滞留する。蒸気の体積は、蒸発前の水の体積と比較し、非常に大きいため、逃げ場のなくなった蒸気は支持体を持ち上げる。そのときに、塗工層の最も弱い部分が破壊される。
【0013】
例えば、加熱した鏡面仕上げの光沢ロールに対する塗料の接着が弱い場合は、塗工層と光沢ロールの界面で剥離し、光沢ロールの鏡面を十分に写し取ることができず、いわゆる密着不良という現象を引き起こす。一方、光沢ロールと塗料との接着力より未乾燥の塗工層の方が弱い場合は、塗工層内部で破断するため、塗工層の一部が光沢ロールの表面に残り、光沢ロール汚れを引き起こす。どちらの場合も美しいキャスト面を形成することが不可能であり、品質上、操業上のトラブルとなる。
【0014】
キャスト法は、写真品質を有する樹脂被服紙に適用することができず、また塗工層の多孔性が失われてインク吸収性の大幅な劣化を招きやすい。
【0015】
したがって、樹脂被覆紙やフィルムのような、低透気性又は非透気性の支持体を使用してキャスト塗工紙を得ることには非常に大きな困難が伴うものである。
【0016】
本発明者らは遷移金属化合物を用いることによって、発色性、インク吸収性を低下させることなく、光沢性を向上させることが可能であることを発見した。インクジェット記録材料に遷移金属化合物を適用した例としては、特許第2673840号、特開2001−10212号公報、特開2001−270225号公報が知られている。しかし、いずれの先行文献においても光沢性には全く触れられていない上、次のような欠点を抱え、実用に供するものではなかった。
【0017】
遷移金属酸化物微粒子を用いた場合、塗工層の空隙が減少してしまいインク吸収性が低下しやすい。また微粒子の屈折率が大きいため塗工層表面の光散乱が著しく増大するために発色性も低下しやすい。また遷移金属酸化物微粒子は硬度の高いものが多く、生産設備の磨耗・消耗が激しく、生産性を劣化させやすい。
【0018】
不定形シリカで被覆した遷移金属酸化物微粒子は、遷移金属酸化物が表面に露出していないため、遷移金属酸化物の光学特性を利用することができず光沢性が不十分であり、また不定形シリカの特性により塗工層の空隙が不十分なため、インク吸収性が低下しやすい。
【特許文献1】特開平2−274587号公報
【特許文献2】特開平8−67064号公報
【特許文献3】特開平8−118790号公報
【特許文献4】特開2000−37944号公報
【特許文献5】特開2001−353957号公報
【特許文献6】米国特許第5275846号明細書
【特許文献7】特開平7−89220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、発色性、インク吸収性、光沢性、生産性がよいインクジェット記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0021】
(請求項1)
支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、前記インク受容層が表面を遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【0022】
(請求項2)
前記遷移金属化合物が遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録材料。
【0023】
(請求項3)
前記遷移金属化合物がTi、Zr、Zn、SbおよびPbから選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録材料。
【0024】
(請求項4)
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子は、遷移金属原子(M)とSi原子のモル比(M/Si)が、0.001以上0.3以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【0025】
(請求項5)
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子は、該シリカ粒子が気相法シリカであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【0026】
(請求項6)
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子は、該シリカ粒子の平均粒径が20nm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【0027】
(請求項7)
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子が、前記インク受容層の全体の厚みの表面から50%以上表層側に存在することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【0028】
(請求項8)
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子の存在するインク受容層が、前記シリカ粒子とポリビニルアルコールまたはその誘導体からなることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、発色性及び光沢度の低下なく、インク吸収性を向上させることが可能なインクジェット記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。はじめに、本発明に係る遷移金属化合物について説明する。
【0031】
本発明に係る遷移金属化合物発色性、色調、光沢性、インク吸収性等の観点から、チタン、ジルコニウム、亜鉛、アンチモン、鉛の化合物であることが好ましく、また2種以上の化合物を併用することも好ましい。中でも、色調、光沢、環境適性等の観点からチタンもしくはジルコニウムの化合物であることが特に好ましい。
【0032】
本発明の遷移金属化合物は、シリカ表面において単一の金属酸化物及び複合酸化物、無機酸や有機酸の単塩及び複合塩、有機金属化合物、金属錯体等任意の形態で存在することができるが、シリカと化学的な結合を形成して存在することが好ましい。特に、シリカ表面のシラノール基と結合して、単一の金属酸化物もしくは複合酸化物を形成して存在する形態が発色性、インク吸収性、製造安定性等の観点から好ましい。
【0033】
本発明に用いることのできる遷移金属化合物としては、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、金属アシレートなどの金属有機化合物、硝酸塩、オキシ塩化物、塩化物などの金属無機化合物、金属酸化物微粒子などが好ましく用いられるが、これら以外の化合物を用いることもできる。また、2種以上の遷移金属を併用する場合など、二金属アルコキシドも好ましく用いられる。
【0034】
本発明に用いることのできる遷移金属化合物の具体例としては、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、四塩化チタン等のチタン化合物、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、塩化ジルコニル等のジルコニウム化合物、ジエトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、酢酸亜鉛二水和物、乳酸亜鉛三水和物等の亜鉛化合物、トリエトキシアンチモン、トリイソプロポキシアンチモン、三塩化アンチモン等のアンチモン化合物、テトラノルマルプロポキシ鉛、テトラノルマルブトキシ鉛、酢酸鉛三水和物等の鉛化合物などを用いることができるが、これら以外の化合物を用いることもできる。
【0035】
本発明においては、遷移金属化合物は遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が0.0001以上1.0以下となるように用いることが好ましく、特に0.001以上0.3以下となるように用いることが好ましい。遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が小さくなるとシリカ表面を十分に遷移金属化合物で被覆しきれなくなり光沢度を向上させる効果が発現しにくく、遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が大きくなると必要以上にインク受容層内で光が乱反射して発色性が劣化したり、インク受容層の空隙率が低下してインク吸収性が劣化しやすくなり好ましくない。
【0036】
遷移金属化合物をシリカ粒子表面に被覆する方法としては、シリカ粒子製造後に上記遷移金属化合物を反応させ、乾燥後焼成する方法、塗工液作成時に反応性の遷移金属化合物を添加し被覆する方法、該遷移金属化合物を含まないシリカ含有塗工液を塗工し、乾燥前後に該金属化合物含有液を塗工する方法など、任意の方法を用いることができる。中でも、該遷移金属化合物で被覆したシリカの存在位置を自由に制御できる点で、シリカ粒子製造後に上記遷移金属化合物を反応させ乾燥後焼成する方法、塗工液作成時に反応性の遷移金属化合物を添加し被覆する方法など、塗工前にシリカ粒子表面を遷移金属化合物で被覆する方法が特に好ましい。

前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子は、インク受容層の全体の厚みの表面から50%以上表層側に存在することが好ましい。さらに高いインク吸収性を得るため、25%以上表層側に存在させることが最も好ましい。
【0037】
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に親水性バインダーと無機顔料を含有する多孔質インク受容層を形成する水溶性塗布液を塗布し、空隙を有する多孔質インク受容層を形成したものである。本発明に係る多孔質インク受容層は、主に微粒子と親水性バインダーから形成される。多孔質インク受容層を形成する微粒子としては、無機顔料や有機顔料を用いることができ、異なる種類の微粒子を組み合わせて使用することもできるが、高光沢でかつ高発色濃度が得られ、更に微細顔料が容易に得やすいことから無機顔料が利用される。このような無機顔料としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。上記無機顔料は1次粒子のまま用いても、また2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0038】
本発明においては、インクジェット記録用紙で高品位なプリントを得る観点から、無機顔料として、シリカまたはアルミナが好ましく、更にはアルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカもしくは気相法により合成された微粒子シリカが好ましく、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がアルミニウムで修飾されたものであっても良い。表面がアルミニウムで修飾された気相法シリカのアルミニウム含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0039】
上記無機顔料の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下であれば光沢性及び発色性は概ね良好であり、その観点から200nm以下のシリカ粒子が好ましい。更には20nm以下のシリカが最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機顔料の製造上の観点から、概ね3nm以上、特に5nm以上が好ましい。
【0040】
上記無機顔料の平均粒径は、多孔質インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0041】
上記微粒子は、1次粒子のままであるいは2次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質皮膜に存在していても良いが、上記平均粒径は、電子顕微鏡で観察した時に多孔質インク受容層中で独立の粒子を形成しているものの粒径をいう。
【0042】
上記顔料の水溶性塗布液における含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。上記顔料は、十分なインク吸収性があり、皮膜のひび割れ等が少ないインク吸収層を形成する必要があり、インク受容層中には、5〜50g/m2の付き量になることが好ましい。更には、10〜25g/m2になることが特に好ましい。
【0043】
多孔質インク受容層に含有される親水性バインダーとしては、特に制限は無く、従来公知の親水性バインダーを用いることができ、例えばゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0044】
ポリビニルアルコールは、無機顔料と相互作用を有しており、無機顔料に対する保持力が特に高く、更に吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0045】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜5000のものが好ましく用いられる。ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.8%のものが特に好ましい。
【0046】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されるような、第1〜3級アミノ基や第4級アミノ基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0047】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−メチルビニルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0048】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0049】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平1−206088号公報に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、および特開平7−285265号公報に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0050】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平7−9758号公報に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0051】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなどの2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め無機顔料に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
【0052】
多孔質インク受容層の親水性バインダーに対する無機顔料の比率は、質量比で2〜20であることが好ましい。質量比が2倍以上であれば、充分な空隙率の多孔質膜が得られ、充分な空隙容量を得やすくなり、維持できる親水性バインダーによるインクジェット記録時の膨潤によって空隙を塞ぐ状況を招かず、高インク吸収速度を維持できる要因となる。一方、この比率が20倍以下であれば、多孔質インク受容層を厚膜で塗布した際、ひび割れが生じにくくなる。特に好ましい親水性バインダーに対する無機顔料の比率は2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0053】
本発明の記録用紙のインク受容層中に表面がアニオン性である微粒子を使用する場合には、画像の耐水性や耐にじみ性を改良する点から染料に定着性を有する第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有させることが好ましい。
【0054】
カチオン性ポリマーとしては公知のポリマーを使用することができ、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン、ジアルキルアミンとエピクロロヒドリンの縮合物、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ジアリルジメチルアンモニウム塩の縮合物、ポリアクリル酸エステルの4級化物等が挙げられるが、特に、特開平10−193776号公報、同10−217601号公報、同11−20300号公報等に記載されているものが好ましい。
【0055】
本発明においては、カチオン性ポリマーは特に限定なく使用可能であるが、特に好ましいものは、質量平均分子量が2000〜10万のものである。
【0056】
ポリマー媒染剤としては第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー媒染剤が好ましい。
【0057】
本発明に好ましく用いられるカチオン性ポリマーは、より好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するポリマーであり、特に好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体または他の共重合し得る1または2以上のモノマーとの共重合体である。
【0058】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの例としては例えば以下の例を挙げることが出来る。
【0059】
【化1】

【0060】
【化2】

【0061】
第4級アンモニウム塩基と共重合し得るモノマーはエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば以下の具体例を挙げることが出来る。
【0062】
【化3】

【0063】
以下に本発明に好ましく用いられるカチオン性ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
【化4】

【0065】
【化5】

【0066】
【化6】

【0067】
【化7】

【0068】
特に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが共重合体である場合、カチオン性モノマーの比率は通常10モル%以上、好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。
【0069】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーは単一でも2種類以上であっても良い。
【0070】
第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーは第4級アンモニウム塩基のために水溶性が一般に高いが、共重合する第4級アンモニウム塩基を含まないモノマーの組成や比率によっては水に充分に溶解しないことがあるが、水混和性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解させることにより溶解し得るもので有れば本発明には使用できる。
【0071】
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して通常10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0072】
ここで質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリエチレングリコール値に換算した値である。
【0073】
カチオン性ポリマーの溶液を、表面アニオン性の微粒子含有分散液に添加する際、凝集物が激しく発生してしまうことがあり得るが、カチオン性ポリマーの質量平均分子量が10万以下の場合にはこのような現象が起こりにくく、従って、粗大粒子をあまり含まない、ほぼ均一な分散液が得られ易い。このような分散液を使用して作製したインクジェット記録用紙には、優れた光沢性が期待できるのである。同様の観点から、上記質量平均分子量は5万以下であると更に好ましい。
【0074】
質量平均分子量の下限は染料の耐水性の点から通常2000以上である。
【0075】
上記微粒子とカチオン性ポリマーの比率は、微粒子の種類や平均粒径又はカチオン性ポリマーの種類や質量平均分子量で変わり得ることができ、本発明においては、上記比率は微粒子の表面がカチオン性に置き換わって安定化させる為に、1:0.01〜1:1であることが好ましい。
【0076】
上記の範囲であれば、微粒子のアニオン成分がカチオン成分によって完全に被覆されるので、微粒子のアニオン部分とカチオン性ポリマーのカチオン部分とがイオン結合して粗大な粒子を形成するようなおそれも生じない。
【0077】
カチオン性ポリマーの添加量は無機微粒子1に対して質量比で通常0.01〜0.3であり、特に、0.05〜0.2が好ましい。
【0078】
無機微粒子としては、表面がカチオン性であり染料定着性を有する無機微粒子が好ましい。表面がカチオン性である無機微粒子としては、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ、およびアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等を用いることができる。
【0079】
また、本発明のインクジェット記録用紙は画像の耐水性や、耐湿性を改良するため、多価金属イオンを含有させることが好ましい。多価金属イオンは2価以上の金属イオンであれば特に限定されるものでは無いが、好ましい多価金属イオンとしては、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオン、チタニウムイオン等が挙げられる。
【0080】
これらの多価金属イオンは、水溶性または非水溶性の塩の形態でインク受容層に含有させることができ、公知のいずれの化合物を使用することもできる。
【0081】
これらの多価金属イオンは、単独で用いても良いし、異なる2種以上を併用してもよい。多価金属イオンを含む化合物は、インク受容層を形成する塗布液に添加してもよいし、あるいは多孔質インク受容層を一旦塗布乾燥した後、インク受容層にオーバーコート法により塗設してもよい。前者の多価金属イオンを含む化合物をインク受容層を形成する塗布液に添加する場合、水や有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に均一に溶解して添加する方法、あるいはサンドミルなどの湿式粉砕法や乳化分散などの方法により微細な粒子に分散して添加する方法を用いることができる。インク受容層が複数の層から構成される場合には、1層のみ添加してもよく、また2層以上の層、あるいは全ての構成層の塗布液に添加することもできる。また、後者の多孔質インク受容層を一旦形成した後、オーバーコート法で添加する場合には、多価金属イオンを含む化合物を溶媒に均一に溶解した後、インク受容層に供給するのが好ましい。
【0082】
これらの多価金属イオンは、記録用紙1m2当り、概ね0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
【0083】
本発明のインクジェット記録用紙は、多孔質空隙層を形成する親水性バインダーの硬化剤を添加することが好ましい。本発明で用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダーと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0084】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0085】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0086】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。
【0087】
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダー1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0088】
本発明に用いる支持体は従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもよいが、非吸水性支持体であることが好ましい。
【0089】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。又、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0090】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0091】
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。又、必要に応じて抄紙段階または抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0092】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体または不透明支持体がある。透明支持体としてはポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、50μm〜200μmが好ましい。
【0093】
また、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0094】
前記各種支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明のインクジェット記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0095】
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0096】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0097】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0098】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0099】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0100】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0101】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0102】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0103】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0104】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0105】
特にインク吸収層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
【0106】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、又、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0107】
上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0108】
本発明のインクジェット記録媒体には、各種の添加剤を添加することが出来る。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号の各公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等の各公報に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等の各公報に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0109】
インクジェット記録媒体の製造方法としては、インク吸収層を含む各構成層を、各々単独にあるいは同時に、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号の各明細書に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0110】
同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0111】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0112】
塗布および乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましい。塗布液調製時、塗布時及び乾燥時おいて、表層に含まれる熱可塑性樹脂が製膜しないように、該熱可塑性樹脂のTg以下の温度で塗布液の調製、塗布、乾燥することが好ましい。より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0113】
また、その製造過程で35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する工程を有することが好ましい。
【0114】
加温条件は、35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する条件であれば特に制限はないが、好ましい例としては、例えば、36℃で3日〜4週間、40℃で2日〜2週間、あるいは55℃で1〜7日間である。この熱処理を施すことにより、水溶性バインダーの硬化反応の促進、あるいは水溶性バインダーの結晶化を促進することができ、その結果、好ましいインク吸収性を達成することができる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中に記載の「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0116】
実施例1
《記録材料の作製》
[記録材料1の作製]
〔シリカ分散液S−1の調整〕
あらかじめテトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を18.92g溶解させたイソプロパノールに、あらかじめ均一に分散されている、一次粒子の平均粒径が約0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を30%含有するシリカ分散液B1(pH2.6、エタノール0.5%含有)の1200g加え、30℃で40時間攪拌した。これを、カチオン性ポリマー分散剤P−1を12%、n−プロパノールを10%及びエタノールを2%、硼酸を4.61g、硼砂を3.46g含有する水溶液C−1(pH2.5、サンノプコ社製の消泡剤SN−381を60g含有)の330gに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。
【0117】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で仕上げて、シリカ含有量15%のほぼ透明なシリカ分散液S−1を得た。
【0118】
〔塗布液T−1の調整〕
得られたシリカ分散液S−1 3000gに、ポリビニルアルコール((株)クラレ製:PVA235)8%水溶液1125gを攪拌しながら徐々に添加し、純水で4500gに仕上げ、塗布液T−1を得た。
【0119】
得られた塗布液T−1をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0120】
〔記録材料1の作製〕
次いで、上記調製した塗布液T−1を、厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(インク受容層側のポリエチレン中の8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有;インク受容層面側に0.05g/m2のゼラチン下引き層、反対側にTgが約80℃のラテックス性ポリマーをバック層0.2g/m2として有する)に、シリカの付き量で18g/m2となるように塗布し、乾燥して記録材料1を得た。
【0121】
[記録材料2の作製]
前記記録材料1を作製中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりにジルコニウムノルマルブチレート(Zr(OC494)を25.53g用いた以外は同様の手順で記録材料2を作製した。
【0122】
[記録材料3の作製]
前記記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに酢酸亜鉛二水和物を14.61gを用いた以外は記録材料1の作製と同様の手順で記録材料3を作製した。
【0123】
[記録材料4の作製]
前記記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに酢酸鉛三水和物25.24gとテトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gを用いた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料4を作製した。
【0124】
[記録材料5の作製]
前記記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに三塩化アンチモンを15.18gを用いた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料5を作製した。
【0125】
[記録材料6の作製]
前記記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに株式会社マツモト交商製TC−310を17.56gを用いた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料6を作製した。
【0126】
[記録材料7の作製]
前記記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに株式会社マツモト交商製TC−400を32.61gを用いた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料7を作製した。
【0127】
[記録材料8の作製]
前記記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに味の素ファインテクノ(株)製プレンアクトKR44を24.76gを用いた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料8を作製した。
【0128】
[記録材料9の作製]
前記記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gを用いないで記録材料1と同様の手順で記録材料9を作製し、これを比較例とした。
【0129】
《評価方法》
得られた記録材料1〜9について、以下の特性評価を行った。
【0130】
[光沢度]
光沢度は、光沢計TC−108DP/A(東京電色社製)を用いて60°の角度にて測定して求めた。数値が大きいほうが好ましい。
【0131】
[インク吸収性]
セイコーエプソン社製のインクジェットプリンターPM900Cを用い、反射濃度が約1.0のニュートラルグレー色を全面ベタ印字して、下記に示す基準にのり、ムラの有無を目視で5段階評価した。
【0132】
A:ムラが全くなし
B:ムラが僅かに認められるがベタ印字しても実技上は問題ないレベル
C:ムラがベタ印字でははっきりわかる程度であるが、実際のプリントでは殆ど問題ないレベル
D:グレーの色ムラが認められ、実技上許容され得ないレベル
E:全く許容され得ないレベル
上記の評価ランクにおいて、実用上、D以下は商品価値が無い。
【0133】
以上の評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
実施例2
《記録材料の作製》
[記録材料10の作製]
実施例1の記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を1.892g溶解させた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料10を作製した。
【0136】
[記録材料11の作製]
実施例1の記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を189.2g溶解させた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料11を作製した。
【0137】
[記録材料12の作製]
実施例1の記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を567.6g溶解させた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料12を作製した。
【0138】
[記録材料13の作製]
実施例1の記録材料1を作成中のシリカ分散液S−1の調整において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を946.6g溶解させた以外は記録材料1と同様の手順で記録材料13を作製した。
【0139】
《評価方法》
各記録材料の評価は、実施例1に記載の評価方法と同様にして行った。評価結果を表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
実施例3
《記録材料の作製》
[記録材料14の作製]
記録材料9の塗工液を下層に用い、シリカの付き量で9.0g/m2相当、記録材料1の塗工液を上層に用い、シリカの付き量で9.0g/m2相当の塗布(同時重層)を行い、記録材料14を作製した。
【0142】
[記録材料15の作製]
記録材料9の塗工液を下層に用い、シリカの付き量で13.5g/m2相当、記録材料1の塗工液を上層に用い、シリカの付き量で4.5g/m2相当の塗布(同時重層)を行い、記録材料15を作製した。
【0143】
《評価方法》
各記録材料の評価は、実施例1に記載の評価方法と同様にして行った。評価結果を表3に示す。
【0144】
【表3】

【0145】
以上の結果より、遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子をインク受容層の全体の厚みの表面から50%以上表層側に存在させることにより、発色性及び光沢度の低下なく、インク吸収性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、前記インク受容層が表面を遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【請求項2】
前記遷移金属化合物が遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録材料。
【請求項3】
前記遷移金属化合物がTi、Zr、Zn、SbおよびPbから選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録材料。
【請求項4】
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子は、遷移金属原子(M)とSi原子のモル比(M/Si)が、0.001以上0.3以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【請求項5】
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子は、該シリカ粒子が気相法シリカであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【請求項6】
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子は、該シリカ粒子の平均粒径が20nm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【請求項7】
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子が、前記インク受容層の全体の厚みの表面から50%以上表層側に存在することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。
【請求項8】
前記遷移金属化合物で被覆したシリカ粒子の存在するインク受容層が、前記シリカ粒子とポリビニルアルコールまたはその誘導体からなることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録材料。

【公開番号】特開2006−224432(P2006−224432A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40328(P2005−40328)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】