説明

インクジェット記録材料

【課題】インク吸収性と発色性が良好で、特に印字画像の耐水性と保存性に優れるインクジェット記録材料を提供する。更に、透明支持体を使用した場合に透明性の高いインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層が下記(1)、(2)の特性を有する塩基性ポリ水酸化アルミニウムを含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
(1)塩基度が78%以上である。
(2)サイズ排除クロマトグラフィーで求められる分子量分布において、バンドI成分が10%以下であり、バンドIII成分が38%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録材料に関し、特に優れたインク吸収性と高い画像濃度を有し、印字画像の耐水性と保存性に優れるインクジェット記録材料に関する。更に、透明支持体を使用した場合に透明性の高いインクジェット記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙や、インクジェット記録材料と称される支持体上にインク溶媒に対して膨潤性のあるバインダーからなる膨潤型インク受容層、及び非晶質シリカ等の顔料とポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる空隙型インク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭56−80489号公報、特開平5−286228号公報、特公平6−427号公報等には膨潤型の記録材料の開示がなされ、特開昭55−51583号公報、特開昭56−157号公報、特開昭57−107879号公報、特開昭57−107880号公報、特開昭59−230787号公報、特開昭62−160277号公報、特開昭62−184879号公報、特開昭62−183382号公報、及び特開昭64−11877号公報等に開示の如く、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーとともに紙支持体に塗布して得られる空隙型の記録材料が提案されている。
【0004】
また、特公平3−56552号公報、特開平10−119423号公報、特開2000−211235号公報等には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いた記録材料が開示されている。気相法シリカは、一次粒子の平均粒径が数nm〜数十nmの超微粒子であり、高い光沢と高いインク吸収性が得られるという特徴がある。
【0005】
しかしながら、無機微粒子、特に気相法シリカ微粒子を用いた高空隙率の記録層を有するインクジェット記録材料は、印字後の保管中に印字画像が変色しやすいという問題を有している。特に大気中の微量酸化性ガスによる退色が生じやすいという問題がある。
【0006】
酸化性ガスによる退色を防止する方法として、チオエーテル類やチオ尿素類といった含硫黄化合物(例えば特開2001−260519号公報等)、ヒンダードアミン類やヒドラジド類といった含窒素化合物(例えば特開2001−270219号公報、特開2002−274016号公報等)、その他酸化防止剤等の所謂退色防止剤(例えば特開平10−193776号公報、特開2002−220559号公報、特開2002−248853号公報等)をインク受容層に含有させる技術が知られており有効に使用されているが、完全に退色を防止することはできず、更なる改良が望まれている。
【0007】
また、シリカ等の含珪素顔料とバインダーからなる空隙型のインク受容層は印字された画像の耐水性が十分でないため、染料定着能を有する有機カチオン性ポリマーや水溶性金属化合物をインク受容層中に含有させることが行われている。有機カチオン性ポリマーは染料定着能に優れているが保管中の画像の退色に悪影響を与えるものが多いのに対して、水溶性金属化合物は画像の退色に悪影響を与えることなく、画像の耐水性を改善できることから、空隙型記録材料に好ましく使用される。また、有機カチオン性ポリマーや水溶性金属化合物には、インク受容層に含有させると印字画像の発色性に悪影響を与え画像濃度を低下させる化合物もあるので、発色性に悪影響を与えない化合物を選択することも重要である。中でも塩基性ポリ水酸化アルミニウム(塩基性ポリ塩化アルミニウムとも称する)は、このような目的に使用される水溶性金属化合物の代表的な化合物である。例えば特開昭60−257286号公報、特開昭61−16884号公報、特開平8−118787号公報、特開2000−309157号公報(特許文献1)、特開2005−144998号公報(特許文献2)等に塩基性ポリ水酸化アルミニウムを使用する技術が開示されている。また、特開2001−113817号公報(特許文献3)には、塩基性ポリ水酸化アルミニウムを透明支持体を使用した空隙型記録材料に使用した場合、透明性が改善されることが記載されている。
【0008】
一方、塩基性ポリ水酸化アルミニウムは一般に制汗剤や廃水処理用凝集剤としても使用されており、その効果が塩基性ポリ水酸化アルミニウムの分子量分布により異なることが知られている。例えば、特公昭62−54767号公報(特許文献4)、特公平3−27490号公報、特表平6−501233号公報(特許文献5)等には、制汗剤としての効果が高い特定の分子量分布を有する塩基性ポリ水酸化アルミニウム及びその製造法の例が記載されている。
【0009】
塩基性ポリ水酸化アルミニウムの分子量分布を変えてインクジェット記録材料の特性を向上させる技術として、前述の特開2005−144998号公報に、塩基性ポリ水酸化アルミニウム水溶液を加熱処理したり、加水分解処理したりすることによって、インクジェット記録材料の光沢性を向上させることが開示されている。しかし、該特許明細書に分子量分布は規定されておらず、また我々の知見では、該特許実施例に記載されている熱処理条件や加水分解条件では本発明の分子量分布を得ることはできず、また画像保存性に優れた記録材料は得られず、透明支持体を利用した場合の透明性も十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−309157号公報
【特許文献2】特開2005−144998号公報
【特許文献3】特開2001−113817号公報
【特許文献4】特公昭62−54767号公報
【特許文献5】特表平6−501233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、優れたインク吸収性と高い画像濃度を有し、特に印字画像の耐水性と保存性に優れるインクジェット記録材料を提供することである。更に、透明支持体を使用した場合に透明性の高いインクジェット記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、以下の構成のインクジェット記録材料により達成された。
1.支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層が下記(1)、(2)の特性を有する塩基性ポリ水酸化アルミニウムを含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
(1)塩基度が78%以上である。
(2)サイズ排除クロマトグラフィーで求められる分子量分布において、バンドI成分が10%以下であり、バンドIII成分が38%以上である。
2.支持体が透明支持体である上記1に記載のインクジェット記録材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、優れたインク吸収性と高い画像濃度を有し、特に印字画像の耐水性と保存性に優れるインクジェット記録材料を提供することができる。更に透明支持体を使用した場合には、透明性に優れるインクジェット記録材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】塩基性ポリ水酸化アルミニウムのSECクロマトグラム例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、塩基性ポリ水酸化アルミニウムの分子量分布とインクジェット記録材料の特性について鋭意検討したところ、特定の塩基度を有し、且つ特定の分子量分布を有する塩基性ポリ水酸化アルミニウムを使用することによって、インク吸収性と発色性及び印字された画像の耐水性と保存性に優れ、更に透明支持体を使用した場合には前記効果に加えて透明性に優れるインクジェット記録材料が得られることを見出しなされたものである。
【0016】
塩基性ポリ水酸化アルミニウムは、組成式がAl(OH)Cl6−n(1<n<6)で表され、モノマー、ダイマー及び3つ以上のアルミニウムを含有する多核縮合イオンを含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。ここで、n/6×100(%)を塩基度と称する。本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムの塩基度は78%以上である。塩基度が78%未満の塩基性ポリ塩化アルミニウムをインク受容層に含有させると、印字された染料の発色性が悪化することがあり好ましくない。また、塩基度が90%を超える塩基性ポリ水酸化アルミニウムは不安定で、合成が困難である場合がある。従って、塩基度は78〜90%の範囲が好ましく、特に80〜84%の範囲が好ましい。
【0017】
塩基性ポリ水酸化アルミニウムは、上記のように種々の分子量を持つ多核縮合イオンの複雑な混合物である。そして、その分子量分布は、塩基度、pH、濃度、温度等により変化することが知られている。分子量分布は幾つかの方法で測定することができる。代表的なものとして、サイズ排除クロマトグラフィー法(以降、SECと称す)、Al−Ferron法、27Al−NMR法などがある。本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムは、SEC測定において、特定の分子量分布を有するものである。塩基性ポリ水酸化アルミニウムのSECクロマトグラムの例を、図1に示す。図1に示すように、塩基性ポリ水酸化アルミニウムのクロマトグラムは、一般的な有機ポリマーのクロマトグラムのように単一ピークが観察されるのではなく、約5本のピークに分かれる。これは、多核縮合イオンの中で、例えばAlテトラマー、Al13ケギン型構造、Al30ケギン型構造のような特定の数のアルミニウムを含有する縮合体が特に安定な構造をとり、そのような縮合体の数が多く存在するためである。
【0018】
図1に示すとおり、本発明では特公昭62−54767号公報や特表平6−501233号公報等に記載されているのと同様に、溶出時間の短いほうからバンドI、バンドII、バンドIII、バンドIV、バンドVとする。SECでは溶出時間が短いほど高分子量成分であるので、バンドIが最も高分子量の成分であり、バンドII、バンドIIIとなるに従って分子量が小さくなり、バンドIVはモノマー及びダイマーを含む低分子量の成分である。バンドVは塩素に起因するピークで、アルミニウム分は含まれていない。SEC測定は、上記先行特許文献の測定条件を含めて標準的な測定条件で測定できると考えられるが、測定条件の例として後述の実施例の測定条件を示す。カラムは、ナカライテスク株式会社製COSMOSIL 5Diol−300−II(全多孔性球状シリカゲル、平均粒子径5μm、平均細孔径約300Å、化学結合基ジオール基、内径7.5mm、長さ300mm)を2本接続して使用する。移動相は、0.01N硝酸を流速1ml/minで使用する。検出器には、示差屈折率検出器を用いる。試料濃度は、Al換算で、0.03〜0.3質量%の範囲で測定する。このとき、バンドVのピーク位置を基準(1.0)とした相対保持時間は、バンドI:0.57〜0.63、バンドII:0.64〜0.68、バンドIII:0.69〜0.75、バンドIV:0.76〜0.83となる。
【0019】
本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムは、SEC測定においてバンドIが10%以下であり、且つバンドIIIが38%以上の分子量分布を示す塩基性ポリ水酸化アルミニウムである。ここで各バンドの成分比率は、SECクロマトグラムのバンドI〜IVの面積の合計を100%とし、各バンドの面積比率を求めたものである。不分離ピークの波形処理は、ピーク間の谷からベースラインに垂線を引いて分割する垂直分割によりピーク面積を求める。バンドIが10%よりも大きくなると、画像保存性とインク受容層の透明性が低下する。バンドIはより好ましくは7%以下であり、0%でも良い。また、バンドIIIが38%よりも少ないとき、バンドII又はバンドIVの成分が多くなるが、この場合インク受容層の透明性が低下し、画像保存性が悪化する。バンドIIIは、より好ましくは48%以上である。しかし、分子量分布がバンドIIIのみである塩基性ポリ水酸化アルミニウムを得ることは困難であり、他のバンド成分との混合物となるため、バンドIIIの上限としては85%とすることが望ましい。
【0020】
表1に先行特許文献に記載されている塩基性ポリ水酸化アルミニウム市販品3種類の塩基度とSEC測定によるバンドI、バンドIIIの面積比率を示すが、本発明の範囲にあるものはない。
【0021】
【表1】

【0022】
前述のように、塩基性ポリ水酸化アルミニウムの分子量分布は、塩基度、pH、水溶液中の濃度、温度等により変化する。一般には、塩基度が低いほど、pHが低いほど、濃度が低いほど、温度が高いほど低分子量成分が増加する傾向にある。いずれかの条件が変わると分子量分布が次第に変化し、その条件での平衡分子量分布になると変化が止まる。
【0023】
本発明の塩基度78%以上で、且つバンドIが10%以下、バンドIIIが38%以上の分子量分布を有する塩基性ポリ水酸化アルミニウムは、例えば水酸化アルミニウム又はアルミニウム金属と塩酸との反応など、公知の方法で合成することができる。また、市販の塩基性ポリ水酸化アルミニウムに熱処理を施して調製することも好ましい。このとき、水溶液の濃度、処理温度と処理時間を調節することによって、本発明の分子量分布を有するものを得ることができる。
【0024】
反応時或いは熱処理時の水溶液濃度は、Al換算で好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。5質量%よりも濃度が高い場合には、熱処理を行ってもバンドIIIの増加が少なく、例えば20質量%では、100℃で長時間加熱処理を行っても、本発明の分子量分布を得ることはできない。濃度は低いほど、熱処理時にバンドIが減少しやすく、バンドIIIが増加しやすいので、本発明の分子量分布を得る上では好ましいが、あまり希釈するとインクジェット記録材料を製造する際の塗布液濃度が下がり、多量の塗布液を塗布しなければならないためにインクジェット記録材料の製造が困難となる。そのため、反応時或いは熱処理時の水溶液濃度は、1質量%以上が好ましい。
【0025】
処理温度は、高いほどバンドIが減少しやすく、バンドIIIが増加しやすいが、100℃以上に加熱するためには密閉容器を使用する必要があるため、作業性やコストの面から100℃未満が好ましい。室温でも希釈によって徐々にバンドIが減少し、バンドIIIが増加するものの、平衡に達するまでに長い時間が掛かり、バンドIが比較的多い分子量分布で平衡に達してしまう。従って、処理温度は50℃以上が好ましく、特に80℃以上が好ましい。分子量分布が平衡に達するまでの時間は、分子量分布の変化の大きさや濃度等によるが、例えば80〜100℃の場合で数時間、室温の場合で2〜14日程度である。平衡に達した後は、熱処理を続けてもSECで観察される分子量分布はあまり変化しない。しかし、加熱を続けると不溶物が生成することがあるので、平衡に達したら加熱を停止するほうが良い。実際の処理時間としては、反応温度によるが10分〜24時間程度が好ましい。また、加熱処理後に温度を下げて室温で保管しておくと、室温での平衡分子量分布に次第に変化することがあるので、熱処理によって本発明の範囲の分子量分布が得られた後は、速やかに使用することが好ましい。
【0026】
本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムのpHは特に限定されないが、好ましいpHの範囲は3〜5である。pHは塩基度と相関があり、分子量分布に影響を与える。
【0027】
本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムのインク受容層中の含有量は、インク受容層の全固形分量に対して0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは1〜5質量%である。
【0028】
本発明のインク受容層に用いられる無機微粒子としては、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種微粒子が挙げられるが、インク吸収性と生産性の点で非晶質合成シリカ、アルミナ又はアルミナ水和物が好ましい。インク受容層に用いられる無機微粒子の好ましい量は10〜50g/mであり、より好ましくは12〜35g/mであり、特に好ましくは15〜25g/mである。
【0029】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、珪酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0030】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素とともに燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独又は四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0031】
本発明には、気相法シリカが好ましく使用できる。本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い光沢を得るためには、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nm(特に3〜10nm)でかつBET法による比表面積が200m/g以上(好ましくは250〜500m/g)のものを用いることである。なお、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、又は容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0032】
本発明のインク受容層には、気相法シリカを平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmに粉砕、分散したものが好ましく使用できる。カチオン性化合物の存在下で分散したものが、特に好ましく使用できる。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。シリカ分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。なお、平均二次粒子径は、希薄分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定して求めることができる。
【0033】
上記気相法シリカの粉砕、分散に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー又は水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は2000〜10万程度が好ましく、特に2000〜3万程度が好ましい。
【0034】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられ、中でも周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタン又はジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明において、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0035】
本発明に使用するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
【0036】
本発明のアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。アルミナ水和物は、アルミニウムイソプロボキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
【0037】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、蟻酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
【0038】
本発明において、インク受容層には無機微粒子とともに皮膜としての特性を維持するためにバインダーを含有するのが好ましい。バインダーの含有量は、前記した無機微粒子に対して1〜30質量%の範囲が好ましい。バインダーとしては、公知の各種バインダー、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を用いることができるが、透明性が高く、インクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。好ましい親水性バインダーは、完全又は部分ケン化のポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールである。変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールが好ましく使用できる。特にケン化度が80%以上の部分又は完全ケン化したもので、皮膜形成性及び皮膜脆弱性を改良する観点から平均重合度200〜5000、好ましくは500〜4000のものが好ましい。
【0039】
インク受容層には、ポリビニルアルコール及び他の樹脂バインダーの架橋剤(硬膜剤)を用いることが好ましい。架橋剤の具体例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号明細書記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号明細書記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号明細書記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号明細書記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号明細書、米国特許第2,983,611号明細書記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号明細書記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号明細書記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサンの如きポリアミン化合物、カルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジドの如きポリヒドラジド化合物、チタニウムラクテート化合物やチタニウムグリコレート化合物のような有機チタニウム化合物、クロム明ばん、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ほう酸、ほう酸塩の如き無機架橋剤等を使用できる。
【0040】
中でも親水性バインダーとしてポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを用いる場合には、ほう酸、ほう酸塩を使用することが好ましい。また、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコールを用いる場合には、ポリアミン化合物、ポリヒドラジド化合物、有機チタン化合物、ジルコニウム塩類を使用することが好ましい。
【0041】
またインク受容層中にはインク中の色材の定着性を上げ、発色性を更に向上させるために、本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムに加えて他のカチオン性物質を含有させることができる。カチオン性物質としては、例えばカチオン性ポリマーや水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらカチオン性ポリマーの分子量は5000以上が好ましく、更に5000〜10万程度が好ましい。
【0042】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、蟻酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、蟻酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、フェノールスルフォン酸ニッケル、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、フェノールスルフォン酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物等が挙げられる。中でも周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。
【0043】
これらの中にはpHが不適当に低いものもあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。本発明において水溶性とは、常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。これらのカチオン性物質の使用量としては、本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムに対して1〜100質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましい。
【0044】
インク受容層には、表面張力の調整のために界面活性剤を添加することができる。用いられる界面活性剤はカチオン系、ノニオン系、ベタイン系、アニオン系のいずれのタイプでも良く、また低分子のものでも高分子のものでも良い。1種もしくは2種以上界面活性剤をインク受理層塗液中に添加するが、界面活性剤の添加量はインク受容層塗液に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【0045】
インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0046】
インク受容層の乾燥塗布量は、全固形分量として5〜50g/mの範囲が好ましく、10〜40g/mの範囲がより好ましく、特に15〜35g/mの範囲がより好ましい。
【0047】
インク受容層を構成する各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
【0048】
インク受容層塗布液塗布後の乾燥は、塗布直後に一度冷却した後、高温にして乾燥する方法が好ましい。特に、30〜60℃の塗液を上記塗布方法を用いて塗布し、一度20℃以下、好ましくは10℃以下に冷却した後に、20℃以上、好ましくは30〜70℃で乾燥することが好ましい。このような塗布、乾燥工程にすることによって、塗布欠陥が少なく、インク吸収性の良好なインク受容層が得られる。
【0049】
塗布されたインク受容層を冷却する冷却工程は、20℃以下に冷やされたボックス内を通過させる方法、或いは塗布面に20℃以下の空気を吹き付ける方法等がある。好ましくは、10℃以下で冷却することである。冷却時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましい。この冷却工程では、塗工されたインク受容層の表面温度が20℃以下になるように冷却することが好ましい。
【0050】
冷却後の乾燥工程では、高温の空気を吹き付けて乾燥する。より高温で乾燥させたほうが生産性の面で好ましいが、あまり高温にすると乾燥空気による風紋が発生するなど塗布故障が発生しやすくなるため、乾燥空気の最高温度は30〜70℃が好ましく、更に40〜60℃が好ましい。また、乾燥効率を上げるために除湿した低湿度の空気を用いることが好ましい。
【0051】
次に、本発明に使用される支持体について説明する。支持体としては、不透明支持体及び透明支持体がある。不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方にポリオレフィン樹脂被覆層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙、ポリエチレンテレフタレートに酸化チタン、硫酸バリウム等の白色顔料の添加、或いは微細な気泡を内部に形成した、所謂ホワイトペット等の非吸収性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体が用いられる。印字された部分の寸法安定性に優れ、コックリングなどの印字障害が生じず、高い表面光沢と良好な質感が得られることから非吸水性支持体を用いることが好ましい。
【0052】
本発明における透明支持体とは、JIS K7361−1に従って測定される全光線透過率が70%以上の支持体である。好ましくは全光線透過率80%以上の支持体であり、特に好ましくは全光線透過率85%以上の支持体である。例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等を挙げることができ、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。このような透明支持体の厚さとしては50〜300μmが好ましい。
【0053】
支持体、特に非吸収性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.01〜2μmの範囲である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、記載中、部は明記しない限り質量部を示す。
【0055】
<塩基性ポリ水酸化アルミニウム熱処理、及び分子量分布変化>
表2に、実施した熱処理の条件と、その処理によって得られた塩基性ポリ水酸化アルミニウムの分子量分布を示す。表2中、A−1は(株)理研グリーンからピュラケムWTとして、A−10は浅田化学工業(株)からPaho#2Sとして市販されているものである。A−2〜A−7は、A−1を表2記載の濃度(Al換算濃度)になるよう水で希釈し、水浴上で表2記載の温度、時間で熱処理を行ったものである。A−8、A−9は、A−1に表2記載の塩基度になるよう塩化アルミニウム水溶液(Al換算濃度11.5質量%)を添加して90℃、4時間加熱した後、表2に記載の濃度(Al換算濃度)になるよう水で希釈し、更に水浴上で表2記載の温度、時間で熱処理を行ったものである。熱処理後、各試料の分子量分布をSECで測定した。SEC測定条件は、カラム:ナカライテスク株式会社製COSMOSIL 5Diol−300−II(2本接続して使用)、移動相:0.01N硝酸、流速:1ml/min、検出器:示差屈折率検出器である。なお、A−7は特開2005−144998号公報の実施例2と同様の処理条件である。
【0056】
【表2】

【0057】
<シリカ分散液1の調製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000、4部)と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速20m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に得られた予備分散物を圧力ホモジナイザーに、40MPaの条件で1回通過させて、固形分濃度20質量%、平均二次粒子径150nmのシリカ分散液1を得た。
【0058】
<記録シート1の作製>
ポリオレフィン樹脂被覆紙(原紙坪量170g/m、表面ポリエチレン樹脂層35μm、裏面ポリエチレン樹脂層30μm)の表面に下記組成のインク受容層塗布液1をバーコーターで塗布し、5℃の空気中に60秒間放置して冷却した後、50℃の空気を吹き付けて乾燥し記録シート1を得た。インク受容層塗布液の塗布量は、シリカ固形分換算で21g/mであった。
【0059】
<インク受容層塗布液1>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 25部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 5部
尿素 2部
【0060】
<記録シート2の作製>
インク受容層塗布液に更に上記表2に示す塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をAl換算で3部となるように添加した以外は、記録シート1と同様にして記録シート2を作製した。
【0061】
<記録シート3の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−2に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート3を作製した。
【0062】
<記録シート4の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−3に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート4を作製した。
【0063】
<記録シート5の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−4に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート5を作製した。
【0064】
<記録シート6の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−5に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート6を作製した。
【0065】
<記録シート7の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−6に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート7を作製した。
【0066】
<記録シート8の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−8に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート8を作製した。
【0067】
<記録シート9の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−9に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート9を作製した。
【0068】
<記録シート10の作製>
記録シート2の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−10に変更した以外は、記録シート2と同様にして記録シート10を作製した。しかし、A−10を添加すると塗布液中に凝集物が生成し、均一な塗布面が得られず、下記の評価を行うことはできなかった。
【0069】
上記のように作製した記録シートについて、下記の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0070】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−870C)を用いて、レッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:転写しない。
△:印字部全体に薄い転写が観察されるが実用可。
×:印字部全体に濃い転写が観察され実用不可。
【0071】
<発色性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−870C)を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのベタ印字を行い、画像濃度を反射濃度計で測定し、下記の基準で評価した。
○:4色の印字濃度の合計値が、8以上
×:4色の印字濃度の合計値が、8未満。
【0072】
<画像耐水性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−870C)を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グリーン、ブラックの印字を行い、水滴を印字部に落とし10分間放置した。水滴をふき取った際の状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:印字部の染料が溶出せず、画像部周辺への広がりも生じない。
△:印字部の染料が僅かに溶出し、画像部周辺へ僅かにインクの広がりがある。
×:印字部の染料が流れ画像濃度が低下するとともに印字部周辺にインクが広がる。
【0073】
<画像保存性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−870C)を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、ブルー、グリーン、ブラックの印字を行い、濃度10ppmのオゾンに4時間曝露後の濃度を測定し、画像残存率(曝露後濃度/曝露前の濃度)を求め、各色画像の内、最も残存率が低いものについて、下記の基準で評価した。
○:画像残存率75%以上。
×:画像残存率60%以上75%未満。
××:画像残存率60%未満。
【0074】
【表3】

【0075】
表3より、本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムを添加した記録シートは、インク吸収性、発色性、画像耐水性及び画像保存性の全てに特に優れることが判る。
【0076】
<記録シート11の作製>
透明支持体として、厚み100μm、全光線透過率91%のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に下記組成のインク受容層塗布液2をバーコーターで塗布し、5℃の空気中に60秒間放置して冷却した後、40℃の空気を吹き付けて乾燥し記録シート6を得た。インク受容層塗布液の塗布量は、シリカ固形分換算で19g/mであった。
【0077】
<インク受容層塗布液2>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 25部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 5部
尿素 2部
酢酸ナトリウム 1.5部
塩基性ポリ水酸化ナトリウムA−1(Al換算) 4部
【0078】
<記録シート12の作製>
記録シート11の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−2に変更した以外は、記録シート11と同様にして記録シート12を作製した。
【0079】
<記録シート13の作製>
記録シート11の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−3に変更した以外は、記録シート11と同様にして記録シート13を作製した。
【0080】
<記録シート14の作製>
記録シート11の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−4に変更した以外は、記録シート11と同様にして記録シート14を作製した。
【0081】
<記録シート15の作製>
記録シート11の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−5に変更した以外は、記録シート11と同様にして記録シート15を作製した。
【0082】
<記録シート16の作製>
記録シート11の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−6に変更した以外は、記録シート11と同様にして記録シート16を作製した。
【0083】
<記録シート17の作製>
記録シート11の塩基性ポリ水酸化アルミニウムA−1をA−7に変更した以外は、記録シート11と同様にして記録シート17を作製した。
【0084】
上記のように作製した記録シート11〜17について、記録シート1〜9と同様の評価を行った。なお、画像濃度は記録シート1を台紙として重ねて測定した。また、透明性を評価するため下記のようにヘーズ値を測定した。結果を表4に示す。
<ヘーズ値>
スガ試験機製TMダブルビーム方式ヘーズコンピュータHZ−2を使用し、測定光源D65で測定した。ヘーズ値が小さいほど透明性が高いことを示す。
【0085】
【表4】

【0086】
表4より、本発明の塩基性ポリ水酸化アルミニウムを添加した記録シートは、インク吸収性、発色性、画像耐水性、画像保存性及び透明性の全てに優れることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層が下記(1)、(2)の特性を有する塩基性ポリ水酸化アルミニウムを含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
(1)塩基度が78%以上である。
(2)サイズ排除クロマトグラフィーで求められる分子量分布において、バンドI成分が10%以下であり、バンドIII成分が38%以上である。
【請求項2】
支持体が透明支持体である請求項1に記載のインクジェット記録材料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−208195(P2010−208195A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57970(P2009−57970)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】