説明

インクジェット記録用インクおよびインクジェット記録装置

【課題】 種々の記録媒体、とりわけ普通紙、再生紙、さらにはその表面に光沢層を有する記録媒体においても、にじみの少ない良好な画像を実現可能なインク組成物を提供すること。
【解決手段】 顔料と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、水とを少なくとも含んでなり、前記顔料が分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能な顔料であり、かつ前記界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤であるインク組成物を用いる。このインク組成物によれば、種々の記録媒体においてにじみの少ない画像を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の背景】
発明の分野本発明は、種々の記録媒体、とりわけ普通紙、再生紙、さらにはその表面にインク受容層を有する専用紙に対して高い印字品質および高い信頼性が得られるインクジェット記録インクに関する。
【0002】背景技術インクジェット記録は、微細なノズルからインクを小滴として吐出して、文字や図形を被記録体表面に記録する方法である。インクジェット記録方式としては電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変換して、ノズルヘッド部分に貯えたインクを断続的に吐出して被記録体表面に文字や記号を記録する方法、ノズルヘッド部分に貯えたインクを吐出部分に極近い一部を急速に加熱して泡を発生させて、その泡による体積膨張で断続的に吐出して、被記録体表面に文字や記号を記録する方法などが実用化されている。
【0003】このようなインクジェット記録に用いられるインクには、印字の乾燥性がよいこと、印字のにじみがないこと、種々の被記録体表面に均一に印字できること、多色の場合色が混じり合わないことなどの特性が要求されている。
【0004】ここで、特に問題になるのは、被記録体として紙を用いた場合浸透性の違なる繊維が混在していることに主に起因してにじみが生じること、ブラックインクとカラーインクとがその境界において混色し画質を低下させること、そして被記録体上に乗ったインクが手などが触れたとき剥離することなどである。
【0005】これら不利な点を克服するため、種々のインク組成物が提案されている。
【0006】例えば、特公平2−2907号公報では湿潤剤としてグリコールエーテルの利用を、特公平1−15542号公報では水溶性有機溶剤の利用を、さらに特公平2−3837号公報では染料溶解促進剤の利用を提案している。
【0007】また、米国特許第5156675号明細書には、浸透性を向上させるためジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加が、米国特許第5183502号明細書にはアセチレングリコール系の界面活性剤であるサーフィノール465の添加が、さらには米国特許第5196056号明細書にはジエチレングリコールモノブチルエーテルとサーフィノール465の両方の添加が提案されている。ここで、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルはブチルカルビトールとも呼ばれ、例えば米国特許第3291580号明細書に記載されている。あるいは米国特許第2083372号明細書ではジエチレングリコールのエーテルの利用が検討されている。さらに、特開昭56−147861号公報では、顔料とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとの併用を提案している。
【0008】しかし、にじみの少ない画像を実現できるインク組成物が依然として望まれている。
【0009】また、にじみを低減するため、記録紙を加熱することが検討されている。しかし、記録するときに記録紙を加熱すると、装置中の加熱部の所定温度までの立ち上げに時間がかかったり、装置本体の消費電力が大きくなったり、あるいは記録紙およびその他の被記録媒体にダメージを与えたりするという課題がある。
【0010】また、顔料を用いたインク組成物においては、浸透性を抑制して、記録媒体表面におけるインクの浸透を抑え、印字品質を確保する試みがなされている。しかしながら、インク組成物がある程度記録媒体中に浸透しないと、顔料が記録媒体表面に残り、耐擦性を悪化させることがある。さらに、最近、その表面に光沢層を有し、記録画像に光沢を与え、画像に付加価値を与える記録媒体が利用されている。このような記録媒体上において良好な耐擦性を有する画像を実現できる顔料系インクが望まれている。
【0011】
【発明の概要】本発明者等は、今般、特定の顔料と、アセチレングリコール系界面活性剤とを組み合わせて含むインク組成物が、にじみを有効に抑制し、耐擦性に優れた高い品質の画像を実現できるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0012】従って、本発明は、種々の記録媒体、とりわけ普通紙、再生紙、さらにはその表面に光沢層を有する記録媒体においても、にじみの少ない良好な画像を実現可能なインク組成物の提供をその目的としている。
【0013】そして、本発明によるインク組成物は、顔料と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、水とを少なくとも含んでなり、前記顔料が分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能な顔料であり、かつ前記界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤であるものである。
【0014】
【発明の具体的説明】
インク組成物本発明によるインク組成物を用いた記録方式に用いられる。インク組成物を用いた記録方式とは、例えば、インクジェット記録方式、ペン等による筆記具による記録方式、その他各種の印字方式が挙げられる。特に本発明によるインク組成物は、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。
【0015】本発明によるインク組成物は、顔料と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、水とを少なくとも含んでなり、前記顔料が分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能な顔料であり、かつ前記界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤であるものである。本発明によるインク組成物によれば、にじみを有効に抑制し、耐擦性に優れた高い品質の画像を実現できる。更に、本発明によるインク組成物は、印字の乾燥性に優れ、色濃度が高いとの利点も有する。例えば、本発明によるインク組成物は、インク量を二回または複数回に分けて印字を行うような記録方法にも適用が可能であり、このような方法によればより高い濃度の印字を得ることができる。
【0016】本発明において好ましく用いられる顔料とは、その表面に、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはスルホン基の少なくとの一種の官能基またはその塩が結合するような表面処理により、分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能とされたものである。具体的には、真空プラズマなどの物理的処理や化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子をカーボンブラックの表面にグラフトさせることによって得ることができる。本発明において、一つのカーボンブラック粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、およびインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されていよい。
【0017】本発明において、顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態を「分散および/または溶解」と表現する。物質が溶解しているか、分散しているのかを明確に区別することが困難な場合も少なくない。本発明にあっては、分散剤なしに水中に安定に存在いうる顔料である限り、その状態が分散か、溶解かを問わず、そのような顔料を利用可能である。よって、本明細書において、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料を水溶性顔料ということがあるが、顔料が分散状態にあるものまでも排除することを意味するものではない。
【0018】本発明の好ましい態様によれば、平均粒径50〜200nmで分散度10以下を有する顔料分散液として利用されるのが好ましい。
【0019】本発明において好ましく用いられる上記顔料は、例えば特開平8−3498号公報記載の方法によって得ることが得きる。また、上記顔料として市販品を利用することも可能であり、好ましい例としてはオリエント化学工業株式会社製のマイクロジェットCW1または2が挙げられる。
【0020】インク組成物への顔料の添加量は、2〜10重量%が好ましく、より好ましくは4〜8重量%程度である。
【0021】本発明において用いられるアセチレングリコール系界面活性剤の好ましい例としては、下記式(I)で表わされる化合物が挙げられる。
【0022】
【化1】


(式中、0≦m+n≦50、R1、R2、R3、およびR4は独立してアルキル基である)
上記式(I)で表される化合物の中で特に好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどが挙げられる。上記式(I)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤として市販品を利用することも可能であり、その具体例としてはサーフィノール104、82、465、485、またはTG(いずれもAir Products and Chemicals.Inc.より入手可能)が挙げられる。
【0023】本発明の好ましい態様によれば、アセチレングリコール系界面活性剤の添加量はインク全量に対して0.3〜2重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5%以上1.5以下である。アセチレングリコール系界面活性剤の添加量がこの範囲にあることで、よりにじみの少ない画像を実現することが出来る。
【0024】なお、一部のアセチレングリコール系界面活性剤、例えば上記サーフィノール104やTGは、HLBが低いため水に対する溶解度が低い。この溶解度は、インク組成物にグリコールエーテル、グリコール類、界面活性剤などの成分を添加することで改善することができる。
【0025】本発明において用いられる水溶性有機溶剤は、水と共に主溶媒を形成するものであり、水との相溶性を有し、インク組成物中の他の成分と好ましくない相互作用を有さないものである限り特に限定されない。
【0026】本発明の好ましい態様によれば、水溶性有機溶剤として、インクジェット記録用ヘッドのノズル前面におけるインク組成物の乾燥を抑えるために、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、チオジグリコール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどを添加することが出来る。とりわけ、グリセリン、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、またはチオジグリコール、さらにそれらの混合物は、インク組成物の粘度を適正に制御でき、ノズルの目詰まりを有効に防止することができ、さらにインク組成物の曇り点を上昇させることができることから好ましい。更に、上記したアセチレングリコール系界面活性剤(特に、サーフィノール104、サーフィノールTG)のインク組成物への溶解性を向上させ、インク組成物が高温下におかれても相分離することがない、との利点も享受することができる。
【0027】これらの水溶性有機溶剤の添加量は適宜決定されてよいが、インク組成物に対して1〜30重量%未満が好ましく、より好ましくは5〜15重量%程度である。
【0028】本発明の別の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物に添加することが出来る水溶性有機溶剤としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどが挙げられる。これらの有機溶剤の添加は、インク組成物中の他の成分のインク組成物への溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、さらにはノズルの目詰まりを有効に防止できるので好ましい。これらの有機溶剤の添加量は適宜決定されてよいが、インク組成物に対して0.1〜60重量%程度が好ましく、より好ましくは5〜15重量%程度である。
【0029】本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物は2−ピロリドンを含んでなることが好ましい。本発明によるインク組成物に含まれるアセチレングリコール系界面活性剤は非イオン系であるため、インク組成物に低い曇り点を与えることがある。2−ピロリドンの添加は、極端な粘度上昇を伴わずに、曇り点を上昇させる効果がある。2−ピロリドンの添加は上記効果が得られる範囲で適宜決定されてよいが、好ましくはインク組成物に対して1重量%以上20重量%未満である。
【0030】本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物はトリエタノールアミンを含んでなるのが好ましい。このトリエタノールアミンの添加によって、インク組成物を適正なアルカリ性にし、また保湿効果を与えノズルの目詰まりを有効に防止することができる。トリエタノールアミノの添加量は適宜決定されてよいが、0.5〜3重量%程度が好ましい。
【0031】本発明によるインク組成物は、そのpHを7〜11の範囲に制御されるのが好ましく、より好ましくは8〜10である。この範囲にpHがおかれることで、顔料、さらには後記する樹脂エマルジョンを安定にインク組成物中に存在させることが出来るので好ましい。pHの調整は上記のトリエタノールアミノの他、適当なアルカリ剤(例えば、アンモニア等の有機アルカリ、およびアルカリ金属塩)によって行うことが出来る。好ましいアルカリ剤としては水酸化カリウムが挙げられる。特に、トリエタノールアミンと水酸化カリウムとを組み合わせてpHの調整を行うことが好ましい。トリエタノールアミノと水酸化カリウムとを組み合わせた場合、水酸化カリウムの添加量は0.01〜0.2重量%程度が好ましい。
【0032】本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物は水溶性エマルジョンを含んでなるのが好ましい。この水溶性エマルジョンの添加によって印字の定着性および耐擦性を改善することが出来る。この水溶性エマルジョンは、連続相が水であり、分散相がアクリル酸樹脂、メタクリル酸樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂あるいはこれらの混合形であるものが好ましい。特に、分散相がアクリル酸および/またはメタクリル酸を主成分とする樹脂からなるのが好ましい。これら樹脂は、共重合の態様によっては制限されず、例えばブロックコポリマ、ランダムコポリマなどであることができる。さらに本発明によるインク組成物に用いられる水溶性エマルジョンは、膜形成能を有し、好ましくは室温以下の最低造膜温度を有するものであることが好ましく、より好ましくは0℃以上20℃以下の温度である。
【0033】本発明の好ましい態様によれば、水溶性エマルジョンの樹脂成分は、コア部とそれを取り巻くシェル部からなるコアシェル型構造の樹脂粒子であるのが好ましい。例えば、コア部にインクの指触性や定着性を向上できる樹脂成分を導入し、シェル部に樹脂粒子をインク組成物中に安定に存在させる樹脂成分を導入するとの構成を採用することが出来る。本発明の好ましい態様によれば、コア部は架橋構造を有する樹脂からなるのが好ましい。
【0034】コア部を形成する物質としては、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールのエチルエステル、プロピルエステルまたはブチルエステルの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、含フッ素、含塩素、含硅素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド等が挙げられる。
【0035】また上記の(メタ)アクリル酸に加え,架橋構造を導入する場合、(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0036】また、シェル部の形成においても前述のコア部を形成する物質を用いることができる。
【0037】このような高分子微粒子を形成するために用いる乳化剤としては、慣用されているラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリ、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および両性界面活性剤を用いることができる。
【0038】重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなとを用いることができる。
【0039】重合のための連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテン等を用いることができる。
【0040】また、本発明の好ましい態様によれば、コア部はエポキシ樹脂またはウレタン樹脂からなり、好ましくは架橋構造を有する樹脂からなる。さらに、本発明の別の好ましい態様によれば、コア部はアクリル酸樹脂および/またはメタクリル酸樹脂からなり、好ましくは架橋構造を有する樹脂からなる。また、シェル部はアクリロイル基および/またはメタクリロイル基のカルボキシル基を有する表面を有する構造であるのが好ましい。さらに、シェル部の表面の官能基は、樹脂粒子をインク組成物中で安定に存在させるため、アンモニウム塩、アミンおよび/またはアミド塩等の有機アルカリにより処理されてなるのが好ましい。
【0041】本発明の好ましい態様によれば、水溶性エマルジョンの分子量は1000以上であるのが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000程度である。
【0042】本発明において用いられる水溶性エマルジョンとして市販品を利用することも可能であり、例えば三井東圧社製のZ116を挙げることができる。
【0043】この水溶性エマルジョンの添加量は適宜決定されてよいが、例えば0.5〜10重量%程度が好ましく、より好ましくは3〜5重量%程度である。
【0044】本発明によるインク組成物は、上記成分に加えて他の成分を含むことができ、例えばノズルの目詰まり防止剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを添加することができる。
【0045】本発明によるインク組成物は、ノズル前面においてインクが乾燥することを抑制するために、糖類を添加することができる。そのような糖類として、単糖類および多糖類があり、例えばグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を挙げることができる。その添加量は0.05重量%〜30重量%程度がこのましい。とりわけ、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3重量%〜20重量%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類の添加量によっては、粘度が高くなる傾向があることから、その添加量を小さくすることが好ましい。
【0046】また、本発明になるインクにはさらに浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤はインク組成物中の他の成分と相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものが好ましい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などが挙げられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0047】また、例えば防腐剤、防かび剤としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)などが挙げられる。
【0048】また、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などが挙げられる。また、市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることがで、その例としてはチバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024などが挙げられる。さらにランタニドの酸化物を用いることも可能である。
【0049】さらに、粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどが挙げられる。
【0050】記録方法および装置本発明によるインク組成物は好ましくはインクジェット記録方法によって画像を形成されてよい。
【0051】図1は、本発明によるインク組成物が好ましく用いられるインクジェット記録装置の一実施例を示した図である。図中の装置は、記録紙を搬送するために矢印A方向に回転する記録紙搬送手段であるプラテン1に沿って、ガイド軸2a上を矢印B方向に往復運動するキャリッジ2を有し、このキャリッジ2には、プラテン1に近接してブラックインク組成物を吐出する記録ヘッド3a、およびカラーインク組成物を吐出する記録ヘッド3bがそれぞれ搭載されてなる。記録ヘッド3aの上方にはブラックインク組成物用タンク7a、記録ヘッド3bの上方にはカラーインク組成物用タンクがそれぞれ設けられ、各タンクからインク組成物が記録ヘッド3aまたは3bに供給される。
【0052】記録ヘッド3aおよび3bには信号ケーブル18から信号が供給され、この信号に従い記録ヘッド3aおよび3bからはインク組成物の液滴が、図示されていないノズルから吐出される。吐出されたインク組成物の液滴は、プラテン1に巻き付けられた記録媒体20(例えば、紙)上に付着され、画像を形成することとなる。
【0053】また、記録ヘッドに目詰まりなどが生じた場合、キャップ部材13により記録ヘッドのノズル面を封止し、キャップ部材13と導管14を介して接続されたポンプ15により、インク組成物を吸引する操作を行い、目詰まりを解消する。吸引されたインク組成物は、廃液タンク17に導管16により導かれる。
【0054】図中ではキャップ部材は1つ設けているだけであるが、記録ヘッド3aおよび3bそれぞれに対応するように複数設けても良い。
【0055】次に本発明によるブラックインク組成物用タンクを詳細に説明する。図2は、図1のインクジェット記録装置の断面を示す図であり、図3はタンク7aの分解斜視図である。
【0056】記録ヘッド3aの上方には、内部にポリウレタンフォーム等の多孔質部材よるなるフォーム6aを収納したタンク溜まり6を備えたタンク7aが設けられてなる。タンク7aには、その蓋8に外部と連通する連通孔9が設けられ、また、その底面にはフォーム6aとの密着された台状の突起10が形成されている。この突起10の中心部から下方に向けて記録ヘッド3aに連通する連通部がある。連通部はフォーム6a内のインク組成物を取り出し保持するインク室11と、インク室11の端部にゴム等の弾性部材よりなる盲栓12により形成されてなる。
【0057】キャリッジに設けられた記録ヘッド3aとフィルタ室4を介して連通する連通部材である中空針5を盲栓12に挿通することにより、インクタンク7a内に含浸したインク組成物が記録ヘッド3aに供給される。
【0058】また、連通孔9の少なくとも一つは開封可能な非通気性の封止部材21で使用直前まで、減圧下封止される。そして、使用直前に開封し、通気孔9aを介してタンク7aと外部とが連通する。封止部材21は、図3に示されるように十分長い部分を有し、その端部をつまみ上げて容易に開封出来るよう構成されてなるのが好ましい。また、印刷中、通気孔9aは、タンクが消費された分、タンク7a内に空気を補充する役目を果たす。
【0059】本発明によるインク組成物によれば、普通紙、再生紙など従来比較的ににじみが生じやすいとされていた記録媒体においても良好な画像を形成できる。さらに、本発明によるインク組成物は、いわゆる光沢層をその表面に有する記録媒体においても耐擦性に優れた画像を実現することができる。
【0060】本発明の好ましい態様によれば、記録ヘッドのノズル開口前面はテトラフルオロエチレンと金属との共析メッキからなるのが好ましい。このようなノズル面を有する記録ヘッドと、本発明によるインク組成物とを組み合わせることで、ノズル面への付着物の発生を少なくすることが可能となる。また、付着物が生じても、ゴムまたはフェルトを接触させるクリーニング操作によってこれら付着物は容易に除くことが出来る。
【0061】本発明によるインク組成物は、種々の記録媒体に、とりわけ普通紙、再生紙、さらにはその表面にインク受容層を有する専用紙、特に光沢層を有する記録媒体、において良好な品質の印字を形成することが出来る。本発明において、光沢層を有する記録媒体とは、例えば、白色顔料をバインダーを用いて基材上に固定した記録媒体を意味する。具体例としては、コロイダルシリカ、アモルファスシリカ、コロイダルアルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナ、水酸化アルミニウム、軽質炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸バリウム、ルチル、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ゼオライト、ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどのセラミックス微粒子、コロイド粒子を、キャストコート紙、紙上に特殊な方法で塗布してできるピクトリコ型記録媒体が挙げられる。また、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、無水マレイン酸樹脂、スチレンブタジエン樹脂、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体等の重合体または共重合体等からなる樹脂層を基材上に塗布して形成された記録媒体であって、インクによって膨潤する膨潤型の記録媒体が挙げられる。また、光沢を生じさせる方法としては、カレンダー処理、キャスト法、湿油状態での加熱鏡面による圧接乾燥、光沢感のある樹脂を塗布することが挙げられる。これらの光沢層を有する記録媒体にあっては、その表面の空隙の大きさによって顔料の定着性が悪化することがある。本発明によるインク組成物によれば、そのような記録媒体表面の状態によらず、耐擦性に優れた画像が実現できる。
【0062】本発明によるインク組成物は、他のインク組成物と組み合わせてカラー画像を形成するのに用いられてよい。本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物をブラックインクとし、他のインク組成物をカラーインク(例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク)とする組み合わせが好ましい。特に、他のインク組成物にも上記と同様の水溶性エマルジョンを添加することで、耐擦性に優れた画像が実現できる。さらに、イエローインク、マゼンタインク、およびシアンインクを重ねて印字してブラック画像を形成し、本発明によるブラックインクと組み合わせて印字することも可能である。その際の印字方法としては、両者を重ねる方法(特に光沢層を有する記録媒体に対して好ましい)、交互に両者の画像を形成する方法(ある幅の両画像領域を交互に並べる方法、および両インク組成物により線を形成し、それを並べる方法のいずれも含む)が挙げられる。
【0063】本発明によるインク組成物のように顔料等の固形物の量が比較的多いインクでは、長時間吐出しないノズルはノズル前面でインクが乾燥して増粘し易く印字が乱れる現象がでやすい。そこで、インクをノズルの前面で吐出しない程度に微動させることによって、インクが撹袢されてインクの吐出を安定的に行なうことができる。微動方法としてはインクを吐出する加圧手段をインクが吐出しない程度に加圧制御することにより生成できる。この様な制御を行う場合、加圧手段として電歪素子を用いるのが、その制御の容易さゆえ好ましい。また、この機構を用いることで、インク中の顔料濃度を多くすることができるので、顔料インクで色濃度が高く、しかも安定的にインクを吐出することが可能になる。
【0064】また、インクジェット記録装置においてノズル面において上記微動を行なう場合、顔料の含有量が5%〜15重量%程度のインク組成物に対して効果的であり、より好ましくは7%〜10重量%程度のインク組成物である。
【0065】また、本発明によるインク組成物は、ポリウレタンフォームを充填し、インクとウレタンフォームが接する構造とされたインクタンクに充填されて利用に共されてよい。この場合、ウレタンフォームには本発明で用いるとよいとするグリコールエーテル類やアセチレングリコール系の界面活性剤が吸着される。したがって、その吸着される量を考慮して過剰に添加してくことがよい。また、ウレタンフォームは本発明によるインク組成物を用いることによって負圧を確保することができ、しかも、本発明で用いるインクの各成分によって分解されたり異物を発生させて目詰まりの要因となることが少ない。このウレタンフォームの硬化触媒には金属塩やカチオン系を含むものは用いず、トリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと平均分子量300から3000程度のポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオールなど複数のヒドロキシ基を有する物質からなるウレタンフォームを用いることがフォーム形状の安定性による負圧確保、および化学的安定性の観点から好ましい。
【0066】
【実施例】以下本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】以下に示す組成のインク組成物を調製した。
【0068】以下において、変性物とは表記の市販されている顔料に特開平8−34981号公報に記載の方法を適用して得た水溶性顔料を意味する。
【0069】また、水溶性顔料の平均粒径をカッコ内にnm単位で示した。
【0070】さらに以下の実施例で用いたエマルジョンA〜Dは以下のように調製した。
【0071】エマルジョンA:滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水100部を入れ、撹拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過硫酸カリを0.2部を添加した。イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウム0.05部、グリシドキシアクリレート4部、スチレン5部、テトラヒドロフルフリルアクリレート6部、ブチルアクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を混合して得たモノマー溶液を、70℃で容器に滴下して反応させ、一次物質を作成した。この一次物質に、過硫酸アンモニウム10%溶液2部を添加して撹拌した。さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン30部、ブチルメタクリレート15部、ブチルアクリレート16部、アクリル酸2部、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら反応容器に添加して重合反応させた。その後反応液をアンモニアで中和してpH8〜8.5とし、0.3μmのフィルターでろ過して、高分子微粒子水溶液を得てエマルジョンAとした。
【0072】エマルジョンB:滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水100部を入れ、撹拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過硫酸カリを0.2部を添加した。イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウム0.05部、スチレン10部、グリシドキシメタクリレート5部、ブチルメタクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を混合して得たモノマー溶液を、70℃で容器に滴下して反応させ、一次物質を作成した。この一次物質に、過硫酸アンモニウム10%溶液2部を添加して撹拌した。さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン35部、ブチルアクリレート25部、アクリル酸10部、アクリルアミド1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら反応容器に添加して重合反応させた。その後反応液をアンモニアで中和してpH8〜8.5とし、0.3μmのフィルターでろ過して、高分子微粒子水溶液を得てエマルジョンBとした。
【0073】エマルジョンC:滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水100部を入れ、撹拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過硫酸カリを0.2部を添加した。イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウム0.05部、スチレン5部、グリシドキシメタクリレート2部、ベンジルメタクリレート6部、ブチルメタクリレート10部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を混合して得たモノマー溶液を、70℃で容器に滴下して反応させ、一次物質を作成した。この一次物質に、過硫酸アンモニウム10%溶液2部を添加して撹拌した。さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン30部、ブチルメタクリレート15部、アクリル酸10部、トリエタノールプロパントリメタクリレート1部、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら反応容器に添加して重合反応させた。その後反応液をアンモニアで中和してpH8〜8.5とし、0.3μmのフィルターでろ過して、高分子微粒子水溶液を得てエマルジョンCとした。
【0074】エマルジョンD:滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器にイオン交換水100部を入れ、撹拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過硫酸カリを0.2部を添加した。イオン交換水7部に、ラウリル硫酸ナトリウム0.05部、スチレン15部、トリレンジイソシアネオト1,5−ペンタンジオールよりなるウレタンプレポリマー1部、ブチルメタクリレート15部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を混合して得たモノマー溶液を、70℃で容器に滴下して反応させ、一次物質を作成した。この一次物質に、過硫酸アンモニウム10%溶液2部を添加して撹拌した。さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン30部、アクリルアミド1部、ブチルメタクリレート15部、ジベンタエリスリトールヘキサメタクリレート1部、t−ドデシルメルカプタン0.6部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら反応容器に添加して重合反応させた。その後反応液をアンモニアで中和してpH8〜8.5とし、0.3μmのフィルターでろ過して、高分子微粒子水溶液を得てエマルジョンDとした。
【0075】以上のようにして得られたエマルジョンA〜Dは、次のような水溶性エマルジョンである。すなわち、エマルジョンAは、コアシェル型構造を有し、コア部がグリシドキシドを含むアクリル酸を用いたポリマーからなり架橋された構造を有し、シェル部はアクリル酸を重合させて表面にアクリル酸のカルボキシル基を有する樹脂からなる。エマルジョンBはコアシェル型構造を有し、コア部がグリシドキシドを含むアクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなり架橋された構造を有し、シェル部がアクリル酸を重合させて表面にアクリル酸のカルボキシル基とアクリルアミドのアミド基を有する樹脂からなる。また、エマルジョンCはコアシェル型構造を有し、コア部がグリシドキシドを含むメタクリル酸を用いたポリマーからなり架橋された構造を有し、シェル部がアクリル酸とメタクリル酸とを重合させて表面にアクリル酸およびメタクリル酸のカルボキシル基とメタクリルアミドのアミド基を有する樹脂からなる。エマルジョンDは、コアシェル型構造を有し、コア部がウレタン結合を含む樹脂と、スチレンとアクリル酸との共重合体との混合物からなり、これら樹脂は架橋された構造を有し、シェル部がメタクリレートとアクリルアミドとを重合させて表面にメタアクリル酸のカルボキシル基とアクリルアミドのアミド基を有する樹脂からなる。
【0076】また、残量の水の中にはインクの腐食防止のためプロキセルXL−2を0.1から1%、インクジェット式記録ヘッドの部材の腐食防止のためベンゾトリアゾールを0.001から0.05%添加した。
【0077】
実施例1 添加量(重量%)
MA100(三菱化学社製)変性物 6.0 サーフィノール465 1.2 エマルジョンA 3.0 グリセリン 15.0 ジエチレングリコール 5.0 2−ピロリドン 5.0 チオジグリコール 3.0 トリエタノールアミン 0.8 水酸化カリウム 0.1 イオン交換水 残量
【0078】
実施例2 MA600(三菱化学社製)変性物(135) 7.5 サーフィノール104 0.1 サーフィノール465 1.9 エマルジョンB 5.0 グリセリン 12.0 2−ピロリドン 20.0 チオジグリコール 4.0 トリエタノールアミン 3.0 水酸化カリウム 0.1 イオン交換水 残量
【0079】
実施例3 Color Black FW18(テグサ社製)変性物(120) 15.0 サーフィノールTG 0.2 サーフィノール465 1.0 エマルジョンC 3.0 グリセリン 7.0 ジエチレングリコール 3.0 2−ピロリドン 1.0 1,5−ペンタンジオール 5.0 トリエタノールアミン 0.5 水酸化カリウム 0.2 イオン交換水 残量
【0080】
実施例4 マイクロジェットCW1(50) 7.0 サーフィノール104 0.2 サーフィノール465 1.2 エマルジョンD 2.5 1,5−ペンタンジオール 5.0 グリセリン 15.0 ジエチレングリコール 5.0 チオジグリコール 5.0 2−ピロリドン 1.0 トリエタノールアミン 2.5 水酸化カリウム 0.01 イオン交換水 残量
【0081】
実施例5 #55RCF(三菱化学社製)変性物(200) 5.0 サーフィノール465 1.2 エマルジョンA 2.5 エマルジョンD 0.5 グリセリン 1.0 トリメチロールプロパン 3.0 2−ピロリドン 15.0 トリエタノールアミン 0.9 水酸化カリウム 0.05 イオン交換水 残量
【0082】
実施例6 MONARCH880(キャボット社製)変性物(60) 5.0 サーフィノール465 0.3 エマルジョンB 10.0 グリセリン 15.0 2−ピロリドン 10.0 トリエタノールアミン 0.5 アンモニア 2.0 水酸化カリウム 0.1 イオン交換水 残量以下の比較例において用いたカーボンブラックの平均粒径はカッコ内に示される通りであった。
【0083】
比較例1 MA100(三菱化学社製)(90) 5.0 トリエチエレングリコール モノメチルエーテル 10.0 エチレングリコール 8.0 分散剤 3.0 ジエチレングリコール モノメチルエーテル 7.0 イオン交換水 残量
【0084】
比較例2 Color Black FW18(デグサ社製)(120) 5.5 グリセリン 10.0 ジエチレングリコール 10.0 2−ピロリドン 5.0 分散剤 3.5 イオン交換水 残量
【0085】
比較例3 MONARK880(キャボット社製)(110) 5.5 ジエチレングリコール 10.0 サーフィノール465 1.0 分散剤 2.5 イオン交換水 残量
【0086】印字評価試験上記のインク組成物を、セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンタ−MJ−930Cに充填し、記録媒体上に画像を形成した。用いた記録媒体は、Conqueror紙、Favorit紙、Modo Copy紙、RapidCopy紙、EPSON EPP紙、Xerox 4024紙、Xerox10紙、Neenha Bond紙、Ricopy 6200紙、やまゆり紙、Xerox R紙、ならびに光沢紙1としてポリエステルジート上にシリカゾルを塗布されたプクトリコ型記録媒体、光沢紙Bとしてポリエステルシート上に樹脂を塗布したもので、インクを膨潤させる膨潤型記録媒体、光沢紙Cとして紙上に平均粒子径500nmのコロイダルシリカをラテックスをバインダーとして塗布したものである。
【0087】得られた画像の印字品質、指触性、および耐水性を次のように評価した。
【0088】印字品質乾燥させた印字物のにじみを次ぎの評価基準で判定した。
評価A:にじみがほとんどない。
評価B:にじみがやや観察されるが、実用上許容される範囲である。
評価C:にじみが観察され、画像を劣化させる。
評価D:にじみにより画像が極めて劣る。
【0089】指触性乾燥させた印字物を、イエロー水性螢光ペン(ゼブラ社製、ZEBRA PEN2)を用いて擦り、印字物の汚れ具合を調べた。
【0090】その結果を次の評価基準で判定した。
評価A:複数回こすっても色が落ちない。
評価B:1回こすっても色が落ちない。
評価C:1回こすると少し色が落ちる。
評価D:1回こすると色が落ちる。
【0091】耐水性乾燥させた印字物に純水を垂らし、1分後の印字物の水滴の痕跡を調べた。その結果を次の評価基準で判定した。
評価A:全く跡が残らない。
評価B:ほとんど跡が残らない。
評価C:少し跡が残る。
評価D:かなり跡が残る。
【0092】以上の結果は次の表に記載されるとおりであった。
【0093】
【表1】


【0094】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインク組成物が好ましく用いられるインクジェット記録装置の主要部の斜視図。
【図2】図1のインクジェット記録装置の一実施例を説明するための主要断面図。
【図3】図1のインクジェット記録装置に用いるインクタンクの主要部の分解斜視図。
【符号の説明】
3 記録ヘッド
6 反応液溜り
6a フォーム
7 インクタンク
9 連通孔
9a 通気孔
20 記録媒体
21 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】顔料と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、水とを少なくとも含んでなり、前記顔料が分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能な顔料であり、かつ前記界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤である、インク組成物。
【請求項2】前記顔料が、その表面に、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはスルホン基の少なくとの一種の官能基またはその塩が結合するよう表面処理によって、分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能なものとされたものである、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】前記顔料がカーボンブラックを主成分としたものである、請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】前記顔料が、平均粒径50〜200nmを有するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】前記顔料を2〜10重量%含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】前記アセチレングリコール系界面活性剤を0.3〜2.0重量%含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】水溶性エマルジョンを更に含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】前記水溶性エマルジョンが、アクリル酸および/またはメタクリル酸を主成分とする樹脂を含んでなるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項9】前記水溶性エマルジョンが、コア部とそれを取り巻くシェル部からなるコアシェル型構造の樹脂粒子を含んでなるものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項10】前記コア部が、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル酸樹脂、および/またはメタクリル酸樹脂からなり、シェル部がアクリル酸および/またはメタクリル酸のカルボキシル基を有する表面を有する樹脂からなる、請求項9に記載のインク組成物。
【請求項11】コア部の樹脂が架橋構造を有するものである、請求項9または10に記載のインク組成物。
【請求項12】前記水溶性有機溶剤が、グリセリン、ジエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、およびチオジグリコールからなる群から選択される一種または二以上のものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項13】2−ピロリドンを更に含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項14】トリエタノールアミンを更に含んでなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項15】pHが7〜11である、請求項1〜14のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項16】水酸化カリウムを更に含んでなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項17】インク組成物を付着させて記録媒体に印字を行う記録方法であって、インク組成物として請求項1〜16のいずれか一項に記載のインク組成物を用いる、方法。
【請求項18】インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として請求項1〜16のいずれか一項に記載のインク組成物を用いる、インクジェット記録方法。
【請求項19】請求項17または18に記載の方法によって記録が行われた、記録物。
【請求項20】記録媒体上にインク滴を吐出するノズル開口を備えたインクジェット式記録ヘッドと、インク容器と、該インク容器からインク組成物を前記記録ヘッドに供給するためのインク供給手段とを少なくとも備えてなるインクジェット記録装置であって、前記インク容器が請求項1〜16のいずれか一項に記載のインク組成物を収納してなる、インクジェット記録装置。
【請求項21】前記インク容器がその中にウレタンフォームを備えてなる、請求項20に記載のインクジェット記録装置。
【請求項22】前記記録ヘッドのノズル面がポリテトラフルオロエチレンと金属との共析メッキが施されてなるものである、請求項20または21に記載のインクジェット記録装置。
【請求項23】カラーインク組成物を吐出する手段を更に備え、インク受容層を有する記録媒体に印字を行う場合、前記カラーインク組成物を印字し、その上に請求項1〜16のいずれか一項に記載のインク組成物を印字する手段を備えてなる、請求項20〜22のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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