説明

インクジェット記録用シート

【課題】黄ばみのない明るい白地が得られ、経時での白地部の黄変が改善され、かつ記録した画像の色再現性に優れるインクジェット記録用シートを提供する。
【解決手段】基紙の少なくとも一方にポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙の該ポリオレフィン樹脂被覆層側に、無機微粒子及びバインダを含有する塗工液を塗設した少なくとも一層のインク受容層を形成するインクジェット記録用シートにおいて、該ポリオレフィン樹脂被覆層が白色顔料と蛍光増白剤を含有し、且つ該インク受容層は蛍光増白剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
写真画質用のインクジェット記録用シートは高品質画像と耐水性を付与する目的で基紙の少なくとも一方をポリオレフィンで被覆したいわゆるレジンコート紙を支持体として好ましく用いられる。
【0003】
前記インクジェット記録用シートは、黄ばみのない好ましい白地を得る為に、支持体に青色顔料を添加する(例えば、特許文献1参照。)、支持体に蛍光増白剤を添加する(例えば、特許文献2参照。)、インク受容層に青色顔料を添加する(例えば、特許文献3参照。)、インク受容層に蛍光増白剤を添加する(例えば、特許文献4参照。)といった方法で青み付けを行うことができる。しかし、青色顔料を添加する方法では白地の黄ばみはキャンセルできるものの明度が低下し、好ましい白色度が得られない。また、インク受容層に蛍光増白剤を添加する方法では蛍光増白剤が空気にさらされ易い環境に添加されることになり、折角好ましい白地に調整しても蛍光増白剤の退色により経時で黄ばみが増してくる問題がある。一方、支持体に青色顔料を添加する方法においては、支持体のポリオレフィンあるいは下引き層中に蛍光増白剤を添加することができるが、いずれの場合でも薄膜中に高濃度の蛍光増白剤を添加することになり、いわゆる濃度消光が発現してこの方法のみでは目的の白地が得られず、結局は青色顔料との併用の手段をとらざるを得ず、明度が損失してしまう。
【特許文献1】特開2003−300377号公報 (請求項1)
【特許文献2】特開2001−310547号公報 (請求項1)
【特許文献3】特開平11−348408号公報 (請求項4)
【特許文献4】特開2005−125692号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は黄ばみのない明るい白地が得られ、経時での白地部の黄変が改善され、かつ記録した画像の色再現性に優れるインクジェット記録用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0006】
1.基紙の少なくとも一方にポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙の該ポリオレフィン樹脂被覆層側に、無機微粒子及びバインダを含有する塗工液を塗設した少なくとも一層のインク受容層を形成するインクジェット記録用シートにおいて、該ポリオレフィン樹脂被覆層が白色顔料と蛍光増白剤を含有し、且つ該インク受容層は蛍光増白剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
【0007】
2.未印字部分の色相がCIE1976で規定されたL*、a*、b*に関して以下の範囲であることを特徴とする前記1記載のインクジェット記録用シート。
【0008】
96≦L*≦98
+1.5≦a*≦+4.0
−12.0≦b*≦−8.5
3.青色顔料を含有しないことを特徴とする前記1又は2記載のインクジェット記録用シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、黄ばみのない明るい白地が得られ、経時での白地部の黄変が改善され、かつ記録した画像の色再現性に優れるインクジェット記録用シートを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を更に詳しく説明する。本発明のように、支持体中に後述する蛍光増白剤を添加し、かつインク受容層中にも蛍光増白剤を添加することにより、好ましい白地が得られるだけではなく、経時での白地の変動および得られた画像の色再現域も拡大することが見出された。
【0011】
インク受容層へ添加する蛍光増白剤としては、例えば、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、ピラゾリン誘導体などを挙げることができる。これらの蛍光増白剤は、例えばチバスペシャルティケミカルズ社よりUvitexシリーズおよびTinopalシリーズ、日本曹達社よりKayacollシリーズ、住友化学工業社よりWhitexシリーズ、日本化薬社よりKayaphorシリーズ、バイエル社よりBlankophorシリーズ等の商品名で市販されているものを利用できる。これらの蛍光増白剤は、水溶性染料の場合、水溶性の置換基の種類によりアニオン性およびカチオン性のものがあるが、いずれを用いてもよく、油溶性染料を分散して利用することもできる。
【0012】
支持体中もしくはインク受容層中に添加される蛍光増白剤は添加量が多いほうが蛍光の効果は高くなるが、単一相中に添加する量を増やしていくと、次第にその効果は飽和してしまう。これは、添加された蛍光増白剤の濃度が高くなることにより蛍光増白剤分子同士の衝突機会が増大することに起因する濃度消光の減少と考えられる。本発明においては支持体のポリオレフィン樹脂中に添加する蛍光増白剤の量は0.01g/m2以上1.0g/m2以下が好ましく、さらに好ましくは0.02g/m2以上0.5g/m2以下であり、インク受容層へ添加する蛍光増白剤の量は0.01g/m2以上1.0g/m2以下が好ましく、0.05g/m2以上0.5g/m2以下がさらに好ましい。
【0013】
支持体の黄ばみを補正し、視覚的な白さを得る目的では従来から青み付けとしてパルプ繊維やインク受容層に群青などの青色顔料を添加することも可能であったが、この場合、明度が大きく低下して白地が暗くなってしまう問題があった。このため、このような目的で使用する青色顔料は少ないほうが明るい白地を得るためには適しており、用いないことが好ましい。
【0014】
視覚的に好ましい白地は、白地の色相と明度の両方が影響する。例えば、好ましい色相が得られても、明度が十分に高くない場合は視覚的に暗い白地となり、明度が十分に高い場合でも色相がずれている場合は視覚的に白さを感じない。このような視覚的な白さはCIE1976で規定されたL*、a*、b*で表現することができる。本発明において好ましいのは
96≦L*≦98
+1.5≦a*≦+4.0
−12.0≦b*≦−8.5
の範囲である。
【0015】
(無機微粒子)
本発明のインクジェット記録用シートが有するインク受容層は、主に無機微粒子と親水性バインダーから形成される。インク受容層を形成する無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。上記無機微粒子は1次粒子のまま用いても、また2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0016】
本発明においては、インクジェット記録用シートで高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、シリカまたはアルミナが好ましく、更にアルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカ、もしくは気相法により合成された微粒子シリカ等が好ましく、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がアルミニウムで修飾されたものであってもよく、気相法シリカのアルミニウム含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0017】
上記無機微粒子の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μmを越えると光沢性、または発色性が低下しやすく、そのため200nm以下が好ましい。更に100nm以下のシリカが最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機微粒子の製造上の観点から、概ね3nm以上、特に5nm以上が好ましい。
【0018】
上記無機微粒子の平均粒径は、インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0019】
上記無機微粒子は、1次粒子のままで或いは2次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で存在していてもよいが、上記平均粒径は、電子顕微鏡で観察した時にインク受容層中で独立の粒子を形成しているものの粒径をいう。
【0020】
上記無機微粒子の平均1次粒子径は、インク受容層中で観測される平均粒径以下である必要があり、無機微粒子の1次粒子径としては100nm以下のものが好ましく、より好ましくは30nm以下、最も好ましくは4〜20nmの微粒子である。
【0021】
上記無機微粒子の水溶性塗布液における含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。上記無機微粒子は、十分なインク受容層性があり、皮膜のひび割れ等が少ないインク受容層を形成する必要があり、インク受容層中には、5〜50g/m2の付き量になることが好ましい。更に、10〜25g/m2になることが特に好ましい。
(バインダ)
本発明に係るインク受容層に含有される親水性バインダとしては、特に制限は無く、従来公知の親水性バインダを用いることができ、例えばゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、本発明のインクジェット記録用シートにおいては、親水性バインダとして、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0022】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子と相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、更には、側鎖に架橋性基を有するポリビニルアルコールを光開始剤下で架橋させた光架橋型ポリビニルアルコールも含まれる。
【0023】
ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,000〜5,000のものが好ましく用いられ、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.8%のものが特に好ましい。
【0024】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されるような、第1〜3級アミノ基や第4級アミノ基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0025】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−メチルビニルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0026】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0027】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平1−206088号に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0028】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平7−9758号に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0029】
紫外線架橋型変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開2004−262236号に記載されているような光反応性側鎖を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0030】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類の違いなど、2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
【0031】
インク受容層の親水性バインダに対する無機微粒子の比率は、質量比で2〜20倍であることが好ましい。質量比が2倍以上であれば、十分な空隙率のインク受容層が得られ、十分な空隙容量を得やすくなり、維持できる親水性バインダによるインクジェット記録時の膨潤によって空隙を塞ぐ状況を招かず、高インク吸収速度を維持できる要因となる。一方、この比率が20倍以下であれば、インク受容層を厚膜で塗布した際、ひび割れが生じにくくなる。特に好ましい親水性バインダに対する無機微粒子の比率は2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0032】
(硬膜剤)
本発明のインクジェット記録用シートは、光沢性に優れ、高い空隙率を被膜の脆弱性を劣化させずに得るために、ポリビニルアルコールが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0033】
硬膜剤は、一般的にはポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物、あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ホウ酸及びその塩、ホウ砂、アルミ明礬、イソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ホウ酸及びその塩、エポキシ系硬膜剤及びイソシアネート化合物が好ましい。
【0034】
ホウ酸及びその塩としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0035】
硬膜剤の使用量はポリビニルアルコールの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類やポリビニルアルコールに対する比率等により変化するが、通常ポリビニルアルコール1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
【0036】
上記硬膜剤は、本発明に用いられるインク受容層形成用水溶性塗布液を塗布する際に、該塗布液中に添加してもよく、あるいはインク受容層形成用水溶性塗布液(硬膜剤非含有)を塗布・乾燥した後でその溶液をオーバーコートするなどして供給することができる。
【0037】
(カチオン性ポリマー)
本発明のインクジェット記録用シートには、記録後の保存による画像の滲みを防止する目的で、カチオン性ポリマーを、インク受容層に用いても良い。
【0038】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、等が挙げられ、特に4級アミンからなるカチオン性ポリマーが好ましい。
【0039】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0040】
カチオン性ポリマーはインクジェット記録用シート1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0041】
(多価金属化合物)
本発明のインクジェット記録用シートにおいては、多価金属化合物をインク受容層に添加することができる。
【0042】
本発明で用いることのできる多価金属化合物は、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛などの金属化合物を挙げることができ、また多価金属化合物は多価金属塩であってもよい。中でもマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛からなる化合物は無色の為好ましく、多価金属化合物がジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物であることが更に好ましく、多価金属化合物がジルコニウム原子を含む化合物であることが特に好ましい。
【0043】
また、本発明で用いることのできるジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物は、無機酸や有機酸の単塩および複塩、有機金属化合物、金属錯体などのいずれであっても良く、またその化合物自身は水溶性であっても非水溶性であっても良いが、インク受容層の所望の位置に均一に添加できるものが好ましい。
【0044】
本発明における多価金属化合物の添加層としては、インク受容層膜厚の表面から60%以内が好ましく、この範囲に全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることが特に好ましい。
【0045】
(支持体)
本発明に用いる支持体は、基紙の少なくとも一方に白色顔料および蛍光増白剤を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)である。
【0046】
本発明においては、支持体中に蛍光増白剤を添加する。支持体中に蛍光増白剤を添加する方法および好ましく用いられる蛍光増白剤としては、例えば、ジアミノスチルベン系、イミダゾール系、チアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、オキサジアゾール系、チアジアゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系、ピラゾリン系、ピレン系、イミダゾロン系、ベンジジン系、ジアミノカルバゾール系、オキサシアニン系、メチン系、ピリジン系、アントラピリダジン系、ジスチリル系、カルボスチリル系等が挙げられる。支持体への添加方法としてはポリオレフィン樹脂と共に溶融押し出しにより高温で基材上に形成されるため、蛍光増白剤は溶融押し出し時の高温に耐えうるものが好ましい。
【0047】
前記支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明のインクジェット記録用シートは必ずしも無色である必要は無く、着色された記録シートであってもい。
【0048】
本発明のインクジェット記録用シートでは原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0049】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0050】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0051】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0052】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%であることが好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0053】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0054】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0055】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0056】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0057】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0058】
特にインク受容層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
【0059】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0060】
上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0061】
(各種の添加剤)
本発明においては、前記した以外に各種の添加剤を添加することができ、例えばポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類等を含有する水性エマルジョン、尿素及びその類似化合物、紫外線吸収剤、褪色防止剤、蛍光増白剤、耐光性向上剤、水酸化ナトリウム及び酢酸ナトリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0062】
(塗布・乾燥方法等)
インクジェット記録用シートの製造方法において、インク受容層を形成する方法としては、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、或いは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0063】
2層以上のインク受容層を同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0064】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、更に好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0065】
塗布及び乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましい。塗布液調製時、塗布時及び乾燥時おいて、表層に含まれる熱可塑性樹脂が製膜しないように、該熱可塑性樹脂のTg以下の温度で塗布液の調製、塗布、乾燥することが好ましい。より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0066】
また、バインダーとして光架橋型のポリビニルアルコールを使用する場合は、塗布後形成した塗膜に対し紫外線、電子線等の電離放射線を照射した後に乾燥することが好ましい。
【0067】
(インク)
本発明の記録用シートは、着色剤含有インクである水系顔料インクまたは水系染料インクの記録用シートとして好適に使用される。
【0068】
水系染料インクとは、水溶性の染料を着色剤として使用したインクで、インク溶媒として水あるいは水と混和性の高い有機溶剤を混合してなるインクである。染料としては、従来公知のアゾ系染料、キサンテン系染料、フタロシアニン系染料、キノン系染料、アントラキノン系染料等をスルホ基あるいはカルボキシ基を導入して水溶性を向上させた、酸性染料や直接染料あるいは塩基性染料が代表的に用いられる。
【0069】
一方、顔料インクに用いられる顔料としては、インクジェットで従来公知の各種の無機もしくは有機の顔料インクを使用することができる。無機顔料インクの例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄などを挙げることができる。また、有機顔料としては、各種のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、あるいは水溶性染料と多価金属イオンを反応させて得られるレーキ顔料などを挙げることができる。
【0070】
これらの顔料粒子は、親水性ポリマーや界面活性剤などの各種の分散剤や分散安定化剤と共に用いることが好ましい。顔料粒子は、これらの分散在野分散安定化剤により平均粒子径が70〜150μm程度にまで分散されたものを用いることが好ましい。
【0071】
上記着色剤である染料及び顔料のインク中における濃度は、染料もしくは顔料の種類、インクの使用形態(濃淡インクを使用するか否か)、更には、記録用紙の種類にも依存するが、概ね0.2〜10質量%である。
【0072】
着色剤含有インク中には各種の溶媒が用いられるが、そのようなインク溶媒としては、水あるいは水と混和性の高い有機溶剤を、単独あるいは水と混合して使用することができる。具体的には、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、2−ピロリジノン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、トリエタノールアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンテトラミン等のアミン類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられ、これらの溶剤は単独で用いても、併用しても良い。
【0073】
また、上記着色剤含有インクには、インク溶媒の浸透性を高める目的及びその他の目的各種界面活性剤を使用することができる。そのような界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましく用いられる。中でもアセチレングリコール系界面活性剤は特に好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
《支持体の作製》
含水率8%、坪量170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタン6質量%および蛍光増白剤(W−1)0.1質量%含有するポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ40μmのポリエチレンを押し出し溶融塗布した。表面側は、コロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA235)を記録媒体1m2あたり0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側には、コロナ放電した後、Tgが約80℃のスチレン・アクリル酸エステルラテックスバインダ約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)0.1gおよび約2μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0076】
《シリカ分散液の作製》
(シリカ分散液D−1の作製)
水 4000ml
ホウ酸 17g
ホウ砂 20g
カチオン性ポリマー(P−1)25%水溶液 600ml
蛍光増白剤(Uvitex NFW liq.) 9.09g
無機微粒子として、気相法シリカ(平均一次粒子径 約12nm)を1kg用意し、これに上記添加剤を添加した後、三和株式会社製の高圧ホモジナイザーで分散し、水で5500mlに仕上げ、シリカ分散液D−1を得た。
【0077】
【化1】

【0078】
(シリカ分散液D−2の調製)
上記シリカ分散液D−1の調製において、カチオン性ポリマー(P−1)を、カチオン性ポリマー(P−2)に変更した以外は同様にして、シリカ分散液D−2を調製した。
【0079】
【化2】

【0080】
(シリカ分散液D−3の調製)
上記シリカ分散液D−2の調製において、カチオン性ポリマー(P−1)を、塩基性塩化アルミニウム水溶液(多木化学製:タキバイン#1500、Al23として23.75%)に変更した以外は同様にして、シリカ分散液D−3を得た。
【0081】
《インクジェット記録用シートの作製》
[試料101の作製]
前述の支持体の表面に対し、下記の第1層〜第4層塗布液を湿潤膜厚が55、55、55、15μmになるように塗布し、5℃で10秒間冷却した後、40℃の風で乾燥させて試料101を作製した。試料101に含まれる蛍光増白剤の量は、支持体中0.035g/m2、インク受容層中0.15g/m2となった。
【0082】
(第1層(最下層)塗布液)
シリカ分散液D−1 550g
濃度6%のポリビニルアルコール(クラレ製PVA235)水溶液 280g
全体の液が1000mlになるように純水を加えて塗布液を調製した。
【0083】
(第2層塗布液)
シリカ分散液D−1 550g
濃度6%のポリビニルアルコール(クラレ製PVA235)水溶液 280g
全体の液が1000mlになるように純水を加えて塗布液を調製した。
【0084】
(第3層塗布液)
シリカ分散液D−2 550g
濃度6%のポリビニルアルコール(クラレ製PVA235)水溶液 280g
濃度20%の酢酸ジルコニル水溶液(ジルコゾールZA;第一希元素化学工業(株)製を水で希釈) 27g
全体の液が1000mlになるように純水を加えて塗布液を調製した。
【0085】
(第4層(最表層)塗布液)
シリカ分散液D−2 550g
濃度6%のポリビニルアルコール(クラレ製PVA235)水溶液 280g
濃度4%のカチオン性界面活性剤(花王製コータミン24P) 4ml
全体の液が1000mlになるように純水を加えて塗布液を調製した。
【0086】
[試料102〜108の作製]
試料101において、下記表1に示すように支持体およびインク受容層に使用する蛍光増白剤および青色顔料の添加有無を変更する以外は同様にして試料102〜108を作製した。なお青色顔料は群青を使用し、支持体の原紙中、第1層塗布液にそれぞれ微量添加した。
【0087】
《評価》
上記の方法によって作製した各インクジェット記録シートについて、下記評価を行った。
【0088】
(白地)
得られたインクジェット記録用シートの白地部分についてCIE1976で規定されたL*、a*、b*を測定した。また、目視による白地の好ましさを以下の4段階で評価した
A:色味、明るさともに好ましい領域にあり、非常に優れている
B:色味、明るさのいずれか一方が好ましい範囲になく、十分なレベルではない
C:色味、明るさの両方とも好ましくなく、美観を損ねる
D:色味、明るさの少なくとも一方が大きく劣り、美観を著しく損ねる。
【0089】
(白地部保存性)
得られたインクジェット記録用シートに下記の条件の強制劣化試験を施した前後のL*、a*、b*を測定し、白身の変化ΔEを算出した。
【0090】
光保存性
キセノンアークランプにて70,000ルクスの光を7日間連続照射
熱保存性
55℃の環境下に7日間保存。
【0091】
(色再現性)
得られたインクジェット記録用シートにPM−G800(セイコーエプソン(株)製)でシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、グリーン、ブルーのベタパッチを印字し、GretagSpectrolino色差計(Gretag(株)製)にて、白地部と前期7色を含む計8色のL*、a*、b*を測色した。その後、測定値を用いてL*、a*、b*空間体積(GM:GumatVolum)を算出した。なお、GMが大きいほど色再現性は高い。
【0092】
【表1】

【0093】
表1から本発明の試料は、黄ばみのない明るい白地が得られ、経時での白地部の黄変が改善され、かつ記録した画像の色再現性に優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の少なくとも一方にポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙の該ポリオレフィン樹脂被覆層側に、無機微粒子及びバインダを含有する塗工液を塗設した少なくとも一層のインク受容層を形成するインクジェット記録用シートにおいて、該ポリオレフィン樹脂被覆層が白色顔料と蛍光増白剤を含有し、且つ該インク受容層は蛍光増白剤を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
【請求項2】
未印字部分の色相がCIE1976で規定されたL*、a*、b*に関して以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用シート。
96≦L*≦98
+1.5≦a*≦+4.0
−12.0≦b*≦−8.5
【請求項3】
青色顔料を含有しないことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用シート。

【公開番号】特開2007−111883(P2007−111883A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302837(P2005−302837)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】