説明

インクジェット記録用紙、並びにその成形加工品、その作成用セット、及び当該用紙を用いたお面の作成販売システム

【課題】 成形加工が可能で、かつインクジェット記録方式によって美麗な印画をすることができ、しかも基材が紙であるインクジェット記録用紙を提供すること、さらにはそれを用いた成形加工品や成形加工品作成用セット、及び当該用紙を用いたお面の作成販売システムを提供すること。
【解決手段】 成形加工できる紙を基紙として用い、これにインク受理層を設けること。さらには、画像ソフト、型、成形加工装置と組み合わせてセットを構成すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用紙に関し、さらに詳しくは、基紙とインク受理層を有するインクジェット記録用紙であって、基紙が成形加工できる紙であることを特徴とするインクジェット記録用紙に関するものである。更に、それを用いた成形加工品や成形加工品作成用セット、及び当該用紙を用いたお面の作成販売システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
平坦な板状やシート状の素材に、型を押し付ける等の手段によって凹凸を付け、半立体的な製品とすることが、幅広く行なわれている。これらは非常に多様であるが、一例を挙げると、プラスチックシートに真空成形加工を施して、容器を製造することなどが行なわれている。このような成形加工の素材としては、従来、プラスチックが用いられてきたが、紙においても、成形加工に適するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。紙を用いた場合、様々な利点があるが、従来の成形加工に適する紙は、インクジェット記録方式に適さないという問題があった。印刷と比較して、インクジェット記録方式は小部数のものへの対応が容易であり、オリジナルデザインのものや作製部数が少数のもの、日付、会員番号等の可変情報を盛り込む必要があるものの作成等、有用な用途が幅広い。しかし、従来の成形加工に適する紙は、印画や印字がにじんだり、インク吸収性が不足したりするため、これらの用途に利用することが困難であった。
【0003】
一方、インクジェット記録用シートの分野において、過去に、本発明者は、成形加工に適するインクジェット記録用シートを提案した(特許文献2参照)。これは、インク受理層を改良したものである。従来のインク受理層でも成形加工は可能であるが、ひび割れ等の問題があるので、それらの問題を解決し、美麗な成形加工品を製造可能としたものである。しかし、これは、基材としてプラスチックフィルムを用いるものであった。基材として紙を用いることが可能であれば、焼却が容易である、プラスチックとは異なる紙の風合いを感じられる、筆記や折り曲げが容易である等の利点を有する。特に、プラスチックは焼却処理した場合に、有毒ガスが発生したり、焼却炉を傷めたりすることがあり、一部のものを除いて土中に埋め立ても分解されない等、環境上の問題が大きいが、紙は焼却が容易である。従って、基材が紙であるものが求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−293282号公報
【特許文献2】特開2004−34456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況で、成形加工が可能で、かつインクジェット記録方式によって美麗な印画をすることができ、しかも基材が紙であるインクジェット記録用紙を提供すること、さらにはそれを用いた成形加工品や成形加工品作成用セット、及び当該用紙を用いたお面の作成販売システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意研究の結果、成形加工できる紙を基紙として用い、これにインク受理層を設けることによって、解決し得ることを見出した。さらに、本発明者は、それに適する基紙とインク受理層を見出し、また、それらを利用した成形加工品や成形加工品作成用セット、及び当該用紙を用いたお面の作成販売システムを発明した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)基紙とインク受理層を有するインクジェット記録用紙であって、基紙が成形加工できる紙であることを特徴とするインクジェット記録用紙、
(2)基紙が、加熱しなくとも成形加工できる紙である(1)のインクジェット記録用紙、
(3)インク受理層が、成形加工用のインク受理層である(1)又は(2)のインクジェット記録用紙、
(4)基紙が、JIS P 8131に規定された破裂強さ試験器を用いて破裂直前まで加圧した際の変形量が、6mm以上16mm以下である(1)〜(3)のいずれかのインクジェット記録用紙、
(5)基紙が、JIS P 8131により規定された引張破断伸びにおいて、縦方向が15%以上50%未満、横方向が15%以上50%未満である(1)〜(4)のいずれかのインクジェット記録用紙、
(6)インク受理層が、100%モジュラスが0.1〜40MPaの範囲である樹脂からなる結着剤を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのインクジェット記録用紙、
(7)インク受理層が、炭酸カルシウムを含む填料を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかのインクジェット記録用紙、
(8)インク受理層が、可塑剤を含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかのインクジェット記録用紙、
(9)(1)〜(8)のいずれかのインクジェット記録用紙を用いて製造された成形加工品、
(10)画像ソフト、型、成形加工装置のいずれか1つ以上と、(1)〜(8)のいずれかのインクジェット記録用紙との組み合わせからなる成形加工品作成用セット、
(11)(1)〜(8)のいずれかのインクジェット記録用紙とお面の型とを常備し、デジタルカメラによって撮影された画像を用いることを特徴とするオリジナルなお面の作成販売システム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形加工が可能で、かつインクジェット記録方式によって美麗な印画をすることができ、しかも基材が紙であるインクジェット記録用紙を提供すること、さらにはそれを用いた成形加工品や成形加工品作成用セット、及び当該用紙を用いたお面の作成販売システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明における成形加工は、とくに限定されないが、代表的なものとして、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形が挙げられる。真空成形は、シート状物を真空減圧により型に引きつける方法である。圧空成形は、シート状物を圧縮空気で型に押しつける成形方法である。真空・圧空成形は、両成形方法を組み合わせた成形方式である。また、これらの他にも、型やそれに代わるものを押し付けて加工することなども含まれる。本発明でいう成形加工できる紙とは、単なる緩やかな凹凸ではなく、目的とする形状を真空成形と同等かそれに近い程度に実現できる紙である。従って、例えば、真空成形用に製造された紙はこれに該当する。また、例えば日本製紙株式会社製の商品名「ウェイビーウェイビー」は、型を押し付けたり、クッションの上に置いておいて棒状のもので擦りつけたりするだけで形状を形成することができるので、これも該当する。
【0010】
本発明で基紙として用いる紙は、成形加工できる紙であれば、特に限定されない。例として上質紙、中質紙、パルプ紙、ファンシーペーパー、クラフト紙などがあげられ、また、前記の日本製紙株式会社製の商品名「ウェイビーウェイビー」のような特殊な紙も含まれる。
紙の原料である木材パルプとしては、NBKP(針葉樹晒しパルプ)、LBKP(広葉樹晒しパルプ)、NBSP(針葉樹晒しサルファイドパルプ)、GP(砕木パルプ)、TMP(熱処理機械パルプ)等が挙げられ、非木材パルプと称されるものとしては、ケナフ、竹、リンター、麻、バガス、ワラ、アシ、エスパルト、バナナ等が挙げられ、その他のパルプとしては合成パルプ等が挙げられる。また、古紙パルプを用いてもよい。これらは、必要に応じて単独であるいは併用して用いられる。さらに、これらに合成繊維を混合して用いてもよい。
【0011】
基紙にはさらに、目的に応じて、添加剤を含有させてもよい。例えば、木材パルプを主体とする紙である場合、内添サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、石油樹脂系サイズ剤などを用いることができる。
また、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、保湿剤、改質剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することもできる。また、カオリン、チタン、炭酸カルシウム、タルクなどの填料を添加してもよい。
また、抄紙機としては、長網抄紙機、丸網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種の公知のものを用いることができる。
また、基紙としては、特表平11−509276公報に記載されているような収縮付与装置によって処理された破断伸びに優れる紙や、エンボス加工を施した紙を用いてもよい。
【0012】
成形加工を行なう際に加熱することは一般的な技術であるが、本発明においては、成形加工において加熱を必要としない紙を用いることが好ましい。加熱を必要としなければ、加工装置上の制約が少ないので、大幅に用途が広がる。加熱を必要としない紙としては、例えば、前記の日本製紙株式会社製の商品名「ウェイビーウェイビー」が挙げられる。また、加熱の必要を失くしたり低減させる技術として、特開2003−293282号公報には、圧空成形または真空成形の際に予熱を必要とせず、60℃未満の加工温度で成形可能であって、JIS P 8131に規定された破裂強さ試験器を用いて破裂直前まで加圧した際の変形量が、6mm以上16mm以下である成形用紙基材が記載されている。さらに、JIS P 8113に規定された引張破断伸びにおいて、縦方向が15%以上50%未満、横方向が15%以上50%未満である前記の成形用紙基材が記載されている。また、これらの製造方法も記載されている。これらの技術を用いてもよい。
【0013】
インク受理層には、填料を含有させることが好ましい。使用できる填料としては、特に有機、無機化合物の制限はなく、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、けいそう土、ポリスチレン、ポリメタクリレート、酸化チタン、焼成カオリン、含水マグネシウムシリケート等が挙げられる。これらの填料は、一種単独、又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
インク受理層中には、上記填料の他に、通常は結着剤を含有する。使用できる結着剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ゼラチン、ポリビニルアセタール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリプロピレン、バーサチック酸ビニル重合体、これらの共重合物、さらにはスチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、これらの共重合物等が挙げられる。
これらの結着剤は、一種単独、又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
さらに、インク受理層にカチオン性物質を含有させることが好ましい。使用可能なカチオン性物質としては、インクジェット用の染料インクあるいは顔料インクのスルフォン基、カルボキシル基などと反応して水不溶性塩を形成する各種樹脂類、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩などを含有するカチオン性樹脂類などが挙げられる。その具体例として、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアミン、モノアリルアミン塩酸塩の重合体、ジアリルアミン塩酸塩の重合体、モノアリルアミン塩酸塩−ジアリルアミン塩酸塩の共重合体、アクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩の重合体、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミド縮合物、2級アミン・エピクロルヒドリン付加重合物、ポリエポキシアミン、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミン塩酸塩、アリルアミン−ジアリルアミン共重合体、アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、エピクロルヒドリンポリアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ジシアンジアミドポリエチレンアミンおよびポリジメチルアミンアンモニウムエピクロルヒドリンなどの化合物を挙げることができる。
上記、カチオン性物質は、一種単独もしくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
さらに、インク受理層には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、防腐剤、顔料分散剤、増粘剤などの各種添加剤を含有させることができる。これらは、インク受理層形成用の塗工液に含有させて塗工することができる。
【0017】
本発明のインク受理層は、インクジェット記録方法に適するものであれば、特に限定されず、上記のようなインク受理層を用いることができる。しかし、成形加工用のインク受理層であることが好ましい。成形加工用のインク受理層とは、前記の特開2004−34456号公報に記載されたもののように、成形加工に適するように設計されたインク受理層であり、特にひび割れしないことが重要である。通常のインク受理層は、美麗な印画が可能であるが、成形加工されて引き伸ばされると、ひび割れや画像濃度の大幅な低下が発生する。ひび割れが生じると、ひび割れ自体が目立って外観を損なうことになる。また、目立たない様な微細なひび割れも生じるが、この場合でもひび割れが生じた部分では画像の濃度が低下するという問題が発生する。即ち、画像濃度は、成形加工時の引き伸ばしにより低下するばかりでなく、この微細なひび割れに因ってよりいっそう低下する結果となる。従って、ひび割れが生じにくいインク受理層が好ましく、更にはひび割れ防止以外にも画像濃度の低下を抑制する機能を持つインク受理層が好ましい。
【0018】
ひび割れを防止するために、本発明者は、結着剤の特性に着目した。前記の特開2004−34456号公報に詳しく記載したが、100%モジュラスが0.1〜40MPaの範囲である樹脂からなる結着剤を含有させることが好ましい。ここで言う100%モジュラスは、試験片(試験片作成条件:120℃×1hr、膜厚:0.1〜0.2mm、形状:ダンベル2号)を引張り試験機で500mm/minのスピードで100%伸ばした時点の応力であり、JIS K 6251−1993に準拠したものである。この値が0.1MPa未満の値のものであると、インク受理層の耐擦過性が低下する。特に、印画部の耐擦過性や水を含んだ状態での耐擦過性が大きく低下する。一方、40MPaを超える値のものであると、成形加工を施した際にインク受理層にひび割れが生じやすい。100%モジュラスのより好ましい範囲は、1.5〜20MPaである。
【0019】
かかる条件を満たす結着剤として使用し得る物質としては、ウレタン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、アクリル、塩素化ポリプロピレン及びバーサチック酸ビニル並びにこれらの共重合物、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、などが挙げられる。特に、ウレタンの共重合物、アクリルの共重合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ゴム系の共重合物は、100%モジュラスの値が小さいものを得やすいので好適である。中でも無黄変型カチオン性ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
更にまた、結着剤は、前記100%モジュラスの測定の場合と同じ試験片についてJIS K 6251−1993に準拠して測定した伸びが、300〜2000%であるものが好ましく、300%未満では成形加工を施した際にインク受理層にひび割れが生じやすく、2000%を超えるとインク受理層の耐擦過性が低下しやすい。特に成形加工後の耐擦過性が低下しやすい。より好ましい伸びの範囲は、500〜1500%である。
インク受理層中の結着剤の含有量は、30〜45重量%、特に35〜40重量%が好ましい。結着剤の含有量がこの範囲より少ないと、インク受理層の強度が低下しやすくなり、逆に、この範囲より多いと、インク吸収性が低下しやすくなる。
【0021】
また、100%モジュラスが0.1〜40MPaの範囲である樹脂からなる結着剤を用いる場合、ひび割れを防止する効果を向上させるためには、填料としては、炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムとしては、アラゴナイト質のものが、インク吸収性を向上させるため、好適である。
【0022】
また、100%モジュラスが0.1〜40MPaの範囲である樹脂を用いる場合、インク受理層に可塑剤を含有させることも、ひび割れ防止効果を向上させるので好ましい。可塑剤は、特に制限はなく、グリコール類、グリセリン、リン酸エステル類、フタル酸エステル、脂肪族2塩基酸エステル、グリコールエステル、脂肪酸エステル、エーテルエステル系のものなどを挙げることができる。これらの中で、ひび割れ防止効果を向上させる点では、エーテルエステル系のものが好適である。
【0023】
本発明のインクジェット記録用紙は、基紙の少なくとも一方の面にインク受理層を有するものであり、インク受理層は基材の片面に設けてもよいし、カール防止等の目的で両面に設けてもよい。また本発明に用いられるインク受理層は、ひび割れ防止の目的等により、基材の1つの面に二層以上設けてもよい。
さらに、本発明のインクジェット記録用紙には、本発明の効果を損なわない範囲でインク受理以外の目的を有する層も設けてもよく、例えば、隠蔽性を向上させる目的で、適当な不透明度を有する層を設けてもよく、紫外線吸収層を設けてもよい。また、カール防止のための層を設けてもよい。
【0024】
かかる本発明のインクジェット記録用紙のインク受理層は、次のようにして形成することができる。
インク受理層は、必要な成分を分散させたり溶解させた塗工液を塗工して乾燥させることなどによって形成することができる。塗工は、インバースロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、グラビアコート、ブレードコート、コンマコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート等の従来公知の種々の方法を用いることが可能である。
また、インク受理層は、同層の乾燥後の質量が10〜60g/mとなるように設けることが、インク吸収性や強度の面から好ましい。
【0025】
本発明のインクジェット記録用紙を用いて、様々な成形加工品を製造することが可能である。一般的には、本発明のインクジェット記録用紙に、各種のインクジェットプリンターで印画を行い、その絵柄に合わせた形状の型を別途作成し、その型を用いて成形加工を行い、絵柄が半立体的に浮き出たレリーフ状の成形加工品を製造する。しかし、この方法に限られるものではない。例えば、型を用いず、絵柄の反対側から棒を押し付けて必要な部分を盛り上げてもよい。また、必ずしも絵柄部分が成形されていなくともよく、例えば、絵柄はゴルフ場の写真であって、白紙部がゴルフボールの形状に盛り上がった案内状を作成することなども可能である。
【0026】
また、本発明のインクジェット記録用紙を用いて、成形加工品作成用のセットを作ることが可能である。
例えば、各種の地図の画像データを収容したCD−ROMと本発明のインクジェット記録用紙を組み合わせた、立体地図作成用のセットが考えられる。この場合は、棒で裏面から押すだけで盛り上げることができる基紙を用いる。利用者は、好みのデータを選択してインクジェットプリンターで印画した後、地図の等高線に従って、棒などを用いて山や丘などの部分を盛り上げ、実際の地形が実感できる立体地図を作成することができる。すべての地図を当初から立体化して店頭で販売するのに比べ、要するスペースを大幅に節約できる。また、地図を販売する店舗に成形加工用の装置を設置し、需要が大きい地図に対する型を用意しておけば、その地図に関しては、顧客から依頼された際に正確な立体地図を作成して販売することもできる。
上記のような成形加工品作成用のセットには、表面保護用の加工に用いるための素材や装置を加えてもよい。表面保護用の加工としては、ラミネートフィルムを積層する方式(コールドタイプ及びホットタイプ)、樹脂を主体とする表面保護層を熱転写する方式、表面保護層を形成する液体を塗工する方式等が挙げられる。
【0027】
また、次のような、お面の作成販売システムも考えられる。すなわち、販売業者が、本発明のインクジェット記録用紙と、インクジェットプリンター、お面の型を用意しておく。例えば、顧客がデジタルカメラで撮影した顔写真のデータを持参し、販売業者がその場でプリントし、お面の型を用いて成形加工を行い、お面にする。丸顔、細長い顔等の型を用意しておいて適宜選択し、顔がその型と同じ大きさになるようにプリントすれば、容易にオリジナルのお面が作成できる。デジタルカメラを常備しておいて、その場で撮影してもよい。型を手で押し付けるだけでも作成可能であるが、成形加工装置も設置しておき、成形の深さ、精度、早さを向上させるとより好ましい。
【0028】
本発明において、基紙として加熱しなくとも成形加工できる紙を用いた場合、成形加工装置を用いるとしても、加熱用の部分が不要なので、経済性と安全性に優れた簡易な装置で済む。また、用途により、型のみでよい場合や、型すらなくともよい場合も有る。その上、インクジェットプリンターは企業、学校、家庭等への普及度が高いので、本発明のインクジェット記録用紙を用いることにより、様々な用途展開が可能となる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、インクジェット記録用紙の性能は、以下に示す方法に従って評価した。
また、印画に使用したプリンターは、セイコーエプソン社製の顔料タイプのインクジェットプリンター(機種名:MC9000)で、純正のインクを用いた。
【0030】
(1)インク吸収性
インクジェット記録用紙に、白抜き文字にじみパターン(インク射出量170%)をレッド(マゼンタとイエローの混色)とグリーン(シアンとイエローの混色)の2パターン印画した後、印画部を軽く擦り、インクが白紙部に移行しなくなるまでの時間を測定し、下記の判定基準で評価した。
○:1分未満
△:1分以上3分未満
×:3分以上
【0031】
(2)にじみ
インクジェット記録用紙に、白抜き文字にじみパターン(インク射出量170%)をレッド(マゼンタとイエローの混色)とグリーン(シアンとイエローの混色)の2パターン印画し、にじみを目視で観察し、下記の判定基準で評価した。
○:にじみなし
△:にじみが発生したが、実用上支障なし
×:にじみの発生が多く、実用上支障あり
【0032】
(3)成形加工品の外観
写真撮影したミカンの画像を、インクジェット記録用紙に印画した。長径が約4cm、短径が約3cmの楕円形の画像となった。印画後のインクジェット記録用紙をクッションの上に画像をクッションと接するようにして置いて、画像が有る部分の裏を棒の先で強くこすることを繰り返して変形させた。形状としては、画像が有る面から見た際に、輪郭部から中央部へ向かってなだらかに盛り上がった形状となり、最も高く盛り上がっている部分が、平坦部に比べて1cm高い形状であった。得られた成形加工品の外観を下記の判定基準で評価した。
〇:ひび割れと画像濃度の低下が殆どなく、展示広告物として好適に使用できるレベルである
△:ひび割れと画像濃度の低下が少しあるが、展示広告物として充分使用できるレベルである
×:ひび割れや画像濃度の低下がやや目立ち、展示広告物として好ましくない
【0033】
実施例1
基紙として、成形加工が可能な紙〔日本製紙社製、商品名:ウェイビーウェイビー WV150〕を用いた。
【0034】
インク受理層形成用塗工液として、次の成分の均一混合物を用いた。
(1) シリカ(填料)〔富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア440、固形分濃度:100重量%、コールターカウンター法平均粒子径:3.5μm〕12.02重量部
(2) 炭酸カルシウム(填料)〔丸尾カルシウム社製、商品名:軽質炭酸カルシウム、固形分濃度:100重量%、カルサイト質〕20.03重量部
(3) ウレタン(結着剤)〔旭電化工業社製、商品名:UX−159−10、無黄変カチオン性ポリウレタン樹脂、固形分濃度:30.80重量%、100%モジュラス:5.2MPa、伸び:550%〕88.79重量部
(4) ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの付加重合物(カチオン化剤)〔日華化学社製、商品名:ネオフィックスRE、固形分濃度:40重量%〕24.32重量部
(5)水44.20重量部
【0035】
基紙に、インク受理層形成用塗工液を、同液の固形分質量で30g/mとなるように塗工して、インク受理層を形成することにより、インクジェット記録用紙を作製した。
【0036】
上記実施例1で得られたインクジェット記録用紙について、(1)インク吸収性、(2)にじみ、(3)成形加工品の外観を評価し、その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙とインク受理層を有するインクジェット記録用紙であって、基紙が成形加工できる紙であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】
基紙が、加熱しなくとも成形加工できる紙である請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項3】
インク受理層が、成形加工用のインク受理層である請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項4】
基紙が、JIS P 8131に規定された破裂強さ試験器を用いて破裂直前まで加圧した際の変形量が、6mm以上16mm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項5】
基紙が、JIS P 8131により規定された引張破断伸びにおいて、縦方向が15%以上50%未満、横方向が15%以上50%未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項6】
インク受理層が、100%モジュラスが0.1〜40MPaの範囲である樹脂からなる結着剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項7】
インク受理層が、炭酸カルシウムを含む填料を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項8】
インク受理層が、可塑剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙を用いて製造された成形加工品。
【請求項10】
画像ソフト、型、成形加工装置のいずれか1つ以上と、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙との組み合わせからなる成形加工品作成用セット。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙とお面の型とを常備し、デジタルカメラによって撮影された画像を用いることを特徴とするオリジナルなお面の作成販売システム。

【公開番号】特開2006−82384(P2006−82384A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269349(P2004−269349)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】