説明

インクジェット記録装置

【課題】複数のプラテンに分割され、それぞれのプラテン間に隙間があるプラテンであっても、プラテン間で不連続な温度差を生じさせない。
【解決手段】インクを吐出する記録ヘッドを用いて搬送される記録媒体に記録を行なうインクジェット記録装置であって、記録媒体のインクがされる面に熱を伝えて前記記録媒体に付与されたインクを乾燥させる加熱部と、前記記録媒体を支持するプラテンと、を備え、前記プラテンは複数に分割され、分割されたプラテン11a、11bはそれぞれ隙間を空けて配置され、分割されたプラテン11a、11bは、隣接するプラテンと相互に前記プラテンよりも熱伝導率の高い熱的接続手段により接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関し、特に、加熱部で記録媒体上のインクを乾燥して定着するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置に用いられるプラテンは、複数のプラテンに分割して設置されることがある(例えば特許文献1参照)。記録ヘッドの吐出面からプラテンの記録媒体を支持する支持面までの距離を同じ距離に保つためには、単一部材でプラテンを構成するよりも複数に分割したほうが容易である。また、大判な記録媒体に記録を行なう記録装置では、大きなプラテンを用意するよりも、小さいプラテンを複数用意した方が、コスト面で有利であるからである。
【0003】
加熱部で記録媒体上のインクを乾燥して定着するインクジェット記録装置に、このような分割されたプラテンを用いる場合、それぞれ隣接するプラテンが当接しないように間に隙間を設けることがある。これは、プラテンは、加熱部による温度上昇で熱膨張することにより、隣接する部材間で干渉がおこらないようにするためである。すなわち、プラテン、プラテンを支えるプラテンベース、記録装置の筺体などの熱膨張率の異なる部材同士が固定されると伸び量差による歪が各部材に発生して変形などの支障をきたすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−182168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般にプラテンの走査方向において、加熱部からの加熱による熱量が異なり、その結果、プラテンの走査方向の領域によって、温度が異なることがある。
【0006】
例えば、端部に位置するプラテンが加熱部により受ける熱量は、中心部に位置するプラテンが受ける熱量よりも少なく、中心部に位置するプラテンより温度が上昇しない。
【0007】
また、プラテンの走査方向の領域で記録媒体に覆われている領域と覆われていない領域がある場合、プラテンの記録媒体に覆われている領域は、加熱部から直接加熱されることがない。しかしながら、プラテンの記録媒体に覆われていない領域は、加熱部から直接加熱され、設定温度から温度が上昇することがある。
【0008】
このような場合、隣接するプラテンがそれぞれ隙間を空けて配置されていると、プラテン間に温度差が生じ、不連続な温度差が生じる。その結果、記録媒体の2つのプラテンに亘る領域に温度勾配が生じ、乾燥むらが生じる。そして、その乾燥むらにより濃度むらが生じ、画像の品質が低下することになる。
【0009】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、複数のプラテンに分割され、それぞれ隣接するプラテンが当接しないように間に隙間を設が設けられたプラテンであっても、プラテン間で不連続な温度差を生じないインクジェット記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明では、インクを吐出する記録ヘッドを用いて搬送される記録媒体に記録を行なうインクジェット記録装置であって、記録媒体のインクが付与される面に熱を伝えて前記記録媒体に付与されたインクを乾燥させる加熱部と、前記記録媒体を支持するプラテンと、を備え、前記プラテンは複数に分割され、前記分割されたプラテンはそれぞれ隙間を空けて配置され、前記分割されたプラテンは、隣接するプラテンと相互に前記プラテンよりも熱伝導率の高い熱的接続手段により接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成によれば、熱的接続手段により温度が高いプラテンの熱が温度の低いプラテンに伝わり、プラテン間の温度がほぼ一定の温度になる。これにより、記録媒体の乾燥むらを低減する。その結果、濃度むらを低減し、記録品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態の記録部の要部を示す概略図である。
【図3】記録部における熱収支を説明する説明図である。
【図4】第1の実施形態の温度分布と記録ムラの関係を示す説明図である。
【図5】プラテンがヒータから受け取る熱量の差を説明する説明図である。
【図6】第1の実施形態のプラテンと下流プラテンとを示す斜視図である。
【図7】第2の実施形態のプラテンと接続ブロックを示す斜視図である。
【図8】第3の実施形態のラテンと接続シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。本実施形態の記録装置は、大判の記録媒体に記録を行なう記録装置である。図1(a)は、通常使用するときの状態を示しており、図1(b)は、加熱部を開閉したときの状態を示している。
【0014】
本実施形態の記録装置本体1は、搬送路に沿って搬送される記録媒体Pに記録を行う記録部と、記録媒体Pの記録面に対向し、ヒータの温風により記録媒体の記録面に吐出されたインクを乾燥してインクを定着する加熱部を備えている。また、本実施形態の記録装置本体1は、記録媒体がウェブ状に巻き取られた未使用のロール紙が装着されている記録媒体供給部2を備えている。
【0015】
記録媒体供給部2から引き出された記録媒体Pは、回転駆動力が与えられた搬送ローラ3と従動回転するピンチローラ4からなる搬送ローラ対によって挟持される。搬送ローラ3とピンチローラ4は使用が想定される最大の記録媒体幅に対応した長さに渡り、複数に分割もしくは一体物として形成されている。
【0016】
記録媒体Pは、搬送ローラ3の回転によって搬送され、副走査方向に移動する。そして記録媒体Pは、記録部を通過する。記録部は、インクジェット記録ヘッド10を保持して主走査方向に往復移動するキャリッジ5と、記録媒体が搬送される搬送路において記録位置において記録媒体Pを支持しかつ案内するプラテン11とを有する。このプラテン11は、装置本体1の金属製筺体に対して、プラテンベース13を介して保持されている。また、プラテン11は、後述するように長手方向(主走査方向)に分割された複数のプラテン11a〜11dよって構成されている。プラテン11a〜11dのうち、少なくとも隣接するプラテン同士は、後述する熱的接続手段によって熱的に接続されている。
【0017】
また、本実施形態の記録装置1には、搬送ローラ3の回転を検出するロータリエンコーダが設けられている。また、往復移動するキャリッジ5の位置を検出するためのリニアエンコーダが設けられている。
【0018】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、ヒータを用いた方式を用いているが、本発明はヒータを用いた方式に限定されず、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMP素子を用いた方式、いずれであってもよい。また、本実施形態では、エマルションインク(分散系インク)を使用している。このエマルションインクは、記録媒体上に吐出着弾されたインク滴に熱を加えることで膜を形成して記録媒体表面に固化定着する。そのために本記録装置には、インクが吐出された記録媒体Pを加熱する加熱部8が設けられている。
【0019】
記録部の下流には連続した記録媒体Pの下面を案内する下流プラテン12と、さらに下流側で記録媒体Pを排出するための排出ローラ9が設けられている。記録がなされた記録媒体Pは、図中の左方向から装置本体1の外に排出されて下方向(重力方向)に落下する。なお、搬送路に沿って記録時に記録媒体Pが搬送される方向において、記録媒体供給部2の側を上流、記録なされた記録媒体が排出される側を下流というものとする。
【0020】
記録部の上方には、プラテンの上にある記録媒体Pを加熱してインク画像を乾燥定着する定着装置としての加熱部8が設けられている。加熱部8は、装置本体1に対して回動可能となるように装置本体1に回転軸63によって支持される第1ユニット6と、第1ユニット6の回動に関連した所定の軌跡で移動する第2ユニット7とを有する。加熱部8は、図1(a)に示すように装置本体1に対して閉じられた第1状態と、図1(b)に示すようにジャム処理や各種メンテナンスのために装置本体1に対して開放された第2状態との間で移動することができる。加熱部8を装置本体1に対して開閉する際、第1ユニット6の回動に伴って第2ユニット7は所定の軌跡を描いて移動する。加熱部8は第1状態および第2状態においては安定的に停止するように構成されている。
【0021】
第1ユニット6は、ヒータ61と、ヒータ61の熱放射方向を略記録媒体P方向に偏向させるリフレクタ62を含んで構成される。第2ユニット7は第1ユニット6と同様、ヒータ71と、ヒータ71の熱放射方向を略記録媒体P方向に偏向させるリフレクタ72を含んで構成される。ヒータ61、62はエネルギ源である電源に接続された棒状のハロゲンヒータやシーズヒータなどの熱源である。リフレクタ62、72はヒータから発生する熱線を反射することで略一方向に偏向させる反射鏡である。リフレクタ62、72はヒータを焦点とする放物線断面としヒータ側の面は鏡面のように平滑に形成されることが理想的であるが、略記録媒体方向に熱線を偏向させることができれば放物線断面に限定されない。反射鏡は高温に耐えうる材質で構成され、例えばステンレス、アルミニウムなどの金属が好ましい。第1ユニット6はインクジェット記録ヘッド10の往復移動軌跡の上方に配置され、記録位置における記録媒体Pの記録面(インク付与面)側を熱線によって加熱する。第2ユニット7は記録位置よりも下流位置において記録媒体Pの直上に配置され、記録媒体Pの記録面(インク付与面)側を同様にして加熱する。第2ユニット7は、第1ユニット6では乾燥しきれなかった記録媒体上のインクを完全に乾燥させるためのものである。加熱によって硬化するエマルションインクを用いている場合にはその硬化温度まで加熱する。こうして加熱部8は第1状態においてインク付与後の記録媒体Pを加熱して乾燥定着させる。
【0022】
以上の構成における記録シーケンスは、インクジェット記録ヘッド10の往復移動(主走査)と記録媒体搬送(副走査)を交互に繰り返すことで、シリアルに記録媒体Pの上に二次元のインク画像を形成していくシリアル記録を基本とする。シリアル記録における主走査では、キャリッジ5が往復移動しながら記録媒体の同一箇所に複数回に分けてインクを付与して画像を完成させる、いわゆるマルチパス記録方式を採用する。エマルションインクを使用する場合には、ある主走査(パス)でインクジェット記録ヘッド10からインクが付与された箇所は、次の主走査(パス)で同一箇所にインクが付与されるまでの間にインク滴の凝集が発生しない程度に乾燥している必要がある。乾燥が不十分であると、重ね打ちされたインク同士が混じり合って滲みや凝集による画像劣化が起きる原因となる。また、記録中の乾燥具合の差(乾燥ムラ)が画像に影響する場合もある。
【0023】
そのため、加熱部8は、記録動作でキャリッジ5が往復移動する最中にも、記録媒体Pに熱線を照射して記録媒体表面を加熱する。キャリッジ5よって遮られない領域は第1ユニット6からの熱線が記録媒体Pにインク付与面に照射される。移動するキャリッジ5の陰となる部分には熱線が届かない。しかしながら、キャリッジ5はほぼ等速で移動するので、主走査方向において記録媒体Pのインクが付与される領域への熱線の照射の累積は平均化され、主走査方向においてほぼ均等の加熱量が与えられ、画質に対しての影響は無視できる。
【0024】
第1ユニット6により記録媒体Pを所定温度(例えば80°C)に加熱する。そのために、第1ユニット6で熱線が照射される記録位置の記録媒体P温度が第1温度センサ(不図示)で検出され、検出される温度が所定温度となるようにヒータ61が制御される。同様に、第2ユニット7により記録媒体Pを所定温度(例えば90°C)に加熱する。そのために、第2ユニット7で熱線が照射される記録位置よりも下流位置の温度が第2温度センサ(不図示)で検出され、検出される温度が所定温度となるようにヒータ71が制御される。
【0025】
図2は、本実施形態の記録部の要部を示す概略図である。図2(a)は、記録部の上面を示し、図2(b)は、記録部の右側面を示し、図2(c)は、記録部の断面を示している。
【0026】
本実施形態のプラテン11は、インクジェット記録ヘッド10の往復移動方向(副走査方向)に、複数のプラテン11a〜11dを並べて構成されている。記録ヘッドの吐出面からプラテンの記録媒体を支持する支持面までの距離Gを同じ距離に保つためには、単一部材でプラテンを構成するよりも複数に分割したほうが容易である。また、大判の記録媒体を記録する記録装置では、大きなプラテンを用意するよりも、複数の小さなプラテンを用意する方がコスト面で有利であるからである。
【0027】
プラテン11a〜11dの夫々の支持面から記録ヘッド10のインク吐出面までの距離Gは、設定値に対して所定範囲内に収まるように高精度に配置されている。例えば、この距離Gが1mmの設定の場合には、主走査方向全領域において、そのずれが±0.1mmの範囲になるように配置されている。こうした距離を保つために、記録媒体の製造時に調整工程が必要になる場合もある。このような調整がなされる場合にはプラテン11a〜11dに位置調節のための構成を備えることがある。
【0028】
また、プラテン11a〜11dの夫々が隣接する部分(以下「分割部」ともいう。)は、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)に対して、傾斜角度αで傾斜するように分割されている。プラテン11a〜11dは、後述するように、熱膨張や調整による変位等によって隣接する部材間の干渉がおこらないよう、プラテンが当接しないように間に適切な隙間Mを設けている。この隙間Mを覆う記録媒体にインクが付与されることにより、そのインク滴がぼやけることがある。例えば、隙間Mを覆う記録媒体の領域にインクが吐出されると、その領域がふやけたようになり、隙間Mに沈み込むことで、インクのドットがぼやける事がある。また、隙間Mを覆う記録媒体の領域が加熱部により加熱されると、記録媒体が伸び、その領域が隙間Mに沈み込み、インクドットがぼやける事がある。また、後述するプラテンの分割部(隙間M)に起因するプラテンの温度差による乾燥むらが生じることがある。このような隙間Mのよる画像品質への影響を、プラテンに傾斜角度αで隙間Mを傾斜させることにより、画像に影響する要員を緩和する。
【0029】
なお、本実施形態のプラテンは傾斜角度αで傾斜するよう分割されているが、本発明はそのような分割に限定されるものではない。すなわち、プラテンを記録媒体の搬送方向と平行に分割をすることによる案内制度の悪化やプラテンの分割部に寄る記録媒体の中に生じる温度差によるムラ等が生じない形態で分割するものであればよい。例えば、略P字状や、隣接する凹凸形状をカギ状若しくはいわゆる櫛歯状に重なる形状に配置するように分割してもよい。
【0030】
さらに、プラテン11a〜11dは少なくとも記録媒体Pと接触する面側(記録媒体支持面)は、プラテンよりも熱伝導性の高い材質(例えばアルミニウム合金等の金属)で構成され、装置本体1の金属筺体に対して熱的に分離されて配置されている。ここで「熱的に分離」とは、物理的な完全断熱の概念を意味しているわけではない。例えば、熱伝導率の高いプラテン11a〜11dと装置本体1を構成する金属筺体(例えば鉄等)との間に熱伝導率の低い部材(例えばプラスチック等)を介してプラテン11側の熱が金属筺体側に伝導しにくいように構成することを意味している。
【0031】
具体的には、本実施形態において、アルミニウム合金製のプラテン11は、熱伝導率の低いプラスチック(例えば変性PPE等)製のプラテンベース13を介して、鉄性の筺体に保持されている。なお、金属は熱伝導率が高く、樹脂は熱伝導率が低い。例えば、金属のアルミニウム合金は230W/(m・K)程度、樹脂の変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)は0.19W/(m・K)程度である。
【0032】
プラテン11a〜11dは、加熱部8による温度上昇で熱膨張する。本実施形態のようにアルミニウム合金製のプラテン11、プラスチック製のプラテンベース13、鉄製の筺体など熱膨張率の異なる部材同士が固定されると伸び量差による歪が各部材に発生して変形などの支障をきたす。このため、本実施形態においては主走査方向の熱膨張による影響を配慮して長手方向の一端は固定とし、他端は主走査方向(長手方向)にいわゆる遊びを有している。さらに熱膨張や調整による変位等によって隣接する部材間の干渉がおこらないよう適切な隙間Mを設けている。また、プラテン11a〜11dの夫々の支持面から記録ヘッド10のインク吐出面までの距離を調整した後の方向Zは規制される。
【0033】
なお本実施形態では、プラテン11およびプラテンベース13の記録ヘッド方向と、副走査方向は、熱膨張による伸び量は機能上無視しうる程度に微少であるため特段の配慮をしなかったが、走査方向同様に熱膨張の影響を配慮した構成でもよい。また、熱膨張による変位(寸法変化)の影響を配慮した構成は上述の構成に限定されなく、既知の構成であってもよい。すなわち、熱膨張する部材を目的に適う形態で安定して保持しつつ、機能上で変位や変形の影響を受けないような構成であればよい。
【0034】
図3は、記録部における熱収支を説明する説明図である。第1ユニット6からの熱線Q1により記録媒体Pが加熱されるとき、同時にプラテン11a〜11dも、記録媒体Pと記録媒体支持面で接触しているために記録媒体Pを介して加熱されている。したがって、記録媒体Pの温度が所定温度(例えば80°C)に到達するときにはプラテン11a〜11dも同じ温度に到達している。一方、搬送ローラ3によって新たに記録媒体が繰出された直後の温度の低い(例えば80°C以下)記録媒体部は、第1ユニット6からの熱線Q1とプラテン11a〜11dからの熱線Q2とにより両加熱される。このようにプラテン11a〜11dは熱バッファー手段としての機能も有する。
【0035】
図4は、本実施形態のプラテンの温度分布と記録ムラの関係を示す説明図である。上述の通り、プラテンの一部に、記録媒体が新たに繰出されても、第1ユニット6からの熱線とプラテンからの熱線とにより加熱される。しかしながら、各プラテン11a〜11dが収受する熱量(熱収支)は必ずしも均等ではない。このような状態を、プラテン11間を本実施形態の熱的接続する熱的接続手段がない場合とある場合について説明をする。
【0036】
図4(a)および図4(b)は、熱的接続手段がない場合を示す図である。例えば、図4(a)に示すようにプラテン11(プラテン11a〜11dにより構成)の全幅よりも短い記録媒体を記録するときは、記録媒体に覆われない(露出する)一部領域に対応するプラテン部11c、11dは第1ユニット6による加熱に常にさらされる。この領域では、記録媒体Pを加熱することもないため、相対的に受領する熱量が多くなる。このような場合、プラテン11cを覆う記録媒体の端部領域では温度勾配が生じる。
【0037】
あるいは図4(b)に示すように第1ユニット6の方向Xの両端部付近など構成的にヒータ61からの熱量が減少する部分に対応するプラテン部は相対的に受領する熱量が少なくなる。この状況を下記に詳細に説明する。
【0038】
図5は、プラテンがヒータから受け取る熱量の差を説明する説明図である。第1ユニット6のヒータ61は記録領域に対応して方向Xに延伸しており、そのうち熱線照射する有効領域は発熱部61aである。発熱部61a以外の部分は発熱しないため、相対的に熱線が少なくなる。
【0039】
ここでプラテン11c上での任意の点c、およびプラテン11d左端部の点dに注目すると、矢印Wcで概念的に示すように、点cは発熱部61a全領域より加熱される。一方、矢印Wdで概念的に示したように、点dを加熱するのは発熱部61aの左端部よりも右の領域のみである。したがって点dで受け取る熱量は点cが受け取る熱量よりも相対的に少ないものになる。その結果、プラテン11dを覆う記録媒体の端部では温度勾配が生じる。
【0040】
このように、各プラテン11a〜11dにおいて、それぞれの熱収支が不均等であると、図4(a)、(b)に示すように、プラテン11は、分割部を境界とする不連続な温度分布が生じる。そしてその温度分布を記録媒体Pにもたらすことになる。ここで、不連続な温度差とは、プラテン11の分割位置付近を境界とする記録媒体Pの急激な温度分布の差のことをいう。このように記録媒体Pに不連続な温度分布があると、インクの乾燥むらが生じ、記録部でのインク乾燥状態に差が発生し、結果として濃度むらが発生する。これにより、記録画像の画像品質が低下することになる。
【0041】
図6は、プラテンと下流プラテンとを示す斜視図である。本実施形態では、アルミニウム合金製の板で構成された下流プラテン12は、プラテン11と同様に装置本体1の金属製筺体に対して、下流プラテンベース14を介して熱的分離された状態で保持されている。
【0042】
図6(a)において下流プラテン12は、プラテン11側に相互に隣接するプラテン11間を熱的接続する弾性形状部121がプラテン11の間隔分(本実施形態では3箇所)形成されている。また、図6(b)において弾性形状部121は、下流プラテン12の本体に対して弾性変形可能な曲げ部の当接面121R、121Lを有しており、プラテン11側に形成された対応する当接面111R、111Lと弾性的に当接している。なお、図6(b)では説明の便宜のために、下流プラテン12とプラテン11a、11bとが離間した状態で図示されているが、実際にはそれぞれ上述の当接面が当接した状態である。また、図6(b)ではプラテン11a、11bを例に仮想切断線Hで部分断面として図示している。さらに、他のプラテン間の組み合わせも同様である。上述した構成により、各部の熱膨張やプラテン11部のギャップ調整などの変位に対応して当接状態を維持し、隣接するプラテン間を熱的に接続している。
【0043】
そこで本実施形態では、プラテン11間を弾性形状部121で接続することにより、受領する熱量の多いプラテンから、受領する熱量の少ないプラテンへと熱を移動させ、プラテンの境界部での不連続な温度差を低減する。これにより乾燥ムラを低減し、その結果濃度むらを抑制し、画像品質の向上を図ることができる。
【0044】
図4(c)は、本実施形態のプラテン間を熱的接続する手段により接続したときのプラテンを示す断面図である。プラテン11間を熱的接続する手段がある場合には、受領する熱量の多いプラテン11cから、受領する熱量の少ないプラテン11dへと熱的接続手段を通じて熱が移動する。その結果、プラテン11cとプラテン11dとの境界部での不連続な温度差は解消し、記録媒体の乾燥ムラが低減する程度までプラテン11c、11d間の温度差が緩和される。
【0045】
以上説明したように、プラテン11のギャップ調整時の変位や、加熱による熱膨張による記録部の部材の寸法変化に対応して、少なくとも隣接するプラテン11間を相互に熱的接続する熱的接続手段を備える。このため、プラテン11の分割部を境界とするプラテンの不連続な温度分布に起因するプラテン間での記録媒体上のインクの乾燥にむらを低減する。その結果、濃度むらを抑制する。これにより、記録画像の画像品質の向上を図ることができる。
【0046】
なお、本実施形態では大判の記録媒体に記録を行なう記録装置について説明をしたが、本発明の記録装置は大判の記録媒体に記録を行なうものではなく、通常のコピー用紙等の記録媒体に記録を行なう記録装置であってもよい。
【0047】
また、本実施形態の記録媒体は、ロール紙から引き出された記録媒体に記録を行なうものであるが、本発明はこのような記録媒体に限定されるものではない。すなわち、記録媒体が重ねられた記録媒体供給部から1枚ずつ記録媒体が供給されるものであってもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、エマルション成分を多く含むインクを使用しているが、本発明はそのようなインクに限定されるものではなく、インクの成分は如何なるものであってもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
第1の実施形態で説明した熱的接続手段は弾性形状部を用いたが、本発明の熱的接続手段は、このようなものに限定されるものではない。
【0050】
図7は、本実施形態のプラテンと接続ブロックを示す斜視図である。なお、本実施形態ではプラテン11aとプラテン11bとの分割部を例にとって説明するが、他のプラテンの組み合わせにおいても同様である。また、図中、説明の便宜のため、プラテンを仮想切断線Hで部分断面として図示してある。
【0051】
プラテン11aとプラテン11bとの分割部付近において、プラテン11aの当接面111R、およびプラテン11bの当接面111Lに対して、熱伝導率の高い材質で構成された接続ブロック15が当接している。接続ブロック15は、例えばアルミニウム合金製のブロックである。接続ブロック15は、穴151および穴152部分で不図示の付勢手段によって当接面111R、111L側に付勢されている。このため、熱膨張やプラテン11部のギャップ調整などの変位に対応して当接状態を維持し、隣接するプラテン間を熱的に接続している。熱的接続手段である接続ブロック15をこのようにブロックで構成することによって断面積を大きくとることができるため、プラテン11aとプラテン11bとの熱伝導性を高めることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図8は、本実施形態のラテンと接続シートを示す斜視図である。なお、本実施形態では、プラテン11aとプラテン11bとの分割部を例にとって説明するが、他のプラテンの組み合わせにおいても同様である。また、図中、説明の便宜のため、プラテンを仮想切断線Hで部分断面として図示してある。
【0053】
プラテン11aとプラテン11bとの分割部付近において、プラテン11aの当接面111R、およびプラテン11bの当接面111Lに対して、熱伝導率の高い弾性体で構成された接続シート16が対応する当接面で固定されている。接続シート16の材質は、例えばステンレス等のばね材やシリコーンゴム等の弾性部材である。接続シート16の変形部161で熱膨張やプラテン11部のギャップ調整などの変位に対応して弾性変形するため、隣接するプラテン間を熱的に接続している。
【符号の説明】
【0054】
1 装置本体
5 キャリッジ
10 インクジェット記録ヘッド
11、11a、11b、11c、11d プラテン
12 下流プラテン
15 接続ブロック
16 接続記録媒体
61 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを用いて搬送される記録媒体に記録を行なうインクジェット記録装置であって、
記録媒体のインクが付与される面に熱を伝えて前記記録媒体に付与されたインクを乾燥させる加熱部と、
前記記録媒体を支持するプラテンと、
を備え、
前記プラテンは複数に分割され、前記分割されたプラテンはそれぞれ隙間を空けて配置され、
前記分割されたプラテンは、隣接するプラテンと相互に前記プラテンよりも熱伝導率の高い熱的接続手段により接続されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記熱的接続手段は、前記隣接するプラテンに接続される弾性体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記熱的接続手段は、前記隣接するプラテンに対しての当接状態を維持することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記熱的接続手段は、前記隣接するプラテンに弾性的に接続されることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インクは加熱によって硬化するエマルションインクであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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