説明

インクレス再画像形成可能な印刷用紙および方法

【課題】コスト削減及び刊行問題を減らす使用可能な印刷用紙を提供する。
【解決手段】画像形成媒体は、基板と、溶媒またはポリマーバインダー中に溶解もしくは分散しているフォトクロミック材料またはフォトクロミック−サーモクロミック材料を含む画像形成組成物を含む、前記基板上にコートされているかまたは前記基板中に含浸されている画像形成層と、を含み、画像形成組成物が、第1の波長の光によって画像形成が可能であり、熱と第2の波長の光の組合せによって短時間での消去が可能であり、熱エネルギーと第2の波長の光エネルギーの一定量を用いる同時の消去が、熱エネルギーと第2の波長の光エネルギーの一定量を連続して加える場合、より高い度合いの消去をもたらし、画像形成媒体が、無色の状態と着色した状態の間での可逆的転移を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、再画像形成可能な紙へのインクレス印刷のための基板、方法、および装置を対象とする。より詳しくは、複数の実施形態において、本開示は、インクレス再画像形成可能な印刷基板、例えば、光によって画像形成が可能であり、熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つの組合せによって短時間の間に消去できる組成物であって、組成物が無色の状態と着色状態の間で可逆的転移を示すものを利用するインクレスの印刷用紙などを対象とする。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、インクの小滴を基板上に画像に沿って噴出することによって画像が形成されるよく確立されたマーケットおよびプロセスである。しかしながら、低いプリンタコストにもかかわらず、交換用のインクジェットカートリッジのコストは高く、時にはプリンタそれ自体のコストより高いことがあり得る。これらのカートリッジは頻繁に交換しなければならず、したがって、インクカートリッジの交換コストはインクジェット印刷に関する消費者の主要な不平の種である。したがって、インクカートリッジ交換コストの削減は、インクジェット印刷のユーザにとって大きな改良である。
【0003】
さらに、多くの紙の文書は、読まれた後は直ちに廃棄される。紙はあまり高価ではないとはいえ、廃棄される紙文書の量は膨大であり、これら廃棄される紙文書の処分は、相当なコストおよび環境問題を引き起こす。それにより、所望の画像を含むための新たな媒体、およびそのような媒体を調製し使用するための方法を提供することに対する要求が存在し続けている。その態様においては、再使用可能なこと、コストと環境問題を減らすことが望ましく、それはまた、エンドユーザにとって日常的に受け入れられ、使用および保存が容易である媒体を提供する柔軟であって紙のようであることが望ましい。
【0004】
【非特許文献1】イリエ他、J.Org.Chem.、2002年、67、4574〜4578頁
【非特許文献2】「Dithienylethenes with a Novel Photochromic Performance」、J.Org.Chem.、2002年、67、4574〜4578頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過渡的な画像形成および保存に対しては入手可能な技術が存在するが、それらは一般に、紙の代用品としてのほとんどの用途に対しては決して望ましい結果は提供しない。例えば、代わりとなる技術としては、液晶ディスプレイ、電気泳動画像媒体、およびジリコン(gyricon)画像媒体が挙げられる。しかしながら、これらの代替技術は、多くの事例において、所望の再画像形成の可能性は提供するものの、従来の紙の外観および感触を有する文書は提供することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、複数の実施形態において、光によって画像形成が可能であり、熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つの組合せによって短時間の間に消去できる組成物であって、組成物が無色の状態と着色状態の間で可逆的転移を示すものを利用する再画像形成可能な画像形成媒体を提供することによってこれらおよびその他の必要性に対処する。画像形成は、色の変化を引き起こすために画像形成材料に、例えばUV光を当てることによって行い、消去は、熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つの組合せを当てて色の変化を逆にすることによって行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
大まかには、様々な典型的な実施形態において、溶媒またはポリマーバインダー中に分散しているフォトクロミック材料を含むような、光によって画像形成が可能であり、熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つの組合せによって短時間に消去が可能である組成物(組成物は、無色状態と着色状態の間で可逆転移を示す)を用いて形成されるインクレスの再画像形成可能な紙または画像形成媒体が提供される。画像形成層を第1の刺激、例えばUV光照射にさらすことによって、フォトクロミック材料の無色状態から着色状態への転換が引き起こされる。その画像形成層を第2の刺激、例えば可視光照射と熱の組合せにさらすことによって、フォトクロミック材料の着色状態から無色状態への転換が引き起こされる。
【0008】
フォトクロミックの再画像形成可能な紙の消去は、熱単独によって達成することが可能である。しかしながら、熱を用いるフォトクロミック材料の消去は、独特の化学プロセスであり、アレニウスの方程式によって説明することができるエネルギー障壁を有する。その方程式の1つの形はk=A*exp[Ea/R*T]であり、式中、Eaは、活性化エネルギーである。画像の消去は、より低温でまたは同じ温度で、Eaが減少するように置換基を調節することによってより迅速に達成することができる。しかしながら、この修正は、必然的に、また、周囲温度における退色の速度をおそらく受け入れられない速度まで増すであろう。熱単独を使用するプロセスはそれらの意図した目的に対しては十分であるが、二重の消去方法、例えば光と熱が同時であって、消去の程度が消去可能な紙に対して熱単独を超えて増加する方法に対する必要性も存在する。2つの入力、例えば熱と光による同時の消去によって得られる消去スピードの増大が顕著であるために、例えば光と熱が同時のような二重入力を用いることによって、周囲の光と熱の条件の下で長時間置かれた状態で非常に安定ではあるが熱条件単独の下では実際の消去デバイスに対しては消去が遅すぎる消去可能な媒体に対してフォトクロミック材料を使用することが可能である。
【0009】
意外なことに、多くのフォトクロミック材料に対して、例えば熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つ、例えば熱と光の二重の消去入力を同時に使用することによって、それぞれの単独の入力の加法的な消去能力を超える高められた消去能力が提供される。
【0010】
「短時間」とは、最大吸収での可視光範囲、例えば約640nm、における画像形成組成物の吸光度が、160℃以下の温度において約10分以下の時間内でその第1の値の2分の1まで減少するように、消去が行われることを指す。例えば、消去は、約640nmにおける画像形成組成物の吸光度が、160℃以下の温度において約10分以下の時間内で0.7〜0.35の吸光度まで減少するように行うことができ、一方他の複数の実施形態においては、消去は、約640nmにおける画像形成組成物の吸光度が、約5分の時間内または約2分未満または約1分未満でその第1の値の2分の1まで減少するように行うことができる。
【0011】
複数の実施形態において、画像形成媒体は、適当な基板材料に塗布または含浸された、または第1と第2の基板材料(すなわち、基板材料と上塗り層)の間に挟まれているすなわちラミネートされている画像形成層を一般に含む。画像形成層は、溶媒またはポリマーバインダー中に分散されたフォトクロミック材料またはフォトクロミック−サーモクロミック材料を含む。
【0012】
画像形成層は、任意の適当なフォトクロミック材料および溶媒またはポリマーバインダーを含むことができる。例えば、フォトクロミック材料および溶媒またはポリマーバインダーは、フォトクロミック材料が溶媒またはポリマーバインダー中に溶解または分散されたとき、そのフォトクロミック材料がその透明な状態であるように選択する。しかしながら、そのフォトクロミック材料は、第1の刺激、例えば紫外光にさらされたとき、そのフォトクロミック材料は異性体化して、より極性の着色した形態となる。この色の変化は逆転させることができ、したがって画像を「消去」し、そのフォトクロミック紙を白紙状態に戻すことができる。複数の実施形態において、その消去は、熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つ、例えば可視光と熱の組合せなどの異性化反応を逆転させる第2の刺激を加えることによって短時間で行われる。着色した状態で、画像は、2日以上、例えば1週間以上または1カ月以上の期間、見え続けることができ、フォトクロミック紙のさらなる有用性を提供するが、所望される場合は短時間のうちに容易に消去することもできる。
【0013】
複数の実施形態において、フォトクロミック材料は、UV光単独により画像形成することができ、可視光と熱の組合せを用いて消去することができるフォトクロミック−サーモクロミックハイブリッド化合物である。可視光と熱とが存在する中のこの消去は、可視光または熱単独による消去と比較して、消去時間の著しい減少を示す。実施形態によっては、消去時間の減少は、別々の熱と光の単独の効果の単なる加法的なものではなく、相加効果はそれ自体有用ではあるが、それらの効果の和を超えるものである。例えば、複数の実施形態において、加熱と同時の露光との間に消去プロセスを加速する強力な二次効果が現れることが発見された。メトキシジチエニルエテンの場合、その二次効果は、熱ルート単独を5.7倍上回る消去プロセスの加速であり得る。
【0014】
増大因子(EF)を決定するための方法が開発された。増大因子は、二重入力因子、例えば熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つを同時に使用することによって得られる相乗的な消去の促進(入力を独立にまたは順次使用するときに得られることが予想される半減期と比較したとき)を決める。
− tL2が、光(または第1の刺激)単独による消去の半減期であり、
− tH2が、熱(または第2の刺激)単独による消去の半減期である場合、
そのとき、光および熱による加法的なまたは一連の消去についての予想される半減期は式texp=tL2×tH2/(tL2+tH2)によって与えられる。増大因子(EF)は、問題になっている媒体またはフォトクロームに対して観察される半減期(tobs)によって割られた予想される半減期(texp)によって与えられる。2つの入力、例えば、熱と光の同時使用によって増大または加速がない場合、EFは1に等しい。加速がある場合、EF>1である。EF<1の場合、入力の1つが、他の効果を実は阻害している。複数の実施形態において、画像形成媒体の画像形成層は、約1.05〜約1000、例えば約1.1または約1.5から約100、約250、または約500の増大因子を示す。他の複数の実施形態において、画像形成媒体の画像形成層は、約2または約3から約100までまたは約200まで、例えば約4または約5から約100まで、約10までまたは約20までの増大因子を示す。
【0015】
この計算の操作は、図1に示す吸収を有するメトキシジチエニルエテン化合物の使用によって説明することができる。時間の関数である吸光度としての消去の度合いは、図2から読み取ることができる。試料は、バインダーとしてのPMMA中にフォトクロミック化合物を分散することによって調製した。試料分離の詳細を実施例1で示す。試料は、160℃のホットステージ上で加熱する(加熱のみ)か、試料から16.5cm離れたところに設置したキセノン光源(150W)からの可視光(VIS光)に暴露した。試料は、<510nmの波長の光を遮断する光フィルタで覆った。同時の加熱とVIS光照射を同じ設定で行った。
【0016】
図2によれば、160℃で5分間加熱した試料に対する吸光度の減少は、ΔAbs(熱)=0.70−0.56=0.14であった。可視光に5分間暴露試料に対しては、ΔAbs(光)=0.70−0.66=0.04であった。相加効果のみが存在するとすれば、試料を同時の熱と光に5分間の同じ固定時間当てる間には、ΔAbs(熱+光;予想)=ΔAbs(熱)+Abs(光)=0.14+0.04=0.18が得られるものと予想されよう。しかしながら、同時に熱と可視光に暴露した試料に対しては、ΔAbs(熱+光)=0.70−0.13=0.57が測定される。0.57−0.18=0.39の吸収における減少の差は、同時の加熱と照射による予想される加法的結果を超えて消去されている。
【0017】
より正確な計算を、増大因子を用いることによって行うことができる。一連の消去に対する予想される半減期(texp)は、曲線(tL2=72.9分;tH2=11.8分)から読み取られる値を用いて計算することができる。したがって、texp=(72.9×11.8)/(72.9+11.8)=10.1分である。同時の暴露の下での実際に観察された半減期(tobs)は1.78分であったのでこの材料に対する増大因子は、EF=texp/tobs=10.1/1.78=5.7である。実際の増大因子は、様々な条件における退色の半減期が影響されるために、加熱温度および可視光源の強さに依存することを理解すべきである。例えば、加熱温度が高いほど、または可視光の強さが大きいほど、異なる増大因子をもたらし得るより速い退色をもたらす。それでもなお、退色条件の所定の設定においてEF>1を有する化合物は、たとえ実際のEF値が異なり得るとしても異なる条件においてもEF>1を示す。
【0018】
イリエ他(J.Org.Chem.、2002年、67、4574〜4578頁)は、実施例1によるメトキシ化合物を可視光の下では退色しない化合物として記載している。同時の熱と強力な可視光とによる促進された消去は予想されなかった発見であり、イリエの発表の中には記載されておらず、また予期されていなかった。
【0019】
実施例1の化合物のような比較的ゆっくり退色する材料に対してはホットプレート加熱が適する。速く退色する(数秒または数分)試料に対してはそれが実際の測定時間に関する高すぎる誤差をもたらすのでこれは不適切となる。所定の時間に吸収を測定するために試料を除去することを必要とせずにリアルタイムで退色速度を測定するための新たな装置が構築され、図3および図4A〜図4Bに示されている。試料は、事前設定温度の専用の保持器上で加熱する。その保持器には光が試料を通過することを可能にする穴(直径3mm)がある。図4A〜図4B参照。可視光は、図3に示されているように設置されているキセノンランプ(Photon Technology International製の、150W、モデルLPS−220B)から提供される。与えられた試料の退色を測定するためには、低い強度のプローブレーザビーム(He:Ne;623nm)を使用する。レーザ光の強さは、そのレーザ光によって生じる退色が所定のプロービング時間に対して最小であるようにできるだけ低く設定する。レーザ光(標準的なJDSユニフェーズのヘリウムネオンレーザ1.5mWランダム偏光)を、一組の減光フィルタ(OD=0.3の1つとOD=0.9の2つ)を使用することにより低下させた。伝達信号をフォトダイオードにより測定し、その信号の進展を、LabViewソフトウェアを用いて記録した。プローブレーザビームを作動させ、時間0で、着色した試料を試料保持器中に入れる。当初、伝達される信号は、そのほとんどが着色した試料によって吸収されるために低い。試料を退色条件(熱、可視光または両方を同時)にさらす間に、試料は消去によってより透明になる。レーザを伝達した信号は徐々に増加する。試料が完全に消去されると信号を伝達したレーザ信号は最大に達して安定化する。
【0020】
フォトクロミック材料は、溶媒またはポリマーバインダー中に分散され、そこでフォトクロミック材料は、無色と着色した状態の間での可逆転移を示す。フォトクロミック材料は、フォトクロミズムおよびサーモクロミズムを示し、かくして、異なる吸収スペクトルを有する2つの形態の間で電磁波放射および熱の吸収により1方向または両方向に生じる可逆的な転移を示す。フォトクロミック材料の様々な典型的な実施形態は、可逆的な転移が2つより多い形態の間で起こることが可能な場合には、3つ以上の形態の間の化学種の可逆的転移も同様に含み得る。
【0021】
複数の実施形態において、再画像形成可能な紙は、また一般に、溶媒またはポリマーバインダー中に分散または溶解されているフォトクロミック材料の溶媒またはポリマーバインダーの混合物を、その混合物が適当な基板材料上に塗布されているか、第1と第2の基板材料の間に挟まれた状態で含む。必要に応じて、その混合物は、基板材料上、または第1と第2の基板材料の間に、例えばその溶媒混合物をマイクロカプセルの中に入れるなどして、さらに押し込むことができる。
【0022】
特定の実施形態において、そのフォトクロミック材料は、任意の種類のフォトクロミック材料、例えばスピロピラン、ジチエニルエテン、およびフルギドなどから選択する。
【0023】
したがって、実施形態において使用するのに適する置換されたジアリールエテンは、以下の一般式[I]により表すことができる:
【化1】


式[I]において、Xは、独立して、水素(H);ハロゲン、例えば塩素、フッ素、臭素など;1から約20または約40個までの炭素原子の直鎖または分枝、置換または非置換のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなどであり、置換はハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば酸素基、窒素基など)などを含むことができるものを表す。
【化2】


式[II]において、Xは、SまたはOを表す。
【化3】


【化4】


式[IV]において、Xは、S、OまたはC=Oを表し、Yは、O、CHまたはC=Oを表す。
【化5】


式[V]において、Yは、CHまたはC=Oを表す。
【化6】


式[VI]において、Xは、CHまたはNを表す。
【化7】


式[VII]において、Yは、CHまたはC=Oを表す。
【0024】
一般式[I]〜[VII]において、R、Rは、それぞれ独立して、置換アルキル基、非置換アルキル基、直鎖アルキル基、分枝アルキル基を含むアルキル基(ここで、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などがそのアルキル基に存在していてもいなくてもよい)、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、アリール基、置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基(ここで、ヘテロ原子が、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分に存在していてもいなくてもよい)から選択され、Rは、置換アルキル基、非置換アルキル基、直鎖アルキル基、分枝アルキル基を含むアルキル基(ここで、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などがそのアルキル基に存在していてもいなくてもよい)を表し、Aは、下に示す置換基[a]または[b]または[c]を表し、Bは、下に示す置換基[d]または[e]または[f]を表す。
【化8】

【0025】
置換基[a]〜[c]において、Rは、フェニル、ナフチルなどおよび置換または非置換の複素環式芳香族基を含むアリールオキシ基;アルコキシ基または置換アルコキシ基であって、アルコキシ基のアルキル部分が、1から約20個または約40個までの炭素原子の直鎖、分枝または環状の置換または非置換のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなどを表し、置換は、ハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば酸素基、窒素基など)などを含むことができ、Rは、アリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいアルキルアリール基、シアノ基、カルボン酸基あるいは不飽和アルケン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、Rは、アルキル基およびアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であって、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいものを表し、Uは、OまたはSを表す。
【0026】
置換基[d]〜[f]において、Rは、フェニル、ナフチルなどおよび置換または非置換の複素環式芳香族基を含むアリールオキシ基;またはアルコキシ基または置換アルコキシ基であって、アルコキシ基のアルキル部分が、1から約20個または約40個までの炭素原子の直鎖、分枝または環状の置換または非置換のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなどを表し、置換は、ハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば酸素基、窒素基など)などを含むことができ、Rは、アリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいアルキルアリール基、シアノ基、カルボン酸基あるいは不飽和アルケン基を表し、R10は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、Rは、アルキル基およびアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であって、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいものを表し、Zは、OまたはSを表す。
【0027】
一定の実施形態において、式[I]〜[VII]の置換ジアリールエテンは、RとRが同じアルコキシを含有する置換基であるような化合物である。この場合、アルキル基または置換アルキル基は4個以上の炭素原子を含有することが必要である。これは本願についての適切な熱に基づく環開裂反応時間に対する必要条件である。しかしながら、他の実施形態においては、RとRのアルコキシ置換基は異なるアルコキシ置換基であり得る。望ましくは、そのアルコキシ基の少なくとも1つまたは両方が、4個以上の炭素原子を含有する。
【0028】
種類の一例は、以下に示すアルコキシジチエニルエテンであるが、多くのその他の種類も当業者には明らかであろう。複数の実施形態における使用に適するアルコキシ置換ジチエニルエテンは、次の可逆転移式によって表すことができるものであり:
【化9】


式中、同じものか異なるものであることができる各Rは、直鎖もしくは分枝アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなど、または環状アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシルなどを表し、かつ不飽和アルキル基、例えばビニル(HC=CH−)、アリル(HC=CH−CH−)、プロピニル(HC≡C−CH−)などを含み、ここで、前記のもののそれぞれについて、アルキル基は、1〜約20個、例えば1〜約15個、1〜約10個、または1〜約6個もしくは約8個の炭素原子を有する。各Rは、独立して、また、フェニル、ナフチル、フェナントレン、アントラセン、それらの置換された基などを含み、約6〜約30個の炭素原子、例えば約6〜約20個の炭素原子を有するアリール;約7〜約50個の炭素原子、例えば約7〜約30個の炭素原子を有するようなアリールアルキル;シリル基;ニトロ基;シアノ基;フッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化、およびアスタチン化などのハロゲン化原子;第一級、第二級、および第三級アミンを含むアミン基;ヒドロキシ基;例えば、1〜約50個の炭素原子、例えば、1〜約30個の炭素原子を有するアルコキシ基;例えば、約6〜約30個の炭素原子、例えば、約6〜約20個の炭素原子を有するアリールオキシ基;例えば、1〜約50個の炭素原子、例えば、1〜約30個の炭素原子を有するアルキルチオ基;例えば、約6〜約30個の炭素原子、例えば、約6〜約20個の炭素原子を有するアリールチオ基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;アミド基;カルボン酸基;スルホン酸基などであることができる。その基は、非置換であるか、または、例えば、シリル基;ニトロ基;シアノ基;フッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化、およびアスタチン化などのハロゲン化原子;第一級、第二級、および第三級アミンを含むアミン基;ヒドロキシ基;例えば、1〜約20個の炭素原子、例えば、1〜約10個の炭素原子を有するアルコキシ基;例えば、約6〜約20個の炭素原子、例えば、約6〜約10個の炭素原子を有するアリールオキシ基;例えば、1〜約20個の炭素原子、例えば、1〜約10個の炭素原子を有するアルキルチオ基;例えば、約6〜約20個の炭素原子、例えば、約6〜約10個の炭素原子を有するアリールチオ基;アルデヒド基;ケトン基;エステル基;アミド基;カルボン酸基;スルホン酸基などによって置換されていてもよい。そのような化合物の具体例としては、Rが、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはシクロヘキシル基であるものが挙げられる。
【0029】
アルコキシ置換ジチエニルエテンは、それらの着色した状態で、他の置換ジチエニルエテン、例えばアルキル置換ジチエニルエテンより、周囲の可視光に対して長時間にわたって安定である。同時に、そのアルコキシ置換は、着色した状態から無色の状態に戻る熱脱色すなわち逆異性化に対する障壁を低下させる。
【0030】
したがって、複数の実施形態において、フォトクロミック材料は、適当な照射、例えば可視光と熱の組合せ、または熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つにさらすことによって、その着色状態からその無色状態に容易に転換させることができる。「容易に転換」とは、フォトクロミック材料をその着色状態からその無色の状態に上記のように短時間で転換できることを意味する。それに対して、フォトクロミック材料は、短時間ではその着色状態からその無色の状態に容易には転換しない、すなわち、可視光範囲、例えば約640nmにおける画像形成組成物の吸光度は、熱または可視光単独に暴露したときに、約10分以下の時間内ではその第1の吸光度からその値の2分の1まで減少しない。
【0031】
転換を活発にするのに使用される熱は、任意の適当な加熱温度、例えば、約80℃〜約250℃、例えば約100℃〜約200℃または約100℃〜約160℃であり得る。加熱は、任意の適当な手段、例えばホットプレート、輻射ヒーター、対流ヒーターなどによって提供することができる。同様に、転換を活発にするのに使用される光は、任意の適当な光の波長、例えば可視から紫外であり得、複数の実施形態において可視光が使用される。照射処理は、任意の適当な手段により提供することができ、狭い波長範囲または広い波長範囲のものであり得る。一実施形態において、可視光波長と熱を提供する赤外波長の両方を提供する光源を使用することができ、しかし一方、他の複数の実施形態において、光は、付加的な熱放射を少しも与えないように適切に遮蔽することができる。
【0032】
これらのフォトクロミック材料は、かくして、置換を異にするかまたは非置換の他のジチエニルエテンを含む他のフォトクロミック材料とは、材料が、可視光単独にさらすことによっては着色状態から無色の状態に短時間で一般に転換して戻ることができず、着色状態から無色の状態に短時間で転換して戻るためには、可視光ありまたはなしで適当な加熱にさらすことを必要とするという点で異なる。これは、周囲の熱を超える十分な熱が構造の再編が起こることを可能にする十分な格子移動を引き起こすまで着色した状態を凍結することができるために、望ましい製品を可能にする。
【0033】
一実施形態において、画像形成材料(フォトクロミック材料)は、任意の適当なキャリア、例えば溶媒、ポリマーバインダーなどの中に溶解または分散させる。1つ以上の溶媒の混合物すなわち溶媒系も、必要に応じて使用することができる。さらに、より極性の溶媒も必要に応じて使用することができる。
【0034】
有機ポリマーまたは水性ポリマーのいずれかに分散可能な両方の組成物が、使用される成分によって使用することができる。例えば、水組成物に対しては、ポリビニルアルコールが適当な適用溶媒であり、ポリメチルメタクリレートが有機可溶組成物に対して適する。いくつかの実施形態において、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンは、それらのコストおよび広範な入手の可能性の点から好適なポリマーバインダーである。ポリマーバインダーは、使用に際して、コーティングまたはフィルム形成組成物を提供する役割を有する。
【0035】
ポリマーバインダーとして、相変化物質もまた使用することができる。
【0036】
一般に、任意の有機ポリマーのほとんどを使用することができる。しかしながら、複数の実施形態において、可視画像を消去するために熱を使用するので、ポリマーは、選択された特定のフォトクロミック材料に基づいて形成された画像を消去するために使用することができる高温に耐えることのできる熱的性質をそれが有するように選択することができる。
【0037】
複数の実施形態において、画像形成組成物は、1つの形に塗布し、使用するための別の形に乾燥させることができる。
【0038】
一般に、画像形成組成物は、キャリアおよび画像形成材料を任意の適当な量、例えば約5〜約99.5重量パーセントのキャリア、例えば約30〜約70重量パーセントのキャリア、および約0.05〜約50重量パーセントのフォトクロミック材料、例えば約0.1〜約5重量パーセントのフォトクロミック材料を含むことができる。
【0039】
画像形成層を画像形成媒体の基板に塗布するためには、画像形成層組成物を任意の適当なやり方で塗布することができる。
【0040】
画像形成媒体は、少なくとも1面に画像形成層をコートまたは含浸させた支持基板を含むことができる。所望により、その基板は、1面だけか、または両面に画像形成層をコートまたは含浸させることができる。
【0041】
任意の適当な支持基板を使用することができる。
【0042】
画像形成媒体中に不透明層を使用するときは、任意の適当な材料を使用することができる。例えば、白い紙のような外観が望まれる場合、その不透明層は、二酸化チタン、または酸化亜鉛、無機炭酸塩などのようなその他の適当な材料の薄いコーティングにより形成することができる。その不透明層は、他の厚さを使用することもできるが、例えば、約0.01mm〜約10mm、例えば約0.1mm〜約5mmの厚さを有することができる。
【0043】
必要に応じて、さらなる上塗り層を、塗布した画像形成層の上に塗布することもできる。
【0044】
フォトクロミック材料が、基板上に塗布される溶媒と混合される場合であって、かつその溶媒系が最終製品中に保持される場合、さらなる処理が必要であり得る。結果として、フォトクロミック材料が基板上に単に塗布される場合、被覆材料は、一般に、溶媒系を基板上の適所に拘束するためにその溶媒系の上に塗布する。代わりの一実施形態においては、ポリマー材料またはフィルムをフォトクロミック材料の上に塗布することができ、その場合、ポリマーフィルムは、離れた点の状態のフォトクロミック材料に浸透し、基板近くで底部と境を接し、ポリマー材料近くで側面および上面と境を接しているフォトクロミック材料のポケットすなわちセルを実質的に形成する。これらの実施形態において、被覆材料は、フォトクロミック材料により提供されるフルカラーのコントラスト効果を提供するために、無色透明であることが有利である。
【0045】
別の実施形態においては、フォトクロミック材料を含む溶媒系は、カプセル化またはマイクロカプセル化して、得られたカプセルまたはマイクロカプセルを、上記のような基板上に堆積またはコートすることができる。
【0046】
その方法の態様において、本開示は、基板と、溶媒またはポリマーバインダー中に分散されたフォトクロミック材料を含む画像形成層とを含む画像形成媒体を提供するステップを含み、ここでその画像形成組成物は、光によって画像形成が可能であり、熱、光、および超音波エネルギーの少なくとも2つの組合せによって短時間のうちに消去が可能であり、無色の状態と着色状態との間の可逆転換を示す。個々の書込みと消去のプロセスを提供するために、画像形成は第1の刺激、例えばUV照射などを、画像形成材料に加えて色の変化を引き起こすことにより行い、消去は、第2の異なる刺激、例えば熱とUVまたは可視光の照射との組合せなどを、画像形成材料に加えて短時間のうちに色の変化を逆転させることにより行う。
【0047】
複数の実施形態において、加熱は、書込みおよび/または消去プロセスのいずれに対しても、光照射の前または光照射と同時に画像形成層に加えることができる。しかしながら、複数の実施形態において、書込みプロセスに対しては加熱を必要とせず、従って、UV光照射の刺激で、無色から着色への色の変化を引き起こすには十分であり、しかし一方で、刺激の組合せ、例えば光と組み合わせた加熱などが、着色から無色への色の変化を加速するための材料の移動性を増すために消去プロセスに対して使用される。その加熱が、画像形成組成物が照射または消去プロセスの間に所望の温度まで上げられる要因となる限りは、その加熱は、照射の前または途中で適用することができる。任意の適当な加熱温度を使用することができ、例えば、使用される特定の画像形成組成物に依存する。
【0048】
異なる刺激、例えば異なる光照射の波長などを、明確な書込みおよび消去操作を提供するために適切に選択することができる。例えば、一実施形態において、フォトクロミック材料は、UV光に感受性で透明状態から着色状態への異性化を引き起こすが、着色状態から透明状態への異性化を引き起こすには可視光と熱に感受性であるように選択する。その他の複数の実施形態において、書込みおよび消去の波長は、少なくとも約10nm、例えば少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約40nm、少なくとも約50nm、または少なくとも約100nm分離させる。
【0049】
書込みプロセスにおいて、画像形成媒体は、活性化させる適切な波長を有する画像形成性の光、例えば発光ダイオード(LED)のようなUV光源に、画像に沿ったやり方でさらす。その画像形成性の光は、フォトクロミック材料が透明な状態から着色した状態に例えば異性化などして転換し、画像形成の位置で着色した画像を生じ、そのフォトクロミック材料が安定な異性体の形に異性化して画像中にロックされることを引き起こすために、フォトクロミック材料に十分なエネルギーを供給する。画像形成媒体の特定の区域に照射されるエネルギーの量は、その区域で発生する色の強さまたは色相に影響し得る。適当なフォトクロミック材料、溶媒もしくはポリマーバインダー、および照射条件が選択されたとき、画像形成媒体の特定区域で照射されるエネルギーの量の変動は、かくして、グレースケール画像の形成を可能にし、その一方で、他の適当なフォトクロミック材料の選択により、フルカラー画像の形成を可能にすることができる。
【0050】
書込みプロセスにより画像が一旦形成されると、その画像形成材料内のフォトクロミック材料の形成された安定な異性体の形が、画像中にロックされる。複数の実施形態において、画像はロックされ、周囲の熱または光単独では容易には消去することができず、無色の状態に戻すためには高温と光を必要とする。画像形成基板は、かくして、長寿命の画像存続期間を示すが、所望によっては消去してさらなる画像形成サイクルのために再使用することができる。
【0051】
消去プロセスにおいては、異なる刺激、例えば異なる波長の照射光、例えば可視光が、キャリア物質のガラス転移点、融点、または沸点の温度またはその近くの温度まで加熱されつつあるフォトクロミック材料と組み合わせて使用されることを除けば、書込みプロセスが、本質的に繰り返される。例えば、その加熱は、約80℃〜約250℃の温度、例えば約100℃〜約200℃または約100℃〜約160℃で行うことができる。消去プロセスは、画像形成区域で前もって形成された画像を短時間で消去するために、異性化の逆転およびフォトクロミック単位の、着色した状態から透明な状態への異性化のような転換を引き起こす。
【0052】
一時的な画像を形成し、一時的な画像を消去するために使用される別々の画像形成性の光は、例えば単一波長または帯域波長のような任意の適当な所定の波長範囲を有することができる。様々な例示的実施形態において、画像形成性の光は、それぞれ単一波長または狭帯域波長を有する紫外(UV)光および可視光である。例えば、UV光は、約200nm〜約475nmのUV光波長範囲、例えば、約365nmの単一波長または約360nm〜約370nmの波長帯から選択することができる。画像を形成するため、ならびに画像を消去するために、画像形成媒体は、それぞれの画像形成の光または消去の光に約10ミリ秒〜約5分、特に約30ミリ秒〜約1分の範囲の時間さらすことができる。画像形成性の光は、約0.1mW/cm〜約100mW/cm、特に約0.5mW/cm〜約10mW/cmの範囲の強度を有することができる。
【0053】
消去用の光は、着色状態の異性体の可視領域における吸収スペクトルと重複する波長の強い可視光である。例えば、消去用の有用な光は、約400nm〜約800nmまたは好ましくは約500nm〜約800nmの範囲の波長を有することができる。消去に有用な可視光は、消去すべき文書の領域近くに配置されている5W〜約1000Wまたはより好ましくは約20W〜約200Wの出力を有するバルブを備えたキセノン光源から得ることができる。
【0054】
様々な例示的実施形態において、所定の画像に対応する画像形成性の光は、例えばコンピュータまたは発光ダイオード(LED)配列スクリーンにより発生させることができ、その画像は、その媒体をLEDスクリーン上またはその近くに望ましい時間置くことによって画像形成媒体上に形成される。他の例示的実施形態においては、UVレーザビームスキャナ(ROS)(Raster Output Scanner)を使用して画像に沿ったパターンのUV光を発生させることができる。この実施形態は、例えば別の従来のやり方においては印刷された画像を発生するコンピュータによって駆動させることができるプリンタ装置に特に応用可能である。
【0055】
画像形成基板を再使用するために画像を消去するためには、様々な例示的実施形態において、その基板を適当な画像形成性の光と熱に暴露してその画像を消去させることができる。かかる消去は、任意の適当なやり方、例えば基板全体を消去用の光と熱に一気にさらすこと、基板全体を消去用の光と熱にその基板をスキャンするなどして継続的にさらすことなどによって行うことができる。
【実施例】
【0056】
実施例1.
フォトクロミック材料、メトキシ置換ジチエニルエテンを、「Dithienylethenes with a Novel Photochromic Performance」、J.Org.Chem.、2002年、67、4574〜4578頁に記載されている手順に従って合成した。
【0057】
140mgのそのフォトクロミック材料を、5mlのトルエンに溶解したポリメチルメタクリレート(PMMA、ポリマーバインダー)の溶液(PMMA/トルエン=20g/100ml)に溶解することによって作製した。その溶液を次に石英のスライドにスピンコートする(1000rpm、60秒)。そのコートしたスライドをそのまま乾燥させ、いつでも印刷できる状態の再画像形成可能な媒体を用意した。
【0058】
試験試料のUV/可視スペクトルを、第1に、透明な状態で測定した。その後、そのフィルムにUV光源による照射(365nmのUV光、高輝度で30秒)をして着色状態を生じさせた。石英基板上の透明状態および着色状態のUV/可視スペクトルを、図1に示す。UV照射後、第1は、すべての試料が640nmにおいて約0.7の吸光度を有した(青、書込み状態)。
【0059】
消去(退色)カイネティクスに続いてλmax=640nmにおける吸光度の減少を測定した。再現可能な消去カイネティクスを提供するホットプレート表面から16.5cm離して設置したフィルタを通したキセノンランプ光源(150W)を用いる設定(波長>510nmの可視光(VIS光))を使用した。上記のようにして調製した同一の試料を、次の3つの異なる条件の下で消去した。
(a)「Dithienylethenes with a Novel Photochromic Performance」、J.Org.Chem.、2002年、67、4574〜4578頁に記載されているように、160℃で加熱。
(b)160℃での加熱とVIS光(>510nm)への暴露を同時に(注:試料は光源によるさらなる加熱から遮断する)。
(c)室温で可視光(>510nm)のみ。
その結果を図2に示す。
【0060】
図2の結果を参照すると、強力な可視光のみによる消去は、110分後でさえ試料を消去せず、非常に遅いプロセスであることが分かる。160℃での加熱は、約50分でこの試料を消去する。しかしながら、その2つの組合せは、6倍のさらなる加速を提供し、10分未満での試料の消去をもたらす。
【0061】
実施例2.
リアルタイムの消去速度データを得るために、いくつかのフォトクロミック化合物を、図3の設定により試験した。これは、早く退色する試料に対して特に有用であるこの設定の使用を説明する。実施例1のフォトクロミック化合物に関するものと同じ方法で、ガラスをコートした試料を用意した。その試料を、3つの異なる条件:熱(140〜145℃)、可視光(図3に記載のもの)および同時の熱と光で消去した。その結果を下表に示す。時間は秒を表す。
【表1】

【0062】
表は、EF>1が、いずれのフォトクロミック材料にもある本来的な性質ではない事実を示している。例えば、表の記入事項#2は、促進効果が見られないことを意味するEF=1を与えた。一方で、表は、EF>1がジチエニルエテンに特有の性質ではない事実を示している。表の記入事項#1は、異なる種類の化合物の1員であるスピロピランである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施形態の透明および無色の状態に対するUV〜可視スペクトル吸収を示す図である。
【図2】UV光によって書き込まれ、異なる条件の下で消去される実施形態による3つの比較試料の吸収のプロットを示す図である。
【図3】本開示との関連で使用するための典型的な試験装置を示す図である。
【図4A】図3の装置の加熱試料保持器のさらなる詳細を示す図である。
【図4B】図3の装置の加熱試料保持器のさらなる詳細を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
溶媒またはポリマーバインダー中に溶解もしくは分散しているフォトクロミック材料またはフォトクロミック−サーモクロミック材料を含む画像形成組成物を含む、前記基板上にコートされているかまたは前記基板中に含浸されている画像形成層と、を含み、
画像形成組成物が、第1の波長の光によって画像形成が可能であり、熱と第2の波長の光の組合せによって短時間での消去が可能であり、熱エネルギーと第2の波長の光エネルギーの一定量を用いる同時の消去が、熱エネルギーと第2の波長の光エネルギーの一定量を連続して加える場合、より高い度合いの消去をもたらし、画像形成媒体が、無色の状態と着色した状態の間での可逆的転移を示すことを特徴とする画像形成媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2008−310326(P2008−310326A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153947(P2008−153947)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】