説明

インコネル718型ニッケル超合金を製造する方法

本発明は、インコネル718型ニッケル超合金を製造する方法に関する。前記ニッケル超合金が受ける最後の鍛造ステップが、δ−ソルバス温度より低い温度Tで行われ、ニッケル超合金のすべての点Mで局部変形率Dは最小値D以上であり、前記ニッケル超合金は、前記焼入れ後に750℃に等しいしきい値温度Tより高い温度で任意の熱処理を受けない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インコネル718型ニッケル超合金を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インコネル718ニッケル系超合金(NC19FeNb)は、先端技術の用途、特に、航空用のタービンエンジンの回転部品、ケーシング、およびリングにおいて部品を製造するために広範囲で使用されている。これらの部品が使用中に示す機械的特性は、部品の合金(化学組成)の固有の特性および部品の微細構造、特にその粒子サイズに依存する。特に、粒子サイズは、低サイクル疲労、牽引強度、およびクリープに関する特性を支配する。粒子が微細である(例えば、5μm〜20μmに範囲に実質的にある粒子サイズを有する)微細構造は、良好なクリープ挙動をも保証しながら、疲労および牽引強度の点からより良好な特性を得ることを可能にする。
【0003】
現在、この微粒子のサイズは、粒子を再結晶させるための機構を実現する役目をする部品に熱処理および鍛造手順計画を適用することによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本手順計画で、粗粒子の区域が、ニッケル超合金部品、つまり微粒子のサイズより相当に大きいサイズの粒子を有する区域上で頻繁に観察されている。そのような区域は、そのような部品の機械的特性の低下を生じるので望ましくない。
【0005】
たとえそのような操作が合金の最終微細構造に効果がない評判を有していても、手順計画がδ−ソルバス温度(デルタ沈殿物が溶液に戻る温度)より下での鍛造操作を含む場合でさえ、これらの粗粒子状の区域が現れ、その操作が、理論上、粒成長がないことを保証すると仮定されるからである。
【0006】
本発明は、部品の製造の間に粗粒子の出現を制限することを可能にする製造方法を提案することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、前記ニッケル超合金が受ける鍛造の最後の段階が、δ−ソルバス温度より低い温度Tで行われ、ニッケル超合金中のすべての点Mで局部変形率Dは最小値D以上であることによって達成され、ここで、局部変形率Dが以下のように定義される:
D=Ln(δ/δ
ここで、δは、点Mと点Mに近隣する点M’との初期距離であり、δは、鍛造後の点Mと点M’との距離であり、前記ニッケル超合金は、前記焼入れ後に750℃に等しいしきい値温度Tより高い温度で任意の熱処理を受けない。
【0008】
これらの条件によって、超合金内にまだ存在する任意の粗粒子が元通り微粒子に変化され、新しい粗粒子は超合金内に形成しない。
【0009】
有利には、ニッケル超合金が、最後の鍛造ステップに続いて焼入れ後に直接焼き戻しも受ける。
【0010】
このように、超合金の靭性特性が改善され、一方、その他の機械的特性は著しく損なわれない。焼き戻し操作は、超合金内で粗粒子を再現させないようにするのに十分に低い温度で行われる。
【0011】
本発明はよりよく理解されることができ、その利点は、限定しない例によって示される実施の次の詳細な説明を読むとよりはっきり現れる。説明は添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法を示す図である。
【図2】本発明の製造方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、インコネル718型ニッケル超合金の検討がなされる。
【0014】
本発明の方法では、出発ビレットが、規格に適合する構造および形状をビレットに付与する目的で熱機械処理を既に受けている。
【0015】
発明者らは、微細構造が粗粒子を有する先行技術のニッケル超合金を検討したとき、それらの粗粒子が2つの異なる種類であることを観察した。
【0016】
このように、例えば、合金がδ−ソルバス温度より高い温度で維持されるので、微粒子の静的拡大に起因するはじめに粗い等軸晶粒子が識別される。そのような拡大は、δ−ソルバス温度より低い温度で合金処理手順の計画の鍛造操作を行うことによって回避されてもよい。
【0017】
発明者らは、また、思いがけなく、合金内で、非常に不規則な輪郭を備えた「破裂(exloded)」または「爆発(burst)」粗粒子を観察した。これらの粒子は、一般にδ−ソルバス温度より低い温度で形成し、変形がδ−ソルバス温度より低い温度(例えば、1000℃より低い)で行われる場合には、変形は、前の鍛造操作中に加工硬化の結果として貯蔵されたエネルギーであり、この粒子の爆発を生じさせると考えられる。この貯蔵エネルギーは、そのとき、粒子境界の初期の制御されない移動の形態で「解放され」、それによって、これらの「爆発」粒子を生成する。
【0018】
本発明によれば、図1に示されるように、超合金が受ける鍛造手順の計画において、最後の鍛造ステップ(図1において参照される1)がδ−ソルバス温度より低い温度Tで行われ、ニッケル超合金のすべての点Mで局部変形率Dは最小値D以上であることが確実にされる。
【0019】
局部変形率Dは、材料の点Mで局部変形を特徴とする。それは以下の式によって定義される:
D=Ln(δ/δ
ここで、δは、点Mと点Mに近隣する点M’との初期距離であり、δは、鍛造後の点Mと点M’との距離である。
【0020】
δ−ソルバス温度より低い温度Tでこの最後の鍛造ステップを行うことは、粗い等軸晶粒子を形成しないようにすることを可能にする。
【0021】
さらに、局部変形率Dが超合金の領域内で最小値D以上である条件は、「爆発」粒子が、この領域内で微粒子として再結晶されることを可能にする。鍛造ステップの間、部品に付与された最終形状に依存して、その部品のある領域が、他の領域より大きな変形量を受けてもよい。局部変形率Dに関する上記条件が、超合金中のすべての点Mで有効であることは、「爆発」粒子が超合金の体積全体にわたって微粒子として再度結晶されることを確実にすることを可能にする。
【0022】
例えば、最小値Dは0.7に等しくてもよい。
【0023】
あるいは、最小値Dは0.8または0.9に等しくてもよい。
【0024】
この鍛造後、超合金は鍛造温度Tから大気温度Tへの焼入れを受ける。
【0025】
有利には、焼入れは、約15℃/分のレートで行われ、発明者らによって行われたテストが、そのレートで焼入れする場合に、機械的特性が最も最適化されることを示したからである。焼入れは、水で行われることが好ましい。
【0026】
さらに、最終鍛造ステップに続いてこの焼入れ後に、超合金は、750℃に等しいしきい値温度Tより高い温度で任意の熱処理を受けない。
【0027】
しきい値温度Tより高い温度での熱処理は、超合金内の「爆発」粒子を生じる可能性がある。
【0028】
特に、超合金は、溶体化焼鈍がしきい値温度Tより高い温度で行われるので、溶体化焼鈍を受けない。
【0029】
対照的に、超合金は、最後の鍛造に続いて焼入れ後に焼き戻しを直接受けてもよい(図1で図2で参照されるステップ)。
【0030】
例えば、超合金は、720℃の温度に8時間加熱され、次いで、620℃の温度に8時間冷却され、その後、大気温度に冷却されてもよい。この状況は図2に示されている。
【0031】
本発明の最後の鍛造ステップに先立って、超合金は、δ−ソルバス温度より高い鍛造温度で行われるこれらステップの各々、いくつか、1つまたはなしで、他のものを受けない、互いに、またはいくつかの他の鍛造ステップを受けてもよい。
【0032】
有利には、最後の鍛造ステップに先行する鍛造ステップはすべて、δ−ソルバス温度より低い温度で行われる。
【0033】
デジタルシミュレーションが発明者らによって行われ、それらは、本発明の方法の最後に、粒子のサイズが確かに低減されることを示す。
【0034】
例えば、本発明の方法の最後に、超合金の粒子のすべてのサイズが5μm〜30μmの範囲であってもよい。
【0035】
有利には、本発明の方法の最後に、超合金の粒子のすべてのサイズが5μm〜20μmの範囲にあってもよい。この微細平均粒度は、さらに改善された疲労寿命および弾性限界を有する超合金を生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インコネル718型ニッケル超合金を製造する製造方法であって、
前記ニッケル超合金が受ける最後の鍛造ステップが、δ−ソルバス温度より低い温度Tで行われ、ニッケル超合金のすべての点Mで局部変形率Dは最小値D以上であり、
前記ニッケル超合金は、前記焼入れ後に750℃に等しいしきい値温度Tより高い温度で任意の熱処理を受けないことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
局部変形率の最小値Dが0.7に等しいことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ニッケル超合金が前記鍛造ステップに続いて焼入れ後に直接焼き戻しも受けることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記最後の鍛造ステップに先行する鍛造ステップのすべてがδ−ソルバス温度より低い温度で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記方法の最後に、前記超合金のすべての粒子のサイズが5μm〜30μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記方法の最後に、前記超合金のすべての粒子のサイズが5μm〜20μmの範囲にあることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513728(P2013−513728A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542604(P2012−542604)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052658
【国際公開番号】WO2011/070302
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)