説明

インストルメントパネルへの電気接続箱取付構造

【課題】インストルメントパネル内部に固定された電気接続箱へのアクセスを容易にし、電気接続箱の電気部品交換等のメンテナンス性を高める。
【解決手段】自動車のインストルメントパネルの車室内に面する側壁中央に設けた開口に、スイッチパネルが前方へ取り出し可能に嵌合して取り付けられ、前記スイッチパネルの背面側のインストルメントパネル内部に電気接続箱が固定され、前記スイッチパネルの背面と対向する前記電気接続箱の表面にメンテナンスされる電気部品収容部を配置し、かつ、該電気接続箱と前記スイッチパネルとに無線通信手段と誘導給電手段を設け、前記電気接続箱のメンテナンス時に、前記スイッチパネルを前記開口より取り外し、該開口を電気接続箱のメンテナンス用開口としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造に関し、詳しくは、インストルメントパネル内部に固定された電気接続箱のメンテナンス性を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネル内部には、電装品への給電や制御等に用いるワイヤハーネスが接続される電気接続箱が配置されている。例えば、特開2007−176405号公報(特許文献1)には、図7(A)、(B)のように、インストルメントパネル1の中央にあるセンタークラスター2内部に電気接続箱3を配置し、該電気接続箱3に設けたスイッチの操作部4をセンタークラスター2から露出させることが提案されている。このように、インストルメントパネル中央のセンタークラスター2内部に電気接続箱3を配置することにより、電気接続箱3と各電装品(図示せず)とを接続するワイヤハーネスW/Hの取り回し距離を短くすることが可能となる。
【0003】
一方、電気接続箱3にはヒューズやリレー等の電気部品5が搭載されており、これらの電気部品交換等のメンテナンスが必要になる場合がある。しかし、前記構成では、メンテナンス時に、まず、インストルメントパネル1の取り外しが必要となり、電気接続箱3へのアクセスが容易ではなくメンテナンス性が良くないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、インストルメントパネル内部に固定された電気接続箱へのアクセスを容易にし、電気接続箱の電気部品交換等のメンテナンス性を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、自動車のインストルメントパネルの車室内に面する側壁中央に設けた開口に、スイッチパネルが前方へ取り出し可能に嵌合して取り付けられ、
前記スイッチパネルの背面側のインストルメントパネル内部に電気接続箱が固定され、
前記スイッチパネルの背面と対向する前記電気接続箱の表面にメンテナンスされる電気部品収容部を配置し、かつ、該電気接続箱と前記スイッチパネルとに無線通信手段と誘導給電手段を設け、
前記電気接続箱のメンテナンス時に、前記スイッチパネルを前記開口より取り外し、該開口を電気接続箱のメンテナンス用開口としていることを特徴とするインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造を提供している。
【0007】
前記のように、インストルメントパネルの車室内に面する側壁中央に設けた開口に、スイッチパネルを前方に取り出し可能に嵌合させて取り付けると共に、メンテナンスされる電気接続箱の電気部品収容部が前記スイッチパネルの背面と対向するように、インストルメントパネルの内部に電気接続箱を固定する構造としている。したがって、電気接続箱のメンテナンスが必要な場合には、スイッチパネルを前記開口から前方へ取り外すだけで、前記開口が電気接続箱のメンテナンス用開口となり、メンテナンスが必要な電気接続箱の電気部品収容部に容易にアクセスできる。よって、電気接続箱の電気部品交換等を容易に行うことができる。
【0008】
特に、前記構成によれば、電気接続箱とスイッチパネルとに無線通信手段を設けているため、スイッチパネルから電気接続箱へのスイッチ操作信号や、電気接続箱からスイッチパネルへのインジケータ点灯信号などの信号の送受信を無線で行うことができる。よって、電気接続箱とスイッチパネルを電線等で接続する必要がなくなり、スイッチパネルの取り外しを容易に行うことができる。
【0009】
さらに、前記構成によれば、電気接続箱とスイッチパネルとに誘導給電手段を設けているため、電気接続箱からスイッチパネルへ電源供給を行うために電気接続箱とスイッチパネルを電線等で接続する必要がなくなり、スイッチパネルの取り外しを容易に行うことができる。
このように、本発明の前記構成によって電気接続箱のメンテナンス性を大幅に向上させることができる。
【0010】
前記スイッチパネルには、例えば、エアコンやオーディオ等、種々の操作スイッチを設けておくことができる。また、前記スイッチパネルは、例えば、スイッチパネルの側壁に設けた係止部を、前記開口の内周壁の対応位置に設けた被係止部に係止させ、該係止を比較的容易に解除できる構成とすることによって開口に取り付けることができる。さらに、前記電気接続箱は、インストルメントパネル内部の車体パネルあるいはインストルメントパネルの内側面にボルト締結等で固定してもよい。
【0011】
前記メンテナンスされる電気部品は、ヒューズやリレー等である。
本発明では、過電流によりヒューズが溶断したり、リレーに不具合が生じたりした場合でも、スイッチパネルを前方に取り外すだけで前記開口からヒューズやリレーの交換を容易に行うことができる。
【0012】
前記無線通信手段は、2.4GHz帯無線送受信機、赤外線送受信機、RFIDのいずれかであることが好ましい。
【0013】
また、前記誘導給電手段として前記電気接続箱に誘導給電用コイルを設け、該誘導給電用コイルから前記スイッチパネルに電源を供給していることが好ましい。
この際、前記スイッチパネルにもコイルを設け、スイッチパネルを前記開口に嵌合させて取り付けたときに、電気接続箱側およびスイッチパネル側の双方のコイルが近接配置されることが好ましい。また、誘導給電により供給される電力は交流であるため、スイッチパネルに交流−直流変換回路を設け、直流に変換してからスイッチパネルに電力を供給することが好ましい。
【0014】
また、前記スイッチパネルに電池を取り付けていてもよい。
前記のように、スイッチパネルに電池を取り付けることによっても、電気接続箱とスイッチパネルを電線等で接続することなくスイッチパネルに電源を供給できるため、スイッチパネルの取り外しを容易に行うことができる。また、スイッチパネルに電池を取り付けることで、スイッチパネルを取り外した状態でもスイッチパネルの操作ができるという利点も有している。
【0015】
さらに、前記電気接続箱には前記メンテナンス用開口に面する位置にダイアグコネクタを取り付けていることが好ましい。
【0016】
ダイアグコネクタは、自動車に搭載された電装機器の故障診断や動作チェックなどを行う外部機器と接続するためのコネクタであり、通常、運転席のハンドル下方付近に設けられることが多い。しかし、前記のように、ダイアグコネクタをインストルメントパネル内部の電気接続箱に設けることにより、ダイアグコネクタに誤って接触してショート等の異常が発生するのを防止できる。また、ダイアグコネクタを電気接続箱の前記メンテナンス用開口に面する位置に設けることにより、従来の設置位置に比べ、外部機器をダイアグコネクタに接続して故障診断や動作チェック等を行う際の作業性を高めることができる。
【0017】
また、前記電気接続箱には前記メンテナンス用開口に面する位置に、CAN通信線と接続したコネクタと嵌合する分岐接続用のコネクタを設けていることも好ましい。
【0018】
CAN通信線と接続するコネクタと嵌合する分岐接続用のコネクタは、通常、運転席の足元付近などに設けられており、CAN通信異常が発生した場合にはCANノード装置につながるCAN通信線のコネクタを前記分岐接続用のコネクタから外して異常箇所を特定できるようにしている。
前記のように、CAN通信線と接続するコネクタと嵌合する分岐接続用のコネクタをインストルメントパネル内部の電気接続箱に設けることにより、誤ってコネクタに接触してコネクタ外れ等の不具合が発生するのを防止することができる。また、分岐接続用のコネクタを電気接続箱のメンテナンス用開口に面する位置に設けることにより、従来の設置位置に比べ、通信異常箇所の特定作業をする際の作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
前述したように、本発明によれば、インストルメントパネルの車室内に面する側壁中央に設けた開口に、スイッチパネルを前方に取り出し可能に嵌合させて取り付けると共に、メンテナンスされる電気接続箱の電気部品収容部が前記スイッチパネルの背面と対向するようにインストルメントパネルの内部に電気接続箱を固定しているため、電気接続箱のメンテナンスが必要な場合には、スイッチパネルを前記開口から前方へ取り外すだけで前記開口が電気接続箱のメンテナンス用開口となり、メンテナンスの必要な電気接続箱の電気部品収容部に容易にアクセスできる。よって、電気接続箱の電気部品交換等を容易に行うことができ、メンテナンス性を大幅に向上させることができる。
特に、前記のように、電気接続箱とスイッチパネルとに無線通信手段および誘導給電手段を設けているため、電気接続箱とスイッチパネルを電線等で接続しなくても電気接続箱とスイッチパネルとの通信やスイッチパネルへの給電が可能となり、スイッチパネルの取り外しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態において、スイッチパネルをインストルメントパネルの開口に取り付けた状態を示す概略斜視図である。
【図2】スイッチパネルを開口より前方に取り外した状態を示す概略斜視図である。
【図3】電気接続箱およびスイッチパネルを示す概略斜視図である。
【図4】(A)は電気接続箱に設ける誘導給電装置の構成を示す説明図、(B)はスイッチパネルに設ける誘導給電装置の構成を示す説明図である。
【図5】第2実施形態における電気接続箱の概略斜視図である。
【図6】第3実施形態における電気接続箱の概略斜視図である。
【図7】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1〜図4に本発明の第1実施形態を示す。
【0022】
図1および図2に示すように、自動車のインストルメントパネル10の車室内に面する側壁中央に開口11を設け、該開口11に、オーディオやエアコンの操作スイッチを設けたスイッチパネル13を前方へ取り外し可能に嵌合させて取り付けている。本実施形態では、スイッチパネル13の側壁に係止爪13aを設け、開口11の内周壁の対応位置に設けた被係止溝11aに前記係止爪13aを係止させることによってスイッチパネル13を開口11に取り付けている。
【0023】
また、図2および図3に示すように、スイッチパネル13の背面側のインストルメントパネル10内部に電気接続箱12を固定している。電気接続箱12の表面には、ヒューズ20およびリレー21が収容される電気部品収容部12aを配置している。これらのメンテナンスの必要な電気部品収容部12aをスイッチパネル13の背面に対向させるように、電気接続箱12をインストルメントパネル10内部に固定している。
電気接続箱12はインストルメントパネル10内部の車体パネル(図示せず)にボルト締結で固定している。
【0024】
電気接続箱12とスイッチパネル13には、無線通信手段として2.4GHz帯無線送受信機14、15を設けている。また、スイッチパネル13に電源を供給するために、電気接続箱12とスイッチパネル13に、誘導給電装置16、17を設けている。電気接続箱12側の誘導給電装置16には誘導給電用コイル16aを設けると共に、スイッチパネル13側の誘導給電装置17にも前記誘導給電用コイル16aと同様のコイル17aを設け、スイッチパネル13をインストルメントパネル10の開口11に取り付けた際、双方のコイル16a、17aが近接配置されるようにしている。また、誘導給電により供給される電力は交流であるため、スイッチパネル13側の誘導給電装置17には、コイル17aに連続して交流−直流変換回路17bを設け、直流に変換してスイッチパネル13に電源を供給している(図4)。
なお、本実施形態では無線通信手段として2.4GHz帯無線送受信機14、15を設けているが、赤外線送受信機やRFIDを用いてもよい。また、スイッチパネル13に電池を取り付けていてもよい。
【0025】
前記のように、インストルメントパネル10の車室内に面する側壁中央に設けた開口11に、スイッチパネル13を前方に取り出し可能に嵌合させて取り付けると共に、メンテナンスされる電気接続箱12の電気部品収容部12aがスイッチパネル13の背面と対向するようにインストルメントパネル10の内部に電気接続箱12を固定している。
電気接続箱12のメンテナンスが必要な場合には、スイッチパネル13を開口11から前方(矢印方向)へ取り外すだけで開口11が電気接続箱12のメンテナンス用開口となり、メンテナンスの必要な電気接続箱12の電気部品収容部12aに容易にアクセスすることができる。よって、電気接続箱12の電気部品交換等を容易に行うことができ、電気接続箱12のメンテナンス性を大幅に向上させることができる。
特に、前記のように、電気接続箱12とスイッチパネル13とに2.4GHz帯無線送受信機14、15と誘導給電装置16、17を設けているため、電気接続箱12とスイッチパネル13を電線等で接続しなくても電気接続箱12とスイッチパネル13との通信やスイッチパネル13への給電が可能となり、スイッチパネル13の取り外しを容易に行うことができる。
【0026】
図5に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、電気接続箱12のメンテナンス用開口11に面する位置に図5に示すようなダイアグコネクタ12bを取り付けている。
他の構成は第1実施形態と同様としている。
【0027】
前記のように、ダイアグコネクタ12bをインストルメントパネル10内部の電気接続箱12に設けることにより、ダイアグコネクタに誤って接触してショート等の異常が発生するのを防止できる。また、ダイアグコネクタ12bを電気接続箱12のメンテナンス用開口11に面する位置に設けることにより、外部機器(図示せず)をダイアグコネクタ12bに接続して故障診断や動作チェック等を行う際の作業性を向上させることができる。
【0028】
図6に第3実施形態を示す。
第3実施形態では、電気接続箱12のメンテナンス用開口11に面する位置に、CANノード装置22につながるCAN通信線(ツイストペア電線)23と接続したメスコネクタ24と嵌合する分岐接続用のオスコネクタ12cを設けている。
他の構成は第1実施形態と同様としている。
【0029】
前記のように、CAN通信線23と接続するメスコネクタ24と嵌合する分岐接続用のオスコネクタ12cをインストルメントパネル10内部の電気接続箱12に設けることにより、誤ってコネクタに接触してコネクタ外れ等の不具合が発生するのを防止することができる。また、分岐接続用のオスコネクタ12cを電気接続箱12のメンテナンス用開口11に面する位置に設けることにより、通信異常箇所の特定作業をする際の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 インストルメントパネル
11 開口(メンテナンス用開口)
12 電気接続箱
12a 電気部品収容部
12b ダイアグコネクタ
12c 分岐接続用のコネクタ
13 スイッチパネル
14、15 2.4GHz帯無線送受信機
16、17 誘導給電装置
16a、17a コイル
17b 交流−直流変換回路
20 ヒューズ
21 リレー
22 CANノード装置
23 CAN通信線
24 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のインストルメントパネルの車室内に面する側壁中央に設けた開口に、スイッチパネルが前方へ取り出し可能に嵌合して取り付けられ、
前記スイッチパネルの背面側のインストルメントパネル内部に電気接続箱が固定され、
前記スイッチパネルの背面と対向する前記電気接続箱の表面にメンテナンスされる電気部品収容部を配置し、かつ、該電気接続箱と前記スイッチパネルとに無線通信手段と誘導給電手段を設け、
前記電気接続箱のメンテナンス時に、前記スイッチパネルを前記開口より取り外し、該開口を電気接続箱のメンテナンス用開口としていることを特徴とするインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造。
【請求項2】
前記メンテナンスされる電気部品は、ヒューズあるいは/およびリレーである請求項1に記載のインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造。
【請求項3】
前記無線通信手段は、2.4GHz帯無線送受信機、赤外線送受信機、RFIDのいずれかである請求項1または請求項2に記載のインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造。
【請求項4】
前記誘導給電手段として前記電気接続箱に誘導給電用コイルを設け、該誘導給電用コイルから前記スイッチパネルに電源を供給している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造。
【請求項5】
前記スイッチパネルに電池を取り付けている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造。
【請求項6】
前記電気接続箱には前記メンテナンス用開口に面する位置にダイアグコネクタを取り付けている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造。
【請求項7】
前記電気接続箱には前記メンテナンス用開口に面する位置に、CAN通信線と接続したコネクタと嵌合する分岐接続用のコネクタを設けている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインストルメントパネルへの電気接続箱取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11639(P2011−11639A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157680(P2009−157680)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)