説明

インターネットオークションにおけるユーザ評価システム

【課題】インターネットオークションにおいて、取引相手がオークションユーザとしてどのような特性があるのかを把握できるようにするとともに、取引関係に由来する信頼性の伝播が考慮されるようにする。
【解決手段】インターネットオークションにおけるユーザ評価システムは、システムユーザが問い合わせを行い、ユーザネットワーク構築部(S50)にてオークションユーザと取引関係で構成される隣接行列を作り、それに対し各ユーザが持つオークションデータに基づくユーザスコア(具体的には、実際の商品の授受の円滑さを表す時間スコアと、取引の頻度からオークションユーザ間の相互関係の強さを表す関係スコアと、オークションユーザ間のオークション経験の差を評価因子とする評価値差スコア)を算出部(S51)で算出することで各ユーザに信頼指標を与え、オークションを行うユーザが様々な指標で取引相手の信頼性を測る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネットオークションの利用者に対して、オークションデータに基づいた評価指標を用いて利用者を評価するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットオークションでは、取引当事者間において、相手がどれほど信用できるか評価し合う評価システムが用いられることが多い。インターネットオークションサイトで用いられる評価システムは、個々の取引終了後に互いに相手を評価するもので、個人に与えられる信頼指標はその個々の評価の累計値である評価値となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−337897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、相手の信頼性を図る上で、評価値という単一の評価指標しか無い為に、取引相手がインターネットオークションユーザとしてどのような特性があるのかを把握できない。
【0005】
また、既存の評価値は個々の直接評価のみの累計値で構成されているため、取引関係に由来する信頼性の伝播が考慮されていない。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、取引相手がインターネットオークションユーザとしてどのような特性があるのかを把握できるようにすることを第1の目的とし、取引関係に由来する信頼性の伝播が考慮されるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のユーザ評価システムは、インターネットオークションでの個々の取引に関する情報を記憶するデータベースと、このデータベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザの信頼性を測る指標を算出する算出手段とを有するユーザ評価システムであって、
前記取引に関する情報は、インターネットオークションにおける売り手と買い手の実際の取引に要する時間に関する情報を含んでおり、
前記算出手段は、前記売り手と買い手の実際の取引に要する時間に関する情報に基づいて実際の商品の授受の円滑さを表す時間スコアを前記指標として算出することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、上記の時間スコアにより、ユーザ間の取引が迅速に行われていたどうか、つまり実際の取引おけるユーザの熟練度を知ることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のユーザ評価システムにおいて、前記データベースは、前記売り手と買い手の実際の取引に要する時間に関する情報として、オークション終了時刻と取引相手の評価時刻を記憶しており、
前記算出手段は、前記オークション終了時刻から前記取引相手の評価時刻までの時間に基づいて前記時間スコアを算出することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のユーザ評価システムにおいて、前記算出手段は、前記データベースから取引に関する情報を取得して、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行い、前記オークション終了時刻から前記取引相手の評価時刻までの時間を前記固有値計算における隣接行列の要素決定に用いて前記時間スコアを算出することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、インターネットオークションでの個々の取引に関する情報を記憶するデータベースと、このデータベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザの信頼性を測る指標を算出する算出手段とを有するユーザ評価システムであって、
前記算出手段は、前記データベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザ間の取引の回数を求め、その回数に基づいて前記オークションユーザ間の相互関係の強さを表す関係スコアを前記指標として算出することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、上記の関係スコアにより、同じ相手との複数回の取引における信頼性を知ることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のユーザ評価システムにおいて、前記算出手段は、前記データベースから取引に関する情報を取得して、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行い、前記オークションユーザ間の取引の回数を前記固有値計算における隣接行列の要素決定に用いて前記関係スコアを算出することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、インターネットオークションでの個々の取引に関する情報を記憶するデータベースと、このデータベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザの信頼性を測る指標を算出する算出手段とを有するユーザ評価システムであって、
前記取引に関する情報は、インターネットオークションにおける売り手の評価値と買い手の評価値を含んでおり、
前記算出手段は、前記売り手の評価値と買い手の評価値に基づいてオークションユーザ間のオークション経験の差を表す評価値差スコアを前記指標として算出することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、上記の評価値差スコアにより、取引がインターネットオークションに慣れたもの同士で行われたか、また既存の評価システムにおけるユーザの依存性を利用して、取引が同等のオークション熟練度を持つ者で行われたかを知ることができる。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のユーザ評価システムにおいて、前記算出手段は、前記データベースから取引に関する情報を取得して、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行い、前記売り手の評価値と買い手の評価値を前記固有値計算における隣接行列の要素決定に用いて前記評価値差スコアを算出することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載のユーザ評価システムにおいて、ユーザからの問い合わせにより前記指標をユーザに提示する手段を有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、例えばオークションにおいて入札や落札を行う前に、取引相手のオークションシステム全体から見た相対的な信頼性を知ることができる。このように、事前に取引相手の情報を知ることによって、不審なユーザとの取引を行う可能性を軽減できる。
【0013】
なお、請求項3、5、7に記載の発明によれば、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行ってそれぞれのスコアを算出しているので、取引関係に由来する信頼性の伝播が考慮されたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーバー・クライアントシステムの構成図である。
【図2】本システムにおいて利用するインターネットオークションサイトに用いられるデータベースのテーブルを示す図である。
【図3】本システムの機能ブロック図である。
【図4】インターネットオークションにおけるオークションユーザの行動フローチャートと対応する本システムの処理に係る説明図である。
【図5】本システムの特徴的な構成に係るフローチャートである。
【図6】本実施形態におけるユーザスコア算出例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態が適応可能なインターネットオークションサービス行うサーバー・クライアントシステムの構成図である。インターネットオークションはオークションサイト運営者が配信サーバ4を用い、インターネット5上にサイトをアップロードし、ユーザ6に商取引の場を提供する。オークションでの情報はユーザデータベース(以下、DB)2や商品DB1などに蓄積され、オークションサイト側がアプリケーションサーバ3によってこれらの情報を加工、修正し取引支援を行う。
【0017】
本システムは、インターネットオークションで用いられるユーザDB2と様々な処理を行うアプリケーションサーバ3内のプログラムで構成される。
【0018】
ユーザDB2は、インターネットオークションでの個々の取引における情報の他、取引を行う事によって付与される数値も格納されているデータベースである。
【0019】
図2は、本システムが利用するユーザDB2に必要なデータベース内のテーブル(以下、単にテーブルという)の定義を示した図である。テーブル201はインターネットオークションでの個々の取引に関する情報を定義しているテーブルである。具体的には、対象ユーザID、取引相手ID、対象ユーザ評価値(評価値については後述する)、取引相手評価値、対象ユーザの取引主体、対象ユーザへの取引評価、オークション終了時刻、および取引相手の評価時刻を有する。
【0020】
対象ユーザIDと取引相手IDは、当該のオークションサイトにおけるユーザを一意に識別できる文字情報であり、対象ユーザIDは、個々の取引における当事者を売り手、もしくは買い手として明示的に扱うために設定されたユーザを一意に認識できる文字情報である。
【0021】
対象ユーザ評価値と取引相手評価値は、既存の当該オークションにおける評価システム、ないしそれに準ずるユーザの信頼性を測る指標である。評価値は、一般的には、オークションにおける取引毎に行われる取引者間のポイント付与の累計値である。
【0022】
対象ユーザの取引主体は、対象ユーザが当該取引において売り手、もしくは買い手であることを示す数値である。
【0023】
対象ユーザへの取引評価は、個々の取引での相手を評価する際に付与するポイントであり、ポイントの値域は一般的に[−1,1]や[0,5]といった離散数値である。本システムでは、適用対象となるオークションサイトの採用しているポイントの値域に依存しない。
【0024】
テーブル202は、ユーザID、評価値、時間スコア(売り手側)、時間スコア(買い手側)、関係スコア(売り手側)、関係スコア(買い手側)、評価値差スコア(売り手側)および評価値差スコア(買い手側)を有するテーブルである。
【0025】
ユーザIDはテーブル201の対象ユーザIDと同様に、当該インターネットオークションにおけるユーザを一意に認識できる文字情報である。
【0026】
評価値は、テーブル201の対象ユーザ評価値と同様で、既存の当該オークションにおける評価システム、ないしそれに準ずるユーザの信頼性を測る指標である。
【0027】
時間スコアは、本発明において定義するオークションにおけるユーザの信頼性を測る指標である。時間スコアは、インターネットオークションにおける売り手と買い手の実際の取引(具体的には代金の送金、商品の発送、確認報告)に要する時間から個々の取引での円滑さを表す数値である。オークションユーザの持つ時間スコアが高いほど、取引を円滑に行っていることを示す。時間スコア(買い手側)では、取引の買い手側としての履歴を元にスコアを算出し、時間スコア(売り手側)では売り手として参加した取引の履歴を元に算出している。算出方法については後述する。
【0028】
関係スコアは、本発明において定義するオークションにおけるユーザの信頼性を測る指標である。関係スコアは、インターネットオークションにおける同二者間の複数取引の多寡から取引者の関係の良さを評価した数値である。オークションユーザの関係スコア(買い手側)が高い場合、取引において売り手側に不都合が無い対応をとれることを示している。また関係スコア(売り手側)が高い場合、多くのリピータが取引を行うような商品提示や取引を行っていることを示す。算出方法については後述する。
【0029】
評価値差スコアは、本発明において定義するオークションにおけるユーザの信頼性を測る指標である。評価値差スコアは、既存のインターネットオークションサイトのユーザの信頼性を測る指標である評価値が、ユーザのオークション熟練度を表すことから、取引において高い評価値を持つもの同士の取引や、同程度の評価値を持つものが行う取引を優良な取引として評価する数値である。インターネットオークションでは、オークション経験が豊富なことから起因する暗黙の了解や経験則が存在し、オークション経験の差からトラブルが生じることがある。評価値差スコア(買い手側)では、買い手として参加した取引おいて同程度のオークション経験を持つユーザと友好な関係を表し、評価値差スコア(売り手側)では売り手として参加した取引において同程度のオークション経験を持つユーザと友好な関係を表す。
【0030】
図3は、本システムの機能ブロック図である。
【0031】
本システムは、スコア計算部301とデータベース処理部311を備える。
【0032】
スコア計算部301は、時間スコア隣接行列構築部302、関係スコア隣接行列構築部303、評価値差隣接行列構築部304、および固有値計算部305で構成される。
【0033】
以下、数式を参照しながら、本システムが定義、算出するユーザの信頼性を測る指標である時間スコア、関係スコア、評価値差スコアについて述べる。
【0034】
まず、本システムでは、信頼性を測る指標算出にオークションでの取引履歴を利用するために、データベース処理部311を使い、ユーザDB2内のテーブル201から対象ユーザIDと取引相手ID、対象ユーザの取引主体を取得し、下式[数1]のような隣接行列Aを定義する。
【0035】
【数1】

【0036】
隣接行列AはN次正方行列であり、Nはユーザ数である。また、Aの要素aijは下式[数2]の定義に従って決定される。[数2]では、ユーザiが出品者、ユーザjが落札者であった場合に1をとり、それ以外は0となる。
【0037】
【数2】

【0038】
時間スコア隣接行列構築部302では、オークションユーザの時間スコア計算用の隣接行列を下式[数6]に従って構築する。[数6]を隣接行列構築に用いるために、データベース処理部311を使い、ユーザDB内のテーブル201から、オークション終了時刻と取引相手評価時刻を取得する。
【0039】
[数6]において、Fijは、ユーザiとjとの取引で後に取引相手を評価した時刻を示し、Tijは、ユーザiとユーザjとのオークション終了時刻を示す(ユーザiとjで複数回取引がある場合は最新取引を値に使う)。また、[数6]での等式の条件は、上記の[数2]と同様である。
【0040】
【数6】

【0041】
関係スコア隣接行列構築部303では、オークションユーザの関係スコア計算用の隣接行列を下式[数7]に従って構築する。[数7]を隣接行列構築に用いるために、データベース処理部311を使い、ユーザDB内のテーブル201から、対象ユーザIDと取引相手ユーザIDと対象ユーザの取引主体でグループ化したレコードを取得する。
【0042】
[数7]において、Mは、出品者ユーザiと落札者ユーザjとの間で行われた取引の回数を示す。また、[数7]での等式の条件は、上記の[数2]と同様である。
【0043】
【数7】



【0044】
評価値差スコア隣接行列構築部304では、オークションユーザの評価値差スコア計算用の隣接行列を下式[数8]に従って構築する。[数8]を隣接行列構築に用いるために、データベース処理部311を使い、ユーザDB内のテーブル201から、対象ユーザ評価値と取引相手ユーザ評価値を取得する。
【0045】
[数8]において、Rは、ユーザiの評価値を示し、Rはユーザjの評価値を示す。(評価値は最も新しいものを使う)また、[数8]での等式の条件は、上記の[数2]と同様である。
【0046】
【数8】

【0047】
上記のように、各指標について隣接行列を構築し、固有値計算部305にてスコアの計算を行う。
【0048】
固有値計算部305では、構築されたそれぞれの隣接行列に対し、下式[数3][数4][数5]を適用させる。このとき、得られるN次ベクトルXはオークションユーザの売り手側としての各々の信頼性の指標を表し、N次ベクトルYは買い手側の指標を表す。ここで、i=1,2,…,Nであり、Y={1,1,…,1}とする。
【0049】
[数3]は、隣接行列Aの転置行列に右からYをかけて、Xを求める数式である。[数4]は、隣接行列Aの右からXをかけて、Yを求める数式である。[数5]は、X、Yそれぞれのベクトルを自身の要素の和で割ることで、正規化を行っている。
【0050】
【数3】

【0051】
【数4】

【0052】
【数5】

【0053】
データベース処理部311は、命令生成部312とデータアクセス部313で構成されている。
【0054】
命令生成部312では、スコア計算部301が要求するデータベースの情報に対して、データベースに対して問い合わせを行うためのSQL文を作成する本システムの一機能である。
【0055】
データアクセス部313は、命令生成部312によって作られたSQL文をデータベースに問い合わせ、得た出力を要求された形に成形して返す本システムの一機能である。
【0056】
また、図3に記載のユーザDBは、単一オークションサイトにおけるユーザ情報を格納したデータベースだけでなく、複数のオークションサイトの各ユーザデータベースに置き換えることも可能である。
【0057】
図4は、インターネットオークションにおけるオークションユーザの行動フローチャートと対応する本システムに係る処理の説明図である。図4では、取引における出品者の行動の流れS4aと落札者の行動の流れS4b、および本システムにおけるオークションユーザの行動に対応した処理4cを示す。
【0058】
出品者は、まず出品を行い(S401a)サーバにデータを格納する。商品が提示されると、入札者は、入札可能な商品が無いか探し、あれば入札を行い(S402b)なければ検索を繰り返す(S401bで「いいえ」)。
【0059】
入札可能な商品を探す(S401b)際に、入札者は取引相手が信頼できるユーザであるか判断するために、そのユーザの信頼性を表す指標を判断材料にする。そこで、本システムでは既存のオークションサイトでのユーザの評価値の他に、ユーザの時間スコア、関係スコアおよび評価値差スコアを同時に提示する(S410)。
【0060】
本システムにおける指標の提示は、入札者だけでなくオークションユーザ全員が可能なものであり、問い合わせに対しての指標の提示については後述する。
【0061】
出品者が提示したオークションの条件に従って落札者が決定される(S402)。この時、本システムにおける指標作成で必要なオークション終了時刻と取引者の情報をデータベースに格納する。具体的には、出品者、落札者をユーザとしたそれぞれのレコードについて、対象ユーザID、取引相手ID、対象ユーザ評価値、取引相手評価値、対象ユーザの取引主体、およびオークション終了時刻をデータベースに格納する。
【0062】
次に、評価行為が行われる。これは前述したように本発明が適用可能なインターネットオークションのシステムである。落札後、落札者は出品者に送金を行い(S403b)、送金確認後出品者は落札者を評価する(S402a)。この出品者の評価により、落札者のレコードにおいて対象ユーザ(落札者)への取引評価にポイントが与えられ、評価時刻が書き込まれ、データベースに格納される。この時、データベースに格納させる出品者の評価時刻は、本システムで算出する指標の計算に用いる。その後、配送を行い(S403a)、落札者の評価(S404b)で取引が完了する。この落札者の評価により、出品者のレコードにおいて対象ユーザ(出品者)への取引評価にポイントが与えられ、評価時刻が書き込まれ、データベースに格納される。この落札者の評価時刻も本システムにおける指標の算出に用いる。
【0063】
本システムではオークションでの取引において互いの評価がなされることを前提とする。これらの評価は、ユーザの信頼性を表す指標として他ユーザに公開される。なお、図4における、評価行為の順序は図示された限りではない。
【0064】
図5に、本システムのオークションユーザの信頼性を測る指標算出を示す部分S5bと、問い合わせを受けた場合のフローチャートS5aを示す。本システムは、システムユーザが問い合わせを行い、ユーザネットワーク構築部(S50)にてオークションユーザと取引関係で構成される隣接行列を作り、それに対し各ユーザが持つオークションデータに基づくユーザスコア(具体的には、実際の商品の授受の円滑さを表す時間スコアと、取引の頻度からオークションユーザ間の相互関係の強さを表す関係スコアと、オークションユーザ間のオークション経験の差を評価因子とする評価値差スコア)を算出部(S51)で算出することで各ユーザに信頼指標を与え、オークションを行うユーザが様々な指標で取引相手の信頼性を測るものとなっている。以下、図5を参照しながら本システムの説明を行う。
【0065】
まず、本システムのユーザは、インターネットオークション内における入力フォーム、ないしインターネットブラウザでアクセス可能なシステム上の入力フォームを表示させる(S501)。
【0066】
本システムの実施において単一のオークションサイトのみを対象に行った場合、オークションサイトの選択(S502)は別段行われない。複数のオークションサイトに対応したデータベースを利用する場合に、どのオークションユーザかと特定するためにオークションサイトの選択が行われる。
【0067】
システムユーザが、当該オークションサイトでのユーザIDを入力後(S503)、IDが有効かどうかを当該オークションサイトのユーザDB2に問い合わせる。有効でなければ、再度ユーザIDの入力を要求し(S504の「いいえ」)、有効であれば(S504の「はい」)、ユーザDB2から対象となるユーザのスコア(時間スコア、関係スコアおよび評価値差スコアなど)を読み出す(S505)。最後に、結果を出力し(S506)、終了する。図4におけるユーザ情報の提示(S410)は、結果出力(S506)に含まれる。
【0068】
本システムの指標算出S5bは定期的に行われ、ユーザDB2が更新される。以下では図6の指標算出の例を示した図を参照しながらユーザDB2の更新について説明する。
【0069】
図6記載のテーブル201aは図2記載のテーブル201の一例である。また、図6記載の処理601は図5記載のS50に対応し、同様に、処理601は図5記載のS51に対応し、処理603は図5記載のS52に対応している。
【0070】
まず始めに、テーブル201a内の対象ユーザID、取引相手ID、対象ユーザの取引主体から隣接行列Aを構築する。この時、上記の[数1][数2]に従う。なお、Nはテーブル201a内のユーザ数であり、この例では4となっている。
【0071】
次に、各指標算出のための隣接行列の構築を行う。先ほど構築された図6記載の隣接行列Aに対して、テーブル201a内の取引相手評価時刻とオークション終了時刻と上記の[数6]を用い、時間スコア算出用の隣接行列Aを構築する。なお、この例では、オークション終了時刻から取引相手評価時刻までの時間(時刻差)の単位を分としている。同様に、テーブル201aのテーブルレコードと上記[数7]から関係スコア算出用の隣接行列Aを構築する。最後に、テーブル201a内の対象ユーザ評価値と取引相手評価値と上記の[数8]から評価値差スコア算出用の隣接行列Aを構築する。
【0072】
次に、各スコア用の隣接行列A、A、Aに対し、上記の[数3][数4][数5]を1セットとして、20回ないし、得られるベクトルの要素が収束するまで反復適用させる。この処理で、各オークションユーザの信頼性を測る指標がベクトルの要素として算出される。図6記載のベクトル要素xuser、yuserは指標の値を表す。
【0073】
最後に、得られた指標の値をユーザDB2へ格納・更新を行う。図3記載のデータベース処理部311を用い、図2記載のテーブル202内の時間スコア(売り手側)、時間スコア(買い手側)、関係スコア(売り手側)、関係スコア(買い手側)、評価値差スコア(売り手側)および評価値差スコア(買い手側)に対して、X、Y、X、Y、X、Yをこの順に対応するユーザレコードを更新する。
【0074】
上記した実施形態によれば、インターネットオークション上のユーザの評価において、オークション特有のデータに基づき個々の取引での取引の質を評価に反映させ、評価者を考慮したユーザ評価システムとするため、以下のような種々の特徴を有する。
【0075】
上記実施形態に記載のシステムは、インターネットオークションにおけるユーザの評価に関して、オークションユーザに関する情報が記憶されたデータベースからオークションでの取引履歴を取得し、オークションユーザの信頼性を測る指標を算出し、オークションユーザに指標を与える。
【0076】
この特徴によれば、個々の取引における取引当事者の信頼性を数値化し、評価者の信頼性を被評価者の評価に反映させることでオークションユーザに得点を与える。従来の評価システムとは異なり、個々の取引における評価を明確にし、かつ評価者の信頼性を考慮することによって画一的な評価の操作の危険性を軽減する。
【0077】
また、本システムは、オークションユーザの信頼性を表すスコアのデータが記憶されたデータベースに対してインターフェースを用いてのユーザの問い合わせを受けることで、対象のユーザの信頼性を測る指標を表示する。
【0078】
上記オークションユーザの信頼性を測る指標として、本システムでは、実際の商品の授受の円滑さを表す時間スコアと、取引の頻度からオークションユーザ間の相互関係の強さを表す関係スコアと、オークションユーザ間のオークション経験の差を評価因子とする評価値差スコアを有する。
【0079】
また、本システムは、システムユーザが問い合わせを行うことによって、オークションユーザの信頼性を測る指標を表示するインターフェースを備えている。インターフェースには問い合わせの項目としてユーザの名前、オークションサイト名を設ける。
【0080】
この特徴によれば、インターネットオークションにおけるユーザ評価システムは、オークションにおいて入札や落札を行う前に、取引相手のオークションシステム全体から見た相対的な信頼性を知ることができる。このように、事前に取引相手の情報を知ることによって、不審なユーザとの取引を行う可能性を軽減できる。
【0081】
また、本システムは、オークションユーザの信頼性を測るための指標を算出する際に、ユーザの取引履歴をデータベースのデータから取得し、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行う。
【0082】
この特徴によれば、インターネットオークションにおけるユーザ評価システムは、従来の評価システムとは異なり、ユーザがオークションユーザ全体の中で出品者、または落札者としてどれほど重要であるかを、評価を行ったユーザの信頼性を評価したユーザの信頼性に反映させることができる。このような仕組みを持つことで、オークション熟練者からの評価とオークション初心者からの評価に格差をつけ、評価を正確に捉えることが可能である。
【0083】
また、本システムは、時間スコアを上記指標とするために、オークション終了時刻から取引相手の評価までの時刻をデータベースから取得し、上記の固有値計算における隣接行列の要素決定に用いる。
【0084】
この特徴によれば、インターネットオークションにおけるユーザ評価システムを用いることで、ユーザ間の取引が迅速に行われていたどうかをユーザの評価に反映させる。このような仕組みを持つことで、実際の取引おけるユーザの熟練度を知ることができる。
【0085】
また、本システムは、関係スコアを上記指標とするために、同二者間の複数回取引をデータベースから取得し、上記の固有値計算における隣接行列の要素決定に用いる。
【0086】
この特徴によれば、インターネットオークションにおけるユーザ評価システムを用いることで、同じ相手との複数回の取引における信頼性をユーザの評価に反映させることができる。このように、複数回の取引については、初回の取引以上の信頼性を与えることで、取引自体の質をユーザの評価に取り入れることができる。
【0087】
また、本システムは、評価値差スコアを上記指標とするために、取引当事者間における評価値差をデータベースから取得し、上記の固有値計算における隣接行列の要素決定に用いる。
【0088】
この特徴によれば、インターネットオークションにおけるユーザ評価システムを用いることで、取引がインターネットオークションに慣れたもの同士で行われたか、また既存の評価システムにおけるユーザの依存性を利用して、取引が同等のオークション熟練度を持つ者で行われたかをユーザの評価に反映させることができる。
【0089】
また、本システムは、計算されたユーザの各スコアをデータベースに格納する。
【0090】
この特徴によれば、インターネットオークションにおけるユーザ評価システムは、オークションデータに基づくユーザ評価を行い、その結果をデータベースに格納することができる。このような仕組みは、評価するオークションネットワークに変化が無いときに再び各ユーザのスコアを再計算することを避けることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 商品データベース
2 ユーザデータベース
3 アプリケーションサーバ
4 配信サーバ
5 インターネット
6 ユーザ
201 ユーザデータベース内取引データテーブル
202 ユーザデータベース内ユーザテーブル
301 スコア計算部
302 時間スコア隣接行列構築部
303 関係スコア隣接行列構築部
304 評価値差スコア隣接行列構築部
305 固有値計算部
303 ユーザスコア算出部
311 データベース処理部
312 命令生成部
313 データアクセス部
601 隣接行列構築例
602 各評価指標算出例
603 データベースに格納される各評価指標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットオークションでの個々の取引に関する情報を記憶するデータベースと、このデータベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザの信頼性を測る指標を算出する算出手段とを有するユーザ評価システムであって、
前記取引に関する情報は、インターネットオークションにおける売り手と買い手の実際の取引に要する時間に関する情報を含んでおり、
前記算出手段は、前記売り手と買い手の実際の取引に要する時間に関する情報に基づいて実際の商品の授受の円滑さを表す時間スコアを前記指標として算出することを特徴とするユーザ評価システム。
【請求項2】
前記データベースは、前記売り手と買い手の実際の取引に要する時間に関する情報として、オークション終了時刻と取引相手の評価時刻を記憶しており、
前記算出手段は、前記オークション終了時刻から前記取引相手の評価時刻までの時間に基づいて前記時間スコアを算出することを特徴とする請求項1に記載のユーザ評価システム。
【請求項3】
前記算出手段は、前記データベースから取引に関する情報を取得して、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行い、前記オークション終了時刻から前記取引相手の評価時刻までの時間を前記固有値計算における隣接行列の要素決定に用いて前記時間スコアを算出することを特徴とする請求項2に記載のユーザ評価システム。
【請求項4】
インターネットオークションでの個々の取引に関する情報を記憶するデータベースと、このデータベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザの信頼性を測る指標を算出する算出手段とを有するユーザ評価システムであって、
前記算出手段は、前記データベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザ間の取引の回数を求め、その回数に基づいて前記オークションユーザ間の相互関係の強さを表す関係スコアを前記指標として算出することを特徴とするユーザ評価システム。
【請求項5】
前記算出手段は、前記データベースから取引に関する情報を取得して、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行い、前記オークションユーザ間の取引の回数を前記固有値計算における隣接行列の要素決定に用いて前記関係スコアを算出することを特徴とする請求項4に記載のユーザ評価システム。
【請求項6】
インターネットオークションでの個々の取引に関する情報を記憶するデータベースと、このデータベースに記憶された取引に関する情報に基づいてオークションユーザの信頼性を測る指標を算出する算出手段とを有するユーザ評価システムであって、
前記取引に関する情報は、インターネットオークションにおける売り手の評価値と買い手の評価値を含んでおり、
前記算出手段は、前記売り手の評価値と買い手の評価値に基づいてオークションユーザ間のオークション経験の差を表す評価値差スコアを前記指標として算出することを特徴とするユーザ評価システム。
【請求項7】
前記算出手段は、前記データベースから取引に関する情報を取得して、オークションユーザ間の取引関係で構成される隣接行列の固有値計算を行い、前記売り手の評価値と買い手の評価値を前記固有値計算における隣接行列の要素決定に用いて前記評価値差スコアを算出することを特徴とする請求項6に記載のユーザ評価システム。
【請求項8】
ユーザからの問い合わせにより前記指標をユーザに提示する手段を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のユーザ評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−44066(P2011−44066A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192953(P2009−192953)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)