説明

インダクタ

【課題】
耐電圧を考慮して巻線と巻線リードとの距離を十分考慮した構造のインダクタを提供する
【解決手段】
巻軸の両端に鍔部を有するフェライトからなるドラム型コアに絶縁被覆された導線を巻回するインダクタにおいて、
前記ドラム型コアは、両方の鍔部の外縁に複数の凹部と、の略中心部に貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする。
また、巻軸の両端に鍔部を有するフェライトからなるドラム型コアに絶縁被覆された導線を巻回するインダクタにおいて、
前記ドラム型コアは、両方の鍔部の外縁に凹部を有し、前記ドラムコアの巻軸と両端の鍔部に外周から巻軸の略中心までの溝を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用LED等の駆動回路に用いられる耐電圧の高いインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の白熱ランプや蛍光灯の照明器具より効率が高く寿命が長い、LEDを用いた照明器具が用いられるようになった。LEDを点灯させるためには、LED駆動回路が必要である。
【0003】
最近は、図5に示すように、商用の交流電源を整流した直流電源を用いた安価なLED駆動回路が知られるようになった。ここでEは直流電源で、例えば、国内の場合は交流電源を整流すると約140[V]であり、海外の場合は約340[V]となる。
直流電源Eの両端に、インダクタLと複数の直列接続したLED11とスイッチング素子Qが直列に接続されている。そして、直流電源EとインダクタLの接続点にダイオードDのカソードを接続し、LED11とスイッチング素子Qの接続点にダイオードDのアノードが接続されている。スイッチング素子Qの制御端子に、スイッチング素子Qを制御する制御IC10が接続されている。
【0004】
上記したLED駆動回路は電力の利用効率が高く、回路構成が簡単で部品点数も少ない。
ここで、交流電源を整流して直流電圧を出力する電源と共にユニット化することにより、照明器具として簡単に設置することができる。
【0005】
前記LED駆動回路に用いられるインダクタには、直流電源Eの電圧とLED11の順方向電圧降下との差の電圧がかかる。そして海外でも使用されることを考慮すると、インダクタは600[V]以上の耐電圧が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−74224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6は、従来のインダクタの例を示す図である。図6(a)はインダクタの斜視図であり、図6(b)はインダクタの断面図である。
図に示すように、ドラム型コア3は、巻軸1に複数の鍔部3a、3b、3c、3dを備え、一方の端の鍔部3aの底面には、巻線リード2a,2bを絡げる一対の端子6a、6bを備えている。複数の鍔部を備えた巻軸1に、ポリウレタンなどの樹脂で絶縁被覆された導線が巻回される。つまり、鍔部3aと3dの間に巻線23が、鍔部3dと3cの間に巻線22が、鍔部3cと3bの間に巻線21が巻回されている。
【0008】
このように、耐電圧の高いインダクタは、巻線を複数の鍔部で分けて巻線にかかる電圧を分割することにより耐電圧得ている。
【0009】
例えば、端子6aと6bの間に600[V]の直流電圧が印加された場合、それぞれの巻線21、22、23にかかる電圧は200[V]となる。
そして、巻線23と巻線リード2bとの間の電圧63は600[V]、巻線22と巻線リード2bとの間の電圧62は400[V]、巻線21と巻線リード2bの間の電圧61は200[V]である。このように、巻線リード2bは、それぞれの巻線23、22、21に従って高電圧がかかるため、巻線リード2bと、それぞれの巻線面との距離を十分とる必要がある。
本発明は、耐電圧を考慮して巻線と巻線リードとの距離を十分考慮した構造のインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のインダクタは、巻軸の両端に鍔部を有するフェライトからなるドラム型コアに絶縁被覆された導線を巻回するインダクタにおいて、
前記ドラム型コアは、両方の鍔部の外縁に複数の凹部と、巻軸を含む両端の鍔部の略中心部を軸方向に貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする。
また、巻軸の両端に鍔部を有するフェライトからなるドラム型コアに絶縁被覆された導線を巻回するインダクタにおいて、
前記ドラム型コアは、両方の鍔部の外縁に凹部と、巻軸を含む両端の鍔部の外縁から中心に向けて溝を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、巻線リードと巻線の距離を十分考慮した構造のインダクタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示すインダクタの斜視図である。
【図2】図1のドラム型コアの斜視図である。
【図3】本発明の別の実施例を示すインダクタとドラム型コアの斜視図である。
【図4】本発明のさらに別の実施例を示すドラム型コアの斜視図である。
【図5】LED駆動回路の回路図の例である。
【図6】従来のインダクタの例である。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明のインダクタの一実施例を示す斜視図である。図1(a)は下方から見た斜視図であり、図1(b)は上方から見た斜視図である。図2はドラム型コアの斜視図である。
図2に示すように、ドラム型コア3は、巻軸1の両端に鍔部3aと3bを有するフェライトからなる。ドラム型コア3の鍔部3aの底面には巻始めリード2a、巻終りリード2bを絡げるための一対の端子6a、6bを備えている。また、鍔部3aの外縁には一対の凹部4a、4bと、鍔部3bの外縁には一対の凹部4c、4dと、鍔部3a、3bと巻軸1の中心を軸方向に貫く貫通孔5を備える。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施例であるインダクタは、巻始めリード2aを端子6aの根元に絡げられて、凹部4aから巻軸1に導入されて、巻線2が巻かれる。
巻終りリード2bは、凹部4cから鍔部3bの上面に導出され、貫通孔5を通して鍔部3aの底面に導かれて、端子6bの根元に絡げられる。
絡げられた巻始めリード2a、巻終りリード2bは、端子に半田付けで電気的に接続される。
上記のインダクタにおいて、実施例では巻線の線径φ=0.3[mm]の導線を用いて100回巻いたインダクタンス値は3[mH]であった。
【実施例2】
【0015】
次に本発明のインダクタの別の実施例を図3に示す。
図3(a)はインダクタの斜視図であり、図3(b)はドラム型コアの斜視図である。
図3に示すように、ドラム型コア3の貫通孔は孔である必要はなく、溝8であってもよい。他は、図2のドラム型コアと同じであるため、説明を省略する。
溝8は、鍔部3a、3bの外周から巻軸1の中心近くまでの深さであり、溝と対向する位置の鍔部3a、3bの外縁には凹部4b、4dを備える。
【0016】
図4に示すように、巻始めリード2aは、ドラム型コア3の鍔部3aの底面に設けられた端子6aの根元に絡げられて、溝8に導入されて鍔部3bの上面に引き出される。引き出された巻始めリード2aは、凹部4dを介して巻軸1に導入され、巻線2が巻回される。
巻終りリード2bは、凹部4dから導出されて、端子6bの根元に絡げて接続される。
【0017】
このように、図3に示すドラム型コアを用いれば、巻線リードを先に溝に通してから巻回することができるので、小さな貫通孔に巻線リードを通す必要がない。
したがって、自動化しやすく、生産性が高いインダクタとすることができる。
【実施例3】
【0018】
図4は本発明のさらに別の実施例を示す斜視図である。
前記実施例2のドラム型コアの巻軸に、さらに別の2つの鍔部3c、3dを備えたものである。鍔部3c、3dは、溝8と凹部を備える。
巻線は、各鍔間に3分割して巻回される。このとき、巻線の鍔間の移動は、鍔部に設けた凹部を介して移動する。他は実施例2と同じ内容であるため、説明を省略する。
【0019】
以上の実施例では開磁路のインダクタとして説明したが、ドラム型コアをリングコアに収納して、閉磁路のインダクタとしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 巻軸
2a、2b 巻線リード
2,21、22、23 巻線
3 ドラム型コア
3a、3b、3c、3d 鍔部
4a、4b、4c、4d 凹部
5 貫通孔
6a、6b 端子
8 溝
10 制御IC
11 LED
E 電源
GND グランド
L インダクタ
D ダイオード
Q スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻軸の両端に鍔部を有するフェライトからなるドラム型コアに絶縁被覆された導線を巻回するインダクタにおいて、
前記ドラム型コアは、両方の鍔部の外縁に複数の凹部と、巻軸を含む両端の鍔部の略中心部を軸方向に貫通する貫通孔を設けたことを特徴とするインダクタ。
【請求項2】
巻軸の両端に鍔部を有するフェライトからなるドラム型コアに絶縁被覆された導線を巻回するインダクタにおいて、
前記ドラム型コアは、両方の鍔部の外縁に凹部と、巻軸を含む両端の鍔部の外縁から中心に向けて溝を設けたことを特徴とするインダクタ。
【請求項3】
前記ドラム型コアは、一方の鍔部に複数の端子を備え、前記導線の端末を電気的に接続したことを特徴とする請求項1乃至2に記載のインダクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−161260(P2010−161260A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3229(P2009−3229)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】