説明

インダクタ

【目的】 壺形コアと平板コアとを用いたインダクタの両側対の導出溝における短冊形端子の絶縁不良をなくし、かつ壺形コアと平板コアの接合不良をなくす。
【構成】 リードフレーム10の対の短冊形端子9の先端部を樹脂により成形して中央貫通孔14のある正方形の絶縁台座13を成形する。絶縁台座13は壺形コア1の正方形嵌合段部5と平板コア6の嵌合凹部8に嵌合し、嵌合段部5、嵌合凹部8の合計深さより僅かに小さい厚さで、端子9が対向側壁の中央部から突出する。絶縁台座13上に直接筒形巻線17を形成して巻線の端部を短冊端子9に接続する。絶縁台座13に壺形コア1を被せて嵌合段部を当接する。平板コアの中央突部7に接着剤を塗布した平板コア6を絶縁台座13に下から嵌合して壺形コア1と平板コア6を接合した閉磁路を形成しインダクタする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、対の導出溝をもつ壺形コアと平板コアと短冊形端子とを用いたインダクタであり、より詳細にはインダクタの組立構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】壺形コアに巻線を収納し、壺形コアの対の導出溝から導出した短冊形端子に巻線の端部を接続し、平板コアを壺形コアに接合して閉磁路コアにした従来のインダクタは、リードフレームの対の短冊形端子(以下端子と称す)の先端部を、壺形コアの対の導出溝の溝底に絶縁性接着剤を介して固着し、筒形に巻き回した巻線を壺形コアの収納凹部(通常は円環溝形)に入れ、巻線の端部を導出溝内で端子と点溶接により接続し、接続部を覆って端子に絶縁性接着剤を盛りつけるとともに壺形コアの中央磁脚の端面に少量の接着剤を塗布し、導出溝に対応する箇所に絶縁性接着剤を盛りつけた平板コアの上に、リードフレーム及び壺形コアを反転して載せ、締金または重石で壺形コアと平板コアを接合した構造であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記のインダクタは、リードフレームの端子と壺形コアに組立基準がなく、接着層により壺形コア、平板コアと端子の電気絶縁を保つ構造であるから、端子の絶縁不良が発生することがあるという問題と、壺形コアと平板コアは外形基準による接合であるので、接合ずれによる外観不良が発生するという問題もあり、組立て作業が厄介であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の問題を除去するために、インサート成形により対の端子部を連結する中央貫通孔のある方形の絶縁台座(以下台座と称す)を成形することと、壺形コアの接合面に中央磁脚と同心に、かつ対の導出溝の底に繋がる方形嵌合段部を設けることと、平板コアの片面に中央磁脚に対向する中央突部を残して中央突部と同心に方形嵌合凹部を設けることを特徴とする。
【0005】本発明の他の一つは、前記の絶縁台座に少なくとも1個の傾斜部を貫通孔の上方周縁から端子に向け設けることを特徴とする。
【0006】すなわち本発明は、1.壺形コアと平板コアからなる閉磁路コアに巻線を収納して巻線の端部を接続した短冊形端子を壺形コアの対の導出溝から導出してなるインダクタにおいて、接合面に中央磁脚と同心に、かつ導出溝底に繋がる方形の嵌合段部を設けた壺形コアと、前記壺形コアの中央磁脚に対向する中央突部と、該中央突部と同心の方形の嵌合凹部とを片面に設けた平板コアと、前記壺形コアの嵌合段部および前記平板コアの嵌合凹部に嵌合する、方形で対向側壁の中央部から短冊形端子を突出し、対向する短冊形端子を電気絶縁しかつ機械的に連結する中央に筒形巻線を同心に組み付ける中央貫通孔を有する絶縁台座を設け、前記筒形巻線に前記閉磁路コアを組つけてなることを特徴とするインダクタである。2.絶縁台座に少なくとも1個の傾斜部を中央貫通孔の上方周縁から短冊形端子に向けて設けたインダクタである。
【0007】
【作用】台座は、段部と凹部に嵌合して壺形コアと平板コアを位置決めし接合をなかだちするとともに端子を導出溝内に位置決めして壺形コア、平板コアと端子の絶縁を確保する。台座の傾斜部は、台座上に直に、貫通孔と同心に形成する筒形巻線の巻始め端部を安定に保ち、重ね巻き部分が乱れることを防ぐ。
【0008】
【実施例】本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。図1(a)は、インダクタの組立上がりの外観斜視図である。図1(b)はその組立を説明する斜視図である。図1において、壺形コア1は外形直方体状であり、矩形主面が接合面であり、円柱形の中央磁脚2と、円環形の収納凹部3と、両端辺中央部の浅い導出溝4と、導出溝4と同じ深さで収納凹部3に外接する正方形の嵌合段部5を有する。
【0009】平板コア6は、図1(b)の下部に示すように、壺形コア1の主面と同じ縦横が同一寸法の矩形板であり、片面に中央磁脚2より一回り大きい直径の中央突部7と、中央突部7と同心で、壺形コア1の嵌合段部5と同じ大きさの正方形の嵌合凹部8を有している。
【0010】短冊形端子9は、リードフレーム10に対に形成された短冊形端子である。リードフレーム10は、図2にその全体図を示すように、電気良伝導材である燐青銅板等の矩形金属板の中央部を長さ方向に沿って、一定間隔でH形に複数個(図では5個、1箇所だけを打ち抜きのままで示す)打ち抜き、両側のフレーム部11を円孔と角形に打ち抜いたものである。円孔12はリードフレーム10の位置決め用であると共に、巻線時の巻線の端部をからげるピンを下方から突き出す役割りを行う。
【0011】絶縁台座13は、リードフレーム10の対を形成している対向する端子9の間を電気的に絶縁しかつ機械的に連結する形に絶縁樹脂でインサート形成したものである。図2には5組の端子の内の4組について簡略に示してある。台座13は、図1(b)に詳細に示すように、筒形巻線を形成する下方から巻軸を貫通するための中央貫通孔(以下貫通孔と称す)14のある正方形の台板に形成されており、対の端子9の自由端が対向側面の中央部に埋め込まれて、表面には貫通孔14の周縁から端子9の直上まで降下し、かつ広がる傾斜部15が中心対称に2個設けられ、底面には貫通孔14の周縁に沿って平板コア6の中央突部7を遊嵌する円形段部16が設けられている。
【0012】図2に示すように、リードフレーム10の対向する端子9間に樹脂形成した台座13に、筒形巻線(以下巻線と称す)17(図1(b)に一点鎖線で示す)を貫通孔14と連通させて載せて巻線の端部を台座13の近傍で端子9に点溶接により接続する。点熔接部18を黒丸で示す。壺形コア1を巻線17および台座13に被せるようにしてリードフレーム10に組み付ける。壺形コア1の嵌合段部5が台座13と嵌合して壺形コア1がリードフレーム10に位置決めされる。
【0013】平板コア6の中央突部7に少量の接着剤(図示せず)を塗布して台座13に下方から被せて嵌合凹部8を嵌合してリードフレーム10に組み付ける。壺形コア1と平板コア6を締金などで緊締して接合する。台座13の厚さ寸法は、嵌合段部5と嵌合凹部8の合計深さより僅かに小さいので、壺形コアの中央磁脚2と平板コアの中央突部7が当接して接着できる。図3は、壺形コア1と平板コア6とをリードフレーム10に組み付けて接合を終えた状態を示す。端子9は、導出溝4のほぼ中央部に配置されており、壺形コア1及び平板コア6と接触することはない。
【0014】端子9の付け根をフレーム部11の内側に沿って切断してリードフレーム10から切り離してインダクタが完成する。図1(b)に示した巻線17は、台座13の傾斜部15を使って台座13上に直に重ね巻きにより筒形に形成する。台座13の貫通孔14に巻軸(図示せず)を挿通し、対応する円孔12にからげピン(図示せず)を挿通する。図示しない巻線機の線ノズルから引き出した巻始め端部を、例えば図の右側の円孔12から突出するからげピンにからげてから貫通孔14から突出させた巻軸に右巻きに巻き付けるように巻線機の線ノズルを巻軸まで進め、からげピンから巻軸まで張架した線を抑えパット(図示せず)で押し下げて傾斜部15と端子9とに密着させたままで、巻軸に一層目を形成する。
【0015】巻線は巻始めが台座13および巻軸に密着するので螺旋形にきちんと一層目が巻き上がる。巻き進み方向を逆方向にして2層目以降を乱れなく巻回すことができる。巻終わりは反対側のフレーム側に設けた円孔12から突出するからげピンまで巻線機の線ノズルを進めて抑えパットで押さえて端子9に密着させてから、図1R>1(b)の左側円孔12から突出したからげピンにからげて線ノズルから切り離す。台座13の傾斜部15は、始巻め側だけにあれば、巻乱れを防止できる。中心対称に傾斜部15を設けた台座13の形状とした場合にはリードフレーム10を巻線機にどちら向きからでも装着できる。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、リードフレームにインサート成形した方形の絶縁台座を組立基準にして台座上に形成した筒形巻線に壺形コアと平板コアを突き合わせて端子をコアの導出溝内に簡単に位置決めできる構造であり、又絶縁台座を中心に両側の端子につながるフレーム部に設けた円孔と台座の中央貫通孔を利用して直に巻乱れのない筒形巻線を台座上に形成できる構造であるから、組立て作業を自動化して能率よく筒形巻線と壺形コアと平板コアを組み込み組立でき、高品質で安価なインダクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明によるインダクタを示す図で、図1R>1(a)、は本発明によるインダクタの一実施例の完成品を示す外観斜視図。図1(b)は、同じく一実施例の組立を説明する外観斜視図である。
【図2】本発明に使用するリードフレームの一例を一部に台座を形成した状態で示す外観斜視図である。
【図3】図2のリードフレームに壺形コア、平板コアを組み付けた状態を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
1 壺形コア
2 中央磁脚
3 収納凹部
4 導出溝
5 嵌合段部
6 平板コア
7 中央突部
8 嵌合凹部
9 短冊形端子
10 リードフレーム
11 フレーム部
12 円孔
13 絶縁台座
14 中央貫通孔
15 傾斜部
16 円形段部
17 筒形巻線
18 点熔接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 壺形コアと平板コアからなる閉磁路コアに巻線を収納して巻線の端部を接続した短冊形端子を壺形コアの対の導出溝から導出してなるインダクタにおいて、接合面に中央磁脚と同心に、かつ導出溝底に繋がる方形の嵌合段部を設けた壺形コアと、前記壺形コアの中央磁脚に対向する中央突部と、該中央突部と同心の方形の嵌合凹部とを片面に設けた平板コアと、前記壺形コアの嵌合段部および前記平板コアの嵌合凹部に嵌合する、方形で対向側壁の中央部から短冊形端子を突出し、対向する短冊形端子を電気絶縁しかつ機械的に連結する中央に筒形巻線を同心に組み付ける中央貫通孔を有する絶縁台座を設け、前記筒形巻線に前記閉磁路コアを組つけてなることを特徴とするインダクタ。
【請求項2】 絶縁台座に少なくとも1個の傾斜部を中央貫通孔の上方周縁から短冊形端子に向けて設けた請求項1記載のインダクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−310336
【公開日】平成6年(1994)11月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−119108
【出願日】平成5年(1993)4月21日
【出願人】(000134257)株式会社トーキン (1,832)