説明

イーゼル

【課題】 垂直状態から水平状態まで角度の変更が可能であり、大きなキャンバスでも、操作性の優れるイーゼルを提供する。
【解決手段】 本発明のイーゼル1は、キャンバスなどの保持対象を保持することができる保持部11と、前記保持部11を回転可能に支えている架台10とを有し、回転によって、保持部11は回転によってほぼ水平状態とすることができる。また、架台10と保持部11との間には上側ガススプリング15と下側ガススプリング16とが配置されており、上側ガススプリング15は保持部11側の接続軸A1の位置が保持部11の回転軸Cよりも上側に位置し、下側ガススプリング16は保持部11側の接続軸B1の位置が保持部11の回転軸Cよりも下側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平状態まで角度の変更が可能であるイーゼルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、絵を描くときにキャンバスを固定することができるイーゼルが用いられている。そして、イーゼルには、架台と保持部とを有しており、保持部にはキャンバスの下側に位置してキャンバスを載せる載置部と、キャンバスの上側に位置してキャンバスの上から押さえる上側押さえ部との間隔を、キャンバスの高さに合わせるようにしてキャンバスを上下から挟むことができるようにして、大きさが異なるキャンバスでも用いることができるものがある。
【0003】
また、架台と保持部を回転できるようにすることにより、絵を描く人の好みに合わせて、キャンバスを傾斜させることができるものもあり、さらに、日本画や水彩画などを描く場合などにも用いることができるように、水平状態まで回転させることができるようにしたものもある。
このようなイーゼルは、特許文献1などに記載されている。
【特許文献1】実開昭60−65068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、水平状態まで回転させることのできるイーゼルは、キャンバスが大きくなるほど、回転させる際に大きな力を必要とするので、回転操作を行うことが難しくなる。また、傾斜状態が水平に近づくほど、保持部やキャンバスの重力による影響が大きくなるので、回転操作に、より大きな力を必要となる。
【0005】
また、大きさや長さが異なるキャンバスを保持することのできるイーゼルの場合、保持部の回転軸に対するキャンバスの位置関係が決まらないので、回転の際のバランスが変化してしまう。特に、大きなキャンバスを保持した場合、キャンバス自体が重くなるだけでなく、キャンバスの重心が上側に移動して、保持部の回転軸におけるモーメントが大きくなる。そのため、垂直状態から水平状態の間における回転操作で、大きな力が必要になったり、重力による回転力によって急激に回転しないように、力を入れて徐々に回転させなければならなかった。
【0006】
この対策として、保持部の下側を重くするなどして、反対向きの回転力を大きくして釣り合いをとる方法などがあるが、全体が重くなるだけでなく、小さなキャンバスを用いた場合や、キャンバスを保持しない場合などには、逆に操作性が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、水平状態まで角度の変更が可能であり、大きなキャンバスでも、操作性の優れるイーゼルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、保持対象を保持することができる保持部と、前記保持部を回転可能に支えている架台とを有し、前記保持部は回転によってほぼ水平状態とすることができるイーゼルであって、架台と保持部との間には複数のガススプリングが配置されており、保持部側の接続軸の位置が保持部の回転軸よりも上側に位置している上側ガススプリングと、保持部側の接続軸の位置が保持部の回転軸よりも下側に位置している下側ガススプリングとを有することを特徴とするイーゼルである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、架台と保持部とを有して、保持部は回転によってほぼ水平状態とすることができ、保持部側の接続軸の位置が保持部の回転軸よりも上側に位置している上側ガススプリングと、保持部側の接続軸の位置が保持部の回転軸よりも下側に位置している下側ガススプリングとを有するものであるので、大きなキャンバスを保持した場合でも、勢いよく回転することを防止することができ、また、上側ガススプリングと下側ガススプリングによってバランスを良くすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置と、保持部の回転軸との間の距離は、下側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置と、保持部の回転軸との間の距離に比べて長いものであることを特徴とする請求項1に記載のイーゼルである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、上側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置と、保持部の回転軸との間の距離は、下側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置と、保持部の回転軸との間の距離に比べて長いものであるので、垂直状態から水平状態に回転させる場合に、上側ガススプリングによる回転を阻害する力を大きくすることができ、より安全に操作することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、上側ガススプリング及び下側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置は、それぞれの架台側の接続軸の位置よりも上側であって、前後方向の手前側に配置するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のイーゼルである。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、上側ガススプリング及び下側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置は、それぞれの架台側の接続軸の位置よりも上側であって、前後方向の手前側に配置するものであるので、架台を大きくすることなく、それぞれのガススプリングを配置することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、保持対象を保持することができる保持部と、前記保持部を回転可能に支えている架台とを有し、前記保持部は回転によってほぼ水平状態とすることができるイーゼルであって、架台と保持部との間にはガススプリングが配置されており、前記ガススプリングによって、保持部が水平状態から垂直状態に向かう方向に付勢されているものであることを特徴とするイーゼルである。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、架台と保持部との間にはガススプリングが配置されており、前記ガススプリングによって、保持部が水平状態から垂直状態に向かう方向に付勢されているものであるので、保持部の回転操作を安全に行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、保持部には下側押さえ部と上側押さえ部とが設けられて、保持対象を下側押さえ部と上側押さえ部とで挟んで保持されるものであり、下側押さえ部及び上側押さえ部は、垂直状態で上下方向に移動させることができることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイーゼルである。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、保持部には下側押さえ部と上側押さえ部とが設けられて、保持対象を下側押さえ部と上側押さえ部とで挟んで保持されるものであり、下側押さえ部及び上側押さえ部は、垂直状態で上下方向に移動させることができるので、色々な大きさの保持対象を保持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のイーゼルによれば、大きなキャンバスを保持した状態でも、回転操作を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
本発明の第1の実施形態におけるイーゼル1は、図1〜図4に示されるように、架台10、保持部11、上側ガススプリング15及び下側ガススプリング16を有している。そして、イーゼル1は、図5に示されるように、保持対象であるキャンバス90を、保持部11の下側押さえ部20に載せ、キャンバス90の上側を上側押さえ部21で押さえて使用されるものである。
【0020】
図1に示されるように、架台10は、基礎部31と、ボックス部32と、保持部回転軸部33とを有している。
基礎部31は長尺状の板を接合して形成されるものであり、基礎部31の下側には、4ヵ所の車輪30が設けられている。そして、イーゼル1は、車輪30が床などに接触した状態で使用されるものであり、イーゼル1を移動させる場合には、車輪30を回転させることにより、軽い力で移動させることができる。なお、本実施例の車輪30には、図示しないストッパーが設けられており、使用時などの移動させない場合に移動を阻止することができる。
【0021】
ボックス部32は箱状であり、基礎部31の中央の上側に配置されている。そして、ボックス部32には、上側接続軸35、下側接続軸36、固定用軸37を有している。
上側接続軸35は、上側ガススプリング15と接続されており、後述する保持部11の上側接続軸55との間に上側ガススプリング15が配置している。また、下側接続軸36は、下側ガススプリング16と接続されており、後述する保持部11の下側接続軸56との間に下側ガススプリング16が配置している。
【0022】
上側接続軸35及び下側接続軸36は棒状であり、両端部分の断面形状は円形となっている。そして、ボックス部32に設けられた丸穴38、39に挿入され、長さ方向が横向きとなるように配置されており、また、回転可能な状態となっている。
上側接続軸35の上側ガススプリング15との接続位置は中央付近であり、また、下側接続軸36の下側ガススプリング16との接続位置は中央付近である。
【0023】
固定用軸37は、角度固定部材41の位置の固定を行うことができるものであり、角度固定部材41の固定によって、保持部11の傾斜状態を所望の角度で固定することができる。そして、固定用軸37の両端には、つまみ37aが設けられており、このつまみ37aを締めることにより、つまみ37a同士が近づいて、角度固定部材41とボックス部32との相対移動を阻止して、これによって保持部11の傾斜状態を保持する状態となる。また、つまみ37aをゆるめることによって、つまみ37a同士が離れて、角度固定部材41とボックス部32との相対移動が可能な状態となる。
【0024】
また、基礎部31とボックス部32と間の角の部分には、図4に示されるように、補強材42が配置されており、補強材42によって、基礎部31とボックス部32とが強固に固定されている。
【0025】
保持部回転軸部33は、図1、図2に示されるように、ボックス部32の上端付近の前側に配置される板である。そして、保持部回転軸部33の両端は、断面形状が円形であり、保持部11の2ヵ所の側板51の軸穴部51aに挿入されている。そして、保持部11は、保持部回転軸部33と軸穴部51aとを軸として回転することができる。保持部回転軸部33は、長さ方向が横向きとなるように配置されているので、保持部11の回転の軸は横方向である。
また、保持部回転軸部33は、ボックス部32の前側に固定されており、具体的には、ボルト33aによって固定されている。
【0026】
なお、ボックス部32の上側には、図1や図4に示されるように、衝撃吸収板40が配置されており、保持部11を回転させたときに、ボックス部32との間で衝撃を吸収することができる。
【0027】
保持部11は、キャンバス90などの保持対象を保持するものである。そして、保持部11は、側板51、下側スライド部52、上側スライド部53を有している。
【0028】
図1、図2に示されるように、側板51は長尺板状であり、左右の2ヵ所に配置されている。そして、2枚の側板51は、長尺方向を合わせながら、互いの面が対向するように配置している。また、2枚の側板51には、互いに対応する位置に、軸穴部51a、下側接続穴51b、上側接続穴51cが形成されている。そして、軸穴部51aには、保持部回転軸部33の両端付近が挿入され、下側接続穴51bには下側接続軸56の両端付近が挿入され、上側接続穴51cには上側接続軸55の両端付近が挿入されている。
【0029】
また、軸穴部51a、下側接続穴51b、上側接続穴51cの配置は、図4に示されている。そして、上側接続穴51cの下側に軸穴部51aがあり、軸穴部51aの下側に下側接続穴51bがある。上側接続穴51cと軸穴部51aとの距離は、軸穴部51aと下側接続穴51bとの距離よりも長くなっている。
なお、後述するように、軸穴部51aの位置が回転軸Cの位置となり、下側接続穴51bの位置が接続軸A1の位置となり、上側接続穴51cの位置が接続軸B1の位置となり、また、軸穴部51aと下側接続穴51bとの間が距離L1に対応し、軸穴部51aと上側接続穴51cとの間が距離L2に対応する。
【0030】
また、図6に示されるように、それぞれの側板51の内側の面には、スライド溝60が形成されており、下側スライド部52の両側面に形成された突条部52aが嵌っている。そして、下側スライド部52と側板51との間では、側板51の長尺方向にスライド可能となっている。
【0031】
そして、保持部11の下方には、図1、図2に示されるように、ハンドル部61が設けられている。ハンドル部61を締めることにより、側板51と下側スライド部52とのスライドを阻止し、また、ハンドル部61をゆるめることにより、これらの間のスライドが可能となる。
【0032】
図3に示されるように、保持部11には、2ヵ所の側板51同士をつなぐ接続板62を有している。そして、接続板62によって側板51同士の距離を維持させることができ、下側スライド部52が離脱しないようにすることができる。
【0033】
下側スライド部52は、図1、図2に示されるように、枠状の部材であり、横方向の両側に2ヵ所の側部46を有している。そして、下側スライド部52の横方向の幅、すなわち、側部46の外側同士の距離は、2ヵ所の側板51の内側同士の距離に合わせられている。また、下側スライド部52の上下方向の長さ、すなわち、側部46の長さは、側板51の長さにほぼ合わせられている。
【0034】
下側スライド部52の中央付近には、上下方向に延びる中間部材固定板45が配置している。そして、図示していないが、中間部材固定板45に中間部材49を固定することができる。中間部材固定板45はある程度長いので、中間部材49の上下方向の固定位置を変えることができる。
中間部材49は、つまみ49aによって着脱及び固定が可能になっている。
【0035】
下側スライド部52の下方であって手前側には、下側押さえ部20が固定されている。
下側押さえ部20は横長の棒状であり、下側押さえ部20の上側に配置されるキャンバス90を保持するものである。そして、下側押さえ部20の長さは、側板51同士の距離よりも長く、横幅の長いキャンバス90の保持も可能となっている。また、図1や図4に示されるように、下側押さえ部20の手前側が上向きにやや突出しており、キャンバス90の保持をより確実にすることができる。
【0036】
図6に示されるように、それぞれの側部46の外側には突条部52aが形成され、また、内側には溝部52bが形成されている。そして、突条部52aは側板51のスライド溝60に嵌っており、下側スライド部52と側板51とはスライドさせることができる。また、溝部52bには、上側スライド部53の突条部53aが嵌っており、下側スライド部52と上側スライド部53とはスライドさせることができる。
【0037】
そして、保持部11の上方には、図3に示されるように、ハンドル部64が設けられている。ハンドル部64を締めることにより、下側スライド部52と上側スライド部53とのスライドを阻止し、また、ハンドル部64をゆるめることにより、これらの間のスライドが可能となる。
【0038】
そして、突条部52aと溝部52bとは同じ方向に延びるものであり、側板51、下側スライド部52及び上側スライド部53の各相互間のスライド方向は同じ向きになっている。このスライド方向は、側板51の長尺方向であり、保持部11が垂直状態の場合においては上下方向である。
【0039】
したがって、大きなキャンバスを保持する場合には、図1〜図5に示されるように、上側スライド部53を上側にスライドさせて、下側押さえ部20と上側押さえ部21との距離を長くする。また、小さなキャンバスを保持する場合には、下側にスライドさせて、図7に示されるように、下側押さえ部20と上側押さえ部21との距離を短くした状態で使用する。さらに必要に応じて、中間部材49を用い、下側押さえ部20や上側押さえ部21のいずれかとの間で挟んで保持するようにして使用する。
【0040】
本実施形態のイーゼル1では、図7に示されるように、上側スライド部53の上側押さえ部21を、側板51の上側端部付近まで下げることができるので、使用しないときなどに邪魔になりにくい。
【0041】
上側スライド部53は、枠状の部材であり、横方向の両側に2ヵ所の側部48を有しており、中央付近には、上下方向に延びる中間部材固定板47が配置している。そして、下側スライド部52と同様に、中間部材固定板47に中間部材49を固定することができる。
【0042】
また、上側スライド部53の上方には、上側押さえ部21が固定されている。
上側押さえ部21は横長の棒状であり、下側押さえ部20の長さとほぼ同じである。そして、上側押さえ部21は、側板51同士の距離よりも長く、横幅の長いキャンバス90の保持も可能となっている。また、上側押さえ部21の手前側が下向きにやや突出しており、キャンバス90の保持をより確実にすることができる。
【0043】
上側ガススプリング15及び下側ガススプリング16は、密閉されたチューブ内に高圧ガスを封入し、ガスの圧力を付勢力として用いることができるガススプリングであり、市販されているガススプリングを用いることができる。そして、このようなガススプリングは、縮んでいるストローク位置ほど力が大きくなるが、ばねなどに比較してストローク位置による荷重変化が少ないものである。
また、このようなガススプリングは、同じストロークの位置でも、ガススプリング自体の摩擦抵抗などの抵抗により、縮み方向の時の力は、伸び方向の時の力よりも大きくなる。
本実施形態では、上側ガススプリング15と下側ガススプリング16とは、同じものが用いられているが、異なるものを用いても良い。
【0044】
図4に示されるように、上側ガススプリング15には、チューブ70とロッド71とを有している。そして、上側ガススプリング15の両端には、チューブ側端部72とロッド側端部73が設けられ、チューブ側端部72とロッド側端部73とが離れる方向に付勢される。
上側ガススプリング15のロッド側端部73は、架台10のボックス部32の上側接続軸35に固定されている。また、上側ガススプリング15のチューブ側端部72は、保持部11の上側接続軸55に固定されている。
【0045】
下側ガススプリング16も上側ガススプリング15と同様に、チューブ80とロッド81とを有している。そして、下側ガススプリング16の両端には、チューブ側端部82とロッド側端部83が設けられ、チューブ側端部82とロッド側端部83とが離れる方向に付勢される。
そして、図4に示されるように、下側ガススプリング16のロッド側端部83は、架台10のボックス部32の下側接続軸36に固定されている。また、下側ガススプリング16のチューブ側端部82は、保持部11の下側接続軸56に固定されている。
【0046】
図9〜図11は、イーゼル1を側面側から見た時の位置関係を示した模式図であるが、これらの図に示されるように、上側ガススプリング15の保持部11側の接続軸A1となる上側接続軸55は、保持部11の回転軸Cとなる保持部回転軸部33よりも上側に位置し、また、下側ガススプリング16の保持部11側の接続軸B1となる下側接続軸56は、保持部11の回転軸Cとなる保持部回転軸部33よりも下側に位置している。
そして、上側ガススプリング15の保持部11側の接続軸A1となる上側接続軸55と、保持部11の回転軸Cとなる保持部回転軸部33との間の距離L1は、下側ガススプリング16の保持部11側の接続軸B1となる下側接続軸56と、保持部11の回転軸Cとなる保持部回転軸部33との間の距離L2とを比較すると、距離L2よりも距離L1が長くなっている。
【0047】
また、上側ガススプリング15は、垂直状態で、保持部11側の接続軸A1の位置が、架台10側の接続軸A2となるボックス部32の上側接続軸35よりも上側であって、手前側に位置している。そして、この架台10側の接続軸A2の位置は、保持部11の回転軸Cの位置よりもやや下側に位置している。
一方、下側ガススプリング16は、垂直状態で、保持部11側の接続軸B1の位置が、架台10側の接続軸B2となるボックス部32の下側接続軸36よりも上側であって、手前側に位置している。
したがって、垂直状態では、上側ガススプリング15と下側ガススプリング16は、同じ方向に傾斜している。そして、その傾斜角は上側ガススプリングの方が、下側ガススプリングの傾斜角よりも小さくなっている。
【0048】
イーゼル1では保持部11を持って回転させると、保持部11の傾斜角度が変化し、図1〜図5や図9に示される垂直状態から、図8や図11に示される水平状態まで回転させることができる。
なお、図1や図2や図8に示されるように、側板51には先端部63が形成されており、この先端部63が基礎部31に当接して、垂直状態を超えて逆向きに回転しないようになっている。また、下側スライド部52の中間部材固定板45が、ボックス部32の上にある衝撃吸収板40に当接して、水平状態を超えて回転しないようになっている。
【0049】
そして、垂直状態から水平状態へ回転させる場合、上側ガススプリング15は長さが短くなるので回転を阻害する向きに力が作用し、下側ガススプリング16は長さが長くなるので回転を助ける向きに力が作用する。
【0050】
また、これらの回転を阻害したり、回転を助けたりする回転力は、用いるガススプリングの特性や、上側ガススプリング15と下側ガススプリング16の向きやストロークの位置などによるが、回転軸Cと、上側ガススプリング15や下側ガススプリング16の距離X、Yが離れるほど、これらの回転力は大きくなる。
さらに、実際の回転に必要な回転力の大きさは、上側ガススプリング15や下側ガススプリング16による力以外にも、保持部11の重力も影響する。
【0051】
図9のような垂直状態から回転させるときは、保持部11の重力による回転力はほとんど影響しない。しかし、軽く回転できるようにすると、保持部11の重力による回転力が徐々に大きくなり、保持部11が勢いよく回転してしまうおそれがある。
本実施形態のイーゼル1では、上側ガススプリング15の接続軸A1と回転軸Cとの間の距離が、下側ガススプリング16の接続軸B1の位置と回転軸Cとの間の距離に比べて長くなっている。そのため、垂直状態から回転を行う場合の、回転の最初においては、上側ガススプリング15による回転を阻害する力が大きくなり、勢いよく回転することを防止することができ、安全に操作することができる。
【0052】
そして、保持部11が回転して傾斜すると、徐々に、保持部11の重力による回転力が大きくなり、また、図10に示されるように、下側ガススプリング16による回転を助ける方向の回転力が徐々に大きくなる。したがって、容易に回転させることができ、最終的には、図11に示されるように、水平状態となる。
【0053】
逆に、図11の水平状態から、垂直状態となる方向に回転させる場合には、保持部11の重力に逆らう方向に回転させることになる。
このような方向に保持部11を回転させると、徐々に、保持部11の傾斜角度が小さくなり、それに伴って、回転軸Cと上側ガススプリング15との距離Xが長くなって回転を助ける方向の回転力を大きくなる。一般的に、保持部11の傾斜角度が小さくなるほど、保持部11の位置が高くなるので持ち上げにくくなるが、本実施形態のイーゼル1では、それに伴って回転を助ける方向の力が大きくなって操作力を軽くすることができるので、操作性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のイーゼル1では、上側ガススプリング15及び下側ガススプリング16のいずれかが、回転を助ける方向に作用し、他方が回転を阻害する作用するように配置されている。そして、上記したように、ガススプリングの特性として、同じストロークの位置でも、ガススプリング自体の摩擦抵抗などの抵抗により、縮み方向の時(ガススプリングの付勢力に反して圧縮する場合の時)の力は、伸び方向の時の力の時(ガススプリングの付勢力によって伸長する場合の時)よりも大きくなる。
したがって、保持部11が任意の傾斜角度の時に、いずれの方向に回転させても、上側ガススプリング15及び下側ガススプリング16のいずれかが縮むことになって、回転を阻害する方向に大きな力を作用させることができ、任意の傾斜角度で保持部11が停止した状態とすることを容易に行うことができるので操作性がよい。そして、この状態で、つまみ37aを用いて、この状態を保持することができる。
【0055】
保持部11を所望の傾斜角度まで回転させ、保持部11の傾斜状態を保持する場合には、つまみ37aを締めて角度固定部材41を用いて行う。
角度固定部材41は上側接続軸55と固定用軸37との距離を一定に維持するものであるが、傾斜状態によってこの距離が異なることになる。そのため、図4に示されるように、角度固定部材41には、スリット41aが設けられており、スリット41aに固定用軸37が挿入されて、上記距離を可変することが可能な構造になっている。
【0056】
また、この角度固定部材41は、ボックス部32の側方の両側に配置されており、つまみ37aを締めることにより、両側の角度固定部材41とボックス部32との相対移動を阻止することができる構造になっている。
逆に、保持部11の傾斜角度を変えるときなど、保持部11を回転させるときは、このつまみ37aをゆるめておく。
【0057】
上記したように、本実施形態のイーゼル1では、保持部11を垂直状態から傾斜角度を変更する場合にも、勢いよく回転することなく安全に操作することができる。また、保持部11を回転させて所望の傾斜角度で止める際にも、容易に停止させて、その状態で維持することができる。
そのため、大きなキャンバス90をイーゼル1に保持したり外したりする場合、作業しやすい角度にして行うことができる。
【0058】
上記した実施形態のイーゼル1では、上側ガススプリング15や下側ガススプリング16は、それぞれ各1本で合計2本のガススプリングが用いられているものであったが、3本以上のガススプリングを用いても良く、1本のガススプリングだけでもよい。1本のガススプリングの場合、保持部11が水平状態から垂直状態に向かう方向に付勢されるようにすることが望ましく、さらに具体的には、保持部11側の接続軸A1が、回転軸Cよりも上側となるようにした上側ガススプリング15と同じものを用いることが望ましい。
【0059】
また、イーゼル1を使用する際に、図12に示されるような、レスト部材91を用いることができる。そして、レスト部材91は、棒状の本体部92と位置決め部93とを有しており、レスト部材91を下側押さえ部20と上側押さえ部21との間に橋渡し状に配置して使用する。そして、レスト部材91の本体部92に手や腕を置いた状態で、キャンバス90上に絵などを描くことができるため楽である。
【0060】
レスト部材91の位置決め部93は、ネジ部材94をゆるめることで移動することができる。そして、位置決め部93を、本体部92のスリット92aに沿って、長尺方向に移動して、位置決め部93を上側押さえ部21の位置などに合わせる。合わせられた位置決め部93を上側押さえ部21に引っかけて、レスト部材91がずれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるイーゼルを示した斜視図である。
【図2】図1に示すイーゼルを中間部材を外した状態で示した正面図である。
【図3】図1に示すイーゼルを中間部材を外した状態で示した背面図である。
【図4】図1に示すイーゼルを中間部材を外した状態で示した側面図である。
【図5】図1に示すイーゼルの使用状態を示した斜視図である。
【図6】図1に示すイーゼルの保持部のスライド部分を示した断面図である。
【図7】図4に示すイーゼルの縮めた状態を示した側面図である。
【図8】図4に示すイーゼルの水平状態に回転させた状態を示した側面図である。
【図9】図1に示すイーゼルを側面側から見た時の位置関係を示した模式図である。
【図10】図1に示すイーゼルを側面側から見た時の位置関係を示した模式図である。
【図11】図1に示すイーゼルを側面側から見た時の位置関係を示した模式図である。
【図12】図1に示すイーゼルとレスト部材とを示した一部斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 イーゼル
10 架台
11 保持部
15 上側ガススプリング
16 下側ガススプリング
20 下側押さえ部
21 上側押さえ部
33 保持部回転軸部
35 上側接続軸
36 下側接続軸
55 上側接続軸
56 下側接続軸
90 キャンバス
A1、A2、B1、B2 接続軸
C 回転軸
L1、L2 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持対象を保持することができる保持部と、前記保持部を回転可能に支えている架台とを有し、前記保持部は回転によってほぼ水平状態とすることができるイーゼルであって、
架台と保持部との間には複数のガススプリングが配置されており、保持部側の接続軸の位置が保持部の回転軸よりも上側に位置している上側ガススプリングと、保持部側の接続軸の位置が保持部の回転軸よりも下側に位置している下側ガススプリングとを有することを特徴とするイーゼル。
【請求項2】
上側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置と、保持部の回転軸との間の距離は、下側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置と、保持部の回転軸との間の距離に比べて長いものであることを特徴とする請求項1に記載のイーゼル。
【請求項3】
上側ガススプリング及び下側ガススプリングの保持部側の接続軸の位置は、それぞれの架台側の接続軸の位置よりも上側であって、前後方向の手前側に配置するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のイーゼル。
【請求項4】
保持対象を保持することができる保持部と、前記保持部を回転可能に支えている架台とを有し、前記保持部は回転によってほぼ水平状態とすることができるイーゼルであって、
架台と保持部との間にはガススプリングが配置されており、前記ガススプリングによって、保持部が水平状態から垂直状態に向かう方向に付勢されているものであることを特徴とするイーゼル。
【請求項5】
保持部には下側押さえ部と上側押さえ部とが設けられて、保持対象を下側押さえ部と上側押さえ部とで挟んで保持されるものであり、
下側押さえ部及び上側押さえ部は、垂直状態で上下方向に移動させることができることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイーゼル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−206924(P2008−206924A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49071(P2007−49071)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)