ウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システム
【課題】本発明は、スムーズにワイヤロープ等の紐状体を移動し、ワイヤロープの磨耗が少なく、ウインチの設置が容易で、安全性にとんだウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムを提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の課題を解決するための手段は、ワイヤロープ等の紐状体を外周に形成された溝に巻回するための巻回ドラムを正／逆回転する駆動軸の設けられたウインチ本体と、駆動軸を回転駆動する駆動源とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体の近傍には、少なくともワイヤロープ等の紐状体の巻回ドラムへの取り入れ側を押圧する押圧体が設けられていることである。
【解決手段】
本発明の課題を解決するための手段は、ワイヤロープ等の紐状体を外周に形成された溝に巻回するための巻回ドラムを正／逆回転する駆動軸の設けられたウインチ本体と、駆動軸を回転駆動する駆動源とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体の近傍には、少なくともワイヤロープ等の紐状体の巻回ドラムへの取り入れ側を押圧する押圧体が設けられていることである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ワイヤロープ等の紐状体を屋内外の一定の空間部にループ状等に吊り張りして、ネット又はシートをスムーズに開閉／昇降移動するのに使用するウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムに関する。
【背景技術】
【０００２】
ワイヤロープ等の紐状体を屋内外の一定の空間部にループ状等に吊り張りしたシステムとしては、例えば、屋内施設でのネットを用いた間仕切りシステムや、屋外のプール等に使用するＵＶカットシートの開閉システム、ゴルフ練習場の防球用ネットの昇降システム等が知られている。
【０００３】
屋内施設でのネットを用いた間仕切り用システムとしては、例えば無端状のウインチと、屋内側面又は天井に沿って滑車を介してループ状に吊り張りしたウインチ用ワイヤロープと、該ウインチ用ワイヤロープに一端側を連結した複数の吊り上げ用ワイヤロープと、吊り上げ用ワイヤロープの他端側に連結されたネットとから構成された装置を用いて、ウインチの巻回ドラムを正／逆回転してウインチ用ワイヤロープを移動することで、吊り上げ用ワイヤロープを昇降してネットで空間部を間仕切り／開放移動するシステム（特開２００３−１１７０４６号公報）が知られている。
【０００４】
また、屋外のプール等に使用するＵＶカットシートの開閉用システムとしては、例えば、無端状のウインチと、滑車間でプールの上方側にループ状に吊り張りしたウインチ用ワイヤロープと、該ウインチ用ワイヤロープに並行に吊り張りしたガイド用ワイヤロープと、該ガイド用ワイヤロープに連結具を介して移動自在に設けられたＵＶカットシートとから構成された装置を用いて、ウインチの巻回ドラムを正／逆回転してウインチ用ワイヤロープを移動することで、ガイド用ワイヤロープに連結具を介して設けられたＵＶカットシートを並行方向にガイド用ワイヤロープに沿って開閉移動するシステム（特開２００４−２８５８２１号公報）が知られている。
【０００５】
また、ゴルフ練習場の防球用ネットの昇降システムとしては、例えば、複数の無端状のウインチと屋外空間部を区画する各支柱の上下方向に設けられた滑車間でループ状に吊り張りした複数のウインチ用ワイヤロープと、該ウインチ用ワイヤロープに直接取り付けられた防球用ネットとから構成された装置を用いて、各ウインチの巻回ドラムを正／逆回転して、複数のウインチ用ワイヤロープを支柱の上下間で移動して、防球用ネットを昇降するシステム（特開２０００−０３７４９２号公報）が知られている。
【０００６】
上記各システムにおいて、ワイヤロープにはその自重、及びネット等の荷重がかかり、ワイヤロープを移動するウインチの巻回ドラムへの取り入れ側と取り出し側とでその荷重等が相違し、ウインチの近傍でワイヤロープに弛みや撓みが発生する。この弛み等を解消するために、ウインチ本体に案内ガイドと案内ローラ、及び巻回ドラムの溝に沿って押圧移動体を設けたウインチが開発された（特開２０００−３５１５８０号等）。
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、上記従来より使用されているウインチは、ウインチ本体の巻回ドラムに近接して案内ガイドと案内ローラ、及び押圧移動体を設けることにより、ワイヤロープを巻回ドラム側に取り込み移動する側を押圧して、ワイヤロープの弛みや撓みを解消しスムーズな移動を行うことができるが、各押圧手段がウインチ本体と一体として構成されているために、ウインチの取り付け方向により、複数の滑車を設けなければループの移動方向に対応することができないという欠点があった。
【０００８】
また、従来のウインチでは、ウインチ本体に巻回ドラムと押圧手段体とが近接して設けられているために、ワイヤロープへの押圧力が強くワイヤロープが磨耗しやすいという欠点があった。
【０００９】
また、ワイヤロープに発生する弛みや撓みを解消するにはウインチの近傍で解消する方がより適切に解消することができるが、従来のウインチでは対応することができない問題点があった。
【００１０】
また、屋内や屋外において、ウインチの設置スペースは必ずしも十分でなく、システム変更を行う場合において押圧手段の設けられている方向が邪魔になるという欠点があった。
【００１１】
さらに、システム全体のメンテナンス作業を行う場合において、ワイヤロープの取り替え作業時は余分な滑車が多く、その取り替え作業を複雑にすると言う欠点があった。
【００１２】
そこで、本発明は上記問題点を解決すべくスムーズにワイヤロープ等の紐状体を移動し、ワイヤロープの磨耗が少なく、ウインチの設置が容易で、安全性にとんだウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明の上記課題を解決するためのウインチとしての手段は、請求項１に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を外周に形成された溝に巻回するための巻回ドラムを正／逆回転する駆動軸の設けられたウインチ本体と、駆動軸を回転駆動する駆動源とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体の近傍には、少なくともワイヤロープ等の紐状体の巻回ドラムへの取り入れ側を押圧する押圧体が設けられていることを特徴とする。
【００１４】
本発明の上記課題を解決するためのウインチによる紐状体の取り込み移動システムとしての手段は、請求項２に記載のように、無端状ウインチの巻回ドラムを正／逆回転しワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動するとともに、巻回ドラム側より取り出し移動する無端状のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、ワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動する際、ウインチ本体の近傍でワイヤロープ等の紐状体の取り込み方向に対応して取り込み側を押圧しながら取り入れ移動することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【００１５】
本発明のウインチの作用及び効果は、先ず、ウインチ本体に設けられた駆動軸を駆動源で回転駆動することで巻回ドラムを正回転又は逆回転し、巻回ドラムの外周に形成された溝にワイヤロープ等の紐状体を一方より取り込み移動し、他方より取り出し移動する。
【００１６】
この際、ウインチ本体の近傍には別体の押圧体が設けられているために、少なくとも取り込み移動するワイヤロープ等の紐状体は押圧された状態で取り込まれるために、ウインチ本体では巻回ドラムの外周に形成された溝に沿ってスムーズにワイヤロープ等の紐状体を一方より取り込み移動し、他方より取り出し移動することができる。
【００１７】
このように、押圧体がウインチ本体と別体として設けられているために、巻回ドラムでのワイヤロープ等の紐状体の移動が容易に行え、ワイヤロープ等の紐状体への磨耗を解消することができる。
【００１８】
また、本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムの作用及び効果は、吊り張りしたワイヤロープ等の紐状体を無端状ウインチの巻回ドラムを正回転又は逆回転して移動することで、ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシートを開閉／昇降移動する。
【００１９】
この際、ワイヤロープ等の紐状体の自重、ネット又はシートの荷重により、ウインチへのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側と取り出し側とで、その荷重の相違によりワイヤロープ等の紐状体に撓みや弛みが発生するが、ウインチ本体の近傍で別体の押圧体により、少なくともワイヤロープ等の紐状体のウインチへの取り入れ側を押圧して解除することで、スムーズに移動することができる。
【００２０】
また、吊り張りしたワイヤロープ等の紐状体の移動方向に沿って押圧体を取り付けすることができるので、あらゆるシステムの吊り張りに対応することができ、また、システムの変更に対しても自在に対応することができる。
【００２１】
さらに、予め押圧体でワイヤロープ等の紐状体に撓みや弛みを解消しているために、ウインチ本体部分でのワイヤロープ等の紐状体への押圧が少なくてすみ、ワイヤロープ等の紐状体の磨耗を極力減少することができる。
【００２２】
このように、本発明は従来の無端状のウインチでの撓みや弛みを解消する際に生じるワイヤロープ等の紐状体への磨耗をおさえ、スムーズなワイヤロープ等の紐状体の移動を可能とし、メンテナンス作業を極力削減することができる。
【００２３】
また、ウインチ本体と押圧体とが別体であるために、その設置に制限が少なく、あらゆるシステムに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明のウインチの一実施例を示す概略説明図
【図２】図１の押圧体の作用を示す概略説明図
【図３】本発明のウインチ本体への押圧体の取り付け方向を示す概略説明図
【図４】本発明のウインチの他実施例を示す概略説明図
【図５】本発明のウインチの他実施例を示す概略説明図
【図６】本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システを示す概略説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
以下、本発明のウインチ及びウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムの一実施例について図面を用いて説明する。
【００２６】
本発明のウインチ１は、ワイヤロープ等の紐状体を一方より取り込むとともに他方より取り出し移動するエンドレス（無端状）ウインチ（以後ウインチで表す）であり、ワイヤロープ等の紐状体は、一般的な金属製のワイヤロープ、通常の樹脂製の強化ロープ及び外周に樹脂の設けられたロープ等の強度のある材質の総称である（以下、線状体で表す）。
【００２７】
ウインチ１の基本構成は、外周縁に略Ｖ字状の溝が形成されワイヤロープ等の紐状体の設けられた巻回ドラム４を回転駆動するための駆動軸５の設けられたウインチ本体２と、駆動軸５に連結され駆動軸５を回転駆動するための駆動源（図示せず、電動及び手動を問わない）とから構成されている。
【００２８】
ウインチ本体２の近傍には、巻回ドラム４へ一方より取り込むとともに他方より取り出し移動する紐状体７の弛み／撓みを解消することのできる押圧体６が設けられている。
【００２９】
押圧体６の基本構成は、矩形状の本体６ａに所望の間隔を開けて回転自在に取り付けられた２個の案内ローラ６ｂと、紐状体７の移動を補助及び案内する案内ガイド６ｃから構成され、ウインチ本体２との距離Ｌを自在に調整することができる。
【００３０】
本発明のウインチ１は上記のように構成され、ウインチ１を用いた紐状体７の取り入れ取り出し移動について説明する。
【００３１】
例えば、屋内の側面及び天井側に沿って滑車を取り付け、ウインチ本体２の巻回ドラム４との間で紐状体７をループ状に吊り張りする。この状態で駆動軸５を回転駆動することで、巻回ドラム４を正方向又は逆方向に回転し紐状体７を巻回ドラム４に取り入れ移動するとともに取り出し移動する。
【００３２】
この際、ウインチ本体２の近傍には、押圧体６が設けられているために、巻回ドラム４に取り入れ移動する紐状体７に生じる撓み／弛みを押圧体６の案内ガイド６ｃで案内移動しながら２個の案内ローラ６ｂで挟持することで解消し、無駄のない状態で巻回ドラム４側に移動し、巻回ドラム４の回転駆動を無駄なく紐状体７に伝動して、スムーズな紐状体７のループ移動を可能とする。
【００３３】
尚、本発明の押圧体６の構成は、上記実施例に限定されるものでなく、例えば溝に沿って揺動移動するローラ体で構成し、紐状体７の取り入れ移動に沿って紐状体７を押圧することも可能であり、また、一対の案内ローラを近接する方向にテンションを書けることで紐状体７を押圧することも可能である。
【００３４】
また、ウインチ本体２と押圧体６との構成も上記実施例のように別体とする構成に限定されるものでなく、例えば、ウインチ本体２に方向を自在に変更すべく回転自在に設けられ、且つその長さを調整可能なレール１０を設けることで、上記実施例と同様の効果を得ることも可能である。
【００３５】
また、上記実施例では、ウインチ本体２には駆動軸５に設けられた巻回ドラム４のみで構成したが、本発明においてウインチ本体２の構成はこれに限定されるものでなく、筒状の案内ガイド６ｃのみをウインチ本体２に取り付け紐状体７の移動方向をアシストすることも可能である。
【００３６】
また、巻回ドラム４の数を２以上に増加することにより、同時に複数の紐状体７を移動するように構成することも可能である。そして、それぞれの紐状体７を押圧体６で押圧して弛み等を解消することで、複数の紐状体７をスムーズに移動することができる。この場合、押圧体６がウインチ本体２と別体であるために、それぞれの紐状体７の移動方向を別の方向とすることも容易に対応することができる。
【００３７】
次に、本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムについて説明する。
【００３８】
本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムは、上記構成のウインチを用いて屋外又は屋内で複数の滑車８を介して吊り張りした紐状体７と、紐状体７に直接連結（又は、ガイド用紐状体７に移動自在に吊張）されたネット又はシート等の吊張体９とから構成されている。
【００３９】
先ず、ウインチ１の駆動軸５を回転駆動して巻回ドラム４を正方向又は逆方向に回転することで、滑車８を介して吊り張りした紐状体７をループ状に移動することでネット又はシート等の吊張体９を昇降移動又は平行移動することができる。
【００４０】
この際、紐状体７のウインチ本体２への取り入れ方向及び取り出し方向に応じて、押圧体６を設置（Ａ位置、Ｂ位置、Ｃ位置又はＤ位置）することができるので、ウインチ１の取り付け位置に係わらず自在に紐状体７のループ移動方向を決定することができ、紐状体７の吊り張り方向に自在に対応することができる。
【００４１】
また、紐状体７にかかる自重、及び吊張体９による荷重による紐状体７の撓み／弛みを最適な位置で確実に解消することができ、スムーズな紐状体７の移動を可能とする。
【００４２】
さらに、押圧体６の設置代数を増加することにより紐状体７にかかる荷重による紐状体７の撓み／弛みを解消することも可能である。
【００４３】
このように、本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムは、ウインチに対しての紐状体７の移動方向を問題とすることなく対応することができ、あらゆる紐状体７の移動システムに対応することができる。
【００４４】
また、巻回ドラム４部分で紐状体７への疲弊を極力解消することができる。
【００４５】
また、屋内／屋外の相違する方向に２以上の紐状体７を滑車８を介して吊り張りする場合は、ウインチ本体２の駆動軸３に対応する数の巻回ドラム４を取り付け、それぞれの近傍で紐状体７の移動方向に沿って押圧体６を設けることで対応することができる。
【符号の説明】
【００４６】
１…ウインチ、２…ウインチ本体、４…巻回ドラム、７…紐状体、
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ワイヤロープ等の紐状体を屋内外の一定の空間部にループ状等に吊り張りして、ネット又はシートをスムーズに開閉／昇降移動するのに使用するウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムに関する。
【背景技術】
【０００２】
ワイヤロープ等の紐状体を屋内外の一定の空間部にループ状等に吊り張りしたシステムとしては、例えば、屋内施設でのネットを用いた間仕切りシステムや、屋外のプール等に使用するＵＶカットシートの開閉システム、ゴルフ練習場の防球用ネットの昇降システム等が知られている。
【０００３】
屋内施設でのネットを用いた間仕切り用システムとしては、例えば無端状のウインチと、屋内側面又は天井に沿って滑車を介してループ状に吊り張りしたウインチ用ワイヤロープと、該ウインチ用ワイヤロープに一端側を連結した複数の吊り上げ用ワイヤロープと、吊り上げ用ワイヤロープの他端側に連結されたネットとから構成された装置を用いて、ウインチの巻回ドラムを正／逆回転してウインチ用ワイヤロープを移動することで、吊り上げ用ワイヤロープを昇降してネットで空間部を間仕切り／開放移動するシステム（特開２００３−１１７０４６号公報）が知られている。
【０００４】
また、屋外のプール等に使用するＵＶカットシートの開閉用システムとしては、例えば、無端状のウインチと、滑車間でプールの上方側にループ状に吊り張りしたウインチ用ワイヤロープと、該ウインチ用ワイヤロープに並行に吊り張りしたガイド用ワイヤロープと、該ガイド用ワイヤロープに連結具を介して移動自在に設けられたＵＶカットシートとから構成された装置を用いて、ウインチの巻回ドラムを正／逆回転してウインチ用ワイヤロープを移動することで、ガイド用ワイヤロープに連結具を介して設けられたＵＶカットシートを並行方向にガイド用ワイヤロープに沿って開閉移動するシステム（特開２００４−２８５８２１号公報）が知られている。
【０００５】
また、ゴルフ練習場の防球用ネットの昇降システムとしては、例えば、複数の無端状のウインチと屋外空間部を区画する各支柱の上下方向に設けられた滑車間でループ状に吊り張りした複数のウインチ用ワイヤロープと、該ウインチ用ワイヤロープに直接取り付けられた防球用ネットとから構成された装置を用いて、各ウインチの巻回ドラムを正／逆回転して、複数のウインチ用ワイヤロープを支柱の上下間で移動して、防球用ネットを昇降するシステム（特開２０００−０３７４９２号公報）が知られている。
【０００６】
上記各システムにおいて、ワイヤロープにはその自重、及びネット等の荷重がかかり、ワイヤロープを移動するウインチの巻回ドラムへの取り入れ側と取り出し側とでその荷重等が相違し、ウインチの近傍でワイヤロープに弛みや撓みが発生する。この弛み等を解消するために、ウインチ本体に案内ガイドと案内ローラ、及び巻回ドラムの溝に沿って押圧移動体を設けたウインチが開発された（特開２０００−３５１５８０号等）。
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、上記従来より使用されているウインチは、ウインチ本体の巻回ドラムに近接して案内ガイドと案内ローラ、及び押圧移動体を設けることにより、ワイヤロープを巻回ドラム側に取り込み移動する側を押圧して、ワイヤロープの弛みや撓みを解消しスムーズな移動を行うことができるが、各押圧手段がウインチ本体と一体として構成されているために、ウインチの取り付け方向により、複数の滑車を設けなければループの移動方向に対応することができないという欠点があった。
【０００８】
また、従来のウインチでは、ウインチ本体に巻回ドラムと押圧手段体とが近接して設けられているために、ワイヤロープへの押圧力が強くワイヤロープが磨耗しやすいという欠点があった。
【０００９】
また、ワイヤロープに発生する弛みや撓みを解消するにはウインチの近傍で解消する方がより適切に解消することができるが、従来のウインチでは対応することができない問題点があった。
【００１０】
また、屋内や屋外において、ウインチの設置スペースは必ずしも十分でなく、システム変更を行う場合において押圧手段の設けられている方向が邪魔になるという欠点があった。
【００１１】
さらに、システム全体のメンテナンス作業を行う場合において、ワイヤロープの取り替え作業時は余分な滑車が多く、その取り替え作業を複雑にすると言う欠点があった。
【００１２】
そこで、本発明は上記問題点を解決すべくスムーズにワイヤロープ等の紐状体を移動し、ワイヤロープの磨耗が少なく、ウインチの設置が容易で、安全性にとんだウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明の上記課題を解決するためのウインチとしての手段は、請求項１に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を外周に形成された溝に巻回するための巻回ドラムを正／逆回転する駆動軸の設けられたウインチ本体と、駆動軸を回転駆動する駆動源とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体の近傍には、少なくともワイヤロープ等の紐状体の巻回ドラムへの取り入れ側を押圧する押圧体が設けられていることを特徴とする。
【００１４】
本発明の上記課題を解決するためのウインチによる紐状体の取り込み移動システムとしての手段は、請求項２に記載のように、無端状ウインチの巻回ドラムを正／逆回転しワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動するとともに、巻回ドラム側より取り出し移動する無端状のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、ワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動する際、ウインチ本体の近傍でワイヤロープ等の紐状体の取り込み方向に対応して取り込み側を押圧しながら取り入れ移動することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【００１５】
本発明のウインチの作用及び効果は、先ず、ウインチ本体に設けられた駆動軸を駆動源で回転駆動することで巻回ドラムを正回転又は逆回転し、巻回ドラムの外周に形成された溝にワイヤロープ等の紐状体を一方より取り込み移動し、他方より取り出し移動する。
【００１６】
この際、ウインチ本体の近傍には別体の押圧体が設けられているために、少なくとも取り込み移動するワイヤロープ等の紐状体は押圧された状態で取り込まれるために、ウインチ本体では巻回ドラムの外周に形成された溝に沿ってスムーズにワイヤロープ等の紐状体を一方より取り込み移動し、他方より取り出し移動することができる。
【００１７】
このように、押圧体がウインチ本体と別体として設けられているために、巻回ドラムでのワイヤロープ等の紐状体の移動が容易に行え、ワイヤロープ等の紐状体への磨耗を解消することができる。
【００１８】
また、本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムの作用及び効果は、吊り張りしたワイヤロープ等の紐状体を無端状ウインチの巻回ドラムを正回転又は逆回転して移動することで、ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシートを開閉／昇降移動する。
【００１９】
この際、ワイヤロープ等の紐状体の自重、ネット又はシートの荷重により、ウインチへのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側と取り出し側とで、その荷重の相違によりワイヤロープ等の紐状体に撓みや弛みが発生するが、ウインチ本体の近傍で別体の押圧体により、少なくともワイヤロープ等の紐状体のウインチへの取り入れ側を押圧して解除することで、スムーズに移動することができる。
【００２０】
また、吊り張りしたワイヤロープ等の紐状体の移動方向に沿って押圧体を取り付けすることができるので、あらゆるシステムの吊り張りに対応することができ、また、システムの変更に対しても自在に対応することができる。
【００２１】
さらに、予め押圧体でワイヤロープ等の紐状体に撓みや弛みを解消しているために、ウインチ本体部分でのワイヤロープ等の紐状体への押圧が少なくてすみ、ワイヤロープ等の紐状体の磨耗を極力減少することができる。
【００２２】
このように、本発明は従来の無端状のウインチでの撓みや弛みを解消する際に生じるワイヤロープ等の紐状体への磨耗をおさえ、スムーズなワイヤロープ等の紐状体の移動を可能とし、メンテナンス作業を極力削減することができる。
【００２３】
また、ウインチ本体と押圧体とが別体であるために、その設置に制限が少なく、あらゆるシステムに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明のウインチの一実施例を示す概略説明図
【図２】図１の押圧体の作用を示す概略説明図
【図３】本発明のウインチ本体への押圧体の取り付け方向を示す概略説明図
【図４】本発明のウインチの他実施例を示す概略説明図
【図５】本発明のウインチの他実施例を示す概略説明図
【図６】本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システを示す概略説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
以下、本発明のウインチ及びウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムの一実施例について図面を用いて説明する。
【００２６】
本発明のウインチ１は、ワイヤロープ等の紐状体を一方より取り込むとともに他方より取り出し移動するエンドレス（無端状）ウインチ（以後ウインチで表す）であり、ワイヤロープ等の紐状体は、一般的な金属製のワイヤロープ、通常の樹脂製の強化ロープ及び外周に樹脂の設けられたロープ等の強度のある材質の総称である（以下、線状体で表す）。
【００２７】
ウインチ１の基本構成は、外周縁に略Ｖ字状の溝が形成されワイヤロープ等の紐状体の設けられた巻回ドラム４を回転駆動するための駆動軸５の設けられたウインチ本体２と、駆動軸５に連結され駆動軸５を回転駆動するための駆動源（図示せず、電動及び手動を問わない）とから構成されている。
【００２８】
ウインチ本体２の近傍には、巻回ドラム４へ一方より取り込むとともに他方より取り出し移動する紐状体７の弛み／撓みを解消することのできる押圧体６が設けられている。
【００２９】
押圧体６の基本構成は、矩形状の本体６ａに所望の間隔を開けて回転自在に取り付けられた２個の案内ローラ６ｂと、紐状体７の移動を補助及び案内する案内ガイド６ｃから構成され、ウインチ本体２との距離Ｌを自在に調整することができる。
【００３０】
本発明のウインチ１は上記のように構成され、ウインチ１を用いた紐状体７の取り入れ取り出し移動について説明する。
【００３１】
例えば、屋内の側面及び天井側に沿って滑車を取り付け、ウインチ本体２の巻回ドラム４との間で紐状体７をループ状に吊り張りする。この状態で駆動軸５を回転駆動することで、巻回ドラム４を正方向又は逆方向に回転し紐状体７を巻回ドラム４に取り入れ移動するとともに取り出し移動する。
【００３２】
この際、ウインチ本体２の近傍には、押圧体６が設けられているために、巻回ドラム４に取り入れ移動する紐状体７に生じる撓み／弛みを押圧体６の案内ガイド６ｃで案内移動しながら２個の案内ローラ６ｂで挟持することで解消し、無駄のない状態で巻回ドラム４側に移動し、巻回ドラム４の回転駆動を無駄なく紐状体７に伝動して、スムーズな紐状体７のループ移動を可能とする。
【００３３】
尚、本発明の押圧体６の構成は、上記実施例に限定されるものでなく、例えば溝に沿って揺動移動するローラ体で構成し、紐状体７の取り入れ移動に沿って紐状体７を押圧することも可能であり、また、一対の案内ローラを近接する方向にテンションを書けることで紐状体７を押圧することも可能である。
【００３４】
また、ウインチ本体２と押圧体６との構成も上記実施例のように別体とする構成に限定されるものでなく、例えば、ウインチ本体２に方向を自在に変更すべく回転自在に設けられ、且つその長さを調整可能なレール１０を設けることで、上記実施例と同様の効果を得ることも可能である。
【００３５】
また、上記実施例では、ウインチ本体２には駆動軸５に設けられた巻回ドラム４のみで構成したが、本発明においてウインチ本体２の構成はこれに限定されるものでなく、筒状の案内ガイド６ｃのみをウインチ本体２に取り付け紐状体７の移動方向をアシストすることも可能である。
【００３６】
また、巻回ドラム４の数を２以上に増加することにより、同時に複数の紐状体７を移動するように構成することも可能である。そして、それぞれの紐状体７を押圧体６で押圧して弛み等を解消することで、複数の紐状体７をスムーズに移動することができる。この場合、押圧体６がウインチ本体２と別体であるために、それぞれの紐状体７の移動方向を別の方向とすることも容易に対応することができる。
【００３７】
次に、本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムについて説明する。
【００３８】
本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムは、上記構成のウインチを用いて屋外又は屋内で複数の滑車８を介して吊り張りした紐状体７と、紐状体７に直接連結（又は、ガイド用紐状体７に移動自在に吊張）されたネット又はシート等の吊張体９とから構成されている。
【００３９】
先ず、ウインチ１の駆動軸５を回転駆動して巻回ドラム４を正方向又は逆方向に回転することで、滑車８を介して吊り張りした紐状体７をループ状に移動することでネット又はシート等の吊張体９を昇降移動又は平行移動することができる。
【００４０】
この際、紐状体７のウインチ本体２への取り入れ方向及び取り出し方向に応じて、押圧体６を設置（Ａ位置、Ｂ位置、Ｃ位置又はＤ位置）することができるので、ウインチ１の取り付け位置に係わらず自在に紐状体７のループ移動方向を決定することができ、紐状体７の吊り張り方向に自在に対応することができる。
【００４１】
また、紐状体７にかかる自重、及び吊張体９による荷重による紐状体７の撓み／弛みを最適な位置で確実に解消することができ、スムーズな紐状体７の移動を可能とする。
【００４２】
さらに、押圧体６の設置代数を増加することにより紐状体７にかかる荷重による紐状体７の撓み／弛みを解消することも可能である。
【００４３】
このように、本発明のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の取り込み移動システムは、ウインチに対しての紐状体７の移動方向を問題とすることなく対応することができ、あらゆる紐状体７の移動システムに対応することができる。
【００４４】
また、巻回ドラム４部分で紐状体７への疲弊を極力解消することができる。
【００４５】
また、屋内／屋外の相違する方向に２以上の紐状体７を滑車８を介して吊り張りする場合は、ウインチ本体２の駆動軸３に対応する数の巻回ドラム４を取り付け、それぞれの近傍で紐状体７の移動方向に沿って押圧体６を設けることで対応することができる。
【符号の説明】
【００４６】
１…ウインチ、２…ウインチ本体、４…巻回ドラム、７…紐状体、
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ワイヤロープ等の紐状体を外周に形成された溝に巻回するための巻回ドラムを正／逆回転する駆動軸の設けられたウインチ本体と、駆動軸を回転駆動する駆動源とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体の近傍には、少なくともワイヤロープ等の紐状体の巻回ドラムへの取り入れ側を押圧する押圧体が設けられていることを特徴とするウインチ。
【請求項２】
無端状ウインチの巻回ドラムを正／逆回転しワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動するとともに、巻回ドラム側より取り出し移動する無端状のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、ワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動する際、ウインチ本体の近傍でワイヤロープ等の紐状体の取り込み方向に対応して取り込み側を押圧しながら取り入れ移動することを特徴とするウインチによる紐状体の取り込み移動システム。
【請求項１】
ワイヤロープ等の紐状体を外周に形成された溝に巻回するための巻回ドラムを正／逆回転する駆動軸の設けられたウインチ本体と、駆動軸を回転駆動する駆動源とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体の近傍には、少なくともワイヤロープ等の紐状体の巻回ドラムへの取り入れ側を押圧する押圧体が設けられていることを特徴とするウインチ。
【請求項２】
無端状ウインチの巻回ドラムを正／逆回転しワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動するとともに、巻回ドラム側より取り出し移動する無端状のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、ワイヤロープ等の紐状体をウインチ本体の巻回ドラム側への取り込み移動する際、ウインチ本体の近傍でワイヤロープ等の紐状体の取り込み方向に対応して取り込み側を押圧しながら取り入れ移動することを特徴とするウインチによる紐状体の取り込み移動システム。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００９−２４９１８３（Ｐ２００９−２４９１８３Ａ）
【公開日】平成２１年１０月２９日（２００９．１０．２９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１２３９８８（Ｐ２００８−１２３９８８）
【出願日】平成２０年４月９日（２００８．４．９）
【出願人】（５９２２０６１５６）東田商工株式会社 (54)
【公開日】平成２１年１０月２９日（２００９．１０．２９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年４月９日（２００８．４．９）
【出願人】（５９２２０６１５６）東田商工株式会社 (54)
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