説明

ウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システム

【課題】本願発明は、空間部に容易にネット又はシート体を吊り張りすることのできる、ウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムを提供することを課題とする。
【解決手段】空間部に吊り張りするネット又はシート体の両端側に連結し対向する方向に吊り張りした側面ロープのうち少なくとも一方側の側面ロープをウインチで調整移動しネット又はシート体を直線状に緊張した状態で吊り張りした後、該ネット又はシート体の上端側に連結した少なくとも1以上の上方ロープをウインチで調整移動しながら連結部に設けられた調整手段を介して上方ロープの取り付け位置をスライド調整してネット又はシート体の空間部の形状に応じて吊り張り調整するシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、球技用の屋内外の施設の防球用のネット又はシートを緊張した状態で吊り張りするのに使用するウインチを用いたネット又はシートの吊り張り移動システムに関するものである。
【技術の背景】
【0002】
従来、屋内の空間部に緊張状態で吊り張りする防球用のネットは、空間部に沿って形成されたネット体(又はシート体)と、該ネット体の上部両端側にそれぞれ連結した2本の側面ロープ(本発明においてロープとは、ワイヤロープや最新の樹脂製ロープ等のネットの重量に対応可能なロープの総称として記載する)と、該ネット体の所望の上端位置に連結した少なくとも1本の上方ロープと、各ロープを調整移動(本発明で調整移動とはロープの巻回されたドラムよりの巻き取り/引き出し移動を示す)するウインチ(側面用のウインチ、上方用のウインチ)から構成されている。
【0003】
上記システムを利用してネット体を空間部に緊張状態で吊り張りする場合は、先ず側面ウインチを用いてそれぞれ側面ロープを巻き取り移動することでネット体の両上端側を対向する方向に引っ張り移動してネット体を直線状に吊り張りする。
【0004】
次に、上方用のウインチを用いてネット体の上端部に連結した少なくとも1以上の上方ロープを巻き取り移動することで、ネット体を空間部の形状に応じて所望の方向に引っ張る。
【0005】
その後、側面ロープと上方ロープとを調整移動しながらネット体を空間部に沿って吊り張り移動する。
【0006】
特に、曲面部分を有する観客席と競技用フィールド面とを防球用として吊り張りする場合は、上方ロープでネット体を観客席側に引っ張り、ネット体の下端側を固定することでネット体を吊り張りする。
【0007】
即ち、先ず側面ロープを所望量の巻き取り移動することで、ネット体を空間部の上部側に直線状に吊り張りし、その後上方ロープを巻き取り移動することでネット体を後方下方側に引っ張り移動してネット体を空間部に沿って位置する。この際、上方ロープのネット体への連結する本数、及びその取り付ける間隔により曲面状に吊り張りすることができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の防球用のネットは、ネット体を空間部の形状に応じて吊り張りするために側面ロープと上方ロープとを調整移動しながら吊り張りしなければ各ロープの破損等は発生するが、各ロープの調整移動にはロープの伸縮やネット体の荷重等を考慮する必要があり、職人による勘と経験を必要とし、だれでもが容易にできる作業ではない。
【0009】
また、ネット体に取り付ける上方ロープの連結位置、及び上方ロープの本数の決定も上記と同様に、空間部の形状及びネット体の荷重等を考慮する必要があり
職人による勘と豊富な経験を必要とする。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点を解決し、側面ロープと上方ロープとの調整移動が容易で、且つ曲面部分に応じてネット体を容易に吊り張りできるウインチを用いたネット又はシートの吊り張り移動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1は、空間部に吊り張りするネット又はシート体の両端側に連結し対向する方向に吊り張りした側面ロープの少なくとも一方側の側面ロープをウインチで調整移動し、ネット又はシート体を直線状に緊張した状態で吊り張り移動した後、該ネット又はシート体の上端側に連結した少なくとも1以上の上方ロープをウインチで調整移動しながら連結部に設けられた調整手段を介して上方ロープの取り付け位置をスライド調整してネット又はシート体の空間部の形状に応じて吊り張り調整することを特徴とする。
【0012】
また、課題を解決するために、請求項2は、空間部に吊り張りするネット又はシート体の上方側に少なくとも一方側のロープをウインチで調整移動する側面ロープを吊り張りした後、該側面ロープにスライド自在に連結し、先端側をネット又はシート体の上端側に連結した少なくとも1以上の上方ロープをウインチで調整移動しながら側面ロープに沿ってスライド調整してネット又はシート体を空間部の形状に応じて吊り張り調整することを特徴とする。
【発明の作用効果】
【0013】
本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの作用効果について説明する。
【0014】
本発明の請求項1は、先ず、少なくとも一方側の側面ロープをウインチより引き出し、空間部に吊り張りするネット又はシート体の上部両端側にそれぞれ連結し、その後ウインチより引き出した上方ロープをネット又はシート体の上端側に連結する。
【0015】
次に、前記少なくともその一方側のロープをウインチで側面ロープを巻き取りすることで調整移動してネット又はシート体を空間部の上方側に直線状に吊り張りする。
【0016】
その後、前記少なくとも1以上の上方ロープをウインチで所望の方向に巻き取りすることでネット又はシート体を空間部の形状に沿って吊り張りする。
【0017】
この際、前記上方ロープのネット又はシート体への連結部に設けられた調整手段を介してスライド調整可能なので、空間部に沿って微調整しながら適切に引っ張ることができ、最適に吊り張りすることができる。
【0018】
このため、ウインチによる側面ロープと上方ロープをそれぞれ調整移動する煩雑な作業をすることなく巻き取りできる。
【0019】
しかも、上方ロープの取り付け位置を自在に微調整することができるので、空間部の形状に応じて上方ロープを連結し、最適にネット又はシート体を吊り張りできる。
【0020】
本発明の請求項2は、先ず、少なくとも一方が環のロープをウインチで調整移動して側面ロープを吊り張りし、その後ネット又はシート体の上端側に連結した少なくとも1以上の上方ロープをウインチで調整移動することで、ネット又はシート体を該側面ロープの下方側に吊り張りする。
【0021】
この際、上記上方ロープは、側面ロープにスライド移動すべく連結されているために、空間部に沿って最適な方向に上方ロープを引っ張り、スムーズにネット又はシート体を吊り張りすることができる。
【0022】
このように、本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムは、ウインチで側面ロープ及び上方ロープを容易に調整移動してネット又はシート体を吊り張りすることができる。
【0023】
しかも、上方ロープを引っ張り方向に自在にスライド移動することができるので上方ロープの連結位置を微調整する必要がなく、引っ張り方向のみを設定するだけで、スムーズに引っ張り移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの一実施例について図面を用いて説明する。
【0025】
図1は本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第1実施例を示す概略説明平面図であり、図2は図1の側面ロープの調整移動を示す概略説明平面図であり、図3は図1の上方ロープの調整移動を示す概略説明平面図であり、図4は本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第2の実施例を示す概略説明平面図であり、図5は本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第3の実施例を示す概略説明平面図であり、図6は本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第4の実施例を示す概略説明平面図であり、図7は本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第5の実施例を示す概略説明平面図であり、図8は本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第6の実施例を示す概略説明平面図であり、図9は図1の第1実施例を示す概略説明上面図であり、図10は本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムを示すフローチャートである。
【0026】
(第1実施例)
本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムに使用する装置は空間部Aに吊り張りする大面積を有するネット体2(又はシート体)と、該ネット体2の両上端側に設けられた一対の側面ロープ3(3A,3B)と、一方の側面ロープ3Bを調整移動(巻取/引出移動)する側面用のウインチ4A(通常ロープの巻取方式のウインチを使用するが、エンドレス方式のウインチとロープ巻き取りリールとの組み合わせも可能である)と、ネット体2の上端側に取り付けられた連結ロープ5に所望の間隔で連結具6を介して取り付けられた2本の上方ロープ7と、該上方ロープ7調整移動する上方用のウインチ4Bから構成されている。
【0027】
上記側面ロープ3と連結ロープ5とは、ネット体2の端部で連結され、該連結部分を離反することでネット体2を取り外してメンテナンスを行うことができる。
【0028】
また、上記連結具6は、所望の間隔で連結ロープ5に沿ってスライド移動でき空間部Aの形状に応じ決定される引っ張り方向に応じて上方ロープ7の連結位置を調整し最適な位置でネット体2を広げることができる。
【0029】
尚、上記上方ロープ7の取り付け本数及び引っ張り方向は、吊り張りするネット体2の大きさ及び空間部の形状に応じて設定することができる。
【0030】
次に、上記ウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムを円弧状の空間部に設置し防球用として使用する場合について説明する。
【0031】
先ず、空間部の一方の側壁にロープ3Aの一端側を固定連結し、他端側をネット体2の上端側面を連結し、また他方の側面ロープ3Bを対向する他方の側壁に取り付けられた側面用のウインチ4Aより調整移動(引き出し移動)し、その先端側をネット体2の上端側面に連結する。
【0032】
上記側面ロープ3のネット体2への連結は、ネット体2の上端に連結された連結ロープ5に連結するために容易に連結できる。
【0033】
その後、空間部の天井側に設置された上方用のウインチ4Bより上方ロープ7を調整移動(引き出し移動)し、その先端側をネット体2の上端の連結ロープ5に所望の間隔で連結具6を介して連結する。尚、上方ロープ7は滑車を介してネット体2の引っ張り方向に架け渡す。
【0034】
次に、上記側面用のウインチ4Aを駆動し、側面ロープ3Bを調整移動(巻き取り移動)することで、側面ロープ3A、3Bでネット体2を空間部に直線状に吊り張りする。
【0035】
その後、上方用のウインチ4Bを駆動し、2本の上方ロープ7を調整移動(巻き取り移動)することで、ネット体2を空間部の形状に沿って引っ張り移動する。
【0036】
この際、上方ロープ7はスライド移動する連結具6を介して連結しているために上方ロープ7の引っ張り方向に応じてスライド移動しながら移動するために、ウインチ4Bによる調整移動を従来のように微調整することなく容易に引っ張り移動できる。
【0037】
従って、側面ロープ3の調整移動と上方ロープ7の調整移動とにより、容易に空間部の形状に応じてネット体2を吊り張りすることができる。
【0038】
また、上記ネット体2を野球のバックネットとして使用する場合は、上記上方ロープ7を調整移動した後、ネット体2の下端側を固定のフェンスに連結することで、観客席の前面に防球用のネット体2として使用することができる。
【0039】
(第2実施例)
本発明の第2実施例は上記第1実施例の側面ロープ3A、3Bをそれぞれ側面用のウインチ4Aで調整移動するように構成することで、側面ロープ3A、3Bをそれぞれ調整移動してよりスムーズなネット体2の吊り張りを行うことができる。
【0040】
また、側面ロープ3A、3Bの調整移動により、ネット体2の吊り張り位置を微調整できる。
【0041】
(第3実施例)
本発明の第3実施例のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムは、一端側を側壁に固定し、側面用のウインチ3Aで調整移動する側面ロープ3と、該側面ロープ3に連結し、先端側をネット体2の上端部に連結した複数本の上方ロープ7と、側面ロープ3の下方側で上方ロープ7に連結したネット体2とから構成されている。
【0042】
上記上方ロープ7は連結具6を介してスライド自在に側面ロープ7に連結され、上方ロープ7の引っ張り方向に応じて最適な位置にスライド移動する。
【0043】
また、ネット体2の両側面側は別体の吊り張りロープ8がネット体2と側面ロープ3間に取り付けられている。
【0044】
次に、上記構成のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムを空間部に吊り張りする場合について説明する。
【0045】
先ず、側面用のウインチ4Aを駆動して側面ロープ3を調整移動(引き出し移動)し、その先端を側壁に固定し、その後、上方用のウインチ4Bを駆動し上方ロープ7を調整移動(引き出し移動)し側面ロープ3に連結具6を介して連結するとともに、先端側をネット体2の上端部に連結する。
【0046】
次に、側面用のウインチ4Aを駆動して側面ロープ3を調整移動(巻き取り移動)するとともに、上方用のウインチ4Bを駆動して上方ロープ7を調整移動(巻き取り移動)する。
【0047】
上記側面ロープ3を調整移動してネット体2を直線状に吊り張りした後、上方ロープ7を調整移動してネット体2を所望の方向に引っ張り移動して吊り張りする。
【0048】
この際、上方ロープ7は連結具6を介して側面ロープ3に沿ってスライド移動するので適切な位置に移動し、最適な方向にネット体2を吊り張りすることができる。
【0049】
このように、本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムは、従来のような職人の勘や経験を必要とすることなくスムーズにネット体2を吊り張りできる。
【0050】
(第4実施例)
本発明の第4実施例のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムは、第3実施例のネット体2の両側面側も上方ロープ7に連結することで、ネット体2の側面を適切に広げながら吊り張りすることができる。
【0051】
特に、ネット体2の両側面上端部に連結した上方ロープ7は側面ロープ3に沿ってスライド移動し、スムーズなネット体2の吊り張りを可能とする。
【0052】
(第5実施例)
本発明の第5実施例のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムは、狭い空間部にネット体2を吊り張りする場合に使用し、側面ロープ3を水平に吊り張りし、ネット体2の両側面側に上方ロープ7を連結し、該上方ロープ7のネット体2への連結部は、該側面ロープ3に沿ってスライド自在な連結具6を介して連結した構成で、側面ロープ3を調整移動した後、上方ロープ7を調整移動することで該上方ロープ7の連結位置をスライド調整し最適な位置でネット体2を吊り張りできる。
【0053】
(第6実施例)
本発明の第6実施例のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムは、空間部に水平に架け渡した側面ロープ3と、該側面ロープ3にスライド移動すべく連結し、その先端側をネット体2の上端部に連結した上方ロープ7とから構成され、上方ロープ7を調整移動すると側面ロープ3部分で連結位置をスライド調整して適切な方向にネット体2を吊り張りできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第1の実施例を示す概略説明平面図
【図2】図1の側面ロープを調整移動する場合を示す概略説明平面図
【図3】図1の上方ロープを調整移動する場合を示す概略説明平面図
【図4】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第2の実施例を示す概略説明平面図
【図5】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第3の実施例を示す概略説明平面図
【図6】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第4の実施例を示す概略説明平面図
【図7】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第5の実施例を示す概略説明平面図
【図8】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第6の実施例を示す概略説明平面図
【図9】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムの第1の実施例を示す概略説明上面図
【図10】本発明のウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システムのフローチャート
【符号の説明】
【0055】
2−ネット体(シート体)、3−側面ロープ、4−ウインチ、7−上方ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間部に吊り張りするネット又はシート体の両上端側に連結し対向する方向に吊り張りした側面ロープのうち少なくとも一方側の側面ロープをウインチで調整移動しネット又はシート体を直線状に緊張した状態で吊り張りした後、該ネット又はシート体の上端側に連結した少なくとも1以上の上方ロープをウインチで調整移動しながら連結部に設けられた調整手段を介して上方ロープの取り付け位置をスライド調整してネット又はシート体を空間部の形状に応じて吊り張り調整することを特徴とするウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システム。
【請求項2】
空間部に吊り張りするネット又はシート体の上方側に少なくとも一方側のロープをウインチで調整移動する側面ロープを吊り張りした後、該側面ロープにスライド自在に連結し、先端側をネット又はシート体の上端側に連結した少なくとも1以上の上方ロープをウインチで調整移動しながら側面ロープに沿ってスライド調整してネット又はシート体を空間部の形状に応じて吊り張り調整することを特徴とするウインチを用いたネット又はシート体の吊り張り移動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−192142(P2012−192142A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80494(P2011−80494)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(592206156)東田商工株式会社 (54)