ウインチ及びウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システム
【課題】本発明は、ワイヤロープの移動間の幅を維持し、スムーズで、安全性が高いウインチ及び該ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムを提供することを課題とする。
【解決手段】
ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体又は/及びその近傍には、巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられている。
【解決手段】
ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体又は/及びその近傍には、巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のウインチを用いて架設間でワイヤロープ等の紐状体を移動することで、ワイヤロープ等の紐状体に設けられたネット又はシート等の吊張帯を移動して空間部を区画するウインチ及びウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
球技の試合、球技の練習用として使用する屋内(例えば、ドーム型の球場、長・正方形状の屋内練習場等)又は屋外(例えば、外周に支柱を立設し支柱間にネット等を取り付けることで空間部を確保した屋外型練習施設、ゴルフの練習場、ワイヤー式テント等)の各施設は使用する球技の種類、練習方法、試合、飛来する球の種類、又は天気等の状況に応じてネット又はシートを用いてその空間部を複数に間仕切り、区画用、防球用又は雨天用として設置することで、有効に使用している。
【0003】
上記間仕切り、区画用又は防球用等として使用するネット又はシートの開閉移動は、ネット又はシートを無端状のウインチで回転駆動するワイヤーロープに連結して直接的に移動するか、又はネット又はシートを別のワイヤーロープに移動自在に設け連結具を介して無端状のウインチで回転駆動するワイヤーロープに連結することで間接的に移動する方法が使用されている。
【0004】
この移動に使用するウインチとしては、無端状のウインチが使用されている。本願発明における無端状のウインチの基本構成は、ウインチ本体部分と駆動源(モーター)部分とから構成され、ウインチ本体には駆動源に間接又は直接的に連結するための駆動軸と駆動軸に取り付けられ駆動軸の回転駆動を伝達する巻回ドラムと巻回ドラムの近傍に設けられた案内手段(ワイヤーロープを巻回ドラムに案内移動する、案内ドラム、案内ガイド等)とから構成されている。
【0005】
上記構成の無端状のウインチでは、ワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重によりワイヤロープに弛みや撓みが発生し、巻回ドラムの駆動を無駄なくワイヤーロープに伝えることができない。そこで、巻回ドラムの外周面にローラーチェーンを設け、案内ドラム及び案内ガイドとによりワイヤロープを挟持した状態で巻回ドラム側へ移動した後、ワイヤロープを巻回ドラムの外周面に形成された溝にローラーチェーンで押圧しながら案内ドラムの回転に沿って移動し、再度案内ドラム及び案内ガイドとにより挟持された状態でワイヤロープを取り出し移動することでワイヤロープを移動するウインチが考えられた。(特許公報1)
【0006】
即ち、ウインチ側ではワイヤロープの取り入れ側と取り出し側との移動間を狭めるように外側より押圧し、駆動軸の動力を無駄なくワイヤロープに伝え、スムーズなワイヤロープの移動を可能としている。
【0007】
次に、上記間仕切り、又は区画用として使用するネット又はシートの移動システムとしては、所望の空間部に複数の滑車を用いてループ状にワイヤロープを平行又は斜め方向に架設し、ワイヤロープに沿って並行に吊り張りしたガイドワイヤーにリング体を介してネット又はシートを吊り張りし、ネット又はシートの先端側を連結具を介してワイヤロープに連結し、ループ状のワイヤロープの一端側にワイヤロープ移動用の無端状のウインチを設けたシステムが公知である。
【0008】
そして、このシステムは無端状のウインチを上記(ウインチでの説明)のように駆動し、ワイヤロープを滑車に沿ってループ状に移動してネット又はシートの先端側を引っ張ることで、ガイドワイヤーに沿って移動したネット又はシートで所望の空間部を平行又は斜め方向に間仕切り又は区画し、また、逆方向に無端状のウインチを駆動することで、ネット又はシートで所望の空間部を平行又は斜め方向に開放する。(特許公報2)
【0009】
また、ワイヤー式テントの場合は、屋根部分をシートで覆うべく複数のワイヤロープを滑車に沿ってループ状に移動し、該ワイヤロープ間に設けられたシートを並行に移動して屋根部分を開閉している。
【0010】
上記各場合において、並行又は斜め方向でループ状に架設したワイヤロープの移動幅間は、別体として取り付けられた滑車の径を利用しての移動幅を維持している。
【特許公報1】
特開2007−63013号公報
【特許公報2】
特開2002−17933号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記間仕切り、又は区画用等として使用している無端状のウインチは、ワイヤーロープの重量及び伸びを考慮してワイヤロープを案内ドラム及び案内ガイドで挟持し、ワイヤロープに発生する弛みや撓みを解消しながら移動することを主目的としているために、ウインチの近傍部分でウインチへのワイヤロープの取り入れ側及び取り出し側の移動幅間をできるだけ狭め、その狭まった状態でウインチ側のワイヤロープを移動しているために、ウインチ部分ではワイヤロープ間の自在な移動幅間の調整ができない。
【0012】
また、ウインチの近傍にワイヤロープの移動間を調整するための径の大きな滑車を設置すると、ウインチの取り入れ側及び取り出し側で狭めるように押圧した後、直ぐに滑車で移動幅を広げることとなり、ワイヤロープに連続した逆の負荷をかけるために、連続して使用するとワイヤロープに疲労性の磨耗等が発生し、安全面を考慮すると頻繁なワイヤロープの交換等のメンテナンスが必要である。
【0013】
また、ループ状にワイヤロープを架設するシステムの場合は、複数の滑車を使用することでワイヤロープの移動間の距離を維持しているが、滑車の設置できない空間部でのワイヤロープの架設においては、ワイヤロープの一方側の滑車で幅調整しなければならず、架設したワイヤロープの長さにより中途部でワイヤロープが絡まったり又は接触したりしてスムーズなワイヤロープの移動ができないという問題点があった。
【0014】
また、滑車の取り付けは屋内空間部の天井側、又は屋外の支柱の上部側で行う必要があるために、危険性が高く、メンテナンス時の取り外し作業時に時間がかかるという欠点があった。
【0015】
また、ウインチの巻回ドラムそのものの径を拡径してワイヤロープの移動間の幅を調整することも考えられるが、ワイヤロープの自重やワイヤロープにかかるネット等の荷重によりワイヤロープには弛みや撓みが発生しやすくスムーズなワイヤロープの移動ができない。
【0016】
また、複数のワイヤロープをループ状に架設する場合は、それぞれ別のウインチを使用するか、又は複数の巻回ドラムの設けられたウインチを使用してワイヤロープを移動するが、全てのワイヤロープの移動間の距離の維持を一定に保たなければ、1つのワイヤロープのトラブルが他のループ状に架設したワイヤロープの移動に影響を及ぼし、ネット等の移動ができないという問題点があった。
【0017】
そこで、本発明は、ワイヤロープの移動間の幅を維持し、スムーズで、安全性が高いウインチ及び該ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記課題を解決するためのウインチの第1の解決手段は請求項1に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体又は/及びその近傍には、巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、課題を解決するためのウインチの第2の解決手段は、請求項2に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体には、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設け、且つ一方の巻回ドラムの径を利用して、又は各巻回ドラム間の距離を利用して巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整することを特徴とする。
【0020】
また、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの第1の解決手段は、請求項3に記載のように、屋内外の所望の箇所に架設されたワイヤロープ等の紐状体の一方側端部に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動し、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設されたワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とする。
【0021】
また、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの第2の解決手段は、請求項4に記載のように、屋内外の所望の箇所に架設された複数のワイヤロープ等の紐状体に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた複数の巻回ドラム又は多数溝の巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、各巻回ドラム又は多数溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動しワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設された複数のワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をそれぞれウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながら複数のワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0022】
次に、本願発明のウインチ、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの作用及び効果について記載する。
【0023】
本願発明のウインチの第1の解決手段の作用及び効果について説明する。先ず、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面にワイヤロープ等の紐状体を架設し、ワイヤロープ等の紐状体の一方の端部に無端状のウインチを取り付け、他方の端部に弾性体によりテンションの設けられワイヤロープ等の紐状体の移動幅間と同一の径を有する滑車を取り付け、その後、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又はワイヤロープ等の紐状体に平行して設けられたガイド用のワイヤロープ等の紐状体を介して間接的にネット又はシート等の吊張体の上端部側を移動自在に取り付ける。
【0024】
この状態で無端状のウインチの駆動軸を駆動し、駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向(ネット又はシート等の吊張体の吊り張り方向)に回転すると巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動しワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体を吊り張り方向に移動する。
【0025】
これにより、ネット又はシート等の吊張体を所望の空間部にワイヤロープ等の紐状体を介して吊り張りする。
【0026】
次に、上記巻回ドラムを逆方向(ネット又はシート等の吊張体の収納方向)に回転すると、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間でループ状に巻回移動し、ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体を上記と逆方向に移動する。
【0027】
これにより、ネット又はシート等の吊張体を元の位置に移動し、空間部を開放する。
【0028】
この際、本願発明のウインチ本体にはワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられているために、架設したワイヤロープ等の紐状体はウインチ本体部分で移動幅間の幅調整が行え、巻回移動がスムーズに行える。
【0029】
次に、本発明のウインチの第2の解決手段の作用及び効果について説明する。先ず、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面とその中間部に、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設けた無端状のウインチを設け、各巻回ドラム間及び空間部間にワイヤロープ等の紐状体を架設し、無端状のウインチを駆動することで少なくとも2以上の巻回ドラムを回転駆動し、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム間及び空間部間で移動する。この際、ワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み側と取り出し側との幅を一方の巻回ドラムの径を利用して、自在に調整することができる。
【0030】
これにより、ネット又はシート等の吊張体を所望の空間部にワイヤロープ等の紐状体を介して吊り張りする。
【0031】
次に、上記各巻回ドラムを逆方向(ネット又はシート等の吊張体の収納方向)に回転すると、各巻回ドラム間に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動し、ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体を上記と逆方向に移動し、ネット又はシート等の吊張体を元の位置に移動し、空間部を開放する。
【0032】
また、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設けた無端状のウインチを設け、各巻回ドラム間及び空間部間にワイヤロープ等の紐状体を架設し、無端状のウインチを駆動することで少なくとも2以上の巻回ドラムを回転駆動し、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム間及び空間部間で移動する際、ワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み側と取り出し側との幅を各巻回ドラム間の幅を利用して、自在に調整することも可能である。
【0033】
このように、同時に少なくとも2以上の巻回ドラムを回転駆動することで架設されたワイヤロープ等の紐状体を移動しネット又はシート等の吊張体をより強い駆動力で移動することができる。
【0034】
しかも、少なくとも2以上の巻回ドラムの一方の巻回ドラムの径を利用してワイヤロープ等の紐状体間の幅を自在に調整することができるので、その利用範囲を格段に広げることが可能となる。
【0035】
上記各解決手段の無端状のウインチには、巻回ドラムに巻回するワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への、取り込み側と取り出し側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられているために、ワイヤロープ等の紐状体の移動間の幅を調整した状態で直接ワイヤロープ等の紐状体を移動することができ、ネット又はシート等の吊張体の荷重にかかわらずワイヤロープ等の紐状体をスムーズに移動することができる。
【0036】
しかも、無端状のウインチにより直接ワイヤロープ等の紐状体の移動幅間を調整するために、従来のように、幅を調整する別体の滑車を設置するためのスペースを必要とすることなく設置でき、ワイヤロープ等の紐状体の設置対応を格段に広げることができ、安全性にとんだ架設の施工方法を選択することができる。
【0037】
また、メンテナンスにおいても安全性にとんだ架設の施工方法が選択されているためにウインチ等の取り替え作業を容易に行うことができる。
【0038】
次に、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの作用及び効果について説明する。
【0039】
先ず、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面にワイヤロープ等の紐状体を架設し、ワイヤロープ等の紐状体の一方の端部に上記無端状のウインチを取り付け他方の端部に弾性体によりテンションの設けられワイヤロープ等の紐状体の移動幅の径を有する滑車を取り付けその後、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して複数のネット又はシート等の吊張体の上端部側を直接又はワイヤロープ等の紐状体に平行して設けられたガイド用のワイヤロープ等の紐状体を介して間接的に取り付ける。
【0040】
この状態で無端状のウインチの駆動軸を回転駆動し駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向(ネット又はシート等の吊張体の吊り張り方向)、又は逆方向(ネット又はシート等の吊張体の収納方向)に回転することで、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動して、該ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられた複数のネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って移動する。
【0041】
これにより、ネット又はシート等の吊張体で所望の空間部を開閉することができる。
【0042】
この際、架設されたワイヤロープ等の紐状体の取り込み側と取り出し側との移動幅間を一端のウインチ側、他端の滑車、及びループの所望の中途部で一定に維持するように調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することで移動幅を常に一定に保ちながらループ状にワイヤロープ等の紐状体を移動することができる。
【0043】
また、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面の所望の箇所に無端状のウインチを取り付け、該ウインチの駆動軸に取り付けられた複数の巻回ドラムと間仕切り等する複数の側面側とにワイヤロープ等の紐状体をループ状に架設する。その後、巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転することで、各巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間でループ状に移動し、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉方向に移動する。
【0044】
この際も、架設されたワイヤロープ等の紐状体の取り込み側と取り出し側との移動幅間を無端状のウインチ側で調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することで、移動幅を常に一定に保ちながらワイヤロープ等の紐状体を移動することができる。
【0045】
このように、本発明は、架設されたワイヤロープ等の紐状体の移動幅を一定状態に調整した状態で移動することができるために、ネット等の荷重がワイヤロープ等の紐状体にかかる場合であっても、スムーズなワイヤロープ等の紐状体の移動を行うことができる。
【0046】
また、無端状のウインチの取り付け作業も容易で安全性にとんだ作業を行うことができ、メンテナンス等においも、時間を要することなく短時間で行える。
【0047】
しかも、ウインチ部分でのワイヤロープ等の紐状体の押圧を従来に比し、少なくてすみワイヤロープ等の紐状体への磨耗も少なくそのメンテナンスを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例である幅調整手段の設けられたウインチ本体を示す概略説明図
【図2】図1にワイヤロープ等の紐状体の離脱防止体が設けられたウインチ本体を示す概略説明図
【図3】図1の幅調整手段の他実施例を示す概略説明図
【図4】図1のウインチ本体へのワイヤロープ等の紐状体を巻回した状態の相違する幅調整手段を示す概略説明図
【図5】図1の幅調整手段の他実施例を示す概略説明図
【図6】ウインチ本体へのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側と取り出し側とが相違する場合を示す概略説明図
【図7】ウインチ本体と中途部とでワイヤロープ等の紐状体の移動幅間を調整する場合を示す概略説明図
【図8】本発明の無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの一実施例を示す概略説明図
【図9】ワイヤロープ等の紐状体の複数の取り入れ及び取り出し方向を示す概略説明図
【図10】径の相違する2以上の巻回ドラムに複数のワイヤロープ等の紐状体を設け、取り入れ方向と取り出し方向とが相違する場合の幅調整手段を示す概略説明図
【図11】中途部でワイヤロープ等の紐状体の移動幅間を調整する場合を示す概略説明図
【図12】本発明の無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図13】2以上の駆動軸にそれぞれ巻回ドラムを設け、一方の巻回ドラムでワイヤーロープ等の紐状体の幅調整を行うウインチ本体を示す概略説明図
【図14】図15のワイヤーロープ等の紐状体の幅調整の他実施例を示す概略説明図
【図15】図15のウインチ本体を用いてワイヤーロープ等の紐状体の幅調整した状態で移動方向を変更する場合を示す概略説明図
【図16】図15のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムを示す概略説明図
【図17】2個の巻回ドラムを用いたウインチ本体のワイヤロープ等の紐状体の幅調整手段を示す概略説明図
【発明を実施するための最良の実施の形態】
【0049】
以下、本発明のウインチ及びウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの一実施例について図面を用いて説明する。
【0050】
本発明のウインチにおける第1の実施例について説明する。
【0051】
本発明のウインチ1は、ワイヤーロープ等の紐状体を一方側より取り入れ他方側より取り出し移動する無端状のウインチ1であり、その基本構成はウインチ本体2と駆動源(図示せず)とから構成されている。ここでいう駆動源は、手動(手動用のハンドル)、電動(モーター)又はアシストシステム(手動及び電動含む)を問わず、現在公知の構成を使用し、ウインチ本体2と駆動源との連結も間接的又は直接的を問わす公知の方法で連結されている。
【0052】
ウインチ本体2は、前記駆動源の回転駆動軸に直接又は間接的に連結され、駆動源の回転駆動を伝達するための駆動軸3と、該駆動軸3に取り付けられ、駆動軸3の回転を伝達し、外周縁に沿って略V字状の溝の形成された巻回ドラム4と、巻回ドラム4の近傍に設けられた固定軸5に取り付けられ、フリー状態で回転する調整ドラム6とから構成されている(図1参照)。
【0053】
調整ドラム6の直径Lは、巻回ドラム4で回転移動するワイヤロープ等の紐状体7のループ状の架設状況に応じて、その移動幅間(ウインチ本体2への紐状体7の取り入れ側とウインチ本体2よりの取り出し側との幅間)に対応して設定される。尚、移動幅間を変更する場合は、移動幅間に対応した径の調整ドラム6に変更することで自在に移動幅間を変更することができる。
【0054】
本発明においてワイヤロープ等の紐状体7とは、一般に使用されている金属製のワイヤロープに限定されるものでなく、すでに使用されている強度や耐久性に優れた樹脂製のロープ、又はこれらの組み合わせよりなるロープも含むロープ全体である。以下総称として紐状体7で表す。
【0055】
上記のように構成された本発明の実施例の無端状のウインチ1を用いて、本発明のネット又はシート等の吊張体を移動するシステムについて説明する。ここで、吊張体9としては、屋内の練習施設、屋外のゴルフ練習場等に使用する網目状のネット、紫外線をカットすることを目的とするUVシート、又は屋根部分の開閉式テント等に使用するシート体を表す総称として表す。
【0056】
先ず、吊張体9を移動するシステムは、所望の空間部(屋内の場合は、対向する側面間、円弧状の天井面の場合は斜め上方側間で、屋外の場合は支柱間等)の一端側に無端状のウインチ1を設置し、他端側に各種テンションに連結された滑車8を取り付け、該ウインチ1と滑車8間に紐状体7をループ状に架設する。その後、紐状体7の下端側近傍には、吊張体9が連結具(図示せず)を介して移動自在に設けられたガイド用の紐状体10を紐状体7と並行状態になるように架設する。そして、吊張体9の上端側先端部を紐状体7に連結具(図示せず)を介して固定状態に連結する。
【0057】
ウインチ1への紐状体7の取り付けは、ウインチ本体2に設けられた巻回ドラム3及び調整ドラム5に8の字状に架け渡すことで、調整ドラム6の直径Lを紐状体7のループ状に架設された移動幅間Lとすることができる。従って、適切な移動幅間Lを確認後、移動幅間Lに相当する直径Lの調整ドラム6を取り付けるのみで容易に対応することができる(図2参照)。
【0058】
また、紐状体7の交差する部分を上下2個の離脱防止用としての離脱防止ローラ11を設けることで、巻回ドラム3及び調整ドラム5間で生じる、紐状体7の弛み/撓みにからの離脱を防止することができる。
【0059】
この際、ループ状の紐状体7の所望空間部間の距離が大きい場合には、ループ状の紐状体7の中途部分(状況に応じて、取り付け数を2本以上設けることも可能である。)に天井等よりループ間の移動幅Lを調整維持するために調整ローラー15の設けられた調整吊体14を吊り下げて、ウインチ本体2の調整ドラム6、調整吊体14の調整ローラー15、及び滑車8で紐状体7の移動幅間Lを調整するとともに、紐状体7にかかる荷重(紐状体7の重量及び吊張体9の重量)を分散することで、紐状体7をスムーズに移動することができる。また前記調整吊体14は天井より別体の紐状体20で吊り下げられているために、その長さを巻取式ウインチ(図示せず)等で調整することで紐状体7のループ間のテンションも同時に維持することができる(図7、図8参照)。
【0060】
尚、調整吊体14の吊り下げては、屋外においては支柱間に支持用の紐状体を紐状体7と並行状態になるように架設し、該紐状体に吊り下げることも可能である。
【0061】
この状態で、駆動源を駆動することで駆動軸3を正方向(吊張体9の吊り張り方向)に回転し巻回ドラム4を回転する。これにより紐状体7は調整ドラム6の一方側よりウインチ本体2に取り入れられた後、交差する方向に移動し巻回ドラム4の外周縁の溝に沿って再度交差する方向に移動し、調整ドラム6に他方側より取り出される。この際、紐状体7は調整ドラム6の直径Lによりそのループ状の移動幅間を維持されているために、他端側の滑車8間でスムーズにループ状移動することができる。
【0062】
これにより、紐状体7に上端側先端を連結した吊張体9は吊り張り方向にガイド用の紐状体10に沿って引っ張られ、所望の空間部を間仕切り等することができる。
【0063】
次に、上記駆動軸3を逆方向(吊張体9の収納方向)に回転し巻回ドラム4を回転して、紐状体7を上記と逆方向に調整ドラム6に沿って移動し、上記吊張体9を上記逆の収納方向にガイド用の紐状体10に沿って引っ張られて収納移動し、所望の空間部を開放する。
【0064】
このように、紐状体7をループ状の移動幅間を維持して移動することができるので、紐状体7に吊張体9の大きな荷重がかかる場合であっても、スムーズな紐状体7の移動を行うことができる。
【0065】
従って、ウインチ1部分での紐状体7の磨耗も従来の押圧方式のウインチに比して少なく、使用頻度に応じたメンテナンス作業も少なくすることができる。
【0066】
さらに、ウインチ1を含む吊張体9を移動するシステムの施工時において、ウインチ1と滑車8とを設定することで、紐状体7のループ移動の基本施工ができ、作業時間の短縮が可能で、安全性の面においても格段と向上することができる。特に、屋外において幅調整用の別体の複数の滑車を取り付けるための支柱を増やす必要もなく、空間部の自在な取り付けを可能とする。
【0067】
本願発明において、上記ウインチ本体2に設けられた幅調整手段は上記調整ドラム6に限定されるものでなく、例えば、2個の径の小さい調整ドラム6Aを調整された幅Tで2個の固定軸5に取り付けることで、移動間の幅Lを調整することも可能である(図3参照)。この場合において、ウインチ本体2の調整ドラム6Aを取り付けるスペースに複数の調整孔(図示せず)を設けることで、2個の径の小さい調整ドラム6Aのウインチ本体2への取り付け幅を自在に調整することができる(図9参照)。また、幅調整手段の他の実施例としては例えば板状の案内ガイド6Bの延長に幅調整のガイド取り付けることで、紐状体7の移動幅間を調整し、同様の作用効果を得ることもできる(図5参照)。
【0068】
また、空間部の距離及び紐状体7への荷重が少ない場合は、巻回ドラム4、調整ドラム6への紐状体7の巻回方法を交差することなく巻回することも可能である(図4参照)。
【0069】
さらに、駆動軸3に径の相違する巻回ドラム4を2個以上設けた場合は、複数の固定軸5に径の相違する2個以上の調整ドラム6Aを設け、それぞれに別の紐状体7を架け渡し、その幅を調整ドラム6Aで調整しながら移動することで、複数の紐状体7を同時に移動幅間を調整してループ移動することも可能である(図10参照)。
【0070】
また、ウインチを用いた吊張体の移動するシステムにおいて上記実施例では、ウインチ1の取り付け位置を一端側に設けたが、例えばループ状の紐状体7の中途部にウインチ1を設けることで、両端側に設けた滑車8間でそれぞれ紐状体7の移動幅間を調整してループ移動することができる。この際、本願発明のウインチ1は、巻回ドラム4の設けられた駆動軸3の両側に固定軸5と調整ドラム6を設け、1本の紐状体7を巻回移動することも可能である。このシステムを用いると、巻回ドラム4と滑車8間との設置距離を分割して短くすることができるので空間部の広さ又は紐状体7の吊り張り方向の多様性をさらに広げることが可能となる(図11参照)。
【0071】
また、ウインチを用いた吊張体の移動するシステムにおいて上記実施例では、ウインチ1を対向する側面に設置したが、本願発明においてウインチ1の設置位置は上記実施例に限定されるものでなく、例えば、ウインチ1を床面側に設置し両端側に設けた滑車8間とで紐状体7を巻回移動することも可能である。この場合は、ウインチ1におけるメンテナンス作業を床面側で行うことができるので、その作業が容易で、安全性にとんだ作業を行うことができる。
【0072】
次に、本願発明のウインチを用いた吊張体の移動するシステムの他実施例について説明する。
【0073】
本システムに使用するウインチ1は、ウインチ本体2に2本の駆動軸3を平行に設け、該駆動軸3にそれぞれ巻回ドラム4を取り付ける、この際、一方の巻回ドラム4の直径を利用して紐状体7の移動幅間を調整する(図13参照)。
【0074】
移動幅間を調整する場合は、一方の巻回ドラム4を取り替えるか、又はウインチ1の近傍に2個の調整ローラー21を設けることで幅を広げることが可能である(図14参照)。
【0075】
上記ウインチ1を用いて、紐状体7を移動する場合は、ウインチ1で調整された移動幅間を複数のローラーで維持した後、ループ状に移動し、直接又は間接的に設けられた吊張体9を開閉移動する(図15、図16参照)。
【0076】
また、紐状体7の取り入れ側と取り出し側とが相違する場合は、各巻回ドラム4の近傍に固定軸5を設け、径の小さな調整ドラム6Aを設けることで、対応することが可能となる(図6参照)。
【0077】
また、ウインチ本体2を固定軸5に設けられた調整ドラム6Aを取り付けるスペース2Aと、駆動軸3に巻回ドラム4の設けられた部分とに分割できる構成にすることで、スペース2Aを巻回ドラム4と少しの距離をおいて調整することも可能である(図9参照)。
【0078】
また、ウインチ1を、ウインチ本体2に設けられた複数の駆動軸3と、それぞれの駆動軸3に取り付けられた巻回ドラム4とで構成することで、駆動軸3間を調整し、巻回ドラム4に巻回された紐状体7の取り入れ側と取り出し側との幅Lを調整することも可能である。この場合、ウインチ本体2に設けられた駆動軸3間の調整のみに限定されず、それぞれの巻回ドラム4の径を変更することでも紐状体7の取り入れ側と取り出し側との幅Lを調整することができる。
特に、ウインチ1を地面又は床面に設置した場合において、紐状体7を上方に移動する場合は、紐状体7の取り入れ側と取り出し側との幅Lの調整が容易に行うことができる(図17参照)。
【符号の説明】
【0079】
2…ウインチ本体、4…巻回ドラム、6…調整ドラム、7…紐状体、9…吊張体
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のウインチを用いて架設間でワイヤロープ等の紐状体を移動することで、ワイヤロープ等の紐状体に設けられたネット又はシート等の吊張帯を移動して空間部を区画するウインチ及びウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
球技の試合、球技の練習用として使用する屋内(例えば、ドーム型の球場、長・正方形状の屋内練習場等)又は屋外(例えば、外周に支柱を立設し支柱間にネット等を取り付けることで空間部を確保した屋外型練習施設、ゴルフの練習場、ワイヤー式テント等)の各施設は使用する球技の種類、練習方法、試合、飛来する球の種類、又は天気等の状況に応じてネット又はシートを用いてその空間部を複数に間仕切り、区画用、防球用又は雨天用として設置することで、有効に使用している。
【0003】
上記間仕切り、区画用又は防球用等として使用するネット又はシートの開閉移動は、ネット又はシートを無端状のウインチで回転駆動するワイヤーロープに連結して直接的に移動するか、又はネット又はシートを別のワイヤーロープに移動自在に設け連結具を介して無端状のウインチで回転駆動するワイヤーロープに連結することで間接的に移動する方法が使用されている。
【0004】
この移動に使用するウインチとしては、無端状のウインチが使用されている。本願発明における無端状のウインチの基本構成は、ウインチ本体部分と駆動源(モーター)部分とから構成され、ウインチ本体には駆動源に間接又は直接的に連結するための駆動軸と駆動軸に取り付けられ駆動軸の回転駆動を伝達する巻回ドラムと巻回ドラムの近傍に設けられた案内手段(ワイヤーロープを巻回ドラムに案内移動する、案内ドラム、案内ガイド等)とから構成されている。
【0005】
上記構成の無端状のウインチでは、ワイヤーロープにかかるネット又はシートの荷重によりワイヤロープに弛みや撓みが発生し、巻回ドラムの駆動を無駄なくワイヤーロープに伝えることができない。そこで、巻回ドラムの外周面にローラーチェーンを設け、案内ドラム及び案内ガイドとによりワイヤロープを挟持した状態で巻回ドラム側へ移動した後、ワイヤロープを巻回ドラムの外周面に形成された溝にローラーチェーンで押圧しながら案内ドラムの回転に沿って移動し、再度案内ドラム及び案内ガイドとにより挟持された状態でワイヤロープを取り出し移動することでワイヤロープを移動するウインチが考えられた。(特許公報1)
【0006】
即ち、ウインチ側ではワイヤロープの取り入れ側と取り出し側との移動間を狭めるように外側より押圧し、駆動軸の動力を無駄なくワイヤロープに伝え、スムーズなワイヤロープの移動を可能としている。
【0007】
次に、上記間仕切り、又は区画用として使用するネット又はシートの移動システムとしては、所望の空間部に複数の滑車を用いてループ状にワイヤロープを平行又は斜め方向に架設し、ワイヤロープに沿って並行に吊り張りしたガイドワイヤーにリング体を介してネット又はシートを吊り張りし、ネット又はシートの先端側を連結具を介してワイヤロープに連結し、ループ状のワイヤロープの一端側にワイヤロープ移動用の無端状のウインチを設けたシステムが公知である。
【0008】
そして、このシステムは無端状のウインチを上記(ウインチでの説明)のように駆動し、ワイヤロープを滑車に沿ってループ状に移動してネット又はシートの先端側を引っ張ることで、ガイドワイヤーに沿って移動したネット又はシートで所望の空間部を平行又は斜め方向に間仕切り又は区画し、また、逆方向に無端状のウインチを駆動することで、ネット又はシートで所望の空間部を平行又は斜め方向に開放する。(特許公報2)
【0009】
また、ワイヤー式テントの場合は、屋根部分をシートで覆うべく複数のワイヤロープを滑車に沿ってループ状に移動し、該ワイヤロープ間に設けられたシートを並行に移動して屋根部分を開閉している。
【0010】
上記各場合において、並行又は斜め方向でループ状に架設したワイヤロープの移動幅間は、別体として取り付けられた滑車の径を利用しての移動幅を維持している。
【特許公報1】
特開2007−63013号公報
【特許公報2】
特開2002−17933号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記間仕切り、又は区画用等として使用している無端状のウインチは、ワイヤーロープの重量及び伸びを考慮してワイヤロープを案内ドラム及び案内ガイドで挟持し、ワイヤロープに発生する弛みや撓みを解消しながら移動することを主目的としているために、ウインチの近傍部分でウインチへのワイヤロープの取り入れ側及び取り出し側の移動幅間をできるだけ狭め、その狭まった状態でウインチ側のワイヤロープを移動しているために、ウインチ部分ではワイヤロープ間の自在な移動幅間の調整ができない。
【0012】
また、ウインチの近傍にワイヤロープの移動間を調整するための径の大きな滑車を設置すると、ウインチの取り入れ側及び取り出し側で狭めるように押圧した後、直ぐに滑車で移動幅を広げることとなり、ワイヤロープに連続した逆の負荷をかけるために、連続して使用するとワイヤロープに疲労性の磨耗等が発生し、安全面を考慮すると頻繁なワイヤロープの交換等のメンテナンスが必要である。
【0013】
また、ループ状にワイヤロープを架設するシステムの場合は、複数の滑車を使用することでワイヤロープの移動間の距離を維持しているが、滑車の設置できない空間部でのワイヤロープの架設においては、ワイヤロープの一方側の滑車で幅調整しなければならず、架設したワイヤロープの長さにより中途部でワイヤロープが絡まったり又は接触したりしてスムーズなワイヤロープの移動ができないという問題点があった。
【0014】
また、滑車の取り付けは屋内空間部の天井側、又は屋外の支柱の上部側で行う必要があるために、危険性が高く、メンテナンス時の取り外し作業時に時間がかかるという欠点があった。
【0015】
また、ウインチの巻回ドラムそのものの径を拡径してワイヤロープの移動間の幅を調整することも考えられるが、ワイヤロープの自重やワイヤロープにかかるネット等の荷重によりワイヤロープには弛みや撓みが発生しやすくスムーズなワイヤロープの移動ができない。
【0016】
また、複数のワイヤロープをループ状に架設する場合は、それぞれ別のウインチを使用するか、又は複数の巻回ドラムの設けられたウインチを使用してワイヤロープを移動するが、全てのワイヤロープの移動間の距離の維持を一定に保たなければ、1つのワイヤロープのトラブルが他のループ状に架設したワイヤロープの移動に影響を及ぼし、ネット等の移動ができないという問題点があった。
【0017】
そこで、本発明は、ワイヤロープの移動間の幅を維持し、スムーズで、安全性が高いウインチ及び該ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記課題を解決するためのウインチの第1の解決手段は請求項1に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体又は/及びその近傍には、巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、課題を解決するためのウインチの第2の解決手段は、請求項2に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体には、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設け、且つ一方の巻回ドラムの径を利用して、又は各巻回ドラム間の距離を利用して巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整することを特徴とする。
【0020】
また、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの第1の解決手段は、請求項3に記載のように、屋内外の所望の箇所に架設されたワイヤロープ等の紐状体の一方側端部に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動し、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設されたワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とする。
【0021】
また、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの第2の解決手段は、請求項4に記載のように、屋内外の所望の箇所に架設された複数のワイヤロープ等の紐状体に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた複数の巻回ドラム又は多数溝の巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、各巻回ドラム又は多数溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動しワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設された複数のワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をそれぞれウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながら複数のワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0022】
次に、本願発明のウインチ、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの作用及び効果について記載する。
【0023】
本願発明のウインチの第1の解決手段の作用及び効果について説明する。先ず、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面にワイヤロープ等の紐状体を架設し、ワイヤロープ等の紐状体の一方の端部に無端状のウインチを取り付け、他方の端部に弾性体によりテンションの設けられワイヤロープ等の紐状体の移動幅間と同一の径を有する滑車を取り付け、その後、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又はワイヤロープ等の紐状体に平行して設けられたガイド用のワイヤロープ等の紐状体を介して間接的にネット又はシート等の吊張体の上端部側を移動自在に取り付ける。
【0024】
この状態で無端状のウインチの駆動軸を駆動し、駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向(ネット又はシート等の吊張体の吊り張り方向)に回転すると巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動しワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体を吊り張り方向に移動する。
【0025】
これにより、ネット又はシート等の吊張体を所望の空間部にワイヤロープ等の紐状体を介して吊り張りする。
【0026】
次に、上記巻回ドラムを逆方向(ネット又はシート等の吊張体の収納方向)に回転すると、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間でループ状に巻回移動し、ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体を上記と逆方向に移動する。
【0027】
これにより、ネット又はシート等の吊張体を元の位置に移動し、空間部を開放する。
【0028】
この際、本願発明のウインチ本体にはワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられているために、架設したワイヤロープ等の紐状体はウインチ本体部分で移動幅間の幅調整が行え、巻回移動がスムーズに行える。
【0029】
次に、本発明のウインチの第2の解決手段の作用及び効果について説明する。先ず、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面とその中間部に、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設けた無端状のウインチを設け、各巻回ドラム間及び空間部間にワイヤロープ等の紐状体を架設し、無端状のウインチを駆動することで少なくとも2以上の巻回ドラムを回転駆動し、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム間及び空間部間で移動する。この際、ワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み側と取り出し側との幅を一方の巻回ドラムの径を利用して、自在に調整することができる。
【0030】
これにより、ネット又はシート等の吊張体を所望の空間部にワイヤロープ等の紐状体を介して吊り張りする。
【0031】
次に、上記各巻回ドラムを逆方向(ネット又はシート等の吊張体の収納方向)に回転すると、各巻回ドラム間に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動し、ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体を上記と逆方向に移動し、ネット又はシート等の吊張体を元の位置に移動し、空間部を開放する。
【0032】
また、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設けた無端状のウインチを設け、各巻回ドラム間及び空間部間にワイヤロープ等の紐状体を架設し、無端状のウインチを駆動することで少なくとも2以上の巻回ドラムを回転駆動し、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム間及び空間部間で移動する際、ワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み側と取り出し側との幅を各巻回ドラム間の幅を利用して、自在に調整することも可能である。
【0033】
このように、同時に少なくとも2以上の巻回ドラムを回転駆動することで架設されたワイヤロープ等の紐状体を移動しネット又はシート等の吊張体をより強い駆動力で移動することができる。
【0034】
しかも、少なくとも2以上の巻回ドラムの一方の巻回ドラムの径を利用してワイヤロープ等の紐状体間の幅を自在に調整することができるので、その利用範囲を格段に広げることが可能となる。
【0035】
上記各解決手段の無端状のウインチには、巻回ドラムに巻回するワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への、取り込み側と取り出し側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられているために、ワイヤロープ等の紐状体の移動間の幅を調整した状態で直接ワイヤロープ等の紐状体を移動することができ、ネット又はシート等の吊張体の荷重にかかわらずワイヤロープ等の紐状体をスムーズに移動することができる。
【0036】
しかも、無端状のウインチにより直接ワイヤロープ等の紐状体の移動幅間を調整するために、従来のように、幅を調整する別体の滑車を設置するためのスペースを必要とすることなく設置でき、ワイヤロープ等の紐状体の設置対応を格段に広げることができ、安全性にとんだ架設の施工方法を選択することができる。
【0037】
また、メンテナンスにおいても安全性にとんだ架設の施工方法が選択されているためにウインチ等の取り替え作業を容易に行うことができる。
【0038】
次に、ウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの作用及び効果について説明する。
【0039】
先ず、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面にワイヤロープ等の紐状体を架設し、ワイヤロープ等の紐状体の一方の端部に上記無端状のウインチを取り付け他方の端部に弾性体によりテンションの設けられワイヤロープ等の紐状体の移動幅の径を有する滑車を取り付けその後、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して複数のネット又はシート等の吊張体の上端部側を直接又はワイヤロープ等の紐状体に平行して設けられたガイド用のワイヤロープ等の紐状体を介して間接的に取り付ける。
【0040】
この状態で無端状のウインチの駆動軸を回転駆動し駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向(ネット又はシート等の吊張体の吊り張り方向)、又は逆方向(ネット又はシート等の吊張体の収納方向)に回転することで、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動して、該ワイヤロープ等の紐状体に直接又は間接的に設けられた複数のネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って移動する。
【0041】
これにより、ネット又はシート等の吊張体で所望の空間部を開閉することができる。
【0042】
この際、架設されたワイヤロープ等の紐状体の取り込み側と取り出し側との移動幅間を一端のウインチ側、他端の滑車、及びループの所望の中途部で一定に維持するように調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することで移動幅を常に一定に保ちながらループ状にワイヤロープ等の紐状体を移動することができる。
【0043】
また、屋内外の空間部の所望の箇所である、対向する側面、又は傾斜のある側面の所望の箇所に無端状のウインチを取り付け、該ウインチの駆動軸に取り付けられた複数の巻回ドラムと間仕切り等する複数の側面側とにワイヤロープ等の紐状体をループ状に架設する。その後、巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転することで、各巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間でループ状に移動し、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉方向に移動する。
【0044】
この際も、架設されたワイヤロープ等の紐状体の取り込み側と取り出し側との移動幅間を無端状のウインチ側で調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することで、移動幅を常に一定に保ちながらワイヤロープ等の紐状体を移動することができる。
【0045】
このように、本発明は、架設されたワイヤロープ等の紐状体の移動幅を一定状態に調整した状態で移動することができるために、ネット等の荷重がワイヤロープ等の紐状体にかかる場合であっても、スムーズなワイヤロープ等の紐状体の移動を行うことができる。
【0046】
また、無端状のウインチの取り付け作業も容易で安全性にとんだ作業を行うことができ、メンテナンス等においも、時間を要することなく短時間で行える。
【0047】
しかも、ウインチ部分でのワイヤロープ等の紐状体の押圧を従来に比し、少なくてすみワイヤロープ等の紐状体への磨耗も少なくそのメンテナンスを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例である幅調整手段の設けられたウインチ本体を示す概略説明図
【図2】図1にワイヤロープ等の紐状体の離脱防止体が設けられたウインチ本体を示す概略説明図
【図3】図1の幅調整手段の他実施例を示す概略説明図
【図4】図1のウインチ本体へのワイヤロープ等の紐状体を巻回した状態の相違する幅調整手段を示す概略説明図
【図5】図1の幅調整手段の他実施例を示す概略説明図
【図6】ウインチ本体へのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側と取り出し側とが相違する場合を示す概略説明図
【図7】ウインチ本体と中途部とでワイヤロープ等の紐状体の移動幅間を調整する場合を示す概略説明図
【図8】本発明の無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの一実施例を示す概略説明図
【図9】ワイヤロープ等の紐状体の複数の取り入れ及び取り出し方向を示す概略説明図
【図10】径の相違する2以上の巻回ドラムに複数のワイヤロープ等の紐状体を設け、取り入れ方向と取り出し方向とが相違する場合の幅調整手段を示す概略説明図
【図11】中途部でワイヤロープ等の紐状体の移動幅間を調整する場合を示す概略説明図
【図12】本発明の無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの他実施例を示す概略説明図
【図13】2以上の駆動軸にそれぞれ巻回ドラムを設け、一方の巻回ドラムでワイヤーロープ等の紐状体の幅調整を行うウインチ本体を示す概略説明図
【図14】図15のワイヤーロープ等の紐状体の幅調整の他実施例を示す概略説明図
【図15】図15のウインチ本体を用いてワイヤーロープ等の紐状体の幅調整した状態で移動方向を変更する場合を示す概略説明図
【図16】図15のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムを示す概略説明図
【図17】2個の巻回ドラムを用いたウインチ本体のワイヤロープ等の紐状体の幅調整手段を示す概略説明図
【発明を実施するための最良の実施の形態】
【0049】
以下、本発明のウインチ及びウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムの一実施例について図面を用いて説明する。
【0050】
本発明のウインチにおける第1の実施例について説明する。
【0051】
本発明のウインチ1は、ワイヤーロープ等の紐状体を一方側より取り入れ他方側より取り出し移動する無端状のウインチ1であり、その基本構成はウインチ本体2と駆動源(図示せず)とから構成されている。ここでいう駆動源は、手動(手動用のハンドル)、電動(モーター)又はアシストシステム(手動及び電動含む)を問わず、現在公知の構成を使用し、ウインチ本体2と駆動源との連結も間接的又は直接的を問わす公知の方法で連結されている。
【0052】
ウインチ本体2は、前記駆動源の回転駆動軸に直接又は間接的に連結され、駆動源の回転駆動を伝達するための駆動軸3と、該駆動軸3に取り付けられ、駆動軸3の回転を伝達し、外周縁に沿って略V字状の溝の形成された巻回ドラム4と、巻回ドラム4の近傍に設けられた固定軸5に取り付けられ、フリー状態で回転する調整ドラム6とから構成されている(図1参照)。
【0053】
調整ドラム6の直径Lは、巻回ドラム4で回転移動するワイヤロープ等の紐状体7のループ状の架設状況に応じて、その移動幅間(ウインチ本体2への紐状体7の取り入れ側とウインチ本体2よりの取り出し側との幅間)に対応して設定される。尚、移動幅間を変更する場合は、移動幅間に対応した径の調整ドラム6に変更することで自在に移動幅間を変更することができる。
【0054】
本発明においてワイヤロープ等の紐状体7とは、一般に使用されている金属製のワイヤロープに限定されるものでなく、すでに使用されている強度や耐久性に優れた樹脂製のロープ、又はこれらの組み合わせよりなるロープも含むロープ全体である。以下総称として紐状体7で表す。
【0055】
上記のように構成された本発明の実施例の無端状のウインチ1を用いて、本発明のネット又はシート等の吊張体を移動するシステムについて説明する。ここで、吊張体9としては、屋内の練習施設、屋外のゴルフ練習場等に使用する網目状のネット、紫外線をカットすることを目的とするUVシート、又は屋根部分の開閉式テント等に使用するシート体を表す総称として表す。
【0056】
先ず、吊張体9を移動するシステムは、所望の空間部(屋内の場合は、対向する側面間、円弧状の天井面の場合は斜め上方側間で、屋外の場合は支柱間等)の一端側に無端状のウインチ1を設置し、他端側に各種テンションに連結された滑車8を取り付け、該ウインチ1と滑車8間に紐状体7をループ状に架設する。その後、紐状体7の下端側近傍には、吊張体9が連結具(図示せず)を介して移動自在に設けられたガイド用の紐状体10を紐状体7と並行状態になるように架設する。そして、吊張体9の上端側先端部を紐状体7に連結具(図示せず)を介して固定状態に連結する。
【0057】
ウインチ1への紐状体7の取り付けは、ウインチ本体2に設けられた巻回ドラム3及び調整ドラム5に8の字状に架け渡すことで、調整ドラム6の直径Lを紐状体7のループ状に架設された移動幅間Lとすることができる。従って、適切な移動幅間Lを確認後、移動幅間Lに相当する直径Lの調整ドラム6を取り付けるのみで容易に対応することができる(図2参照)。
【0058】
また、紐状体7の交差する部分を上下2個の離脱防止用としての離脱防止ローラ11を設けることで、巻回ドラム3及び調整ドラム5間で生じる、紐状体7の弛み/撓みにからの離脱を防止することができる。
【0059】
この際、ループ状の紐状体7の所望空間部間の距離が大きい場合には、ループ状の紐状体7の中途部分(状況に応じて、取り付け数を2本以上設けることも可能である。)に天井等よりループ間の移動幅Lを調整維持するために調整ローラー15の設けられた調整吊体14を吊り下げて、ウインチ本体2の調整ドラム6、調整吊体14の調整ローラー15、及び滑車8で紐状体7の移動幅間Lを調整するとともに、紐状体7にかかる荷重(紐状体7の重量及び吊張体9の重量)を分散することで、紐状体7をスムーズに移動することができる。また前記調整吊体14は天井より別体の紐状体20で吊り下げられているために、その長さを巻取式ウインチ(図示せず)等で調整することで紐状体7のループ間のテンションも同時に維持することができる(図7、図8参照)。
【0060】
尚、調整吊体14の吊り下げては、屋外においては支柱間に支持用の紐状体を紐状体7と並行状態になるように架設し、該紐状体に吊り下げることも可能である。
【0061】
この状態で、駆動源を駆動することで駆動軸3を正方向(吊張体9の吊り張り方向)に回転し巻回ドラム4を回転する。これにより紐状体7は調整ドラム6の一方側よりウインチ本体2に取り入れられた後、交差する方向に移動し巻回ドラム4の外周縁の溝に沿って再度交差する方向に移動し、調整ドラム6に他方側より取り出される。この際、紐状体7は調整ドラム6の直径Lによりそのループ状の移動幅間を維持されているために、他端側の滑車8間でスムーズにループ状移動することができる。
【0062】
これにより、紐状体7に上端側先端を連結した吊張体9は吊り張り方向にガイド用の紐状体10に沿って引っ張られ、所望の空間部を間仕切り等することができる。
【0063】
次に、上記駆動軸3を逆方向(吊張体9の収納方向)に回転し巻回ドラム4を回転して、紐状体7を上記と逆方向に調整ドラム6に沿って移動し、上記吊張体9を上記逆の収納方向にガイド用の紐状体10に沿って引っ張られて収納移動し、所望の空間部を開放する。
【0064】
このように、紐状体7をループ状の移動幅間を維持して移動することができるので、紐状体7に吊張体9の大きな荷重がかかる場合であっても、スムーズな紐状体7の移動を行うことができる。
【0065】
従って、ウインチ1部分での紐状体7の磨耗も従来の押圧方式のウインチに比して少なく、使用頻度に応じたメンテナンス作業も少なくすることができる。
【0066】
さらに、ウインチ1を含む吊張体9を移動するシステムの施工時において、ウインチ1と滑車8とを設定することで、紐状体7のループ移動の基本施工ができ、作業時間の短縮が可能で、安全性の面においても格段と向上することができる。特に、屋外において幅調整用の別体の複数の滑車を取り付けるための支柱を増やす必要もなく、空間部の自在な取り付けを可能とする。
【0067】
本願発明において、上記ウインチ本体2に設けられた幅調整手段は上記調整ドラム6に限定されるものでなく、例えば、2個の径の小さい調整ドラム6Aを調整された幅Tで2個の固定軸5に取り付けることで、移動間の幅Lを調整することも可能である(図3参照)。この場合において、ウインチ本体2の調整ドラム6Aを取り付けるスペースに複数の調整孔(図示せず)を設けることで、2個の径の小さい調整ドラム6Aのウインチ本体2への取り付け幅を自在に調整することができる(図9参照)。また、幅調整手段の他の実施例としては例えば板状の案内ガイド6Bの延長に幅調整のガイド取り付けることで、紐状体7の移動幅間を調整し、同様の作用効果を得ることもできる(図5参照)。
【0068】
また、空間部の距離及び紐状体7への荷重が少ない場合は、巻回ドラム4、調整ドラム6への紐状体7の巻回方法を交差することなく巻回することも可能である(図4参照)。
【0069】
さらに、駆動軸3に径の相違する巻回ドラム4を2個以上設けた場合は、複数の固定軸5に径の相違する2個以上の調整ドラム6Aを設け、それぞれに別の紐状体7を架け渡し、その幅を調整ドラム6Aで調整しながら移動することで、複数の紐状体7を同時に移動幅間を調整してループ移動することも可能である(図10参照)。
【0070】
また、ウインチを用いた吊張体の移動するシステムにおいて上記実施例では、ウインチ1の取り付け位置を一端側に設けたが、例えばループ状の紐状体7の中途部にウインチ1を設けることで、両端側に設けた滑車8間でそれぞれ紐状体7の移動幅間を調整してループ移動することができる。この際、本願発明のウインチ1は、巻回ドラム4の設けられた駆動軸3の両側に固定軸5と調整ドラム6を設け、1本の紐状体7を巻回移動することも可能である。このシステムを用いると、巻回ドラム4と滑車8間との設置距離を分割して短くすることができるので空間部の広さ又は紐状体7の吊り張り方向の多様性をさらに広げることが可能となる(図11参照)。
【0071】
また、ウインチを用いた吊張体の移動するシステムにおいて上記実施例では、ウインチ1を対向する側面に設置したが、本願発明においてウインチ1の設置位置は上記実施例に限定されるものでなく、例えば、ウインチ1を床面側に設置し両端側に設けた滑車8間とで紐状体7を巻回移動することも可能である。この場合は、ウインチ1におけるメンテナンス作業を床面側で行うことができるので、その作業が容易で、安全性にとんだ作業を行うことができる。
【0072】
次に、本願発明のウインチを用いた吊張体の移動するシステムの他実施例について説明する。
【0073】
本システムに使用するウインチ1は、ウインチ本体2に2本の駆動軸3を平行に設け、該駆動軸3にそれぞれ巻回ドラム4を取り付ける、この際、一方の巻回ドラム4の直径を利用して紐状体7の移動幅間を調整する(図13参照)。
【0074】
移動幅間を調整する場合は、一方の巻回ドラム4を取り替えるか、又はウインチ1の近傍に2個の調整ローラー21を設けることで幅を広げることが可能である(図14参照)。
【0075】
上記ウインチ1を用いて、紐状体7を移動する場合は、ウインチ1で調整された移動幅間を複数のローラーで維持した後、ループ状に移動し、直接又は間接的に設けられた吊張体9を開閉移動する(図15、図16参照)。
【0076】
また、紐状体7の取り入れ側と取り出し側とが相違する場合は、各巻回ドラム4の近傍に固定軸5を設け、径の小さな調整ドラム6Aを設けることで、対応することが可能となる(図6参照)。
【0077】
また、ウインチ本体2を固定軸5に設けられた調整ドラム6Aを取り付けるスペース2Aと、駆動軸3に巻回ドラム4の設けられた部分とに分割できる構成にすることで、スペース2Aを巻回ドラム4と少しの距離をおいて調整することも可能である(図9参照)。
【0078】
また、ウインチ1を、ウインチ本体2に設けられた複数の駆動軸3と、それぞれの駆動軸3に取り付けられた巻回ドラム4とで構成することで、駆動軸3間を調整し、巻回ドラム4に巻回された紐状体7の取り入れ側と取り出し側との幅Lを調整することも可能である。この場合、ウインチ本体2に設けられた駆動軸3間の調整のみに限定されず、それぞれの巻回ドラム4の径を変更することでも紐状体7の取り入れ側と取り出し側との幅Lを調整することができる。
特に、ウインチ1を地面又は床面に設置した場合において、紐状体7を上方に移動する場合は、紐状体7の取り入れ側と取り出し側との幅Lの調整が容易に行うことができる(図17参照)。
【符号の説明】
【0079】
2…ウインチ本体、4…巻回ドラム、6…調整ドラム、7…紐状体、9…吊張体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体又は/及びその近傍には、巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられていることを特徴とするウインチ。
【請求項2】
ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体には、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設け、且つ一方の巻回ドラムの径を利用して、又は各巻回ドラム間を距離を利用して巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整することを特徴とするウインチ。
【請求項3】
屋内外の所望の箇所に架設されたワイヤロープ等の紐状体の一方側端部に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動し、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設されたワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とするウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システム。
【請求項4】
屋内外の所望の箇所に架設された複数のワイヤロープ等の紐状体に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた複数の巻回ドラム又は多数溝の巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、各巻回ドラム又は多数溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動しワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設された複数のワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をそれぞれウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながら複数のワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とするウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システム。
【請求項1】
ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体又は/及びその近傍には、巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整するための幅調整手段が設けられていることを特徴とするウインチ。
【請求項2】
ワイヤロープ等の紐状体を巻回移動するための巻回ドラム、巻回ドラムを回転駆動するための駆動軸、駆動軸の設けられたウインチ本体とから構成された無端状のウインチにおいて、ウインチ本体には、ワイヤロープ等の紐状体の移動方向の前後位置に巻回ドラムを少なくとも2以上設け、且つ一方の巻回ドラムの径を利用して、又は各巻回ドラム間を距離を利用して巻回ドラムに巻回したワイヤロープ等の紐状体のウインチ本体への取り込み移動側と取り出し移動側との移動幅間を調整することを特徴とするウインチ。
【請求項3】
屋内外の所望の箇所に架設されたワイヤロープ等の紐状体の一方側端部に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動し、ワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設されたワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながらワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とするウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システム。
【請求項4】
屋内外の所望の箇所に架設された複数のワイヤロープ等の紐状体に設けられた無端状のウインチの駆動軸を回転駆動することで駆動軸に取り付けられた複数の巻回ドラム又は多数溝の巻回ドラムを正方向又は逆方向に回転し、各巻回ドラム又は多数溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を架設間で移動しワイヤロープ等の紐状体に連結手段を介して直接又は間接的に設けられたネット又はシート等の吊張体をワイヤロープ等の紐状体に沿って開閉移動する無端状のウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システムにおいて、架設された複数のワイヤロープ等の紐状体の移動幅間をそれぞれウインチ側又は/及び架設された中途部間で調整しながら複数のワイヤロープ等の紐状体を移動することを特徴とするウインチを用いたネット又はシート等の吊張体の移動システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−242106(P2009−242106A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122744(P2008−122744)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【特許番号】特許第4341057号(P4341057)
【特許公報発行日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(592206156)東田商工株式会社 (54)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【特許番号】特許第4341057号(P4341057)
【特許公報発行日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(592206156)東田商工株式会社 (54)
[ Back to top ]