説明

ウェットチップアンテナの改良された設計

【課題】マイクロ波エネルギー送出デバイスの径全体を大口径化することなく、適切な供給流体経路および戻り流体経路を提供する。
【解決手段】フィードライン20、照射部、流入ハイポチューブ55、パック46、移動カラー53およびスリーブ2を備えるマイクロ波アンテナ40。フィードライン20は、内部導体50、外側導体56、誘電体52を含む同軸ケーブルを有する。照射部は、フィードライン20に結合されたダイポールアンテナ40とトロカールを有する。流入ハイポチューブ55は、放射部18に流体を供給する。パック46は、流入スロットが画定される2つのリブを有する。移動カラーは、少なくとも2つの流出スロットを有する。スリーブ2は、移動カラー53の2つの流出スロット、パック46および照射部の先端を覆い、流出スロットの基端にある移動カラー53と流体密的封止を形成し、流体を照射部の先端に移動させるための隙間を画定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、組織アブレーション手技に使用されるマイクロ波アプリケータに関する。より詳細には、本開示は、改良型のチョークウェットチップアブレーションアンテナを対象としている。
【背景技術】
【0002】
ある種の疾患の治療においては、悪性組織増殖物(腫瘍など)の破壊を必要とする。腫瘍細胞は、周囲の健常細胞に害を与える温度をわずかに下回る高い温度で変性することが知られている。このため、温熱療法などの公知の治療法は、腫瘍細胞を41℃を超える温度に加熱する一方、隣接する健常細胞を、細胞に不可逆な損傷を与えるのを防ぐために低い温度に保つ。このような方法では、電磁放射を照射して組織を加熱し、組織のアブレーションおよび凝固を行う。より詳細には、マイクロ波エネルギーを使用して、組織を凝固および/または切断し、ガン細胞を変性または壊死させる。
【0003】
マイクロ波エネルギーは、腫瘍に到達するために組織を貫通するマイクロ波アブレーションアンテナを介して照射される。モノポール、ダイポールなど、マイクロ波アンテナは数種類存在する。モノポールアンテナおよびダイポールアンテナでは、マイクロ波エネルギーが導体の軸から垂直に放射される。モノポールアンテナは1本の長尺状のマイクロ波導体を有する。ダイポールアンテナは、通常、誘電部分によって分離されている内側導体と外側導体とを備える同心円状の構造を有する。より詳細には、ダイポールマイクロ波アンテナは、アンテナの長手方向軸に沿って延び、外側導体によって囲まれている細長く薄い内側導体を有しうる。一部の変形例では、エネルギーをより効率的に外に放射させるために、外側導体の少なくとも一部分が選択的に除去されてもよい。この種類のマイクロ波アンテナ構造は、通常、「漏洩波」または「漏洩同軸」アンテナと呼ばれる。
【発明の概要】
【0004】
典型的な組織穿通型の(すなわち経皮挿入型の)マイクロ波エネルギー送出デバイスは、デバイスの軸に沿って延びる、長く薄い内側導体によって形成された送信部を備える。内側導体は、誘電材料によって囲まれており、外側導体は、誘電材料に対して径方向に設けられ、マイクロ波信号を送るための同心円状の導波路を形成している。外側導体の送信部の先端は、送信部からマイクロ波信号を受信し、マイクロ波エネルギー信号を組織に照射するように構成されたマイクロ波アンテナに接続している。
【0005】
送信部分の少なくとも一部および/またはマイクロ波アンテナを、強度の高いジャケットで囲むことにより、マイクロ波エネルギー送出デバイスに構造的強度が付与されている。高強度のジャケットの先端は、組織を貫通するために、尖先端部に接続されているか、または尖先端部を形成してもよい。
【0006】
マイクロ波アンテナ送出デバイスが経皮的挿入により治療点に直接挿入される侵襲的手技が開発されてきた。このような侵襲的手技は、治療対象の組織の温度をより良好に制御できる可能性がある。悪性細胞を変性させるのに必要な温度と健常細胞に有害な温度との間にはわずかな差しかないため、加熱が治療対象の組織に限定されるように既知の加熱パターンおよび予測可能な温度制御が重要である。例えば、約41.5℃のしきい値温度の温熱療法は、通常、細胞の悪性の成長にほとんど効果がない。しかし、約43℃〜45℃の範囲を超えるごく高い温度では、ほとんどの種類の健常細胞への熱損傷が日常的に観察されるため、健常組織ではこの温度を超えないように十分な注意を払わなければならない。
【0007】
加熱を制御し、周辺組織が高温になるのを阻止するために開発されたシステムおよび方法は、マイクロ波エネルギー送出デバイスの少なくとも一部を循環する冷却用流体を有する。例えば、あるシステムにおいては、冷却用流体が、薄いチューブを介してマイクロ波エネルギー送出デバイスの先端に供給される。薄いチューブがマイクロ波アンテナの近傍に冷却用流体を配置させ、冷却用流体がマイクロ波エネルギー送出デバイスの戻り経路を通って基端方向に流れる。
【0008】
マイクロ波エネルギー送出デバイスに冷却を与えるうえで課題がいくつか存在する。1つ目の課題は、マイクロ波エネルギー送出デバイスの径全体を大口径化することなく、マイクロ波エネルギー送出デバイスに、適切な供給流体経路および戻り流体経路を提供することである。別の課題は、マイクロ波エネルギー送出デバイス全体に同心円構成を維持しつつ、適切な供給流体経路および戻り流体経路を提供することである。更に別の課題は、組立および製造を簡素化する適切な構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に記載するマイクロ波エネルギー送出デバイスは、マイクロ波エネルギー送出デバイスの径全体を大口径化することなく、当該デバイスの全長にわたって実質的に同心円の形状を有する流体冷却デバイスを形成するアセンブリを備える。
【0010】
補助なしに組織に直接挿入するのに構造的に十分堅固な装置およびマイクロ波エネルギー送出デバイスを製造するための方法をここに記載する。前記マイクロ波アンテナは一般に、ケーブルによって発生器等の電源に接続されうるフィードライン(またはシャフト)に接続されうる放射部を備える。前記マイクロ波アセンブリは、モノポールマイクロ波エネルギー送出デバイスでもよいが、好ましくはダイポールアセンブリである。前記放射部の前記端部は、組織への挿入抵抗を最小限に押さえるために、先端にテーパ端を好ましくは有する。前記基端は、前記端部の基端に存在する。
【0011】
外側ジャケットの壁厚を0.010インチ未満とごく薄く維持しつつ、アンテナセンブリを補助なしで組織に直接(例えば、経皮的に)挿入するのに必要な、適切な硬さは、一部では、各種の異なる設計により得られる。マイクロ波設計の実施形態は、同軸ケーブルを有する。前記同軸ケーブルは、内部導体、外側導体、ならびに前記内部導体および前記外側導体の間に配置された誘電絶縁体を含む。前記照射部は、前記フィードラインに結合されたダイポールアンテナ、およびダイポールアンテナの先端で前記ダイポールアンテナに結合されたトロカールを有する。前記マイクロ波アンテナは、前記外側導体の周囲に配置された流入ハイポチューブを更に有する。前記流入ハイポチューブは、前記放射部に流体を供給する。前記流入ハイポチューブにより、強度を高めることが可能となり、マイクロ波アンテナの外側ジャケットの必要な壁厚を薄くすることができる。
【0012】
一実施形態では、前記マイクロ波アンテナは、フィードライン、照射部、流入ハイポチューブ、パック、移動カラーおよびスリーブを備える。前記フィードラインは、内部導体、外側導体、ならびに前記内部導体および前記外側導体の間に配置された誘電体を含む同軸ケーブルを有する。前記照射部は、前記フィードラインに結合されたダイポールアンテナと前記ダイポールアンテナの前記先端に結合されたトロカールとを有する。前記流入ハイポチューブは、前記外側導体の周囲に配置され、前記放射部に流体を供給するように構成されている。前記パックは、前記第1端から前記第2端に延びる2以上のリブを有する。前記リブは、2つの隣接するリブ間に流入スロットを画定している。前記移動カラーは前記流入ハイポチューブの前記先端に結合され、前記パックは前記基端に少なくとも2つの流出スロットを有する。前記移動カラーは、前記流入ハイポチューブの先端から流体を受け容れ、前記流出スロットからの前記流体を前記照射部の先端に移動させるように構成されている。前記スリーブは、前記移動カラーの前記流出スロット、前記パックおよび前記照射部の少なくとも前記先端を覆っている。前記スリーブは、前記流出スロットの基端にある前記移動カラーと第1の流体密的封止を形成し、前記移動カラーの前記流出スロットを出るように、前記流体を前記照射部の前記先端に移動させるための第1の隙間を画定する。前記スリーブはポリイミドスリーブでもよい。
【0013】
前記マイクロ波アンテナは、前記フィードラインの先端に対して基端を囲む外側ジャケットと、外側ハイポチューブとを有する。前記外側ジャケットは、前記トロカールおよび/または照射部の前記先端と流体密的封止を形成しており、前記第1の隙間からの流体を受け容れるための第2の隙間を画定している。前記外側ハイポチューブは、前記フィードラインの前記基端で前記流入ハイポチューブを囲み、前記流入ハイポチューブに対して配置される第3の隙間を画定している。前記外側ハイポチューブは、前記外側ハイポチューブに画定された1以上のスロットを有し、1以上のスロットの基端に存在する前記外側ジャケットと流体密的封止を形成する。前記1以上のスロットは、前記流体が、前記第2の隙間から前記マイクロ波アンテナを通って前記第3の隙間に基端方向に流れるように構成されている。
【0014】
別の実施形態では、前記流入ハイポチューブおよび/または前記外側ハイポチューブは、ステンレス鋼から、Polygonが製造しているPolyMed(登録商標)等の非金属複合材料から製造される。前記外側ハイポチューブおよび前記流入ハイポチューブの壁厚は約0.010インチ未満でもよい。前記マイクロ波アンテナは、前記フィードラインの基端部分を部分的に囲むように構成されたチョークを更に有してもよい。
【0015】
更に別の実施形態では、前記パックは、前記外側導体の周囲に水密的封止を形成するために、前記製造工程中に射出成形される。前記移動カラーは、前記流入ハイポチューブと流体密的封止を形成するために、前記流入ハイポチューブ上に圧入されうる。
【0016】
更に別の実施形態では、前記マイクロ波アンテナは、前記フィードラインに結合されたケーブルコネクタを有する接続ハブ、そこに画定された入口流体ポートおよび出口流体ポートと、前記ケーブルコネクタの基端の流体を前記出口流体ポートに移動させるように構成されたバイパスチューブとを有する。流入チューブは、前記入口流体ポートに前記流体を供給するために前記入口流体ポートに結合され、流出チューブは、前記出口流体ポートから流体を引き出すために、前記出口流体ポートに結合され、かつ流体的に連通していてもよい。
【0017】
また、マイクロ波アンテナを製造するための方法もここに開示され、前記方法は、内部導体、外側導体、ならびに前記内部導体および前記外側導体の間に配置された誘電体を含む同軸ケーブルを有するフィードラインを提供するステップと、前記フィードラインの先端に、ダイポールアンテナを有する照射部を結合するステップと、前記ダイポールアンテナの先端にトロカールを結合するステップと、前記放射部に流体を供給するように構成された流入ハイポチューブを前記外側導体の周囲に配置するステップと、先端および基端を有する前記照射部の少なくとも一部の周囲に、前記マイクロ波アンテナに機械的強度を与えるための2以上の長尺リブを有し、前記2以上のリブは、前記先端から前記基端に延び、2つの隣接するリブ間に流入スロットを画定しているパックを配置するステップと、前記流入ハイポチューブの先端と前記パックの基端との間に、前記流入ハイポチューブの先端から流体を受け容れ、前記少なくとも2つの流出スロットからの前記流体を前記照射部の先端に移動させるように構成された移動カラーを配置するステップと、前記移動カラーの前記少なくとも2つの流出スロット、前記パックおよび前記照射部の少なくとも前記先端を覆うためにスリーブを配置するステップと、を有し、前記スリーブは、前記少なくとも2つの流出スロットの基端にある前記移動カラーと第1の流体密的封止を形成し、前記移動カラーの前記少なくとも2つの流出スロットを出るように、前記流体を前記照射部の前記先端に移動させるための第1の隙間を画定する。
【0018】
前記製造ステップは、前記フィードラインの前記先端の径方向外側に存在し、前記トロカールおよび前記照射部の先端の一方と流体密的封止を形成し、前記第1の隙間からの流体を受け容れるための第2の隙間を画定している外側ジャケットを配置するステップと、前記流入ハイポチューブの径方向外側に存在し、前記流入ハイポチューブに対して第3の隙間を画定する外側ハイポチューブを配置するステップと、を更に有し、前記外側ハイポチューブは、前記外側ハイポチューブに画定された少なくとも1つのスロットを有し、前記少なくとも1つのスロットの基端に存在する前記外側ジャケットと流体密的封止を形成し、前記少なくとも1つのスロットは、流体が、前記第2の隙間から前記マイクロ波アンテナを通って前記第3の隙間に基端方向に流れるように構成されている。
【0019】
本開示の上記ならびに他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ下記の詳細な説明を参照すれば更に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本開示の一実施形態に係るマイクロ波アブレーションシステムの模式図である。
【図2】本開示の一実施形態に係るマイクロ波エネルギー送出デバイスの先端の等角図である。
【図3A】図2のマイクロ波エネルギー送出デバイスのフィードライン部の長手方向断面図である
【図3B】図2の3B−3Bにおける横断面図である。
【図4】本開示に係る同心円状の流入チャネルおよび流出チャンネルを示すマイクロ波エネルギー送出デバイスの先端の斜視図である。
【図5】図4に示したマイクロ波エネルギー送出デバイスの先端の分解図である。
【図6】マイクロ波エネルギー送出デバイスのフィードライン部の先端部分の断面図である。
【図7A】本開示の一実施形態に係るマイクロ波エネルギー送出デバイスの先端部分の横断面図である。
【図7B】本開示の別の実施形態に係るマイクロ波エネルギー送出デバイスの先端部分の横断面図である。
【図8】本開示に係る同心円状の流出チャンネルを示すマイクロ波エネルギー送出デバイスの先端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の特定の実施形態を、添付の図面を参照して本明細書で以下に説明する。以下の説明においては、本開示を不必要に詳しく記載して本発明を不明瞭にすることのないように、公知の機能または構造は詳細に記載することはしない。
【0022】
図1は、マイクロ波エネルギー送出デバイス12、マイクロ波発生器14、および冷却用流体供給部33を備えるマイクロ波アブレーションシステム10を示す。マイクロ波エネルギー送出デバイス12は、可撓性の同軸ケーブル16を介してマイクロ波発生器14に接続され、冷却用流体供給ライン86,88を介して冷却用流体供給部33に接続されている。冷却用流体は、マイクロ波エネルギー送出デバイス12を出て冷却用流体戻りライン88を通り、適切なドレインに排出される。閉回路冷却用流体系では、マイクロ波エネルギー送出デバイス12は冷却用流体戻りライン88を介して冷却用流体供給部33に接続し、冷却用流体が冷却用流体供給部33を通って循環する。開回路冷却用流体系では、冷却用流体戻りライン88は、ドレインまたは他の適切な使い捨て可能なレセプタクルに冷却用流体を溜め、冷却用流体リザーバ36または冷却用流体の他の適切な供給源から冷却用流体供給部に新たな冷却用流体が供給される。
【0023】
マイクロ波エネルギー送出デバイス12は、接続ハブ22、フィードライン20および放射部18を備える。接続ハブ22は、マイクロ波発生器14および冷却用流体供給部33をマイクロ波エネルギー送出デバイス12に接続する。マイクロ波信号は、マイクロ波発生器14によって生成され、接続ハブ22に接続している可撓性の同軸ケーブル16を伝わり、接続ハブ22は、マイクロ波エネルギー信号がフィードライン20に伝わるように促す。更に、接続ハブ22は、フィードライン20との間で冷却用流体の伝達も促す。冷却用流体供給部33のポンプ34から供給される冷却用流体は、冷却用流体供給ライン86を通って接続ハブ22に供給される。接続ハブ22は、冷却用流体供給ライン86から、フィードライン20の冷却用流体供給ルーメン(明示なし)に冷却用流体を送る。マイクロ波エネルギー送出デバイス12のフィードライン20および放射部18を循環した冷却用流体は、フィードライン20の戻りルーメン(明示なし)を通って接続ハブ22に戻される。接続ハブ22は、戻りルーメン(明示なし)から冷却用流体戻りライン88への冷却用流体の送出を促す。
【0024】
一実施形態では、マイクロ波アブレーションシステム10は、冷却用流体戻りライン88が、冷却用流体供給部33のポンプ34に冷却用流体を戻す閉回路冷却系を備える。冷却用流体電源33は、冷却用流体戻りライン88から戻った冷却用流体を冷却してから、戻った冷却用流体の少なくとも一部を、マイクロ波アブレーションシステム10で再循環させる。
【0025】
別の実施形態では、冷却用流体戻りライン88は、適切なドレインおよび/またはリザーバに接続している(例えば、マイクロ波エネルギー送出デバイス12からの冷却用流体が冷却用流体供給部33に戻らない)。冷却用流体供給部33の冷却用流体リザーバ36は、冷却用流体をポンプ34に連続的に供給する。また、冷却用流体リザーバ36が、冷却用流体を所定の温度に保持するように構成された温度制御システムを備えてもよい。冷却剤流体は、任意の適した液体、空気などの気体、あるいはこれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0026】
マイクロ波エネルギー送出デバイス12は、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナおよび/またはヘリカルアンテナなどの任意の適切なマイクロ波アンテナ40を備えうる。マイクロ波発生器14は、約300MHz〜約10GHzの動作周波数内の任意の適したマイクロ波エネルギー信号を供給するように構成されうる。マイクロ波アンテナ40の物理長は、マイクロ波発生器14によって生成されるマイクロ波エネルギー信号の周波数に応じて決まる。例えば、一実施形態では、約915MHzでマイクロ波エネルギー信号を供給するマイクロ波発生器14は、約1.6cm〜約4.0cmの物理長を有するマイクロ波アンテナ40マイクロ波エネルギー送出デバイス12を駆動する。
【0027】
図2は、図1のマイクロ波エネルギー送出デバイス12の先端部の拡大図であり、フィードライン20、基端放射部42および先端放射部44を有する。基端放射部42と先端放射部44とは、ダイポールマイクロ波アンテナ40を形成している。図2に示すように、基端放射部42と先端放射部44とは同一ではなく、これによりアンバランスなダイポールアンテナ40が形成されている。マイクロ波エネルギー送出デバイス12は、一実施形態では、放射部18の先端における組織への挿入抵抗を最小限に押さえるために、先端が先細部26になっているテーパ端24を有する尖先端部48を有する。別の実施形態では、放射部18が既存の開口またはカテーテルに挿入され、先端部分が丸くなっているか平らでもよい。
【0028】
尖先端部48は、さまざまなストックロッドから、所望の形状に加工することができる。尖先端部48は、エポキシシーラントなどの各種接着剤または接合剤を使用して、先端放射部44に取り付けることができる。尖先端部48が金属の場合、尖先端部48は先端放射部44に半田付けされ、電気外科的エネルギーを放射してもよい。別の実施形態では、尖先端部48と先端放射部44とが一体的に加工されてもよい。尖先端部48は、組織に進入するために適したセラミック、金属(例えば、ステンレス鋼)、ポリエーテルイミド、ポリイミド熱可塑性樹脂等の各種熱可塑性材料などの各種耐熱材料から形成でき、その例として、コネチカット州フェアフィールドのジェネラルエレクトリック社が販売しているUltem(登録商標)がある。
【0029】
図3Aは、図1のマイクロ波エネルギー送出デバイス12のフィードライン20の断面の長手方向断面図であり、図3Bは、図3Aのマイクロ波エネルギー送出デバイス12のフィードライン20の横断面図である。フィードライン20は、径方向中心に誘電体層52および外側導体56によって囲まれた内部導体50を備えて同心円状に形成されている。流入ハイポチューブ55が、外側導体56から離れて、外側導体56の径方向外側に配置されている。外側導体56bの外面と流入ハイポチューブ55aの内面とは、流入チャネル17iを形成しており、冷却用流体の流入を示す矢印17iによって示されるように、冷却用流体が、マイクロ波エネルギー送出デバイス12のフィードライン20を通って先端方向に流れるようになっている。流入ハイポチューブ55は、セラミック、金属(例えば、ステンレス鋼)、ポリエーテルイミド、ポリイミド熱可塑性樹脂等の各種熱可塑性材料などの各種耐熱材料から形成でき、その例として、コネチカット州フェアフィールドのジェネラルエレクトリック社が販売しているUltem(登録商標)や、インディアナ州ウォーカートンのPolygon社が販売している複合医療用チューブPolyMed(登録商標)がある。一実施形態では、流入ハイポチューブ55の壁厚は、約0.010インチ未満でもよい。別の実施形態では、流入ハイポチューブ55の壁厚は、約0.001インチ未満でもよい。
【0030】
外側ハイポチューブ57は、流入ハイポチューブ55から離れて、流入ハイポチューブ55の径方向外側に配置されている。流入ハイポチューブ55bの外面と外側ハイポチューブ55aの内面とは、外側チャネル17oを形成しており、冷却用流体の流入矢印17oによって示されるように、冷却用流体が、マイクロ波エネルギー送出デバイス12のフィードライン20を通って基端方向に流れるようになっている。外側ハイポチューブ57は、セラミック、金属(例えば、ステンレス鋼)、ポリエーテルイミド、ポリイミド熱可塑性樹脂等の各種熱可塑性材料などの各種耐熱材料から形成でき、その例として、コネチカット州フェアフィールドのジェネラルエレクトリック社が販売しているUltem(登録商標)や、インディアナ州ウォーカートンのPolygon社が販売している複合医療用チューブPolyMed(登録商標)がある。一実施形態では、外側ハイポチューブ57の壁厚は、約0.010インチ未満でもよい。別の実施形態では、外側ハイポチューブ57の壁厚は、約0.001インチ未満でもよい。
【0031】
実質的に径方向に同心円の断面形状により、図3Bに示すように、流入チャネル17iと流出チャネル17oの両方での流体の流れが均一となる。例えば、外側導体56bの外面と流入ハイポチューブ55aの内面との間に画定される流入チャネルの隙間G1は、外側導体56の外周で実質的に等しい。同様に、流入ハイポチューブ55bの外面と外側ハイポチューブ57の内面との間に画定される流出チャネルの隙間G2も、流入ハイポチューブ55の外周で実質的に等しい。
【0032】
また、流入チャネル17iおよび流出チャネル17oの断面積(すなわち、流体が流れる各チャネルの実効面積)は、各チャネル17i,17oの外面での面積(すなわち、流入ハイポチューブ55の内径の面積および外側ハイポチューブ57の内径の面積)と、各チャネル17i,17oの内面での面積(すなわち、外側導体56の外径の面積および流入ハイポチューブ55の外径の面積)との差である。流入チャネル17iおよび流出チャネル17oの断面積は、フィードライン20の長手方向長さに沿って実質的に等しい。また、外側ハイポチューブ57内での流入ハイポチューブ55の横ずれ、あるいは、流入ハイポチューブ55内での外側導体56の横ずれにより、流入チャネルまたは流出チャネルの隙間G1,G2が均等ではなくなるが、流入チャネル17iおよび/または流出チャネル17oの断面積には影響しない。
【0033】
図4は、(図1の放射部18を部分的に組み立てた状態での)流入流体の流れ経路を更に示す。放射部18は、フィードライン20の先端部をマイクロ波アンテナ40に挿入することによって形成される。
【0034】
フィードライン20は、マイクロ波アンテナ40に、冷却用流体とマイクロ波エネルギー信号とを提供するように構成される。前述したように、フィードライン20は流入ハイポチューブ55とフィードライン20の外側導体56との間に形成された流入チャネル17iを通して冷却用流体を供給する。また、フィードライン20は、内部導体50と外側導体56との間にマイクロ波エネルギー信号も提供する。
【0035】
マイクロ波アンテナ40は、テーパ付流入移動カラー53、溝付パック46、複数のアンテナスリーブストップ68a〜68dを含む先端放射部44、および尖先端部48を備える。フィードライン20は、マイクロ波アンテナ40に挿入されると、テーパ付外側導体56を流入移動カラー53に接続すると共に、先端放射部44を内部導体50に接続する。
【0036】
図5は、マイクロ波アセンブリの構成要素を更に示す図4のマイクロ波アンテナ40の分解図である。テーパ付流入移動カラー53は、外側テーパ60a、中間テーパ60bおよび内側テーパ60cを有し、後述のように、流入チャネル17iからマイクロ波アンテナ40に形成された各種流体チャネルに冷却用流体を移動させるように構成されている。組立中に、図4に図示し、以下に説明するように、フィードライン20の先端がテーパ付流入移動カラー53の基端に挿入される。フィードライン20の挿入時に、フィードライン20の各構成要素50,52,55,56が、マイクロ波アンテナアセンブリ40内で所定の位置で停止するように、各構成要素が所定の長さに切断される。
【0037】
流入ハイポチューブ55(図4参照)は、フィードライン20の先端の径方向外側の構成要素から、テーパ付流入移動カラー53の外側テーパ60a部分の基端に挿入される。外側テーパ60aと中間テーパ60bとの間の切り替わりにより、流入ハイポチューブ55のための機械的ストップが形成される。外側テーパ60aと流入ハイポチューブ55とは、両者との間に流体密的封止を形成し、これにより、冷却用流体をテーパ付流入移動カラー53の中間テーパ60bに閉じ込める。流入ハイポチューブ55と外側テーパ60aとの間の流体密的封止は、接着剤、エポキシ、またはポリテトラフルオロエチレン、あるいは他の適切なシーラントによって形成されても、流体密的封止が、流入ハイポチューブ55と外側テーパ60aとの間の密な機械的結合によって形成されてもよい。
【0038】
一実施形態では、流入ハイポチューブ55は、ステンレス鋼、スチール、銅または任意の他の適切な金属などの導電性金属で形成され、流体密的封止が流入ハイポチューブ55とテーパ付流入移動カラー53の内面とを絶縁している。別の実施形態では、流体密的封止が、流入ハイポチューブ55とテーパ付流入移動カラー53との間に誘電バリアを形成する1種以上の絶縁材料を含んでもよい。
【0039】
外側導体56は、外側テーパ60aの基端に挿入されると、中間テーパ60bを通って延び、外側導体56の少なくとも一部が内側テーパ60cに接続する。テーパ付流入移動カラー53が、マイクロ波アンテナ40の基端放射部42の少なくとも一部を形成するように、外側導体によって供給されるマイクロ波エネルギー信号56がテーパ付流入移動カラー53に伝達されるように、外側導体56と内側テーパ60cとが両者との間に電気的接続を形成する。
【0040】
流入ハイポチューブ55の外面と外側テーパ60aの内面とは、両者との間に流体密的封止を形成する。流体は、流入チャネル17iを出て、中間テーパ60b内に形成された開放領域に溜まる。外側導体56の外面と内側テーパ60cの内面とは、両者との間に流体密的封止を形成しており、これにより、冷却用流体が、テーパ付流入移動カラー53内を中間テーパ60bの先端方向に移動しないように阻止している。
【0041】
一実施形態では、外側導体56とテーパ付流入移動カラー53の内側テーパ60cとの間に電気的接続が形成される。このようにして、テーパ付流入移動カラー53は、ダイポールアンテナである放射部18の基端放射部42の少なくとも一部を形成している。外側導体56と内側テーパ60cとの間の電気的接続は、両者との間の接触面全体に形成されても、電気的接続が接触面の一部のみに形成されてもよい。例えば、一実施形態では、外側導体56と内側テーパ60cとの間の電気的接続が、内側テーパ60cの先端部に沿って円周方向に形成され、接触面の残りの部分が、外側導体56と内側テーパ60cとを絶縁している。
【0042】
別の実施形態では、外側導体56と内側テーパ60cとの間の流体密的封止は、両者との間に絶縁バリアを形成しており、テーパ付流入移動カラー53がモノポールアンテナである放射部18の一部を形成していない。
【0043】
更に別の実施形態では、外側導体56と内側テーパ60c間の流体密的封止が、両者間の絶縁バリアを形成する。外側導体56と内側テーパ60c間の電気的接続は、外側導体56または内側テーパ60cの先端を相互に接続することによって形成される。
【0044】
流入ハイポチューブ55と外側テーパ60a間の流体密的封止と、外側導体56と内側テーパ60c間の流体密的封止とは、流入チャネル17iからテーパ付流入移動カラー53の中間テーパ60bに排出される冷却用流体を隔離する。中間テーパ60bに更に流体が溜まると、圧力が上昇し、冷却用流体が、テーパ付流入移動カラー53に形成された複数の冷却用流体移動アパーチャ53a〜53dの1つを通って中間テーパ60bから出る。
【0045】
冷却用流体が、中間テーパ60bに形成された複数の冷却用流体移動アパーチャ53a〜53dの1つを通って径方向外側に流れると、冷却用流体は、テーパ付流入移動カラー53とアンテナスリーブ2との間を、中間テーパ60bの外面に沿って先端方向に流れる。アンテナスリーブ2は、テーパ付流入移動カラー53の外側テーパ60aと共に流体密的封止を形成し、このため、流体は、溝付パック46に向かって先端方向に流れるしかなくなる。一実施形態では、アンテナスリーブ2は、薄いポリイミドスリーブか、あるいはマイクロ波放射の伝達および/または送出に全く影響しないか、あるいはほとんど影響しない他の適切な非導電材料である。
【0046】
複数の冷却用流体移動アパーチャ53a〜53dの1つを出た冷却用流体は、テーパ付流入移動カラー53の外面、溝付パック46の外面および先端放射部44の外面に沿って、およびアンテナスリーブ2の内面に沿って先端方向に流れる。アンテナスリーブ2の基端は、テーパ付流入移動カラー53の外側テーパ60aと共に流体密的封止を形成する。一実施形態では、アンテナスリーブ2の外径と外側テーパ60aの外径とが実質的に等しくなるように、アンテナスリーブ2の基端2aは、外側テーパ60aに形成された基端アンテナスリーブストップ53sと嵌合する。
【0047】
チャネル67a,67b,67c,67dが隣接する各凸部66a〜66d間に形成されており、凸部66a〜66dにおける溝付パック46の径方向の外面が、チャネル67a〜67dのそれぞれにおいて、溝付パック46の外面から径方向に外側に突出している。チャネル67a〜67dは、溝付パック46の外面とアンテナスリーブ2の内面との間に冷却用流体経路を形成するように構成されている。
【0048】
図4に示すように、冷却用流体は、テーパ付流入移動カラー53の中間テーパ60bを出て、溝付パック46の凸部66a〜66dとアンテナスリーブ2との間に形成された複数のチャネル67a〜67dを通って先端方向に流れ、先端放射部44の外面に溜まる。冷却用流体は、先端放射部44の基端2aの外面とアンテナスリーブ2の内面との間に形成された間に溜まる。
【0049】
先端放射部44の先端2bは、複数のアンテナスリーブストップ68a〜68dを有する。隣接するアンテナスリーブストップ68a〜68dは、互いに離れており、これらの間に複数の先端流チャネル70a〜70dを形成している。アンテナスリーブ2の先端2bは、各アンテナスリーブストップ68a〜68dの個々の先端に形成された先端リップ69a〜69dに当接するように構成されている。
【0050】
外側ジャケット43の先端は、完全に組み立てられた状態では、尖先端部48の基端部分と共に流体密的封止を形成する。図6に示すように、外側ジャケット43と尖先端部48との間に流体密的封止が形成され、この流体密的封止はアンテナスリーブ2の先端2bに対して先端に位置する。このように、アンテナスリーブ2は外側ジャケット43内に封じ込められ、流出チャネル17oの少なくとも一部が、外側ジャケット43の内面とアンテナスリーブ2の外面との間に形成される。
【0051】
一実施形態では、各アンテナスリーブストップ68a〜68dの先端リップ69a〜69dは、アンテナスリーブ2の外面から径方向外側に延び、外側ジャケット43をアンテナスリーブ2の外面から離している。流出チャネル17oの少なくとも一部を形成するアンテナスリーブ2と外側ジャケット43との間に隙間が形成される。周方向に離れた複数のスリーブストップ68a〜68dは、アンテナスリーブ2に対して外側ジャケット43を均等に配置させている。
【0052】
図5は図4に示した放射部18の一部の分解図であり、テーパ付流入移動カラー53、溝付パック46、先端放射部44、アンテナスリーブ2および尖先端部48が含まれる。溝付パック46は、組み立てた状態で、テーパ付流入移動カラー53と先端放射部44との間に配置される。同様に、アンテナスリーブ2も、テーパ付流入移動カラー53の一部と先端放射部44との間に配置され、アンテナスリーブ2は、溝付パック46から径方向外側に離れている。
【0053】
前述のように、テーパ付流入移動カラー53は、外側テーパ60a、中間テーパ60bおよび内側テーパ60cを備える。外側テーパ60aの外面の一部が、アンテナスリーブ2の基端を受け容れるように構成された基端アンテナスリーブストップ53sを形成しうる。外側テーパ60aは、流入ハイポチューブ55の先端上を摺動するように構成されている。流入ハイポチューブ55は、外側テーパ60aと中間テーパ60bとの間の切り替わり部分に当接しうる。流入ハイポチューブ55と外側テーパ60aとの間流体密的封止と、外側導体56と内側テーパ60cとの間に形成された流体密的封止とにより、移動中の冷却用流体が、(外側導体56の外面と流入ハイポチューブ55の内面との間に形成された、図3A参照)流入チャネル17i内を先端方向に流され、テーパ付流入移動カラー53の中間テーパ60bに溜まる。
【0054】
一実施形態では、テーパ付流入移動カラー53と流入ハイポチューブ55との間の流体密的封止は、両者間の圧入接続によって形成される。図2,図4および図8に示すように、流入ハイポチューブ55がテーパ付流入移動カラー53の上に圧入されるか、あるいは、テーパ付流入移動カラー53が流入ハイポチューブ55の上に圧入されうる。
【0055】
外側テーパ60aの外径D1、中間テーパ60bの外径D2、内側テーパ60cの外径D3、および各テーパ60a〜60cの厚みは、マイクロ波エネルギー送出デバイス12を形成する構成要素を容易に組み立てられるように設定されている。例えば、外側テーパ60aの直径D1および膜厚は、流入ハイポチューブ55が外側テーパ60aの内面と流体密的封止を形成し、アンテナスリーブ2が外側テーパ60aの外径と流体密的封止を形成するように選択される。中間テーパ60bの直径D2は、外側導体56とアンテナスリーブ2との間に十分な隙間が得られ、中間テーパ60bを通る流体の流れを促すように選択される。内側テーパ60cの直径D3および膜厚は、外側導体56が内側テーパ60cの内面と流体密的封止を形成し、溝付パック46が内側テーパ60cの外径と流体密的封止を形成するように選択される。
【0056】
テーパ付流入移動カラー53の3層は、(放射状かつ同心円状に構成された構造の第1の部分に形成された)流入チャネル17iの第1の部分と、(放射状かつ同心円状に構成された構造の第2の部分に形成された)流入チャネル17iの第2のチャネル部分との間の冷却用流体の移動を促すように構成されている。例えば(テーパ付流入移動カラー53に対して基端において)、流入チャネル17iの第1の部分が外側導体56の外面と流入ハイポチューブ55の内面との間に形成され、テーパ付流入移動カラー53の先端の点では、流入チャネル17iの第2の部分がアンテナスリーブ2と溝付パック46との間に形成される。
【0057】
別の実施形態では、テーパ付流入移動カラー53は、マイクロ波エネルギー送出デバイス12の径方向中心から第1の径方向距離に形成された流入チャネル17iの第1の部分から、マイクロ波エネルギー送出デバイス12の径方向中心から第2の径方向距離に形成された流入チャネル17iの第2の部分への流体の移動を促す。マイクロ波エネルギー送出デバイス12の径方向中心からの第1の径方向距離と第2の径方向距離との値は、等しくても異なってもよい。
【0058】
溝付パック46の基端は、テーパ付流入移動カラー53の内側テーパ60cの少なくとも一部を受け容れるように構成され、両者の間に流体密的封止を形成し、溝付パック46の先端は、先端放射部44の少なくとも一部を受け容れるように構成されている。内部導体(明示なし)は、溝付パック46の径方向中心を通って延び、先端放射部44によって受容される。
【0059】
一実施形態では、溝付パック46は、外側導体56の一部および/またはテーパ付流入移動カラー53の一部の周囲に水密的封止を形成するために、製造工程中に射出成形される。別の実施形態では、溝付パック46は、一部の外側導体および/またはテーパ付流入移動カラー53の一部の上に圧入され、両者の間に流体密的封止を形成する。
【0060】
先端放射部44は、金属(例えば、銅、ステンレス鋼、スズ、およびこれらの各種合金などの任意の種類の導電材料から形成されうる導電部材を備える。先端放射部44は、硬質構造を有し、ソリッドワイヤ(例えば、10AWG)から形成されてもよい。別の実施形態では、先端放射部44は、同軸ケーブルまたは別の円筒状導体の外側導体56の中空スリーブから形成されてもよい。円筒を中実のシャフトに変えるために、その後円筒状導体に半田が充填されうる。より詳細には、円筒状の導体内の半田を液化させるために、半田が十分な温度(例えば500°F)に加温されうる。
【0061】
溝付パック46の径方向外表面は、チャネル67a〜67dを形成する複数の凸部66a〜66dおよび/または複数の凹部を有する。複数の凸部66a〜66dは、アンテナスリーブ2と摺動可能に係合し、凹部とアンテナスリーブ2の内面との間に画定される複数の流入チャネル17iを形成するように構成されている。
【0062】
アンテナスリーブ2は、溝付パック46を囲み、先端放射部44の少なくとも一部を囲むように構成されている。前述のように、アンテナスリーブ2の基端部分は、(外側テーパ60aの一部に形成された)基端アンテナスリーブストップ53sに接続し、アンテナスリーブ2の先端部分は、先端放射部44に形成された先端アンテナスリーブストップ68a〜68dに接続している。先端放射部44と内部導体(明示なし)間の電気的接続は、アクセススロット70によって形成されうる。アクセススロット70は、適切な導電材料で充填されており、先端放射部44と内部導体(明示なし)との間に電気的接続が形成されうる。先端放射部44の先端は、尖先端部48に接続するか、あるいは、尖先端部48を形成しうる。
【0063】
流入チャネル17iおよび流出チャネル17o(すなわち、冷却用流体がマイクロ波エネルギー送出デバイス12の先端を通って流れる際の冷却用流体の経路)が、図4,図6に示される。冷却用流体は、隣接するアンテナスリーブストップ68a〜68dの間に形成された先端流チャネル70a〜70dを通って先端方向に流れる。冷却用流体は、アンテナスリーブ2の先端2bの先端方向に流れたのち、先端放射部44と外側ジャケット43との間に形成された流体移動チャンバ117に溜まる。外側ジャケット43と尖先端部48との間に形成された流体密的封止により、流体が流体移動チャンバ117の先端方向に流れないように阻止される。移動を示す矢印によって示されるように、流体移動チャンバ117の冷却用流体は、流体移動チャンバ117を出て、基端方向に流れ、アンテナスリーブ2の外面と外側ジャケット43の内面との間に形成された流出チャネル17oに入る。
【0064】
別の実施形態においては、図7A〜図7Bに示すように、各アンテナスリーブストップ68a〜68dの個々の先端に形成された先端リップ69a〜69dの径方向外側部分(すなわち、先端リップ69a〜69dの外側ジャケット43に接触する部分)が、先端リップ69a〜69dと外側ジャケット43との間に追加のチャネルを形成して、冷却用流体が流体移動チャンバ117から基端方向に流れるようにしてもよい。
【0065】
流出チャネル17oの先端部が図8に示される。外側ジャケット43は、マイクロ波エネルギー送出デバイス12の先端部において流出チャネル17oの外周を形成している。外側ジャケット43の先端は、尖先端部48および/または先端放射部44と流体密的封止を形成し、基端は、流体流出スロット57a,57b(不図示であるが57c,57d)の基端にある外側ハイポチューブ57の一部と流体密的封止を形成する。外側ハイポチューブ57は、外側ハイポチューブ57と外側ジャケットとの間にマイクロ波エネルギー送出デバイス12の外面上で円滑に移動させる、基端の外側ジャケットストップ57sを更に有してもよい。
【0066】
流出チャネル17oの一部が、外側ジャケット43の内面とアンテナスリーブ2の少なくとも一部、テーパ付流入移動カラー53の一部、チョーク誘電体19の一部、コアチョーク(不図示)を覆うEMFシールド28の一部、および外側ハイポチューブ57の一部との間に形成される。流出チャネル17oの同心円構成により、マイクロ波エネルギー送出デバイス12の先端部に冷却用流体を均一に供給できる。
【0067】
外側ジャケット43の基端において、外側ジャケット43と外側ハイポチューブ57間の流体密的封止により、冷却用流体が、流体流出スロット57a,57b(明示はしないが57c,57d)を通って案内され、図3Aに示し、上で説明したように、外側ハイポチューブ57の内面と流入ハイポチューブ55の外面との間に形成された流出チャネル17oの一部に流入する。
【0068】
図1〜図8に示し、上で説明したように、マイクロ波エネルギー送出デバイス12は、全長にわたって実質的に同心円構成を有する。マイクロ波エネルギー送出デバイス12の各層は、流入チャネル17iの実質的に同心円構成を形成し、かつ同心円の層のうちの2層(または3層以上)間で流出チャネル17oの実質的に同心円構成を形成する。実質的に同心円の流入チャネルおよび流出チャネル17i,17oは、冷却用流体を同心円状に分配し、これによりマイクロ波エネルギー送出デバイス12全体を均一に冷却する。
【0069】
マイクロ波エネルギー送出デバイス12の各種構造は、当該デバイス全体にわたって実質的に同心円構成を維持する一方、流入チャネルおよび流出チャネル17i,17oのさまざまな場所における冷却用流体の移動を促す。テーパ付流入移動カラー53は、冷却用流体を、外側導体56と流入ハイポチューブ55との間に形成された流入チャネル17i、アンテナスリーブ2とテーパ付流入移動カラー53との間に形成された流入チャネル17i、溝付パック46および先端放射部44から移動させる。アンテナスリーブストップ68a〜68dの構成によって形成された先端流チャネル70a〜70dは、アンテナスリーブ2と先端放射部44との間に形成された流入チャネル17iから、アンテナスリーブ2の外面と外側ジャケット43の内面との間に形成された流出チャネル17oに、冷却用流体を移動させる。最後に、外側ハイポチューブ57に形成された流体流出スロット57a〜57dは、冷却用流体を、EMFシールド28と外側ジャケット43との間に形成された流出チャネル17oと、流入ハイポチューブ55と外側ハイポチューブ57との間に形成された流出チャネル17oとに導く。このように、冷却用流体は、マイクロ波エネルギー送出デバイス12の全長にわたって実質的に同心円構成を保つ。
【0070】
マイクロ波エネルギー送出デバイス12の各種構造は、同心円構成を支持すると共に、実質的に同心円状の流体の流れを促す。例えば、溝付パック46の凸部66a、テーパ付流入移動カラー53の外側テーパ60a、およびアンテナスリーブストップ68a〜68dの先端部は、これらの間に流入チャネル17iの一部を形成する一方、アンテナスリーブ2を実質的に同心円構成に配置させる。同様に、尖先端部48、アンテナスリーブストップ68a〜68dの先端部、および流入ハイポチューブ55は、これらの間で流出チャネル17oの一部を形成する一方、外側ジャケット43を実質的に同心円構成に配置させる。
【0071】
本開示の記載した実施形態は、限定ではなく、例示を意図としており、本開示のあらゆる実施形態を示すことを意図するものではない。以下の特許請求の範囲に文言上、法的な均等物の両方について記載の本開示の趣旨または範囲を逸脱しない範囲で、さまざまに変更や変形を行うことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体、外側導体、ならびに前記内部導体および前記外側導体の間に配置された誘電体を含む同軸ケーブルを有するフィードラインと、
前記フィードラインに結合されたダイポールアンテナ、およびダイポールアンテナの先端で前記ダイポールアンテナに結合されたトロカールを有する照射部と、
前記外側導体の周囲に配置され、前記放射部に流体を供給するように構成された流入ハイポチューブと、
第1端および第2端を有し、前記第1端から前記第2端に延びる少なくとも2つのリブを有し、2つの隣接するリブ間に流入スロットを画定しているパックと、
前記流入ハイポチューブの前記先端に結合された第1端、および前記パックの前記第1端に結合された第2端を有する移動カラーであって、その基端に少なくとも2つの流出スロットを有し、前記少なくとも2つの流出スロットは、前記流入ハイポチューブの先端から流体を受け容れ、前記少なくとも2つの流出スロットからの前記流体を前記放射部の先端に移動させるように構成されている移動カラーと、
前記移動カラーの前記少なくとも2つの流出スロット、前記パックおよび前記照射部の少なくとも前記先端を覆うスリーブと、を有し、前記スリーブは、前記少なくとも2つの流出スロットの基端にある前記移動カラーの第1端と第1の流体密的封止を形成し、前記スリーブは、前記移動カラーの前記少なくとも2つの流出スロットを出るように、前記流体を前記照射部の前記先端に移動させるための第1の隙間を画定しているマイクロ波アンテナ。
【請求項2】
前記フィードラインの先端に対して基端を囲み、前記トロカールおよび前記照射部の先端の一方と流体密的封止を形成し、前記第1の隙間からの流体を受け容れるための第2の隙間を画定している外側ジャケットと、
前記フィードラインの前記基端で前記流入ハイポチューブを囲み、前記流入ハイポチューブに対して配置される第3の隙間を画定する外側ハイポチューブと、を更に有し、前記外側ハイポチューブは、前記外側ハイポチューブに画定された少なくとも1つのスロットを有し、前記外側ハイポチューブは、前記少なくとも1つのスロットの基端に存在する前記外側ジャケットと流体密的封止を形成し、前記少なくとも1つのスロットは、前記流体が、前記第2の隙間から前記マイクロ波アンテナを通って前記第3の隙間に基端方向に流れるように構成されている請求項1に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項3】
前記流入ハイポチューブと前記外側ハイポチューブとはステンレス鋼から形成される請求項2に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項4】
前記フィードラインの基端部分を少なくとも部分的に囲むように構成されたチョークを更に有する請求項2に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項5】
前記外側ジャケットは、非金属複合材料の薄い外側ジャケットである請求項2に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項6】
前記外側ジャケットは0.010インチ未満の壁厚を有する請求項2に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項7】
前記パックは、前記外側導体の周囲に水密的封止を形成するために前記製造工程中に射出成形される請求項2に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項8】
前記移動カラーは、前記流入ハイポチューブ上を圧入され、前記流入ハイポチューブと流体密的封止を形成する請求項2に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項9】
接続ハブを更に有し、前記接続ハブは、
前記フィードラインに結合されたケーブルコネクタと、
そこに画定された入口流体ポートおよび出口流体ポートと、
前記ケーブルコネクタの基端の流体を前記出口流体ポートに移動させるように構成されたバイパスチューブと、を有する請求項2に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項10】
前記入口流体ポートに前記流体を供給するために前記入口流体ポートに結合された少なくとも1つの流入チューブと、
前記出口流体ポートから流体を引き出すために、前記出口流体ポートに結合され、かつ流体的に連通している少なくとも1つの流出チューブと、を更に有する請求項9に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項11】
前記スリーブはポリイミドスリーブである請求項1に記載のマイクロ波アンテナ。
【請求項12】
内部導体、外側導体、ならびに前記内部導体および前記外側導体の間に配置された誘電体を含む同軸ケーブルを有し、先端と基端とを有するフィードラインを提供するステップと、
前記フィードラインの先端に、ダイポールアンテナを有する照射部を結合するステップと、
前記ダイポールアンテナの先端にトロカールを結合するステップと、
前記放射部に流体を供給するように構成された流入ハイポチューブを前記外側導体の周囲に配置するステップと、
先端および基端を有する前記照射部の少なくとも一部の周囲に、前記マイクロ波アンテナに機械的強度を与えるための少なくとも2つの長尺リブを有し、前記少なくとも2つのリブは、前記先端から前記基端に延び、2つの隣接するリブ間に流入スロットを画定しているパックを配置するステップと、
前記流入ハイポチューブの先端と前記パックの基端との間に、前記流入ハイポチューブの先端から流体を受け容れ、前記少なくとも2つの流出スロットからの前記流体を前記照射部の先端に移動させるように構成された移動カラーを配置するステップと、
前記移動カラーの前記少なくとも2つの流出スロット、前記パックおよび前記照射部の少なくとも前記先端を覆うためにスリーブを配置するステップと、を有し、前記スリーブは、前記少なくとも2つの流出スロットの基端にある前記移動カラーの第1端と第1の流体密的封止を形成し、前記スリーブは、前記移動カラーの前記少なくとも2つの流出スロットを出るように、前記流体を前記照射部の前記先端に移動させるための第1の隙間を画定するマイクロ波アンテナの製造方法。
【請求項13】
前記フィードラインの前記先端の径方向外側に存在し、前記トロカールおよび前記照射部の先端の一方と流体密的封止を形成し、前記第1の隙間からの流体を受け容れるための第2の隙間を画定している外側ジャケットを配置するステップと、
前記流入ハイポチューブの径方向外側に存在し、前記流入ハイポチューブに対して第3の隙間を画定する外側ハイポチューブを配置するステップと、を更に有し、前記外側ハイポチューブは、前記外側ハイポチューブに画定された少なくとも1つのスロットを有し、前記外側ハイポチューブは、前記少なくとも1つのスロットの基端に存在する前記外側ジャケットと流体密的封止を形成し、前記少なくとも1つのスロットは、前記流体が、前記第2の隙間から前記マイクロ波アンテナを通って前記第3の隙間に基端方向に流れるように構成されている請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フィードラインの基端部分を少なくとも部分的に囲むように構成されたチョークを提供するステップを更に有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記外側ジャケットは、金属複合材料の薄い外側ジャケットである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記外側ジャケットは0.010インチ未満の壁厚を有する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記パックは前記外側導体の周囲に水密的封止を形成する請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記移動カラーを配置するステップは、前記流入ハイポチューブ上に前記移動カラーを圧入するステップを有する請求項13に記載の方法。
【請求項19】
接続ハブを前記フィードラインに接続するステップを更に有し、前記接続ハブは、
前記フィードラインに結合されたケーブルコネクタと、
そこに画定された入口流体ポートおよび出口流体ポートと、
前記ケーブルコネクタの基端の流体を前記出口流体ポートに移動させるように構成されたバイパスチューブと、を有する請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記流体を前記流入ハイポチューブに供給するために、少なくとも1つの流入チューブを前記入口流体ポートに結合し、前記少なくとも1つの流入チューブを前記流入ハイポチューブに挿入するステップと、
前記出口流体ポートから流体を引き出すために、出口流体ポートに流体的に連通している少なくとも1つの流出チューブを前記出口流体ポートに結合するステップと、を更に有する請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250035(P2012−250035A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−121524(P2012−121524)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【出願人】(511269510)ヴィヴァン メディカル,インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】