説明

ウェブ状物巻取り用巻芯およびウェブ状物巻き取り方法

【課題】
ウェブ状物の端部を接着して固定した部分の段差が原因となる、ウェブ状物の平面性不良欠陥を抑制することができるウェブ状物巻き取り用巻芯と、それを上記のウェブ状物の平面性不良欠陥を抑制したウェブ状物の巻取り方法を提供する。
【解決手段】
ウェブ状物を巻き取るための巻芯であって、前記巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材からなり、該緩衝材には巻芯の軸線方向に延存するウェブ状物端部を落とし込むための凹状の切り込みまたは溝が設けられており、該緩衝材の凹状の切り込みまたは溝の側壁面と該緩衝材外周表面のなす角度が40度〜80度であるウェブ状物巻き取り用巻芯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の長尺物のフィルムやシート等のウェブ状物の巻取り用巻芯と、それを用いたウェブ状物巻き取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯状の長尺物のフィルムやシートを筒状に巻き取る場合、円筒状の巻芯にフィルム端部を接着して固定し、巻芯を回転させて巻き上げる方法が一般的な方法である。
【0003】
その際、フィルムが厚かったり、容易に塑性変形するような材質のものであると、フィルム端部を接着して固定した部分が突起となり段差ができて、巻き重なったフィルムが変形して転写跡になることがある。フラットパネルディスプレイ、液晶調光ガラスおよび薄膜回路材などの精密な平面性が要求される用途では、このような転写跡が外観や加工上の欠点となって、フィルム自体やそれを用いた製品の歩留まり低下の原因となることがある。
【0004】
このような転写跡を解決する手段として、フィルム端部を巻芯側に沈みこませて段差を吸収する方法が考えられ、具体的には巻芯表面をフィルムよりも柔らかくしてフィルム端部が表面に沈み込むようにしたり、フィルム端部を落とし込む場所を巻芯表面に確保する構造を巻芯に構成することが考えられる。
【0005】
例えば、巻芯表面を柔らかくする手段としては、巻芯表面を緩衝材で覆ったり(特許文献1および特許文献2参照。)、フィルム端部に柔軟なシートを追加する方法(特許文献3参照。)が提案されている。しかしながら、これらの方法では、フィルムが端部が巻芯表面に沈みこみきらずに段差跡が残る場合があり、特に厚みが100μm以上のフィルムではその影響が顕著で改善に至らないことがある。また、フィルム端部を十分に沈みこませようとして緩衝材を柔らかくしすぎると巻き締まりが発生し、巻芯部のフィルムが座屈してシワになってしまうこともある。
【0006】
また、フィルム端部を落とし込む場所を巻芯表面に確保する別の方法としては、巻芯表面に徐々に浅くなる切り込みを入れ段差を設ける方法(特許文献4および特許文献5参照。)が提案されている。しかしながら、この提案は一定の効果はあるが、斜めに加工しない端部の角(かど)の影響が大きく段差跡が残る場合があり、また斜め加工のコストアップが大きく、これらの点で不十分である。
【0007】
また別に、型押しや緩衝材の寸法を調整して巻芯に溝を作る方法(特許文献6参照。)が提案されている。しかしながら、この方法では切り込みや溝自体の段差がフィルムに影響して、さらにはっきりとした巻芯跡が発生してしまうことがある。この特許文献6では更なる対策として、溝上部の面取りをしたり曲率を持たせる方法が提案されているが、今度は加工が複雑になってコストが上昇する原因となり、工業的に適さない。
【0008】
上記のいずれの方法もある程度の効果は得られるものの、フィルム端部の押し跡の影響緩和はなお十分ではなく、最近の精密加工や用途の発展に伴って、これらの施策では対策が不十分な事例が発生している。
【特許文献1】特開昭63−041382号公報
【特許文献2】特許3964892号公報
【特許文献3】特開2004−217349号公報
【特許文献4】特開平11−263537号公報
【特許文献5】特開2007−119230号公報
【特許文献6】特開2000−318930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、フィルムやシート等のウェブ状物の端部を接着して固定した部分の段差が原因となる、ウェブ状物の平面性不良欠陥を抑制することができるウェブ状物巻き取り用巻芯を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記のウェブ状物巻き取り用巻芯を使用して上記のウェブ状物の平面性不良欠陥を抑制したウェブ状物の巻取り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、これらの課題を解決するために以下の手段を用いるものである。
【0012】
本発明のウェブ状物巻き取り用巻芯は、ウェブ状物を巻き取るための巻芯であって、前記巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材からなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に延存するウェブ状物端部を落とし込むための凹状の切り込みまたは溝が設けられており、該緩衝材の凹状の切り込みまたは溝の側壁面と該緩衝材外周表面のなす角度が40度〜80度であることを特徴とするウェブ状物巻き取り用巻芯である。
【0013】
本発明のウェブ状物巻き取り用巻芯の好ましい態様によれば、前記の緩衝材の凹状の切り込みまたは溝内に、好適には凹状の切り込みまたは溝の底面に、ウェブ状物端部を固定するための粘着材が落とし込まれ埋設されている。
【0014】
本発明のウェブ状物巻き取り用巻芯の好ましい態様によれば、さらに切り込みまたは溝は、厚さ6μm〜50μmのテープで覆われるように構成されている。
【0015】
また、本発明のウェブ状物の巻き取り方法は、巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材からなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に延存するウェブ状物端部を落とし込むための凹状の切り込みまたは溝が設けられており、該緩衝材の凹状の切り込みまたは溝内にはウェブ状物端部を固定するための粘着材が落とし込まれ埋設されており、かつ、該緩衝材の凹状の切り込みまたは溝の側壁面と該緩衝材外周表面のなす角度が45度〜75度であるウェブ状物巻き取り用巻芯を用いてウェブ状物を巻き取るに際し、前記の緩衝材の凹状の切り込みまたは溝にウェブ状物端部を落とし込みウェブ状物端部を凹状の切り込みまたは溝に埋設された粘着材で固定し、さらに凹状の切り込みまたは溝部分を厚さ6μm〜50μmのテープで覆ってからウェブ状物を巻き始め、ウェブ状物端部に起因する段差が実質的に形成されない状態でウェブ状物をロール状に巻き取ることを特徴とするウェブ状物の巻き取り方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のウェブ状物巻取り用巻芯によれば、フィルム等のウェブ状物の端部の段差を原因として転写される凹凸や像歪み等の変形のないロール状ウェブ状物を得ることができる。このように、本発明により、ウェブ状物の端部の段差を原因とする変形によるウェブ状物のロスを抑制することができ、変形が少ないウェブ状物を適正なコストで得ることができる。また、このような変形のないウェブ状物を用いることにより、フラットパネルディスプレイ、液晶調光ガラスおよび薄膜回路材などの外観不良や加工上の欠点を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のウェブ状物巻き取り用巻芯は、巻芯が円筒状の芯材本体とその芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材からなり、緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に延存するウェブ状物端部を落とし込むための凹状の切り込みまたは溝が設けられており、そして緩衝材の凹状の切り込みまたは溝の側壁面と該緩衝材外周表面とが40度〜80度の角度をもっているものである。
【0018】
図1は、本発明のウェブ状物巻取り用巻芯の実施の形態を示す部分断面図である。また、図2は、本発明のウェブ状物巻取り用巻芯にウェブ状物を巻回した状態を例示する断面図である。
【0019】
本発明のウェブ状物巻き取り用巻芯は、図1および図2に示すように、円筒状の芯材本体1の外周面に緩衝材2を巻き付け緩衝層を設けた構成となっており、緩衝層の一部に凹状の切り込みまたは溝が設けられている。この凹状の切り込みまたは溝は、巻芯の長さ方向(軸線方向)に設けられている。
【0020】
円筒状の芯材本体1は、ウェブ状物3を巻く上で必要な強度を有していることが望まれる。芯材本体1を構成する材料には、紙の他に、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂およびスチレン系樹脂などの樹脂や、それらをガラス繊維、カーボン繊維およびアラミド繊維などの強化繊維で強化した各種強化プラスチック材料、さらには鉄、アルミニウムおよびステンレス類などの金属類や合金類、またそれらの複合体が好ましく用いられる。
【0021】
芯材本体1は、防塵性や寸法安定性から、樹脂や金属類を主成分とする円筒体が好ましいが、製造、回収および廃棄の際にかかる費用等の観点から、用途によっては紙に樹脂を含浸させた複合材料からなる円筒体(紙管)であってもよい。上記を満たすような市販品としては、例えば、複合樹脂製としては天龍工業株式会社製“FWPコア”(登録商標)や、樹脂を含浸させた紙管としては株式会社昭和丸筒製「Mコア」などが具体的な例として挙げられる。
【0022】
芯材本体1の寸法は、ウェブ状物の長さや厚さ、巻き上げ時の張力などにより適宜選択され、長さは0.3〜3m程度、内径は5〜30cm程度、肉厚は5〜30mm程度が好ましく用いられるが、具体的には長さ1m前後、内径15cm前後、肉厚12mm前後のものがより好ましく用いられる。
【0023】
緩衝層は、弾性を持ったシート状物を緩衝材2として芯材本体1の外周面に巻き付け貼り付けることにより構成される。緩衝材2となるシート状物を構成する材料としては、各種ゴム類のような弾性体や、不織布、フェルトおよび合成皮革などの易成型材、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂およびポリスチレン系樹脂などからなる発泡樹脂、およびそれらの複合体が好ましく用いられる。
【0024】
また、緩衝材2の巻き付け方については、円筒状の芯材本体1の外周と同じ長さのシート状の緩衝材2で芯材本体1を覆うように包む方法や、幅の狭いシート状の緩衝材2を芯材本体1に螺旋状に巻き付ける方法などがあるが、シート状の緩衝材2の面取りを施すなどの対策により継ぎ目による凹凸を生じないようにしてあれば限定されるものではない。緩衝材の厚さは巻き取るウェブ状物よりも厚いことが必要であるが、厚すぎるとコストが上昇し、巻き締まりによるシワが生じることから、0.5〜5mm程度のものが好ましく、より好ましくは0.7〜2mm程度であり、1mm前後のものが特に好ましく用いられる。
【0025】
緩衝材2の反発性が強すぎるとかえってウェブ状物端部の段差を巻き重なったウェブ状物に押しつけることになる。
【0026】
緩衝材の材質が発泡樹脂からなる場合、歪み25%における圧縮応力(JIS K6767に準じて測定)が30〜250kPaであることが好ましい反発性として挙げられる。上記を満たすような市販品としては、例えば、発泡ポリオレフィン樹脂としては東レ株式会社製“トーレペフ”(登録商標)や、発泡ポリエチレン樹脂としては酒井化学工業株式会社製“ミナフォーム”(登録商標)や積水ポリマテック株式会社製「ライトロン」などが挙げられる。
【0027】
緩衝材2には、ウェブ状物端部とこれを巻芯に固定する粘着材5とを落とし込む場所として、図1および図2に示すように、凹状の切り込みまたは溝を設けることが重要である。
【0028】
凹状の切り込みまたは溝の作成方法には、型押しをしたり、刃先が凹状の切り込みまたは溝の断面と同じ形状を有する切削ジグを用いるなどの方法があるが、巻芯表面に対する角度を任意に設定できるような治具を用いて、直線刃を固定して緩衝材2を切断・削除する方法が、装置的にも作業的にも安価で望ましい方法である。
【0029】
巻芯の外周表面に対する凹状の切り込みまたは溝の側壁面の(溝)角度α(図2参照)は、40度〜80度であり、好ましくは45度〜75度である。角度が直角またはそれに近い角度では、巻芯の外周表面と凹状の切り込みまたは溝壁の側面からなる角(かど)により、単にウェブ状物端部を置いたときと同様に平面性不良が発生する。また、角度を浅くしすぎると凹状の切り込みまたは溝の中にウェブ状物端部を十分に落とし込むことができず、やはり巻芯跡が発生する。
【0030】
この凹状の切り込みまたは溝は、前記のように巻芯の長さ方向(軸線方向)に設けられている。凹状の切り込みまたは溝は、一つの巻芯に複数存在してもかまわないが、実用上は一本あれば十分である。凹状の切り込みまたは溝は、断面方向から見ると逆台形の形をなしており、その幅は巻芯の直径や巻き取りウェブ状物の材質や厚さにより適宜選定すればよいが、通常は逆台形の底辺の幅が15〜30mmであることが好ましい。逆台形の上辺の幅は、底辺の幅と前記の溝の側壁面の角度αにより自ずと定まる。また、凹状の切り込みまたは溝の深さは、巻き取られるウェブ状物の厚さより深ければ巻芯本体表面に達している必要はないが、加工上の観点から、巻芯本体表面に達している方が好ましい。
【0031】
前記した特許文献6には、巻芯表面と溝壁面からなる角(かど)の一部をカットして面取りをしたり、円弧状にカットする例が記載されているが、加工が複雑になってコストが上昇する原因となり、工業的に適さない。また、この文献では巻き付け方向の角(かど)のみ言及されているが、検討の結果、巻き付け方向とは逆の角(かど)も平面性不良の原因となるため、本発明では、溝の両側の角が所定の角度を成していることが好ましい。
【0032】
また、本発明では、ウェブ状物端部を巻芯に固定するために粘着材5を用いることができるが、粘着材を用いると、この粘着材5の厚みを原因とする巻芯跡が発生することがあるため、粘着材5も切り込みまたは溝に落とし込むことが望ましい。粘着材5を凹状の切り込みまたは溝に落とし込むためには、切り込みまたは溝の幅は、粘着材の幅と同一か広いことが望まれる。凹状の切り込みまたは溝の幅が狭いと粘着材が切り込みまたは溝の外にはみ出し、巻芯跡の原因となることがある。
【0033】
粘着材5の幅は、ウェブ状物3を巻き上げるときの張力に十分耐えられる粘着力を得るのに必要十分な幅であることが望まれ、粘着材と巻芯を構成する材料との組み合わせによって適宜決定される。粘着材5の幅が狭すぎると十分な粘着力が得られず、広すぎると粘着材のコストが上昇する原因となる。例えば、切り込みまたは溝の幅が20mmの場合、19mm幅の粘着材が好ましく用いられる。また、粘着材5の厚さが厚すぎると粘着材が凹状の切り込みまたは溝からはみ出して巻芯跡の原因となるため、粘着材の厚さはできるだけ薄いことが望まれ、巻き取るウェブ状物の厚さと合わせても緩衝材の厚さより薄くなくてはならない。このことから、粘着材の厚さは2〜10μmであることが好ましい。粘着材5は、凹状の切り込みまたは溝の底面に埋設されることが好ましい。
【0034】
粘着材の種類としては、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコン系ポリマー、ビニルエーテル系ポリマーおよびウレタン系ポリマーなどの粘弾性ポリマーに、必要に応じてロジン系樹脂や石油樹脂系樹脂などの粘着付与樹脂、軟化剤および架橋剤などが配合された粘着材が挙げられる。粘着材は、固体や液体の状態のものを、巻芯または/およびウェブ状物端部に塗布しても良いが、扱いやすいという点で、両面に粘着剤層が設けられた両面接着テープの形態で供されることが好ましい。また、離型性を持ったテープ上に粘着材層を形成して転写する方法も、薄い粘着材層を作成するために好適である。
【0035】
ウェブ状物3を巻芯に巻き重ねていくと、ウェブ状物3を巻くときの張力によって、巻芯部分のウェブ状物3に半径方向の力が加わる。このとき、ウェブ状物端部を落とし込んだ凹状の切り込みまたは溝に巻き重ねたウェブ状物も落ち込んでしまい、凹状の切り込みまたは溝による跡が発生することがある。
【0036】
本発明者らは、これを防ぐ方法を鋭意検討した結果、凹状の切り込みまたは溝とその凹状の切り込みまたは溝に落とし込んだウェブ状物端部を、粘着テープ等のテープ4で覆う方法が安価かつ十分に効果的であることを見出した。この粘着テープ等のテープ4は、切り込みまたは溝を覆える程度の幅を有している必要があるが、幅が広すぎるとコストが上昇する原因となるので、凹状の切り込みまたは溝や粘着材の寸法に合わせて適切に選択することができる。また、粘着材と同様に、テープ4が厚すぎると巻芯跡の原因となるためにできるだけ薄いことが望まれるが、テープ4が薄すぎるとウェブ状物3の落ち込みを防ぐことが難しく、入手性や扱い易さの面で問題があるため、テープは6μm〜50μmの厚さであることが好ましく、テープの厚さはより好ましくは8μm〜25μmである。
【0037】
本発明のウェブ状物の巻き取り方法は、上記したウェブ状物巻き取り用巻芯を用いて好適に行うことができる。
【0038】
本発明のウェブ状物の巻き取りには、ウェブ状物を巻き取るための巻芯であって、その巻芯は円筒状の芯材本体と芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材からなり、その緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に延存するウェブ状物端部を落とし込むための凹状の切り込みまたは溝が設けられており、その緩衝材の凹状の切り込みまたは溝内にはウェブ状物端部を固定するための粘着材が落とし込まれ埋設されており、かつ、その緩衝材の凹状の切り込みまたは溝の側壁面と該緩衝材外周表面のなす角度が40度〜80度、好ましくは45度〜75度であるウェブ状物巻き取り用巻芯を好適に用いることができる。
【0039】
具体的に、本発明においては、上記のウェブ状物巻き取り用巻芯を用いてウェブ状物を巻き取るに際し、緩衝材の凹状の切り込みまたは溝にウェブ状物端部を落とし込みウェブ状物端部を凹状の切り込みまたは溝に埋設された粘着材で固定し、さらに凹状の切り込みまたは溝部分を厚さ6μm〜50μmのテープで覆ってからてからウェブ状物を巻き始め、ウェブ状物端部に起因する段差が実質的に形成されない状態でウェブ状物をロール状に巻き取るのである。
【0040】
このように本発明のウェブ状物巻取り用巻芯を用いることによってウェブ状物の端部の段差を原因として転写される凹凸や像歪み等の変形のないロール状のウェブ状物巻体(またはウェブ状物ロール体またはウェブロール状物)を得ることができる。
【0041】
本発明において、ウェブ状物とは帯状の長尺物であり、具体的には、プラスチックフィルムなどのフィルム状物、箔、紙および布帛等のシート状物が挙げられる。本発明で用いられるウェブ状物の厚さは、好ましくは1μm〜1mmの範囲である。
【0042】
本発明のウェブ状物巻取り用巻芯は、特に、フラットパネルディスプレイ、液晶調光ガラスおよび薄膜回路材などの精密な平面性が要求される用途や、表面反射防止処理フィルムや写真用光沢印画紙などの外観欠点が目立ちやすい用途に用いられるフィルム状物の巻き取りに好適である。
【実施例】
【0043】
以下に本発明の実施様態を実施例をもって説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。本発明の実施例における評価方法は、次のとおりである。
【0044】
<評価方法1>
準備した厚さ175マイクロメートルのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、以下の実施例1〜4および比較例1〜5に記載の巻芯に、張力15kgで250m巻き付けてから24時間経過後に巻き戻した。巻芯から50m地点で直管型蛍光灯を用いて照明を行い、フィルム面に映り込んだ直管型蛍光灯の反射像の歪みを目視観察した。観察した結果を、歪みが全くなければ◎、わずかに認められれば△、歪みが認められれば×に区分し、◎を合格とし、△と×を不合格とした。
【0045】
<評価方法2>
準備した厚さ175マイクロメートルのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、以下の実施例1〜4および比較例1〜5の巻芯に、張力15kgで二周巻き付けてから、第二指から第四指の指腹でフィルムの端部に当たる部分を上からなぞり、凹凸の感じ方を触診検査した。全く凹凸を感じなかったものを◎、僅かに凹凸を感じたもの△、凹凸を感じたものを×に区分し、◎を合格とし、△と×を不合格とした。
【0046】
[実施例1]
幅1200mm、内径6インチ、肉厚12mmの株式会社昭和丸筒製樹脂含浸紙管「Mコア」に、厚さ1mmの東レ株式会社製ポリエチレン樹脂(発泡体)“トーレペフ”(登録商標)をアクリル系粘着材を用いて貼り付け、さらに“トーレペフ”(登録商標)を深さ1mm、20mmの幅で溝を1条作成した後、(溝)角度が75度になるように溝壁面を削除し、ウェブ状物巻き取り用巻芯を得た。更に、その溝の底に幅19mmの住友スリーエム株式会社製基材なし薄手両面テープ「No.465」を貼り、PETフィルムの端部を図2のようにして固定した。さらに、図2のように溝全体を覆うように、厚さ12μm、幅25mmの日東電工株式会社製ポリエステル粘着テープ「No.31B」を貼り付け、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを巻き取った。
【0047】
[実施例2]
実施例1において、(溝)角度を60度としたこと以外は、実施例1と同様にして実施して、ウェブ状物巻き取り用巻芯を得た。
【0048】
[実施例3]
実施例1において、(溝)角度を45度としたこと以外は、実施例1と同様にして実施し、PETフィルムを巻き取った。
【0049】
[比較例1]
実施例1において、緩衝材に溝を作成せず、巻芯の軸線方向に貼着した粘着材にフィルム端部を固定したこと以外は、実施例1と同様にして実施し、PETフィルムを巻き取った。
【0050】
[比較例2]
実施例1において、(溝)角度を直角(90度)にし、ポリエステル製粘着テープを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施し、PETフィルムを巻き取った。
【0051】
[比較例3]
実施例1において、芯材本体1上の緩衝材2に、図3のように徐々に浅くなる溝を作成すると共に、巻き付け方向とは逆の角(かど)は直角(90度)のままとし、ポリエステル製粘着テープを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施し、PETフィルムを巻き取った。
【0052】
[比較例4]
実施例1において、溝角度が直角(90度)の溝を形成し、その巻き付け方向の角は断面が円弧状になるように面取りを行い、巻き付け方向とは逆の角(かど)は直角のままとし、ポリエステル製粘着テープを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施し、PETフィルムを巻き取った。
【0053】
上記の実施例1〜4および比較例1〜4の評価結果を、まとめて次の表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示すように、比較例1〜4で得られたPETフィルムには、いずれも照明灯の反射像に歪みが発生し、触診では凹凸を感じた。一方、実施例1〜4で得られたPETフィルムには、目視観察では照明灯の反射像に歪みはなく、かつ触診で凹凸を感じることはなく、良好な平面性のPETフィルムを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明のウェブ状物巻取り用巻芯の実施の形態を示す部分断面図である。
【図2】図2は、本発明のウェブ状物巻取り用巻芯にウエッブ状物を巻回した状態を例示する断面図である。
【図3】図3は、比較例3のウェブ状物巻取り用巻芯の実施の形態を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 円筒状の芯材本体
2 緩衝材
3 ウェブ状物
4 テープ状物
5 粘着材
α (溝)角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ状物を巻き取るための巻芯であって、前記巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材からなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に延存するウェブ状物端部を落とし込むための凹状の切り込みまたは溝が設けられており、該緩衝材の凹状の切り込みまたは溝の側壁面と該緩衝材外周表面のなす角度が40度〜80度であることを特徴とするウェブ状物巻き取り用巻芯。
【請求項2】
緩衝材の凹状の切り込みまたは溝内に、ウェブ状物端部を固定するための粘着材が落とし込まれ埋設されている請求項1記載のウェブ状物巻き取り用巻芯。
【請求項3】
粘着材が、凹状の切り込みまたは溝の底面に埋設されている請求項2記載のウェブ状物巻き取り用巻芯。
【請求項4】
さらに切り込みまたは溝が、厚さ6μm〜50μmのテープで覆われるように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載のウェブ状物巻き取り用巻芯。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のウェブ状物巻き取り用巻芯が用いられているウェブ状物巻体。
【請求項6】
巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材からなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に延存するウェブ状物端部を落とし込むための凹状の切り込みまたは溝が設けられており、該緩衝材の凹状の切り込みまたは溝内にはウェブ状物端部を固定するための粘着材が落とし込まれ埋設されており、かつ、該緩衝材の凹状の切り込みまたは溝の側壁面と該緩衝材外周表面のなす角度が45度〜75度であるウェブ状物巻き取り用巻芯を用いてウェブ状物を巻き取るに際し、前記の緩衝材の凹状の切り込みまたは溝にウェブ状物端部を落とし込みウェブ状物端部を凹状の切り込みまたは溝に埋設された粘着材で固定し、さらに凹状の切り込みまたは溝部分を厚さ6μm〜50μmのテープで覆ってからウェブ状物を巻き始め、ウェブ状物端部に起因する段差が実質的に形成されない状態でウェブ状物をロール状に巻き取ることを特徴とするウェブ状物の巻き取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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