説明

ウレタン系熱可塑性エラストマー組成物および外装部品

【課題】、耐久性、防振性、緩衝性、成形性のすべてに優れたウレタン系熱可塑性エラストマー組成物およびそのウレタン系熱可塑性エラストマー組成物を用いた外装部品を提供すること。
【解決手段】tanδのピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるアジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーおよびポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーの双方または何れか一方であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含み、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコンなどの電子機器製品の固定を目的とするゴム足などの外装部品として利用可能なウレタン系熱可塑性エラストマー組成物およびそのウレタン系熱可塑性エラストマー組成物からなる外装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンなどの電子機器製品の外装部品用の材料としてポリエステル系熱可塑性エラストマーが知られている。ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、成形時の冷却時間が短くヒケが起こりにくいなど、射出成形時における実用的条件下での成形性の良さや、比較的耐摩耗性に優れた外装部材としての耐久性の良さ、などの利点を有している。
【0003】
しかし、近年モバイル端末等の電子機器が高機能化、小型化していく中で、電子機器内部の電子部品の保護に対する要求基準が高まっている。具体的には、外部の振動や衝撃から電子部品を守るために、より高い防振性能および緩衝性能が求められている。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーについて、防振性と緩衝性の観点から見てみると、材料自体が備える硬さに応じた緩衝性は備えるものの、防振性が低いという欠点があった。
ポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の材質には、スチレン系熱可塑性エラストマーがあるが、従来から防振材料として用いられてはいるものの、耐摩耗性が低く、外装部品として耐久性が不十分であるという欠点があった。
また、ウレタン系熱可塑性エラストマーについては、粘着性や変形性に優れる粘着部材として知られており、例えば特開2003−86961号公報(特許文献1)の記載があるものの、防振性、緩衝性、成形性に優れたウレタン系熱可塑性エラストマーは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−86961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の熱可塑性エラストマーでは、耐摩耗性等の耐久性、外部からの振動を減衰させる防振性、外部からの衝撃を緩和する緩衝性、短時間で所定の形状に成形し得る成形性のすべてに優れた熱可塑性エラストマーは知られていなかった。
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、耐久性、防振性、緩衝性、成形性のすべてに優れた熱可塑性エラストマーであるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物およびそのウレタン系熱可塑性エラストマー組成物を用いた外装部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
すなわち、損失正接(以下「tanδ」ともいう)のピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含み、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物である。
【0008】
tanδのピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)は、防振性を発揮し易いがハードセグメントの割合が少なく成形性が劣っている。また、tanδのピーク温度が高いため緩衝性が劣っている。
一方、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)は、防振性にやや難があるものの成形性や緩衝性を改良しうる。
そして、こうしたウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)の両者を含むウレタン系熱可塑性エラストマー組成物では、防振性、緩衝性、成形性に優れており、また、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるため、耐久性にも優れるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物である。
【0009】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さは、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さよりも硬くしている。
ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さが、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さよりも硬いため、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)との間で、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のソフトセグメントの割合を相対的に多くし、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のハードセグメントの割合を相対的に多くすることができ、防振性、緩衝性、成形性のバランスのとれた組成物とすることができる。
【0010】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)がポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーであり、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)がアジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーおよびポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーの双方または何れか一方であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物とすることができる。
【0011】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)がポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーで防振性に優れた組成物を得ることができる。また、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)がアジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーおよびポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーの双方または何れか一方であるため、耐久性、緩衝性、成形性に優れた組成物を得ることができる。そしてその両者を含む混合組成物であるため、耐久性、防振性、緩衝性、成形性に優れた固化物を成形可能なウレタン系熱可塑性エラストマー組成物とすることができる。
【0012】
そして、損失正接のピーク温度が−20℃〜30℃であり、そのピーク値が0.45以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物である。
損失正接のピーク温度が−20℃〜30℃であり、そのピーク値が0.45以上であり、実質的に1.0以下であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物としたため、耐久性、防振性、緩衝性、成形性に優れたウレタン系熱可塑性エラストマー組成物である。
【0013】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)は互いに相溶するウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)を互いに相溶するウレタン系熱可塑性エラストマーとしたため、それぞれのウレタン系熱可塑性エラストマー単独の場合のtanδのピーク温度、ピーク値からはシフトした新たなピーク温度、ピーク値を得ることができる。
【0014】
そして、これらのウレタン系熱可塑性エラストマー組成物からなる外装部品を提供する。上記ウレタン系熱可塑性エラストマー組成物からなる外装部品としたため、耐久性、防振性、緩衝性、成形性に優れた外装部品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた外装部品によれば、耐久性、防振性、緩衝性、成形性に優れた外装部品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】各試料の組成および各種試験結果を示す表である。
【図2】衝撃緩衝試験装置を説明する概略断面図である。
【図3】図2で示す衝撃緩衝試験装置の矢示Aで示す方向から見たアルミニウム板の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の課題を解決するウレタン系熱可塑性エラストマー組成物について具体的な実施形態に基づきさらに詳しく説明する。
ウレタン系熱可塑性エラストマーは、tanδのピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含む熱可塑性エラストマー組成物である。以下これらの成分について説明する。
【0018】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)は、tanδのピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であって、高い防振性を組成物に付与することができる。こうしたウレタン系熱可塑性エラストマー(A)には、ポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
また、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)は、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であって、tanδのピーク温度が低く分子内のソフトセグメントは柔軟な分子構造を持っている。また、tanδのピーク値が1.0未満であることから分子内のソフトセグメントの割合が少ない。換言すれば、ハードセグメントの量が多く成形性に優れている。こうしたウレタン系熱可塑性エラストマー(B)には、アジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーや、ポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0019】
そして、熱可塑性エラストマー組成物のJIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上である。JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°より小さいと、柔らかさが増すため表面に露出して用いられる外装部品となる場合には特に耐摩耗性が問題になるからである。
そして、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さは、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のその硬さよりも硬いことが好ましい。
【0020】
ここで、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のtanδのピーク温度を比較すると、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のtanδの方が低いピーク温度を有している。一般的に同種の組成物では、tanδのピーク温度が低い方が、分子鎖の動きの自由度が高いことから、柔軟である傾向がある。しかし、ここでは上記関係とは反対に、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)の硬さを、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)の硬さよりも硬いものとしている。このことは、相対的にウレタン系熱可塑性エラストマー(A)においてはソフトセグメントの割合が多く、一方ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)においてはハードセグメントの割合が多いことを示している。すなわち、上記硬さの関係を満たすことで、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)においてはソフトセグメントの割合を多くすることで、防振性および柔軟性を高めるとともに、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)においてはハードセグメントの割合を多くすることで結晶化速度を速めて成形性を良くすることができるのである。
【0021】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)および(B)は、ともにウレタン系の組成物であるため、容易に相溶させることができ、両者の透明性が高い場合にはその混合組成物もまた透明性が良い組成物とすることができる。特に、ポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマー、アジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマー、およびポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーは相容性が良く、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)および(B)として、これらのウレタン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。こうした透明性が高い混合組成物は、着色して用いる場合においても発色を良くすることができるため好ましい。
【0022】
一方、エーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマーはウレタン系熱可塑性エラストマー(B)の中では扱いが難しい材料である。
ポリエーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマーは、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)として有用なポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーと相容しないためである。ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と(B)とが相容しない場合には、tanδのピーク温度を低温側にシフトさせることが困難である。したがって、二成分の混合によってtanδのピーク温度を調整し難く、またtanδのピーク温度を低温側にシフトさせることで緩衝性を高めることがし難いためである。
【0023】
熱可塑性エラストマーには、その耐久性、防振性、緩衝性、成形性を損なわない範囲で、種々の添加剤を加えることが可能である。例えば、難燃性を高めるために、難燃剤を加えたり、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)との混和性を高めるためにそれ以外のウレタン系熱可塑性エラストマーを加えることもできる。その他、酸化防止剤や老化防止剤等々、様々な機能向上のため種々の添加剤を含めることができる。
【0024】
熱可塑性エラストマー組成物の製造は、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)とを混練することで得られる。混練には例えば二軸押出し成型機を用い200℃程度に加温して行うことができる。
【実施例】
【0025】
試料の作製: 本発明の実施例または比較例として以下に示す試料1〜試料13のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物を作成し、種々の評価試験を行った。
【0026】
試料1〜試料12の熱可塑性エラストマー組成物に用いたウレタン系熱可塑性エラストマーは、tanδがピーク温度32℃で1.34のポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマー、tanδがピーク温度−37℃で0.57のポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマー(ア)、tanδがピーク温度−16℃で0.26のポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマー(イ)、tanδがピーク温度5℃で0.32のアジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマー、tanδがピーク温度−2.6℃で0.31のエーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマー(ウ)、tanδがピーク温度−7.7℃で0.27のエーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマー(エ)である。これら6種のウレタン系熱可塑性エラストマーのうちから、図1で示す所定のウレタン系熱可塑性エラストマーを所定の割合で混練して試料1〜試料12を製造した(なお、図1において、『ポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマー』を「ポリカーボネート系TPE」と記載している。上述の他のウレタン系熱可塑性エラストマーについても同様に“ウレタン系”の文言を省略している)。また、比較のためにtanδがピーク温度23℃で0.80のスチレン系熱可塑性エラストマーを試料13とした。こうした試料1〜試料13について、耐久性、防振性、緩衝性、成形性の各種試験を行った。なお、上述のエーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマー(ウ)、エーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマー(エ)について、それぞれ試料14、試料15とした。
【0027】
tanδの測定: tanδは動的粘弾性測定器(セイコーインスツル社製、DMS6100)を用いて温度23℃、周波数28Hzのときの値を引張正弦波モートで測定した。試験片は1mm厚みのシートを、10mm×40mm×1mmtに打ち抜いたものを使用した。
試料1〜試料12について、こうして測定したtanδに関し、23℃、28Hzの際のtanδの値、tanδのピーク値、ピーク値となるときの温度をそれぞれ図1に示した。
【0028】
耐久性試験: 耐摩耗性を試験するために、テーバー摩耗試験とcrawing試験を行った。テーバー摩耗試験とcrawing試験の詳細は以下のとおりである。
テーバー摩耗試験は、試験片φ130mm、厚み2mmtの試験片について、テーバー摩耗試験機(テスター産業株式会社製、AB−101)を用いて、H−22摩耗輪、荷重1kgf、回転速度60rpmの条件において、500回転させたときの摩耗量(g)を測定した。
また、crawing試験は、2mmtの試験片にポリカーボネート製の人工爪を試験片に対して垂直に500gfの荷重で押し当て、試験片上を2cm擦ったときの傷の有無を目視で観察した。傷がつかなかったものを“○”とし、傷がついてしまったものを“×”とした。
【0029】
防振性試験: 防振性を試験するために、加振試験と鉄球落下試験を行った。加振試験と鉄球落下試験の詳細は以下のとおりである。
加振試験は、各試料の熱可塑性エラストマー組成物を直方体形状に成形して支持脚を製造して行った。被支持体を四つの支持脚で支持するように組まれた振動試験装置に、各試料からなる支持脚を取り付け、この振動試験装置を加振テーブルに固定した。そして、一定加速度2.94m/s(0.3G)、周波数7Hz〜200Hzの範囲で上下方向(Z方向)に振動させて共振周波数f(Hz)を求めた。伝達倍率Q(dB)は、共振周波数f(Hz)において筐体の加速度a1に対し、被支持体の加速度a2を測定し、20Log(a2/a1)の関係式で換算して求めた。伝達倍率Qの結果も図1に示す。
【0030】
鉄球落下試験では、室温23℃の環境で2mmtの厚みの試験片に、直径11mmで重さが5.5gの鉄球を20cmの高さから自由落下させて、跳ね返ったときの最大高さを測定した。そして、そのときの最大高さが1cm以下のとき“1”、1cmを超え3cm以下のとき“2”、3cmを超え5cm以下のとき“3”、5cmを超え10cm以下のとき“4”、10cmを超え15cm以下のとき“5”とした。前記最大高さが低いほど防振性が高く防振性に優れることがいえる。
【0031】
防振性について、伝達倍率が2以下を“◎”、2を超え3以下を“○”、3を超え4以下を“△”、4を超えたものを“×”とし、「◎」「○」「△」「×」の4段階で評価した。鉄球落下試験の結果を見ても概ねこの評価に沿った結果となっており、「○」以上であれば防振性に優れていると評価できる。
【0032】
衝撃緩衝試験: 衝撃緩衝試験は、図2で示す衝撃緩衝試験装置11を製造して試験した。200mm四方、厚さ4mmのアルミニウム板12の先端2箇所に、20φ、厚さ2mmの試験片(試料)13を取付けて、アルミニウム板12の他方をヒンジ14で固定して45度傾けた高さから落下させた際の最大加速度(G)を測定した。その結果を図1に示す。
最大加速度2100未満を“◎”、2100以上2500未満を“○”、2500以上3000未満を“△”、3000以上を“×”と評価した。
衝撃緩衝性試験の結果から、最大加速度が2100未満であった試料3,4,7について緩衝性が特に優れており、最大加速度が2500未満であった試料1,2,5、8,9について緩衝性が優れていることがわかった。
【0033】
成形性試験: 成形性試験の詳細は以下のとおりである。
成形性の評価は、射出成形の条件として、30℃の金型内に、各試料の組成物を射出し、30秒の固化時間の後に金型を開いて成形体を取り出したとき、組成物が固化しているかどうか、固化している場合には成形体の表面を観察してヒケがあるかどうかを評価した。固化していなかった場合に“×”、固化していたがヒケがあった場合に“△”、ヒケがなかった場合に“○”とした。また、前記条件において、固化時間を15秒に短縮してもヒケがみられなかったものを“◎”とした。
【0034】
相溶性: 試料1〜試料5,試料10〜試料12については、相溶性についても評価した。各原材料を混合しても透明性を保ち相溶性がある場合には“○”とし、混合して白濁するなど相溶性が無い場合には“×”とした。
エーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマーを用いた試料10〜試料12は、ポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーと相溶せず、緩衝性も悪かった。
【0035】
以上の結果から、ポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーに、ポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーまたはアジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーを混合したウレタン系熱可塑性エラストマーは、耐久性、防振性、緩衝性、成形性のすべてにおいて優れていることがわかる。
【0036】
また、上記試料のtanδの値から、tanδのピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)とを混合し、tanδのピーク温度が−20℃〜30℃であり、そのピーク値が0.45以上となるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物であって、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物が、耐久性、防振性、緩衝性、成形性の全てにおいて優れることがわかる。
【0037】
なお、上記実施形態は本発明の一例であり、こうした形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない任意の変更形態を含むものである。
【符号の説明】
【0038】
11 衝撃緩衝試験装置
12 アルミニウム板
13 試験片
14 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損失正接(tanδ)のピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、損失正接のピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含み、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さが、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さよりも硬い請求項1記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)がポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーであり、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)がアジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーおよびポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーの双方または何れか一方である請求項1または請求項2記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
損失正接のピーク温度が−20℃〜30℃であり、そのピーク値が0.45以上である請求項1〜請求項3何れか1項記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)は互いに相溶するウレタン系熱可塑性エラストマーである請求項1〜請求項4何れか1項記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5何れか1項記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物からなる外装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−40310(P2013−40310A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179754(P2011−179754)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】