説明

ウレタン系部材用剥離剤及びウレタン系部材の剥離方法

【課題】シャフト部材が浸食されることなく、ウレタン系部材からなる層を剥離することが可能なウレタン系部材用剥離剤と、該ウレタン系部材用剥離剤を用いたウレタン系部材の剥離方法を提供する。
【解決手段】アルコール又はアルコールと水との混合物からなることを特徴とするウレタン系部材用剥離剤である。また、シャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設された一層以上のウレタン系部材からなる層3とを備えた弾性ローラ1を、上記のウレタン系部材用剥離剤に浸漬することを特徴とするウレタン系部材の剥離方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系部材用剥離剤及びウレタン系部材の剥離方法に関し、特にシャフト部材が浸食されることなく、ウレタン系部材からなる層を剥離することが可能なウレタン系部材用剥離剤、及びそれを用いたウレタン系部材の剥離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真方式の画像形成装置においては、現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として、ロール形状の弾性部材、即ち、弾性ローラが多用されており、該弾性ローラは、通常、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上の塗膜とを備えている。
【0003】
上記弾性ローラのシャフト部材には、鉄やステンレス等の金属の他、エンジニアリングプラスチック等の種々の樹脂が用いられる。一方、上記弾性ローラの塗膜には、熱硬化性ウレタン樹脂等の種々のウレタン系樹脂が用いられる。ここで、弾性ローラの製造工程において塗膜の不良品等が製造された際には、一般に弾性ローラの成形不良品を廃棄したり、複雑な工程を経て塗膜を形成する弾性層や表層等を剥離している。このような状況下、塗膜のみを効果的に剥離し、シャフト部材を再使用する方法が求められている。
【0004】
また、特開平5−9419号公報(特許文献1)には、非プロトン性溶媒、或いはイミン類またはケトン類などの異種原子間に不飽和結合を有する化合物Aと、沸点が250℃以下の常温で液体状態を呈する、一価以上のアルコール類或いはその誘導体からなる化合物Bとを含有する剥離除去剤を樹脂塗膜の剥離に使用する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特開平5−9419号公報に開示の技術を、樹脂基材からなるシャフト部材の再使用に利用した場合においては、化合物Aの樹脂基材に対する溶解作用が強く、樹脂基材を浸食してしまう問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−9419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、シャフト部材が浸食されることなく、ウレタン系部材からなる層を剥離することが可能なウレタン系部材用剥離剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるウレタン系部材用剥離剤を用いたウレタン系部材の剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、アルコール又はアルコールと水との混合物からなるウレタン系部材用剥離剤を用いることで、弾性ローラにおいて比較的低硬度のウレタン系部材からなる層を膨潤し、該層を硬質の基材から剥離できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明のウレタン系部材用剥離剤は、アルコール又はアルコールと水との混合物からなることを特徴とする。
【0010】
本発明のウレタン系部材用剥離剤は、前記混合物中の水の含有量が50質量%以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明のウレタン系部材の剥離方法は、シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上のウレタン系部材からなる層とを備えた弾性ローラを、上記のウレタン系部材用剥離剤に浸漬することを特徴とする。
【0012】
本発明のウレタン系部材の剥離方法の好適例においては、前記シャフト部材が、高剛性の樹脂基材からなるシャフト又は金属シャフトの半径方向外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフトである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルコール又はアルコールと水との混合物からなる、ウレタン系部材の剥離に適したウレタン系部材用剥離剤を提供することができる。また、シャフト部材及び一層以上のウレタン系部材からなる層を有する弾性ローラにおいて、該弾性ローラを上記のウレタン系部材用剥離剤に浸漬することで、シャフト部材が浸食されることなく、ウレタン系部材からなる層を剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のウレタン系部材用剥離剤は、アルコール又はアルコールと水との混合物からなることを特徴とする。シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上のウレタン系部材からなる層とを備えた弾性ローラにおいては、一般にシャフト部材が硬質の基材からなり、ここで、ウレタン系部材の剥離剤として有機溶媒を用いて弾性ローラを浸漬した場合には、比較的低硬度なウレタン系部材からなる層が膨潤し、シャフト部材から剥離することができる。しかし、上記シャフト部材が、高剛性の樹脂基材からなるシャフトや金属シャフトの半径方向外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフト等である場合、アセトン及び酢酸エチル等の有機溶媒を用いると、ウレタン系部材からなる層が膨潤により剥離されるものの、該シャフト部材が浸食されてしまう。これに対し、本発明のウレタン系部材用剥離剤は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒を使用しており、硬質の基材からなるシャフト部材を浸食することなく、ウレタン系部材からなる層を剥離することができる。かかる相違は、溶媒分子と高剛性樹脂との溶媒和により説明することができる。つまり、上記高剛性樹脂基材の浸食は、高剛性樹脂の高分子鎖同士の分子間結合が溶媒分子による溶媒和により弱まることで起こる。従って、エステル類、ケトン類等の有機溶媒は、シャフト部材に通常使用される高剛性樹脂基材の化学構造と似ているため、溶媒和が起き易いのに対し、本発明において使用するアルコール系溶媒は、シャフト部材に通常使用される高剛性樹脂基材の化学構造と異なり、溶媒和が起き難く、ウレタン系部材からなる層のみを剥離することができる。特に、ポリエステル系、ポリアセタール系、ポリカーボネート系等の高剛性樹脂基材は、エステル結合を多く含むため、エステル類、ケトン類等の有機溶媒に浸食され易い。なお、ウレタン系部材とは、詳細は後述するが、ウレタン結合(−NHCOO−)を1つ以上有する樹脂及び/又は化合物から形成される部材をいう。
【0015】
本発明のウレタン系部材用剥離剤として用いるアルコールは、水酸基(OH基)を1つ以上有する化合物である限り特に制限されるものではないが、親水性が高いものが好ましい。上記アルコールの親水性が高い場合には、水との混合物として容易に用いることができる。該アルコールとして、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1-アミノ-2-エタノール等の他の官能基を有するアルコール等が挙げられ、これらの中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノールが好ましい。
【0016】
本発明のウレタン系部材用剥離剤は、アルコールからなる他、アルコールと水との混合物でもよい。本発明のウレタン系部材用剥離剤がアルコールと水との混合物からなる場合、該ウレタン系部材用剥離剤の安全性を向上できる上、作業環境に優しい手法でウレタン系部材からなる層を剥離することができる。その上、上記ウレタン系部材からなる層に含まれるウレタン系部材以外の成分等が本発明のウレタン系部材用剥離剤中に溶解し難くなり、本発明のウレタン系部材用剥離剤の寿命が延びることになる。また、本発明のウレタン系部材用剥離剤において、混合物中の水の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、5〜40質量%であることが更に好ましい。上記混合物中の水の含有量が上記特定の範囲内である場合、一層以上のウレタン系部材からなる層を有する弾性ローラを30℃で浸漬すると、12時間以内にシャフト部材から塗膜を剥離することができる。なお、本発明のウレタン系部材用剥離剤は、アルコールが含有されていれば本発明の目的を達成することができ、必要に応じて水を含有する場合においては、弾性ローラの浸漬温度や浸漬時間等を適宜選択することで、ウレタン系部材からなる層をシャフト部材から剥離することができる。
【0017】
本発明のウレタン系部材用剥離剤には、上記アルコール、水の他、例えば、上記アルコールの製造工程において生成する不純物等を、本発明の目的を害しない範囲内で含有してもよいが、この場合、本発明のウレタン系部材用剥離剤中のアルコール及び水の合計の含有率は、80質量%以上であることが必要である。
【0018】
上述した本発明のウレタン系部材用剥離剤は、シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上のウレタン系部材からなる層とを備えた弾性ローラにおいて、ウレタン系部材からなる層の剥離剤として用いることができるが、上記シャフト部材が、高剛性の樹脂基材からなるシャフト又は金属シャフトの半径方向外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフトである場合に特に好適である。
【0019】
本発明のウレタン系部材の剥離方法は、シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上のウレタン系部材からなる層とを備えた弾性ローラを、上述したウレタン系部材用剥離剤に浸漬することを特徴とする。この場合、上述したとおり、比較的低硬度なウレタン系部材からなる層が上記ウレタン系部材用剥離剤により膨潤し、その結果、シャフト部材が浸食されることなく、ウレタン系部材からなる層を剥離することができる。
【0020】
以下に、図を参照して本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラを詳細に説明する。図1は、本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラの一例の断面図である。図示例の弾性ローラ1は、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設されたウレタン系部材からなる層3とを備え、該シャフト部材2は、金属シャフト2Aと、該金属シャフト2Aの半径方向外側に配設された高剛性の樹脂基材2Bとからなる。なお、図1に示す弾性ローラ1は、塗膜としてウレタン系部材からなる層3を一層のみ有するが、本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラは、図2に示すように塗膜としてウレタン系部材からなる層を二層以上有していてもよい。また、図1に示すシャフト部材2は、金属シャフト2Aと高剛性の樹脂基材2Bとからなるが、本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラにおいて、シャフト部材はこれに限られるものではなく、図2に示すように高剛性の樹脂基材2Bのみから構成されてもよいし、図3に示すように別の構造のシャフト部材であってもよい。
【0021】
図2は、本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラの他の例の断面図である。図示例の弾性ローラ4は、シャフト部材2の半径方向外側に配設されたウレタン系部材からなる層3を二層有している。なお、本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラがウレタン系部材からなる層を二層以上有している場合、各ウレタン系部材からなる層の構成は、同一であっても、異なっていてもよい。例えば、図2に示す弾性ローラ4においては、ウレタン系部材からなる層3が、導電剤を含んだウレタン系部材を発泡体として用いた弾性層3aと、該弾性層3aの厚みより薄く且つウレタン系部材を非発泡体として用いた表層3bとからなる。また、図2に示す弾性ローラ4においては、シャフト部材2が、高剛性の樹脂基材2Bのみから構成されている。
【0022】
図3は、本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラの他の例の断面図である。図示例の弾性ローラ5のシャフト部材2は、中空にくりぬいた金属製スリーブ2Cと、該金属製スリーブ2Cの両端部に固定された高剛性の樹脂基材のフランジ2Dとからなる。
【0023】
本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラにおいて、シャフト部材2は、特に制限されず、金属シャフト2Aと高剛性の樹脂基材2Bとから構成されてもよいし、高剛性の樹脂基材2Bのみから構成されてもよいし、金属シャフト2Aのみから構成されていてもよいし、内部を中空にくりぬいた金属製又は高剛性樹脂製の円筒体等であってもよい。なお、シャフト部材2に高剛性の樹脂を使用する場合、高剛性樹脂に導電剤を添加・分散させて、十分に導電性を確保することが好ましい。ここで、高剛性樹脂に分散させる導電剤としては、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、カーボンファイバー、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末等の粉末状導電剤が好ましい。これら導電剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該導電剤の配合量は、特に制限されるものではないが、高剛性樹脂の全体に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0024】
上記金属シャフト2Aや金属製円筒体の材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。また、上記高剛性の樹脂基材2Bの材質としては、ポリアセタール(POM)、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド12、ポリアミド4・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミドMXD6、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアセタール(POM)、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートが好ましい。これら高剛性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明のウレタン系部材の剥離方法において、弾性ローラのウレタン系部材からなる層は、ウレタン系部材から形成され、必要に応じて導電剤等の他の成分を含むことができる。該層の形成に用いるウレタン系部材は、ウレタン結合(−NHCOO−)を1つ以上有する樹脂及び/又は化合物から形成され、例えば、加熱により硬化可能な樹脂及び/又は化合物、紫外線により重合可能な樹脂及び/又は化合物、好ましくは、紫外線により重合可能な炭素原子間二重結合を有する樹脂及び/又は化合物等から形成される。また、上記弾性ローラにおいては、ウレタン系部材を非発泡体として用いてもよいし、発泡体として用いてもよい。
【0026】
上記加熱により硬化可能な樹脂及び/又は化合物としては、ウレタン結合(−NHCOO−)を複数有するウレタンが好ましく、ウレタン原料を機械撹拌発泡して得られる発泡ウレタン、即ち、メカニカル・フロス法発泡成形ウレタンが更に好ましい。該発泡ウレタンは、発泡剤を用いることなく、ウレタン原料を機械的に撹拌して気泡を混入させる方法で製造される。ここで、ウレタン原料としては、ポリオール及びポリイソシアネート、又はポリオールとポリイソシアネートとから合成したウレタンプレポリマー及び鎖延長剤が挙げられ、該ウレタン原料には、更に触媒、整泡剤並びに上述の導電剤等を添加することができる。また、上記発泡ウレタン中の気泡は主として独立気泡であり、その発泡倍率及び密度はエアーの入れ方で適宜調整することができる。
【0027】
上記発泡ウレタン原料として用いることができるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、プロピレンオキサイド(PO)変性ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。また、上記発泡ウレタン原料として用いることができるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等を用いることができる。更に、上記鎖延長剤は、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとを反応させたウレタンプレポリマー同士を連結する化合物であり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0028】
また、上記紫外線により重合可能な炭素原子間二重結合を有する樹脂及び/又は化合物としては、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)を1つ以上有し、ウレタン結合(−NHCOO−)を1つ以上有するウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はモノマーであることが好ましい。ここで、ウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はモノマーの官能基数及び分子量等は特に制限されるものではない。該ウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はモノマーは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとからウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーに水酸基を有するアクリレートを付加させることによって製造することができる。なお、上記ポリオール及びポリイソシアネートとしては、上述した発泡ウレタン原料として用いることができるポリオール及びポリイソシアネートと同様のものが挙げられる。
【0029】
上記ウレタンプレポリマーに付加させる水酸基を有するアクリレートは、水酸基を1つ以上有し、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)を1つ以上有する化合物である。該水酸基を有するアクリレートは、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に付加することができる。該水酸基を有するアクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これら水酸基を有するアクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記ウレタン系部材からなる層の形成方法は、特に限定されるものではなく、ウレタン結合(−NHCOO−)を1つ以上有する樹脂及び/又は化合物の他に、必要に応じて導電剤、微粒子、そして、該層の形成方法に応じて必要となり得る他の配合剤等を含む塗料を調製し、該塗料をディップ法、ロールコーター法、ドクターブレード法又はスプレー法等によりシャフト部材上に塗布したり、予めシャフト部材が配置された円筒状のモールドに注入して、架橋硬化させて形成する方法が好適に採用される。また、二層以上有するウレタン系部材からなる層の形成方法は、同様の手順を繰り返し行うことで形成でき、更に、各層を形成する塗料の成分は、同様であっても、異なっていてもよい。なお、上記ウレタン系部材の原料として加熱により硬化可能な樹脂及び/又は化合物を用いた場合には、加熱により架橋硬化させる。一方、上記ウレタン系部材の原料として紫外線により重合可能な炭素原子間二重結合を有する樹脂及び/又は化合物を用いた場合には、紫外線照射により架橋硬化させる。ここで、紫外線照射に用いる光源としては、水銀灯、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられ、紫外線照射の条件は、各種塗料に含まれる成分及び塗布量等に応じて適宜選択され、照射強度や積算光量等を適宜調整すればよい。
【0031】
上記ウレタン系部材からなる層は、全体の厚さが20μm〜6.5mmであることが好ましい。該ウレタン系部材からなる層の全体の厚さが20μm未満では、充分な弾性を保つことができず、一方、6.5mmを超えると、本発明のウレタン系部材用剥離剤による塗膜の膨潤に時間がかかる場合がある。この場合、浸漬温度を上昇させることで、塗膜の膨潤にかかる時間を短縮することもできるが、アルコールの蒸発が起き易くなるため、本発明のウレタン系部材用剥離剤のアルコール含量をコントロールできなくなる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
まず、実施例1〜9及び比較例1〜3において共通した仕様のシャフト部材と、ウレタン系部材からなる層とを有する弾性ローラを以下の処方に基づき作製した。
【0034】
(弾性ローラAの製造例)
ポリエーテルポリオールによりプレポリマー化されたNCO含有率6.7%のポリオール変性トリレンジイソシアネートであるイソシアネート成分100質量部と、導電性カーボンブラック2.0質量部、水酸基価37.0mgKOH/gで平均官能基数3のポリエーテルポリオール21質量部、水酸基価388mgKOH/gで平均官能基数3のポリエーテルポリオール19質量部、水酸基価34mgKOH/gの反応性シリコーン整泡剤(ポリジメチルシロキサン/ポリエチレンオキサイド共重合体)5質量部、過塩素酸ナトリウム0.3質量部及びジブチルスズジラウレート0.2質量部とを混合し、ポリウレタン原料を調製した。このポリウレタン原料をメカニカルフロス法により発泡させた。この発泡ポリウレタン原料を、表1に示す樹脂からなる軸がセットされた金型に注型することにより、軸の周囲にウレタン発泡体の弾性層を有するローラ本体を作製した。なお、得られたウレタン発泡体の発泡倍率は1.6倍であった。
【0035】
次に、上記ローラ本体の表面に、下記に示す配合処方の表層用塗料をロールコーターにて塗布し、UV照射強度1500mW/cm2で5秒間UV照射して、表面にUV塗膜[厚さ:20μm]を有する弾性ローラAを得た。なお、表層用塗料としては、ウレタンアクリレートオリゴマー[日本合成化学工業(株)製,商品名「UV−3000B」,重量平均分子量:18000]60質量部と、アクリレートモノマー[新中村化学工業(株)製,アクリロイルモルホリン]40質量部と、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製,光重合開始剤]1質量部を混合して調製したものを用いた。
【0036】
(実施例1〜9及び比較例1〜3)
表1に示す剥離剤を調製し、シャフト部材に500gの重りを載せた弾性ローラAを該剥離剤中に浸した。そして、30℃で12時間放置した後、ウレタン系部材からなる層が剥離した弾性ローラAのシャフト部材の外観を目視にて評価し、シャフト部材への浸食が見られなかったものを「無し」、浸食が見られたもの「有り」として判定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
*1 東レ(株)製,商品名:トレコン1201G−15.
*2 日本ポリペンコ(株)製,商品名:POM−SL.
【0039】
表1の結果から、実施例において用いたアルコール又はアルコールと水との混合物からなる本発明のウレタン系部材用剥離剤は、比較例において用いたケトン類又はエステル類からなる剥離剤と異なり、ウレタン系部材からなる層を剥離するだけで、樹脂基材を浸食することがないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラの一例の断面図である。
【図2】本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラの他の例の断面図である。
【図3】本発明のウレタン系部材の剥離方法に用いる弾性ローラの他の例の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 弾性ローラ
2 シャフト部材
2A 金属シャフト
2B 高剛性の樹脂基材
2C 金属製スリーブ
2D 高剛性の樹脂基材のフランジ
3 ウレタン系部材からなる層
3A 弾性層
3B 表層
4 弾性ローラ
5 弾性ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール又はアルコールと水との混合物からなることを特徴とするウレタン系部材用剥離剤。
【請求項2】
前記混合物中の水の含有量が50質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のウレタン系部材用剥離剤。
【請求項3】
シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上のウレタン系部材からなる層とを備えた弾性ローラを、請求項1又は2に記載のウレタン系部材用剥離剤に浸漬することを特徴とするウレタン系部材の剥離方法。
【請求項4】
前記シャフト部材が、高剛性の樹脂基材からなるシャフト又は金属シャフトの半径方向外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフトであることを特徴とする請求項3に記載のウレタン系部材の剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−133401(P2008−133401A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322173(P2006−322173)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】