説明

エアゾール発生装置およびこの装置を用いたエアゾール発生方法

【目的】
ジェット式ネブライザーに用いられるエアゾール発生装置において、大量かつ微小なミストの生成を可能とする。
【解決手段】
エアゾール発生装置の容器1の底面中央から上に向かってガスを導入するように配されたガス導入管6の外側に上面の中央に細孔8を有する筒状体9を被せ、ガス導入管6の外壁10と筒状体9の内壁12との間に、ガス導入管6の外壁10のほぼ全高に亘って形成される円筒状のスリットの幅を2.0〜0.3mmの範囲とした。また、筒状体9の上面の細孔8から隔たりを置いてバッフル11を配し、バッフル11の凸曲面Rと、筒状体9の上面に、細孔8を通りかつ、凸曲面Rと同心で曲率の大きな凹曲面14を形成し、凸曲面Rと凹曲面14との間に曲面のスリットを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として医療に用いるエアゾールを発生させる装置に関し呼吸療法に用いるものである。
【背景技術】
【0002】
医療に用いられるエアゾール発生装置は、ネブライザーと呼ばれ、その歴史は古い。人工呼吸器で気道に導入される吸気ガスは、酸素または酸素量を増した空気・酸素混合ガスであって、患者を治療するとき、気道に導入されるが、吸気ガスには湿気が含まれていないために、ネブライザーによる加湿が必要である。
【0003】
呼吸の治療に用いるエアゾールには、滅菌精製水あるいは生理食塩水から生成するエアゾールが専ら用いられ、エアゾールの発生原理もジェット式、超音波式、定量噴霧式、メッシュ式などが市場に見られる。また、呼吸不全の患者の治療に用いられる人工呼吸器の進歩も著しく、多くの人工呼吸器が市場にでているが、これらの人工呼吸器に併用して用いられるネブライザーも多種多様であり、それぞれ一長一短を有している。そして、これらのネブライザーが供給するエアゾール中に分散しているミストが患者の肺胞にまで達するためには、ミストの大きさが2μm近辺でなければならないということが最近知られるようになった。このために、平均粒子径が2μm近辺のエアゾールを高濃度で生成するエアゾール発生装置の出現が強く望まれているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネブライザーからのエアゾールミストは、ミスト発生方式によって、大きさ、分布がまちまちであり、最も望ましいミストの大きさと分布を有しかつ高濃度のエアゾールを生成するネブライザーは未だに存在しないのである。ミストが気道の末梢先端である肺胞にまで達するためには、その大きさが2μm以下でなければならない。ジェット式ネブライザーはとても良いミストを発生するが、他のネブライザーと比較すると粒子の大きさは5〜15ミクロンと大きく、また均一性に大きく劣る。またジェット式ネブライザーでは、液体の特性(濃度、粘着性、表面張力)、噴射されるガスの流量などが粒子の大きさに非常に大きく影響する。中でもガス流量の影響は大きく、常に粒子の大きさを一定の範囲内に収めることは難しい。
【0005】
特にミストの粒子が比較的に大きいために、気道末梢、肺胞までミストが到達する可能性は極めて低く、ほとんどが鼻腔ないし上気道に沈着してしまう。超音波式ネブライザーは、ミスト粒子の大きさは、1〜5μmと比較的に好ましいが、大量にミストを生じさせることが出来ず、大量にミストを生じさせるためには装置そのものが大きくて重くなる。また時間とともに薬液の成分が変わるという本質的な欠点も有している。
【0006】
定量噴霧式ネブライザーは、ミストの大きさは、2.4〜5.5μmとされ、軽くて安価であるが、ミスト発生能力が低く、加湿効果が極端に低い。メッシュ式ネブライザーは、ミストの大きさは、2.0μm付近でミストは末梢気道へ到達するが、高価である上ミストの発生量が上げられず、使用に制限がある。現在、発生されるミストの大きさが2μmを中心にした狭い分布を持ち、かつ高濃度にエアゾールを発生できるネブライザーは、呼吸治療の立場から垂涎のものであるが、未だに存在しないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるエアゾール発生装置は、液体を入れる容器と、この容器の底面に立設されるガス導入管と、このガス導入管の上面に形成され、導入ガスを上方に噴出する第1の細孔と、上記ガス導入管の外周囲および上面を覆うように配置される筒状体と、上記第1の細孔の上方に間隔を隔てて位置するように、この筒状体の上面に形成される第2の細孔と、この第2の細孔の上方に間隔を隔てて配置されるバッフルとを備え、上記筒状体の下方部分と上記容器の底面との間には、上記容器内の液体を上記ガス導入管の外周と上記筒状体の内周との間に形成される隙間に導入するための隙間が形成され、上記ガス導入管の外周と上記筒状体の内周との間に形成される隙間の幅が2.0〜0.3mmである。また、上記バッフルは、上記第2の細孔に向かって突出するように形成された凸曲面を備え、上記筒状体の上面には、上記第2の細孔の周辺に、上記凸曲面とその曲率の中心を同じくしかつ、上記凸曲面の曲率よりも大きな曲率の凹曲面を備え、上記バッフルの上記凸曲面と上記筒状体の上記凹曲面との間に曲面のスリットを形成したものであってもよい。
【0008】
また、本発明によるエアゾール発生方法は、上述のエアゾール発生装置において、エアゾール発生装置を作動させるガス圧が1.0kg/cm〜4.0kg/cmの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、呼吸医療で垂涎の、2μmの大きさの粒子サイズのミストのエアゾールを高濃度に生成する小型かつ安価なエアゾール発生装置提供し、従来不可能であった末梢気道、さらに肺胞までエアゾールミストを到達させる手段を提供したもので、呼吸器治療に新時代を開く効果をもたらすものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ジェット式ネブライザーに全く新しいアイデアを導入して完成した発明であるので、本発明を説明する前に現状のジェットネブライザーの原理と欠点とを図1によって説明する。
【0011】
図1(A)、(B)および(C)は原理を示す。いずれも液体の入った容器1に細いT字管2が垂直に立てられており、垂直管3の先端にジェット流が横から当たるようになっている。図1(D)はその典型的な一変形である。図1(C)および図1(D)に示したものは、ベンチュリー管の原理で外部の雰囲気から空気を吸い込み増量したガスを吹き出すようにしたものである。図1(C)の場合、垂直管3の下流側に空気の吸い込み口4が設けられている。また、図1(D)の場合、空気通路5内に位置する垂直管3の先端部の上流側にガス導入管6の吹き出し口7を配している。
【0012】
垂直管3の中を液が上昇するのは、ベルヌーイの法則によって垂直管3の先端部(駆動ガスが流れる水平方向の管が一部で細くされている部分)が減圧になるからであり、そして、吸い上げられた液にジェット流が当たって、吸い上げられた液が微小な粒に分散する。ここで欠点を整理すると、(1)吸い上げられた液がミストになるのはごく一部であり、大部分は周囲に分散して再び容器に戻る。すなわち液の利用効率が極めて悪い。(2)細管(垂直管3)で液を吸い上げるために大量の液を吸い上げることが出来ない、などである。
【0013】
本発明者は根本的に発想を変え、ジェット式ネブライザーの特徴をフルに利用しながらその効果を最大限に活用する方法を検討してさまざまなアイデアを具現化して考案を積み重ねて本発明に到達した。
【0014】
本発明者は、歴史的には最も古く、汎用されているジェット式ネブライザーの欠点の抜本的改良によって、市場の要請に応えることが出来るネブライザーを作ることが出来るのではないかとの発想で、鋭意研究を進めた結果本発明に到達したものである。以下、図2を参照して本発明を具体的に説明する。
【0015】
本発明の特徴とするところは、エアゾールを発生する装置であって、容器1の底面の中央から上に向かってガスを導入するガス導入管6を配し、このガス導入管6に被せるように上面の中央に細孔8を有する筒状体9が該ガス導入管6を囲んで配設されており、該筒状体9と前記ガス導入管6の間には、該ガス導入管6外壁10のほぼ全高に亘って円筒状のスリットを形成し、該筒状体9と容器1の底面との間に間隙を有し、該筒状体9の上面の細孔8から隔たりを置いてバッフル11を配してなることを特徴とするエアゾール発生装置の改良に係るものである。
【0016】
本発明の第1の特徴は、ガス導入管6とそれを覆っている筒状体9とでベンチュリー管を形成しているので、高速のガス流がガス導入管6に流れると、ネブライザー容器1の液体はベンチュリーの法則にしたがってガス導入管6とそれを覆う筒状体9との間のスリットの全容積を利用して吸い上げられるので、大量の液が吸い上げられることになり、従来の方法による細い管を通して吸い上げられる液量と比べて見ると大差があることである。すなわち、上記スリットを利用し大容量の液を吸い上げることにより今まで垂涎でありながら実現不可能であった高濃度のエアゾールの生成が本発明によって可能にすることが出来るはずである。
【0017】
最近、岡田氏によってバード博士の提案になるネブライザーと全く同じものが提案(特開平11−128348号公報)されているが、その内容はバード博士の論文によってすべて公知である。
【特許文献1】特開平11−128348公報
【非特許文献1】The FLYING PHYSICIAN (VOLUME 30, NO.2, JUNE 1987 the Flying Physicians Association 発行)
【0018】
このタイプのネブライザーの基本的概念はバード博士により提案されているが、実用化するには解決しなければならない問題も多かった。本発明者はこの問題点を解決して本発明に到達したものである。
【0019】
すなわち、本発明の効果を実現するためには特定の条件が不可欠なことを見出し、前記基本概念の発案者であるフォレスト・バード博士の助言を受けて、種々に改良を試み、本発明に至ったものである。大量の液を吸い上げるにはスリットの幅が極めて重要であること、特定の条件を満たさない限り本発明の効果は全く見られないことを本発明者は見出したのである。以下、図3を参照して本発明のエアゾール発生装置の特徴を説明する。なお、図3においては、容器部分のみを示しており、容器部分の上側は図2と同様の空気通路5を有する部材に接続される。
【0020】
ガス導入管6とそれを覆う筒状体9の間のスリットの幅W1は2mm〜0.3mmであることが不可欠なのである。この幅W1が2mm以上の場合、液の重さのために充分液を吸い上げられなくなり、エアゾール化液量が減少し、0.3mmより小さいと逆に液の吸い上げ量が減って本発明の効果を最大限に引き出せない。最も望ましいスリット幅W1は1.5mm〜0.7mmである。
【0021】
本発明の第2の特徴は、吸い上げられた液体のミスト化効率である。従来の技術の項で述べたように、従来の方法では吸い上げられた液体は液の流れと直角方向からジェット流が吹き付けられるので、ミスト化される部分は限られて、吸い上げられた液の相当量がミスト化されずに落下してしまい決して効率は良いとはいえない。
【0022】
本発明では、ガス導入管6の外壁10とそれを覆う円筒体9の内壁12との間に形成される円筒状のスリットを上昇した液は、該円筒体9の上部の細孔8に向かって自然に集まるようになっている。そして、そこに向かって高速のガスが吹き付けられるためにほとんどロスなしに液体は全量がミスト化されるのである。既述の第1の特徴と相まって大量の液体が効率よくミスト化されるので、高濃度のエアゾールを発生する本発明の装置が可能となった。
【0023】
本発明の第3の特徴は、生成したエアゾール流の集束性である。既に述べたように、ガス導入管6の長さ(高さ)方向にスリットを通って上昇した液は、該円筒体9の上面中央部の細孔8の下方の空間に向かって集まり、そこへガス導入管6からの高速のジェットガスと激しく衝突してミスト化する。その際、生成エアゾールミストは、2つの細孔、すなわち、ガス導入管6の先端の細孔13、それを覆うように設置された円筒体9の細孔8の、一直線上に並んだ2つの細孔13、8を通る高速のジェットガスの流れによって作られる。これらの細孔8、13の大きさは、細孔8の方が細孔13よりも大きいことが必要である。そうでないと細孔13から放出されるガス流が細孔8のところで制限されてミストの量が減量されて好ましくない。
【0024】
本発明の第4の特徴は、円筒体9の上面の細孔8から噴出したエアゾール流が直ちに曲面Rをなすバッフル11に衝突してミスト粒子がさらに細かい超微粒子に再分裂させるようにした点にある。本発明の第4の特徴によって、バッフル11に衝突するエアゾールミストは常にバッフル11の曲面Rの中央部に規制されて同じ場所に衝突させることを可能にし、その効果で、本発明によるエアゾールでは、ミスト粒子の大きさが2μmを中心とした狭い分布にすることを実現した。本発明のこの技術によって、生成したエアゾールを医療用として肺気道に適用し、気道の末梢部分、肺胞まで大量のエアゾールミストを導入することが可能となった。これは、従来の既存のネブライザーでは実現できなかったことである。
【0025】
バッフル11の曲面Rは、凸曲面をなしており、曲率半径は、10mm〜3mmが好ましく、さらに好ましくは、9mm〜5mm、さらに好ましくは、8mm〜6mmである。曲率半径が3mmより小さいと、エアゾールの流れがバッフル11の曲面Rと斜めに衝突する部分が生じ、再粉砕、超微粒子化が不十分のままバッフルの曲面の沿ってすり抜けてゆく部分が生じるため、ミストの粒子が不揃いに大きくなって分布も広くなる。曲率半径が10mmより大きいと、ミストの粉砕効率は良いが、エアゾールの流れがスムースに行かないなどの問題を生じる。
【0026】
本発明の第5特徴は、ガス導入管6に被さるように配された円筒体9の上面の細孔8周囲の形である。細孔8のある周囲部分は、それに対応するバッフル11の曲面Rの凸曲面に対応して凹曲面14をなしており、この凹曲面14とバッフル11の凸曲面との間に曲面をなすスリットが形成され、このスリットの幅W2が一定になるように設定されていることである。
【0027】
さらに具体的に説明すると、たとえば、バッフル11の凸曲面の曲率半径が8mmであり、円筒体9の上面の細孔部は、細孔8を通りかつ、該バッフル11の凸曲面と同心で、その曲率半径が9mmであり、その場合、両曲面間のスリット幅W2は1mmとなっている。このようにバッフル11の凸曲面と細孔部の凹曲面14とが相対して、曲面状のスリットを形成しているのが本発明の特徴であり、その詳細は図3に示されている通りである。
【0028】
本発明の第6特徴は、該円筒体9の上面の細孔8を通りかつ、該バッフル11の凸曲面と同心で曲率の大きな凹曲面14と該バッフル11の凸曲面までのスリット幅W2が非常に狭いことであって、その距離は、3mm以内であり、3mm〜0.5mmであることが必要である。さらに好ましくは、2mm〜0.5mmであり、さらに好ましくは、1.5mm〜0.7mmである。
【0029】
この距離が3mmより大きいと、生成ミストの大きさの分布の中心は、2μmよりも大きくなり、また分布の幅も大きくなって好ましくない。またこの距離が0.5mmよりも小さくなると生成エアゾールの通り道が狭くなりすぎて支障を生じることがある。この場合、生成エアゾールの流れが乱れて好ましくない。
【0030】
本発明の第7の特徴は、既に述べた数々の特徴を具備しながら、極めて小型で軽量であることである。本発明になるエアゾール発生装置は、端的な表現をすれば、片手で軽々持てる大きさであり、これは実用面で極めて重要である。実際に本発明になるネブライザーは、外径は5cm以下が可能であり、容器の高さも5〜6cmの小型にすることが出来る。従来の製品では、2μmのミスト粒子を作ろうとすれば、超音波式装置のように極めて大型で重いものとなり、しかもエアゾール発生量が小さい。また高濃度のエアゾールを発生させるこれまでのジェット式の装置では、通常ミスト粒子の大きさが、大きくなってしまい、医療用に適用しても上気道でそのほとんどが沈着してしまって、細気管支や末梢気管支、肺胞には届かず、治療目的に充分なものとはいえない。
【0031】
本発明は、これまで未解決であった多くの問題点を見事に解決し、市場の垂涎のエアゾール発生装置を完成したものである。
【0032】
本発明を実施するに当たり、陽圧のガスをガス導入管から導入するのであるが、所望の大きさのミスト粒子、所望のミストの分布を得るためには、導入ガスの圧力が重要である。導入ガスの圧は1.0kg/cm以上4.0kg/cm以下が好ましく、さらに好ましくは、1.4kg/cm以上3.5kg/cm以下、さらに好ましくは、2.0kg/cm以上3.0kg/cm以下である。導入ガスの圧が1.0kg/cm以下 ではエアゾール流の流速が低すぎて、所望の粒子形に分散できず、4.0kg/cm以上では、分散が効きすぎてミストの粒子形が細かすぎて気道内に沈着しないで呼出してしまうミストが増加して逆に好ましくない。上記の範囲にガス圧を規制する限り、ミストのサイズにほとんど影響が見られない。これは本発明の第8の特徴ということが出来る。
【0033】
上述のように、本発明者は、流体の動力学的な挙動に注目し、新しい着想を導入して、鋭意検討を進め、ついに現状の問題点を解決して安価にして軽量で好ましいミスト粒子を高濃度に含むエアゾール発生装置の発明に至ったのである。
【0034】
本発明はベンチュリー管をスリットを通して大量の液体を吸い上げ、従来の細管で吸い上げる方法と置き換え、さらにて吸い上げた液体を一点に集束してそこへジェットガスを作用させ、その直後のバッフルに生成エアゾールを衝突させて、ミストを再粉砕して、高濃度の超微細ミストを得ることに成功したものである。
【0035】
以下さらに参考例および実施例によって、本発明をさらに詳しく説明するが、決して本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0036】
図3に示した本発明になるエアゾール発生装置を用いた。容器1部分の外径は、46mm、高さは55mmである。容器1内に突出するガス導入管6の部分の高さは20mm、外径は5mmである。ガス導入管6に被さった円筒体9の内径は7mm、したがってガス導入管6とガス導入管6に被さった円筒体9との間のスリットの幅W1は1mmであった。本例の場合、バッフル11の曲面Rは凸球面でその曲率半径は8mmであり、これに対応して円筒体9の上面の凹曲面14は細孔8を通りかつ、該バッフル11の凸曲面と同心の凹球面を形成し、その曲率半径は9mmであり、したがって細孔8とバッフル11の曲面Rとの距離は、1mmである。この装置を用いてエアゾールを発生させた。本例ではガスの導入圧は2.8kg/cmであった。この場合、ガスの流速は毎分8リットルであった。エアゾールの粒子の分布を図4に示した。粒子は2μmを中心にほとんどが5μm以下でシャープな分布をしていることが判る。エアゾール発生量は、毎分2.8ミリリットルであった。
【実施例2】
【0037】
実施例1と同じ装置を用いて、ガス流量を変えて同じような実験を行なった。得られた粒子の平均の大きさと、ガス流量との関係を図5に示した。本発明の装置は、流量を本実験範囲で変化させても、安定に2μmを中心とするミスト粒子が得られることが判る。本例では、ガス流量毎分11〜6リットルが導入ガスの圧4.0kg/cm〜1.0kg/cmに相当した。
【0038】
〔参考例1〕
バッフル11の凸曲面Rの曲率半径が2.3mmであり、これに対応する円筒体9上面の細孔8のある凹曲面14の曲率が3.3mmのものを用いた以外は、実施例1と同じである。本例を実施例1と同じ条件で実施して、生成エアゾールの粒子分布を測定したところ、図6の実線のようになった(X表示)。棒グラフで示した実施例1のデーターと比べると、ピークの位置が3μm付近に移動し、粒子サイズが大きめになっていることが判る。
【0039】
〔参考例2〕
バッフル11の曲面Rと円筒体9の上面の細孔8までの距離を5mmとした以外は、実施例1と同じである。この条件で得られたエアゾールの粒子のサイズの分布状態は図6に点線で示されている(Y表示)。この場合、円筒体9の上面の細孔8からバッフル11の曲面Rまでの距離が長くなったためにミスト粒子の再微粉砕効果が激減し、粒子分布が大きい方に移動していることが判る
【0040】
〔参考例3〕
バッフルを全く用いなかった場合のエアゾールミストの分布状況を図6に示したものである(Z表示)。粒子サイズは大きく、かつブロードであることを示している。
【0041】
〔参考例4〕
実施例1の装置で、ガス導入管の外壁とそれに被さっている円筒体の内壁との距離、言い換えるとスリットの幅が2.2mmである以外は実施例1と全く同じである。本例では液のエアゾール化が劣り、エアゾール発生量は、毎分1.8ミリリットルであった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】現状のジェットネブライザーの原理と欠点とを概略的に示す図である。
【図2】本発明によるエアゾール発生装置の概略的な断面図である。
【図3】本発明によるエアゾール発生装置の特徴点を示す断面図である。
【図4】ガスの流速が毎分8リットルであるときのエアゾールの粒子の分布を示す図である。
【図5】本発明によるエアゾール発生装置において得られたエアゾール粒子の平均の大きさとガス流量との関係を示す図である。
【図6】参考例1〜3の条件下で生成されたエアゾール粒子の大きさの分布図である。
【符号の説明】
【0043】
1 容器
6 ガス導入管
8 細孔
9 筒状体
10 外壁
11 バッフル
12 内壁
13 細孔
R 曲面
W1 スリット幅
W2 スリット幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入れる容器と、
この容器の底面に立設されるガス導入管と、
このガス導入管の上面に形成され、導入ガスを上方に噴出する第1の細孔と、
上記ガス導入管の外周囲および上面を覆うように配置される筒状体と、
上記第1の細孔の上方に間隔を隔てて位置するように、この筒状体の上面に形成される第2の細孔と、
この第2の細孔の上方に間隔を隔てて配置されるバッフルとを備え、
上記筒状体の下方部分と上記容器の底面との間には、上記容器内の液体を上記ガス導入管の外周と上記筒状体の内周との間に形成される隙間に導入するための隙間が形成され、
上記ガス導入管の外周と上記筒状体の内周との間に形成される隙間の幅が2.0〜0.3mmであることを特徴とするエアゾール発生装置。
【請求項2】
液体を入れる容器と、
この容器の底面に立設されるガス導入管と、
このガス導入管の上面に形成され、導入ガスを上方に噴出する第1の細孔と、
上記ガス導入管の外周囲および上面を覆うように配置される筒状体と、
上記第1の細孔の上方に間隔を隔てて位置するように、この筒状体の上面に形成される第2の細孔と、
この第2の細孔の上方に間隔を隔てて配置されるバッフルとを備え、
上記筒状体の下方部分と上記容器の底面との間には、上記容器内の液体を上記ガス導入管の外周と上記筒状体の内周との間に形成される隙間に導入するための隙間が形成され、
上記バッフルは、上記第2の細孔に向かって突出するように形成された凸曲面を備え、
上記筒状体の上面には、上記第2の細孔の周辺に、上記凸曲面とその曲率の中心を同じくしかつ、上記凸曲面の曲率よりも大きな曲率の凹曲面を備え、
上記バッフルの上記凸曲面と上記筒状体の上記凹曲面との間に曲面のスリットを形成したことを特徴とするエアゾール発生装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエアゾール発生装置において、エアゾール発生装置を作動させるガス圧が1.0kg/cm〜4.0kg/cmの範囲であることを特徴とするエアゾールの発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−75385(P2006−75385A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263358(P2004−263358)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(596086907)