エアバッグ装置
【課題】エアバッグの膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラーの前面を覆い可能なエアバッグ装置の提供。
【解決手段】エアバッグ装置M1は、フロントピラー1の後側に隣接されてドアミラー27を有したフロントドア13を有する車両に搭載される。エアバッグ42が、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1aを覆うように配置されるピラーカバー部47と、ピラーカバー部47の下方に配設されて、膨張完了時の後端側の部位を、ドアミラー27の上面側におけるドアミラー27と車両の側面との間の隙間に嵌合させるように配置される嵌合セル部50と、を備える。嵌合セル部50が、前後の略全域にわたってピラーカバー部47の下縁側に連結されている。
【解決手段】エアバッグ装置M1は、フロントピラー1の後側に隣接されてドアミラー27を有したフロントドア13を有する車両に搭載される。エアバッグ42が、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1aを覆うように配置されるピラーカバー部47と、ピラーカバー部47の下方に配設されて、膨張完了時の後端側の部位を、ドアミラー27の上面側におけるドアミラー27と車両の側面との間の隙間に嵌合させるように配置される嵌合セル部50と、を備える。嵌合セル部50が、前後の略全域にわたってピラーカバー部47の下縁側に連結されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラーにおける下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の歩行者との衝突時に、歩行者が車両のフロントピラーに直接当たらないように、フロントピラーの前面側を覆うようにエアバッグを膨張させて配置させる構成のエアバッグ装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のエアバッグ装置では、エアバッグは、車両のフロントドアに配設されるドアミラーの前側の領域に折り畳まれて収納されて、膨張完了時に、ドアミラー近傍となるフロントピラーの下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆う構成とされていた。詳細には、従来のエアバッグ装置において、エアバッグは、フロントピラーの元部(下端)から上下方向の中央付近にかけての領域の前面側を覆う長尺状のピラーカバー部と、ピラーカバー部の上下の中央付近から突出するように配置されるとともにピラーカバー部とドアミラーとの間に介在されてドアミラーに支持される支持膨張部と、を有しており、このドアミラーの内側面に支持された支持膨張部によりピラーカバー部を支持させて、膨張完了時において歩行者を受け止めた際に、車外側への横ずれを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6957公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエアバッグ装置のエアバッグでは、支持膨張部は、ピラーカバー部の上下の中央付近から部分的にドアミラー側に向かって突出するように構成されるとともに、ドアミラーの内側面に支持されていることから、膨張完了時のピラーカバー部のぶれを抑えることができるものの、歩行者がピラーカバー部を強く車外側に向かって押圧した際に、支持膨張部がドアミラーの内側面から外れて、ドアミラーの上面を滑る虞れがあり、ピラーカバー部のフロントピラーからずれるような横ずれを的確に抑える点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグの膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラーの前面を覆い可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置は、車両のフロントピラーにおける下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆い可能なエアバッグを、備える構成のエアバッグ装置であって、
車両が、フロントピラーの後側に隣接して配設されて、フロントピラーの後方に位置するサイドウィンドを有し、かつ、サイドウィンドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを、備え、
エアバッグが、
フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近に配置される収納部位内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、収納部位から突出しつつ膨張する構成とされて、
膨張完了時に、フロントピラーの前面を覆うように配置されるピラーカバー部と、
ピラーカバー部と区画されて、膨張完了時に、ピラーカバー部の下方に配設されるとともに、後端側の部位を、ドアミラーの上面側におけるドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合させるように配置される嵌合セル部と、
を備える構成とされ、
嵌合セル部が、前後の略全域にわたってピラーカバー部の下縁側に連結されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のエアバッグ装置では、エアバッグが、フロントピラーの前面を覆うピラーカバー部と区画されて、膨張完了時に、ピラーカバー部の下方において、後端側の部位を、ドアミラーの上面側におけるドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合されて配置される嵌合セル部を、有していることから、エアバッグの膨張完了時に、この嵌合セル部が、左右方向(車内外方向)側を、安定して、ドアミラー若しくは車両の側面によって押えられることとなって、左右方向(車内外方向)側へのぶれを、極力抑えられることとなる。また、この嵌合セル部は、前後の略全域にわたってピラーカバー部の下縁側に連結される構成である。その結果、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、ドアミラーの上面側におけるドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合されて車内外方向のぶれを抑えられた嵌合セル部の上縁側の全域にわたって、フロントピラーの前面を覆っているピラーカバー部を、支持させることができて、ピラーカバー部が歩行者の受け止め時に、歩行者によって強く押圧される際に、ピラーカバー部が車外側へ大きく横ずれすることを防止することができる。
【0009】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラーの前面を覆うことができる。
【0010】
また、本発明のエアバッグ装置において、ピラーカバー部を、嵌合セル部よりも、エアバッグ内に流入する膨張用ガスの上流側に位置するように、構成すれば、エアバッグの展開膨張時に、まず、ピラーカバー部が、内部に膨張用ガスを流入させて、フロントピラーの前面を覆うように展開膨張し、その後、嵌合セル部が、内部に膨張用ガスを流入させるようにして膨張することとなる。そのため、膨張するピラーカバー部によって、フロントピラーの前面を迅速に覆うことができて、好ましい。
【0011】
さらに、上記構成のエアバッグ装置において、嵌合セル部の前端側に、膨張用ガスを流入させるための流入用開口を、配設させる構成とし、
エアバッグの内部に、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターから吐出される膨張用ガスをピラーカバー部側に案内するインナチューブを、配置させ、
インナチューブを、略筒状とするとともに、流入用開口を横切って、先端側を、ピラーカバー部側に開口させた構成とすることが好ましい。
【0012】
エアバッグ装置をこのような構成とすれば、エアバッグの内部に略筒状のインナチューブを配設させれば、構成を簡便にすることができるとともに、安定して、ピラーカバー部を、嵌合セル部よりも先に膨張させることができる。また、ピラーカバー部と嵌合セル部との膨張タイミング(嵌合セル部内への膨張用ガスの流入開始タイミング)を略一定とすることができて、製品ごとにばらつきが生じることを抑制することができる。
【0013】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、エアバッグに、膨張完了時の周縁から延びて先端を収納部位側に取り付けられるテザーを、配設させ、
テザーを、膨張完了時のピラーカバー部における嵌合セル部から離れた側となる内縁側から延びて、ピラーカバー部の内縁側を収納部位側に引っ張り、フロントピラーからの浮き上がりを抑制可能な内側ストラップ部を備える構成とすることが好ましい。
【0014】
このような構成のエアバッグ装置では、エアバッグの展開膨張時に、ピラーカバー部における嵌合セル部から離れた側となる内縁側が、フロントピラーから浮き上がることを抑制することができ、膨張完了時のエアバッグにおいて、ピラーカバー部によって、フロントピラーの前面側を広く覆うことができる。
【0015】
また、本発明のエアバッグ装置において、嵌合セル部を、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状とするとともに、前端側に、ピラーカバー部より上流側に位置して、嵌合セル部に膨張用ガスを流入させるための流入用開口を配設させる構成としてもよく、このような構成とする場合、嵌合セル部は、ピラーカバー部よりも先に、膨張して所定の隙間に嵌合されることとなり、膨張するピラーカバー部を、車外側に向かってずれるように展開することを抑えて、的確にフロントピラーの前面側を覆うように配置させることができる。また、嵌合セル部は、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状としていることから、膨張完了時に、ピラーカバー部の車外側を前後の略全域にわたって支持することができ、ピラーカバー部が車外側へ大きく横ずれすることを一層的確に防止することができる。そのため、仮に、ピラーカバー部の膨張完了前に歩行者が接触することとなっても、嵌合セル部によって、ピラーカバー部の位置ずれを極力抑えることができ、ピラーカバー部によって歩行者を円滑に保護することができる。
【0016】
また、上記構成のエアバッグ装置において、嵌合セル部の後端側を、ピラーカバー部に対して閉塞されて区画させている構成とすれば、嵌合セル部において、ドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合される後端側の部位が、ピラーカバー部に対して膨張用ガスの相互移動を極力抑えられた状態で、この隙間に嵌合されることから、嵌合セル部の隙間への嵌合状態を保持しやすく、また、嵌合セル部が、高い内圧を維持した状態で、ピラーカバー部を支持することができる。そのため、歩行者を受け止めたピラーカバー部が、歩行者によって強く押圧されることとなっても、嵌合セル部が、この押圧力を受けて、車外側へ横ずれすることを防止でき、ピラーカバー部の車外側へ向かうような横ずれを的確に防止することができて、好ましい。
【0017】
逆に、上記構成のエアバッグ装置において、嵌合セル部の後端付近に、ピラーカバー部と連通される連通部を、配設させる構成としてもよく、このような構成の場合、嵌合セル部は、ピラーカバー部に対して、連通部を介して膨張用ガスの相互移動を可能とされることから、ピラーカバー部が歩行者を受け止めた際に、余剰な膨張用ガスを、嵌合セル部内に逃がすことができ、ピラーカバー部によって歩行者をソフトに受け止めることが可能となる。
【0018】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、エアバッグを、
ピラーカバー部と嵌合セル部とを配設させて、膨張完了時に、フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側の領域から、フロントピラーの前面にかけての領域を覆うように配置されるカバー膨張部と、
膨張完了時に、ドアミラーの前側の領域に配置されるとともに、カバー膨張部の下面側において、下面側を、収納部位の下方側に位置する車体側部材に支持されるように配置されて、カバー膨張部の下面側を支持する支持膨張部と、
を備える構成とすることが好ましい。
【0019】
上記構成のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、エアバッグ全体が、下面側を収納部位の下方側に位置する車体側部材に支持される支持膨張部によって支持されることとなり、嵌合セル部自体の下降移動も防止されることから、ピラーカバー部の車外側への横ずれを一層的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態であるエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大斜視図である。
【図2】第1実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大側面図である。
【図3】第1実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図4】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略縦断面図であり、図2のIV−IV部位を示す。
【図5】第1実施形態のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【図6】図5のエアバッグの縦断面図であり、図5のVI−VI部位を示す。
【図7】図5のエアバッグにおいて、バッグ本体と、インナチューブと、テザーと、を並べた状態の平面図である。
【図8】第1実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグの膨張過程を説明する部分拡大斜視図である。
【図9】第1実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグの膨張過程を説明する部分拡大斜視図であり、図8の後の過程を説明する図である。
【図10】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略斜視図である。
【図11】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略縦断面図である。
【図12】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了時における嵌合セル部の前端付近である図5のA−A部位付近を示す概略断面図である。
【図13】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、嵌合セル部がドアミラーとサイドウィンドとの間の隙間に嵌合されている状態を説明する概略図である。
【図14】本発明の第2実施形態であるエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大斜視図である。
【図15】第2実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大側面図である。
【図16】第2実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図17】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略縦断面図であり、図15のXVII−XVII部位を示す。
【図18】第2実施形態のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【図19】図18のエアバッグの縦断面図であり、図18のXIX−XIX部位を示す。
【図20】図18のエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す断面図である。
【図21】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略縦断面図である。
【図22】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時において、嵌合セル部がドアミラーとサイドウィンドとの間の隙間に嵌合されている状態を説明する概略図である。
【図23】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略斜視図である。
【図24】第2実施形態のエアバッグ装置に使用可能な他の形態であるエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、図1〜3に示すように、車両Vの左右のフロントピラー1の後側に隣接して配設される各フロントドア13に、搭載されている。詳細には、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、フロントドア13に設けられるドアミラー27の部位に搭載されている。左右の各フロントピラー1は、鋼板等からなるアウタパネル2、インナパネル3、及び、アウタパネル2とインナパネル3との間に配置されるリインホースメント4を、備えて構成されており、車両Vの構造体としての高い剛性を具備して、配設されている(図11参照)。なお、図1の符号6で示す部材は、窓枠ゴムであり、図1〜3の符号7で示す部材は、フロントガラスである。また、図1〜3の符号8で示す部材は、フードパネルであり、図1〜3の符号9で示す部材は、フロントバンパである。
【0022】
なお、本明細書において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の各方向に対応するものである。
【0023】
また、実施形態では、車両Vの右側に位置するフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグ42を備えたエアバッグ装置M1について、詳細に説明する。左側のフロントピラーの前面側を覆うエアバッグを備えたエアバッグ装置は、右側のエアバッグ装置と左右対称形として、同一の構成であることから、左側のエアバッグ装置に関しては、説明を省略する。
【0024】
第1実施形態のエアバッグ装置M1が搭載されるフロントドア13は、図1〜3に示すように、フロントピラー1の後側に隣接して配設されるもので、フロントピラー1の後方に位置するサイドウィンド14と、サイドウィンド14の下方のドア部18と、を有するとともに、サイドウィンド14の前側の下隅付近に、ドアミラー27を、配設させて構成されている。サイドウィンド14は、ドアガラス15と、ドアガラス15の周囲に配置される窓枠部16と、を備えている。実施形態の場合、窓枠部16の下縁部16aが、ベルトライン17を構成している(図2参照)。ドア部18は、図4に示すように、間にドアガラス15を収納可能な隙間を有して配置される鋼板等からなるアウタパネル19及びインナパネル21と、インナパネル21の車内側を覆うように配置されるドアトリム23と、を備えており、アウタパネル19とインナパネル21との内側(ドアガラス15側)には、それぞれ、アウタリインホースメント20とインナリインホースメント22とが、配設されている。また、アウタパネル19の上端側には、窓枠部16を構成するアウタモール24が、配設され、アウタパネル19とインナパネル21との上端側には、ドアガラス15を摺動させるガラスウェザストリップ25が、配設されている。また、実施形態では、アウタリインホースメント20におけるエアバッグ装置M1が配置される領域の車内側Iに、エアバッグ装置M1側への雨水や異物等の侵入を防止するシール部材32が、配設されている(図4参照)。
【0025】
ドアミラー27は、図1〜3に示すように、窓枠部16における下縁部16a(ベルトライン17)の前縁16b近傍に取り付けられる取付ベース29と、取付ベース29の上面側に回動可能に取り付けられるミラー本体28と、を備えている。詳細には、取付ベース29は、フロントピラー1の下端側となる元部1bの下側に接近して配設されている(図1〜3参照)。実施形態の場合、取付ベース29は、後端側に、ミラー本体28を配設させるとともに、ミラー本体28を取り付けた部位の前方側の領域に、エアバッグ装置M1を配設させている構成である。ミラー本体28は、使用時に、図3,13に示すように、軸支される元部28aから延びる先端28bを、車外側Oに突出させるように配置されることとなり、この使用状態において、車内側Iの端面(実施形態の場合、左端面28c)とサイドウィンド14との間に、正面視で上側を幅広とした略三角状の隙間H1を有することとなる(図13参照)。取付ベース29は、車内側(左側)に配置されてアウタリインホースメント20に取り付けられる板金製の取付部材30と、取付部材30の車外側(右側)を覆うように配置される合成樹脂製のカバー部材31と、を備えており、取付部材30とカバー部材31とに囲まれた領域が、エアバッグ装置M1において、折り畳まれたエアバッグ42を収納する収納部位P1を、構成している(図4参照)。具体的には、取付部材30が、折り畳まれたエアバッグ42を収納するケース部33を構成し、カバー部材31が、折り畳まれたエアバッグ42を覆うエアバッグカバー35を構成している。
【0026】
エアバッグ装置M1は、図4に示すように、可撓性を有した袋状のエアバッグ42と、エアバッグ42に膨張用ガスを供給するインフレーター37と、を備えている。第1実施形態のエアバッグ装置M1では、折り畳まれたエアバッグ42のみが、収納部位P1内に収納され、インフレーター37は、図2,4に示すように、収納部位P1の下方の領域に配置されている。折り畳まれたエアバッグ42を収納する収納部位P1は、ドアミラー27の前端付近である取付ベース29の前側の領域から、構成されている。そして、この取付ベース29の前側の領域において、取付部材30が、折り畳まれたエアバッグ42を収納させるケース部33を構成し、取付部材30を覆うカバー部材31が、折り畳まれたエアバッグ42の車外側Oを覆うエアバッグカバー35を、構成している(図2,4参照)。
【0027】
ケース部33は、図2,4に示すように、取付部材30から連なるように構成されるとともに、折り畳まれたエアバッグ42の車内側Iと下方とを覆うように、内壁部33aと下壁部33bとを有した断面略L字形状として、車外側Oを開口させるように、構成されている。実施形態の場合、このケース部33は、内壁部33aの車内側面をアウタリインホースメント20に固着されて、車体側部材であるアウタリインホースメント20に取り付けられている。また、ケース部33における下壁部33bの前端近傍部位と、内壁部33aにおける後端近傍部位と、には、エアバッグ42の後述するテザー58を取り付ける取付孔33c,33dが、形成されている(図11,12参照)。また、ケース部33の下壁部33bには、エアバッグ42の後述するガス流入口部54を挿通可能な図示しない開口が、形成されている。
【0028】
エアバッグカバー35は、カバー部材31から連なるように構成されるもので折り畳まれたエアバッグ42の車外側Oを覆うとともに、エアバッグ42の展開膨張時に開いて、エアバッグ42をケース部33から突出させる扉部35aを、有している。実施形態の場合、扉部35aは、開き時に、図11に示すように、下端側を回転中心として、上端を車外側下方に向かって開かせるような下開きとして、構成されている。
【0029】
インフレーター37は、実施形態の場合、図2,4に示すように、収納部位P1の下方となるケース部33における下壁部33bの下方の領域に、配置されるもので、実施形態の場合、軸方向を前後方向に略沿わせたシリンダタイプとされている。インフレーター37は、前端側に、図示しないガス吐出口を備える構成とされて、このガス吐出口付近の部位を、クランプ40を利用して、エアバッグ42のガス流入口部54に連結されている(図5の二点鎖線参照)。また、インフレーター37は、板金製のディフューザー38により周囲を保持されるもので、ディフューザー38に設けられるボルト38aを、アウタリインホースメント20にナット39止めすることにより、車体側部材であるアウタリインホースメント20に取り付けられている。なお、図示しないが、インフレーター37のボルト38aは、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。また、このインフレーター37は、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を入力させて、膨張用ガスをエアバッグ42内に供給することとなる。エアバッグ作動回路は、車両Vのフロントバンパ9に配置されて歩行者との衝突を検知可能なセンサSE(図1,2参照)からの信号を入力した際に、インフレーター37を作動させることとなる。
【0030】
エアバッグ42は、図5〜7に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な可撓性を有した袋状のバッグ本体43と、バッグ本体43内に配置されるインナチューブ56と、バッグ本体43の周縁から延びるテザー58と、を備えている。
【0031】
バッグ本体43は、実施形態の場合、膨張完了時にフロントピラー1側に配置される車体側壁部43bと、車体側壁部43bに対向して配置される車外側壁部43aと、を有して、平らに展開した状態の車体側壁部43bと車外側壁部43aとの周縁相互を結合させた平面バッグとして、構成されている。実施形態の場合、バッグ本体43は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布を所定形状に裁断した基布相互の周縁を縫合糸を用いて縫着させて、形成されている。詳細に説明すれば、バッグ本体43は、外周縁において、ガス流入口部54における後述する開口54aの部位を除いた全周にわたって形成される周縁部44と、周縁部44に囲まれる領域内に形成される区画部45と、を、車外側壁部43aと車体側壁部43bを結合させるように、縫合糸を用いて縫着させ、残りの領域を、車外側壁部43aと車体側壁部43bとを離すようにして、内部に膨張用ガスを流入可能に、構成されている。区画部45は、後述するピラーカバー部47と嵌合セル部50とを区画するように、周縁部44から延びて、フロントピラー1の軸方向(前後方向)に略沿って、配設されている。また、実施形態の場合、区画部45における先端(前端)側には、応力集中が生じないように、略円形に縫着された端末部45aが、形成されている。
【0032】
バッグ本体43は、膨張完了時にフロントピラー1の前面1aを覆うように配置されるピラーカバー部47と、膨張完了時にピラーカバー部47の下方に配置される嵌合セル部50と、バッグ本体43の内部に膨張用ガスを流入させるガス流入口部54と、を備えている。
【0033】
ピラーカバー部47は、膨張完了形状を、長手方向をフロントピラー1の軸方向(前後方向)に略沿わせた略棒状として構成されるもので、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1a側を、フロントピラー1の下端側となる元部1bから上下方向の中央付近にかけて覆うように、構成されている(図10参照)。実施形態の場合、ピラーカバー部47は、膨張完了時の後端47a側を、ミラー本体28より後方に位置させるように、構成されている。また、ピラーカバー部47は、膨張完了時の前端47b側に、内部に膨張用ガスGを流入させるための流入用開口48を備える構成とされている。実施形態の場合、流入用開口48は、バッグ本体43を平らに展開した状態で、周縁部44における前側部位44aと区画部45における端末部45aとの間の領域から、構成されている(図5,7参照)。
【0034】
嵌合セル部50は、膨張完了時に、ピラーカバー部47の下方において、フロントピラー1の下方のサイドウィンド14の側面を覆うように配設されるもので(図11参照)、膨張完了形状を、長手方向をピラーカバー部47の軸方向(前後方向)に略沿わせた棒状として、構成されている。この嵌合セル部50は、周縁部44から延びる区画部45を介してピラーカバー部47と連結されており、換言すれば、後端50a側をピラーカバー部47に対して閉塞されて区画された状態で、前後の全域にわたって、バッグ本体43を平らに展開した状態でのピラーカバー部47の右縁47c(外縁)に連結されている(図5,7参照)。また、嵌合セル部50は、図10,13に示すように、膨張完了時の後端50a側となる後側部位51を、ドアミラー27の上面側において、ドアミラー27のミラー本体28と、車両の側面であるサイドウィンド14と、の間の隙間H1に嵌合させるように、構成されている。詳細には、エアバッグ42の膨張完了時において、嵌合セル部50における後側部位51の下側の領域51aが、ミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1(特に、ミラー本体28の左端面28cにおける左上端面28cuから左前端面28ufに至る領域とサイドウィンド14との間の隙間H1)に嵌合されることとなる(図10,13参照)。実施形態の場合、嵌合セル部50は、前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部47の前後方向側の長さ寸法の半分程度として、前端50bを、ピラーカバー部47の前端47bと略一致させるように構成されている。すなわち、嵌合セル部50は、エアバッグ42の膨張完了時に、ピラーカバー部47の前側半分程度の領域の下方に配置されて、ピラーカバー部47の前端47b側(元部側)の下方を支持可能に、構成されている。また、嵌合セル部50は、膨張完了時の前端50b側に、膨張用ガスを流入させるための流入用開口52を備える構成とされている。実施形態の場合、流入用開口52は、バッグ本体43を平らに展開した状態で、周縁部44における前側部位44aと区画部45における端末部45aとの間の領域から、構成されている(図5,7参照)。さらに、実施形態の場合、嵌合セル部50は、流入用開口52近傍となる前端50b側の領域のみで、ピラーカバー部47の前端47b付近と、相互に連通されている。
【0035】
ガス流入口部54は、図5,7に示すように、バッグ本体43を平らに展開した状態で、嵌合セル部50の前端50b付近から左方に突出しつつ先端側を後方に向けるように屈曲して構成される略筒状とされており、先端側(後端側)に、インフレーター37を挿入可能な開口54aを、配設させて構成されている。このガス流入口部54は、エアバッグ42の膨張完了時には、ケース部33から上方に突出して膨張している嵌合セル部50の前下端から下方に延びて、ケース部33の下方において、インフレーター37と連結されることとなる。実施形態の場合、このガス流入口部54は、開口54aから、インナチューブ56を介して内部にインフレーター37を挿入させた状態で、開口54a周縁に外装されるクランプ40を利用して、インフレーター37を連結させる構成とされている(図5の二点鎖線参照)。
【0036】
インナチューブ56は、図5に示すように、バッグ本体43内において、インフレーター37から吐出される膨張用ガスを、ピラーカバー部47側に案内するもので、両端側を開口させるとともに、ガス流入口部54内に挿入可能な略筒状として、ガス流入口部54から、ピラーカバー部47の流入用開口48にかけて、配設されている。すなわち、インナチューブ56は、嵌合セル部50の流入用開口52を横切って、先端56aに設けられた開口56bを、ピラーカバー部47の流入用開口48付近に配置させるように、構成されている。そして、インフレーター37から吐出された膨張用ガスGは、図5に示すように、インナチューブ56を経て、先端56a側に設けられた開口56bから、まず、ピラーカバー部47内に流入することとなり、実施形態では、バッグ本体43内にこのインナチューブ56を配設させることにより、ピラーカバー部47が、嵌合セル部50よりも、エアバッグ42内に流入する膨張用ガスGの上流側に位置することとなる。実施形態の場合、インナチューブ56は、バッグ本体43と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から、形成されている。また、実施形態の場合、インナチューブ56は、平らに展開した状態の幅寸法W1を、平らに展開した状態のバッグ本体43における区画部45の端末部45aと周縁部44の前側部位44aとの離隔距離(流入用開口48の開口幅寸法W2)より、若干小さくするように、構成されている(図7参照)。また、インナチューブ56は、図5に示すように、先端56aを、区画部45の端末部45aより内側(左側)に位置させるように構成され、換言すれば、先端56aを、ピラーカバー部47の流入用開口48内に入り込ませて、開口56bから流出する膨張用ガスGを、エアバッグ42の膨張初期に、嵌合セル部50側への流入を抑制して、確実にピラーカバー部47内に流入させるように、構成されている。
【0037】
テザー58は、バッグ本体43の周縁から延びて、先端側を収納部位P1(ケース部33)側に取り付けられて、バッグ本体43の膨張完了時の配置位置と膨張完了形状とを規制するためのもので、実施形態の場合、図5に示すように、4箇所に、形成されている。テザー58は、膨張完了時のエアバッグ42(バッグ本体43)において、嵌合セル部50の前縁側から延びる前側ストラップ部59と、ピラーカバー部47の前左隅付近(前内縁付近)から延びる前内側ストラップ部60と、ピラーカバー部47の左縁(内縁)47d側から延びる内側ストラップ部61と、嵌合セル部50の外縁(膨張完了時の下縁)50c側から延びる下側ストラップ部62と、を備えて構成されている。各前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62は、それぞれ、バッグ本体43と別体とされるとともに、バッグ本体43と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布を帯状に形成して、構成され、それぞれ、元部側を、バッグ本体43の周縁部44に縫着されている。
【0038】
前側ストラップ部59は、実施形態の場合、嵌合セル部50の前縁側となる周縁部44の前側部位44aにおいて、区画部45の端末部45aの前方側となる位置、詳細に説明すれば、嵌合セル部50の前左隅付近(前内隅付近)から延びるように構成されるもので、先端59a側に、ボルト64を挿通可能な挿通孔59bを有している。実施形態の場合、前側ストラップ部59は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の前側部位44aに対して略直交して、前方に延びるように、形成されている(図5参照)。この前側ストラップ部59は、先端59a側を、収納部位P1を構成するケース部33の前端付近における下壁部33bの領域に形成される取付孔33cの部位に、ボルト64止めして、収納部位P1側に取り付けられている(図12参照)。また、この前側ストラップ部59は、エアバッグ42の膨張完了時に、図12に示すように、嵌合セル部50の前縁の略直下となる下方に延びるように、配設されることとなる。この前側ストラップ部59は、長さ寸法を、エアバッグ42の膨張完了時に、嵌合セル部50が前方移動することを防止可能とし、かつ、膨張初期における嵌合セル部50の迅速な展開(斜め右上方側への突出)を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この前側ストラップ部59により、嵌合セル部50が、エアバッグ42の膨張完了時に、前方側へ移動することを抑制されることとなる。
【0039】
前内側ストラップ部60は、周縁部44の前側部位44aにおいて、ピラーカバー部47の前左隅付近(前内縁付近)から延びるように構成されている。実施形態の場合、前内側ストラップ部60は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の前側部位44aの左端から、左斜め前方に延びるように、形成されている(図5参照)。前内側ストラップ部60の先端60a側には、ボルト64を挿通可能な挿通孔60bが形成され、前内側ストラップ部60は、先端60a側を、前側ストラップ部59の先端59a側とともに、ケース部33の取付孔33cの部位にボルト64止めされて、収納部位P1側に取り付けられている(図12参照)。この前内側ストラップ部60は、エアバッグ42の膨張完了時に、図10に示すように、斜め右下方(外下方)に向かって延びるように配設されるもので、長さ寸法を、エアバッグ42の膨張完了時に、ピラーカバー部47の前端47b側がフロントピラー1から浮き上がることを防止可能として、かつ、ピラーカバー部47の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この前内側ストラップ部60により、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47が、前端47b側をフロントピラー1から浮き上がらせるように、前後方向側で揺動することを抑制されることとなる。
【0040】
内側ストラップ部61は、ピラーカバー部47の内縁(左縁47d)側となる周縁部44の左側部位44bから延びるように構成されるもので、実施形態の場合、ピラーカバー部47の後端47a近傍の部位に、配設されている。内側ストラップ部61は、先端61a側に、ボルト65を挿通可能な挿通孔61bを有している。実施形態の場合、内側ストラップ部61は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の左側部位44bに対して略直交して、左側に延びるように、形成されている(図5参照)。この内側ストラップ部61は、先端61a側を、収納部位P1を構成するケース部33の後端近傍(ミラー本体28の前側の領域)における内壁部33aの領域に形成される取付孔33dの部位に、ボルト65止めされて、収納部位P1側に取り付けられている(図11参照)。また、この内側ストラップ部61は、エアバッグ42の膨張完了時に、図10に示すように、斜め右下方(外下方)に向かって延びるように、配設されることとなる。この内側ストラップ部61は、長さ寸法を、エアバッグ42の膨張完了時に、ピラーカバー部47の左縁47d側(後端47a付近)が、フロントピラー1から浮き上がることを防止可能として、かつ、ピラーカバー部47の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この内側ストラップ部61により、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47における嵌合セル部50から離れた側となる内縁(左縁47d)側が、フロントピラー1から浮き上がることを抑制することができて、ピラーカバー部47を、エアバッグ42の膨張完了時に、フロントピラー1に沿う(フロントピラー1側に倒す)ように、配置させることができる。
【0041】
下側ストラップ部62は、嵌合セル部50の外縁(膨張完了時の下縁)50c側である周縁部44の右側部位44cから延びるように構成されるもので、実施形態の場合、右側部位44cの前端近傍部位(嵌合セル部50の前右端付近)に、配設されている。すなわち、下側ストラップ部62は、嵌合セル部50において、ミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合される後側部位51から前方に外れた領域に、配設されている。下側ストラップ部62は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の右側部位44cに対して略直交して、右側に延びるように、形成されている(図5参照)。下側ストラップ部62の先端62a側には、ボルト65を挿通可能な挿通孔62bが、形成され、下側ストラップ部62は、先端62a側を、内側ストラップ部61の先端61a側とともに、ケース部33の取付孔33dの部位に、ボルト65止めされて、収納部位P1側に取り付けられている(図11参照)。この下側ストラップ部62は、エアバッグ42の膨張完了時に、図11に示すように、左側(車内側I)に向かって延びるように配設されるもので、長さ寸法を、嵌合セル部50の下縁(外縁50c)を収納部位P1側に引っ張り、かつ、嵌合セル部50の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この下側ストラップ部62により、エアバッグ42の膨張完了時に、収納部位P1(ケース部33)から車外側Oに突出している嵌合セル部50が、収納部位P1(ケース部33)よりも車外側Oの下方に落ち込むように移動することを抑制できる。
【0042】
第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42は、バッグ本体43におけるガス流入口部54を除いた領域を、車外側壁部43aと車体側壁部43bとを平らに展開して重ねた状態から、ケース部33内に収納可能な所定形状に、折り畳まれることとなる。そして、折り畳まれたバッグ本体43は、テザー58の先端(前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62の先端59a,60a,61a,62a)を、ケース部33にボルト64,65止めし、ガス流入口部54を図示しない開口から突出させるようにして、ケース部33内に収納することができる。ケース部33から突出しているガス流入口部54を、クランプ40を利用して、インフレーター37に接続させ、インフレーター37をアウタリインホースメント20にボルト38a止めすれば、エアバッグ装置M1を、ドアミラー27の取付部材30に取り付けることができる。
【0043】
第1実施形態のエアバッグ装置M1では、車両Vへの搭載後、インフレーター37が作動されれば、インフレーター37から吐出される膨張用ガスがエアバッグ42内に流入して、膨張するエアバッグ42が、エアバッグカバー35を押し開き、エアバッグカバー35を押し開いて形成される開口から突出して、図1〜3の二点鎖線、及び、図10,11,13に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0044】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42が、フロントピラー1の前面1aを覆うピラーカバー部47と区画されて、膨張完了時に、図10,13に示すように、ピラーカバー部47の下方において、後端側となる後側部位51を、ドアミラー27の上面側において、ドアミラー27のミラー本体28と車両の側面であるサイドウィンド14との間の隙間(詳細に説明すれば、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1)に嵌合されて配置される嵌合セル部50を、有していることから、エアバッグ42の膨張完了時に、この嵌合セル部50が、安定して、左右方向(車内外方向)側を、ドアミラー27のミラー本体28若しくはサイドウィンド14によって押えられることとなって、左右方向(車内外方向)側へのぶれを、極力抑えられることとなる。実施形態の場合、嵌合セル部50は、後側部位51の下側の領域51aを、ミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合されることとなる(図13参照)。
【0045】
また、この嵌合セル部50は、前後の略全域にわたってピラーカバー部47の下縁(平らに展開した状態でのピラーカバー部47の右縁47c)側に連結される構成である。その結果、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42の膨張完了時に、ドアミラー27の上面側におけるミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に、後側部位51の下側の領域51aを嵌合されて車内外方向のぶれを抑えられた嵌合セル部50によって、フロントピラー1の前面1aを覆っているピラーカバー部47を、支持させることができる(図10,13参照)。詳細に説明すれば、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、嵌合セル部50は、エアバッグ42の膨張完了時において、ミラー本体28の左端面28cと、サイドウィンド14の下方に位置するドア部18と、の間の隙間H1に深く進入させるように、嵌合されることとなる(図13参照)。このとき、嵌合セル部50の後側部位51は、ミラー本体28の左端面28cにおいて左前端面28cfから左上端面28cuに至る領域で圧接されるとともに、元部28aにより後側部位51の車外側を係止されるように、配置されることとなる。そのため、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47が、歩行者の受け止め時に、歩行者によって強く押圧される際にも、後側部位51をミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合される嵌合セル部50に支持させることにより、ドアピラーカバー部47が、車外側へ大きく横ずれすることを防止することができる。
【0046】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42の膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラー1の前面1aを覆うことができる。
【0047】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47を、嵌合セル部50よりも、エアバッグ42(バッグ本体43)内に流入する膨張用ガスGの上流側に位置するように、構成している。そのため、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42(バッグ本体43)の展開膨張時に、まず、ピラーカバー部47が、図8及び図9のAに示すように、内部に膨張用ガスGを流入させて、フロントピラー1の前面1aを覆うように展開膨張し、その後、嵌合セル部50が、図9に示すように、内部に膨張用ガスGを流入させるようにして膨張することとなる。具体的には、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、バッグ本体43内に、インフレーター37から吐出される膨張用ガスGをピラーカバー部47側に案内可能に、嵌合セル部50の流入用開口52を横切ってピラーカバー部47側に開口している筒状のインナチューブ56を、配置させていることから、エアバッグ42(バッグ本体43)の膨張初期に、まず、インフレーター37から吐出された膨張用ガスGは、インナチューブ56自体を膨張させるようにインナチューブ56内を流れ、ピラーカバー部47の流入用開口48付近に位置しているインナチューブ56の先端56a側の開口56bから、ピラーカバー部47内に流入して、まず、ピラーカバー部47がフロントピラー1の前面1aを覆うように膨張を完了させることとなる。その後、膨張用ガスGは、インナチューブ56とピラーカバー部47における流入用開口48との間の隙間から、嵌合セル部50の流入用開口52を経て、嵌合セル部50内に流入し、嵌合セル部50が、後側部位51の下側の領域51aを、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に進入させるように、膨張することとなる。
【0048】
すなわち、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47が、嵌合セル部50に先行して膨張を完了させる構成であることから、膨張する嵌合セル部50によって上方に押し上げられるような挙動が抑制され、左右方向(車内外方向)側へのぶれを抑制されることとなり、膨張するピラーカバー部47によって、フロントピラー1の前面1aを迅速かつ円滑に覆うことができる。実施形態の構成において、嵌合セル部が先に膨張する構成の場合、嵌合セル部は、左右方向側の断面形状を略円形として、棒状に膨らむことから、上方に位置しているピラーカバー部を、上方に押し上げることとなり、膨張するピラーカバー部が、フロントピラーから車外側に外れるように押し上げられて、円滑にフロントピラーの前面を覆うことができない場合がある。しかしながら、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47が、嵌合セル部50に先行して膨張を完了させる構成であり、ピラーカバー部47の膨張完了時には、嵌合セル部50は殆ど膨張していないことから、嵌合セル部50がピラーカバー部47を押し上げることを的確に抑制できて、ピラーカバー部47により、フロントピラー1の前面1aを迅速に覆うことができる。
【0049】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47の膨張が完了して、安定してフロントピラー1の前面1aを覆うように配置された後に、嵌合セル部50が、内部に膨張用ガスを流入させて、膨張することから、嵌合セル部50を、安定して、円滑にミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に進入させるように膨張させることができる。特に、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、嵌合セル部50内に膨張用ガスを流入させる流入用開口52が、嵌合セル部50の前端50b側に配置され、嵌合セル部50は、内部に、前端50b側から後端50a側に向かうよって膨張用ガスを流入させるようにして、膨張することとなる。そのため、膨張する嵌合セル部50の後側部位51を、確実に、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合させることができる。ピラーカバー部を先に膨張させる構成の場合、嵌合セル部内に膨張用ガスを流入させる流入用開口の位置は、これに限られるものではなく、嵌合セル部の上側や後側に、ピラーカバー部と連通されるような流入用開口を配設させる構成としてもよい。
【0050】
さらに、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42(バッグ本体43)の内部にインナチューブ56を配置させて、ピラーカバー部47を嵌合セル部50よりも先に膨張させる構成であることから、構成を簡便にすることができるとともに、安定して、ピラーカバー部47を、嵌合セル部50よりも先に膨張させることができる。また、ピラーカバー部47と嵌合セル部50との膨張タイミング(嵌合セル部50内への膨張用ガスの流入開始タイミング)を略一定とすることができて、製品ごとにばらつきが生じることを抑制することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、嵌合セル部における流入用開口の部位に、車外側壁部と車体側壁部とを結合させ、流入用開口を一旦閉塞させるような仮結合部を設けて、ピラーカバー部の膨張後にこの仮結合部の結合状態を解除させるような構成として、ピラーカバー部を先に膨張させる構成としてもよい。
【0051】
さらにまた、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42に、膨張完了時の周縁から延びて先端を収納部位P1側に取り付けられるテザー58が、配設され、テザー58が、膨張完了時のピラーカバー部47における嵌合セル部50から離れた側となる内縁(左縁47d)側から延びて、ピラーカバー部47の内縁(左縁47d)側を収納部位P1側に引っ張り、フロントピラー1からの浮き上がりを抑制可能な内側ストラップ部61を備えている。そのため、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47における嵌合セル部50から離れた側となる内縁(左縁47d)側が、フロントピラー1から浮き上がることを抑制することができ、膨張完了時のエアバッグ42において、ピラーカバー部47によって、フロントピラー1の前面1a側を広く覆うことができる。特に、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、内側ストラップ部61は、ピラーカバー部47の後端47a近傍から延びるように構成されていることから、ピラーカバー部47の後端47a付近の部位が、フロントピラー1に対して浮き上がることを的確に抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー58がに形成されるテザー58の前側ストラップ部59が、膨張完了時の嵌合セル部50の前縁側から下方へ延びて嵌合セル部50の前方側への移動を抑制する構成であることから、エアバッグ42の展開膨張時に、嵌合セル部50が、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1との嵌合状態から外れるように、前方移動することを抑えられて、嵌合セル部50の後側部位51を、確実に、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合させるように、配置させることができる。
【0053】
なお、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー58において、前側に配置される前側ストラップ部59と前内側ストラップ部60とを、ケース部33の下壁部33b側に取り付けられる構成とし、後側に配置される内側ストラップ部61と下側ストラップ部62とを、ケース部33の内壁部33a側に取り付けられる構成としているが、テザー58を構成する各前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62のケース部33(収納部位P1)側への取付位置は、これに限られるものではなく、実施形態とは逆にしてもよい。勿論、各前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62は、それぞれ、先端59a,60a,61a,62a側を、別々にケース部33(収納部位P1)側に取り付ける構成としてもよい。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態のエアバッグ装置M2について説明をする。第2実施形態のエアバッグ装置M2を搭載する車両Vは、図14〜16に示すように、エアバッグ装置M2を搭載するドアミラー27A以外は、第1実施形態のエアバッグ装置M1を搭載する車両Vと同様の構成であり、同一の部材には、同一の図符号を付して詳細な説明を省略する。第2実施形態においても、車両Vの右側に位置するフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグ78を備えたエアバッグ装置M2について、詳細に説明する。左側のフロントピラーの前面側を覆うエアバッグを備えたエアバッグ装置は、右側のエアバッグ装置と左右対称形として、同一の構成であることから、左側のエアバッグ装置に関しては、説明を省略する。
【0055】
エアバッグ装置M2を搭載するドアミラー27Aにおいて、取付ベース29Aを構成する取付部材30Aに設けられるケース部70と、カバー部材31Aに設けられるエアバッグカバー71以外の部材は、前述のエアバッグ装置M1を搭載させたドアミラー27と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0056】
エアバッグ装置M2は、図17に示すように、可撓性を有した袋状のエアバッグ78と、エアバッグ78に膨張用ガスを供給するインフレーター73と、を備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ78とインフレーター73とを収納する収納部位P2は、ドアミラー27Aの前端付近である取付ベース29Aの前側の領域から、構成されており(図15,17参照)、折り畳まれたエアバッグ78とインフレーター73とを収納するケース部70は、取付ベース29Aの取付部材30Aから構成され、エアバッグ78の車外側Oを覆うエアバッグカバー71は、取付ベース29Aのカバー部材31Aから構成されている(図17参照)。
【0057】
ケース部70は、図15,17に示すように、取付部材30Aから連なるように構成されるもので、底壁部70aと、底壁部70aから延びる周壁部70bと、を備える構成とされて、車外側Oを開口させるように構成されている。実施形態の場合、ケース部70は、底壁部70aを、アウタリインホースメント20に接触させるように構成されており、インフレーター73をケース部70に取り付けるボルト74aを、底壁部70aから突出させて、アウタリインホースメント20にナット75止めすることにより、車体側部材であるアウタリインホースメント20に、取り付けられている。
【0058】
エアバッグカバー71は、カバー部材31Aから連なるように構成されるもので、ケース部70の開口70cを覆う扉部71aと、扉部71aの周縁から車内側Iに延びてケース部70の周壁部70bに取り付けられる取付壁部71bと、を有している(図17参照)。扉部71aは、エアバッグ78の膨張時に開いて、ケース部70の開口70cから膨張するエアバッグ78を突出させるように構成されており、実施形態の場合、開き時に、図21に示すように、下端側を回転中心として、上端を車外側下方に向かって開かせるような下開きとして構成されて、下端側を除いた周縁に、エアバッグ78の膨張時に破断可能な破断予定部(図符号省略)を、配設させている。
【0059】
インフレーター73は、図17に示すように、軸方向を前後方向に略沿わせたシリンダタイプとされるもので、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を備えるとともに、板金製のディフューザー74により周囲を保持されている。インフレーター73は、エアバッグ78の後述する取付膨張部92内に内蔵された状態で、ディフューザー74に設けられるボルト74aを、取付膨張部92から突出させ、さらに、ケース部70の底壁部70aから突出させた状態でドア部18のアウタリインホースメント20にナット75止めすることにより、エアバッグ78とともに、ケース部70に固定されている。なお、実施形態の場合、図示しないが、インフレーター73のボルト74aは、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。また、このインフレーター73は、前述のエアバッグ装置M1におけるインフレーター37と同様に、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を入力させて、膨張用ガスをエアバッグ78内に供給することとなる。
【0060】
エアバッグ78は、図18,19に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な可撓性を有した袋状とされるバッグ本体79を、有するもので、バッグ本体79は、カバー膨張部85と、膨張完了時にカバー膨張部85の下面側に配置される支持膨張部95と、を備えている。また、エアバッグ78は、実施形態の場合、バッグ本体79と別体とされて、カバー膨張部85をケース部70(収納部位P2)側に連結する内側ストラップ部としての連結ベルト99を、有している。なお、図18,19において、上側が、平らに展開した状態のエアバッグ78において、車両搭載時における左側であり、下側が、平らに展開した状態のエアバッグ78において、車両搭載時における右側である。
【0061】
実施形態の場合、バッグ本体79は、膨張完了時にフロントピラー1側に配置される車体側壁部79bと、車体側壁部79bに対向して配置される車外側壁部79aと、を有して、平らに展開した状態の車体側壁部79bと車外側壁部79aとの周縁相互を結合させた平面バッグとして、構成されている。実施形態の場合、バッグ本体79は、ポリエステル糸やポリアミド糸等を使用した袋織りから、形成されている。具体的には、バッグ本体79は、外形形状を、カバー膨張部85と支持膨張部95とを左右方向側で連結させた形状として構成されるもので、実施形態の場合、平らに展開した状態の外形形状を、前後方向側に延びる縦領域部79cと、縦領域部79cの前方側に延びる横領域部79dと、を有した略逆L字形状として、構成されている。
【0062】
そして、バッグ本体79は、外周縁の全周にわたって形成される周縁部80と、周縁部80に囲まれる領域内の所定箇所に形成される区画部81,82,83と、を、車外側壁部79aと車体側壁部79bとを結合させるようにして、膨張用ガスを流入させない構成とし、残りの領域を、車外側壁部79aと車体側壁部79bとを離すようにして内部に膨張用ガスを流入可能に、構成されている。区画部81は、周縁部80における後側部位80cから延びるように、縦領域部79cの領域内に配置されるもので、後側部位80cから連続的に延びて前後方向に略沿って配置される縦棒部81aと、縦棒部81aの前端側に配置される端末部81bと、を有している。端末部81bは、左右方向の幅寸法を縦棒部81aより大きくするような略円形として、構成されており、膨張時の応力集中を極力抑えるために、形成されている。実施形態の場合、区画部81は、縦領域部79cの左右の中央より若干右側となる位置に、形成されている。区画部82は、縦領域部79cと横領域部79dとの境界部位から前方に延びるように配置されるもので、周縁部80の後側部位80cから連続的に延びて前後方向に略沿って配置される縦棒部82aと、縦棒部82aの前端側に配置される端末部82bと、を有している。端末部82bは、左右方向の幅寸法を縦棒部82aより大きくして、さらに、区画部81における端末部81bの左右方向の幅寸法より大きくするように、長手方向を左右方向に略沿わせた長円状として、構成されている。この端末部82bも、膨張時の応力集中を極力抑えるために、形成されている。また、実施形態の場合、区画部81の端末部81bと、区画部82の端末部82bと、は、左右方向側で略一致した位置に、配置されている。区画部83は、横領域部79dの右端近傍において、前後方向に沿うような略直線状として、形成されている。実施形態の場合、区画部83は、周縁部80の後側部位80cから連続的に延びるとともに、前端83aと周縁部80との間に隙間を設けるようにして、構成されている。
【0063】
カバー膨張部85は、膨張完了時に、フロントピラー1の下方におけるドアミラー27Aの前方の領域から、フロントピラー1の前面1aにかけてを、覆うように配置されるもので、実施形態の場合、膨張完了時にフロントピラー1の前面1a側を覆うように配置されるピラーカバー部86と、ピラーカバー部86の下方に配置される嵌合セル部88と、嵌合セル部88の下方に配置されるとともにインフレーター73を内蔵させてケース部70に取り付けられる取付膨張部92と、を備えている。
【0064】
ピラーカバー部86は、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1a側を、フロントピラー1の下端側となる元部1bから上下方向の中央付近にかけて覆うように、構成されるもので、実施形態の場合、膨張完了時の後端86a側を、ミラー本体28Aより後方に位置させるように、構成されている。実施形態の場合、ピラーカバー部86は、平らに展開した状態のバッグ本体79における縦領域部79cにおいて、区画部81より左側の領域から、構成されている。換言すれば、ピラーカバー部86は、周囲を周縁部80と区画部81とに囲まれて、膨張完了時の後端86a側を、隣接する嵌合セル部88に対して閉塞されており、膨張完了時の前端86b側の部位のみで、嵌合セル部88に連通されている。詳細に説明すれば、ピラーカバー部86は、前端86b側である周縁部80における前側部位80dと区画部81の端末部81bとの間のみを開口させており、この領域を、膨張用ガスを流入させる流入用開口87として、嵌合セル部88及び取付膨張部92と連通されている。
【0065】
嵌合セル部88は、膨張完了時に、ピラーカバー部86の下方において、フロントピラー1の側面からフロントピラー1の下方のサイドウィンド14の側面にかけてを覆うように配設されるもので、膨張完了時の後端88a側となる後側部位89を、ドアミラー27Aの上面側において、ドアミラー27Aのミラー本体28Aと、車両の側面であるサイドウィンド14と、の間の隙間H2に嵌合させるように、構成されている。詳細には、エアバッグ78の膨張完了時において、嵌合セル部88における後側部位89の下側の領域89aが、ミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合されることとなる(図22参照)。実施形態の場合、嵌合セル部88は、平らに展開した状態のバッグ本体79における縦領域部79cにおいて、区画部81,82間の領域から、構成されている。換言すれば、嵌合セル部88は、周囲を、周縁部80における後側部位80cと区画部81,82とに囲まれており、膨張完了時の形状を、前後方向に略沿った略棒状とされることとなる。また、嵌合セル部88は、区画部81を介してピラーカバー部86と連結されており、換言すれば、後端88a側をピラーカバー部86に対して閉塞されて区画された状態で、前後の全域にわたって、平らに展開した状態でのピラーカバー部86の右縁86dに連結されている。そして、実施形態の場合、嵌合セル部88は、前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部86の前後方向の長さ寸法より若干短くして構成されており、エアバッグ78の膨張完了時に、後端88a側を、ミラー本体28Aの元部28aよりも後方に突出させるように構成されるとともに(図23参照)、エアバッグ78の膨張完了時に、ピラーカバー部86の下方を、前後の略全域にわたって、支持可能に、構成されている。
【0066】
また、嵌合セル部88は、下方に配置される取付膨張部92に対しても、後端88a側を閉塞されている。すなわち、嵌合セル部88は、前端88b側の部位でのみ、隣接するピラーカバー部86,取付膨張部92と連通される構成であり、詳細には、嵌合セル部88は、前端88b側において、取付膨張部92側となる区画部82の端末部82bと周縁部80の前側部位80dとの間の領域を、内部に膨張用ガスを流入させる流入用開口90として、取付膨張部92と連通されている。また、嵌合セル部88は、上述したごとく、膨張完了時に上側に配置される流入用開口87の部位で、ピラーカバー部86と連通されている。嵌合セル部88は、前後方向の長さ寸法を、エアバッグ78の膨張完了時に、後端88a近傍の部位(実施形態の場合、後側部位89の下部側の領域89a)をミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合可能な長さ寸法とされるもので、膨張完了時において、実施形態の場合、後端88aを、ピラーカバー部86の後端86aより前方に位置させ、前端88bを、ピラーカバー部86の前端86bと略一致させるように、ピラーカバー部86の前後方向の幅寸法より若干小さくする寸法として、構成されている。
【0067】
取付膨張部92は、膨張完了時に、嵌合セル部88の下方において、フロントドア13におけるドア部18の上端(ベルトライン17)の側面側において、ドアミラー27Aにおけるミラー本体28Aの前方側の領域を覆うように、嵌合セル部88より前後方向の幅寸法を小さくして、構成されている。この取付膨張部92は、平らに展開した状態のバッグ本体79における横領域部79dにおいて、区画部82,83間の領域から、構成されている。この取付膨張部92は、膨張完了時の後端92a側を、周囲に配置される区画部82,83によって、嵌合セル部88及び支持膨張部95に対して閉塞されており、前端92b側の流入用開口90及び連通部97の部位でのみ、隣接する嵌合セル部88及び支持膨張部95と連通されている。そして、取付膨張部92は、後端92a近傍となる区画部82,83間の部位(後側部位93)に、インフレーター73を内蔵させている。そして、後側部位93を構成する車体側壁部79bには、インフレーター73のボルト74aを挿通させるための挿通孔93aが、形成されている。挿通孔93aは、インフレーター73のボルト74aに対応して、実施形態の場合、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。この取付膨張部92は、膨張完了時において、前端92bを、嵌合セル部88の前端88b及びピラーカバー部86の前端86bと略一致させるように、構成されている。また、この取付膨張部92は、エアバッグ78の膨張完了時に、車体側壁部79bにおける挿通孔93aの周囲の部位を、ケース部70の内部に引き込まれ、残部を、ケース部70の開口70cから外方に突出させるようにして、配置されることとなる。
【0068】
実施形態では、エアバッグ78の膨張完了時に、ピラーカバー部86、嵌合セル部88、及び、取付膨張部92は、前端86b,88b,92bを上下で略一致させて、上下方向側で重なるように、配置されることとなる。そして、嵌合セル部88は、インフレーター73を内蔵させた取付膨張部92側に配置される流入用開口90から、内部に膨張用ガスを流入させる構成であり、ピラーカバー部86は、流入用開口90を経て、さらに、嵌合セル部88との境界部位に配置される流入用開口87から、内部に膨張用ガスを流入させる構成である。すなわち、実施形態では、嵌合セル部88内に膨張用ガスを流入させる流入用開口90は、ピラーカバー部86内に膨張用ガスを流入させる流入用開口87より、膨張用ガスの流れの上流側に、配置されている。
【0069】
支持膨張部95は、エアバッグ42の膨張完了時、下面95c側となる車内側Iを、車体側部材としてのフロントドア13におけるアウタパネル19に支持されるように、カバー膨張部85の下面側に配置されることとなる。この支持膨張部95は、下面95c側(車内側I)をアウタパネル19によって支持されて、カバー膨張部85の下面側(詳細には、取付膨張部92の下面92c側)を、支持する構成とされている。実施形態の場合、支持膨張部95は、平らに展開した状態のバッグ本体79における横領域部79dにおいて、区画部83より右側の領域から、構成される。すなわち、支持膨張部95は、周縁部80と区画部83とに囲まれる領域から、構成されるものであり、実施形態の場合、平らに展開した状態で、取付膨張部92から延びるようにして構成されて、前後方向の幅寸法を、取付膨張部92の前後方向の幅寸法と略一致させて、構成されている。そして、支持膨張部95は、元部95a側(バッグ本体79を平らに展開した状態における左端側)を、カバー膨張部85における取付膨張部92に連結させた構成としている。また、支持膨張部95は、取付膨張部92との境界部位を、区画部83によって区画されており、換言すれば、膨張完了時の後端95d側を、周囲に配置される区画部83によって、取付膨張部92に対して閉塞されており、前端95e側における区画部83の前端83aと周縁部80の前側部位80dとの間の領域から構成される連通部97の部位でのみ、取付膨張部92と連通されている。
【0070】
また、支持膨張部95は、元部95aから離れた先端95b側(平らに展開した状態における右端側)となる周縁部80の右側部位80aに、インフレーター73のボルト74aを挿通可能な挿通孔96を、備えており、この挿通孔96に、インフレーター73のボルト74aを挿通させ(図19,20参照)、この挿通孔96の周縁の部位を、インフレーター73及びエアバッグ78における取付膨張部92とともに、ケース部70に取り付けられている。挿通孔96は、インフレーター73のボルト74aに対応して、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。そして、実施形態の場合、支持膨張部95は、車体側壁部78bを取付膨張部92の車体側壁部78bに接触させるように、区画部83の部位で、折目C(図18,19参照)を付けて、取付膨張部92に対して折り返されて、挿通孔96にボルト74aを挿通されることとなる。
【0071】
そして、支持膨張部95は、エアバッグ78の膨張完了時に、元部95a側を車外側Oに位置させ、先端95b側をケース部70側となる車内側Iに位置させるように、折目Cの部位で取付膨張部92に対して折り返された状態で、車体側壁部79bを、取付膨張部92を構成する車体側壁部79b(下面92c)に接触させ、車外側壁部79aからなる下面95c側を、車体側部材であるフロントドア13のアウタパネル19に支持させるようにして、アウタパネル19と取付膨張部92との間に介在されて、取付膨張部92の下面92c側を支持することとなる(図21参照)。
【0072】
内側ストラップ部としての連結ベルト99は、バッグ本体79と別体とされて、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から構成されるもので、平らに展開したバッグ本体79における周縁部80の左側部位80bに、元部99aを縫着されている。換言すれば、連結ベルト99は、ピラーカバー部86において、嵌合セル部88から離れた側(膨張完了時にケース部70から離れた側)となる左縁86cから延びるように形成されている。実施形態の場合、連結ベルト99は、左右方向に略沿って配置される幅広の帯状とされ、前後方向の幅寸法を、バッグ本体79における横領域部79dの前後の幅寸法の1/2程度として、構成されている。また、連結ベルト99の先端99b側には、インフレーター73のボルト74aを挿通可能な挿通孔100が、形成されている。この挿通孔100は、インフレーター73のボルト74aに対応して、前後方向に沿った2箇所に、形成されるもので、実施形態では、連結ベルト99の先端99bは、インフレーター73のボルト74aを利用して、インフレーター73、エアバッグ78の取付膨張部92、及び、支持膨張部95の先端95bとともに、ケース部70の底壁部70aに連結されている。
【0073】
この連結ベルト99は、エアバッグ78の膨張完了時に、カバー膨張部85とフロントピラー1との間に、配置されることとなる。そして、連結ベルト99は、長さ寸法を、エアバッグ78の膨張完了時に、ピラーカバー部86の左縁86c側を、ケース部70(収納部位P2)側に引っ張って、ピラーカバー部86の左縁86cをフロントピラー1から浮き上がらせることを防止可能とし、かつ、ピラーカバー部86の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。また、実施形態の場合、連結ベルト99の先端99b側に設けられる挿通孔100は、フロントピラー1がケース部70に対して傾斜していることを考慮して、後側に配設される挿通孔100Bの挿通孔93aからの離隔距離を、前側に配設される挿通孔100Fの挿通孔93aからの離隔距離よりも大きくするように、構成されており、連結ベルト99の先端99bも、挿通孔100F,100Bに対応して、前後方向に対して傾斜して、構成されている(図18参照)。
【0074】
実施形態の場合、エアバッグ78は、ボルト75aを挿通孔93aから突出させるようにして、取付膨張部92における後側部位93にインフレーター73を内蔵させ、支持膨張部95を、車体側壁部79bを取付膨張部92の車体側壁部79bに対向させるように、取付膨張部92に対して折り返して、周縁部80の右側部位80a(支持膨張部95の先端95b)に形成される挿通孔96にボルト38aを挿通させた状態で、ケース部70内に収納可能な所定形状に折り畳まれることとなる。そして、折り畳まれたバッグ本体79は、連結ベルト99の先端99bに形成される挿通孔100にボルト74aを挿通させた状態で、インフレーター73とともにケース部70内に収納されることとなる。そして、ケース部70の底壁部70aから突出しているボルト74aを、フロントドア13におけるアウタリインホースメント20にナット75止めすれば、インフレーター73とエアバッグ78とをケース部70に取り付けることができると同時に、支持膨張部95の先端95b側の端部(周縁部80における右側部位80a)と、連結ベルト99の先端99bとを、ケース部70に取り付けることができる。
【0075】
第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、車両Vへの搭載後、インフレーター73が作動されれば、インフレーター73から吐出される膨張用ガスがエアバッグ78内に流入して、膨張するエアバッグ78がエアバッグカバー71を押し開き、ケース部70の開口70cから突出したエアバッグ78が、図14〜16の二点鎖線及び図21〜23に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0076】
そして、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ78が、フロントピラー1の前面1aを覆うピラーカバー部86と区画されて、膨張完了時に、図22,23に示すように、ピラーカバー部86の下方において、後端88a側となる後側部位89を、ドアミラー27Aの上面側において、ドアミラー27Aのミラー本体28Aと車両の側面であるサイドウィンド14との間の隙間(ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H2)に嵌合されて配置される嵌合セル部88を、有していることから、エアバッグ78の膨張完了時に、この嵌合セル部88が、左右方向(車内外方向)側を、安定して、ドアミラー27Aのミラー本体28A若しくはサイドウィンド14によって押えられることとなって、左右方向(車内外方向)側へのぶれを、極力抑えられることとなる。実施形態の場合、嵌合セル部88は、後側部位89の下側の領域89aを、ミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合されることとなる(図22参照)。
【0077】
また、この嵌合セル部88は、前後の略全域にわたって、区画部81によって、ピラーカバー部86の下縁側(平らに展開した状態でのピラーカバー部86の右縁86d)に連結される構成である。そのため、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ78の膨張完了時に、ドアミラー27Aのミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に、後側部位89の下側の領域89aを嵌合されて車内外方向のぶれを抑えられた嵌合セル部88によって、フロントピラー1の前面1aを覆っているピラーカバー部86の車外側を、支持させることができて、ピラーカバー部86の歩行者の受け止め時に、ピラーカバー部86が、歩行者によって強く押圧される際にも、ピラーカバー部86が車外側へ大きく横ずれすることを防止することができる。
【0078】
したがって、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ78の膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラー1の前面1aを覆うことができる。
【0079】
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、嵌合セル部88が、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状とするとともに、前端88b側に、ピラーカバー部86の上流側(詳細に説明すれば、ピラーカバー部86内に膨張用ガスを流入させる流入用開口87の上流側)に位置して、嵌合セル部88に膨張用ガスを流入させる流入用開口90を、配設させている。そのため、嵌合セル部88は、ピラーカバー部86よりも先に、膨張して所定の隙間H2に嵌合されることとなり、膨張するピラーカバー部86を、車外側に向かってずれるように展開することを抑えて、的確にフロントピラー1の前面1a側を覆うように配置させることができる。このとき、嵌合セル部88内には、流入用開口90を経て、前端88b側から後端88a側に向かって膨張用ガスが流入することから、嵌合セル部88は、ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H2に向かって突出するように膨張することとなり、ピラーカバー部86の膨張完了前であっても、膨張する嵌合セル部88の後側部位89を、確実に、ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合させることができる。また、嵌合セル部88は、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状として、前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部86の前後方向の長さ寸法より若干小さくして、かつ、前後の全域にわたってピラーカバー部86に連結されていることから、膨張完了時に、ピラーカバー部86の車外側を前後の略全域にわたって支持することができ、ピラーカバー部86が車外側へ大きく横ずれすることを的確に防止することができる。特に、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、嵌合セル部88は、エアバッグ78の膨張完了時に、後端88a側を、ミラー本体28Aの元部28aよりも後方に突出させるように構成されており(図23参照)、ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間に形成される隙間H2に、前後の全域にわたって上から嵌まり込むように、嵌合されることとなる。そのため、仮に、ピラーカバー部86が車内外方向にぶれることとなっても、嵌合セル部88の隙間H2への嵌合状態を強固に保持することができて、また、ピラーカバー部86の膨張完了前に歩行者が接触することとなっても、嵌合セル部88によって、ピラーカバー部86の位置ずれを極力抑えることができ、ピラーカバー部86によって歩行者を円滑に保護することができる。
【0080】
さらに、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、嵌合セル部88は、前端88b側の流入用開口90の部位でのみピラーカバー部86と連通されており、後端88a側の部位を、区画部81によって、ピラーカバー部86に対して閉塞されて区画されていることから、嵌合セル部88において、ミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合される後側部位89の下側の領域89aが、ピラーカバー部86に対して膨張用ガスの相互移動を極力抑えられた状態で、この隙間H2に嵌合されることとなる。そのため、嵌合セル部88の後側部位89の隙間H2への嵌合状態を保持しやすく、また、嵌合セル部88が、高い内圧を維持した状態で、ピラーカバー部86を支持することができることから、歩行者を受け止めたピラーカバー部86が、歩行者によって強く押圧されることとなっても、嵌合セル部88が、この押圧力を受けて、車外側へ横ずれすることを防止でき、ピラーカバー部86の車外側へ向かうような横ずれを的確に防止することができる。
【0081】
逆に、エアバッグ78Aとして、図24に示すように、嵌合セル部88Aの後端88a付近に、ピラーカバー部86Aと連通される連通部103を備える構成のものを使用してもよい。このエアバッグ78Aでは、連通部103は、嵌合セル部88Aとピラーカバー部86Aとを区画している区画部81Aを分断させるようにして、形成されている。このようなエアバッグ78Aを使用すれば、上記のような作用は得られないものの、嵌合セル部88Aは、ピラーカバー部86Aに対して、連通部103を介して膨張用ガスの相互移動を可能とされることから、ピラーカバー部86Aが歩行者を受け止めた際に、余剰な膨張用ガスを、嵌合セル部88A内に逃がすことができ、ピラーカバー部86Aによって歩行者をソフトに受け止めることが可能となる。
【0082】
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ78が、膨張完了時におけるカバー膨張部85の下面側(詳細に説明すれば、取付膨張部92の下面92c)側を支持する支持膨張部95を、備えており、この支持膨張部95の下面95c側を、収納部位P2としてのケース部70の下方に位置する車体側部材であるフロントドア13のアウタパネル19に支持させることにより、取付膨張部92の下面92c側を支持している構成である(図21参照)。そのため、エアバッグ78の膨張完了時に、エアバッグ78(バッグ本体79)全体が、下面95c側をアウタパネル19に支持される支持膨張部95によって支持されることとなり、嵌合セル部88自体の下降移動も防止されることから、ピラーカバー部86の車外側への横ずれを一層的確に防止することができる。
【0083】
特に、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、支持膨張部95は、膨張完了時に、取付膨張部92に対して折り返されて、取付膨張部92側の車体側壁部79bを、取付膨張部92の車体側壁部79bに接触させるようにして、車体側部材であるアウタパネル19と取付膨張部92との間に介在されていることから、支持膨張部95は、取付膨張部92に対して、膨張用ガスの相互移動を抑えられた状態で、取付膨張部92の下面92c側を支持するように、配置されることとなる。そのため、支持膨張部95が、高い内圧を維持した状態で、カバー膨張部85を支持することができることから、歩行者を受け止めたカバー膨張部85のピラーカバー部86が、歩行者によって強く押圧されることとなっても、支持膨張部95が、この押圧力を受けて、車外側へ横ずれすることを防止でき、ピラーカバー部86の車外側へ向かうような横ずれを的確に防止することができる。
【0084】
詳細には、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、膨張完了時においてピラーカバー部86の下方に配置される嵌合セル部88と取付膨張部92とは、前端88b,92bを、ピラーカバー部86の前端86bと、上下で略一致させるように、構成されている。換言すれば、カバー膨張部85は、ピラーカバー部86の下方において、ピラーカバー部86に対して前縁側を部分的に凹ませるような凹部を備えていないことから、エアバッグ78の展開膨張時に、ピラーカバー部86自体の前端86bが、嵌合セル部88や取付膨張部92に対してぶれることを防止できる。また、支持膨張部95は、膨張完了時の前後方向の幅寸法を、取付膨張部92と同一に設定されていることから、支持膨張部95によって、取付膨張部92の下面92c側を前後の全域にわたって支持させることができる。そのため、下面92c側を前後の全域にわたって支持膨張部95に支持される取付膨張部92を介して、ピラーカバー部86が、支持膨張部95に支持されることから、ピラーカバー部86が、車外側へ横ずれすることを、的確に防止することができる。
【0085】
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、ピラーカバー部86と嵌合セル部88と取付膨張部92とは、前端86b,88b,92b側の部位のみで相互に連通されており、この前端86b,88b,92b側の部位が、エアバッグ78の膨張完了時に、上下方向に延びるような棒状として、配設されることとなる(図23参照)。そのため、ピラーカバー部86,嵌合セル部88,取付膨張部92における前端86b,88b,92b側の部位が、支持膨張部95からピラーカバー部86にかけて延びる支柱を構成するような態様となり、この部位によって、ピラーカバー部86の前端86bの下面側を強固に支持させることができて、ピラーカバー部86の横ずれを的確に防止することができる。
【0086】
さらにまた、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ78が、ピラーカバー部86の左縁86c(内縁)から延びて、先端99b側をケース部70(収納部位P2)側に連結される連結ベルト99を有していることから、エアバッグ78の展開膨張時に、ピラーカバー部86の左縁86c側が、車体(フロントガラス7)から大きく浮き上がることを防止できて、膨張するピラーカバー部86によって、フロントピラー1の前面1a側を迅速に覆うことができる。また、歩行者を受け止めた際にも、ピラーカバー部86が、歩行者の押圧力を受けて、フロントピラー1からずれるように移動することを防止できることから、ピラーカバー部86によって、歩行者を的確に受け止めることができる。
【0087】
なお、実施形態のエアバッグ42,78,78Aでは、嵌合セル部50,88,88Aは、ピラーカバー部86,50Aより前後方向の長さ寸法を短く設定されて、膨張完了時の後端50a,88aを、ピラーカバー部47,86,86Aの後端47a,86aより前方に位置させるような形状とされているが、エアバッグの外形形状はこれに限られるものではなく、嵌合セル部の前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部の前後方向の長さ寸法と一致させるように、構成してもよい。
【0088】
また、実施形態では、エアバッグ装置M1,M2は、ドアミラー27,27Aにおける取付ベース29,29Aの部位に、搭載されているが、エアバッグ装置の搭載位置はこれに限られるものではなく、ドアミラーの前側付近のフロントドアや、ドアミラーの前側付近であってフロントドアの前方に位置する車両のボディ側の部位に、エアバッグ装置を搭載させてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…フロントピラー、
1a…前面、
1b…元部、
13…フロントドア、
14…サイドウィンド、
19…アウタパネル、
27,27A…ドアミラー、
28,28A…ミラー本体、
33,70…ケース部、
35,71…エアバッグカバー、
37,73…インフレーター、
42,78,78A…エアバッグ、
47,86,86A…ピラーカバー部、
48,87…流入用開口、
50,88,88A…嵌合セル部、
51,89…後側部位、
52,90…流入用開口、
56…インナチューブ、
56b…開口、
58…テザー、
61…内側ストラップ部、
85…カバー膨張部、
95…支持膨張部、
99…連結ベルト(内側ストラップ部)、
H1,H2…隙間、
P1,P2…収納部位、
V…車両、
M1,M2…エアバッグ装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラーにおける下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の歩行者との衝突時に、歩行者が車両のフロントピラーに直接当たらないように、フロントピラーの前面側を覆うようにエアバッグを膨張させて配置させる構成のエアバッグ装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のエアバッグ装置では、エアバッグは、車両のフロントドアに配設されるドアミラーの前側の領域に折り畳まれて収納されて、膨張完了時に、ドアミラー近傍となるフロントピラーの下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆う構成とされていた。詳細には、従来のエアバッグ装置において、エアバッグは、フロントピラーの元部(下端)から上下方向の中央付近にかけての領域の前面側を覆う長尺状のピラーカバー部と、ピラーカバー部の上下の中央付近から突出するように配置されるとともにピラーカバー部とドアミラーとの間に介在されてドアミラーに支持される支持膨張部と、を有しており、このドアミラーの内側面に支持された支持膨張部によりピラーカバー部を支持させて、膨張完了時において歩行者を受け止めた際に、車外側への横ずれを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6957公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエアバッグ装置のエアバッグでは、支持膨張部は、ピラーカバー部の上下の中央付近から部分的にドアミラー側に向かって突出するように構成されるとともに、ドアミラーの内側面に支持されていることから、膨張完了時のピラーカバー部のぶれを抑えることができるものの、歩行者がピラーカバー部を強く車外側に向かって押圧した際に、支持膨張部がドアミラーの内側面から外れて、ドアミラーの上面を滑る虞れがあり、ピラーカバー部のフロントピラーからずれるような横ずれを的確に抑える点に、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグの膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラーの前面を覆い可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置は、車両のフロントピラーにおける下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆い可能なエアバッグを、備える構成のエアバッグ装置であって、
車両が、フロントピラーの後側に隣接して配設されて、フロントピラーの後方に位置するサイドウィンドを有し、かつ、サイドウィンドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを、備え、
エアバッグが、
フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近に配置される収納部位内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、収納部位から突出しつつ膨張する構成とされて、
膨張完了時に、フロントピラーの前面を覆うように配置されるピラーカバー部と、
ピラーカバー部と区画されて、膨張完了時に、ピラーカバー部の下方に配設されるとともに、後端側の部位を、ドアミラーの上面側におけるドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合させるように配置される嵌合セル部と、
を備える構成とされ、
嵌合セル部が、前後の略全域にわたってピラーカバー部の下縁側に連結されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のエアバッグ装置では、エアバッグが、フロントピラーの前面を覆うピラーカバー部と区画されて、膨張完了時に、ピラーカバー部の下方において、後端側の部位を、ドアミラーの上面側におけるドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合されて配置される嵌合セル部を、有していることから、エアバッグの膨張完了時に、この嵌合セル部が、左右方向(車内外方向)側を、安定して、ドアミラー若しくは車両の側面によって押えられることとなって、左右方向(車内外方向)側へのぶれを、極力抑えられることとなる。また、この嵌合セル部は、前後の略全域にわたってピラーカバー部の下縁側に連結される構成である。その結果、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、ドアミラーの上面側におけるドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合されて車内外方向のぶれを抑えられた嵌合セル部の上縁側の全域にわたって、フロントピラーの前面を覆っているピラーカバー部を、支持させることができて、ピラーカバー部が歩行者の受け止め時に、歩行者によって強く押圧される際に、ピラーカバー部が車外側へ大きく横ずれすることを防止することができる。
【0009】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラーの前面を覆うことができる。
【0010】
また、本発明のエアバッグ装置において、ピラーカバー部を、嵌合セル部よりも、エアバッグ内に流入する膨張用ガスの上流側に位置するように、構成すれば、エアバッグの展開膨張時に、まず、ピラーカバー部が、内部に膨張用ガスを流入させて、フロントピラーの前面を覆うように展開膨張し、その後、嵌合セル部が、内部に膨張用ガスを流入させるようにして膨張することとなる。そのため、膨張するピラーカバー部によって、フロントピラーの前面を迅速に覆うことができて、好ましい。
【0011】
さらに、上記構成のエアバッグ装置において、嵌合セル部の前端側に、膨張用ガスを流入させるための流入用開口を、配設させる構成とし、
エアバッグの内部に、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターから吐出される膨張用ガスをピラーカバー部側に案内するインナチューブを、配置させ、
インナチューブを、略筒状とするとともに、流入用開口を横切って、先端側を、ピラーカバー部側に開口させた構成とすることが好ましい。
【0012】
エアバッグ装置をこのような構成とすれば、エアバッグの内部に略筒状のインナチューブを配設させれば、構成を簡便にすることができるとともに、安定して、ピラーカバー部を、嵌合セル部よりも先に膨張させることができる。また、ピラーカバー部と嵌合セル部との膨張タイミング(嵌合セル部内への膨張用ガスの流入開始タイミング)を略一定とすることができて、製品ごとにばらつきが生じることを抑制することができる。
【0013】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、エアバッグに、膨張完了時の周縁から延びて先端を収納部位側に取り付けられるテザーを、配設させ、
テザーを、膨張完了時のピラーカバー部における嵌合セル部から離れた側となる内縁側から延びて、ピラーカバー部の内縁側を収納部位側に引っ張り、フロントピラーからの浮き上がりを抑制可能な内側ストラップ部を備える構成とすることが好ましい。
【0014】
このような構成のエアバッグ装置では、エアバッグの展開膨張時に、ピラーカバー部における嵌合セル部から離れた側となる内縁側が、フロントピラーから浮き上がることを抑制することができ、膨張完了時のエアバッグにおいて、ピラーカバー部によって、フロントピラーの前面側を広く覆うことができる。
【0015】
また、本発明のエアバッグ装置において、嵌合セル部を、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状とするとともに、前端側に、ピラーカバー部より上流側に位置して、嵌合セル部に膨張用ガスを流入させるための流入用開口を配設させる構成としてもよく、このような構成とする場合、嵌合セル部は、ピラーカバー部よりも先に、膨張して所定の隙間に嵌合されることとなり、膨張するピラーカバー部を、車外側に向かってずれるように展開することを抑えて、的確にフロントピラーの前面側を覆うように配置させることができる。また、嵌合セル部は、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状としていることから、膨張完了時に、ピラーカバー部の車外側を前後の略全域にわたって支持することができ、ピラーカバー部が車外側へ大きく横ずれすることを一層的確に防止することができる。そのため、仮に、ピラーカバー部の膨張完了前に歩行者が接触することとなっても、嵌合セル部によって、ピラーカバー部の位置ずれを極力抑えることができ、ピラーカバー部によって歩行者を円滑に保護することができる。
【0016】
また、上記構成のエアバッグ装置において、嵌合セル部の後端側を、ピラーカバー部に対して閉塞されて区画させている構成とすれば、嵌合セル部において、ドアミラーと車両の側面との間の隙間に嵌合される後端側の部位が、ピラーカバー部に対して膨張用ガスの相互移動を極力抑えられた状態で、この隙間に嵌合されることから、嵌合セル部の隙間への嵌合状態を保持しやすく、また、嵌合セル部が、高い内圧を維持した状態で、ピラーカバー部を支持することができる。そのため、歩行者を受け止めたピラーカバー部が、歩行者によって強く押圧されることとなっても、嵌合セル部が、この押圧力を受けて、車外側へ横ずれすることを防止でき、ピラーカバー部の車外側へ向かうような横ずれを的確に防止することができて、好ましい。
【0017】
逆に、上記構成のエアバッグ装置において、嵌合セル部の後端付近に、ピラーカバー部と連通される連通部を、配設させる構成としてもよく、このような構成の場合、嵌合セル部は、ピラーカバー部に対して、連通部を介して膨張用ガスの相互移動を可能とされることから、ピラーカバー部が歩行者を受け止めた際に、余剰な膨張用ガスを、嵌合セル部内に逃がすことができ、ピラーカバー部によって歩行者をソフトに受け止めることが可能となる。
【0018】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、エアバッグを、
ピラーカバー部と嵌合セル部とを配設させて、膨張完了時に、フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側の領域から、フロントピラーの前面にかけての領域を覆うように配置されるカバー膨張部と、
膨張完了時に、ドアミラーの前側の領域に配置されるとともに、カバー膨張部の下面側において、下面側を、収納部位の下方側に位置する車体側部材に支持されるように配置されて、カバー膨張部の下面側を支持する支持膨張部と、
を備える構成とすることが好ましい。
【0019】
上記構成のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、エアバッグ全体が、下面側を収納部位の下方側に位置する車体側部材に支持される支持膨張部によって支持されることとなり、嵌合セル部自体の下降移動も防止されることから、ピラーカバー部の車外側への横ずれを一層的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態であるエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大斜視図である。
【図2】第1実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大側面図である。
【図3】第1実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図4】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略縦断面図であり、図2のIV−IV部位を示す。
【図5】第1実施形態のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【図6】図5のエアバッグの縦断面図であり、図5のVI−VI部位を示す。
【図7】図5のエアバッグにおいて、バッグ本体と、インナチューブと、テザーと、を並べた状態の平面図である。
【図8】第1実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグの膨張過程を説明する部分拡大斜視図である。
【図9】第1実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグの膨張過程を説明する部分拡大斜視図であり、図8の後の過程を説明する図である。
【図10】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略斜視図である。
【図11】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略縦断面図である。
【図12】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了時における嵌合セル部の前端付近である図5のA−A部位付近を示す概略断面図である。
【図13】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時において、嵌合セル部がドアミラーとサイドウィンドとの間の隙間に嵌合されている状態を説明する概略図である。
【図14】本発明の第2実施形態であるエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大斜視図である。
【図15】第2実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大側面図である。
【図16】第2実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図17】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略縦断面図であり、図15のXVII−XVII部位を示す。
【図18】第2実施形態のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【図19】図18のエアバッグの縦断面図であり、図18のXIX−XIX部位を示す。
【図20】図18のエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す断面図である。
【図21】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略縦断面図である。
【図22】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時において、嵌合セル部がドアミラーとサイドウィンドとの間の隙間に嵌合されている状態を説明する概略図である。
【図23】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時において、エアバッグの膨張完了状態を示す概略斜視図である。
【図24】第2実施形態のエアバッグ装置に使用可能な他の形態であるエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、図1〜3に示すように、車両Vの左右のフロントピラー1の後側に隣接して配設される各フロントドア13に、搭載されている。詳細には、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、フロントドア13に設けられるドアミラー27の部位に搭載されている。左右の各フロントピラー1は、鋼板等からなるアウタパネル2、インナパネル3、及び、アウタパネル2とインナパネル3との間に配置されるリインホースメント4を、備えて構成されており、車両Vの構造体としての高い剛性を具備して、配設されている(図11参照)。なお、図1の符号6で示す部材は、窓枠ゴムであり、図1〜3の符号7で示す部材は、フロントガラスである。また、図1〜3の符号8で示す部材は、フードパネルであり、図1〜3の符号9で示す部材は、フロントバンパである。
【0022】
なお、本明細書において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の各方向に対応するものである。
【0023】
また、実施形態では、車両Vの右側に位置するフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグ42を備えたエアバッグ装置M1について、詳細に説明する。左側のフロントピラーの前面側を覆うエアバッグを備えたエアバッグ装置は、右側のエアバッグ装置と左右対称形として、同一の構成であることから、左側のエアバッグ装置に関しては、説明を省略する。
【0024】
第1実施形態のエアバッグ装置M1が搭載されるフロントドア13は、図1〜3に示すように、フロントピラー1の後側に隣接して配設されるもので、フロントピラー1の後方に位置するサイドウィンド14と、サイドウィンド14の下方のドア部18と、を有するとともに、サイドウィンド14の前側の下隅付近に、ドアミラー27を、配設させて構成されている。サイドウィンド14は、ドアガラス15と、ドアガラス15の周囲に配置される窓枠部16と、を備えている。実施形態の場合、窓枠部16の下縁部16aが、ベルトライン17を構成している(図2参照)。ドア部18は、図4に示すように、間にドアガラス15を収納可能な隙間を有して配置される鋼板等からなるアウタパネル19及びインナパネル21と、インナパネル21の車内側を覆うように配置されるドアトリム23と、を備えており、アウタパネル19とインナパネル21との内側(ドアガラス15側)には、それぞれ、アウタリインホースメント20とインナリインホースメント22とが、配設されている。また、アウタパネル19の上端側には、窓枠部16を構成するアウタモール24が、配設され、アウタパネル19とインナパネル21との上端側には、ドアガラス15を摺動させるガラスウェザストリップ25が、配設されている。また、実施形態では、アウタリインホースメント20におけるエアバッグ装置M1が配置される領域の車内側Iに、エアバッグ装置M1側への雨水や異物等の侵入を防止するシール部材32が、配設されている(図4参照)。
【0025】
ドアミラー27は、図1〜3に示すように、窓枠部16における下縁部16a(ベルトライン17)の前縁16b近傍に取り付けられる取付ベース29と、取付ベース29の上面側に回動可能に取り付けられるミラー本体28と、を備えている。詳細には、取付ベース29は、フロントピラー1の下端側となる元部1bの下側に接近して配設されている(図1〜3参照)。実施形態の場合、取付ベース29は、後端側に、ミラー本体28を配設させるとともに、ミラー本体28を取り付けた部位の前方側の領域に、エアバッグ装置M1を配設させている構成である。ミラー本体28は、使用時に、図3,13に示すように、軸支される元部28aから延びる先端28bを、車外側Oに突出させるように配置されることとなり、この使用状態において、車内側Iの端面(実施形態の場合、左端面28c)とサイドウィンド14との間に、正面視で上側を幅広とした略三角状の隙間H1を有することとなる(図13参照)。取付ベース29は、車内側(左側)に配置されてアウタリインホースメント20に取り付けられる板金製の取付部材30と、取付部材30の車外側(右側)を覆うように配置される合成樹脂製のカバー部材31と、を備えており、取付部材30とカバー部材31とに囲まれた領域が、エアバッグ装置M1において、折り畳まれたエアバッグ42を収納する収納部位P1を、構成している(図4参照)。具体的には、取付部材30が、折り畳まれたエアバッグ42を収納するケース部33を構成し、カバー部材31が、折り畳まれたエアバッグ42を覆うエアバッグカバー35を構成している。
【0026】
エアバッグ装置M1は、図4に示すように、可撓性を有した袋状のエアバッグ42と、エアバッグ42に膨張用ガスを供給するインフレーター37と、を備えている。第1実施形態のエアバッグ装置M1では、折り畳まれたエアバッグ42のみが、収納部位P1内に収納され、インフレーター37は、図2,4に示すように、収納部位P1の下方の領域に配置されている。折り畳まれたエアバッグ42を収納する収納部位P1は、ドアミラー27の前端付近である取付ベース29の前側の領域から、構成されている。そして、この取付ベース29の前側の領域において、取付部材30が、折り畳まれたエアバッグ42を収納させるケース部33を構成し、取付部材30を覆うカバー部材31が、折り畳まれたエアバッグ42の車外側Oを覆うエアバッグカバー35を、構成している(図2,4参照)。
【0027】
ケース部33は、図2,4に示すように、取付部材30から連なるように構成されるとともに、折り畳まれたエアバッグ42の車内側Iと下方とを覆うように、内壁部33aと下壁部33bとを有した断面略L字形状として、車外側Oを開口させるように、構成されている。実施形態の場合、このケース部33は、内壁部33aの車内側面をアウタリインホースメント20に固着されて、車体側部材であるアウタリインホースメント20に取り付けられている。また、ケース部33における下壁部33bの前端近傍部位と、内壁部33aにおける後端近傍部位と、には、エアバッグ42の後述するテザー58を取り付ける取付孔33c,33dが、形成されている(図11,12参照)。また、ケース部33の下壁部33bには、エアバッグ42の後述するガス流入口部54を挿通可能な図示しない開口が、形成されている。
【0028】
エアバッグカバー35は、カバー部材31から連なるように構成されるもので折り畳まれたエアバッグ42の車外側Oを覆うとともに、エアバッグ42の展開膨張時に開いて、エアバッグ42をケース部33から突出させる扉部35aを、有している。実施形態の場合、扉部35aは、開き時に、図11に示すように、下端側を回転中心として、上端を車外側下方に向かって開かせるような下開きとして、構成されている。
【0029】
インフレーター37は、実施形態の場合、図2,4に示すように、収納部位P1の下方となるケース部33における下壁部33bの下方の領域に、配置されるもので、実施形態の場合、軸方向を前後方向に略沿わせたシリンダタイプとされている。インフレーター37は、前端側に、図示しないガス吐出口を備える構成とされて、このガス吐出口付近の部位を、クランプ40を利用して、エアバッグ42のガス流入口部54に連結されている(図5の二点鎖線参照)。また、インフレーター37は、板金製のディフューザー38により周囲を保持されるもので、ディフューザー38に設けられるボルト38aを、アウタリインホースメント20にナット39止めすることにより、車体側部材であるアウタリインホースメント20に取り付けられている。なお、図示しないが、インフレーター37のボルト38aは、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。また、このインフレーター37は、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を入力させて、膨張用ガスをエアバッグ42内に供給することとなる。エアバッグ作動回路は、車両Vのフロントバンパ9に配置されて歩行者との衝突を検知可能なセンサSE(図1,2参照)からの信号を入力した際に、インフレーター37を作動させることとなる。
【0030】
エアバッグ42は、図5〜7に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な可撓性を有した袋状のバッグ本体43と、バッグ本体43内に配置されるインナチューブ56と、バッグ本体43の周縁から延びるテザー58と、を備えている。
【0031】
バッグ本体43は、実施形態の場合、膨張完了時にフロントピラー1側に配置される車体側壁部43bと、車体側壁部43bに対向して配置される車外側壁部43aと、を有して、平らに展開した状態の車体側壁部43bと車外側壁部43aとの周縁相互を結合させた平面バッグとして、構成されている。実施形態の場合、バッグ本体43は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布を所定形状に裁断した基布相互の周縁を縫合糸を用いて縫着させて、形成されている。詳細に説明すれば、バッグ本体43は、外周縁において、ガス流入口部54における後述する開口54aの部位を除いた全周にわたって形成される周縁部44と、周縁部44に囲まれる領域内に形成される区画部45と、を、車外側壁部43aと車体側壁部43bを結合させるように、縫合糸を用いて縫着させ、残りの領域を、車外側壁部43aと車体側壁部43bとを離すようにして、内部に膨張用ガスを流入可能に、構成されている。区画部45は、後述するピラーカバー部47と嵌合セル部50とを区画するように、周縁部44から延びて、フロントピラー1の軸方向(前後方向)に略沿って、配設されている。また、実施形態の場合、区画部45における先端(前端)側には、応力集中が生じないように、略円形に縫着された端末部45aが、形成されている。
【0032】
バッグ本体43は、膨張完了時にフロントピラー1の前面1aを覆うように配置されるピラーカバー部47と、膨張完了時にピラーカバー部47の下方に配置される嵌合セル部50と、バッグ本体43の内部に膨張用ガスを流入させるガス流入口部54と、を備えている。
【0033】
ピラーカバー部47は、膨張完了形状を、長手方向をフロントピラー1の軸方向(前後方向)に略沿わせた略棒状として構成されるもので、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1a側を、フロントピラー1の下端側となる元部1bから上下方向の中央付近にかけて覆うように、構成されている(図10参照)。実施形態の場合、ピラーカバー部47は、膨張完了時の後端47a側を、ミラー本体28より後方に位置させるように、構成されている。また、ピラーカバー部47は、膨張完了時の前端47b側に、内部に膨張用ガスGを流入させるための流入用開口48を備える構成とされている。実施形態の場合、流入用開口48は、バッグ本体43を平らに展開した状態で、周縁部44における前側部位44aと区画部45における端末部45aとの間の領域から、構成されている(図5,7参照)。
【0034】
嵌合セル部50は、膨張完了時に、ピラーカバー部47の下方において、フロントピラー1の下方のサイドウィンド14の側面を覆うように配設されるもので(図11参照)、膨張完了形状を、長手方向をピラーカバー部47の軸方向(前後方向)に略沿わせた棒状として、構成されている。この嵌合セル部50は、周縁部44から延びる区画部45を介してピラーカバー部47と連結されており、換言すれば、後端50a側をピラーカバー部47に対して閉塞されて区画された状態で、前後の全域にわたって、バッグ本体43を平らに展開した状態でのピラーカバー部47の右縁47c(外縁)に連結されている(図5,7参照)。また、嵌合セル部50は、図10,13に示すように、膨張完了時の後端50a側となる後側部位51を、ドアミラー27の上面側において、ドアミラー27のミラー本体28と、車両の側面であるサイドウィンド14と、の間の隙間H1に嵌合させるように、構成されている。詳細には、エアバッグ42の膨張完了時において、嵌合セル部50における後側部位51の下側の領域51aが、ミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1(特に、ミラー本体28の左端面28cにおける左上端面28cuから左前端面28ufに至る領域とサイドウィンド14との間の隙間H1)に嵌合されることとなる(図10,13参照)。実施形態の場合、嵌合セル部50は、前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部47の前後方向側の長さ寸法の半分程度として、前端50bを、ピラーカバー部47の前端47bと略一致させるように構成されている。すなわち、嵌合セル部50は、エアバッグ42の膨張完了時に、ピラーカバー部47の前側半分程度の領域の下方に配置されて、ピラーカバー部47の前端47b側(元部側)の下方を支持可能に、構成されている。また、嵌合セル部50は、膨張完了時の前端50b側に、膨張用ガスを流入させるための流入用開口52を備える構成とされている。実施形態の場合、流入用開口52は、バッグ本体43を平らに展開した状態で、周縁部44における前側部位44aと区画部45における端末部45aとの間の領域から、構成されている(図5,7参照)。さらに、実施形態の場合、嵌合セル部50は、流入用開口52近傍となる前端50b側の領域のみで、ピラーカバー部47の前端47b付近と、相互に連通されている。
【0035】
ガス流入口部54は、図5,7に示すように、バッグ本体43を平らに展開した状態で、嵌合セル部50の前端50b付近から左方に突出しつつ先端側を後方に向けるように屈曲して構成される略筒状とされており、先端側(後端側)に、インフレーター37を挿入可能な開口54aを、配設させて構成されている。このガス流入口部54は、エアバッグ42の膨張完了時には、ケース部33から上方に突出して膨張している嵌合セル部50の前下端から下方に延びて、ケース部33の下方において、インフレーター37と連結されることとなる。実施形態の場合、このガス流入口部54は、開口54aから、インナチューブ56を介して内部にインフレーター37を挿入させた状態で、開口54a周縁に外装されるクランプ40を利用して、インフレーター37を連結させる構成とされている(図5の二点鎖線参照)。
【0036】
インナチューブ56は、図5に示すように、バッグ本体43内において、インフレーター37から吐出される膨張用ガスを、ピラーカバー部47側に案内するもので、両端側を開口させるとともに、ガス流入口部54内に挿入可能な略筒状として、ガス流入口部54から、ピラーカバー部47の流入用開口48にかけて、配設されている。すなわち、インナチューブ56は、嵌合セル部50の流入用開口52を横切って、先端56aに設けられた開口56bを、ピラーカバー部47の流入用開口48付近に配置させるように、構成されている。そして、インフレーター37から吐出された膨張用ガスGは、図5に示すように、インナチューブ56を経て、先端56a側に設けられた開口56bから、まず、ピラーカバー部47内に流入することとなり、実施形態では、バッグ本体43内にこのインナチューブ56を配設させることにより、ピラーカバー部47が、嵌合セル部50よりも、エアバッグ42内に流入する膨張用ガスGの上流側に位置することとなる。実施形態の場合、インナチューブ56は、バッグ本体43と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から、形成されている。また、実施形態の場合、インナチューブ56は、平らに展開した状態の幅寸法W1を、平らに展開した状態のバッグ本体43における区画部45の端末部45aと周縁部44の前側部位44aとの離隔距離(流入用開口48の開口幅寸法W2)より、若干小さくするように、構成されている(図7参照)。また、インナチューブ56は、図5に示すように、先端56aを、区画部45の端末部45aより内側(左側)に位置させるように構成され、換言すれば、先端56aを、ピラーカバー部47の流入用開口48内に入り込ませて、開口56bから流出する膨張用ガスGを、エアバッグ42の膨張初期に、嵌合セル部50側への流入を抑制して、確実にピラーカバー部47内に流入させるように、構成されている。
【0037】
テザー58は、バッグ本体43の周縁から延びて、先端側を収納部位P1(ケース部33)側に取り付けられて、バッグ本体43の膨張完了時の配置位置と膨張完了形状とを規制するためのもので、実施形態の場合、図5に示すように、4箇所に、形成されている。テザー58は、膨張完了時のエアバッグ42(バッグ本体43)において、嵌合セル部50の前縁側から延びる前側ストラップ部59と、ピラーカバー部47の前左隅付近(前内縁付近)から延びる前内側ストラップ部60と、ピラーカバー部47の左縁(内縁)47d側から延びる内側ストラップ部61と、嵌合セル部50の外縁(膨張完了時の下縁)50c側から延びる下側ストラップ部62と、を備えて構成されている。各前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62は、それぞれ、バッグ本体43と別体とされるとともに、バッグ本体43と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布を帯状に形成して、構成され、それぞれ、元部側を、バッグ本体43の周縁部44に縫着されている。
【0038】
前側ストラップ部59は、実施形態の場合、嵌合セル部50の前縁側となる周縁部44の前側部位44aにおいて、区画部45の端末部45aの前方側となる位置、詳細に説明すれば、嵌合セル部50の前左隅付近(前内隅付近)から延びるように構成されるもので、先端59a側に、ボルト64を挿通可能な挿通孔59bを有している。実施形態の場合、前側ストラップ部59は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の前側部位44aに対して略直交して、前方に延びるように、形成されている(図5参照)。この前側ストラップ部59は、先端59a側を、収納部位P1を構成するケース部33の前端付近における下壁部33bの領域に形成される取付孔33cの部位に、ボルト64止めして、収納部位P1側に取り付けられている(図12参照)。また、この前側ストラップ部59は、エアバッグ42の膨張完了時に、図12に示すように、嵌合セル部50の前縁の略直下となる下方に延びるように、配設されることとなる。この前側ストラップ部59は、長さ寸法を、エアバッグ42の膨張完了時に、嵌合セル部50が前方移動することを防止可能とし、かつ、膨張初期における嵌合セル部50の迅速な展開(斜め右上方側への突出)を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この前側ストラップ部59により、嵌合セル部50が、エアバッグ42の膨張完了時に、前方側へ移動することを抑制されることとなる。
【0039】
前内側ストラップ部60は、周縁部44の前側部位44aにおいて、ピラーカバー部47の前左隅付近(前内縁付近)から延びるように構成されている。実施形態の場合、前内側ストラップ部60は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の前側部位44aの左端から、左斜め前方に延びるように、形成されている(図5参照)。前内側ストラップ部60の先端60a側には、ボルト64を挿通可能な挿通孔60bが形成され、前内側ストラップ部60は、先端60a側を、前側ストラップ部59の先端59a側とともに、ケース部33の取付孔33cの部位にボルト64止めされて、収納部位P1側に取り付けられている(図12参照)。この前内側ストラップ部60は、エアバッグ42の膨張完了時に、図10に示すように、斜め右下方(外下方)に向かって延びるように配設されるもので、長さ寸法を、エアバッグ42の膨張完了時に、ピラーカバー部47の前端47b側がフロントピラー1から浮き上がることを防止可能として、かつ、ピラーカバー部47の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この前内側ストラップ部60により、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47が、前端47b側をフロントピラー1から浮き上がらせるように、前後方向側で揺動することを抑制されることとなる。
【0040】
内側ストラップ部61は、ピラーカバー部47の内縁(左縁47d)側となる周縁部44の左側部位44bから延びるように構成されるもので、実施形態の場合、ピラーカバー部47の後端47a近傍の部位に、配設されている。内側ストラップ部61は、先端61a側に、ボルト65を挿通可能な挿通孔61bを有している。実施形態の場合、内側ストラップ部61は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の左側部位44bに対して略直交して、左側に延びるように、形成されている(図5参照)。この内側ストラップ部61は、先端61a側を、収納部位P1を構成するケース部33の後端近傍(ミラー本体28の前側の領域)における内壁部33aの領域に形成される取付孔33dの部位に、ボルト65止めされて、収納部位P1側に取り付けられている(図11参照)。また、この内側ストラップ部61は、エアバッグ42の膨張完了時に、図10に示すように、斜め右下方(外下方)に向かって延びるように、配設されることとなる。この内側ストラップ部61は、長さ寸法を、エアバッグ42の膨張完了時に、ピラーカバー部47の左縁47d側(後端47a付近)が、フロントピラー1から浮き上がることを防止可能として、かつ、ピラーカバー部47の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この内側ストラップ部61により、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47における嵌合セル部50から離れた側となる内縁(左縁47d)側が、フロントピラー1から浮き上がることを抑制することができて、ピラーカバー部47を、エアバッグ42の膨張完了時に、フロントピラー1に沿う(フロントピラー1側に倒す)ように、配置させることができる。
【0041】
下側ストラップ部62は、嵌合セル部50の外縁(膨張完了時の下縁)50c側である周縁部44の右側部位44cから延びるように構成されるもので、実施形態の場合、右側部位44cの前端近傍部位(嵌合セル部50の前右端付近)に、配設されている。すなわち、下側ストラップ部62は、嵌合セル部50において、ミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合される後側部位51から前方に外れた領域に、配設されている。下側ストラップ部62は、バッグ本体43とテザー58とを平らに展開した状態で、周縁部44の右側部位44cに対して略直交して、右側に延びるように、形成されている(図5参照)。下側ストラップ部62の先端62a側には、ボルト65を挿通可能な挿通孔62bが、形成され、下側ストラップ部62は、先端62a側を、内側ストラップ部61の先端61a側とともに、ケース部33の取付孔33dの部位に、ボルト65止めされて、収納部位P1側に取り付けられている(図11参照)。この下側ストラップ部62は、エアバッグ42の膨張完了時に、図11に示すように、左側(車内側I)に向かって延びるように配設されるもので、長さ寸法を、嵌合セル部50の下縁(外縁50c)を収納部位P1側に引っ張り、かつ、嵌合セル部50の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。そして、この下側ストラップ部62により、エアバッグ42の膨張完了時に、収納部位P1(ケース部33)から車外側Oに突出している嵌合セル部50が、収納部位P1(ケース部33)よりも車外側Oの下方に落ち込むように移動することを抑制できる。
【0042】
第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42は、バッグ本体43におけるガス流入口部54を除いた領域を、車外側壁部43aと車体側壁部43bとを平らに展開して重ねた状態から、ケース部33内に収納可能な所定形状に、折り畳まれることとなる。そして、折り畳まれたバッグ本体43は、テザー58の先端(前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62の先端59a,60a,61a,62a)を、ケース部33にボルト64,65止めし、ガス流入口部54を図示しない開口から突出させるようにして、ケース部33内に収納することができる。ケース部33から突出しているガス流入口部54を、クランプ40を利用して、インフレーター37に接続させ、インフレーター37をアウタリインホースメント20にボルト38a止めすれば、エアバッグ装置M1を、ドアミラー27の取付部材30に取り付けることができる。
【0043】
第1実施形態のエアバッグ装置M1では、車両Vへの搭載後、インフレーター37が作動されれば、インフレーター37から吐出される膨張用ガスがエアバッグ42内に流入して、膨張するエアバッグ42が、エアバッグカバー35を押し開き、エアバッグカバー35を押し開いて形成される開口から突出して、図1〜3の二点鎖線、及び、図10,11,13に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0044】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42が、フロントピラー1の前面1aを覆うピラーカバー部47と区画されて、膨張完了時に、図10,13に示すように、ピラーカバー部47の下方において、後端側となる後側部位51を、ドアミラー27の上面側において、ドアミラー27のミラー本体28と車両の側面であるサイドウィンド14との間の隙間(詳細に説明すれば、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1)に嵌合されて配置される嵌合セル部50を、有していることから、エアバッグ42の膨張完了時に、この嵌合セル部50が、安定して、左右方向(車内外方向)側を、ドアミラー27のミラー本体28若しくはサイドウィンド14によって押えられることとなって、左右方向(車内外方向)側へのぶれを、極力抑えられることとなる。実施形態の場合、嵌合セル部50は、後側部位51の下側の領域51aを、ミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合されることとなる(図13参照)。
【0045】
また、この嵌合セル部50は、前後の略全域にわたってピラーカバー部47の下縁(平らに展開した状態でのピラーカバー部47の右縁47c)側に連結される構成である。その結果、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42の膨張完了時に、ドアミラー27の上面側におけるミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に、後側部位51の下側の領域51aを嵌合されて車内外方向のぶれを抑えられた嵌合セル部50によって、フロントピラー1の前面1aを覆っているピラーカバー部47を、支持させることができる(図10,13参照)。詳細に説明すれば、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、嵌合セル部50は、エアバッグ42の膨張完了時において、ミラー本体28の左端面28cと、サイドウィンド14の下方に位置するドア部18と、の間の隙間H1に深く進入させるように、嵌合されることとなる(図13参照)。このとき、嵌合セル部50の後側部位51は、ミラー本体28の左端面28cにおいて左前端面28cfから左上端面28cuに至る領域で圧接されるとともに、元部28aにより後側部位51の車外側を係止されるように、配置されることとなる。そのため、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47が、歩行者の受け止め時に、歩行者によって強く押圧される際にも、後側部位51をミラー本体28とサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合される嵌合セル部50に支持させることにより、ドアピラーカバー部47が、車外側へ大きく横ずれすることを防止することができる。
【0046】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42の膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラー1の前面1aを覆うことができる。
【0047】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47を、嵌合セル部50よりも、エアバッグ42(バッグ本体43)内に流入する膨張用ガスGの上流側に位置するように、構成している。そのため、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42(バッグ本体43)の展開膨張時に、まず、ピラーカバー部47が、図8及び図9のAに示すように、内部に膨張用ガスGを流入させて、フロントピラー1の前面1aを覆うように展開膨張し、その後、嵌合セル部50が、図9に示すように、内部に膨張用ガスGを流入させるようにして膨張することとなる。具体的には、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、バッグ本体43内に、インフレーター37から吐出される膨張用ガスGをピラーカバー部47側に案内可能に、嵌合セル部50の流入用開口52を横切ってピラーカバー部47側に開口している筒状のインナチューブ56を、配置させていることから、エアバッグ42(バッグ本体43)の膨張初期に、まず、インフレーター37から吐出された膨張用ガスGは、インナチューブ56自体を膨張させるようにインナチューブ56内を流れ、ピラーカバー部47の流入用開口48付近に位置しているインナチューブ56の先端56a側の開口56bから、ピラーカバー部47内に流入して、まず、ピラーカバー部47がフロントピラー1の前面1aを覆うように膨張を完了させることとなる。その後、膨張用ガスGは、インナチューブ56とピラーカバー部47における流入用開口48との間の隙間から、嵌合セル部50の流入用開口52を経て、嵌合セル部50内に流入し、嵌合セル部50が、後側部位51の下側の領域51aを、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に進入させるように、膨張することとなる。
【0048】
すなわち、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47が、嵌合セル部50に先行して膨張を完了させる構成であることから、膨張する嵌合セル部50によって上方に押し上げられるような挙動が抑制され、左右方向(車内外方向)側へのぶれを抑制されることとなり、膨張するピラーカバー部47によって、フロントピラー1の前面1aを迅速かつ円滑に覆うことができる。実施形態の構成において、嵌合セル部が先に膨張する構成の場合、嵌合セル部は、左右方向側の断面形状を略円形として、棒状に膨らむことから、上方に位置しているピラーカバー部を、上方に押し上げることとなり、膨張するピラーカバー部が、フロントピラーから車外側に外れるように押し上げられて、円滑にフロントピラーの前面を覆うことができない場合がある。しかしながら、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47が、嵌合セル部50に先行して膨張を完了させる構成であり、ピラーカバー部47の膨張完了時には、嵌合セル部50は殆ど膨張していないことから、嵌合セル部50がピラーカバー部47を押し上げることを的確に抑制できて、ピラーカバー部47により、フロントピラー1の前面1aを迅速に覆うことができる。
【0049】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ピラーカバー部47の膨張が完了して、安定してフロントピラー1の前面1aを覆うように配置された後に、嵌合セル部50が、内部に膨張用ガスを流入させて、膨張することから、嵌合セル部50を、安定して、円滑にミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に進入させるように膨張させることができる。特に、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、嵌合セル部50内に膨張用ガスを流入させる流入用開口52が、嵌合セル部50の前端50b側に配置され、嵌合セル部50は、内部に、前端50b側から後端50a側に向かうよって膨張用ガスを流入させるようにして、膨張することとなる。そのため、膨張する嵌合セル部50の後側部位51を、確実に、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合させることができる。ピラーカバー部を先に膨張させる構成の場合、嵌合セル部内に膨張用ガスを流入させる流入用開口の位置は、これに限られるものではなく、嵌合セル部の上側や後側に、ピラーカバー部と連通されるような流入用開口を配設させる構成としてもよい。
【0050】
さらに、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42(バッグ本体43)の内部にインナチューブ56を配置させて、ピラーカバー部47を嵌合セル部50よりも先に膨張させる構成であることから、構成を簡便にすることができるとともに、安定して、ピラーカバー部47を、嵌合セル部50よりも先に膨張させることができる。また、ピラーカバー部47と嵌合セル部50との膨張タイミング(嵌合セル部50内への膨張用ガスの流入開始タイミング)を略一定とすることができて、製品ごとにばらつきが生じることを抑制することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、嵌合セル部における流入用開口の部位に、車外側壁部と車体側壁部とを結合させ、流入用開口を一旦閉塞させるような仮結合部を設けて、ピラーカバー部の膨張後にこの仮結合部の結合状態を解除させるような構成として、ピラーカバー部を先に膨張させる構成としてもよい。
【0051】
さらにまた、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ42に、膨張完了時の周縁から延びて先端を収納部位P1側に取り付けられるテザー58が、配設され、テザー58が、膨張完了時のピラーカバー部47における嵌合セル部50から離れた側となる内縁(左縁47d)側から延びて、ピラーカバー部47の内縁(左縁47d)側を収納部位P1側に引っ張り、フロントピラー1からの浮き上がりを抑制可能な内側ストラップ部61を備えている。そのため、エアバッグ42の展開膨張時に、ピラーカバー部47における嵌合セル部50から離れた側となる内縁(左縁47d)側が、フロントピラー1から浮き上がることを抑制することができ、膨張完了時のエアバッグ42において、ピラーカバー部47によって、フロントピラー1の前面1a側を広く覆うことができる。特に、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、内側ストラップ部61は、ピラーカバー部47の後端47a近傍から延びるように構成されていることから、ピラーカバー部47の後端47a付近の部位が、フロントピラー1に対して浮き上がることを的確に抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー58がに形成されるテザー58の前側ストラップ部59が、膨張完了時の嵌合セル部50の前縁側から下方へ延びて嵌合セル部50の前方側への移動を抑制する構成であることから、エアバッグ42の展開膨張時に、嵌合セル部50が、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1との嵌合状態から外れるように、前方移動することを抑えられて、嵌合セル部50の後側部位51を、確実に、ミラー本体28の左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H1に嵌合させるように、配置させることができる。
【0053】
なお、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、テザー58において、前側に配置される前側ストラップ部59と前内側ストラップ部60とを、ケース部33の下壁部33b側に取り付けられる構成とし、後側に配置される内側ストラップ部61と下側ストラップ部62とを、ケース部33の内壁部33a側に取り付けられる構成としているが、テザー58を構成する各前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62のケース部33(収納部位P1)側への取付位置は、これに限られるものではなく、実施形態とは逆にしてもよい。勿論、各前側ストラップ部59,前内側ストラップ部60,内側ストラップ部61,下側ストラップ部62は、それぞれ、先端59a,60a,61a,62a側を、別々にケース部33(収納部位P1)側に取り付ける構成としてもよい。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態のエアバッグ装置M2について説明をする。第2実施形態のエアバッグ装置M2を搭載する車両Vは、図14〜16に示すように、エアバッグ装置M2を搭載するドアミラー27A以外は、第1実施形態のエアバッグ装置M1を搭載する車両Vと同様の構成であり、同一の部材には、同一の図符号を付して詳細な説明を省略する。第2実施形態においても、車両Vの右側に位置するフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグ78を備えたエアバッグ装置M2について、詳細に説明する。左側のフロントピラーの前面側を覆うエアバッグを備えたエアバッグ装置は、右側のエアバッグ装置と左右対称形として、同一の構成であることから、左側のエアバッグ装置に関しては、説明を省略する。
【0055】
エアバッグ装置M2を搭載するドアミラー27Aにおいて、取付ベース29Aを構成する取付部材30Aに設けられるケース部70と、カバー部材31Aに設けられるエアバッグカバー71以外の部材は、前述のエアバッグ装置M1を搭載させたドアミラー27と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
【0056】
エアバッグ装置M2は、図17に示すように、可撓性を有した袋状のエアバッグ78と、エアバッグ78に膨張用ガスを供給するインフレーター73と、を備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ78とインフレーター73とを収納する収納部位P2は、ドアミラー27Aの前端付近である取付ベース29Aの前側の領域から、構成されており(図15,17参照)、折り畳まれたエアバッグ78とインフレーター73とを収納するケース部70は、取付ベース29Aの取付部材30Aから構成され、エアバッグ78の車外側Oを覆うエアバッグカバー71は、取付ベース29Aのカバー部材31Aから構成されている(図17参照)。
【0057】
ケース部70は、図15,17に示すように、取付部材30Aから連なるように構成されるもので、底壁部70aと、底壁部70aから延びる周壁部70bと、を備える構成とされて、車外側Oを開口させるように構成されている。実施形態の場合、ケース部70は、底壁部70aを、アウタリインホースメント20に接触させるように構成されており、インフレーター73をケース部70に取り付けるボルト74aを、底壁部70aから突出させて、アウタリインホースメント20にナット75止めすることにより、車体側部材であるアウタリインホースメント20に、取り付けられている。
【0058】
エアバッグカバー71は、カバー部材31Aから連なるように構成されるもので、ケース部70の開口70cを覆う扉部71aと、扉部71aの周縁から車内側Iに延びてケース部70の周壁部70bに取り付けられる取付壁部71bと、を有している(図17参照)。扉部71aは、エアバッグ78の膨張時に開いて、ケース部70の開口70cから膨張するエアバッグ78を突出させるように構成されており、実施形態の場合、開き時に、図21に示すように、下端側を回転中心として、上端を車外側下方に向かって開かせるような下開きとして構成されて、下端側を除いた周縁に、エアバッグ78の膨張時に破断可能な破断予定部(図符号省略)を、配設させている。
【0059】
インフレーター73は、図17に示すように、軸方向を前後方向に略沿わせたシリンダタイプとされるもので、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を備えるとともに、板金製のディフューザー74により周囲を保持されている。インフレーター73は、エアバッグ78の後述する取付膨張部92内に内蔵された状態で、ディフューザー74に設けられるボルト74aを、取付膨張部92から突出させ、さらに、ケース部70の底壁部70aから突出させた状態でドア部18のアウタリインホースメント20にナット75止めすることにより、エアバッグ78とともに、ケース部70に固定されている。なお、実施形態の場合、図示しないが、インフレーター73のボルト74aは、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。また、このインフレーター73は、前述のエアバッグ装置M1におけるインフレーター37と同様に、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を入力させて、膨張用ガスをエアバッグ78内に供給することとなる。
【0060】
エアバッグ78は、図18,19に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な可撓性を有した袋状とされるバッグ本体79を、有するもので、バッグ本体79は、カバー膨張部85と、膨張完了時にカバー膨張部85の下面側に配置される支持膨張部95と、を備えている。また、エアバッグ78は、実施形態の場合、バッグ本体79と別体とされて、カバー膨張部85をケース部70(収納部位P2)側に連結する内側ストラップ部としての連結ベルト99を、有している。なお、図18,19において、上側が、平らに展開した状態のエアバッグ78において、車両搭載時における左側であり、下側が、平らに展開した状態のエアバッグ78において、車両搭載時における右側である。
【0061】
実施形態の場合、バッグ本体79は、膨張完了時にフロントピラー1側に配置される車体側壁部79bと、車体側壁部79bに対向して配置される車外側壁部79aと、を有して、平らに展開した状態の車体側壁部79bと車外側壁部79aとの周縁相互を結合させた平面バッグとして、構成されている。実施形態の場合、バッグ本体79は、ポリエステル糸やポリアミド糸等を使用した袋織りから、形成されている。具体的には、バッグ本体79は、外形形状を、カバー膨張部85と支持膨張部95とを左右方向側で連結させた形状として構成されるもので、実施形態の場合、平らに展開した状態の外形形状を、前後方向側に延びる縦領域部79cと、縦領域部79cの前方側に延びる横領域部79dと、を有した略逆L字形状として、構成されている。
【0062】
そして、バッグ本体79は、外周縁の全周にわたって形成される周縁部80と、周縁部80に囲まれる領域内の所定箇所に形成される区画部81,82,83と、を、車外側壁部79aと車体側壁部79bとを結合させるようにして、膨張用ガスを流入させない構成とし、残りの領域を、車外側壁部79aと車体側壁部79bとを離すようにして内部に膨張用ガスを流入可能に、構成されている。区画部81は、周縁部80における後側部位80cから延びるように、縦領域部79cの領域内に配置されるもので、後側部位80cから連続的に延びて前後方向に略沿って配置される縦棒部81aと、縦棒部81aの前端側に配置される端末部81bと、を有している。端末部81bは、左右方向の幅寸法を縦棒部81aより大きくするような略円形として、構成されており、膨張時の応力集中を極力抑えるために、形成されている。実施形態の場合、区画部81は、縦領域部79cの左右の中央より若干右側となる位置に、形成されている。区画部82は、縦領域部79cと横領域部79dとの境界部位から前方に延びるように配置されるもので、周縁部80の後側部位80cから連続的に延びて前後方向に略沿って配置される縦棒部82aと、縦棒部82aの前端側に配置される端末部82bと、を有している。端末部82bは、左右方向の幅寸法を縦棒部82aより大きくして、さらに、区画部81における端末部81bの左右方向の幅寸法より大きくするように、長手方向を左右方向に略沿わせた長円状として、構成されている。この端末部82bも、膨張時の応力集中を極力抑えるために、形成されている。また、実施形態の場合、区画部81の端末部81bと、区画部82の端末部82bと、は、左右方向側で略一致した位置に、配置されている。区画部83は、横領域部79dの右端近傍において、前後方向に沿うような略直線状として、形成されている。実施形態の場合、区画部83は、周縁部80の後側部位80cから連続的に延びるとともに、前端83aと周縁部80との間に隙間を設けるようにして、構成されている。
【0063】
カバー膨張部85は、膨張完了時に、フロントピラー1の下方におけるドアミラー27Aの前方の領域から、フロントピラー1の前面1aにかけてを、覆うように配置されるもので、実施形態の場合、膨張完了時にフロントピラー1の前面1a側を覆うように配置されるピラーカバー部86と、ピラーカバー部86の下方に配置される嵌合セル部88と、嵌合セル部88の下方に配置されるとともにインフレーター73を内蔵させてケース部70に取り付けられる取付膨張部92と、を備えている。
【0064】
ピラーカバー部86は、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1a側を、フロントピラー1の下端側となる元部1bから上下方向の中央付近にかけて覆うように、構成されるもので、実施形態の場合、膨張完了時の後端86a側を、ミラー本体28Aより後方に位置させるように、構成されている。実施形態の場合、ピラーカバー部86は、平らに展開した状態のバッグ本体79における縦領域部79cにおいて、区画部81より左側の領域から、構成されている。換言すれば、ピラーカバー部86は、周囲を周縁部80と区画部81とに囲まれて、膨張完了時の後端86a側を、隣接する嵌合セル部88に対して閉塞されており、膨張完了時の前端86b側の部位のみで、嵌合セル部88に連通されている。詳細に説明すれば、ピラーカバー部86は、前端86b側である周縁部80における前側部位80dと区画部81の端末部81bとの間のみを開口させており、この領域を、膨張用ガスを流入させる流入用開口87として、嵌合セル部88及び取付膨張部92と連通されている。
【0065】
嵌合セル部88は、膨張完了時に、ピラーカバー部86の下方において、フロントピラー1の側面からフロントピラー1の下方のサイドウィンド14の側面にかけてを覆うように配設されるもので、膨張完了時の後端88a側となる後側部位89を、ドアミラー27Aの上面側において、ドアミラー27Aのミラー本体28Aと、車両の側面であるサイドウィンド14と、の間の隙間H2に嵌合させるように、構成されている。詳細には、エアバッグ78の膨張完了時において、嵌合セル部88における後側部位89の下側の領域89aが、ミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合されることとなる(図22参照)。実施形態の場合、嵌合セル部88は、平らに展開した状態のバッグ本体79における縦領域部79cにおいて、区画部81,82間の領域から、構成されている。換言すれば、嵌合セル部88は、周囲を、周縁部80における後側部位80cと区画部81,82とに囲まれており、膨張完了時の形状を、前後方向に略沿った略棒状とされることとなる。また、嵌合セル部88は、区画部81を介してピラーカバー部86と連結されており、換言すれば、後端88a側をピラーカバー部86に対して閉塞されて区画された状態で、前後の全域にわたって、平らに展開した状態でのピラーカバー部86の右縁86dに連結されている。そして、実施形態の場合、嵌合セル部88は、前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部86の前後方向の長さ寸法より若干短くして構成されており、エアバッグ78の膨張完了時に、後端88a側を、ミラー本体28Aの元部28aよりも後方に突出させるように構成されるとともに(図23参照)、エアバッグ78の膨張完了時に、ピラーカバー部86の下方を、前後の略全域にわたって、支持可能に、構成されている。
【0066】
また、嵌合セル部88は、下方に配置される取付膨張部92に対しても、後端88a側を閉塞されている。すなわち、嵌合セル部88は、前端88b側の部位でのみ、隣接するピラーカバー部86,取付膨張部92と連通される構成であり、詳細には、嵌合セル部88は、前端88b側において、取付膨張部92側となる区画部82の端末部82bと周縁部80の前側部位80dとの間の領域を、内部に膨張用ガスを流入させる流入用開口90として、取付膨張部92と連通されている。また、嵌合セル部88は、上述したごとく、膨張完了時に上側に配置される流入用開口87の部位で、ピラーカバー部86と連通されている。嵌合セル部88は、前後方向の長さ寸法を、エアバッグ78の膨張完了時に、後端88a近傍の部位(実施形態の場合、後側部位89の下部側の領域89a)をミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合可能な長さ寸法とされるもので、膨張完了時において、実施形態の場合、後端88aを、ピラーカバー部86の後端86aより前方に位置させ、前端88bを、ピラーカバー部86の前端86bと略一致させるように、ピラーカバー部86の前後方向の幅寸法より若干小さくする寸法として、構成されている。
【0067】
取付膨張部92は、膨張完了時に、嵌合セル部88の下方において、フロントドア13におけるドア部18の上端(ベルトライン17)の側面側において、ドアミラー27Aにおけるミラー本体28Aの前方側の領域を覆うように、嵌合セル部88より前後方向の幅寸法を小さくして、構成されている。この取付膨張部92は、平らに展開した状態のバッグ本体79における横領域部79dにおいて、区画部82,83間の領域から、構成されている。この取付膨張部92は、膨張完了時の後端92a側を、周囲に配置される区画部82,83によって、嵌合セル部88及び支持膨張部95に対して閉塞されており、前端92b側の流入用開口90及び連通部97の部位でのみ、隣接する嵌合セル部88及び支持膨張部95と連通されている。そして、取付膨張部92は、後端92a近傍となる区画部82,83間の部位(後側部位93)に、インフレーター73を内蔵させている。そして、後側部位93を構成する車体側壁部79bには、インフレーター73のボルト74aを挿通させるための挿通孔93aが、形成されている。挿通孔93aは、インフレーター73のボルト74aに対応して、実施形態の場合、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。この取付膨張部92は、膨張完了時において、前端92bを、嵌合セル部88の前端88b及びピラーカバー部86の前端86bと略一致させるように、構成されている。また、この取付膨張部92は、エアバッグ78の膨張完了時に、車体側壁部79bにおける挿通孔93aの周囲の部位を、ケース部70の内部に引き込まれ、残部を、ケース部70の開口70cから外方に突出させるようにして、配置されることとなる。
【0068】
実施形態では、エアバッグ78の膨張完了時に、ピラーカバー部86、嵌合セル部88、及び、取付膨張部92は、前端86b,88b,92bを上下で略一致させて、上下方向側で重なるように、配置されることとなる。そして、嵌合セル部88は、インフレーター73を内蔵させた取付膨張部92側に配置される流入用開口90から、内部に膨張用ガスを流入させる構成であり、ピラーカバー部86は、流入用開口90を経て、さらに、嵌合セル部88との境界部位に配置される流入用開口87から、内部に膨張用ガスを流入させる構成である。すなわち、実施形態では、嵌合セル部88内に膨張用ガスを流入させる流入用開口90は、ピラーカバー部86内に膨張用ガスを流入させる流入用開口87より、膨張用ガスの流れの上流側に、配置されている。
【0069】
支持膨張部95は、エアバッグ42の膨張完了時、下面95c側となる車内側Iを、車体側部材としてのフロントドア13におけるアウタパネル19に支持されるように、カバー膨張部85の下面側に配置されることとなる。この支持膨張部95は、下面95c側(車内側I)をアウタパネル19によって支持されて、カバー膨張部85の下面側(詳細には、取付膨張部92の下面92c側)を、支持する構成とされている。実施形態の場合、支持膨張部95は、平らに展開した状態のバッグ本体79における横領域部79dにおいて、区画部83より右側の領域から、構成される。すなわち、支持膨張部95は、周縁部80と区画部83とに囲まれる領域から、構成されるものであり、実施形態の場合、平らに展開した状態で、取付膨張部92から延びるようにして構成されて、前後方向の幅寸法を、取付膨張部92の前後方向の幅寸法と略一致させて、構成されている。そして、支持膨張部95は、元部95a側(バッグ本体79を平らに展開した状態における左端側)を、カバー膨張部85における取付膨張部92に連結させた構成としている。また、支持膨張部95は、取付膨張部92との境界部位を、区画部83によって区画されており、換言すれば、膨張完了時の後端95d側を、周囲に配置される区画部83によって、取付膨張部92に対して閉塞されており、前端95e側における区画部83の前端83aと周縁部80の前側部位80dとの間の領域から構成される連通部97の部位でのみ、取付膨張部92と連通されている。
【0070】
また、支持膨張部95は、元部95aから離れた先端95b側(平らに展開した状態における右端側)となる周縁部80の右側部位80aに、インフレーター73のボルト74aを挿通可能な挿通孔96を、備えており、この挿通孔96に、インフレーター73のボルト74aを挿通させ(図19,20参照)、この挿通孔96の周縁の部位を、インフレーター73及びエアバッグ78における取付膨張部92とともに、ケース部70に取り付けられている。挿通孔96は、インフレーター73のボルト74aに対応して、前後方向に沿った2箇所に、形成されている。そして、実施形態の場合、支持膨張部95は、車体側壁部78bを取付膨張部92の車体側壁部78bに接触させるように、区画部83の部位で、折目C(図18,19参照)を付けて、取付膨張部92に対して折り返されて、挿通孔96にボルト74aを挿通されることとなる。
【0071】
そして、支持膨張部95は、エアバッグ78の膨張完了時に、元部95a側を車外側Oに位置させ、先端95b側をケース部70側となる車内側Iに位置させるように、折目Cの部位で取付膨張部92に対して折り返された状態で、車体側壁部79bを、取付膨張部92を構成する車体側壁部79b(下面92c)に接触させ、車外側壁部79aからなる下面95c側を、車体側部材であるフロントドア13のアウタパネル19に支持させるようにして、アウタパネル19と取付膨張部92との間に介在されて、取付膨張部92の下面92c側を支持することとなる(図21参照)。
【0072】
内側ストラップ部としての連結ベルト99は、バッグ本体79と別体とされて、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から構成されるもので、平らに展開したバッグ本体79における周縁部80の左側部位80bに、元部99aを縫着されている。換言すれば、連結ベルト99は、ピラーカバー部86において、嵌合セル部88から離れた側(膨張完了時にケース部70から離れた側)となる左縁86cから延びるように形成されている。実施形態の場合、連結ベルト99は、左右方向に略沿って配置される幅広の帯状とされ、前後方向の幅寸法を、バッグ本体79における横領域部79dの前後の幅寸法の1/2程度として、構成されている。また、連結ベルト99の先端99b側には、インフレーター73のボルト74aを挿通可能な挿通孔100が、形成されている。この挿通孔100は、インフレーター73のボルト74aに対応して、前後方向に沿った2箇所に、形成されるもので、実施形態では、連結ベルト99の先端99bは、インフレーター73のボルト74aを利用して、インフレーター73、エアバッグ78の取付膨張部92、及び、支持膨張部95の先端95bとともに、ケース部70の底壁部70aに連結されている。
【0073】
この連結ベルト99は、エアバッグ78の膨張完了時に、カバー膨張部85とフロントピラー1との間に、配置されることとなる。そして、連結ベルト99は、長さ寸法を、エアバッグ78の膨張完了時に、ピラーカバー部86の左縁86c側を、ケース部70(収納部位P2)側に引っ張って、ピラーカバー部86の左縁86cをフロントピラー1から浮き上がらせることを防止可能とし、かつ、ピラーカバー部86の迅速な展開を阻害しないような長さ寸法に、設定されている。また、実施形態の場合、連結ベルト99の先端99b側に設けられる挿通孔100は、フロントピラー1がケース部70に対して傾斜していることを考慮して、後側に配設される挿通孔100Bの挿通孔93aからの離隔距離を、前側に配設される挿通孔100Fの挿通孔93aからの離隔距離よりも大きくするように、構成されており、連結ベルト99の先端99bも、挿通孔100F,100Bに対応して、前後方向に対して傾斜して、構成されている(図18参照)。
【0074】
実施形態の場合、エアバッグ78は、ボルト75aを挿通孔93aから突出させるようにして、取付膨張部92における後側部位93にインフレーター73を内蔵させ、支持膨張部95を、車体側壁部79bを取付膨張部92の車体側壁部79bに対向させるように、取付膨張部92に対して折り返して、周縁部80の右側部位80a(支持膨張部95の先端95b)に形成される挿通孔96にボルト38aを挿通させた状態で、ケース部70内に収納可能な所定形状に折り畳まれることとなる。そして、折り畳まれたバッグ本体79は、連結ベルト99の先端99bに形成される挿通孔100にボルト74aを挿通させた状態で、インフレーター73とともにケース部70内に収納されることとなる。そして、ケース部70の底壁部70aから突出しているボルト74aを、フロントドア13におけるアウタリインホースメント20にナット75止めすれば、インフレーター73とエアバッグ78とをケース部70に取り付けることができると同時に、支持膨張部95の先端95b側の端部(周縁部80における右側部位80a)と、連結ベルト99の先端99bとを、ケース部70に取り付けることができる。
【0075】
第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、車両Vへの搭載後、インフレーター73が作動されれば、インフレーター73から吐出される膨張用ガスがエアバッグ78内に流入して、膨張するエアバッグ78がエアバッグカバー71を押し開き、ケース部70の開口70cから突出したエアバッグ78が、図14〜16の二点鎖線及び図21〜23に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0076】
そして、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ78が、フロントピラー1の前面1aを覆うピラーカバー部86と区画されて、膨張完了時に、図22,23に示すように、ピラーカバー部86の下方において、後端88a側となる後側部位89を、ドアミラー27Aの上面側において、ドアミラー27Aのミラー本体28Aと車両の側面であるサイドウィンド14との間の隙間(ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H2)に嵌合されて配置される嵌合セル部88を、有していることから、エアバッグ78の膨張完了時に、この嵌合セル部88が、左右方向(車内外方向)側を、安定して、ドアミラー27Aのミラー本体28A若しくはサイドウィンド14によって押えられることとなって、左右方向(車内外方向)側へのぶれを、極力抑えられることとなる。実施形態の場合、嵌合セル部88は、後側部位89の下側の領域89aを、ミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合されることとなる(図22参照)。
【0077】
また、この嵌合セル部88は、前後の略全域にわたって、区画部81によって、ピラーカバー部86の下縁側(平らに展開した状態でのピラーカバー部86の右縁86d)に連結される構成である。そのため、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ78の膨張完了時に、ドアミラー27Aのミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に、後側部位89の下側の領域89aを嵌合されて車内外方向のぶれを抑えられた嵌合セル部88によって、フロントピラー1の前面1aを覆っているピラーカバー部86の車外側を、支持させることができて、ピラーカバー部86の歩行者の受け止め時に、ピラーカバー部86が、歩行者によって強く押圧される際にも、ピラーカバー部86が車外側へ大きく横ずれすることを防止することができる。
【0078】
したがって、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ78の膨張完了時において、歩行者を受け止めた際の横ずれを的確に抑えられて、フロントピラー1の前面1aを覆うことができる。
【0079】
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、嵌合セル部88が、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状とするとともに、前端88b側に、ピラーカバー部86の上流側(詳細に説明すれば、ピラーカバー部86内に膨張用ガスを流入させる流入用開口87の上流側)に位置して、嵌合セル部88に膨張用ガスを流入させる流入用開口90を、配設させている。そのため、嵌合セル部88は、ピラーカバー部86よりも先に、膨張して所定の隙間H2に嵌合されることとなり、膨張するピラーカバー部86を、車外側に向かってずれるように展開することを抑えて、的確にフロントピラー1の前面1a側を覆うように配置させることができる。このとき、嵌合セル部88内には、流入用開口90を経て、前端88b側から後端88a側に向かって膨張用ガスが流入することから、嵌合セル部88は、ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H2に向かって突出するように膨張することとなり、ピラーカバー部86の膨張完了前であっても、膨張する嵌合セル部88の後側部位89を、確実に、ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合させることができる。また、嵌合セル部88は、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状として、前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部86の前後方向の長さ寸法より若干小さくして、かつ、前後の全域にわたってピラーカバー部86に連結されていることから、膨張完了時に、ピラーカバー部86の車外側を前後の略全域にわたって支持することができ、ピラーカバー部86が車外側へ大きく横ずれすることを的確に防止することができる。特に、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、嵌合セル部88は、エアバッグ78の膨張完了時に、後端88a側を、ミラー本体28Aの元部28aよりも後方に突出させるように構成されており(図23参照)、ミラー本体28Aの左端面28cとサイドウィンド14との間に形成される隙間H2に、前後の全域にわたって上から嵌まり込むように、嵌合されることとなる。そのため、仮に、ピラーカバー部86が車内外方向にぶれることとなっても、嵌合セル部88の隙間H2への嵌合状態を強固に保持することができて、また、ピラーカバー部86の膨張完了前に歩行者が接触することとなっても、嵌合セル部88によって、ピラーカバー部86の位置ずれを極力抑えることができ、ピラーカバー部86によって歩行者を円滑に保護することができる。
【0080】
さらに、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、嵌合セル部88は、前端88b側の流入用開口90の部位でのみピラーカバー部86と連通されており、後端88a側の部位を、区画部81によって、ピラーカバー部86に対して閉塞されて区画されていることから、嵌合セル部88において、ミラー本体28Aとサイドウィンド14との間の隙間H2に嵌合される後側部位89の下側の領域89aが、ピラーカバー部86に対して膨張用ガスの相互移動を極力抑えられた状態で、この隙間H2に嵌合されることとなる。そのため、嵌合セル部88の後側部位89の隙間H2への嵌合状態を保持しやすく、また、嵌合セル部88が、高い内圧を維持した状態で、ピラーカバー部86を支持することができることから、歩行者を受け止めたピラーカバー部86が、歩行者によって強く押圧されることとなっても、嵌合セル部88が、この押圧力を受けて、車外側へ横ずれすることを防止でき、ピラーカバー部86の車外側へ向かうような横ずれを的確に防止することができる。
【0081】
逆に、エアバッグ78Aとして、図24に示すように、嵌合セル部88Aの後端88a付近に、ピラーカバー部86Aと連通される連通部103を備える構成のものを使用してもよい。このエアバッグ78Aでは、連通部103は、嵌合セル部88Aとピラーカバー部86Aとを区画している区画部81Aを分断させるようにして、形成されている。このようなエアバッグ78Aを使用すれば、上記のような作用は得られないものの、嵌合セル部88Aは、ピラーカバー部86Aに対して、連通部103を介して膨張用ガスの相互移動を可能とされることから、ピラーカバー部86Aが歩行者を受け止めた際に、余剰な膨張用ガスを、嵌合セル部88A内に逃がすことができ、ピラーカバー部86Aによって歩行者をソフトに受け止めることが可能となる。
【0082】
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ78が、膨張完了時におけるカバー膨張部85の下面側(詳細に説明すれば、取付膨張部92の下面92c)側を支持する支持膨張部95を、備えており、この支持膨張部95の下面95c側を、収納部位P2としてのケース部70の下方に位置する車体側部材であるフロントドア13のアウタパネル19に支持させることにより、取付膨張部92の下面92c側を支持している構成である(図21参照)。そのため、エアバッグ78の膨張完了時に、エアバッグ78(バッグ本体79)全体が、下面95c側をアウタパネル19に支持される支持膨張部95によって支持されることとなり、嵌合セル部88自体の下降移動も防止されることから、ピラーカバー部86の車外側への横ずれを一層的確に防止することができる。
【0083】
特に、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、支持膨張部95は、膨張完了時に、取付膨張部92に対して折り返されて、取付膨張部92側の車体側壁部79bを、取付膨張部92の車体側壁部79bに接触させるようにして、車体側部材であるアウタパネル19と取付膨張部92との間に介在されていることから、支持膨張部95は、取付膨張部92に対して、膨張用ガスの相互移動を抑えられた状態で、取付膨張部92の下面92c側を支持するように、配置されることとなる。そのため、支持膨張部95が、高い内圧を維持した状態で、カバー膨張部85を支持することができることから、歩行者を受け止めたカバー膨張部85のピラーカバー部86が、歩行者によって強く押圧されることとなっても、支持膨張部95が、この押圧力を受けて、車外側へ横ずれすることを防止でき、ピラーカバー部86の車外側へ向かうような横ずれを的確に防止することができる。
【0084】
詳細には、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、膨張完了時においてピラーカバー部86の下方に配置される嵌合セル部88と取付膨張部92とは、前端88b,92bを、ピラーカバー部86の前端86bと、上下で略一致させるように、構成されている。換言すれば、カバー膨張部85は、ピラーカバー部86の下方において、ピラーカバー部86に対して前縁側を部分的に凹ませるような凹部を備えていないことから、エアバッグ78の展開膨張時に、ピラーカバー部86自体の前端86bが、嵌合セル部88や取付膨張部92に対してぶれることを防止できる。また、支持膨張部95は、膨張完了時の前後方向の幅寸法を、取付膨張部92と同一に設定されていることから、支持膨張部95によって、取付膨張部92の下面92c側を前後の全域にわたって支持させることができる。そのため、下面92c側を前後の全域にわたって支持膨張部95に支持される取付膨張部92を介して、ピラーカバー部86が、支持膨張部95に支持されることから、ピラーカバー部86が、車外側へ横ずれすることを、的確に防止することができる。
【0085】
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、ピラーカバー部86と嵌合セル部88と取付膨張部92とは、前端86b,88b,92b側の部位のみで相互に連通されており、この前端86b,88b,92b側の部位が、エアバッグ78の膨張完了時に、上下方向に延びるような棒状として、配設されることとなる(図23参照)。そのため、ピラーカバー部86,嵌合セル部88,取付膨張部92における前端86b,88b,92b側の部位が、支持膨張部95からピラーカバー部86にかけて延びる支柱を構成するような態様となり、この部位によって、ピラーカバー部86の前端86bの下面側を強固に支持させることができて、ピラーカバー部86の横ずれを的確に防止することができる。
【0086】
さらにまた、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ78が、ピラーカバー部86の左縁86c(内縁)から延びて、先端99b側をケース部70(収納部位P2)側に連結される連結ベルト99を有していることから、エアバッグ78の展開膨張時に、ピラーカバー部86の左縁86c側が、車体(フロントガラス7)から大きく浮き上がることを防止できて、膨張するピラーカバー部86によって、フロントピラー1の前面1a側を迅速に覆うことができる。また、歩行者を受け止めた際にも、ピラーカバー部86が、歩行者の押圧力を受けて、フロントピラー1からずれるように移動することを防止できることから、ピラーカバー部86によって、歩行者を的確に受け止めることができる。
【0087】
なお、実施形態のエアバッグ42,78,78Aでは、嵌合セル部50,88,88Aは、ピラーカバー部86,50Aより前後方向の長さ寸法を短く設定されて、膨張完了時の後端50a,88aを、ピラーカバー部47,86,86Aの後端47a,86aより前方に位置させるような形状とされているが、エアバッグの外形形状はこれに限られるものではなく、嵌合セル部の前後方向の長さ寸法を、ピラーカバー部の前後方向の長さ寸法と一致させるように、構成してもよい。
【0088】
また、実施形態では、エアバッグ装置M1,M2は、ドアミラー27,27Aにおける取付ベース29,29Aの部位に、搭載されているが、エアバッグ装置の搭載位置はこれに限られるものではなく、ドアミラーの前側付近のフロントドアや、ドアミラーの前側付近であってフロントドアの前方に位置する車両のボディ側の部位に、エアバッグ装置を搭載させてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…フロントピラー、
1a…前面、
1b…元部、
13…フロントドア、
14…サイドウィンド、
19…アウタパネル、
27,27A…ドアミラー、
28,28A…ミラー本体、
33,70…ケース部、
35,71…エアバッグカバー、
37,73…インフレーター、
42,78,78A…エアバッグ、
47,86,86A…ピラーカバー部、
48,87…流入用開口、
50,88,88A…嵌合セル部、
51,89…後側部位、
52,90…流入用開口、
56…インナチューブ、
56b…開口、
58…テザー、
61…内側ストラップ部、
85…カバー膨張部、
95…支持膨張部、
99…連結ベルト(内側ストラップ部)、
H1,H2…隙間、
P1,P2…収納部位、
V…車両、
M1,M2…エアバッグ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントピラーにおける下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆い可能なエアバッグを、備える構成のエアバッグ装置であって、
前記車両が、前記フロントピラーの後側に隣接して配設されて、前記フロントピラーの後方に位置するサイドウィンドを有し、かつ、該サイドウィンドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを、備え、
前記エアバッグが、
前記フロントピラーの下方における前記ドアミラーの前側付近に配置される収納部位内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、前記収納部位から突出しつつ膨張する構成とされて、
膨張完了時に、前記フロントピラーの前面を覆うように配置されるピラーカバー部と、
該ピラーカバー部と区画されて、膨張完了時に、前記ピラーカバー部の下方に配設されるとともに、後端側の部位を、前記ドアミラーの上面側における前記ドアミラーと前記車両の側面との間の隙間に嵌合させるように配置される嵌合セル部と、
を備える構成とされ、
前記嵌合セル部が、前後の略全域にわたって前記ピラーカバー部の下縁側に連結されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ピラーカバー部が、前記嵌合セル部よりも、前記エアバッグ内に流入する膨張用ガスの上流側に位置するように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記嵌合セル部が、前端側に、前記膨張用ガスを流入させるための流入用開口を、有する構成とされ、
前記エアバッグの内部に、前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターから吐出される前記膨張用ガスを、前記ピラーカバー部側に案内するインナチューブが、配置され、
該インナチューブが、略筒状とされるとともに、前記流入用開口を横切って、先端側を、前記ピラーカバー部側に開口させていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグが、膨張完了時の周縁から延びて先端を前記収納部位側に取り付けられるテザーを、備え、
該テザーが、膨張完了時の前記ピラーカバー部における前記嵌合セル部から離れた側となる内縁側から延びる内側ストラップ部を、備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記嵌合セル部が、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状とされるとともに、前端側に、前記ピラーカバー部より上流側に位置して、前記嵌合セル部に前記膨張用ガスを流入させるための流入用開口を有していることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記嵌合セル部が、後端側を、前記ピラーカバー部に対して閉塞されて区画されていることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記嵌合セル部が、後端付近に、前記ピラーカバー部と連通される連通部を、有していることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグが、
前記ピラーカバー部と前記嵌合セル部とを配設させて、膨張完了時に、前記フロントピラーの下方における前記ドアミラーの前側の領域から、前記フロントピラーの前面にかけての領域を覆うように配置されるカバー膨張部と、
膨張完了時に、前記ドアミラーの前側の領域に配置されるとともに、前記カバー膨張部の下面側において、下面側を、前記収納部位の下方側に位置する車体側部材に支持されるように配置されて、前記カバー膨張部の下面側を支持する支持膨張部と、
を備える構成とされていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項1】
車両のフロントピラーにおける下端側の元部から先端にかけて延びている領域の前面側を覆い可能なエアバッグを、備える構成のエアバッグ装置であって、
前記車両が、前記フロントピラーの後側に隣接して配設されて、前記フロントピラーの後方に位置するサイドウィンドを有し、かつ、該サイドウィンドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを、備え、
前記エアバッグが、
前記フロントピラーの下方における前記ドアミラーの前側付近に配置される収納部位内に折り畳まれて収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、前記収納部位から突出しつつ膨張する構成とされて、
膨張完了時に、前記フロントピラーの前面を覆うように配置されるピラーカバー部と、
該ピラーカバー部と区画されて、膨張完了時に、前記ピラーカバー部の下方に配設されるとともに、後端側の部位を、前記ドアミラーの上面側における前記ドアミラーと前記車両の側面との間の隙間に嵌合させるように配置される嵌合セル部と、
を備える構成とされ、
前記嵌合セル部が、前後の略全域にわたって前記ピラーカバー部の下縁側に連結されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ピラーカバー部が、前記嵌合セル部よりも、前記エアバッグ内に流入する膨張用ガスの上流側に位置するように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記嵌合セル部が、前端側に、前記膨張用ガスを流入させるための流入用開口を、有する構成とされ、
前記エアバッグの内部に、前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターから吐出される前記膨張用ガスを、前記ピラーカバー部側に案内するインナチューブが、配置され、
該インナチューブが、略筒状とされるとともに、前記流入用開口を横切って、先端側を、前記ピラーカバー部側に開口させていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグが、膨張完了時の周縁から延びて先端を前記収納部位側に取り付けられるテザーを、備え、
該テザーが、膨張完了時の前記ピラーカバー部における前記嵌合セル部から離れた側となる内縁側から延びる内側ストラップ部を、備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記嵌合セル部が、膨張完了時の形状を前後方向に略沿った略棒状とされるとともに、前端側に、前記ピラーカバー部より上流側に位置して、前記嵌合セル部に前記膨張用ガスを流入させるための流入用開口を有していることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記嵌合セル部が、後端側を、前記ピラーカバー部に対して閉塞されて区画されていることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記嵌合セル部が、後端付近に、前記ピラーカバー部と連通される連通部を、有していることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグが、
前記ピラーカバー部と前記嵌合セル部とを配設させて、膨張完了時に、前記フロントピラーの下方における前記ドアミラーの前側の領域から、前記フロントピラーの前面にかけての領域を覆うように配置されるカバー膨張部と、
膨張完了時に、前記ドアミラーの前側の領域に配置されるとともに、前記カバー膨張部の下面側において、下面側を、前記収納部位の下方側に位置する車体側部材に支持されるように配置されて、前記カバー膨張部の下面側を支持する支持膨張部と、
を備える構成とされていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−254282(P2010−254282A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227274(P2009−227274)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
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