説明

エアフィルタおよびその製造方法

【課題】濾材および枠体を塩素を含まない合成樹脂発泡シート材より形成し、廃棄物再生燃料の原料として再利用できるフィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】プリーツ折りして形成された濾材2と、この濾材2の側面3と一方の通風端面4にわたり設けられ、濾材2を所定形状で保持する枠体7とを備え、濾材2および、枠体7を塩素を含まない合成樹脂発泡シート材より形成し、廃棄時に廃棄物再生燃料に再生できる構成とすることにより、濾材2および枠体7を分離することなく、廃棄物再生燃料に再生できるエアフィルタ10がえられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機などに組み込まれ、使用後は廃棄処分されるエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエアフィルタは、プリーツ折りして形成された濾材の4周を枠で囲むようにしたものが知られている。
【0003】
以下、そのエアフィルタについて図12および図13を参照しながら説明する。
【0004】
図に示すように、側板101により囲枠が形成され、下面に濾材載置用の額縁辺102を延設させた下枠103と、下枠103内に収納される濾材104と側板105により囲枠に形成され上面に濾材押さえ用額縁辺106を延設させ下枠103を収容する上枠107とを設け、凸部108と孔109により下枠103と上枠107を結合してフィルタを形成していた。
【0005】
また、ジグザグ状に形成された濾材を補強材で囲むものがしられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−1039号公報(〔0006〕図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のエアフィルタでは、濾材104を、下枠103と上枠107を凸部108と孔109により結合していた状態を解除し、濾材104を取り出し廃棄し、新しい濾材と取り替えるようにして下枠103と上枠107を再度使用することで廃棄物の低減を図っていたが、濾材104の取換作業に手間が掛かるとともに濾材104は埋め立てて廃棄されていたため、廃棄物が増え、濾材104は再利用されないという課題があり、手間を掛けずにエアフィルタを再利用することが要求されている。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、エアフィルタを種々の取付形態に適合させるとともに、濾材および合成樹脂発泡シート材よりなる枠形成体で形成し、廃棄物再生燃料の原料として再利用できるフィルタを提供することを目的としている。
【0009】
そして、従来からエアフィルタでは、空調機寸法に対応するためエアフィルタの縦、横、厚みが定形化されておらず多品種少量生産のため金型対応できないという課題があり、大掛かりな生産設備を必要とせず物作りできることが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエアフィルタは上記目的を達成するために、所定の大きさにプリーツ折りして形成された濾材と、この濾材の側面の通風端面にわたり設けられ、前記濾材を所定形状で保持する枠体とで構成されるエアフィルタであって、前記枠体は、帯状の合成樹脂発泡シート材を長手方向の辺を折り曲げて断面コの字型にしたものである。
【0011】
この手段により使用後の濾材と枠体を分離せずに、そのままの状態で良質な廃棄物再生燃料に形を変えることができるとともに、紙やシール材を固めて枠体を形成したエアフィルタに比べ、強度および寸法の安定精度が確保でき、また、使用後のフィルタを洗浄再生する場合にも問題なく使用可能であり、かつ、耐久性および装置の着脱性が向上するエアフィルタが得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濾材と枠体を分離せずに、そのままの状態で良質の廃棄物再生燃料に再生することができるとともに、紙やシール材を固めて枠体を形成したものに比べ、強度および寸法の安定精度が高まるとともに、耐久性および装置への着脱性が向上するエアフィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1のエアフィルタの構成を示す分解斜視図
【図2】(a)同エアフィルタの断面図(b)同エアフィルタの取付状態を示す側面図
【図3】同エアフィルタの枠体の(a)長手方向側面図、(b)短手方向側面図
【図4】同エアフィルタの構成を示す分解斜視図
【図5】同エアフィルタの構成を示す分解斜視図
【図6】本発明の実施形態2のL型接合片を示す斜視図
【図7】本発明の実施形態3のL型接合片を示す斜視図
【図8】同L型接合片の加工状態を示す断面図
【図9】同L型接合片の組付状態を示す断面図
【図10】本発明の実施の形態3の枠罫線加工設備の概略図
【図11】同枠、V字切り欠き加工設備の概略図
【図12】従来のエアフィルタの分解斜視図
【図13】従来のエアフィルタの要部詳細図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、所定の大きさにプリーツ折りして形成された濾材と、この濾材の側面の通風端面にわたり設けられ、前記濾材を所定形状で保持する枠体とで構成されるエアフィルタであって、前記枠体は、帯状の合成樹脂発泡シート材を長手方向の辺を折り曲げて断面コの字型にしたものであり、濾材と枠体を分離せずに、そのままの状態で廃棄物再生燃料の原料とすることができるという作用を有する。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1〜図5に示すように、濾材2は、塩素を含まない合成樹脂よりなる合成繊維等からなる不織布をプリーツ折りし、山頂部の複数列に間隔を保持する接着剤1(ホットメルト)を塗布して固定し形成したものである。枠体7は、塩素を含まない合成樹脂脂発泡シート材を帯状にカットし、その長手方向の辺を折り曲げて断面コ字形に成形したものである。この枠体7は、濾材2の側面3と通風端面4にわたって、濾材2を囲むように設けられる。このときに、濾材2の角部に対応し、折り曲げられるように通風端面4側となる枠体片5側の濾材2の角部に対応する部分に切欠き6(図3)を設け、濾材2の4周を囲むように成形する。枠体7の両端部は、濾材2のプリーツ折り方向の側面3において接合し、濾材2の4周に接着して固定する。
【0017】
また、枠体7の通風端面4側に設けられた枠体片5には、塩素を含まないポリエチレン、エステル系またはエーテル系ウレタンなどの合成樹脂で成形したシール材9を貼り付け、装置への組立時の密閉度を高めるようにエアフィルタ10を構成する。
【0018】
上記構成において、図2に示すように空気調和機の空気流路にエアフィルタ10がプレフィルタ10aと共に取付レール40に沿って組み込まれるときには、枠体7は紙に比べて強度も高く、寸法精度も安定しているので組み込み易くなっている。また、送風運転による風圧の作用でシール材9が空気調和機の装置部に密着するため空気流路から空気漏れがなくなる。
【0019】
次に、塵埃がエアフィルタ10上に堆積してエアフィルタ10を交換する必要が生じたときには、エアフィルタ10を取付レール40から引き出して、そのままの形で廃棄物燃料の製造工場に引渡すことにより廃棄物再生燃料に再生されることとなる。
【0020】
このように廃棄物再生燃料に再生される廃棄物燃料製造とは、いわゆるRPF(廃棄物固形化燃料)製造、廃プラスチック油化等をいい、廃棄物発電や廃棄物熱処理用のため行われるものである。RPFは燃えるごみを集めて細かく砕き、乾燥させ、添加物を加えて圧縮することにより作られる。RPFの熱量は石炭の約半分を有し、燃焼も安定しており、また、腐らない、悪臭が出ない、保存可能、ハンドリングが容易、単純焼却より高い燃焼温度が得られ、燃やしたときにダイオキシン等の有害物をほとんど発生せず、多くの長所を有している。
【0021】
この実施形態1では、エアフィルタ10を塩素を含まない合成樹脂に統一してダイオキシンを生じないだけでなく、紙や布を含まないので、均質燃料として燃焼時・保管時の保守管理も容易に行うことができる。
【0022】
また、この実施形態1では枠体7を合成樹脂脂発泡シート材より形成し断面コ字形の帯状の部材を折り曲げ、濾材2を固定することとしたが、図4に示すように、断面がコ字状で枠体片5aの両端に傾斜面11を形成した横側枠体単片12と縦側枠体単片13を傾斜面11を有する角部で接合して枠体7aを形成しても同様の作用効果をもたらすものである。
【0023】
また、図5に示すように、断面コ字状の横側枠体単片12と縦側枠体単片13を一体とした枠体単体14を一対設け、角部をL形接合片15で接合して枠体7bを形成しても同様の作用効果をもたらすものである。
【0024】
(実施の形態2)
図6(a)はポリプロピレン等の材料を射出成形にてフラットに製造し、ヒンジ形状溝16を有し各辺1箇所以上の突起17を持つL形接合片15を示し、帯状の合成樹脂発泡シート材よりなる枠形成体の端面よりに設けた穴との組付け時に、ヒンジ形状溝16を図6(b)に示すように90度折り曲げ、突起17を前記穴に挿入し先端部を熱溶着17aしたものである。L形接合片15の突起17はフィルタの厚みに合わせ各辺1箇所以上の突起17を持つものである。
【0025】
上記構成において、枠体の確実な結合と結合の強度アップおよび寸法の安定精度が高めることができる。
【0026】
(実施の形態3)
次に、フィルタ枠についての別の形態について、図7〜9を用いて説明する。
【0027】
図7は合成樹脂発泡シート材からなるL型接合片35を示している。このL型接合片35は、図8に示すように、プレス刃36aを押し付けて折り目部分を加工している。このプレス刃36aは、先端に約0.5ミリの平坦部を持ち、その両側に、約40度のテーパ面を有したものである。このプレス刃36aをL型接合片35に押し付けることにより、断面がV字型のヒンジ形状溝36を形成する。さらに、L型接合片35には、各辺1箇所以上の孔37を設けている。このL形接合片35は、ヒンジ形状溝36を図9に示すように90度折り曲げ、さらに、帯状の合成樹脂発泡シート材よりなる横側枠体単片32と縦側枠体単片33の端部側に設けた孔と孔37とを合わせ樹脂リベット37aを挿入し(固定状態のリベット37b)したものである。L形接合片35の孔37はフィルタの厚みに合わせ各辺1箇所以上設ければよい。
【0028】
上記構成によれば、L形接合片35が横側枠体単片32と縦側枠体単片33とを接合するので、枠体の確実な結合と結合の強度アップおよび寸法の安定精度が高めることができる。また、樹脂リベット37aは用意に分離できるため廃棄時フィルタを分解し減容することが可能となる。
【0029】
(実施の形態4)
次に、実施の形態1、2および3で示したフィルタの製造方法について説明する。
【0030】
図10および図11において、帯状の断面コ字形の合成樹脂脂発泡シート材よりなる成形体枠を製作する設備を示す。
【0031】
図10は帯状の合成樹脂発泡シート材18を断面がコ字形になるように折るための罫線加工の設備である。図10に示すように、帯状の合成樹脂発泡シート材18の幅に可動ガイド19,20を合わせ、材料となる合成樹脂発泡シート材18を加工台の上に乗せる。合成樹脂発泡シート材18の折り曲げる辺の端部から所定の距離を離した位置に、円形刃21を固定する。この状態で、合成樹脂発泡シート材18をローラ23に挿入し、先端に円形刃21を持つ空圧シリンダ22を下降させる。そして、ローラ23の回転にあわせて合成樹脂発泡シート材18を送ることにより、合成樹脂発泡シート材18の一方の辺に、罫線18a加工を行う。同様に反対側の罫線18a加工も行う。この加工が完了すれば、合成樹脂発泡シート材18は、罫線18aに沿って容易にコの字型に折り曲げ加工することができる。
【0032】
上記構成によれば、合成樹脂発泡シート材18の幅、設備の可動ガイド19,20の調整により任意のフィルタの厚みに対して枠体の加工ができる。
【0033】
図11は、帯状の合成樹脂発泡シート材18の枠長手方向の曲げ位置となるV字切り欠き24を加工する設備である。なお、この加工前に、合成樹脂発泡シート材18の両側にコ字形断面となる罫線18aの加工を施してある。
【0034】
図11に示すように、位置決め用のガイド25を所定の位置に設定し、帯状の合成樹脂発泡シート材18の罫線18a加工を施していない辺(短辺側)をガイド25の位置決め25aに当てる。プレス機28には、空圧又は油圧からなるシリンダ27を備え、そのシリンダ27の先には、V字切り欠き24ができる角刃26が取り付けられている。このプレス機28の角刃26によって、V字切り欠き24の加工を実施する。このとき位置を規制するガイド25を所定の位置に設定し、片面のV字切り欠き24が完了すれば反対面のV字切り欠き24を実施すると加工効率を高めることができる。
【0035】
上記構成において、フィルタ枠の縦、横寸法を任意に、しかも簡単に製造できる設備を提供することができる。
【0036】
なお、この円形刃21は、刃の先端が鋭利なものを用いることが考えられる。この場合、合成樹脂発泡シート材18には、この先端を鋭利にした円形刃21を肉残りが約0.4ミリになるように押し付ける。このような加工によって出来上がった罫線18a(ハーフカット罫線)によれば、精度良く折り曲げ加工ができることになる。
【0037】
また、この円形刃21は、先端に約0.5ミリに平坦部を持ち、その両側に円形刃の円中心に向かって40度のテーパ面を有したものを用いても良い。そして、合成樹脂発泡シート材18には、この先端に平坦部を有した円形刃21を肉残りが約0.4ミリになるように押し付ける。このような加工によれば、出来上がった罫線18a(転造罫線)は、切断による罫線加工に比べ強度が向上し、切断面からの切子も発生せず、外観も向上し、しかも簡単に製造できることになる。
【0038】
また、図10において、合成樹脂発泡シート材18の一方のコ字形断面となる転造罫線18a加工を行う円形刃21の位置調整が可能なようにし、図11においてガイド29,30を調整しV字切り欠き24の山部が枠の罫線18aに合致するようにすれば、フィルタ枠のコ字形断面の立ち上げ寸法も任意に調整可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
塩素を含まない合成樹脂をもちいて製品を形成することにより、製品に寿命が来て廃棄するときに、廃棄物再生燃料の原料に利用することができ、発熱用の少ない紙や布などを含まないので、火力発電などの高出力燃料として有効利用可能であり、製品を合成樹脂で形成する他の商品にも適用することにより、ダイオキシンの発生を防ぐだけでなく、地球規模で実施すれば化石燃料の使用量を削減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 接着剤
2 濾材
3 側面
4 通風端面
5 枠体片
5a 枠体片
6 切欠き
7 枠体
7a 枠体
7b 枠体
9 シール材
10 エアフィルタ
15 L形接合片
16 ヒンジ形状溝
17 突起
18 合成樹脂発泡シート材
19 可動ガイド
20 可動ガイド
21 円形刃
24 V字切り欠き
25 ガイド
26 角刃
35 L形接合片
36 ヒンジ形状溝
37 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の大きさにプリーツ折りして形成された濾材と、この濾材の側面の通風端面にわたって設けられ、前記濾材を所定形状で保持する枠体とで構成されるエアフィルタであって、前記枠体は、帯状の合成樹脂発泡シート材を長手方向の辺を折り曲げて断面コの字型にしたエアフィルタ。
【請求項2】
合成樹脂からなりヒンジ状形状を有し、ヒンジの各辺1箇所以上の突起を持つ枠体接合部を用い、前記枠体の短手方向の辺同士を接合させる請求項1記載のエアフィルタ。
【請求項3】
合成樹脂からなりヒンジ状形状を有し、ヒンジの各辺1箇所以上にリベット用の孔を設け、前記枠体の短手側端部にリベット用の孔を設け、前記ヒンジに設けた孔と前記枠体に設けた孔とを合成樹脂製のリベットで接合させる請求項1記載のエアフィルタ。
【請求項4】
帯状の前記合成樹脂発泡シート材の長手方向の辺から所定の距離を離した位置に、長手方向の辺に平行に円形刃を押し当て、前記合成樹脂発泡シート材を長手方向に移動させることによって、折り曲げ用の罫線を設ける請求項1記載のエアフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記円形刃は、先端に平坦部を設け、その両側がこの円形刃の円中心に向かって厚みを増すテーパー面を持ち、前記円形刃を帯状の前記合成樹脂発泡シート材に押し付けて移動させることによって形成される罫線は、断面がV字状の溝となる請求項4記載のエアフィルタの製造方法。
【請求項6】
帯状の前記合成樹脂発泡シート材の短手方向の辺を押し当てるガイドと、帯状の前記合成樹脂発泡シート材の長手方向の辺にV字状の切り欠きを設ける角刃とを設け、前記ガイドを前記合成樹脂発泡シート材の長手方向に動かしてと前記V字状の切り欠きを所定の位置に設ける請求項1記載のエアフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−121041(P2011−121041A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92848(P2010−92848)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】