エアリフト及び培養システム
【課題】光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じないエアリフト及び培養システムを提供すること。
【解決手段】培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフト5であって、中空の本体部13と、前記本体部13に設けられた前記培地の入口17と、前記本体部13のうち、前記入口17よりも上方に設けられた、前記培地の出口19と、前記本体部13内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段15と、前記本体部13内において、前記培地中を進む前記ガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する誘導部材23と、を備えることを特徴とするエアリフト5。
【解決手段】培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフト5であって、中空の本体部13と、前記本体部13に設けられた前記培地の入口17と、前記本体部13のうち、前記入口17よりも上方に設けられた、前記培地の出口19と、前記本体部13内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段15と、前記本体部13内において、前記培地中を進む前記ガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する誘導部材23と、を備えることを特徴とするエアリフト5。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、藻類の培養に用いられるエアリフト及び培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
藻類に代表される、太陽光を用いて光合成を行う独立栄養生物の培養には二酸化炭素が必要である。そこで、培地(水)中に二酸化炭素を高効率に溶解する技術が従来から求められている。
【0003】
特許文献1の技術は、液泡の集団を精製することで液泡内の気体と表面液膜とを抵触させ、高効率に気体を溶解させる。また、特許文献2の技術は、藻類培養装置において、加圧条件下で二酸化炭素を溶解させた水、もしくはそれを大気圧に減圧することで放出された二酸化炭素を藻類に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/121031号公報
【特許文献2】特開2010−88368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、液泡が水面に拡がることで太陽光もしくは人工光が透過し難くなり、光合成の妨げとなる。また大量の泡により藻類が水中から分離、浮上してしまう可能性がある。また、特許文献2の技術では、加圧機構が必要となり、培養コストが大きくなってしまう。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、これらの問題が生じにくいエアリフト及び培養システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る第1のエアリフトは、培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるものであって、中空の本体部と、前記本体部に設けられた前記培地の入口と、前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、前記本体部内において、前記培地中を進む前記ガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する誘導部材とを備える。
【0008】
本発明に係る第1のエアリフトは、ガス供給手段により、二酸化炭素を含むガス(以下では単にガスとする)を、本体部内に供給する。そのガスの気泡は、本体部内を上昇する。このとき、本体部内の培地に、二酸化炭素が溶解する。また、気泡の上昇により、本体部内には、培地の上向きの流れが生じる。その結果、培地は、培地の入口から本体部内に入り、本体部内を上昇し、培地の出口から出る。
【0009】
特に、本発明に係る第1のエアリフトは、誘導部材により、ガス供給手段から供給されたガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する。そのため、誘導部材がなく、気泡が鉛直方向に上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0010】
また、本発明に係る第1のエアリフトでは、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0011】
前記誘導部材としては、例えば、鉛直方向とは異なる方向に沿った面(例えば、水平面、傾斜した面)を備え、その面に沿って気泡を誘導するものが挙げられる。そのような誘導部材として、例えば、軸状部材と、前記軸状部材に取り付けられた板状部材とを有するものがある。この誘導部材は、培地中で、板状部材の面(鉛直方向とは異なる方向に沿った面)に沿って気泡を誘導し、その結果、気泡と培地との接触時間を増し、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0012】
また、前記誘導部材としては、例えば、螺旋状に屈曲した、前記気泡の経路を有する部材が挙げられる。この誘導部材は、培地中で、気泡を螺旋状の経路に沿って誘導し、その結果、気泡と培地との接触時間を増し、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0013】
前記誘導部材は、駆動手段により駆動されるものであることが好ましい。そのことにより、誘導部材への藻類の付着又は堆積を防止できる。誘導部材の駆動は、例えば、周知のモータ等の動力、及び歯車やプーリ等の動力伝達手段を用いて実現できる。
【0014】
(2)本発明に係る第2のエアリフトは、培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフトものであって、中空の本体部と、前記本体部に設けられた前記培地の入口と、前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、前記ガス供給手段により供給されるガスを保持可能な凹部を有するガス保持部材とを備える。
【0015】
そして、前記のガス保持部材は、前記本体部に対し、向きを変えることができるように取り付けられており、前記向きは、前記凹部で保持する前記ガスの量が所定量以下の場合は、前記ガス保持部材の自重により、前記凹部で前記ガスを保持可能な向きとなり、前記凹部で保持する前記ガスの量が前記所定量を超える場合は、保持する前記ガスの浮力によって向きを変え、保持していた前記ガスを上方に開放する向きとなる。
【0016】
本発明に係る第2のエアリフトは、ガス保持部材を備える。ガス供給手段から供給されたガスの気泡は、「ガスを保持可能な向き」の状態にある、ガス保持部材の凹部に保持される。凹部で保持するガスの量が所定量を超えると、そのガスの浮力により、ガス保持部材の向きは、「保持していた前記ガスを上方に開放する向き」となり、それまで凹部37aで保持していた気泡を上方に放出する。なお、気泡を放出したガス保持部材は、浮力を失うため、再び、「ガスを保持可能な向き」の状態に戻る。
【0017】
ガス供給手段から供給されたガスの気泡は、上記の段階(一旦、ガス保持部材で保持され、その後、ガス保持部材から放出される)を踏んで上昇するため、ガス保持部材がなく、気泡がすぐに上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0018】
また、本発明に係る第2のエアリフトでは、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0019】
(3)前記第1及び第2のエアリフトにおいて、前記ガス供給手段は、前記ガスの供給量を変動させるものであることが好ましい。ガスの供給量を一時的に増すことにより、誘導部材やガス保持部材に付着又は堆積していた藻類を除去することができる。
【0020】
前記第1及び第2のエアリフトは、前記本体部内に紫外線を照射する紫外線照射手段を有することが好ましい。紫外線を照射することにより、藻類を捕食する原生動物の培地への混入を防止することができる。
【0021】
(4)本発明の培養システムは、前記第1及び第2のエアリフトと、培養槽とを備える。本発明の培養システムは、前記第1及び第2のエアリフトを備えることにより、上述した効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】培養システム1の全体構成を表す平面図である。
【図2】図1におけるA方向から見たときの、培養システム1の側面図である。
【図3】エアリフト5の構成を表す斜視図である。
【図4】本体部13及び誘導部材23を上方から見たときの形態を表す説明図である。
【図5】エアリフト5の構成を表す斜視図である。
【図6】エアリフト5の構成を表す斜視図である。
【図7】ガス保持部材37の構成及び動作を表す説明図であり、(a)は向きDの状態を表し、(b)は向きUの状態を表す。
【図8】培養システム1の全体構成を表す平面図である。
【図9】図8におけるB方向から見たときの、培養システム1の側面図である。
【図10】エアリフト5の構成(一部の構成は省略)を表す斜視図である。
【図11】エアリフト5の構成(一部の構成は省略)を表す斜視図である。
【図12】エアリフト5の構成(一部の構成は省略)を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
1.培養システム1の全体構成
培養システム1の全体構成を、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、培養システム1の全体構成を表す平面図であり、図2は、図1におけるA方向から見たときの、培養システム1の側面図である。なお、図2において、後述する誘導部材23等は省略している。
【0024】
培養システム1は、培養槽3と、エアリフト5とを備える。培養槽3は、周知のレースウェイ型培養槽である。培養槽3は、上方が開口した平底容器7と、その底面の中央部に立設された仕切り壁9と、平底容器7内の培地に流れを生じさせるパドル11とを備える。培養槽3は、微生物(例えば藻類)の培養に用いることができる。培養槽3は、所定量の培地を入れて使用される。エアリフト5は、培養槽3内に設置されている。
【0025】
培地としては、例えば、以下のAF6培地を使用できる。
AF6培地(100ml)
NaNO3:14 mg
NH4NO3:2.2 mg
MgSO4 ・ 7H2O :3 mg
KH2PO4:1 mg
K2HPO4:0.5 mg
CaCl2 ・ 2H2O:1 mg
CaCO3:1 mg
Fe-citrate:0.2 mg
Citric acid:0.2 mg
Biotin:0.2 μg
Thiamine HCl:1 μg
Vitamin B6:0.1 μg
Vitamin B12:0.1 μg
Trace metals:0.5 mL
Distilled water:99.5 mL
(pH 6.62)
2.エアリフト5の構成
エアリフト5の構成を、図1、図2に加えて、図3、及び図4に基づいて説明する。図3は、エアリフト5の構成を表す斜視図であり、図4は、後述する本体部13及び誘導部材23を上方から見たときの形態を表す図面である。
【0026】
エアリフト5は、本体部13と、本体部13内に二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給配管(ガス供給手段)15とを備える。このガス供給配管15がガスを供給する態様は、所定流量Q1のガスを供給する時間帯と、Q1よりも大きいQ2の流量でガスを供給する時間帯とを、交互に繰り返す態様(供給量が変動する態様)である。なお、Q1の流量でガスを供給する時間帯よりも、Q2の流量でガスを供給する時間帯の方が短い。
【0027】
本体部13は、中空円筒状の容器であり、その軸方向は、鉛直方向である。本体部13の底面は開放されており、培地の入口17となっている。ガス供給配管15の供給口15aは、この培地の入口17に位置する。また、本体部13の側面のうち、上端から略1/3の位置(入口17よりも上方)には、培地の出口19が設けられている。培地の出口19には、出口配管21が接続されている。出口配管21の出口21aは、培養槽3の内部に位置する(図2参照)。
【0028】
本体部13の内部には、誘導部材23が設けられている。誘導部材23は、軸状部材25と、6枚の邪魔板(板状部材)27a、27b、27c、27d、27e、27fとから成る。軸状部材25の長手方向は、鉛直方向であり、本体部13の中心に位置する。軸状部材25の上端は、本体部13の上面板13aに、回転可能に軸支されている。邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fは、それぞれ、同一の扇方の形状を有しており、扇の要の部分で、軸状部材25に固定されている。邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fの主たる面は、それぞれ、水平面と平行である。なお、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fの主たる面は、水平方向に対し傾斜させてもよい(ただし、鉛直方向と平行ではない)。
【0029】
邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fの上下方向における位置は、邪魔板27aが最も高く、次に27bが高く、以下、27c、27d、27e、27fの順である。邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27f間の上下方向における相互の間隔は、全て一定である。
【0030】
軸状部材25の軸方向から見たとき、図4に示すように、邪魔板27bは、邪魔板27aに対し、軸状部材25を中心として90°回転した位置にある。また、邪魔板27cは、邪魔板27bに対し、軸状部材25を中心として90°回転した位置にあり、邪魔板27aに対しては、軸状部材25を中心として180°回転した位置にある。同様に、邪魔板27d、27e、27fは、その一つ上にある邪魔板に対し、軸状部材25を中心として、一定の方向に90°回転した位置にある。
【0031】
誘導部材23は、図示しない駆動機構(駆動手段)により、軸状部材25を中心として回転することができる。エアリフト5は、本体部13における培地の出口19付近までが、培地に浸漬されるように、培養槽3内に設置される。このとき、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fは、培地に浸漬される。
【0032】
3.培養システム1及びエアリフト5が奏する作用効果
(1)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15から、二酸化炭素を含むガスを、エアリフト5における培地の入口17に供給すると、そのガスの気泡は、本体部13内を上昇する。このとき、本体部13内の培地に、二酸化炭素が溶解する。また、気泡の上昇により、本体部13内には、培地の上向きの流れが生じる。その結果、培養槽3の培地は、培地の入口17から本体部13内に入り、本体部13内を上昇し、培地の出口19及び出口配管21を経て、培養槽3に戻る。
【0033】
特に、本実施形態のエアリフト5は、誘導部材23を備えるので、ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、誘導部材23の邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fにぶつかり、それらの面に沿った方向(水平方向、すなわち、鉛直方向とは異なる方向)に誘導されながら上昇する。そのため、誘導部材23がなく、気泡が鉛直方向に上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0034】
(2)本実施形態の培養システム1では、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0035】
(3)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15が供給するガスの量を定期的に高める。ガスの流量が高いとき、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fに付着又は堆積していた藻類が除去される。すなわち、本実施形態の培養システム1によれば、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fへの藻類の付着又は堆積を防止できる。
【0036】
(4)本実施形態の培養システム1では、誘導部材23を回転させることができる。そのことにより、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fへの藻類の付着又は堆積を防止できる。
<第2の実施形態>
1.培養システム1及びエアリフト5の構成
本実施形態における培養システム1の構成は、基本的には、前記第1の実施形態と同様であるが、エアリフト5が備える誘導部材において相違する。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0037】
エアリフト5は、本体部13内に、図5に示すような、誘導部材29を備えている。誘導部材29は、柱状部材31と、螺旋状スクリュー(螺旋状に屈曲した、気泡の経路を有する部材)33と、支持棒35とから構成される。柱状部材31の軸方向は、鉛直方向であり、本体部13の中心に位置する。螺旋状スクリュー33は、柱状部材31の外周に沿って、螺旋形状を成すように取り付けられた、長尺の板状部材であり、アルキメデスの螺旋の形状を有する。螺旋状スクリュー33と外周端は、本体部13の内壁面と接している。支持棒35は、柱状部材31の上端面に接続するとともに、本体部13の上面板13aに、回転可能に軸支されている。誘導部材29は、図示しない駆動機構により、柱状部材31及び支持棒35の中心軸を回転中心として、回転することができる。その回転の方向は、アルキメデスの螺旋の形状を有する螺旋状スクリュー33が培地を上方に汲み上げる方向である。
【0038】
2.培養システム1及びエアリフト5が奏する作用効果
(1)本実施形態のエアリフト5は、誘導部材29を備えるので、ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、誘導部材29の螺旋状スクリュー33に沿って、螺旋に沿った方向(鉛直方向とは異なる方向)に誘導されながら上昇する。そのため、誘導部材29がなく、気泡が鉛直方向に上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0039】
(2)本実施形態の培養システム1では、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0040】
(3)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15が供給するガスの量を定期的に高める。ガスの流量が高いとき、螺旋状スクリュー33に付着又は堆積していた藻類が除去される。すなわち、本実施形態の培養システム1によれば、螺旋状スクリュー33への藻類の付着又は堆積を防止できる。
【0041】
(4)本実施形態の培養システム1では、誘導部材29を回転させることができる。そのことにより、螺旋状スクリュー33への藻類の付着又は堆積を防止できる。
(5)本実施形態の培養システム1では、アルキメデスの螺旋の形状を有する螺旋状スクリュー33を回転させることにより、培地を上方に汲み上げることができる。そのことにより、螺旋状スクリュー33が回転しない場合よりも、ガス流量を少なくすることができる。
<第3の実施形態>
1.培養システム1及びエアリフト5の構成
本実施形態における培養システム1の構成は、基本的には、前記第1の実施形態と同様であるが、エアリフト5の構成において相違する。以下では、その相違点を中心に、図6及び図7に基づいて説明する。図6は、エアリフト5の構成を表す斜視図であり、図7は、後述するガス保持部材37を表す断面図である。
【0042】
エアリフト5は、本体部13内に、図6、図7に示すような、ガス保持部材37を複数備えている。ガス保持部材37は、傘状の形状を有し、その傘の内側は、ガスを保持可能な凹部37aとなっている。ガス保持部材37は、傘における頂点に該当する部分で、本体部13の内壁に対し、回動軸39を介して取り付けられている。回動軸39が設けられている位置は、ガス保持部材37のうち、凹部37aが形成されている側とは反対側であり、ガス保持部材37の重心から外れた位置である。
【0043】
ガス保持部材37は、回動軸39において回動することにより、本体部13に対する向きを変えることができる。その向きには、図7(a)に示すように、凹部37aが下向きに開口した向き(以下、向きDとする)と、図7(b)に示すように、凹部37aが上向きに開口した向き(以下、向きUとする)とがある。ガス保持部材37が向きDの状態のとき、ガス供給配管15が供給するガスの気泡は、凹部37aに入り、そこで保持される。
【0044】
凹部37aに保持されているガスの量が所定量以下の場合は、ガス保持部材37の自重により、ガス保持部材37の向きは、向きDのまま維持される。一方、凹部37aで保持するガスの量が所定量を超えると、そのガスの浮力により、ガス保持部材37は、図7(a)における矢印Xの方向に回動し、ガス保持部材37の向きは、向きUとなる。向きUとなったガス保持部材37は、図7(b)に示すように、それまで凹部37aで保持していたガスを上方に放出し、浮力を失うので、図7(b)における矢印Yの方向に回動し、向きDの状態に戻る。
【0045】
2.培養システム1及びエアリフト5及びが奏する作用効果
(1)本実施形態のエアリフト5は、ガス保持部材37を備える。ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、向きDの状態にある、ガス保持部材37の凹部37aに保持される。凹部37aで保持するガスの量が所定量を超えると、そのガスの浮力により、ガス保持部材37の向きは、向きUとなり、それまで凹部37aで保持していた気泡を上方に放出する。
【0046】
ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、上記の段階を踏んで上昇するため、ガス保持部材37がなく、気泡がすぐに上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0047】
(2)本実施形態の培養システム1では、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0048】
(3)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15が供給するガスの量を定期的に高める。ガスの流量が高いとき、ガス保持部材37に付着又は堆積していた藻類が除去される。すなわち、本実施形態の培養システム1によれば、ガス保持部材37への藻類の付着又は堆積を防止できる。
【0049】
(4)本実施形態の培養システム1では、ガス保持部材37が回動する。そのことにより、ガス保持部材37への藻類の付着又は堆積を防止できる。
<変形例1>
前記各実施形態の培養システム1において、エアリフト5の位置は、図8、図9に示すものであってもよい。図8は、培養システム1の全体構成を表す平面図であり、図9は、図8におけるB方向から見たときの、培養システム1の側面図である。なお、図9において、誘導部材23、誘導部材29、ガス保持部材37等は省略している。
【0050】
培養システム1は、培養槽3とは別の容器41を備えている。容器41にも、培養槽3と同様に培地が入れられている。培養槽3と容器41とは、連結管43により連通している。エアリフト5の本体部13は、培養槽3ではなく、容器41に設けられている。エアリフト5は、容器41から本体部13内に流入した培地に、二酸化炭素を溶解させる。エアリフト5における出口配管21の出口21aは、培養槽3の内部に位置する。よって、本体部13内で二酸化炭素を溶解した培地は、培養槽3に放出される。なお、容器41と培養槽3とは、連結管43により連通しているので、培養槽3内の培地は、容器41に流入し、そこで、上記のように二酸化炭素を溶解させる。
【0051】
<変形例2>
前記各実施形態の培養システム1において、エアリフト5は、図10に示すように、紫外線ランプ(紫外線照射手段)45を備えていてもよい。なお、図10において、誘導部材23、誘導部材29、ガス保持部材37等は省略している。
【0052】
紫外線ランプ45は、本体部13の上面板13aにおける下側に設置されており、本体部13内の培地に、紫外線を照射することができる。紫外線を照射することにより、藻類を捕食する原生動物の培地への混入を防止することができる。
【0053】
<変形例3>
前記第1、又は第2の実施形態において、図11に示すように、ガス供給配管15が、本体部13の中心軸を通るようにしてもよい。そして、前記第1の実施形態の場合は、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fを、軸状部材25ではなく、ガス供給配管15に取り付けることができる。また、前記第2の実施形態の場合は、螺旋状スクリュー33を、柱状部材31ではなく、ガス供給配管15に取り付けることができる。
【0054】
<変形例4>
前記第1の実施形態において、エアリフト5は、図12に示すものであってもよい。このエアリフト5は、本体部13の下方に、底板47を備えており、底板47は、連結板49により本体部13に連結されている。軸状部材25は、本体部13の上面板13aと、底板47との両方において、回動可能に軸支されている。このような形態とすることにより、軸状部材25の位置がぶれにくくなる。なお、培地は、本体部13と底板47との間を通り、本体部13内に導入される。
【0055】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記各実施形態において、ガス供給配管15に加えて、又はガス供給配管15に代えて、本体部13の側面にガスの噴出口を設け、その噴出口から、本体部13の内側に向けて、ガスを噴出すようにしてもよい。そのガスの噴出しは、常時行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。側面からのガスの噴出しを行うことにより、本体部13の内壁に付着又は堆積した藻類を除去することができる。
【0056】
また、前記第1の実施形態において、邪魔板の数は任意に設定でき、例えば、1、2、3、4、5、7、8・・・とすることができる。
また、前記第3の実施形態において、ガス保持部材37の数は特に限定されず、任意に設定できる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・培養システム、3・・・培養槽、5・・・エアリフト、7・・・平底容器、
9・・・仕切り壁、11・・・パドル、13・・・本体部、13a・・・上面、
15・・・ガス供給配管、15a・・・供給口、17・・・培地の入口、
19・・・培地の出口、21・・・出口配管、21a・・・出口、23・・・誘導部材、
25・・・軸状部材、27a、27b、27c、27d、27e、27f・・・邪魔板、
29・・・誘導部材、31・・・柱状部材、33・・・螺旋状スクリュー、
35・・・支持棒、37・・・ガス保持部材、37a・・・凹部、39・・・回動軸、
41・・・容器、43・・・連結管、45・・・紫外線ランプ、47・・・底板、
49・・・連結板
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、藻類の培養に用いられるエアリフト及び培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
藻類に代表される、太陽光を用いて光合成を行う独立栄養生物の培養には二酸化炭素が必要である。そこで、培地(水)中に二酸化炭素を高効率に溶解する技術が従来から求められている。
【0003】
特許文献1の技術は、液泡の集団を精製することで液泡内の気体と表面液膜とを抵触させ、高効率に気体を溶解させる。また、特許文献2の技術は、藻類培養装置において、加圧条件下で二酸化炭素を溶解させた水、もしくはそれを大気圧に減圧することで放出された二酸化炭素を藻類に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/121031号公報
【特許文献2】特開2010−88368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、液泡が水面に拡がることで太陽光もしくは人工光が透過し難くなり、光合成の妨げとなる。また大量の泡により藻類が水中から分離、浮上してしまう可能性がある。また、特許文献2の技術では、加圧機構が必要となり、培養コストが大きくなってしまう。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、これらの問題が生じにくいエアリフト及び培養システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る第1のエアリフトは、培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるものであって、中空の本体部と、前記本体部に設けられた前記培地の入口と、前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、前記本体部内において、前記培地中を進む前記ガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する誘導部材とを備える。
【0008】
本発明に係る第1のエアリフトは、ガス供給手段により、二酸化炭素を含むガス(以下では単にガスとする)を、本体部内に供給する。そのガスの気泡は、本体部内を上昇する。このとき、本体部内の培地に、二酸化炭素が溶解する。また、気泡の上昇により、本体部内には、培地の上向きの流れが生じる。その結果、培地は、培地の入口から本体部内に入り、本体部内を上昇し、培地の出口から出る。
【0009】
特に、本発明に係る第1のエアリフトは、誘導部材により、ガス供給手段から供給されたガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する。そのため、誘導部材がなく、気泡が鉛直方向に上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0010】
また、本発明に係る第1のエアリフトでは、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0011】
前記誘導部材としては、例えば、鉛直方向とは異なる方向に沿った面(例えば、水平面、傾斜した面)を備え、その面に沿って気泡を誘導するものが挙げられる。そのような誘導部材として、例えば、軸状部材と、前記軸状部材に取り付けられた板状部材とを有するものがある。この誘導部材は、培地中で、板状部材の面(鉛直方向とは異なる方向に沿った面)に沿って気泡を誘導し、その結果、気泡と培地との接触時間を増し、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0012】
また、前記誘導部材としては、例えば、螺旋状に屈曲した、前記気泡の経路を有する部材が挙げられる。この誘導部材は、培地中で、気泡を螺旋状の経路に沿って誘導し、その結果、気泡と培地との接触時間を増し、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0013】
前記誘導部材は、駆動手段により駆動されるものであることが好ましい。そのことにより、誘導部材への藻類の付着又は堆積を防止できる。誘導部材の駆動は、例えば、周知のモータ等の動力、及び歯車やプーリ等の動力伝達手段を用いて実現できる。
【0014】
(2)本発明に係る第2のエアリフトは、培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフトものであって、中空の本体部と、前記本体部に設けられた前記培地の入口と、前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、前記ガス供給手段により供給されるガスを保持可能な凹部を有するガス保持部材とを備える。
【0015】
そして、前記のガス保持部材は、前記本体部に対し、向きを変えることができるように取り付けられており、前記向きは、前記凹部で保持する前記ガスの量が所定量以下の場合は、前記ガス保持部材の自重により、前記凹部で前記ガスを保持可能な向きとなり、前記凹部で保持する前記ガスの量が前記所定量を超える場合は、保持する前記ガスの浮力によって向きを変え、保持していた前記ガスを上方に開放する向きとなる。
【0016】
本発明に係る第2のエアリフトは、ガス保持部材を備える。ガス供給手段から供給されたガスの気泡は、「ガスを保持可能な向き」の状態にある、ガス保持部材の凹部に保持される。凹部で保持するガスの量が所定量を超えると、そのガスの浮力により、ガス保持部材の向きは、「保持していた前記ガスを上方に開放する向き」となり、それまで凹部37aで保持していた気泡を上方に放出する。なお、気泡を放出したガス保持部材は、浮力を失うため、再び、「ガスを保持可能な向き」の状態に戻る。
【0017】
ガス供給手段から供給されたガスの気泡は、上記の段階(一旦、ガス保持部材で保持され、その後、ガス保持部材から放出される)を踏んで上昇するため、ガス保持部材がなく、気泡がすぐに上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0018】
また、本発明に係る第2のエアリフトでは、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0019】
(3)前記第1及び第2のエアリフトにおいて、前記ガス供給手段は、前記ガスの供給量を変動させるものであることが好ましい。ガスの供給量を一時的に増すことにより、誘導部材やガス保持部材に付着又は堆積していた藻類を除去することができる。
【0020】
前記第1及び第2のエアリフトは、前記本体部内に紫外線を照射する紫外線照射手段を有することが好ましい。紫外線を照射することにより、藻類を捕食する原生動物の培地への混入を防止することができる。
【0021】
(4)本発明の培養システムは、前記第1及び第2のエアリフトと、培養槽とを備える。本発明の培養システムは、前記第1及び第2のエアリフトを備えることにより、上述した効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】培養システム1の全体構成を表す平面図である。
【図2】図1におけるA方向から見たときの、培養システム1の側面図である。
【図3】エアリフト5の構成を表す斜視図である。
【図4】本体部13及び誘導部材23を上方から見たときの形態を表す説明図である。
【図5】エアリフト5の構成を表す斜視図である。
【図6】エアリフト5の構成を表す斜視図である。
【図7】ガス保持部材37の構成及び動作を表す説明図であり、(a)は向きDの状態を表し、(b)は向きUの状態を表す。
【図8】培養システム1の全体構成を表す平面図である。
【図9】図8におけるB方向から見たときの、培養システム1の側面図である。
【図10】エアリフト5の構成(一部の構成は省略)を表す斜視図である。
【図11】エアリフト5の構成(一部の構成は省略)を表す斜視図である。
【図12】エアリフト5の構成(一部の構成は省略)を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
1.培養システム1の全体構成
培養システム1の全体構成を、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、培養システム1の全体構成を表す平面図であり、図2は、図1におけるA方向から見たときの、培養システム1の側面図である。なお、図2において、後述する誘導部材23等は省略している。
【0024】
培養システム1は、培養槽3と、エアリフト5とを備える。培養槽3は、周知のレースウェイ型培養槽である。培養槽3は、上方が開口した平底容器7と、その底面の中央部に立設された仕切り壁9と、平底容器7内の培地に流れを生じさせるパドル11とを備える。培養槽3は、微生物(例えば藻類)の培養に用いることができる。培養槽3は、所定量の培地を入れて使用される。エアリフト5は、培養槽3内に設置されている。
【0025】
培地としては、例えば、以下のAF6培地を使用できる。
AF6培地(100ml)
NaNO3:14 mg
NH4NO3:2.2 mg
MgSO4 ・ 7H2O :3 mg
KH2PO4:1 mg
K2HPO4:0.5 mg
CaCl2 ・ 2H2O:1 mg
CaCO3:1 mg
Fe-citrate:0.2 mg
Citric acid:0.2 mg
Biotin:0.2 μg
Thiamine HCl:1 μg
Vitamin B6:0.1 μg
Vitamin B12:0.1 μg
Trace metals:0.5 mL
Distilled water:99.5 mL
(pH 6.62)
2.エアリフト5の構成
エアリフト5の構成を、図1、図2に加えて、図3、及び図4に基づいて説明する。図3は、エアリフト5の構成を表す斜視図であり、図4は、後述する本体部13及び誘導部材23を上方から見たときの形態を表す図面である。
【0026】
エアリフト5は、本体部13と、本体部13内に二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給配管(ガス供給手段)15とを備える。このガス供給配管15がガスを供給する態様は、所定流量Q1のガスを供給する時間帯と、Q1よりも大きいQ2の流量でガスを供給する時間帯とを、交互に繰り返す態様(供給量が変動する態様)である。なお、Q1の流量でガスを供給する時間帯よりも、Q2の流量でガスを供給する時間帯の方が短い。
【0027】
本体部13は、中空円筒状の容器であり、その軸方向は、鉛直方向である。本体部13の底面は開放されており、培地の入口17となっている。ガス供給配管15の供給口15aは、この培地の入口17に位置する。また、本体部13の側面のうち、上端から略1/3の位置(入口17よりも上方)には、培地の出口19が設けられている。培地の出口19には、出口配管21が接続されている。出口配管21の出口21aは、培養槽3の内部に位置する(図2参照)。
【0028】
本体部13の内部には、誘導部材23が設けられている。誘導部材23は、軸状部材25と、6枚の邪魔板(板状部材)27a、27b、27c、27d、27e、27fとから成る。軸状部材25の長手方向は、鉛直方向であり、本体部13の中心に位置する。軸状部材25の上端は、本体部13の上面板13aに、回転可能に軸支されている。邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fは、それぞれ、同一の扇方の形状を有しており、扇の要の部分で、軸状部材25に固定されている。邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fの主たる面は、それぞれ、水平面と平行である。なお、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fの主たる面は、水平方向に対し傾斜させてもよい(ただし、鉛直方向と平行ではない)。
【0029】
邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fの上下方向における位置は、邪魔板27aが最も高く、次に27bが高く、以下、27c、27d、27e、27fの順である。邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27f間の上下方向における相互の間隔は、全て一定である。
【0030】
軸状部材25の軸方向から見たとき、図4に示すように、邪魔板27bは、邪魔板27aに対し、軸状部材25を中心として90°回転した位置にある。また、邪魔板27cは、邪魔板27bに対し、軸状部材25を中心として90°回転した位置にあり、邪魔板27aに対しては、軸状部材25を中心として180°回転した位置にある。同様に、邪魔板27d、27e、27fは、その一つ上にある邪魔板に対し、軸状部材25を中心として、一定の方向に90°回転した位置にある。
【0031】
誘導部材23は、図示しない駆動機構(駆動手段)により、軸状部材25を中心として回転することができる。エアリフト5は、本体部13における培地の出口19付近までが、培地に浸漬されるように、培養槽3内に設置される。このとき、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fは、培地に浸漬される。
【0032】
3.培養システム1及びエアリフト5が奏する作用効果
(1)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15から、二酸化炭素を含むガスを、エアリフト5における培地の入口17に供給すると、そのガスの気泡は、本体部13内を上昇する。このとき、本体部13内の培地に、二酸化炭素が溶解する。また、気泡の上昇により、本体部13内には、培地の上向きの流れが生じる。その結果、培養槽3の培地は、培地の入口17から本体部13内に入り、本体部13内を上昇し、培地の出口19及び出口配管21を経て、培養槽3に戻る。
【0033】
特に、本実施形態のエアリフト5は、誘導部材23を備えるので、ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、誘導部材23の邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fにぶつかり、それらの面に沿った方向(水平方向、すなわち、鉛直方向とは異なる方向)に誘導されながら上昇する。そのため、誘導部材23がなく、気泡が鉛直方向に上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0034】
(2)本実施形態の培養システム1では、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0035】
(3)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15が供給するガスの量を定期的に高める。ガスの流量が高いとき、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fに付着又は堆積していた藻類が除去される。すなわち、本実施形態の培養システム1によれば、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fへの藻類の付着又は堆積を防止できる。
【0036】
(4)本実施形態の培養システム1では、誘導部材23を回転させることができる。そのことにより、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fへの藻類の付着又は堆積を防止できる。
<第2の実施形態>
1.培養システム1及びエアリフト5の構成
本実施形態における培養システム1の構成は、基本的には、前記第1の実施形態と同様であるが、エアリフト5が備える誘導部材において相違する。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0037】
エアリフト5は、本体部13内に、図5に示すような、誘導部材29を備えている。誘導部材29は、柱状部材31と、螺旋状スクリュー(螺旋状に屈曲した、気泡の経路を有する部材)33と、支持棒35とから構成される。柱状部材31の軸方向は、鉛直方向であり、本体部13の中心に位置する。螺旋状スクリュー33は、柱状部材31の外周に沿って、螺旋形状を成すように取り付けられた、長尺の板状部材であり、アルキメデスの螺旋の形状を有する。螺旋状スクリュー33と外周端は、本体部13の内壁面と接している。支持棒35は、柱状部材31の上端面に接続するとともに、本体部13の上面板13aに、回転可能に軸支されている。誘導部材29は、図示しない駆動機構により、柱状部材31及び支持棒35の中心軸を回転中心として、回転することができる。その回転の方向は、アルキメデスの螺旋の形状を有する螺旋状スクリュー33が培地を上方に汲み上げる方向である。
【0038】
2.培養システム1及びエアリフト5が奏する作用効果
(1)本実施形態のエアリフト5は、誘導部材29を備えるので、ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、誘導部材29の螺旋状スクリュー33に沿って、螺旋に沿った方向(鉛直方向とは異なる方向)に誘導されながら上昇する。そのため、誘導部材29がなく、気泡が鉛直方向に上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0039】
(2)本実施形態の培養システム1では、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0040】
(3)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15が供給するガスの量を定期的に高める。ガスの流量が高いとき、螺旋状スクリュー33に付着又は堆積していた藻類が除去される。すなわち、本実施形態の培養システム1によれば、螺旋状スクリュー33への藻類の付着又は堆積を防止できる。
【0041】
(4)本実施形態の培養システム1では、誘導部材29を回転させることができる。そのことにより、螺旋状スクリュー33への藻類の付着又は堆積を防止できる。
(5)本実施形態の培養システム1では、アルキメデスの螺旋の形状を有する螺旋状スクリュー33を回転させることにより、培地を上方に汲み上げることができる。そのことにより、螺旋状スクリュー33が回転しない場合よりも、ガス流量を少なくすることができる。
<第3の実施形態>
1.培養システム1及びエアリフト5の構成
本実施形態における培養システム1の構成は、基本的には、前記第1の実施形態と同様であるが、エアリフト5の構成において相違する。以下では、その相違点を中心に、図6及び図7に基づいて説明する。図6は、エアリフト5の構成を表す斜視図であり、図7は、後述するガス保持部材37を表す断面図である。
【0042】
エアリフト5は、本体部13内に、図6、図7に示すような、ガス保持部材37を複数備えている。ガス保持部材37は、傘状の形状を有し、その傘の内側は、ガスを保持可能な凹部37aとなっている。ガス保持部材37は、傘における頂点に該当する部分で、本体部13の内壁に対し、回動軸39を介して取り付けられている。回動軸39が設けられている位置は、ガス保持部材37のうち、凹部37aが形成されている側とは反対側であり、ガス保持部材37の重心から外れた位置である。
【0043】
ガス保持部材37は、回動軸39において回動することにより、本体部13に対する向きを変えることができる。その向きには、図7(a)に示すように、凹部37aが下向きに開口した向き(以下、向きDとする)と、図7(b)に示すように、凹部37aが上向きに開口した向き(以下、向きUとする)とがある。ガス保持部材37が向きDの状態のとき、ガス供給配管15が供給するガスの気泡は、凹部37aに入り、そこで保持される。
【0044】
凹部37aに保持されているガスの量が所定量以下の場合は、ガス保持部材37の自重により、ガス保持部材37の向きは、向きDのまま維持される。一方、凹部37aで保持するガスの量が所定量を超えると、そのガスの浮力により、ガス保持部材37は、図7(a)における矢印Xの方向に回動し、ガス保持部材37の向きは、向きUとなる。向きUとなったガス保持部材37は、図7(b)に示すように、それまで凹部37aで保持していたガスを上方に放出し、浮力を失うので、図7(b)における矢印Yの方向に回動し、向きDの状態に戻る。
【0045】
2.培養システム1及びエアリフト5及びが奏する作用効果
(1)本実施形態のエアリフト5は、ガス保持部材37を備える。ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、向きDの状態にある、ガス保持部材37の凹部37aに保持される。凹部37aで保持するガスの量が所定量を超えると、そのガスの浮力により、ガス保持部材37の向きは、向きUとなり、それまで凹部37aで保持していた気泡を上方に放出する。
【0046】
ガス供給配管15から供給されたガスの気泡は、上記の段階を踏んで上昇するため、ガス保持部材37がなく、気泡がすぐに上昇する場合に比べて、気泡と培地との接触時間が増え、培地に二酸化炭素を効率良く溶解させることができる。
【0047】
(2)本実施形態の培養システム1では、特許文献1の技術のように、大量の気泡を生じさせる必要がないため、光合成の阻害や、藻類の分離、浮上などの問題が生じない。また、特許文献2の技術のような、加圧機構を設ける必要がない。
【0048】
(3)本実施形態の培養システム1では、ガス供給配管15が供給するガスの量を定期的に高める。ガスの流量が高いとき、ガス保持部材37に付着又は堆積していた藻類が除去される。すなわち、本実施形態の培養システム1によれば、ガス保持部材37への藻類の付着又は堆積を防止できる。
【0049】
(4)本実施形態の培養システム1では、ガス保持部材37が回動する。そのことにより、ガス保持部材37への藻類の付着又は堆積を防止できる。
<変形例1>
前記各実施形態の培養システム1において、エアリフト5の位置は、図8、図9に示すものであってもよい。図8は、培養システム1の全体構成を表す平面図であり、図9は、図8におけるB方向から見たときの、培養システム1の側面図である。なお、図9において、誘導部材23、誘導部材29、ガス保持部材37等は省略している。
【0050】
培養システム1は、培養槽3とは別の容器41を備えている。容器41にも、培養槽3と同様に培地が入れられている。培養槽3と容器41とは、連結管43により連通している。エアリフト5の本体部13は、培養槽3ではなく、容器41に設けられている。エアリフト5は、容器41から本体部13内に流入した培地に、二酸化炭素を溶解させる。エアリフト5における出口配管21の出口21aは、培養槽3の内部に位置する。よって、本体部13内で二酸化炭素を溶解した培地は、培養槽3に放出される。なお、容器41と培養槽3とは、連結管43により連通しているので、培養槽3内の培地は、容器41に流入し、そこで、上記のように二酸化炭素を溶解させる。
【0051】
<変形例2>
前記各実施形態の培養システム1において、エアリフト5は、図10に示すように、紫外線ランプ(紫外線照射手段)45を備えていてもよい。なお、図10において、誘導部材23、誘導部材29、ガス保持部材37等は省略している。
【0052】
紫外線ランプ45は、本体部13の上面板13aにおける下側に設置されており、本体部13内の培地に、紫外線を照射することができる。紫外線を照射することにより、藻類を捕食する原生動物の培地への混入を防止することができる。
【0053】
<変形例3>
前記第1、又は第2の実施形態において、図11に示すように、ガス供給配管15が、本体部13の中心軸を通るようにしてもよい。そして、前記第1の実施形態の場合は、邪魔板27a、27b、27c、27d、27e、27fを、軸状部材25ではなく、ガス供給配管15に取り付けることができる。また、前記第2の実施形態の場合は、螺旋状スクリュー33を、柱状部材31ではなく、ガス供給配管15に取り付けることができる。
【0054】
<変形例4>
前記第1の実施形態において、エアリフト5は、図12に示すものであってもよい。このエアリフト5は、本体部13の下方に、底板47を備えており、底板47は、連結板49により本体部13に連結されている。軸状部材25は、本体部13の上面板13aと、底板47との両方において、回動可能に軸支されている。このような形態とすることにより、軸状部材25の位置がぶれにくくなる。なお、培地は、本体部13と底板47との間を通り、本体部13内に導入される。
【0055】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記各実施形態において、ガス供給配管15に加えて、又はガス供給配管15に代えて、本体部13の側面にガスの噴出口を設け、その噴出口から、本体部13の内側に向けて、ガスを噴出すようにしてもよい。そのガスの噴出しは、常時行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。側面からのガスの噴出しを行うことにより、本体部13の内壁に付着又は堆積した藻類を除去することができる。
【0056】
また、前記第1の実施形態において、邪魔板の数は任意に設定でき、例えば、1、2、3、4、5、7、8・・・とすることができる。
また、前記第3の実施形態において、ガス保持部材37の数は特に限定されず、任意に設定できる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・培養システム、3・・・培養槽、5・・・エアリフト、7・・・平底容器、
9・・・仕切り壁、11・・・パドル、13・・・本体部、13a・・・上面、
15・・・ガス供給配管、15a・・・供給口、17・・・培地の入口、
19・・・培地の出口、21・・・出口配管、21a・・・出口、23・・・誘導部材、
25・・・軸状部材、27a、27b、27c、27d、27e、27f・・・邪魔板、
29・・・誘導部材、31・・・柱状部材、33・・・螺旋状スクリュー、
35・・・支持棒、37・・・ガス保持部材、37a・・・凹部、39・・・回動軸、
41・・・容器、43・・・連結管、45・・・紫外線ランプ、47・・・底板、
49・・・連結板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフトであって、
中空の本体部と、
前記本体部に設けられた前記培地の入口と、
前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、
前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、
前記本体部内において、前記培地中を進む前記ガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とするエアリフト。
【請求項2】
前記誘導部材は、軸状部材と、前記軸状部材に取り付けられた板状部材とを有することを特徴とする請求項1記載のエアリフト。
【請求項3】
前記誘導部材は、螺旋状に屈曲した、前記気泡の経路を有する部材であることを特徴とする請求項1記載のエアリフト。
【請求項4】
前記誘導部材を駆動する駆動手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアリフト。
【請求項5】
培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフトであって、
中空の本体部と、
前記本体部に設けられた前記培地の入口と、
前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、
前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、
前記ガス供給手段により供給されるガスを保持可能な凹部を有するガス保持部材と、
を備え、
前記ガス保持部材は、前記本体部に対し、向きを変えることができるように取り付けられており、前記向きは、前記凹部で保持する前記ガスの量が所定量以下の場合は、前記ガス保持部材の自重により、前記凹部で前記ガスを保持可能な向きとなり、前記凹部で保持する前記ガスの量が前記所定量を超える場合は、保持する前記ガスの浮力により、保持していた前記ガスを上方に開放する向きとなることを特徴とするエアリフト。
【請求項6】
前記ガス供給手段は、前記ガスの供給量を変動させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアリフト。
【請求項7】
前記本体部内に紫外線を照射する紫外線照射手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエアリフト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアリフトと、培養槽とを備える培養システム。
【請求項1】
培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフトであって、
中空の本体部と、
前記本体部に設けられた前記培地の入口と、
前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、
前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、
前記本体部内において、前記培地中を進む前記ガスの気泡を、鉛直方向とは異なる方向に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とするエアリフト。
【請求項2】
前記誘導部材は、軸状部材と、前記軸状部材に取り付けられた板状部材とを有することを特徴とする請求項1記載のエアリフト。
【請求項3】
前記誘導部材は、螺旋状に屈曲した、前記気泡の経路を有する部材であることを特徴とする請求項1記載のエアリフト。
【請求項4】
前記誘導部材を駆動する駆動手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアリフト。
【請求項5】
培地に二酸化炭素を溶解させるために用いられるエアリフトであって、
中空の本体部と、
前記本体部に設けられた前記培地の入口と、
前記本体部のうち、前記入口よりも上方に設けられた、前記培地の出口と、
前記本体部内に、二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、
前記ガス供給手段により供給されるガスを保持可能な凹部を有するガス保持部材と、
を備え、
前記ガス保持部材は、前記本体部に対し、向きを変えることができるように取り付けられており、前記向きは、前記凹部で保持する前記ガスの量が所定量以下の場合は、前記ガス保持部材の自重により、前記凹部で前記ガスを保持可能な向きとなり、前記凹部で保持する前記ガスの量が前記所定量を超える場合は、保持する前記ガスの浮力により、保持していた前記ガスを上方に開放する向きとなることを特徴とするエアリフト。
【請求項6】
前記ガス供給手段は、前記ガスの供給量を変動させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアリフト。
【請求項7】
前記本体部内に紫外線を照射する紫外線照射手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のエアリフト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエアリフトと、培養槽とを備える培養システム。
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−249608(P2012−249608A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126475(P2011−126475)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、農林水産省、革新的なCO2高吸収バイオマスの利用技術の開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、農林水産省、革新的なCO2高吸収バイオマスの利用技術の開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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