説明

エアーフィルタ装置

【課題】目づまりの発生を防止することができ、耐久性に優れたエアーフィルタ装置を提供すること。
【解決手段】空気の流入側と流出側の両面にそれぞれ配置された第1と第2の通気性のコア部材1,2と、前記第1と第2のコア部材1,2間にそれぞれ配置されて、前記第1と第2のコア部材間を空気の流入側から流出側に向かって複数の空間部に分離し、通気性の隔壁として機能する中間コア部材3,4と、前記複数の中間コア部材により形成された各空間部内にそれぞれ収容されたフィルタ部材9a〜9eとが具備されることでエアーフィルタ装置が構成されている。前記第1のコア部材1と、これに隣接する前記中間コア部材3とにより形成された空間部内には、ガラス繊維をプリーツ加工してなるフィルタ部材9aが収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気中に含まれる例えばオイルミストもしくは水溶性のミストなどを効率良く捕獲することができる耐久性に優れたエアーフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエアーコンプレッサなどにより圧縮された空気中には、前記コンプレッサを潤滑するためのオイルがミスト状に含まれる場合が多く、特にスクリュー型のエアーコンプレッサにおいては、その傾向が顕著である。また前記したエアーコンプレッサにより圧縮された空気に限らず、製造工場などにおける工作機械や洗浄槽、その他種々の機械装置からはオイルミストや水溶性のミストなどが多量に発生し、これが空気中に浮遊して工場内の環境悪化を招くこともある。
【0003】
従来より前記したオイルや水溶性ミストを含む空気より、これを除去するためエアーフィルタ装置が数多く提案されている。最も代表的なものとしては、フィルタ部材を複数層に重ね合わせた構成のエアーフィルタ装置が提案されており、これは例えば特許文献1に開示されている。また、フィルタ部材を複数層に重ね合わせると共に、フィルタ部材に例えばオイルミストが付着して濾過効率が低下した場合には、オイルをフィルタ部材から絞り取るフィルタ圧縮機を備えた装置も提案されており、これは例えば特許文献2に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−96176号公報
【特許文献2】特開2001−62221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した特許文献1に開示されたエアーフィルタ装置においては、前記したとおり、フィルタ部材を複数層に重ね合わせた比較的単純な構成にされているものであり、したがって、フィルタ部材によりオイルや水溶性ミストを吸着し飽和に近い状態に達した場合には、当然ながら濾過効率が低下する。
【0006】
すなわち、フィルタ部材がただちに目づまりを起こし、耐久性に乏しい。このために、頻繁に前記フィルタ部材を含むユニットを交換する必要があり、メンテナンスの問題と省資源化を図る点で問題を抱えている。
【0007】
一方、前記した特許文献2に開示されたエアーフィルタ装置においては、フィルタ部材がある程度までミストを吸着した場合には、圧縮機を駆動させて捕獲したオイル等をフィルタ部材から絞り取ることができるので、特許文献1に開示された問題点の一部については改善することができる。
【0008】
しかしながら、前記フィルタ部材は前記圧縮機により圧縮されるために、フィルタ部材を構成する繊維等の素材に潰れが発生したままとなり、通気率が低下するという問題が発生する。また、フィルタ部材を圧縮する圧縮機を備えることから、付帯設備が大掛かりとなりコストが無視できる一部の特殊な装置への採用に限られることになる。
【0009】
この発明は、前記したエアーフィルタ装置における問題点を解消するためになされたものであり、捕獲した例えばオイルを積極的に滴下させる構造を持たせることで、目づまりの発生を防止すると共に、コストの高騰を招くことなく耐久性に優れたエアーフィルタ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかるエアーフィルタ装置は、ミスト状物質を含む空気を、フィルタ部材を介して濾過するエアーフィルタ装置であって、前記空気の流入側と流出側の両面にそれぞれ配置された第1と第2の通気性のコア部材と、前記第1と第2のコア部材間にそれぞれ配置されて、前記第1と第2のコア部材間を空気の流入側から流出側に向かって複数の空間部に分離すると共に、それぞれが通気性の隔壁を構成する複数の中間コア部材と、前記第1と第2のコア部材と前記複数の中間コア部材とにより形成された各空間部内にそれぞれ収容されたフィルタ部材とが具備され、前記第1のコア部材と、これに隣接する前記中間コア部材とにより形成された空間部内には、プリーツ加工してなるフィルタ部材が収容されている点に特徴を有する。
【0011】
この場合、プリーツ加工してなる前記フィルタ部材は、ガラス繊維により構成されていることが望ましい。また、好ましくは前記第1と第2のコア部材は、それぞれ外周面と内周面を構成する円筒体状に成形されると共に、前記複数の中間コア部材も円筒体状に成形されて前記第1と第2のコア部材の間に同心円状に配置され、前記第1のコア部材の外周面が前記空気の流入側を構成し、前記第2のコア部材の内周面が前記空気の流出側を構成した形態になされる。
【0012】
加えて、前記第1のコア部材とこれに隣接する前記中間コア部材とにより形成された空気の流入側から流出側に向かう空間部の幅が、他の空間部の幅よりも大きく構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
前記した構成のエアーフィルタ装置によると、空気の流入側を構成する通気性の第1コア部材と、空気の流出側を構成する通気性の第2コア部材の間で、通気性の中間コア部材が隔壁状に配置されて、空気の流入側から流出側に向かって複数の空間部に分離するように構成されているので、前記複数の空間部にそれぞれ収容されるフィルタ部材は、互いに干渉なしにフィルタ作用を発揮することができる。
【0014】
すなわち、空気が吸い込まれる上流側のフィルタ部材が、ミストの吸着によりたとえ通気率が低下しても、空気流に押されて内側のフィルタ部材が圧迫され、繊維密度が高くなるのを防ぐことができる。したがって、前記圧迫作用により内側のフィルタ部材がフィルタ効果を低下させるという問題を回避することができる。
【0015】
また、隔壁を構成する通気性の中間コア部材は、フィルタ部材が吸着したミスト状物質、例えばオイルを重力方向に誘導するように機能する。したがって、吸着されたオイルは前記中間コア部材を介して滴下させることで回収することができる。換言すれば、捕獲したオイルを前記中間コア部材を介在させて重力方向に誘導させることで、各フィルタ部材の濾過機能を長期にわたって維持させることが可能となる。
【0016】
加えて、前記第1のコア部材とこれに隣接する前記中間コア部材とにより形成された空間部には、ガラス繊維をプリーツ加工してなるフィルタ部材が収容されるので、実質的にフィルタ部材の表面積を大きく取ることができる。したがって、最も目づまりが発生し易い空気流入側の最初のフィルタ部材において、目づまりの度合いを低減させることができ、耐久性に優れたエアーフィルタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明にかかるエアーフィルタ装置の好ましい実施の形態について、図に基づいて説明する。図1および図2はこの発明にかかるエアーフィルタ装置をそれぞれ断面図で示したものである。すなわち、図1は図2におけるA−A線より矢印方向に視た状態の断面図であり、図2は図1におけるB−B線より矢印方向に視た状態の断面図である。
【0018】
図1および図2に示したように、この実施の形態によるエアーフィルタ装置は、全体構成が円筒状に形成されており、図2に白抜きの矢印で示したように、その外周面が空気の流入側を構成し、内周面が空気の流出側を構成している。すなわち、この実施の形態においては円筒状に形成された外周面側から空気が流入し、後述するフィルタ部材で濾過された空気は、内周面側に流出して図2に示すように内筒部を例えば上方に導出されるように構成されている。
【0019】
図3は、図2に示すC部分を拡大した断面図で示したものであり、前した記空気の流入側と流出側の両面にはそれぞれ円筒状に形成された第1の通気性のコア部材1および第2の通気性のコア部材2が具備されている。前記第1と第2のコア部材は、エアーフィルタ装置の外郭を構成するものであり、それぞれ金属製素材を円筒状に形成させると共に、その全面にわたって多数の通気孔が配列されている。なお、以下においては前記第1のコア部材1を外側のコア部材、前記第2のコア部材2を内側のコア部材と称呼することもある。
【0020】
前記第1と第2のコア部材1,2間には複数の中間コア部材、すなわちこの実施の形態においては2つの中間コア部材3,4が、第1と第2のコア部材と同心円状となるように配置されている。これらの中間コア部材3,4も、第1と第2のコア部材と同様に金属製素材を円筒状に形成させると共に、その全面にわたって多数の通気孔が配列されている。
【0021】
したがって、前記中間コア部材3,4は、前記した外側のコア部材1と内側のコア部材2との間を、空気の流入側から流出側に向かって複数の空間部に分離し、それぞれが通気性の隔壁として機能する。
【0022】
なお、この実施の形態においては、外側のコア部材1とこれに隣接する前記中間コア部材3とにより形成された空気の流入側から流出側に向かう空間部の幅が、他の空間部の幅よりも大きく構成されている。そして、前記第1と第2のコア部材1,2および複数の中間コア部材3,4は、その各端部においてホルダー部材10によって保持され、機械的に同心円状を保持するように構成されている。
【0023】
また、前記ホルダー部材10の一部にはガスケット11が取り付けられており、前記ガスケット11は、このエアーフィルタ装置を図示せぬ例えばオイル回収器などの機器に装着した場合において、空気もれが発生しないように作用する。
【0024】
前記第1と第2のコア部材1,2およびその間に配置された中間コア部材3,4により形成された空間部には、それぞれフィルタ部材が配置されている。先ず、前記した外側のコア部材1と、これに隣接する前記中間コア部材3とにより形成された幅広の空間部内には、ガラス繊維をプリーツ加工してなるフィルタ部材9aが収容されている。
【0025】
このフィルタ部材9aは、ガラス繊維をマット状に形成し、これをプリーツ加工したものが用いられており、プリーツ加工により形成された蛇腹状に隣接する折り目が、図1に示すように外側のコア部材1と中間コア部材3との間において交互に接するようにして、空間部に沿ってリング状に配置されている。
【0026】
これにより、前記した発明の効果の欄に記載したとおり、実質的にフィルタ部材の表面積を大きく取ることができ、最も目づまりがし易い空気流入側の最初のフィルタ部材において、目づまりの発生度合いを低減させることができ、耐久性に優れたエアーフィルタ装置を提供することができる。特に前記フィルタ部材9aがガラス繊維である場合には、低抵抗であるため、効率が良く、また圧縮され難く耐久性に優れた特性を生かすことができる。
【0027】
また、図3に示すように、前記中間コア部材3と4の間には、ネット状に形成された円筒状の網目部材5を中央に介してガラス繊維をマット状に形成したフィルタ部材9b,9cが配置されている。なお、前記した中間コア部材4の外周には前記網目部材5と同様の構成の網目部材6が、中間コア部材4を巻回するようにして配置されている。
【0028】
さらに、前記した中間コア部材4と内側のコア部材2との間には、前記網目部材5と同様の構成の網目部材7を中央に介して不織布をマット状に形成したフィルタ部材9d,9eが配置されている。なお、前記内側のコア部材2の外周には前記網目部材5と同様の構成よる網目部材8が、内側のコア部材2を巻回するようにして配置されている。
【0029】
この実施の形態によるエアーフィルタ装置によると、外側コア部材1と内側コア部材2との間において、中間コア部材3,4が配置されているので、前記発明の効果の欄に記載したとおり、吸入空気の上流側のフィルタ部材が、ミストの吸着によりたとえ通気率が低下しても、空気流に押されて内側のフィルタ部材が圧迫されて繊維密度が高くなるのを防ぐことができ、前記圧迫作用により内側のフィルタ部材がフィルタ効果を低下させるという問題を回避することができる。
【0030】
さらに、前記中間コア部材3,4に加えて網目部材5〜8が各フィルタ部材の間に介在されることにより、各フィルタ部材により捕獲したミスト状物質、例えはオイルを前記中間コア部材ならびに網目部材5〜8を介在させて重力方向に誘導させることができ、各フィルタ部材の濾過機能を長期にわたって維持させることができると共に、前記オイルの回収効率をより高めることが可能となる。
【0031】
図4は、前記したエアーフィルタ装置をエアーコンプレッサのオイル回収器(セパレータ)に用いた例を模式的に示したものである。符号21で示すブロックは、エアーコンプレッサ、例えばスクリュー型コンプレッサを示している。このコンプレッサ21はモータ22等の原動機により回転駆動され、吸入空気Ai1を圧縮空気Ai2とし、この圧縮空気Ai2はオイル回収器23に導入される。
【0032】
前記オイル回収器23内には、障壁板(通称、じゃま板とも呼ばれている。)23aが配置されており、コンプレッサ21より送られる圧縮空気Ai2に含まれるオイルミストを、まずは前記障壁板23aによって回収するように作用する。また、前記オイル回収器23内には符号24で示すこの発明にかかるエアーフィルタ装置が装着されており、このエアーフィルタ装置により二次的なオイルの回収が実行される。そして、エアーフィルタ装置24を介した圧縮空気Ai2は、オイルミストが濾過された圧搾空気Ai3として、オイル回収器23より吐出される。
【0033】
前記オイル回収器23により回収されたオイルは、必要に応じてオイルクーラー25を介して、エアーコンプレッサ21の軸受け21aゃ、エアーコンプレッサ21の本体内に供給される。また、前記エアーフィルタ装置24により回収されたオイルは、エアーコンプレッサ21の吸入空気Ai1の吸入口に戻すように構成されている。
【0034】
以上説明した図4は、この発明にかかるエアーフィルタ装置の一つの採用例を示すものであり、この発明にかかるエアーフィルタ装置は、前記したオイル回収器にかかわらず、例えば水溶性ミスト等を含む空気のフィルタ装置にも採用することもできる。すなわち、水溶性ミスト等を含む空気のフィルタ装置に採用しても、先に説明した発明の効果の欄に記載した独自の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、前記した実施の形態におけるエアーフィルタ装置は、全体が円筒状に構成されているが、これは平面状に形成されて、一方の面が空気の流入側を構成し、他方の面が空気の流出側を構成するエアーフィルタ装置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明にかかるエアーフィルタ装置を図2に示すA−Aより矢印方向に視た状態の断面図である。
【図2】同じくエアーフィルタ装置を図1に示すB−Bより矢印方向に視た状態の断面図である。
【図3】図2におけるC部分を拡大して示した断面図である。
【図4】この発明にかかるエアーフィルタ装置の採用例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1 第1コア部材(外側コア部材)
2 第2コア部材(内側コア部材)
3,4 中間コア部材
5〜8 網目部材5
9a〜9e フィルタ部材
10 ホルダー部材
11 ガスケット
21 エアーコンプレッサ
22 モータ
23 オイル回収器
24 エアーフィルタ装置
25 オイルクーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスト状物質を含む空気を、フィルタ部材を介して濾過するエアーフィルタ装置であって、前記空気の流入側と流出側の両面にそれぞれ配置された第1と第2の通気性のコア部材と、前記第1と第2のコア部材間にそれぞれ配置されて、前記第1と第2のコア部材間を空気の流入側から流出側に向かって複数の空間部に分離すると共に、それぞれが通気性の隔壁を構成する複数の中間コア部材と、前記第1と第2のコア部材と前記複数の中間コア部材とにより形成された各空間部内にそれぞれ収容されたフィルタ部材とが具備され、
前記第1のコア部材と、これに隣接する前記中間コア部材とにより形成された空間部内には、プリーツ加工してなるフィルタ部材が収容されていることを特徴とするエアーフィルタ装置。
【請求項2】
プリーツ加工してなる前記フィルタ部材は、ガラス繊維により構成されていることを特徴とする請求項1に記載されたエアーフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1と第2のコア部材は、それぞれ外周面と内周面を構成する円筒体状に成形されると共に、前記複数の中間コア部材も円筒体状に成形されて前記第1と第2のコア部材の間に同心円状に配置され、前記第1のコア部材の外周面が前記空気の流入側を構成し、前記第2のコア部材の内周面が前記空気の流出側を構成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたエアーフィルタ装置。
【請求項4】
前記第1のコア部材とこれに隣接する前記中間コア部材とにより形成された空気の流入側から流出側に向かう空間部の幅が、他の空間部の幅よりも大きく構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたエアーフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−94578(P2010−94578A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265226(P2008−265226)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(593152339)大幸機器株式会社 (1)
【Fターム(参考)】