説明

エア加工工具用集塵機

【課題】狭い設置スペースで効率良く長時間に亘って安定した集塵能力を発揮するエア加工工具用集塵機を提供する。
【解決手段】エアコンプレッサ5から供給された圧縮空気Aを取り込むエア導入通路33と、エア加工工具3の加工部位から供給された粉塵Dを取り込む粉塵回収経路35とが形成されている吸引手段21と、上記吸引手段21の下方に配置され、内部に粉塵回収用の水Wが貯えられている第1集塵槽37と、第1集塵槽に供給された粉塵のうち第1集塵槽で回収できなかった粉塵を上方に導く複数の仕切り壁によって屈曲配置されている連絡通路が形成され内部に粉塵回収用の水Wと第1フィルタ53とが設けられている第2集塵槽51と、内部に粉塵回収用の第2フィルタ39が配設されるとともに側壁部に外部と連通する窓部43が形成されている第3集塵槽45と、一端が上記吸引手段の取付け端部に接続され他端が上記第1集塵槽内に至るように粉塵回収方向の下流に向けて延設されている延長管路57を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔機や削岩機等のエア加工工具使用時に発生する粉塵を効率良く回収することができるエア加工工具用集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
舗装道路やコンクリート構造物等に対して穿孔作業等を行う場合には、発生した粉塵から作業者を守るために当該粉塵の飛散を防止するために集塵機が使用されている。
そして、従来の集塵機としては、発電機等を電源として駆動されるモータと、該モータによって駆動されるブロワ等を備える電動吸引式の集塵機が多く使用されていた。
【0003】
しかし、上記電動吸引式の集塵機は吸引した粉塵を直接フィルタによって捕捉する構造であるため目詰まりし易く、処理能力に劣るという欠点を有している。したがって大量の粉塵が出るコンクリートアンカー工事等では、大型の電動吸引式の集塵機を使用するか小型の電動吸引式の集塵機を複数台並行的に使用することで必要な処理能力を確保することになる。
【0004】
また、上記発電機等の電源を必要としないエア加工工具の排気圧を利用したボックス式の集塵機が下記の特許文献1に示すように開発されている。そして、この集塵機には取出し蓋が設けられており、該取出し蓋を開けることによって内部に溜った粉塵とフィルタを外部に取り出して、フィルタのクリーニングと交換ができるようになっている。
【0005】
また、ボックス式の集塵機を2台並設して、これらの集塵機を中継ホースによって直列的に接続した構造の集塵機も下記の特許文献2に示すように開発されている。そして、2台設けられるそれぞれの集塵機には流体が充填されており、該流体の上面には膜状の濾材が設けられている。
また、上流側の集塵機には仕切り板が設けられており、集塵機内に進入した粉塵は、上記流体と濾材と仕切り板とによって捕捉され、更に、直列的に接続されている集塵機の二重構造によって粉塵の外部への飛散を防止した状態で確実に捕捉できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−190746号公報
【特許文献2】特許第3552053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に係る集塵機の場合には、集塵機の動力としてエア加工工具の排気圧を利用しているためエア加工工具の脈動が伝わって集塵能力にムラが出るという問題が生ずる。また、直接フィルタに捕捉させる構造であるため粉塵の捕捉能力に限界があり、フィルタの目詰まりが発生し易いという問題が生ずる。
一方、上述した特許文献2に係る集塵機の場合には、微細な粉塵が気泡中に入り、流体中に溶け出すことなく、空気中に出てしまって外部に放出されてしまうという問題が生ずる。また、2台設けられるボックス式の集塵機が横並びに並設される構造であるため、作業スペースが広く取れない作業環境では使用できず、集塵機が別体に存在しているため持ち運びの便や収納性も悪いという問題が生ずる。
【0008】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、粉塵の捕捉能力に優れ、ムラのない安定した集塵能力を長時間に亘って発揮できるコンパクトで持ち運び及びメンテナンスが容易なエア加工工具用集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1によるエア加工工具用集塵機は、エアコンプレッサから供給された圧縮空気を取り込むエア導入通路とエア加工工具の加工部位から供給された粉塵を該圧縮空気の流れを利用して吸引し取り込む粉塵回収経路とが形成されている吸引手段と、上記吸引手段の下方に配置され内部に粉塵回収用の水が貯えられている第1集塵槽と、上記第1集塵槽の上方に段積みされ第1集塵槽に供給された粉塵のうち第1集塵槽で回収できなかった粉塵を上方に導く複数の仕切り壁によって屈曲配置されている連絡通路が形成され内部に粉塵回収用の水と第1フィルタとが設けられている第2集塵槽と、上記第2集塵槽の上方に段積みされ内部に粉塵回収用の第2フィルタが配設されるとともに側壁部に外部と連通する窓部が形成されている第3集塵槽と、一端が上記吸引手段の取付け端部に接続され他端が上記第1集塵槽内に至るように粉塵回収方向の下流に向けて延設されている延長管路と、を具備したことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2によるエア加工工具用集塵機は、請求項1記載のエア加工工具用集塵機において、上記第1集塵槽には、内部に貯えられている水を上記圧縮空気の流れを利用して吸引し、延長管路に供給する循環ホースが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3によるエア加工工具用集塵機は、請求項1または2記載のエア加工工具用集塵機において、上記第1フィルタの上方には、押さえ蓋が設けられ、該押さえ蓋の上部を連絡通路としていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4によるエア加工工具用集塵機は、請求項1〜3のいずれかに記載のエア加工工具用集塵機において、上記第1集塵槽と第2集塵槽間の連結または上記第2集塵槽と第3集塵槽間の連結は、引掛け式の連結金具を使用して行われていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5によるエア加工工具用集塵機は、請求項1〜4のいずれかに記載のエア加工工具用集塵機において、上記吸引手段に供給される圧縮空気は、エア加工工具に供給される圧縮空気の一部を分配器によって分配させたものを使用していることを特徴とするものである。
【0014】
そして、上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、駆動源としてエアコンプレッサから供給される圧縮空気を使用したから、発電機等の電源が不要になる。また、エア加工工具の排気圧を使用した場合に問題になるエア圧の脈動が生じないからムラのない安定した集塵能力が発揮される。
【0015】
上記吸引手段の取付け端部に延長管路を接続することにより、吸引手段から取り込んだ圧縮空気と粉塵を最下段の第1集塵槽に導き、その後第2集塵槽、第3集塵槽の順で粉塵の回収を実行して、最上段の第3集塵槽の窓部から粉塵が除去されたエアを集塵機の外部に排気することが可能になる。
【0016】
まず、第1集塵槽では貯えられている水の中に粉塵が勢いよく投入されるから、比重の重い大きめの粉塵は、沈降して第1集塵槽の底部に堆積する。
【0017】
また、上記第1集塵槽によって回収されなかった微細な粉塵は、第2集塵槽に至る。第2集塵槽では、供給された粉塵のすべてが水中に浸っている第1フィルタを通るように形成され、水中に存在している気泡が割れて粉塵と水との混合が促進され、更に第1フィルタに捕捉されることによって回収される。
【0018】
さらに、第3集塵槽では、第2フィルタによって上記微細な粉塵が捕捉され、粉塵が取り除かれたエアは、第3集塵槽の窓部から外部に向けて排気される。
【0019】
したがって、本発明では、第1集塵槽と第1集塵槽と第3集塵槽とからなる広い集塵空間が形成されているから、長時間に亘って継続して大量の粉塵を回収することができる。
また、上記第1集塵槽と第2集塵槽と第3集塵槽は段積み状態で配設されているから設置スペースが小さくて済み、作業スペースが広く取れない作業環境でも使用することが可能になる。
【0020】
また、上記第1集塵槽に対して内部に貯えられている水を上記圧縮空気の流れを利用して吸引し、延長管路に供給する循環ホースを設けた場合には、第1集塵槽内の水が吸引されて粉塵と混合されるから、水に溶け込ませることができる。これに伴なって第1集塵槽での粉塵の回収量や集塵効率が向上する。
【0021】
また、上記第1フィルタの上方に該第1フィルタの浮き上りを規制する押さえ蓋を設けた場合には、第1フィルタの浮き上りを防止するとともに水撥ねを防止することができる。
【0022】
また、上記第1集塵槽と第2集塵槽間の連結または上記第2集塵槽と第3集塵槽間の連結を引掛け式の連結金具を使用して行った場合には、これらの集塵槽間の連結と連結解除をワンタッチで切り替えることができる。
そして、複数の集塵槽を連結した状態では、複数の集塵槽を一体で持ち運びすることができ、連結解除した状態では、集塵槽ごとに分割して回収した粉塵を取り出したり、洗浄することが可能になる。
【0023】
また、上記吸引手段に供給される圧縮空気として、エア加工工具に供給される圧縮空気の一部を分配器によって分配させたものを使用した場合には、エア加工工具を駆動するためのエアコンプレッサを集塵機の駆動源としても利用できるようになり、設備コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のエア加工工具用集塵機によると、設置スペースが小さくて済むコンパクトな筺体で大量の粉塵を捕捉することが可能になり、長時間に亘って安定した集塵能力が発揮されるようになる。
また、持ち運びが可能で簡単に分解できる構造であるため、取り扱いが容易で、メンテナンス性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機の使用形態の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具と分配器を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機の組立て状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機を分解した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機を示す正面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機を示す平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機の内部構造を示す図7中のA−A線における断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す図で、エア加工工具用集塵機の内部構造を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1〜図8に示す第1の実施の形態と、図9に示す第2の実施の形態と、を例にとって本発明を実施するための形態を説明する。
最初に図1、2に基づいて本発明のエア加工工具用集塵機1を使用して穿孔作業を行う場合を例にとって、エア加工工具の一例である穿孔機3と、エア加工工具用集塵機1と、エアコンプレッサ5と、分配器7と、集塵カバー9との接続状態と、複数基のエア加工工具用集塵機1を切り替えながら行うエア加工工具用集塵機1の使用形態について説明する。
【0027】
穿孔機3は、作業者Mが両手で握って操作する左右一対設けられるグリップ11と、エアコンプレッサ5から供給される圧縮空気Aを駆動源として動作する本体部13と、該本体部13の出力部に取り付けられて実際に穿孔作業を実行するロッド15とを備えることによって構成されている。
上記穿孔機3の本体部13には、分配器7を介してエアコンプレッサ5から延びる第1エアホース17が接続されており、更に、上記分配器7には上記第1エアホース17より小径の第2エアホース19が接続されていて、該第2エアホース19の先端は後述する本発明のエア加工工具用集塵機1における上端部に配設されている吸引手段21に対して接続されている。
【0028】
また、図1では、道路R脇に設置される構造物であるコンクリートブロックCに対してガイドレールG用のポールPを設置するために使用する穿孔Hを形成する穿孔作業に上記穿孔機3を使用している。
そして、穿孔機3の加工部位となるロッド15の先端部には、該ロッド15の先端部を覆うように筒状の集塵カバー9がセットされて穿孔作業を実行するように構成されている。
【0029】
上記集塵カバー9は、円筒状のカバー本体部23と、該カバー本体部23の下端部左右に外方に張り出すように設けられている一例として平面視矩形状のペダル25、25とを備えることによって構成されている。
また、上記カバー本体部23には後述する本発明のエア加工工具用集塵機1の吸引手段21に向けて延びる集塵ホース27を取り付けるための接続部29が設けられている。
【0030】
また、上記カバー本体部23の中心には、穿孔機3のロッド15を受け入れる受入れ孔31が軸方向に向けて貫通状態で設けられており、該受入れ孔31の途中から上記接続部29の中心を通る分岐経路が側方に向けて形成されている。
また、上記ペダル25、25は、穿孔作業中、作業者Mが足を乗せて集塵カバー9の姿勢や位置を安定させるために使用するものであるが、コンクリート構造物の壁面に穿孔Hを形成するような場合には、カバー本体部23からペダル25、25を取り外して穿孔作業を行うことができるようになっている。
【0031】
また、図2に示す使用形態では、本発明のエア加工工具用集塵機1は、二組用意されており、最初に使用したエア加工工具用集塵機1が回収した粉塵Dで一杯になって集塵能力が低下した時に、他の一組のエア加工工具用集塵機1’に取り替えて、該エア加工工具用集塵機1’の使用中に最初に使用したエア加工工具用集塵機1を分解洗浄しておき、次の使用に備えることができるように構成されている。
【0032】
(1)第1の実施の形態(図1〜図8参照)
本発明のエア加工工具用集塵機1は、上記エアコンプレッサ5から供給された圧縮空気Aを取り込むエア導入通路33と、エア加工工具3の加工部位から供給された粉塵Dを取り込む粉塵回収経路35とが形成されている吸引手段21と、上記吸引手段21の下方に配置され内部に粉塵回収用の水Wが貯えられている第1集塵槽37と、上記第1集塵槽37の上方に段積みされ第1集塵槽37に供給された粉塵Dのうち第1集塵槽37で回収できなかった粉塵Dを上方に導く複数の仕切り壁47によって屈曲配置されている連絡通路49が形成され該連絡通路49内に供給された粉塵Dのすべてが水中に浸っているフィルタを通るように内部に粉塵回収用の水Wと第1フィルタ53とが設けられている第2集塵槽51と、上記第2集塵槽51の上方に段積みされ内部に粉塵回収用の第2フィルタ39が配設されるとともに側壁部41に外部と連通する窓部43が形成されている第3集塵槽45と、一端が上記吸引手段21の取付け端部55に接続され他端が上記第1集塵槽37内に至るように粉塵回収方向の下流(図示の実施の形態では鉛直方向下方)に向けて延設されている延長管路57と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0033】
吸引手段21は、上述した集塵カバー9の接続部29から延びる集塵ホース27を取り付ける取付け部59と、該取付け部59を保持するホルダ部61との二部材によって構成されている。
上記取付け部59は、中央にフランジ部63を有する円筒状の部材でフランジ部63の上方で内径が大きく、フランジ部63の下方で縮径されて内径が小さくなっている。
【0034】
また、上記取付け部59のフランジ部63の下部は、ホルダ部61に内嵌する嵌合部59aになっており、該嵌合部59aの外周面には、気密性を保持するシールリング67を収容するためのリング状の凹部68と、エア導入通路33の一部を構成する同じくリング状の凹部状空間69とが形成されている。
そして、上記凹部状空間69の底面と嵌合部59の底面との間に図示のように下部が内側に傾斜した一例として4つのエア噴射孔71が円周方向に等間隔で配置されている。
【0035】
ホルダ部61は上部に上記取付け部59の嵌合部59aを受け入れる嵌合穴部73が形成されている太径の本体部74、下部に上述した延長管路57を取り付ける細径の取付け端部55を有する段差円筒状の部材である。
上記本体部74の外周面には、上述した分配器7から延びる第2エアホース19と接続するためのホースジョイント75が取り付けられている。
【0036】
また、上記吸引手段21には上下方向に貫通する粉塵回収経路35が形成されており、上記取付け部59の下方で上記エア噴射孔71の傾斜に合わせた勾配の下窄まり状の縮径部77を経て、より絞られた形で下方の延長管路57に接続されるようになっている。
そして、このようにして構成される吸引手段21は、図示のように最上段に位置する第3集塵槽45の開放された上面を塞ぐ一例として平面視矩形状の上蓋79の上面中心部に一体で取り付けられている。
【0037】
尚、上記上蓋79の上面には、エア加工工具用集塵機1Aを持ち運んだり、上蓋79を開閉する際に使用する把手81が取り付けられており、上記上蓋79の対向する一組の外側面には、後述する引掛け式の連結金具83の一部である係止片83aがそれぞれ取り付けられている。
【0038】
第1集塵槽37は、エア加工工具用集塵機1Aの最下段に位置する上面が開放された一例として角箱状の部材である。第1集塵槽37は他の集塵槽45、51よりも深底に形成されており、該深底の第1集塵槽37の底面には、一例として平面視矩形状のゴムマット85が敷設されている。
【0039】
第1集塵槽37の上部内側のコーナ部には、後述する仕切り蓋87を支承するための支承片88が4つ設けられている。また、第1集塵槽37の対向する一組の外側面には、第1集塵槽37を持ち運ぶ際に使用する把手89が取り付けられており、第1集塵槽37の4枚の外側面の上部には俗に「パッチン錠」と呼ばれている引掛け式の連結金具83の本体部83bが取り付けられている。
この他、第1集塵槽37の4枚の側壁部の上面には、集塵槽間の密閉性を高めるゴムシート86が貼設されている。
【0040】
仕切り蓋87は、上述する連絡通路49を形成する仕切り壁47の一部を構成する部材である。仕切り蓋87の大きさは、上記第1集塵槽37の内側面との間に連絡用開口91が形成されるように第1集塵槽37の開放された上面よりも小さめに設定されている。
そして、上記仕切り蓋87のコーナ部4ヶ所には、外方に張り出す係止片93が対角線上に延びる補強リブ94によって支持されて設けられている。尚、上記係止片93は、上述した第1集塵槽37の内側のコーナ部に設けられている支承片88上に載置されることによって、上記仕切り蓋87を水平に支持する役割を有している。
【0041】
また、上記仕切り蓋87の中心には、上下方向に貫通する延長管路57が取り付けられている。上記延長管路57の内部には絞り部97が設けられており、該絞り部97の下方には、一例として放射状の四方に延びる4個のホースジョイント98が円周方向に等間隔で設けられている。そして、上記それぞれのホースジョイント98には、上記第1集塵槽37内に貯えられる水Wを圧縮空気Aの流れを利用して吸引し延長管路57の内部に供給する循環ホース99が取り付けられている。上記循環ホース99は第1集塵槽内の水の循環によって延長管路57内で粉塵Dと水Wとを混合させ、水Wに溶け込ませる機能を発揮する。
【0042】
第2集塵槽51は、上記第1集塵槽37の上方に段積みされ、エア加工工具用集塵機1Aの中段に位置する下面中央部と上面外周部が開放された一例として角箱状の部材である。
上記第2集塵槽51の内部には、第2集塵槽51内に供給された粉塵Dのすべてが、水W中に浸っている第1フィルタ53を通るように複数の仕切り壁47によって屈曲配置さている連絡通路49が形成されている。
具体的には、第2集塵槽51の内部には、角筒状の貯水空間101が形成されており、該貯水空間101の同心円方向の中央部には、上記貯水空間101を内側板48と外側板52とで内外に隔てる空間を形成し、ここに角筒状の第1フィルタ53が起立姿勢で設けられており、内側板48の下部に孔部(開口部)50を設け、外側板52の上部と下部に孔部(開口部)54を設けることによって、第2集塵槽51内に供給された粉塵Dのすべてが水W中に浸っている第1フィルタ53を通るように構成されている。第1フィルタ53の材質は、一例としてモルトプレン(ポリエステル系ウレタンフォーム)を使用しているが、これに限らず、市販のスポンジ製品等を使用することもできる。上記内側板48は第2集塵槽51に固定されており、上記外側板52はその外周部に配置されている枠体であり、両者間に第1フィルタ53を押さえつけることで保持するとともに清掃等のために取り外しも可能となっている。また、第1フィルタ53は一例として内側板48と外側板52の全高の下半分に配置され、この部分が水W中に浸っている状態とする。そして、内側板48下部の孔部(開口部)50と、外側板52下部の孔部(開口部)54間で第2集塵槽51内に供給された粉塵Dがすべて第1フィルタ53を通過するようになっている。
【0043】
また、上記第2集塵槽51の上面には一例として平面視矩形状の押さえ蓋103が設置される。該押さえ蓋103は、内側板48上面に保持され、外側板52を押さえることにより上記第1フィルタ53の浮き上りを規制し、第1フィルタ53の位置ずれによる粉塵処理能力の低下を防止するための部材である。尚、上記押さえ蓋103の大きさは、上記第2集塵槽51の内側面との間に連絡用開口105が形成されるように第2集塵槽51の上端開口部よりも小さめであり、隙間を小さくすることにより貯水空間101内の水撥ねを防止するように外側板52よりも大きめに設定されている。これにより、空気が吹き上げて水Wが持ち上げられるのを跳ね返すことにより、貯水空間101内の水Wが減ってしまうことを防止する。
また、上記押さえ蓋103の上面の左右には、把手104、104が設けられており、該把手104は、上記押さえ蓋103の開閉の際に使用する他、後述する第3集塵槽45を上方に段積みした際に第3集塵槽45の底板46に当接させることで外側板52を上方から押さえ付けて上記の第1フィルタ53の浮き上りを防止し、第1フィルタ53の位置ずれによる粉塵の処理能力の低下を防止する役割を有している。
【0044】
この他、第2集塵槽51の下部のコーナ部には、上記第1集塵槽37上に段積みする際の案内となる平面視L字形断面のガイド片107が設けられており、第2集塵槽51の4枚の外側面における中央下部に上述した第1集塵槽37に設けられている引掛け式の連結金具83の本体部83bのローラ片と係止される4つの係止片83aが設けられている。
また、上記係止片83aの上方の第2集塵槽51における外側面の上部には引掛け式の連結金具83の本体部83bが設けられており、上記第2集塵槽51の4枚の側壁部の上面には、集塵槽間の密閉性を高めるゴムシート86が貼設されている。
【0045】
第3集塵槽45は、エア加工工具用集塵機1Aの最上段に位置する下面中央部と上面が開放された一例として角箱状の部材である。第3集塵槽45の底板46の中央部には一例として平面視矩形状に切り欠かれた連絡用開口109が形成されており、上記底板46の外周寄りの上面には、第2フィルタ39を側壁部41との間で挟持するための一例として丸棒状の保持ロッド110が1枚の側壁部41に対して2本ずつ計8本垂直に立ち上げられている。
そして、上記保持ロッド110と側壁部41との間に形成される平面視矩形枠状の空間に一例としてモルトプレン製の第2フィルタ39が収容され、該第2フィルタ39を通過した圧縮空気Aは側壁部41に形成されている上述した窓部(開口部)43から外部に排気されるようになっている。第2フィルタ39の材質は、一例としてモルトプレン(ポリエステル系ウレタンフォーム)を使用しているが、これに限らず、市販のスポンジ製品等を使用することもできる。
【0046】
この他、第3集塵槽45の4枚の側壁部41における外側面中央の下部には、上記第2集塵槽51の4枚の外壁面における上部に設けられている引掛け式の連結金具83における本体部83bのローラ片と係止される4つの係止片83aが設けられており、上記対向する一組の側壁部41における外側面中央の上部には上記上蓋79の対向する一組の外側面中央に設けられている係止片83aに係止される引掛け式の連結金具83における本体部83bが設けられている。
また、第3集塵槽45の四方のコーナ部には、上述した第2集塵槽51上に段積みする際の案内となる一例としてL字形断面のガイドを兼ねた脚部111が設けられており、上記第3集塵槽45の4枚の側壁部41の上面には、上蓋79との密閉性を高めるゴムシート86が貼設されている。
【0047】
次に、このようにして構成されるエア加工工具用集塵機1Aを使用して穿孔作業を行う場合の作業の流れとエア加工工具用集塵機1Aの作動態様について説明する。最初に図8に示すように、第1集塵槽37と第2集塵槽51の貯水空間101に所定量の水Wを充填し、第2集塵槽51に第1フィルタ53を、第3集塵槽45に第2フィルタ39をそれぞれセットし、第1集塵槽37、第2集塵槽51、第3集塵槽45の順で段積みし、延長管路57を吸引手段21の取付け端部55と、仕切り蓋87の下方との間に接続する。
そして、各段の引掛け式の連結金具83をすべて連結状態にして第1集塵槽37と第2集塵槽51と第3集塵槽45とを一体化する。作業者Mは、このようにして組み立てられたエア加工工具用集塵機1Aを、上蓋79の上面の把手81を持って所定の場所まで移動させる。
【0048】
次に、エアコンプレッサ5から延びる第1エアホース17を穿孔機3に取り付けられている分配器7に接続し、第2エアホース19を上記分配器7とエア加工工具用集塵機1Aにおける吸引手段21のエア導入通路33に接続されているホースジョイント75との間にセットする。
また、上記吸引手段21の取付け部59に対して上記集塵カバー9の接続部29から延びている集塵ホース27を接続し、エアコンプレッサ5を起動する。
【0049】
作業者Mは、穿孔Hを形成する部位に集塵カバー9を設置し、両足で左右のペダル25、25を踏んで集塵カバー9を保持した状態で穿孔機3のロッド15を上記集塵カバー9のカバー本体部23に形成されている受入れ孔31に挿入して穿孔作業を開始する。
穿孔機3は、エアコンプレッサ5から供給される圧縮空気Aを分配器7から得てロッド15を上下に振動させてコンクリートブロックCに穿孔Hを形成する。
【0050】
そして、上記穿孔作業に伴なって発生した粉塵Dは、集塵カバー9によって外部への飛散が防止された状態で集塵ホース27内へ順次取り込まれて行く。
この時の集塵ホース27内への粉塵Dの取り込みは、分配器7から延びる第2エアホース19を介して吸引手段21のエア導入通路33に供給される圧縮空気Aを駆動源として実行されており、該圧縮空気Aが勢いよく粉塵回収経路35内に吹き込むことによって粉塵回収経路35と集塵ホース27内が負圧となり、上記粉塵Dの集塵ホース27内及び粉塵回収経路35内への取り込みが実行される。
【0051】
粉塵回収経路35内に取り込まれた粉塵Dは、圧縮空気Aと一体になって延長管路57の内部を下方に向けて流れ、仕切り蓋87の下方に到達し、絞り部97を経て第1集塵槽37内に貯えられている水W中に放出される。
そして、第1集塵槽37内の水W中に放出された粉塵Dのうち、大きめのものは第1集塵槽37の底部に沈降することで回収される。一方、粉塵Dのうち小さめのものは、気泡B中に含まれる形で水W中に存在する。
【0052】
また、上記絞り部97の下部では、圧縮空気Aの流速が増速され、循環ホース99内が負圧になるため、図8に示すように第1集塵槽37内の水Wの上澄みが循環ホース99内に吸い上げられ、再び下方に落下する水Wの循環が形成される。
そして、上記水Wの循環によって水Wと粉塵Dとの撹拌混合が実行され、粉塵Dの飛散は少なくなり、多くは水W中に溶け込んで下方に沈降して第1集塵槽37の底部に堆積する。
【0053】
一方、上記第1集塵槽37で回収できなかった粉塵Dは、連絡用開口91を通って上方の第2集塵槽51の底部空間、そして中央空間を通って角筒状の貯水空間101内に至る。そして、上記貯水空間101内において、再び水Wに浸かり、比重の重い粉塵Dは該貯水空間101の底部に沈降して堆積する。一方、比重の軽い粉塵Dの一部は、第1フィルタ53に捕捉される。このとき、気泡B中に含まれる粉塵Dは、第1フィルタ53を通過する際に気泡Bが細かく破壊されることで、水W中に溶け出すか、第1フィルタ53に捕捉される。
該第1フィルタ53によって捕捉されなかった粉塵Dは、上方の連絡用開口105から押さえ蓋103の上方空間、そして上方に位置する第3集塵槽45の中央の連絡用開口109を通って第3集塵槽45内に至る。
【0054】
尚、上記貯水空間101中に浸っている第1フィルタ53は、空気が吹き上がることにより上方に浮き上がろうとするが、上方に設けられている第3集塵槽45の自重が押さえ蓋103に作用しているため該押さえ蓋103に外側板52が押さえ付けられて第1フィルタ53の上方への浮き上がりが防止され、第1フィルタ53の粉塵の処理能力の低下を防止している。
また、押さえ蓋103の外周は第1フィルタ53の外側板52よりも大きめに設定されているため第1フィルタ53やその外側の貯水空間101内の水撥ねを効果的に防止することができ、貯水空間101内の水Wの減少を抑えることができる。第3集塵槽45内に進入した粉塵Dは、上蓋79によって上方への移動が規制されているため、側壁部41に向けて移動するようになる。そして、該側壁部41と保持ロッド110との間に配設されている第2フィルタ39によって捕捉され、粉塵Dが捕捉され回収された圧縮空気Aは側壁部41に形成されている窓部43から外部に排気される。
【0055】
また、エア加工工具用集塵機1Aによる粉塵Dの回収が進んで集塵能力が低下してきたら、当該エア加工工具用集塵機1Aを別のエア加工工具用集塵機1Aに交換して、今まで使用してきたエア加工工具用集塵機1Aを分解掃除して次の使用に備える。
因みに、従来の電気吸引式の集塵機の場合には、穿孔Hが8本分位(作業時間で数十分位)で目詰まりして使えなくなるが、本実施の形態に係るエア加工工具用集塵機1Aを使用した場合には、穿孔Hが40〜50本分位(作業時間で2時間位)になるまで使用できるため作業効率が格段に向上することが実験で確かめられた。
【0056】
(2)第2の実施の形態(図9参照)
第2の実施の形態に係るエア加工工具用集塵機1Bは、基本的には上記第1の実施の形態に係るエア加工工具用集塵機1Aと同様の構成を有している。したがって、ここでは上記第1の実施の形態と相違する第2の実施の形態特有の構成に絞って説明する。
即ち、本実施の形態では、第2集塵槽51と、仕切り蓋87と延長管路57とが省略されており、第1集塵槽37として水Wを貯えることのできる別途の水槽113を使用している。吸引手段21を備えた第3集塵槽45を脚部111において水槽113内に立設する。水槽113における第3集塵槽45の周囲は、一例として麻布Sで覆っている。
【0057】
したがって、本実施の形態の場合には、循環ホース99による水Wの循環は行われず、水槽113内の水W中へ直接圧縮空気Aと粉塵Dを吹き付け、水W中への粉塵Dの沈降と、第3集塵槽45での第2フィルタ39による粉塵Dの捕捉とによって粉塵Dの回収が実行されるようになる。
そして、このような構成の第2の実施の形態に係るエア加工工具用集塵機1Bを採用した場合には、上記第1の実施の形態よりも集塵能力が低下するが、容量の大きな水槽113を使用することで従来の集塵機を上回る高い集塵能力が発揮されるため作業効率が向上するとともに長時間の作業(例えばほぼ1日程度)を可能とする。また、部品点数が少なくなり、引掛け式の連結金具83の連結と連結解除の操作が不要になるため取り扱い性も向上する。
【0058】
尚、本発明のエア加工工具用集塵機1は、上記の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。例えば、第1集塵槽37、第2集塵槽51、第3集塵槽45の形状は角箱状に限らず円筒容器状等、他の形状であっても構わない。また、第2集塵槽51は一段のみ設ける他、2段以上段積みすることも可能である。
また、エア加工工具用集塵機1自体にキャスタを設けたり、エア加工工具用集塵機1を台車に乗せて使用することでエア加工工具用集塵機1の移動を容易にすることが可能である。この他、水槽113としては専用水槽の他、市販の一輪車(猫車)等の運搬容器を流用して使用することも可能である。また、本発明のエア加工工具用集塵機1の適用対象であるエア加工工具3は穿孔機に限らず削岩機や路面を切断するエアカッタ等、エアを利用した種々のエア加工工具に適用範囲を拡大することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のエア加工工具用集塵機1は、コンクリートアンカー工事等で発生する粉塵の外部飛散を防止して回収する場合に使用される集塵機の使用分野等で利用でき、特に狭い設置スペースで効率良く長時間に亘って粉塵を集塵したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0060】
1 エア加工工具用集塵機
3 穿孔機(エア加工工具)
5 エアコンプレッサ
7 分配器
9 集塵カバー
11 グリップ
13 本体部
15 ロッド
17 第1エアホース
19 第2エアホース
21 吸引手段
23 カバー本体部
25 ペダル
27 集塵ホース
29 接続部
31 受入れ孔
33 エア導入通路
35 粉塵回収経路
37 第1集塵槽
39 フィルタ
41 側壁部
43 窓部
45 第3集塵槽
46 底板
47 仕切り壁
48 内側板
49 連絡通路
50 孔部
51 第2集塵槽
52 外側板
53 フィルタ
54 孔部
55 取付け端部
57 延長管路
59 取付け部
59a 嵌合部
61 ホルダ部
63 フランジ部
67 シールリング
68 凹部
69 凹部状空間
71 エア噴射孔
73 嵌合穴部
74 本体部
75 ホースジョイント
77 縮径部
79 上蓋
81 把手
83 引掛け式の連結金具
83a 係止片
83b 本体部
85 ゴムマット
86 ゴムシート
87 仕切り蓋
88 支承片
89 把手
91 連絡用開口
93 係止片
94 補強リブ
97 絞り部
98 ホースジョイント
99 循環ホース
101 貯水空間
103 押さえ蓋
104 把手
105 連絡用開口
107 ガイド片
109 連絡用開口
110 保持ロッド
111 脚部
113 水槽
M 作業者
A 圧縮空気
R 道路
C コンクリートブロック
G ガイドレール
P ポール
H 穿孔
D 粉塵
W 水
B 気泡
S 麻布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンプレッサから供給された圧縮空気を取り込むエア導入通路とエア加工工具の加工部位から供給された粉塵を該圧縮空気の流れを利用して吸引し取り込む粉塵回収経路とが形成されている吸引手段と、
上記吸引手段の下方に配置され内部に粉塵回収用の水が貯えられている第1集塵槽と、
上記第1集塵槽の上方に段積みされ第1集塵槽に供給された粉塵のうち第1集塵槽で回収できなかった粉塵を上方に導く複数の仕切り壁によって屈曲配置されている連絡通路が形成され内部に粉塵回収用の水と第1フィルタとが設けられている第2集塵槽と、
上記第2集塵槽の上方に段積みされ内部に粉塵回収用の第2フィルタが配設されるとともに側壁部に外部と連通する窓部が形成されている第3集塵槽と、
一端が上記吸引手段の取付け端部に接続され他端が上記第1集塵槽内に至るように粉塵回収方向の下流に向けて延設されている延長管路と、
を具備したことを特徴とするエア加工工具用集塵機。
【請求項2】
上記第1集塵槽には、内部に貯えられている水を上記圧縮空気の流れを利用して吸引し、延長管路に供給する循環ホースが設けられていることを特徴とする請求項1記載のエア加工工具用集塵機。
【請求項3】
上記第1フィルタの上方には、押さえ蓋が設けられ、該押さえ蓋の上部を連絡通路としていることを特徴とする請求項1または2記載のエア加工工具用集塵機。
【請求項4】
上記第1集塵槽と第2集塵槽間の連結または上記第2集塵槽と第3集塵槽間の連結は、引掛け式の連結金具を使用して行われていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエア加工工具用集塵機。
【請求項5】
上記吸引手段に供給される圧縮空気は、エア加工工具に供給される圧縮空気の一部を分配器によって分配させたものを使用していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエア加工工具用集塵機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate