説明

エキシマランプ

【課題】無声放電式の放電管において、光の均一性を向上させること。
【解決手段】外表面に第1の電極(11)が設けられる筒状の外筒壁(4)と、外筒壁(4)よりも小径の筒状に形成され且つ外筒壁(4)の軸方向端部よりも外方に突出する被支持部(6a)を有し、内表面に第2の電極(12)が設けられる内筒壁(6)と、外筒壁(4)、内筒壁(6)および端壁(7)により囲まれ、無声放電時に光を発生する光発生用ガスが封入される放電空間(8)と、を備え、第1の電極(11)と第2の電極(12)との間に前記放電空間(8)内で無声放電を発生させる電圧が印加されるエキシマランプ(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無声放電により発生するエキシマ光を照射するエキシマランプおよび無声放電用の放電管に関する。
本発明のエキシマランプは、試料表面を洗浄したり、試料表面の改質、成膜(スパッタリング)、削る(エッチング)等の真空紫外プロセスに好適に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
試料表面の洗浄や改質に使用される光源装置として、紫外光を照射するエキシマランプが知られている。エキシマランプでは、光発生室に流入させた光発生用ガスを、無声放電:silent discharge(「誘電体バリア放電:dielectric barrier discharge」や「オゾナイザ放電」とも呼ばれることがある)によりプラズマ化し、励起状態から基底状態に戻る時の発光(ルミネセンス、蛍光や燐光)により光を得ている。このような光源装置は、キセノンガス等のエキシマガスを光発生用ガスとして使用して真空紫外光を発生させ、真空紫外光を試料に照射して試料の汚染物質(水蒸気や炭酸ガス等)を分解、放出させて除去、洗浄する場合や、試料表面を化学変化させたり、脱離させたりして表面を改質する場合に使用されることもある。
【0003】
前記エキシマランプのような無声放電式の光源装置は、誘電体で絶縁された2つの電極間に、数kHz〜100kHz程度の交流電圧を印加し、電極間での無声放電により誘電体間の放電空間内のガスをプラズマ化して、発生した光を使用している。このような無声放電式の光源装置として、例えば、二重管構造の放電管を有する特許文献1(特開平8−87989号公報)や、複数の電極が所定のパターンで配置された特許文献2(特開2000−231904号公報)記載の技術が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−87989号公報(「0006」〜「0007」、第1図)
【特許文献2】特開2000−231904号公報(「0003」、「0008」〜「0010」、第1図〜第9図)
【特許文献3】特開平11−3686号公報(「0002」、「0081」、「0095」〜「0107」、第3図〜第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(前記従来技術の問題点)
従来技術に示したような光源装置を試料の洗浄や表面改質に使用する際に、広い面積に光を照射したい場合、特許文献2記載の技術のように放電電極を複数並べたり、特許文献1記載の放電管を複数個並べて配置する必要がある。しかしながら、放電管や電極を並べる場合、放電管や電極の近傍で発光するため、全体として、光の照度にバラツキ、偏り、ムラが発生することがある。したがって、無声放電式の光源装置において、電極を並べる場合には、特許文献2記載の技術のようにすることで光の均一化に対応可能であるが、放電管を並べる場合に、光を均一化するためには、放電管どうしをできるだけ近づけた状態で配置させる必要がある。
【0006】
図4は従来の無声放電を利用する光源装置で使用されている放電管の説明図である。
図4において、二重管型の無声放電用の放電管01は、内筒壁02と、内筒壁02と同軸且つ軸方向の長さが同じで大径の外筒壁03と、内筒壁02と外筒壁03の軸方向端部を接続するドーナツ型の端壁04とを有し、内筒壁02、外筒壁03、端壁04とにより囲まれた空間により放電空間06が形成されている。前記外筒壁03の外周面には金属メッシュ状の網状電極07が被覆された状態で支持され、内筒壁02の内周面には、金属パイプ状の内側電極08が支持されている。前記放電管01は、ガラスやセラミックのような誘電体材料により構成されており、前記放電空間06内には、光発生用のガスが封入されている。そして、電極07,08間に数100kHzの交流電圧が印加されると、無声放電が発生し、放電空間06内のガスがプラズマ化し、光が発生する。
【0007】
図4に示すように、放電管01は、ハウジング09の支持孔09aに両端部が支持されており、支持孔09aと外筒壁03との間には、気密のためのOリング011が装着されている。また、放電管01の外端には、絶縁のために誘電体材料性のキャップ012が装着されている。
したがって、図4に示すように、無声放電方式の光源装置では、放電管01を複数並べようとしても、各放電管01の端部に装着されるOリング011のために、隣りあう放電管01の外筒壁03どうしを接触する位まで接近させることができない問題があった。
【0008】
したがって、図4に示すような従来の無声放電式の放電管では、複数の放電管を並べた場合に、間隔がある程度までしか狭めることができず、光のムラ等が残り、光の均一性を向上させにくいという問題がある。
また、放電空間06は軸方向端部までつながっているため、端部でも無声放電に伴う光が到達し、Oリング011やキャップ012が光劣化しやすく、寿命が短くなるという問題もある。
さらに、放電空間06が軸方向端部までつながっているため、無声放電時の発熱の影響が端部に及び、Oリング011やキャップ012に耐熱処理を施したり、耐熱素材を使用する必要があり、コストが上昇する問題もある。
【0009】
なお、エキシマランプとは異なり、照明装置等として使用される無電極放電ランプでは、無声放電とは異なる放電方式である誘導結合形の放電方式の光源装置が知られている。誘導結合形の光源装置は、円筒状の放電管の外表面に導線をコイル状に巻き付け、導線に13.56MHz等の比較的高周波の交流電圧を印加して、電磁誘導で放電管内のガスにエネルギーを与えてプラズマ化し、発光した光を使用している。このような誘導結合型の光源装置としては、例えば、二重管構造の放電管を有する特許文献3(特開平11−3686号公報)記載の技術が知られている。
しかしながら、誘導結合方式の放電方法は、無声放電とは放電の原理が異なり、また、仮に、誘導結合方式でエキシマランプを作成しようとしても、放電効率が非常に悪いため、エキシマランプに特許文献3のような誘導結合方式を適用することは通常考えられない。また、仮に、エキシマランプに誘導結合方式を適用したとして、大面積を照射しようとして誘導結合方式の放電管を並べようとしても、隣り合う放電管での電磁誘導の電界、磁界が互いに乱されるため、並べて配置するには十分な間隔を空ける必要があり、光のムラ等の問題は解決できない。
【0010】
本発明は、無声放電式の放電管において、光の均一性を向上させることを第1の技術的課題とする。
また、本発明は、無声放電式の放電管において、支持する端部における部材の光劣化や熱の影響を低減することを第2の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題を解決するために請求項1に記載の発明のエキシマランプは、
筒状の外筒壁と、前記外筒壁と同軸に配置され且つ前記外筒壁よりも小径の筒状に形成されると共に軸方向端部に前記外筒壁の軸方向端部よりも外方に突出する被支持部を有する内筒壁と、前記被支持部が貫通し且つ前記外筒壁の軸方向端部と前記内筒壁との間を接続する円板状の端壁と、前記外筒壁、前記内筒壁および前記端壁により囲まれた放電空間と、を有する無声放電用の放電管と、
前記放電空間に収容され、無声放電時に光を発生する光発生用ガスと、
前記外筒壁の外表面に設けられた第1の電極と、
前記内筒壁の内面に設けられた第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して前記放電空間内で無声放電を発生させる無声放電用電源と、
前記放電管の前記被支持部を支持する支持部が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに形成された前記支持部に配置され、前記放電管の被支持部と前記支持部との間を気密に保持するシール部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエキシマランプにおいて、
複数の前記支持部が形成されると共に、前記各支持部間の間隔が、前記放電管の中心軸から前記外筒壁の外表面の第1の電極の外面までの距離である第1電極半径の2倍の長さに対応して形成された前記ハウジングと、
前記ハウジングに形成された複数の前記支持部にそれぞれ配置された前記シール部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の無声放電用の放電管は、
外表面に第1の電極が設けられる筒状の外筒壁と、
前記外筒壁と同軸に配置され且つ前記外筒壁よりも小径の筒状に形成された内筒壁であって、軸方向端部に前記外筒壁の軸方向端部よりも外方に突出する被支持部を有すると共に、内表面に第2の電極が設けられる前記内筒壁と、
前記被支持部が貫通し且つ前記外筒壁の軸方向端部と前記内筒壁との間を接続する円板状の端壁と、
前記外筒壁、前記内筒壁および前記端壁により囲まれ、無声放電時に光を発生する光発生用ガスが収容される放電空間と、
を備え、
前記第1の電極と第2の電極との間に前記放電空間内で無声放電を発生させる電圧が印加される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、放電空間よりも軸方向外側に形成された被支持部で支持されるため、端部のシール部材の光劣化および熱劣化を低減でき、長寿命化することができる。また、無声放電時の熱が発生する放電空間の外側にシール部材を設けるため、熱の影響を低減することができる。さらに、小径の内筒壁の端部の被支持部で支持されているため、隣り合う放電管の被支持部との間に十分な距離を確保しつつ放電管どうしを近接して並べて配置することが可能となり、放電管を近接させて複数並べた場合、光の均一性を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、隣り合う放電管どうしを近接して配置することができ、均一な光を広い面積に照射することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、放電空間よりも軸方向外側に形成された被支持部で機密支持可能な構成を実現でき、端部における光劣化を低減できる。また、無声放電時の熱が発生する放電空間の外側で支持可能な構成を実現でき、端部における熱の影響を低減することができる。さらに、小径の内筒壁の端部の被支持部で支持可能な構成を実現できるため、隣り合う放電管の被支持部との間に十分な距離を確保しつつ放電管どうしを近接して並べて配置することが可能となり、放電管を近接させて複数並べた場合、光の均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(実施例)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1の光源装置の説明図である。
図2は実施例1の光源装置の放電管部分の要部拡大説明図である。
図1において、本発明の実施例1の光源装置の一例としてのエキシマランプ1は、ハウジング(ランプハウス)2を有する。図2において、前記ハウジング2は、前壁2aおよび後壁2bを有し、前記前壁2aには、予め設定された間隔L1を空けて円孔状の前側支持部2cが複数形成されており、後壁2bには、前側支持部2cと対を成す後側支持部2dが形成されている。また、前記ハウジング2の下面には光照射用の窓材2eが支持されている。実施例1のハウジング2内は、真空排気されているが、真空排気に限定されず、発生する光(実施例1では後述する172nmの真空紫外光)を吸収しないガス、例えば、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)等の希ガスや、N(窒素ガス)、H(水素)等のガスでパージすることも可能である。
【0018】
図3は実施例1の放電管の説明図であり、図3Aは部分断面図、図3Bは図3Aの矢印IIIB方向から見た図、図3Cは図3AのIIIC−IIIC線断面図である。
図1、図2において、前記ハウジング2には、前後方向に延びる無声放電用の放電管3が支持されている。図1〜図3において、前記放電管3は、前後方向に延びる円筒状の外筒壁4を有する。前記外筒壁4の内部には、外筒壁4と同軸に配置され且つ外筒壁4よりも小径の円筒筒状の内筒壁6が配置されている。図2、図3において、前記内筒壁6の軸方向両端部には、外筒壁4の軸方向端部よりも外方に突出する被支持部6aが一体的に形成されている。外筒壁4の軸方向両端部と、外筒壁4の軸方向両端部に対応する内筒壁6との間には、円板状の端壁7が支持されており、前記被支持部6aは端壁7を貫通した形となっている。
【0019】
なお、実施例1の放電管3では、300mmのシリコンウェハ表面の製膜、洗浄、表面改質が実行できるように、外筒壁4は外径(直径)が20mm、厚さ1mm、軸方向の長さが382mm、内筒壁6は外径が10mm、厚さ1mm、軸方向の長さが462mm、被支持部6aの長さが前後それぞれ40mmずつに設定されている。なお、これらの寸法については、設計や用途、仕様等に応じて任意に変更可能である。また、実施例1の外筒壁4、内筒壁6および端壁7は、誘電体材料(絶縁材)の一例としての石英ガラスにより構成されているが、これ以外の誘電体材料を使用可能であり、石英ガラス以外のガラスやセラミックスを使用することが可能である。
【0020】
前記放電管3では、外筒壁4の内周面、内筒壁6の外周面、端壁7の内面により囲まれた軸方向に垂直な断面がドーナツ状の空間が密閉されており、この空間により放電空間8が構成されている。前記放電空間8には、光発生用のガスの一例としてのエキシマガスであるXe(キセノン)が収容、封入された状態で密閉されている。前記エキシマガスとしては、146nmの真空紫外光が発生するKrのような希ガスや、248nmの紫外光が発生するKrFのような希ガスハライド、窒素ガス等の放電により発光する任意のガスを使用可能である。なお、光発生用ガスとしてKrを使用する場合、発生する真空紫外光は、石英ガラスを透過しにくいため、使用する光発生用ガスに応じて、誘電体材料の材質を発生する光が透過可能な材料(例えば、CaF)を使用する必要がある。
【0021】
図1、図2において、前記外筒壁4の外周面には、第1の電極の一例として、メッシュ状の網状電極11が被覆されている。また、前記内筒壁6の内周面には、第2の電極の一例として、金属パイプ状の内側電極12が支持されている。なお、実施例1の内側電極12は、被支持部6aの部分には設けられておらず、網状電極11に対応する領域に設けられている。
また、実施例1の各放電管3は、隣接する放電管3どうしが近接、密着した状態で配置されている。したがって、実施例1では、前側支持部2cどうしの間隔L1は、放電管3の中心軸から外筒壁4の外表面の網状電極11の外面までの距離である第1電極半径L2の2倍の長さに対応して形成されている。具体的には、放電管3の外筒壁4の半径10mmに網状電極11の厚みを考慮して、21mmに設定されている。なお、実施例1では、各放電管3の網状電極11には、同様の電圧が印加されるため、網状電極11どうしが接触しても問題はない。
【0022】
図1において、前記網状電極11および内側電極12には、それぞれ、給電線13が接続されており、給電線13は図示しない導出部を通じてハウジング2の外部に導出されている。
前記給電線13は、無声放電用電源である交流電源14に接続されており、交流電源14により数kHz〜100kHzの交流電圧が網状電極11と内側電極12との間に印加され、放電空間8内で無声放電(誘電体バリア放電)が発生する。なお、実施例1では、交流電圧として、20kHz〜40kHzの交流電圧を印加している。
なお、実施例1では、交流電源14は、各放電管3毎に1つずつ設けられており、各交流電源21は互いに位相の同期を取らずに交流電圧の供給を行っている。
【0023】
図2において、前記放電管3の両端部は、前記被支持部6aが、ハウジング2の前側支持部2cおよび後側支持部2dを貫通した状態で支持されている。前記前側支持部2cおよび後側支持部2dと被支持部6aとの間には、ハウジング2内部を気密に保持するためのシール部材としてOリング16が装着されている。
前記被支持部6aの外端は、内側電極12が外端部まで設けられておらず、被支持部6aが誘電体材料で絶縁されるため、図4に示す従来のエキシマランプの場合に対してキャップ012が省略されている。
【0024】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のエキシマランプ1では、放電管3の網状電極11と内側電極12との間に交流電圧が印加されると、誘電体である外筒壁4と内筒壁6との間の放電空間8で無声放電が発生し、放電空間8に封入されたエキシマガスがプラズマ化して、エキシマガスに応じた光(真空紫外光)が発生する。発生した光は、網状電極11の網の目の隙間から外部に導出され、窓材2eを通じて、窓材の下方に配置された照射対象物に照射される。前記真空紫外光を照射対象物に照射することで、洗浄や表面改質、殺菌等を行うことができる。
【0025】
また、実施例1のエキシマランプ1では、放電管3どうしが外筒壁4よりも小径の内筒壁6の端部に形成された被支持部6aでハウジング2の支持部2c,2dに気密な状態で支持されている。したがって、実施例1のエキシマランプ1では、隣り合う放電管3どうしにおいて、光が発生する領域である放電空間8に対応する外筒壁4どうしを近接した状態で配置することが可能であり、左右方向に渡って光の照度のばらつきを低減することができ、大面積に照射を行う場合に均一な光を照射できる。よって、図4に示すような従来構成のエキシマランプのように、放電管01どうしを近接、密着させることが技術的に不可能であった場合に比べて、光の均一性を向上させることができる。
また、放電管3どうしの間隔を狭めることができるので、エキシマランプ1全体の大きさを小型化することができる。
【0026】
また、実施例1の放電管3では、放電空間8よりも軸方向外側に突出した被支持部6aで支持されるため、支持される位置が放電により温度が上昇する放電空間8からずれた位置であり、温度上昇が放電空間8に対応する部分よりも低減された部分で支持することが可能となっている。したがって、Oリング16に耐熱処理を施したり、耐熱材料を使用する必要性が低減され、低コスト化できると共に、熱による劣化を低減できるため、長寿命化することができる。
さらに、実施例1では、軸方向端まで延びる被支持部6aで絶縁されているため、図4に示す従来の構成のように、キャップ012が必要なく、部品点数を減らすことができ、低コスト化することができる。
また、実施例1の放電管3では、放電空間8よりも軸方向外側に突出した被支持部6aで支持されるため、内側の放電空間8で無声放電による発光が発生し、被支持部6aで発光が発生しない。したがって、図4に示す従来の構成のように、放電空間08が軸端部まで存在し、発生する光でOリング011やキャップ012が劣化する場合に比べて、実施例1では、Oリング16の劣化を低減でき、長寿命化することができる。
【0027】
さらに、実施例1のエキシマランプ1では、放電管3と交流電源14が組となっているため、放電管3の数を増減させる際に、既設の配線に対して追加、取外し等の配線作業のやり直しをする必要が無く、放電管3と交流電源14とをセットにして、設置または取外しするだけで容易に増減させることができる。また、1つの交流電源14で全ての放電管3の全ての電極11,12に給電を行う場合には、高価で大容量の交流電源14が必要になるが、実施例1では、1つの放電管に対応する交流電源14を準備すればよく、低コストな交流電源14で実現可能である。さらに、1つの交流電源14で全ての放電管3に給電を行う構成では、各放電管3の個体差で照度にばらつきが出た場合に、電源14を制御すると全体が変化するため、照度を揃えるために個別に微調整をすることが困難である。これに対して、実施例1のように個別に交流電源14を配置した場合には、各交流電源14の周波数、電圧、電流、エネルギーのいずれかまたは複数を制御することで、個別に照度を微調整することが可能である。
【0028】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H07)を下記に例示する。
(H01)本発明の光源装置は、試料洗浄装置の光源装置に限定されず、顕微分析や露光用の光源装置等、任意の光源装置として使用可能である。
(H02)前記実施例において、光発生用のガスとして、エキシマガスを例示したが、これに限定されず、窒素(N)ガス等の放電により発光する任意のガスを使用可能である。すなわち、発生する光も真空紫外光に限定されず、使用する光発生用ガスに応じた波長の光を発生させることができる。
【0029】
(H03)前記実施例において、電源装置21を放電管3ごとに設ける構成としたが、この構成に限定されず、全ての放電管に1つの電源装置で給電したり、放電管を複数のグループに分け、各グループ毎に1つずつ電源装置を設ける構成とすることも可能である。なお、1つの電源装置で全ての放電管に給電する構成では、電源装置の数が1つで済み、構成や配線をシンプルにできる。
(H04)前記実施例において、放電管3の軸方向両端部を支持する構成としたが、この構成に限定されず、軸方向一端部のみを支持する構成、いわゆる片持ち支持で支持する構成とすることも可能である。この場合、被支持部6aは、支持される側のみに形成することが可能である。
【0030】
(H05)前記実施例において、ハウジング2内部は真空排気したが、この構成に限定されず、例えば、ハウジング2の窓材2eの部分を開放して、パージ用のガスを流し放しの状態とすることも可能である。
(H06)前記実施例において、ハウジング2に窓材2eが支持され、窓材2eを介してハウジング2の外部にある照射対象物に対して光が照射される構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば、ハウジング2内部に照射対象物を収容する構成とすることも可能である。この場合、窓材2eは不要になり、省略可能である。
【0031】
(H07)前記実施例において、放電空間8内に光発生用のガスを封入する構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば、一対の端壁7あるいは外筒壁4や内筒壁6に2つの孔を形成して、一方の孔から光発生用のガスを流入させ、他方の孔から光発生用ガスを流出させる構成として、光発生用のガスを流しながら光を発生させる構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は本発明の実施例1の光源装置の説明図である。
【図2】図2は実施例1の光源装置の放電管部分の要部拡大説明図である。
【図3】図3は実施例1の放電管の説明図であり、図3Aは部分断面図、図3Bは図3Aの矢印IIIB方向から見た図、図3Cは図3AのIIIC−IIIC線断面図である。
【図4】図4は従来の無声放電を利用する光源装置で使用されている放電管の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1…エキシマランプ、
2…ハウジング、
2c,2d…支持部、
3…放電管、
4…外筒壁、
6…内筒壁、
6a…被支持部、
7…端壁、
8…放電空間、
11…第1の電極、
12…第2の電極、
14…無声放電用電源、
16…シール部材、
L1…間隔、
L2…第1電極半径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外筒壁と、前記外筒壁と同軸に配置され且つ前記外筒壁よりも小径の筒状に形成されると共に軸方向端部に前記外筒壁の軸方向端部よりも外方に突出する被支持部を有する内筒壁と、前記被支持部が貫通し且つ前記外筒壁の軸方向端部と前記内筒壁との間を接続する円板状の端壁と、前記外筒壁、前記内筒壁および前記端壁により囲まれた放電空間と、を有する無声放電用の放電管と、
前記放電空間に収容され、無声放電時に光を発生する光発生用ガスと、
前記外筒壁の外表面に設けられた第1の電極と、
前記内筒壁の内面に設けられた第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して前記放電空間内で無声放電を発生させる無声放電用電源と、
前記放電管の前記被支持部を支持する支持部が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに形成された前記支持部に配置され、前記放電管の被支持部と前記支持部との間を気密に保持するシール部材と、
を備えたことを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
複数の前記支持部が形成されると共に、前記各支持部間の間隔が、前記放電管の中心軸から前記外筒壁の外表面の第1の電極の外面までの距離である第1電極半径の2倍の長さに対応して形成された前記ハウジングと、
前記ハウジングに形成された複数の前記支持部にそれぞれ配置された前記シール部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
外表面に第1の電極が設けられる筒状の外筒壁と、
前記外筒壁と同軸に配置され且つ前記外筒壁よりも小径の筒状に形成された内筒壁であって、軸方向端部に前記外筒壁の軸方向端部よりも外方に突出する被支持部を有すると共に、内表面に第2の電極が設けられる前記内筒壁と、
前記被支持部が貫通し且つ前記外筒壁の軸方向端部と前記内筒壁との間を接続する円板状の端壁と、
前記外筒壁、前記内筒壁および前記端壁により囲まれ、無声放電時に光を発生する光発生用ガスが収容される放電空間と、
を備え、
前記第1の電極と第2の電極との間に前記放電空間内で無声放電を発生させる電圧が印加される
ことを特徴とする無声放電用の放電管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−92605(P2010−92605A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258432(P2008−258432)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【特許番号】特許第4271724号(P4271724)
【特許公報発行日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(505088983)株式会社NTP (5)