説明

エキゾーストバルブ

【課題】重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく、十分な耐熱強度を有するエキゾーストバルブを提供すること。
【解決手段】エキゾーストバルブ31は、軸部41と、軸部41の一方端に形成されるとともに、内燃機関のシリンダに設けられたバルブシートに着座するバルブフェース42aが形成された傘部42とにより構成され、軸部41が一定の直径からなる軸部直径Dを有し、傘部42が軸部直径Dより大きい傘部直径Dを有し、軸部41と傘部42とを連結する連結位置31aと、バルブフェース42aと反対側の傘表42bから軸部方向に傘部直径Dと略同じ大きさの距離Lだけ離隔した位置との間の区間内で、傘部直径Dよりも小さく、かつ、軸部直径Dよりも大きい直径の太軸部43を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のエキゾーストバルブに関し、特に、機械的強度を向上させることができるエキゾーストバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエキゾーストバルブとして、バルブ本体と、バルブステムと、バルブ本体側の小径部分およびバルブ本体から離隔した側の大径部分から構成されるバルブガイドとを有し、この小径部分と大径部分との境界が、滑らかな曲面で形成されるとともに、バルブ閉塞時に滑らかな曲面の一部がバルブガイドの内部に侵入するように位置しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このエキゾーストバルブにおいては、バルブ閉塞時に滑らかな曲面の一部がバルブガイドの内部に侵入するように位置しているため、バルブ閉塞時に小径部分と大径部分との境界の曲面で小径部側に付着したカーボン等のスラッジをステムから容易に掻き落とすことができる。
【0004】
すなわち、エキゾーストバルブにおいては、バルブ閉塞時にスラッジがバルブガイド下端の内周コーナ部で掻き落とされる際に、スラッジに対してステムの半径方向外方への分力が作用することになり、ステムから容易に掻き落とされることになる。
また、このエキゾーストバルブにおいては、滑らかな曲面は、バルブガイド下端のコーナ部と協働してスラッジを掻き落とす機能に加え、バルブステムが曲面を有し、その断面が緩やかに変化しているので、バルブステムに応力集中が発生せず、十分な強度が補償されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−16745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエキゾーストバルブにおいては、バルブ閉塞時にスラッジをバルブガイド下端の内周コーナ部で掻き落とすよう、バルブ本体から離隔した側を大径部分とし、バルブ本体側を小径部分としているので、大径部分の強度に余裕ができており、軽量化が考慮されていなかった。
【0007】
これに対して小径部分については、応力集中に対する強度は、曲面形状によって十分補償されているものの、耐熱強度に対しては考慮されていない。その結果、小径部分を流通する高温の排気ガスにより、小径部分が高温となって機械的強度が低下してしまい耐熱強度の補償が十分でないという問題があった。また、内燃機関の規格対応や出力などの性能向上の要請に伴い、排気ガスの温度が上昇する傾向にあり、エキゾーストバルブの温度も上昇することになり、エキゾーストバルブの耐熱強度の向上がより望まれている。
【0008】
このようなエキゾーストバルブの耐熱強度を向上させる対策として、例えば、次のものが考えられる。
まず、バルブステムの断面積を拡大することが考えられる。すなわち、バルブステム全体の径を太くして耐熱強度を向上させることが考えられる。しかしながら、バルブステムの断面積を拡大すると、バルブステムの質量が増加し、バルブリフト機構の運動性能が低下するため、バルブリフト機構の使用回転数を下げざるをえず、商品性が低下してしまうことになる。また、断面積の拡大によりバルブステム周囲の排気流路の断面積が減少してしまい、排気圧力が上昇するため、排気の妨げになり内燃機関の性能低下や燃費の悪化につながってしまうことになる。
【0009】
次いで、バルブステムの材質を変更し、形状や質量の増加なくして耐熱強度を向上させることが考えられる。しかしながら、バルブステムについて、耐熱強度の高い金属、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などを含むレアメタルを使用すると耐熱強度が向上するものの、耐熱強度の比較的要求されない部位にまで材料のコストが高い金属を使うこととなり、オーバークオリティとなって、製造コストが増大してしまうことになる。
【0010】
次いで、バルブステムについて、熱処理の追加および変更をして耐熱強度を向上させることが考えられる。しかしながら、バルブステムについて、熱処理の追加および変更をすると、熱処理工程の追加や変更が必要になり、設備自体や設備の変更のコストが増大してしまう。この場合、バルブステム全体を炉にセットすることとなり、バルブステム全体を熱処理することになるので、耐熱強度の比較的要求されない部位にまで熱処理することとなり、オーバークオリティとなって、製造コストが増大してしまうことになる。
したがって、耐熱強度を向上するいずれの対策をとっても、不十分となってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、前述のような従来における問題を解決し、重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく、十分な耐熱強度を有するエキゾーストバルブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエキゾーストバルブは、上記課題を解決するため、(1)軸部と、前記軸部の一方端に形成されるとともに、内燃機関のシリンダに設けられたバルブシートに着座するバルブフェースが形成された傘部とにより構成されたエキゾーストバルブにおいて、前記軸部が一定の直径からなる軸部直径を有し、前記傘部が前記軸部直径より大きい傘部直径を有し、前記軸部と前記傘部とを連結する連結位置と、前記バルブフェースと反対側の傘表から前記軸部方向に前記傘部直径と略同じ大きさの距離だけ離隔した位置との間の区間内で、前記傘部直径よりも小さく、かつ、前記軸部直径よりも大きい直径の太軸部を形成したことを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明に係るエキゾーストバルブにおいては、重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく、十分な耐熱強度を有するものが得られる。
すなわち、本発明に係るエキゾーストバルブエキゾーストバルブは、耐熱強度を必要とする太軸部のみ、所定の区間内で軸径を大きくしているので、従来のエキゾーストバルブのように、バルブステム全体の径を太くして耐熱強度を向上させて質量を増加させてしまうという問題が解消される。
また、従来の汎用性のある安価な材料を使っているので、従来のエキゾーストバルブのように、耐熱強度の高いレアメタルを使用する必要はなく、材料のコストが高い金属によるオーバークオリティになることはないので、製造コストの増大を防ぐことができる。
また、熱処理の追加および変更をして耐熱強度を向上させる必要がないので、従来のエキゾーストバルブのように、熱処理工程の追加や変更の必要がなく、設備自体や設備の変更のコストの増大を防ぐことができる。
このように、耐熱強度を向上させることができるので、今後、燃費向上や排気ガス規制などの要請により、燃焼室から流出する排気ガスの温度が高まっても、重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく機械的強度の高いエキゾーストバルブが得られる。
また、エキゾーストバルブの運動性への影響も小さくすることができ、良好な運動特性が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく、十分な耐熱強度を有するエキゾーストバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るエキゾーストバルブが適用される動弁機構の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエキゾーストバルブの側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るエキゾーストバルブの傘表からの距離と温度分布を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係るエキゾーストバルブにおける材料強度と温度との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係るエキゾーストバルブの断面形状を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るエキゾーストバルブにおける温度分布と安全率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るエキゾーストバルブを内燃機関の動弁機構に適用した実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
まず、動弁機構の構成について説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るエキゾーストバルブ31は、内燃機関の動弁機構10を構成しており、動弁機構10の説明を通じてエキゾーストバルブ31を説明する。
【0018】
動弁機構10は、カムシャフト11と、カムシャフト11に設けられたカム12と、カム12と係合するロッカーアーム13と、ロッカーアーム13の一端部と係合するラッシュアジャスタ14と、ロッカーアーム13の他端部と係合するバルブリフト機構15とを含んで構成されている。この動弁機構10は、図示しない内燃機関のシリンダヘッド1に組み込まれている。
【0019】
この動弁機構10においては、カムシャフト11およびカム12の回転によりロッカーアーム13の他端部を支点としてロッカーアーム13が回動し、バルブリフト機構15が動作するようになっている。また、ラッシュアジャスタ14により、カム12とロッカーアーム13との間の隙間やロッカーアーム13とバルブリフト機構15との間の隙間などのクリアランスが調整されるようになっている。
【0020】
カムシャフト11は、図示しない内燃機関のクランクシャフトの回転がタイミングチェーンなどの動力伝達装置により伝達されるようになっており、カム12はクランクシャフトの回転と同期して回転するようになっている。
【0021】
カム12は、一体的に形成されたベース円部12aおよびノーズ部12bと、このベース円部12aおよびノーズ部12bの外周面からなるカム面部12cとを含んで構成されている。ベース円部12aがロッカーアーム13に当接するとき、バルブリフト機構15が閉じた状態になり、ノーズ部12bがロッカーアーム13に当接するとき、バルブリフト機構15が開いた状態になるよう構成されている。
【0022】
ロッカーアーム13は、アーム本体13aと、バルブリフト機構15と回動可能に係合する機構係合部13bと、ラッシュアジャスタ14と回動可能に係合するアジャスタ係合部13cと、機構係合部13bとアジャスタ係合部23aとの中間に配置されカム12と係合するローラ部13dとを含んで構成されている。
【0023】
ラッシュアジャスタ14は、アジャスタボディ21と、プランジャ22と、チェックバルブ23と、プランジャスプリング24とを含んで構成されている。
このラッシュアジャスタ14は、ロッカーアーム13のバルブリフト機構15と反対側の支点に配置されており、シリンダヘッド1から供給されるオイルを作動油として動作するようになっている。このアジャスタボディ21内のプランジャ22がプランジャスプリング24の反発力や油圧の力で上下にスライドすることによりカム12とロッカーアーム13のローラ部13dとの間の隙間からなるクリアランスをなくすよう調整するようになっている。
【0024】
バルブリフト機構15は、エキゾーストバルブ31と、シリンダヘッド1に支持されエキゾーストバルブ31の摺動を案内するバルブガイド32と、バルブガイド32の端部に設けられバルブガイド32をシールするバルブシール33と、エキゾーストバルブ31の端部に設けられたステムエンド34およびバルブコッタ35と、バルブコッタ35によりエキゾーストバルブ31の端部に固定されたスプリングリテーナ36と、スプリングリテーナ36をシリンダヘッド1から離隔する方向に押圧するようスプリングリテーナ36とシリンダヘッド1との間に介装されたバルブスプリング37とを含んで構成されている。
【0025】
このバルブリフト機構15においては、エキゾーストバルブ31が、シリンダヘッド1に設けられたバルブシート2に着座するようになっており、図1は、エキゾーストバルブ31がバルブシート2に着座した状態、すなわち閉弁状態を示している。
【0026】
図2に示すように、エキゾーストバルブ31は、汎用の安価な鋼材、例えば、オーステナイト系のステンレス鋼からなり、軸部41と、傘部42と、太軸部43とにより構成されている。軸部41、太軸部43および傘部42は一体的に形成されている。
軸部41と傘部42とは、連結位置31aで滑らかなカーブで連結されている。
【0027】
軸部41は、一定の軸部直径Dを有し、図1に示すバルブガイド32に収容されるようになっており、バルブガイド32内を案内されてその軸線方向に摺動するよう構成されている。
また、傘部42と反対側の端部には、溝41aが形成されており、バルブコッタ35が嵌り込んで、スプリングリテーナ36に取り付けられるようになっている。
【0028】
傘部42は、軸部41の一方端に形成されており、バルブフェース42aと、傘表42bと、傘裏42cとを有している。
バルブフェース42aは、バルブシート2に着座した際に、図示しないシリンダの燃焼室を密閉するよう滑らかな表面を有している。
傘表42bは、その傘部直径がDで形成されており、バルブフェース42aがバルブシート2に着座した際に、シリンダの燃焼室を画成するようになっている。
傘裏42cは、傘表42bの反対側で円錐形に形成され、その直径が傘表42bから傘裏42cに向かって徐々に小さくなるようにして軸部41と連結位置31aで連結されている。
【0029】
太軸部43は、軸部41と傘部42との連結部分に形成されており、直径Dを有しており、その縦断面の縁は、任意の滑らかな曲線で描かれ、軸部41の外周面から突出して凸状に形成されている。
この太軸部43は、傘表42bから傘部直径Dと略同じ大きさの距離Lだけ離隔した位置と連結位置31aとの間の区間内で形成されることが好ましい。距離Lが傘部直径Dよりも大きすぎると、バルブガイド32と干渉してしまい、エキゾーストバルブ31の軸線方向の摺動が妨げられるおそれがあり、距離Lが小さすぎると、耐熱強度上の適切な位置から外れてしまうおそれがある。
【0030】
図3の上側に示すように、この太軸部43は、エキゾーストバルブ31が高温の排気ガスの流通により受けて生ずる最高温度部位に位置している。
最高温度部位は、エキゾーストバルブ31が開状態のとき、バルブフェース42aの面角度が約45度であるため、バルブフェース42a面に沿って、バルブフェース42aとバルブシート2との間の通路から流出する高温の排気ガスが直接衝突する部分となっている。また、この排気ガスの流出経路は、排気ポートを囲むシリンダヘッド1の内壁面の形状の影響を受けてしまう。
【0031】
そのため、エキゾーストバルブ31において、以下の位置が、最高温度部位となってしまうことになる。
最高温度部位は、傘表42bの傘部直径Dすなわち、バルブ径の1/2と、エキゾーストバルブ31のリフト量の1/2〜1/3とを加算した傘表42bからの距離の位置となる。
高温の排気ガスの流通により、エキゾーストバルブ31には、図3の下側のグラフで示すように、傘表42bからの距離が短い部分や長い部分では、発生する熱は比較的低いが、傘表42bからの距離が短い部分と長い部分との中間で、高温部となり、最高温度部位となる。
【0032】
図4に示すように、実施形態に係るエキゾーストバルブ31においては、エキゾーストバルブ31が低温の場合と比較して、高温の場合には、材料のテストピースを用いた疲労試験で示されるように、折れ線で示す繰り返し回数における許容される応力(MPa)が著しく低下している。したがって、高温となる部位の機械的強度を高めることは、許容される応力を高めることができることになる。
【0033】
図5の左側の模式図に示すように、この太軸部43において、前述の直径Dの任意の滑らかな曲線上で、その変曲点をPとし、変曲点Pと、この変曲点Pの図示しない曲率中心とを結ぶ線に直交するとともに変曲点Pを通り変曲点Pよりも上側の軸部41方向への傾きの線と、エキゾーストバルブ31の軸線CLと交わる点をPとする。なお、変曲点は、曲線で曲がる方向が変わる点で、曲線上で曲率のプラスマイナスの符号が変化する点を変曲点を意味している。
【0034】
そして、変曲点Pを通る線と軸線CLとがなす角をθとし、変曲点Pを通り変曲点Pよりも下側(最大軸径より下側)の傘部42方向への傾きの線と、軸線CLとがなす角をθとする。また、なす角θが、なす角θ以上になる位置となる傘表42bからの距離Lが傘部直径Dの1/4となる位置と、なす角θ>なす角θになる傘表42bからの距離Lが傘部直径Dの2/3となる位置との間を適用範囲とする。
【0035】
この適用範囲内において、軸径が極小となる部位すなわち凹部44が存在するよう、太軸部43と傘部42との間の部分を形成するようにしてもよい。このような構成により、エキゾーストバルブ31の軽量化が図られる。
【0036】
また、図5の右側の模式図に示すように、この太軸部43において、前述の直径Dの任意の滑らかな曲線上で、その変曲点をPとし、変曲点Pと、この変曲点Pの図示しない曲率中心とを結ぶ線に直交するとともに変曲点Pを通り変曲点Pよりも上側の軸部41方向への傾きの線と、エキゾーストバルブ31の軸線CLと交わる点をPとする。
【0037】
そして、変曲点Pを通る線と軸線CLとがなす角をθとし、変曲点Pを通り変曲点Pよりも下側(最大軸径より下側)の傘部42方向への傾きの線と、軸線CLとがなす角をθとする。また、なす角θが、なす角θ以上になる位置となる傘表42bからの距離Lが傘部直径Dの1/4となる位置と、なす角θ>なす角θになる傘表42bからの距離Lが傘部直径Dの2/3となる位置との間を適用範囲とする。
【0038】
この適用範囲内において、軸径が極小となる部位、すなわち凹部44が存在するよう、太軸部43と傘部42との間の部分を形成するようにしてもよい。このような構成により、エキゾーストバルブ31の軽量化が図られる。
【0039】
前述の適用範囲内において、軸径が極小となる部位すなわち凹部44が傘裏42cの部分に位置しても、傘裏42cの部分の機械的強度に余裕がある場合には、適用することができ、軽量化を図ることができる。すなわち、機械的強度に余裕があれば、傘裏42cの部分に軸径が極小となる部位を形成しても、内燃機関の高負荷運転時に傘部42の温度が上昇して強度の低下を招き変形を起こし、シート性が低下するといういわゆるカッピングの弊害を招くことはない。
【0040】
次に、実施形態に係るバルブリフト機構15のエキゾーストバルブ31の効果について説明する。
【0041】
実施形態に係るエキゾーストバルブ31は、上述のように構成されているので以下のような効果が得られる。
すなわち、実施形態に係るエキゾーストバルブ31は、軸部41と、軸部41の一方端に形成されるとともに、内燃機関のシリンダに設けられたバルブシート2に着座するバルブフェース42aが形成された傘部42とにより構成されている。そして、軸部41が一定の直径からなる軸部直径Dを有し、傘部42が軸部直径Dより大きい傘部直径Dを有し、軸部41と傘部42とを連結する連結位置31aと、傘表42bから軸部方向に傘部直径Dと略同じ大きさの距離Lだけ離隔した位置との間の区間内で、傘部直径Dよりも小さく、かつ、軸部直径Dよりも大きい直径の太軸部43を形成したことを特徴としている。
【0042】
その結果、重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく、十分な耐熱強度を確保することができるという効果が得られる。
すなわち、耐熱強度を必要とする太軸部43のみ軸径を大きくしているので、従来のエキゾーストバルブのように、バルブステム全体の径を太くして耐熱強度を向上させて質量を増加させてしまうという問題が解消されるという効果が得られる。
また、実施形態に係るエキゾーストバルブ31は、従来の汎用性のある安価な材料を使っているので、従来のエキゾーストバルブのように、耐熱強度の高いレアメタルを使用する必要はなく、材料のコストが高い金属によるオーバークオリティになることはないので、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0043】
また、実施形態に係るエキゾーストバルブ31は、熱処理の追加および変更をして耐熱強度を向上させる必要がないので、従来のエキゾーストバルブのように、熱処理工程の追加や変更の必要がなく、設備自体や設備の変更のコストの増大を防ぐことができる。
【0044】
また、従来の傘部において強度の余裕のあった部分の駄肉を、凹部44の形成により低減することができ、軽量化を図ることができるという効果が得られる。
【0045】
図6に示すように、実施形態に係るエキゾーストバルブ31は、温度分布において最も高温となる部位の軸径を太くしているので、図6の上側に示す形状の場合にはもちろん、図6の下側に示す形状、すなわち凹部44を設けた場合にも、耐熱強度が向上しているので、この太軸部43の部分の強度がUPし、安全率が著しく向上している。
また、凹部44は、従来、強度に余裕のあった部分の駄肉を低減しているので軽量化が図れる一方で、機械的強度の低下はなく、安全率も維持されている。
【0046】
このように、耐熱強度を向上させることができるので、今後、燃費向上や排気ガス規制などの要請により、燃焼室から流出する排気ガスの温度が高まっても、重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく機械的強度の高いエキゾーストバルブが得られる。
また、エキゾーストバルブの運動性への影響も小さくすることができ、良好な運動特性が得られる。
【0047】
以上説明したように、本発明に係るエキゾーストバルブにおいては、重量の増大や製造コストの増大を伴うことなく、十分な耐熱強度を有するエキゾーストバルブを提供することができるという効果を有し、広く高温の環境下で使用されるバルブ全般に有用である。
【符号の説明】
【0048】
10 動弁機構
15 バルブリフト機構
31 エキゾーストバルブ
31a 連結位置
41 軸部
42 傘部
42a バルブフェース
42b 傘表
42c 傘裏
43 太軸部
44 凹部
軸部直径
傘部直径
太軸部の直径
、L、L 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、前記軸部の一方端に形成されるとともに、内燃機関のシリンダに設けられたバルブシートに着座するバルブフェースが形成された傘部とにより構成されたエキゾーストバルブにおいて、
前記軸部が一定の直径からなる軸部直径を有し、
前記傘部が前記軸部直径より大きい傘部直径を有し、
前記軸部と前記傘部とを連結する連結位置と、前記バルブフェースと反対側の傘表から前記軸部方向に前記傘部直径と略同じ大きさの距離だけ離隔した位置との間の区間内で、前記傘部直径よりも小さく、かつ、前記軸部直径よりも大きい直径の太軸部を形成したことを特徴とするエキゾーストバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149589(P2012−149589A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9949(P2011−9949)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)