説明

エコー源性電気外科処置用器具

目標部位を電気外科処置するエコー源性電気外科処置器具及び方法が提供されている。該器具は、細長い本体を備えており、該細長い本体は近位部分と遠位部分とを備えている。該細長い本体の前記遠位部分は、エコー源性領域と、電気絶縁層を提供しているコーティングされた部分と、コーティングされていない導電性の電気外科処置領域とを備えている。前記のコーティングによって、体内において効率良く誘導できる分解能でエコー源性領域の超音波像を映し出すのに十分な超音波をエコー源性領域から反射させることができる。前記のコーティングされている領域は第一の表面積を有しており、前記の電気外科処置領域は第二の表面積を有している。前記第一の表面積は第二の表面積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して超音波可視化器具のための器具及び方法に関し、更に特定すると、組織を電気外科処置によって処置するための超音波視覚化器具に関する。
【0002】
(関連出願)
本願は、2009年8月19日に出願された米国仮特許出願第61/235,115号の優先権を主張している。該米国特許仮出願は、これに言及することにより、その全体が参考として本明細書に組み入れられている。
【背景技術】
【0003】
患者の管腔内領域及び管腔外領域における外科処置用器具の配置及び向きを監視する機能は重要である。X線透視法及びX線不透過性材料が、これまで消化管の可視領域を形成するために使用されて来た。X線透視は、テレビモニター上に胃腸管(GI)内腔の像を形成するためにX線ビームを患者の体内を透過させる技術である。この技術はまた、診断処置中の器具の動きを監視するために使用することもできる。しかしながら、X線は電磁放射線からなるので、胆管及び膵管にとって危険なものである。
【0004】
従来のX線透視は、内視鏡の遠位端に取り付けられているビデオカメラによって該内視鏡が挿入されている管腔内領域の可視化を行う。しかしながら、ビデオカメラは、管腔内領域のみに限られた撮像視野を提供する。管腔の外側における管腔外領域に対する外科処置用器具の使用は、内視鏡ビデオカメラによって視覚化されない。
【0005】
医療用超音波は、器具を監視するために使用される別の選択肢とされて来た。医療用超音波は、生体組織の像を形成するために高い周波数の音波を使用する。超音波が射出されると、該超音波は、表面の変化にぶつかって反射する。反射された音波が像を形成するために使用される。超音波は、管腔外領域のみならず管腔内領域内での医療器具の監視も可能にする。このような監視は、医療器具が目標部位へと誘導され且つ隣接組織を不注意に損傷させないことを確実にするのに必要である。
【0006】
診断及び治療用胃腸内視鏡のために種々のタイプの医療器具が一般的に使用され、該医療器具は消化管へのアクセスを提供する。一般的な内視鏡処置としては、種々の組織の切開、試料採取、及び切除がある。切断器具及び焼灼器具のような多くの器具が単一の処置を行うために使用される。一つの例示的な処置においては、切断器具は、粘膜を含む消化壁の一部を切除するために即ち内視鏡による粘膜切除のために消化管内で使用される。これらの切除処置は、出血及び組織に対する外傷を生じさせ且つ患者の治癒時間を長くする。患者に対する外傷程度を減らすこと並びに処置時間を短縮することが重要である。従って、処置を行う際に綿密に監視することができる器具を備えること、並びに目標部位における切断機能と焼灼機能との両方を行なうことができる器具を備えることが有効である。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明は、エコー源性であると共に目標部位に電気外科処置を行うこともできる器具を提供することを目的とする。
【0008】
上記の目的は、本発明の一つの特徴に従ってエコー源性の電気外科処置器具を提供することによって達成される。該器具は細長い本体を備えており、該細長い本体は近位部分と遠位部分とを備えている。該細長い本体の遠位部分は、エコー源性領域と電気絶縁層を提供するコーティングされた部分と、コーティングされていない導電性の外科処置領域とを備えている。前記のコーティングは、エコー源性領域の超音波像を形成するのに十分な量の超音波をコーティングされたエコー源性領域から反射させ、体内での効率の良い誘導を提供する。前記のコーティングされている領域は、第一の表面積を有しており、前記の電気外科処置領域は第二の表面積を有している。第一の表面積は第二の表面積よりも大きい。
【0009】
本発明の別の特徴に従って、エコー源性電気外科処置装置が提供される。該装置は、近位部分と遠位部分とを備えている外側シースと、該外側シース内を少なくとも部分的に伸長している管腔とを備えている。該装置はまた、少なくとも一部を前記管腔内に位置決めできる細長い本体をも備えており、該細長い本体は近位部分と遠位部分を備えている。該本体はまた、導電性材料からなる。前記細長い本体の遠位部分は、エコー源性領域と該エコー源性領域の少なくとも一部分上に設けられているコーティングを含むコーティング部分と、コーティングされていない導電性電気外科処置領域とを備えており、前記コーティングは、前記コーティングされた部分上に電気絶縁層をもたらし、該電気絶縁層は、エコー源性領域の超音波像を形成するのに十分な量の超音波をコーティングされたエコー源性領域から反射させて体内での効率の良い誘導を実現する。該装置は更にハンドルを備えており、該ハンドルは前記細長い本体に操作可能形態で結合されている電極を備えている。
【0010】
本発明のもう一つ別の特徴に従って、超音波誘導電気外科処置器具を患者の体内の目標部位に装備する方法が提供されている。この方法は、近位部分と遠位部分とを備えており且つ導電性材料からなる細長い本体を準備するステップを含んでいる。該細長い本体の遠位部分は、エコー源性領域と、該エコー源性領域の少なくとも一部分に設けられたコーティングを含んでいるコーティング部分と、コーティングされていない導電性の電気外科処置領域とを備えており、前記コーティングは、エコー源性領域の超音波像を映し出すのに十分な量の超音波を体内において効率良く誘導できる分解能で前記のコーティングされたエコー源性領域から反射させる電気絶縁層を堤供している。該方法はまた、エコー源性領域の超音波による可視化を利用して前記の遠位部分を目標部位へ導くステップと、細長い本体に電流を供給するステップと、前記目標部位を前記の電気外科処置領域と接触させるステップと、組織を電気外科処置によって処置するステップとを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明によるエコー源性電気外科処置器具の一実施形態の部分側面図である。
【0012】
【図2】図2は、本発明によるエコー源性電気外科処置器具のもう一つの実施形態の部分側面図である。
【0013】
【図3】図3は、本発明によるエコー源性電気外科処置器具のもう一つの別の実施形態の部分側面図である。
【0014】
【図4】図4は、発明によるエコー源性電気外科処置器具の一つの別の実施形態の側面図であり、ハンドルを示している。
【0015】
【図5】図5は、組織を治療するためにGI管内に配置されているエコー源性電気外科処置器具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図面においては、同様の部材は同様の符号によって示されている。本発明の種々の構成要素の相対関係及び機能は、以下の詳細な説明によって更に良く理解できる。しかしながら、本発明の実施形態は図面に示されている実施形態に限定されない。図面は一定の比率で拡大縮小されておらず、ある種の例においては、本発明の理解に必要でない細部例えば一般的な構成部品及びアセンブリは省略されていることが理解されるべきである。
【0017】
明細書において使用されている近位及び遠位という用語は、器具を患者の体内へ送り込む医師に関して名付けられたものであると理解されるべきである。従って、“遠位”という用語は、医師から最も遠いエコー源性の切除及び焼灼する器具部分を意味しており、“近位”という用語は、医師に最も近い器具部分を意味している。
【0018】
ここで使用されている“エコー源性“という用語は、高いエコー源性を有するものとして規定されている。特に、このエコー源性と言う用語は、シース、カニューレ、カテーテル及び/又はスタイレット用として使用される標準的な材料よりも高い超音波反射率を有し且つ患者の体内で使用される際にエコー源性器具の部分を正確に配向させ且つ誘導するために周囲組織に対するエコー源性を提供するように作られ又は処理された材料又は材料の部分を指すために使用されている。当該技術においては、シース、カテーテル、カニューレ、又はスタイレットに使用される殆どの材料は、幾らかは超音波を反射することが知られているが、本明細書において使用されている“エコー源性”という用語は、例えば、各々が同じ大きさ/形状の対象物の滑らかな表面よりもエコー源性を高めることが当該技術において知られている1以上の凹み、ディボット(窪み)、刻み目、畝状突起等を含む型押しされた又は模様付けされた表面を形成することによって表面処理すること(及び/又は、特に注記される場合には、高いエコー源性を提供することが知られている材料を使用すること)を含んでいる。これらは、(例えば、患者の)体内での器具の正確な配置及び誘導ができる分解能の明確な超音波可視化を実現する構造とされている。
【0019】
図1及び2は、本発明の実施形態によるエコー源性電気外科処置器具10を示している。器具10は、近位部分20(図4に示されている)と遠位部分30とを備えている概ね細長い本体14を備えている。遠位部分30は先端部32を備えており、先端部32は、閉塞部、胃壁、腸壁、又は内視鏡によってアクセス可能な部位と目標部位との間の別の人工的な若しくは本来存在する構造を貫通するために使用され、該貫通には経管腔的内視鏡手術(NOTE)のための穴の形成が含まれる。先端部32は、図1に示されているように、尖らせても良いし、斜めに形成されても良いし、又は(図2に示されているように)尖らせなくても良い。先端部32はまた、切り込み刃の形態で長手方向に延びている鋭い面36をも備えている(図4参照)。本体14は、図1及び2に示されているように、本体14を少なくとも部分的に貫通して延びている管腔34を備えている。代わりに、本体14は図4に示されているように中実であっても良い。
【0020】
器具10は更に、管腔42がその内部を少なくとも部分的に貫通している外側シース38を備えている。本体14は、管腔42内に配置されており且つシース38に対して摺動可能であって、本体14の遠位の先端部32が目標組織内へと挿入できるようにシース38の遠位端44から遠位方向に伸長できるようになされている。遠位の先端部32は、シース38の遠位端44が患者の体内の目標部位近くに位置するまでは、シース38の管腔42内に保護される。
【0021】
本体14は、1以上のエコー源性領域52を遠位部分30上に備えている。本体14はまた、1以上の電気外科処置領域58を遠位部分30上に備えている。電気外科処置領域58は、組織を焼灼するか、切除するか、又は別の状況では電気外科処置によって処置するために使用される。電気外科処置領域58は、組織と接触し得る本体14の遠位部分30のうち電気外科処置領域58となる部分をコーティングされていない状態のまま残し且つ残りの部分をコーティングすることによって作られる。エコー源性領域52は、本体の遠位部分30上において、電気外科処置領域58に隣接させるか又は少なくとも部分的に重ねるか又はある距離のところに位置決めされて、処置中における電気外科処置領域58の位置を指し示す。エコー源性領域52と電気外科処置領域58とは、如何なる形状及び大きさであっても良い。例えば、電気外科処置領域58は、本体14の周囲を取り巻き且つ組織に曝される遠位部分30の長さよりも短い幅のリングとして設けられる。幾つかの実施形態においては、電気外科処置領域58は、本体14の周囲を取り巻いているリング状に形成されており且つ図1に示されているように先端部32から隔置されている。幾つかの実施形態においては、電気外科処置領域58の表面積は、遠位部分30の組織に曝される長さの10%以下とし、組織との接触点におけるエネルギが散逸しないようになされる。代替的に又はこれに加えて、電気外科処置領域58は、図2に示されているように、本体14の外周の一部分のみに設けられた長手方向に延びている矩形形状又はジグザグ形状又はその他の形状とすることができる。電気外科処置領域58はまた、図3に示されているように、遠位の先端部32にただの一点よりも大きいサイズで設けても良い。エコー源性領域52はまた、本体14上の電気外科処置領域58と同じ位置にあっても良い。
【0022】
図4に示されているように、本体14とシース38とには、シース38の近位部分45に取り付けられたハンドルアセンブリ62と、ハウジング72を貫通している穴66とが設けられている。意図する処置に応じて、付加的な構成部品をハンドルアセンブリ62に付け足しても良い。例えば、吸引ポート又は潅水ポートのような1以上の付加的なポートが備えられても良い。図示されているように、ハンドルアセンブリ62は、相対的に動かすことができる第一の部分68と第二の部分70とからなる2つの部分を備えている。ハンドルアセンブリ62のハウジング72はまた、電気外科処置用発電器(図示せず)に接続可能な1以上の電極74をも備えている。電極74は本体14の一部分と接触している。当業者が理解できるように、付加的なハンドルアセンブリは、本体14及びシース38と一緒に使用することができる。例えば、ハンドルアセンブリは、患者の体内での本体14の位置を操作する補助とするために、種々の数のリング、トリガー用把手又はその他の把持面を使用することができる。
【0023】
本体14の電気外科処置部分58は、コーティングされておらず且つコーティングされている部分によって囲まれている表面を有しており、前記のコーティングされている部分の表面積は、本体14を絶縁し且つエネルギを電気外科処置部分58に導くために、コーティングされていない表面積よりも大きくされている。例えば、電気外科処置領域58が本体14を包囲しており且つ遠位の先端部32から隔置されているリングとして設けられている場合には、本体14のコーティングされている部分は、コーティングされていない電気外科処置領域58の辺りに比較的大きな電流を維持し、その結果、同心リング形状に切除された組織が形成される。本体14の一部分はポリマーコーティング82によってコーティングされている。分かりやすいように、図1においては、ポリマーコーティング82は、電気外科処置部分58を除いた本体14の遠位部分を覆っているものとして示されている。図2〜4においても同様に、コーティング82は、電気外科処置部分58を除いた本体14の遠位部分30を覆っていると理解されるべきである。ポリマーコーティング82は、電気外科処置部分52の少なくとも1以上を覆っており、従って、該コーティングは、処置中にエコー源性部分52の可視化の邪魔とならないように十分に薄くなければならない。幾つかの実施形態においては、コーティング82は、数分の1ミクロンから数千分の1インチ(2.54センチメートル)の間の厚さである。幾つかの実施形態においては、コーティング82の厚みは約5μm〜約50μmである。該コーティングはまた、摩擦係数が低く且つ本体14に適用される電流を絶縁している。コーティング82は、電流が電極74から本体14へ流れるときに電気外科処置領域58を除いたコーティングされている部分に本体14のための絶縁部をもたらし且つエコー源性部分52を視認できるようにもされる。コーティング82は、電気外科処置領域58と接触している組織の部分の電流密度を一定のままとし且つ正確な切断又は焼灼を行う。例えば、電気外科処置領域58が本体14を取り巻いているリング形状で設けられている場合には、帯を形成するために小さな点毎に組織と接触する必要が無い状態で帯状の組織を焼灼することができ又は同心円状の貫通穴を開けることができる。幾つかの実施形態においては、約2mmの帯が電気外科処置領域58を形成しており、遠位部分30の残りの部分はコーティング82によって覆われている。
【0024】
幾つかの実施形態においては、コーティング82は、パリレン−N−(ポリ−p−キシリレン)によって作ることができる。その他のキシリレンポリマー特にパリレンポリマーもまた、本発明の範囲内でコーティングとして使用することができる。このようなキシリレンポリマーとしては、例えば、2−クロロ−p−キシリレン(パリレンC)、2,4−ジクロロ−p−キシリレン(パリレンD)、ポリ(テトラフルオロ−p−キシリレン)、ポリ(カルボキシル−p−キシリレン−コ−p−キシリレン)、弗化パリレン、又はパリレンHT(登録商標)(過弗化パリレン及び非弗化パリレン)の単独又は何らかの組み合わせがある。本発明の好ましいコーティングは以下の特性を有している。すなわち、該コーティングは、低い摩擦係数(好ましくは約0.5未満、更に好ましくは約0.4未満、最も好ましくは約0.35未満)、水分及びガスの極めて低い透過率、菌及び細菌に対する耐性、高い引っ張り及び降伏強度、高い順応性(不規則な表面を含む全ての表面に対してボイドを残すことなく均一な厚みで容易に適用できること)、耐放射線性(X線透視による不利な作用が無いこと)、生体適合性/生体不活性、耐酸性及び耐塩基性(酸性流体又は苛性流体によってほとんど又は全く損傷を受けない特性)、ワイヤー表面への化学蒸着結合/一体化によって適用される機能(この結合は、例えば下に横たわっているワイヤーから剥がすことができる表面の膜を形成する例えば弗化エチレンに対して目立たせるように意図されている)、及び高い絶縁耐力を有している。特に、パリレンコーティングはこれらの特性を示す(例えば、表1を参照)。
【表1】

【0025】
コーティング82は、エコー源性領域52を視認するのに適しており且つコーティングを本体14を絶縁するのに適した厚みで堤供することができて当業者に公知の何らかのコーティング方法によって本体14に適用することができる。コーティング82は、化学蒸着(プラズマアシストCVDプロセスを含む“CVD”)によって本体14に成膜される。化学蒸着は、例えばパリレンコーティングのようなコーティングをデバイスへ成膜するためによく適用される電子回路技術においてよく知られたプロセスである。該プロセスは、コーティングをデバイスの外周面上に滑らかに且つ均一に成膜する。パリレンコーティングを使用しているコーティングされた本体14は、コーティングの寿命、コストの節約、及び所望の外径における利点を提供する一方で、優れた潤滑性(低摩擦)及び電気絶縁特性を備えたコーティングを実現する。従来技術によるコーティングとは対照的に、本発明による接合コーティングは、例えば、内視鏡又は外側シースのような別の表面との摩擦又は外傷性の接触によって、ワイヤーから分裂したり剥れたりしない。本発明の本体14は導電性であり且つ本発明の範囲内でステンレス鋼かニチノールか又はその他の導電性材料によって作られる。
【0026】
本体14の電気外科処置領域58は、本体14に対してコーティング82からなる取り外し可能な保護マスキングを適用することによってコーティングされる。該取り外し可能な保護マスキングは、絶縁コーティング適用プロセス中において電気外科処置領域58を保護するために設けられている。該取り外し可能な保護マスキングは、コーティング82が本体14に適当された後に取り外される。
【0027】
ここに記載された方法の実施形態の標的形態による本体のコーティングによって、所望の電気絶縁コーティングが付与される一方で電気絶縁コーティングの使用の最少化及びこれに付随して生じるコストの節約もなされる。コーティングの薄さ及び均一性は、コーティングが化学蒸着によって成膜されるか又は別の方法によって成膜されるかに関係なく、コーティングされる本体の長さに沿って均一となっているのが好ましいが、シースの外側には曝されるが切除に使用されるようにはされていない本体の領域(特に、通常の手術中に電気外科処置領域のすぐ隣に位置し且つシースの外側に曝される本体の領域)に完全性を維持するコーティングを提供するのが最も好ましい。
【0028】
電力供給のための電源は、外科処置のための電力を供給するための何らかの適切な供給源とすることができる。電力の供給は、単極であっても良いし又は双極であっても良い。例えば、双極器具は、針(図示せず)から電気的に絶縁されている針の部分に接続されている小さな絶縁された帰線を備えることによって実現される。
【0029】
エコー源性領域52は、当業者に公知の何らかの方法を使用して形成することができる。非限定的な例として、窪み、溝、又は畝状突起を、本体14の表面上にランダムに又は比較的に規則的なパターン、例えば同心円若しくは器具の軸線に対して実質的に平行に又は直角に延びている線のような幾何学的形状及びパターンで、例えば帯又はコルセットを提供する円周状の配列又はらせん状配列によって設けることができる。関連する医療器具の正確な大きさ及び形状に適合させる適切なパターンを容易に決定することができる。これらのパターンはまた、医師が目標組織に対する器具10の位置を観察するのを補助し且つ迂闊にも入射する超音波が遠位の最もエコー源性の高い領域52にあたっていない場合に本体14が超音波走査面の視野内に存在するようにするために設けることもできる。該パターンはまた、医師が本体の付加的な機能部分例えば以下に説明する焼灼領域を確認するのを補助するようにすることもできる。窪んだ表面、溝状表面、又は畝状突起表面はまた、例えばレーザーや超高圧水流カッターを使用するエッチングによって又は電解エッチングによって又はサンドブラストのようなブラスト処理によって形成することもできる。例示的なエコー源性器具及び方法はまた、米国特許出願公開2008/0097213号にも見出すことができる。該米国特許出願公開は、これに言及することにより、その全体が本明細書に組み込まれている。本体及び該本体を取り巻いているシース上にエコー源性領域を備えている器具の一つの例は、(米国インジアナ州ブルーミントンにあるCook Medicalから入手可能な)EchoTip(登録商標)に見出すことができる。
【0030】
幾つかの実施形態においては、外側シース38にもまた1以上のエコー源性領域56が設けられている。エコー源性領域56は、上記した方法又は当業者に公知の何らかの方法を使用して形成することができる。非限定的な例として、外側シース38は、ステンレス鋼すなわち強化管又はニッケルチタン合金によって作ることができる。幾つかの実施形態においては、外側シースは、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ePTFE、PTFE、又はPET材料によって作ることができる。
【0031】
組織をエコー源性電気外科処置器具10によって処置する一つの例示的な方法が図5に示されている。典型的には、高い周波数の音波を使用して生体組織又はエコー源性表面の像を形成する内視鏡又は内視鏡超音波(EUS)器具が、十二指腸102内に位置決めされる。EUS器具100が図5に示されており、該EUS器具は、内視鏡100の遠位端118に超音波トランスジューサ114のアレイを備えている。トランスジューサ114は撮像装置(図示せず)に接続されており、該撮像装置は、超音波トランスジューサ114とエコー源性領域52を備えている器具10とによって形成された像を見ることができる。トランスジューサ114は、超音波走査面180を生成して、該走査面180内での医療器具の位置及び向きのリアルタイムの観察を可能にしている。器具10の本体14とシース38とは、EUS器具100の付属チャネル104から伸長し且つ十二指腸102の壁内の目標組織182へと導かれた状態で示されている。本体14の遠位の先端部32は、超音波トランスジューサ114からの像を使用して、目標処置部位182の組織内へ挿入されて本体14の先端部を正しい位置に位置決めする。所望の場合には、組織試料が本体14の管腔34を介して採取される。電気外科処置領域58が組織へと進められ、電源が起動され、電気外科処置領域58を該組織に適用して遠位の先端部32の挿入位置の周囲の組織が円形帯状に焼灼される。該周囲組織は、本体14の遠位部分上のコーティング82によって影響を受けない。同様に、本体14に電流を供給することによって目標部位182の組織を切除するために電気外科処置領域58が使用され、その結果、例えば丸みを付けられている遠位の先端部32が本体14上に設けられている場合には、電気外科処置領域58は、該電気外科処置領域58においてのみ組織に切り込まれる。電気外科処置領域58が本体14を取り巻いているリングとして設けられている場合には、目標組織は先端部32から離れた位置で同心円状に焼き取られる。先端部32がコーティングされている場合には、コーティング82を備えていることによって、電流密度は、先端部32においてはではなくリング状の電気外科処置領域58においてより高くなる(図1参照)。コーティング82が設けられていない場合には、電流密度は低下し、針の先端において焼灼が生じる。リング状の電気外科処置領域58は、穿刺された血管器官の焼灼を可能にして、高密度の電流によって傷付けられた円形の穿刺部の周囲の出血を止めるか又は出血速度を遅くして、同心状の焼き取りのための十分なエネルギを供給する。
【0032】
添付図面及び上記の説明は、例示的なものであり排他的なものではないことが意図されている。この説明は、当業者に多くの変形例及び代替例を示唆するであろう。このような変形例及び代替例の全てが、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されるように意図されている。当業者は、ここに記載されている特定の実施形態に対する他の等価物がわかり、これらの等価物もまた添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。例えば、本発明を例示目的のみのための胆管系に関して記載した。本発明の原理を患者の体内の他の何らかの分岐した管腔又は血管に適用すること、例えば非限定的な例として、膵臓系のような消化管内の領域並びにその他の血管系のような消化管の外側領域に適用することも、当業者の範囲内に含まれ且つ添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されることが意図されている。
【符号の説明】
【0033】
10 エコー源性電気外科処置器具、 14 本体、
20 近位部分、 30 遠位部分、
32 先端部、 34 管腔、
36 鋭い面、 38 外側シース、
42 管腔、 44 シースの遠位端、
45 シースの近位部分、 52 エコー源性領域、
58 電気外科処置領域、 62 ハンドルアセンブリ、
66 穴、 68 第一の部分、
70 第二の部分、 72 ハウジング、
74 電極、 82 コーティング、
100 EUS器具(内視鏡)、 102 十二指腸、
104 付属チャネル、 114 超音波トランスジューサ、
118 内視鏡の遠位端、 180 超音波走査面、
182 目標組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エコー源性電気外科処置器具であって、
近位部分と遠位部分とを有し且つ該遠位部分が遠位の先端部を有している細長い本体を備えており、
前記遠位部分が、
エコー源性領域と、
第一の表面積を有しているコーティング部分であって、前記エコー源性領域の少なくとも一部分上のコーティングを含み、該コーティングが電気絶縁層を形成して、体内において効率良く誘導できる分解能で前記エコー源性領域の超音波像を映し出すのに十分な量の超音波が、前記コーティングがなされているエコー源性領域から反射されるようにされた、コーティング部分と、
第二の表面積を有し、コーティングされていない、導電性の電気外科処置領域と、を備えており、
前記第一の表面積が前記第二の表面積よりも大きい、ことを特徴とするエコー源性電気外科処置器具。
【請求項2】
前記エコー源性領域と前記電気外科処置領域とが少なくとも部分的に重なっている、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記遠位部分が複数のエコー源性領域を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記電気外科処置用領域が前記遠位部分上に設けられた円周帯からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記円周帯が前記細長い本体の長手軸線に沿って約2mmに亘って延びている、ことを特徴とする請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記電気外科処置用領域が、前記細長い本体の外周を円周方向に延びず、長手方向で延びている部分からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記遠位の先端部が尖っていないか又は尖っている、ことを特徴とする請求項1の記載の器具。
【請求項8】
前記コーティングが、ポリ−p−キシリレン、2−クロロ−p−キシリレン、2,4−ジクロロ−p−キシリレン、ポリ(テトラフルオロ−p−キシリレン)、ポリ(カルボキシル−p−キシリレンコ−p−キシリレン)、弗化パリレン、過弗化パリレンと非弗化パリレンとの共重合体、及びこれらの何らかの組合せ、からなる群から選択されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記コーティングが約0.4未満の静摩擦係数を有するポリマーコーティング材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記コーティングの厚みが約5μm〜約50μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記細長い本体が少なくとも部分的に内部を延びている内腔を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記細長い本体に操作可能な形態で接続されているハンドルを更に備えており、該ハンドルは、電気外科処置用発電器に接続されて前記外科処置領域に電流を付与する電極を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項13】
エコー源性電気外科処置用装置であって、
近位部分と遠位部分とを有し、内腔がその中を少なくとも部分的に伸長している外側シースと、
前記内腔内に少なくとも部分的に配置可能であり、近位部分と遠位部分とを有し、導電性材料からなる細長い本体であって、前記遠位部分が、
エコー源性領域と、
前記エコー源性領域の少なくとも一部分上のコーティングを含み、該コーティングが電気絶縁層を形成して、体内において効率良く誘導できる分解能で前記エコー源性領域の超音波像を映し出すのに十分な量の超音波が、前記コーティングがなされているエコー源性領域から反射されるようにされた、コーティング部分と、
コーティングされていない、導電性の電気外科処置領域と、
を備えた前記細長い本体と、
電極を有し、前記細長い本体に操作可能な形態で接続されているハンドルと、を備えていることを特徴とするエコー源性電気外科処置用装置。
【請求項14】
前記外側シースがエコー源性領域を備えている、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記細長い本体の遠位端部が電気外科処置領域を備えている、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
超音波誘導電気外科処置用器具を患者の体内の目標部位に配備させる方法であり、
近位部分と遠位部分とを備えており且つ導電性材料からなる前記細長い本体であって、前記遠位部分が、
エコー源性領域と、
前記エコー源性領域の少なくとも一部分上のコーティングを含み、該コーティングが電気絶縁層を形成して、体内において効率良く誘導できる分解能で前記エコー源性領域の超音波像を映し出すのに十分な量の超音波が、前記コーティングがなされているエコー源性領域から反射されるようにされた、コーティング部分と、
コーティングされていない導電性の電気外科処置領域と、を備えた細長い本体を準備するステップと、
前記細長い本体に電流を供給するステップと、
前記目標部位を前記電気外科処置領域に接触させるステップと、
前記組織を電気外科処置によって処置するステップと、を含む方法。
【請求項17】
前記細長い本体を前記目標部位へ送り込むために、外側シースを該細長い本体の外周に設けるステップを更に含んでいる、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細長い本体を前記外側シースの遠位側へと伸長させて該細長い本体を前記目標部位に曝すステップを含んでいる、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポリ−p−キシリレン、2−クロロ−p−キシリレン、2,4−ジクロロ−p−キシリレン、ポリ(テトラフルオロ−p−キシリレン)、ポリ(カルボキシル−p−キシリレン−コ−p−キシリレン)、弗化パリレン、又は過弗化パリレンと非弗化パリレンとの共重合体、及びこれらの何らかの組合せからなる群から選択されたコーティングを設けて、前記細長い本体を電気絶縁するステップを含んでいる、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記エコー源性領域の超音波による可視化を使用して、前記遠位部分を第二の目標部位に再位置決めするステップを含んでいる、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−502274(P2013−502274A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525624(P2012−525624)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/045565
【国際公開番号】WO2011/022311
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】