説明

エスカレータの清掃方法およびそれに用いられる清掃装置

【課題】この発明は、トラスの床面に堆積した油やごみなどを簡易に清掃できるエスカレータの清掃方法およびそれに用いられる清掃装置を得る。
【解決手段】清掃装置は、帰路側区間内の1つのステップ軸に取付金具33を装着してステップ軸12に回動可能に取り付けられる清掃具保持部材30と、清掃具保持部材30の保持棒31に装着されてトラス底面60に接するように配設される第1の清掃具35と、清掃具保持部材30が取り付けられたステップ軸12の下方に位置するステップ軸に取付金具43を装着して当該ステップ軸12に回動可能に取り付けられる圧力付加部材40と、清掃具保持部材30と圧力付加部材40のばね受け部34,44の対に装着されて圧力付加部材40のステップ軸12周りの回動トルクを清掃具保持部材30に伝達するコイルばね45と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータのトラス床面の清掃方法およびそれに用いられる清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エスカレータのトラスの底面は、油やごみなどで汚れやすく、定期的に清掃されている。この種の清掃は、トラス内にその昇降方向に無端状に設置された全踏み段のほぼ半分を取り外し、残りの踏み段をトラスの下方に移動させてトラスの作業スペースを確保し、トラスの上部の清掃を行い、ついでトラスの下方に移動させていた踏み段をトラスの上部に戻し、トラスの下部の清掃を行い、トラス全体の清掃が完了したら、取り外していた踏み段をトラス内に戻していた。
しかしながら、清掃作業の度に、ほぼ半分の踏み段の取り外し/取り付け作業が必要となり、作業負荷が多大となるとともに、作業時間が長くなるという不具合があった。
【0003】
このような状況を鑑み、清掃用マットをトラスの床面上に昇降方向に連続して設置しておき、清掃時に、清掃用マットの上端をトラス内の上部に位置する踏み段の1つに連結し、踏み段を上昇走行させて清掃用マットをトラスの下端部に設けられた作業用ピット側に引き寄せ、清掃用マット上に堆積した油やごみなどを回収した後、清掃用マットの上端を踏み段に連結して踏み段を下降走行させ、清掃用マットの上端をトラスの床面の上部まで移動させ、清掃用マットと踏み段との連結を解除する従来のエスカレータのトラスの床面の清掃方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−252081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエスカレータのトラスの床面の清掃方法では、トラスの床面上の昇降方向の全域に付設された清掃用マットを作業用ピット側に引き寄せ、清掃用マット上に堆積した油やごみなどを回収しているが、トラス下部の作業用ピットは狭く、清掃用マット上に堆積した油やごみなどの回収作業ができない。そこで、別途、広い回収作業スペースが必要となるとともに、作業用ピットに引き寄せられた清掃用マットを別途用意された広い回収作業スペースに運び出して回収作業を行う必要があり、回収作業が煩雑となるという不具合があった。
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、トラスの床面に堆積した油やごみなどを簡易に清掃できるエスカレータの清掃方法およびそれに用いられる清掃装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるエスカレータの清掃装置は、上階と下階とに掛け渡されたトラスと、上記トラスの上部機械室に設置された上部踏み段スプロケットと該トラスの下部機械室に設置された下部踏み段スプロケットとに巻き掛けられた無端状の踏み段チェーンと、上記踏み段チェーンに一定の間隔で取付けられたステップ軸のそれぞれに固定されて無端状に配置され、該踏み段チェーンの走行に連動して循環走行する複数の踏み段と、を備えたエスカレータの清掃装置であって、所定長さの保持棒、該保持棒の長さ方向に離間して、該保持棒からその長さ方向と直交する方向に、かつ同一方向に延設された一対の保持棒支持腕、および該一対の保持棒支持腕の先端に取り付けられた保持部材取付金具を有し、該保持部材取付金具により上記踏み段の帰路側経路に位置する上記ステップ軸の中の1つである第1のステップ軸に回動可能に取り付けられる清掃具保持部材と、上記保持棒に装着されてトラス底面を清掃する清掃具と、所定長さの圧力付加棒、該圧力付加棒の長さ方向に離間して、該圧力付加棒からその長さ方向と直交する方向に、かつ同一方向に延設された一対の圧力付加棒支持腕、および該一対の圧力付加棒支持腕の先端に取り付けられた圧力付加部材取付金具を有し、該圧力付加部材取付金具により上記踏み段の帰路側経路に位置する上記ステップ軸の中の、上記第1のステップ軸の下方に位置する第2のステップ軸に回動可能に取り付けられる圧力付加部材と、上記圧力付加部材の上記第2のステップ軸周りの回動トルクを上記保持棒に伝達して上記清掃具を上記トラス底面に押圧させるように作用させる圧力伝達部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、圧力付加部材による第2のステップ軸周りの回動トルクが、圧力伝達部材を介して清掃具保持部材に伝達され、清掃具をトラス底面に押付けるように作用する。そして、エスカレータを上昇走行させると、清掃具がトラス底面に押付けられながら下部機械室側に移動することになり、トラス底面に付着している油やごみなどが清掃具とともに下部機械室に引き寄せられる。そこで、下部機械室に引き寄せられた油やごみなどを下部機械室内でブラシなどを用いて回収でき、別途、広い回収作業スペースが必要とならず、回収作業が簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】エスカレータにおける全体構成を模式的に示す側面図である。
【図2】エスカレータにおける踏み段の構成を説明する斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る清掃装置の構成を説明する分解斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態に係る清掃装置に用いられる清掃具を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態に係るエスカレータの清掃方法を説明する要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、実施の形態を記載する前に、エスカレータの構造について図を用いて説明する。
図1はエスカレータにおける全体構成を模式的に示す側面図、図2はエスカレータにおける踏み段の構成を説明する斜視図である。
【0011】
図1および図2において、エスカレータ1は、傾斜部2a、および傾斜部2aの上下両端部からそれぞれ水平に突設された上部水平部2bおよび下部水平部2cからなり、上部水平部2bおよび下部水平部2cを上階および下階に設置して上下階床間に架け渡されたトラス2と、上部水平部2bに設けられた上部機械室3内に設置された電動機5と、上部機械室3内に設置され、電動機5と駆動チェーン6により連結された駆動スプロケット7と、駆動スプロケット7と同軸に取付けられた上部踏み段スプロケット8と、下部水平部2cに設けられた下部機械室4内に設置された下部踏み段スプロケット9と、上部踏み段スプロケット8と下部踏み段スプロケット9とに巻き掛けられた無端状の踏み段チェーン10と、踏み段チェーン10に一定の間隔で取付けられたステップ軸12に固定され、電動機5により駆動されて上部乗降口15と下部乗降口16との間を循環走行する複数の踏み段11と、循環走行する踏み段11の往路側で、踏み段11の両側に踏み段11の走行方向に沿って延在するようにトラス2に立設された一対の欄干19と、移動手摺り駆動装置13により踏み段11と同じ速度で欄干19に案内されて移動する無端状の移動手摺り20と、上部機械室3に設けられ、電動機5の駆動を制御する制御盤14と、を備えている。
【0012】
また、上部乗降口15は、上部機械室3を塞口するように床板17をトラス2の上部水平部2bに設置して構成されている。下部乗降口16は、下部機械室4を塞口するように床板18をトラス2の下部水平部2cに設置して構成されている。
【0013】
このように構成されたエスカレータ1では、電動機5が駆動され、電動機5の回転トルクが駆動チェーン6を介して駆動スプロケット7に伝達され、駆動スプロケット7と上部踏み段スプロケット9が回転駆動される。これにより、上部踏み段スプロケット8と下部踏み段スプロケット9とに巻き掛けられた無端状の踏み段チェーン10が循環走行し、踏み段11が上部乗降口15と下部乗降口16との間を循環走行する。また、駆動スプロケット7の回転トルクが移動手摺り駆動装置13に伝達され、移動手摺り20が踏み段11と同期して欄干19に案内されて移動する。そして、エスカレータ1が、例えば上昇運転されている場合には、利用者は、下階の下部乗降口16から踏み段11に乗り込み、上部乗降口15まで搬送されると、踏み段11から上部乗降口15に乗り移り、上階に移動できる。
【0014】
踏み段11の循環路は、床板17と床板18との間を走行する往路側区間と、床板17の下部で走行方向を反転する上部反転部、床板18の下部で走行方向を反転する下部反転部、上部反転部と下部反転部との間のトラス2内を走行する帰路側区間を有している。ここで、エスカレータ1が上昇走行するとすれば、即ち踏み段11が下部乗降口16から上部乗降口15に上昇走行するとすれば、踏み段11は、往路側区間を床板17まで移動し、床板17の下部乗降口16側の端部からトラス2内に沈み込み、上部反転部を介して移動方向を反転され、トラス2内の帰路側区間を床板17の下部まで移動し、下部反転部を介して移動方向を反転されて床板18の上部乗降口15側の端部から現れて往路側区間を上部乗降口15側に移動する。
【0015】
以下、本発明によるエスカレータの清掃方法およびそれに用いられる清掃装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0016】
図3はこの発明の実施の形態に係る清掃装置の構成を説明する分解斜視図、図4はこの発明の実施の形態に係る清掃装置に用いられる清掃具を示す斜視図である。
【0017】
図3において、清掃具保持部材30は、所定長さの保持棒31と、保持棒31の長さ方向に離間して、互いに平行に、かつ保持棒31と直交するように、保持棒31から同一方向に延設された一対の支持腕32と、各支持腕32の先端に取り付けられた取付金具33と、保持棒31の長さ方向に離間して、互いに平行に、かつ保持棒31と直交するように、保持棒31に突設された3つのばね受け部34と、を備える。そして、支持腕32およびばね受け部34は、保持棒31の長さ方向の中央を通る保持棒31と直交する平面に対して面対称となるように保持棒31に取り付けられている。
【0018】
この清掃具保持部材30は、後述するように、取付金具33を帰路側区間に位置するステップ軸12に装着してステップ軸12に回動可能に取り付けられる。そして、支持腕32の長さが、ステップ軸12とトラス2の傾斜部2aの底面(以下、トラス底面60とする)との間の鉛直方向の距離より長く作製されている。そこで、ステップ軸12に取り付けられた清掃具保持部材30は、保持棒31がステップ軸12の鉛直位置より下部機械室4側でトラス底面60に接するように配設される。このとき、ばね受け部34は、水平方向に対して僅かに上向きとなるように、保持棒31に突設されている。
【0019】
第1の第1の清掃具35は、V字状に構成された保持枠36と、V字状に成形され、保持枠36の各辺36aのV字状の内側縁部から延出するように、保持枠36の下面に固着されたゴム製のブレード37と、保持枠36の各辺36a上面の長さ方向の略中央部に固着された取り付けられた取付金具38と、を備える。そして、保持枠36およびブレード37は、そのV字状の開口長さがトラス底面60の幅方向長さと略等しくなるように作製されている。また、ブレード37の辺36aの縁部から延出部は、延出するにしたがい先細りとなる断面形状に作製されている。
【0020】
この第1の第1の清掃具35は、後述するように、取付金具38を保持棒31に装着して、保持棒31に回動可能に組み付けられる。そして、清掃具保持部材30がステップ軸12に取り付けられた際に、第1の第1の清掃具35は、V字形の開口が下部機械室4側に向くように配設される。
【0021】
圧力付加部材40は、所定長さの圧力付加棒41と、圧力付加棒41の長さ方向に離間して、互いに平行に、かつ圧力付加棒41と直交するように、圧力付加棒41から同一方向に延設された一対の支持腕42と、各支持腕42の先端に取り付けられた取付金具43と、圧力付加棒41の長さ方向に離間して、互いに平行に、かつ圧力付加棒41と直交するように、圧力付加棒41から突設された3つのばね受け部44と、を備える。そして、支持腕42およびばね受け部44は、圧力付加棒41の長さ方向の中央を通る圧力付加棒41と直交する平面に対して面対称となるように圧力付加棒41に取り付けられている。
【0022】
この圧力付加部材40は、後述するように、清掃具保持部材30が取り付けられるステップ軸12の下部機械室4側の隣りに位置するステップ軸12に取付金具43を装着して当該ステップ軸12に回動可能に取り付けられる。支持腕42の長さが、ステップ軸12に取り付けられた清掃具保持部材30のトラス底面60に接している保持棒31と、圧力付加部材40が取り付けられるステップ軸12との間の距離より短く作製されている。そして、ばね受け部44は、ステップ軸12に取り付けられた圧力付加部材40の圧力付加棒41がトラス底面60の接している保持棒31に近接したときに、ばね受け部34と相対し、かつ両者の突出方向が略一致するように、圧力付加棒41に突設されている。
【0023】
圧力伝達部材としてのコイルばね45は、相対するばね受け34,44の各対に装着されて、圧力付加部材40の荷重を清掃具保持部材30に伝達する。
【0024】
図4において、第2の清掃具46は、所定長さの保持枠47と、保持枠47の下端から延出するように、保持枠47の長さ方向の全域にわたって配設されたフェルト製のはけ部48と、保持枠47の上面の長さ方向の中央部に取り付けられた取付金具49とを備える。なお、保持枠47は、トラス底面60の幅方向長さの略半分の長さに形成されている。
【0025】
つぎに、このように構成された清掃装置を用いたトラス底面60の清掃方法について図5を参照しつつ説明する。
【0026】
まず、取付金具38を保持棒31に装着し、ボルト50aとナット51aにより取付金具38を締着し、第1の第1の清掃具35を保持棒31に回動可能に取り付ける。このとき、第1の第1の清掃具35は、そのV字状の開口側がばね受け部34の延出方向に一致し、V字状の頂点が保持棒31の長さ方向の略中央に位置するように、清掃具保持部材30に取り付けられる。
【0027】
ついで、往路側区間の上部側に位置する10枚程度の踏み段11を取り外し、ステップ軸12を露呈させた後、踏み段11を取り外した部位の後端側が往路側区間の上部側に位置し、踏み段11を取り外した部位の先端側が帰路側区間の上部側に位置するまで、エスカレータ1を上昇運転させる。
【0028】
そして、作業者がトラス2内に入り、トラス2内の帰路側区間に位置する踏み段11を外して露出されている1つのステップ軸12に取付金具33を装着し、ボルト50bとナット51bにより取付金具33を締着して、清掃具保持部材30をステップ軸12に回動可能に取り付ける。これにより、清掃具保持部材30が自重によりステップ軸12周りに回動し、保持棒31がトラス底面60に接近する。そして、保持棒31のトラス底面60への接近により、ブレード37がトラス底面60に接すると、第1の第1の清掃具35が保持棒31周りに回動して、ブレード37の底面がトラス底面60に接し、清掃具保持部材30のステップ軸12周りのそれ以上の回動が阻止される。これにより、第1の第1の清掃具35は、V字状の開口を下階側に向けて、ブレード37の底面の全面をトラス底面60に接するように配置される。
【0029】
ついで、清掃具保持部材30が取り付けられたステップ軸12の下部機械室4側に位置するステップ軸12に取付金具43を装着し、ボルト50cとナット51cにより取付金具43を締着して、圧力付加部材40をステップ軸12に回動可能に取り付ける。そして、圧力付加部材40をステップ軸12周りに回動させて、ばね受け部44をばね受け部34に近づける。そこで、コイルばね45を相対するばね受け部34,44の各対に装着し、図5に示されるように、清掃装置のセットが完了する。
【0030】
このようにセットされた清掃装置においては、圧力付加部材40の自重によるステップ軸12周りの回動トルクが、コイルばね45を介して清掃具保持部材30に伝達され、第1の第1の清掃具35をトラス底面60に押付けるように作用する。
【0031】
ついで、作業者がトラス2外、あるいは上部機械室3内に移動し、エスカレータ1を上昇運転させる。これにより、踏み段11は帰路側区間を下階側に移動し、第1の第1の清掃具35がブレード38の底面をトラス底面60に押付けられた状態で、下階側に移動する。そして、トラス底面60に付着している油やごみなどが、第1の第1の清掃具35の下階側への移動とともに、第1の第1の清掃具35のV字形の底部側に集められる。
第1の第1の清掃具35が下部機械室4に到達すると、エスカレータ1の上昇運転を停止し、第1の第1の清掃具35のV字形の底部側に集められた油やごみなどをブラシなどを用いて回収する。
【0032】
ついで、ボルト50bとナット51bとを取り外し、第1の清掃具35を保持棒31から取り外す。そして、取付金具49を保持棒31に装着し、ボルト50dとナット51dにより取付金具49を締着し、2本の第2の清掃具46を保持棒31の長さ方向に隙間なく並べて保持棒31に固着する。このとき、第2の清掃具46は、トラス底面60の幅方向の全域にわたって延在し、はけ部48が圧力付加部材40の自重によるステップ軸12周りの回動トルクによりトラス底面60に押付けられる。
【0033】
ついで、エスカレータ1を下降運転させる。これにより、第2の清掃具46が、はけ部48でトラス底面60上に残っている油汚れを拭き取りつつ、トラス2内を上階側に移動する。そして、清掃装置が上部機械室3に到達すると、エスカレータ1の下降運転を停止し、ボルト50b、50cとナット51b、51cとを取り外して清掃装置をステップ軸12から取り外す。その後、踏み段11を取り外した部位が往路側区間の上部側に到達するまでエスカレータ1を下降運転させ、取り外した踏み段11を元に戻して、清掃作業を終了する。
【0034】
このように、この実施の形態によれば、帰路側区間の上部側に位置する、踏み段11が取り外された領域に露出するステップ軸12の中の1つのステップ軸12に取付金具33を装着してステップ軸12に清掃具保持部材30を回動可能に取り付け、ついで、清掃具保持部材30が取り付けられたステップ軸12の下方に位置するステップ軸12に取付金具43を装着してステップ軸12に圧力付加部材40を回動可能に取り付け、ついで、コイルばね45を相対するばね受け部34,44の各対に装着している。これにより、圧力付加部材40の自重によるステップ軸12周りの回動トルクが、コイルばね45を介して清掃具保持部材30に伝達され、第1の清掃具35のブレード37がトラス底面60に押付けられる。
【0035】
そこで、エスカレータ1を上昇走行させて、清掃具35を下部機械室4側に移動させると、ブレード37がトラス底面60に押付けられながら下部機械室4側に移動することになり、トラス底面60に付着している油やごみなどを効果的に下部機械室4側に引き寄せることができる。
また、ブレード37とともに下部機械室4まで引き寄せられた油やごみはブラシなどで回収できるので、広い回収作業スペースは不要であり、下部機械室4内での作業により簡易に回収できる。
【0036】
さらに、清掃具35のブレード37が、V字形に形成されている。そして、清掃具35が、ブレード37のV字形の開口を下部機械室4側に向けて、清掃具保持部材30に取り付けられている。そこで、トラス底面60に付着している油やごみなどは、ブレード37のV字形の底部に集められるので、清掃装置が下部機械室4に到達したときに、油やごみの回収が簡易となる。
【0037】
さらにまた、ブレード37で集めた油やごみなどを回収した後、清掃具35を取り外して、フェルト製のはけ部48を有する第2の清掃具46を清掃具保持部材30に取り付け、エスカレータ1を下降走行させている。そこで、トラス底面60に残っている油汚れなどがはけ部48で拭き取られるので、トラス底面60をきれいに清掃できる。
【0038】
ブレード37がゴム製であるので、ブレード37の底面がトラス底面60のゆがみ部分にも接し、油やごみの取り残しを少なくすることができる。
【0039】
往路側区間の上部側に位置する複数枚の踏み段11を取り外し、踏み段11が取り外された領域を帰路側区間の上部側に移動させ、取付金具33,43をステップ軸12に装着し、ボルト50b、50cとナット51b、51cを締着するだけで、清掃装置をセットすることができる。そして、エスカレータ1を上昇走行させるだけで、トラス底面60を清掃できる。したがって、トラス底面60の清掃作業における作業負荷が軽減されるとともに、作業時間を短縮できる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、清掃具35を取り付けてエスカレータ1を上昇走行させて、トラス底面60に付着している油やごみなどを回収した後に、清掃具35を第2の清掃具46に取り替えてエスカレータ1を下降走行させて、トラス底面60に残った油汚れを拭き取るものとしているが、トラス底面60の汚れ具合が軽微であれば、第2の清掃具46を取り付けてエスカレータ1を上昇走行させて、トラス底面60を清掃してもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、ゴム製のブレード37を用いるものとしているが、ブレードは金属製でもよい。金属製のブレードは高い剛性を有するので、トラス底面60に付着している油やごみなどを剥ぎ取ることができ、トラス底面60の汚れ具合が悪い場合に有効である。
【0042】
また、上記実施の形態では、ブレード37を除く部材の材料について言及していないが、所定の剛性を有していればよく、例えばアルミニウム、ステンレスなどの金属材料を用いることができる。また、圧力付加部材40は、ステンレスに限らず、アルミニウムで作製してもよい。この場合、圧力付加部材が軽量となるので、圧力付加棒に重りを装着し、清掃具への押圧力を確保すればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 エスカレータ、2 トラス、3 上部機械室、4 下部機械室、8 上部踏み段スプロケット、9 下部踏み段スプロケット、10 踏み段チェーン、11 踏み段、12 ステップ軸、30 清掃具保持部材、31 保持棒、32 支持腕、33 取付金具、35 第1の清掃具、37 ブレード、40 圧力付加部材、41 圧力付加棒、42 支持腕、43 取付金具、45 コイルばね(圧力伝達部材)、46 第2の清掃具、48 はけ部、60 トラス表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階と下階とに掛け渡されたトラスと、
上記トラスの上部機械室に設置された上部踏み段スプロケットと該トラスの下部機械室に設置された下部踏み段スプロケットとに巻き掛けられた無端状の踏み段チェーンと、
上記踏み段チェーンに一定の間隔で取付けられたステップ軸のそれぞれに固定されて無端状に配置され、該踏み段チェーンの走行に連動して循環走行する複数の踏み段と、を備えたエスカレータの清掃装置であって、
所定長さの保持棒、該保持棒の長さ方向に離間して、該保持棒からその長さ方向と直交する方向に、かつ同一方向に延設された一対の保持棒支持腕、および該一対の保持棒支持腕の先端に取り付けられた保持部材取付金具を有し、該保持部材取付金具により上記踏み段の帰路側経路に位置する上記ステップ軸の中の1つである第1のステップ軸に回動可能に取り付けられる清掃具保持部材と、
上記保持棒に装着されてトラス底面を清掃する清掃具と、
所定長さの圧力付加棒、該圧力付加棒の長さ方向に離間して、該圧力付加棒からその長さ方向と直交する方向に、かつ同一方向に延設された一対の圧力付加棒支持腕、および該一対の圧力付加棒支持腕の先端に取り付けられた圧力付加部材取付金具を有し、該圧力付加部材取付金具により上記踏み段の帰路側経路に位置する上記ステップ軸の中の、上記第1のステップ軸の下方に位置する第2のステップ軸に回動可能に取り付けられる圧力付加部材と、
上記圧力付加部材の上記第2のステップ軸周りの回動トルクを上記保持棒に伝達して上記清掃具を上記トラス底面に押圧させるように作用させる圧力伝達部材と、
を備えたことを特徴とするエスカレータの清掃装置。
【請求項2】
上記清掃具は、ゴム又は金属製のV字形のブレードを有し、該ブレードがV字形の開口を上記下部機械室側に向けて、底面を上記トラス底面に接するように上記保持棒に装着されることを特徴とする請求項1記載のエスカレータの清掃装置。
【請求項3】
上記清掃具は、所定長さを有するフェルト製のはけ部を有し、該はけ部が上記トラス底面の幅方向に延在して該トラス底面に接するように上記保持棒に装着されることを特徴とする請求項1記載のエスカレータの清掃装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエスカレータの清掃装置を用いて上記トラス底面を清掃する清掃方法であって、
往路側区間の上部側に位置する所定個数の上記踏み段を取り外して上記ステップ軸を露出させ、該踏み段が取り外された領域の先端側が上記トラス内の帰路側区間の上部側に位置するようにエスカレータを走行させる工程と、
上記清掃具を上記保持棒に装着する工程と、
上記帰路側区間の上部側に位置する、上記踏み段が取り外されている領域に露出する上記ステップ軸の中の1つである上記第1のステップ軸に上記保持部材取付金具を装着して該第1のステップ軸に上記清掃具保持部材を回動可能に取り付ける工程と、
上記第1のステップ軸の下方に位置する上記第2のステップ軸に上記圧力付加部材取付金具を装着して該第2のステップ軸に上記圧力付加部材を回動可能に取り付ける工程と、
上記圧力付加部材の上記第2のステップ軸周りの回動トルクを上記清掃具保持部材に伝達するように上記圧力伝達部材を取り付け、上記清掃具を上記トラス底面に押圧させる工程と、
上記エスカレータを上昇走行させて、上記清掃具を上記下部機械室側に移動させ、上記トラス底面を清掃する工程と、を有することを特徴とするエスカレータの清掃方法。
【請求項5】
上記清掃具が、所定長さのフェルト製のはけ部を有し、該はけ部が上記トラス底面に接して該トラス底面の幅方向に延在するように上記保持棒に装着されていることを特徴とする請求項4記載のエスカレータの清掃方法。
【請求項6】
上記清掃具が、V字形のブレードを有する第1の清掃具であり、第1の清掃具が、該ブレードのV字形の開口を上記下部機械室側に向けて、該ブレードの底面を上記トラス底面に接するように上記保持棒に装着されていることを特徴とする請求項4記載のエスカレータの清掃方法。
【請求項7】
上記第1の清掃具が上記下部機械室に到達した後、該第1の清掃具を取り外す工程と、
所定長さのフェルト製のはけ部を有する第2の清掃具を、該はけ部が上記トラス底面に接して該トラス底面の幅方向に延在するように上記保持棒に装着する工程と、
上記エスカレータを下降走行させて、上記第2の清掃具を上記上部機械室側に移動させ、上記トラス底面を清掃する工程と、を有することを特徴とする請求項6記載のエスカレータの清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62167(P2012−62167A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208114(P2010−208114)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】