説明

エスカレータの移動手摺用冶具

【課題】より安全にエスカレータの移動手摺を運んで移動手摺を移動手摺案内レールに載せることを可能とするエスカレータの移動手摺用冶具を提供することである。
【解決手段】エスカレータの移動手摺用冶具10は、エスカレータの移動手摺4を保持する保持部20と、保持部20から延設された把持部30と、を備え、保持部20は、移動手摺4の上側面42側に位置する第1保持部212と、移動手摺4の少なくとも1つの下側面を支える第2保持部214と、を含む。また、エスカレータの移動手摺用冶具10の第1保持部212は、移動手摺4の上側面42の全幅にわたって延伸している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの移動手摺用冶具に係り、特に、移動手摺を運ぶために使用するエスカレータの移動手摺用冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、駅や商業施設等の様々な場所においてエスカレータが設けられている。エスカレータの保守点検の一環として、図8に示すようにエスカレータの移動手摺4と移動手摺案内レール6とを分離した状態で、それぞれを定期的に清掃する保守点検作業がある。これらの清掃を終えた後、図9に示すように保守作業員8が、移動手摺4を移動手摺案内レール6に載せる際に、移動手摺4の一端側を移動手摺案内レール6に引っ掛けて、保守作業員8が移動手摺4の他端側を手で引っ張って位置を調整し、移動手摺4全体を移動手摺案内レール6に載せる。そして、その後に移動手摺4を移動手摺案内レール6に挿入している。本発明に関連する技術として、特許文献1には、移動手摺を移動手摺案内レールに挿入する冶具が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−252079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、保守作業員が移動手摺の一端側を移動手摺案内レールに引っ掛けて、移動手摺の他端側を手で引っ張りながら移動手摺を運んで位置を調整する際に、移動手摺の張力によって、移動手摺と移動手摺案内レールとの間で指を挟んでしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、より安全にエスカレータの移動手摺を運んで移動手摺を移動手摺案内レールに載せることを可能とするエスカレータの移動手摺用冶具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエスカレータの移動手摺用冶具は、エスカレータの移動手摺と移動手摺案内レールとが分離された状態で移動手摺を持ち運ぶためのエスカレータの移動手摺用冶具であって、エスカレータの移動手摺を保持する保持部と、保持部から延設された把持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るエスカレータの移動手摺用冶具において、保持部は、移動手摺の上側面側に位置する第1保持部と、移動手摺の少なくとも1つの下側面を支える第2保持部と、を含むことが好ましい。ここで、移動手摺の上側面とは、エスカレータの使用状態において上側となる面であり、移動手摺の下側面とは、エスカレータの使用状態において下側となる面である。
【0008】
また、本発明に係るエスカレータの移動手摺用冶具において、第1保持部は、移動手摺の上側面の全幅にわたって延伸していることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るエスカレータの移動手摺用冶具において、第2保持部は、移動手摺の端部に係合するための係合部を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエスカレータの移動手摺用冶具において、第1保持部を回動させるための回動部と、第1保持部を固定する固定部と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータの移動手摺用冶具において、第2保持部は、移動手摺の2つの下側面を支えるように延伸していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成のエスカレータの移動手摺用冶具によれば、保守作業員が把持部を持ってエスカレータの移動手摺を保持することができる。これにより、エスカレータの移動手摺をより安全に運んで移動手摺案内レールに載せることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具10の上面図である。図2は、エスカレータの移動手摺用冶具10の側面図である。エスカレータの移動手摺用冶具10は、エスカレータの移動手摺4を持ち運んで、移動手摺4を移動手摺案内レールに載せるための冶具である。エスカレータの移動手摺用冶具10は、保持部20と、把持部30とを含んで構成される。
【0015】
把持部30は、保守作業員の手で握りやすい大きさと形状を有するグリップである。把持部30は、後述する保持部20の中継部201から保持部20の長手方向に沿って延設される。
【0016】
保持部20は、エスカレータの保守点検の一環として移動手摺4と移動手摺案内レールとを分離した状態の時に、移動手摺4を保持する機能を有する。保持部20は、第1保持部212と、第2保持部214と、中継部201と、係合部216と、回動部206と、固定ネジ202、固定板210と、回転軸208とを含んで構成される。図2には、移動手摺4の断面図が示されており、移動手摺4は、生ゴムを湾曲させて2つの端部43,47が向かい合った略C字形状(図2ではC時形状が時計周りに90度回転している)を有している。
【0017】
第1保持部212は、例えばステンレスで構成された部材である。第1保持部212は、図1に示されるように長方形形状を有し、把持部30の幅Vよりも広い幅Wを有する。第1保持部212は、移動手摺4の上側面42の全幅にわたった長さLを有する。第1保持部212は、適当な強度を確保する程度の厚みDを有する。第1保持部212は、保守作業員が移動手摺4を持ち運ぶときに、移動手摺4の上側面42の上方に位置し、移動手摺4の上下方向への動きを規制する機能を有する。
【0018】
第2保持部214は、例えばステンレスで構成された部材である。第2保持部214は、図2に示されるように略L字形状を有しており、側面部材214aと底面部材214bとを含んで構成される。側面部材214aは、移動手摺4の高さTよりも少し大きい高さMを有する。底面部材214bは、移動手摺4の下側面46と湾曲部45によって規定される幅S(移動手摺4の下側面46と湾曲部によって規定される同じ幅Sである)よりも少し大きい幅Nを有する。第2保持部214は、保守作業員が移動手摺4を持ち運ぶときに、移動手摺4の下側面44(あるいは移動手摺4の下側面46)を支える機能を有する。
【0019】
係合部216は、図2に示されるように第2保持部214の底面部材214bの端部から垂直に立設される。係合部216は、移動手摺4の端部43と係合し、保守作業員が移動手摺4を持ち運ぶときに、移動手摺4が幅方向にずれ動いてしまうことを規制する機能を有する。
【0020】
中継部201は、把持部30と第1保持部212及び第2保持部214との間に設けられる部材である。中継部201は、その幅が図1に示されるように把持部30から第1保持部212に向かって幅Wとなるように広がる形状を有する。
【0021】
回動部206は、第1保持部212が第2保持部214に向う矢印X方向あるいは第2保持部214から離れる矢印Y方向に回動するために第1保持部212と中継部201と第2保持部214の端部に取り付けられたヒンジである。
【0022】
固定板210は、通常時(固定板210の回転動作停止時)は、第1保持部212と中継部201とに跨って配置される平板である。固定板210には、後述する回転軸208を挿入するための貫通孔207と、後述する固定ネジ202を受け入れるための切欠部204とが設けられている。
【0023】
回転軸208は、第1保持部212の上面に垂直に設けられる軸であり、回転軸208を中心として固定板210が矢印A方向及び矢印B方向に回転する。なお、図示しないが回転軸208から固定板210が抜け出さないように抜け止めが設けられている。固定ネジ202は、中継部201の上面に垂直に設けられた雄ネジ203に螺合して進退する蝶ネジである。固定ネジ202を締め付けて固定板210の回転動作を停止する。
【0024】
続いて、上記構成からなるエスカレータの移動手摺用冶具10の動作について、図1〜図5を参照して説明する。図3は、固定板210を回転させて、第1保持部212の回動動作が可能な状態としている図である。図4は、エスカレータの移動手摺用冶具10を移動手摺4に取り付けている様子を示す図である。図5は、エスカレータの移動手摺用冶具10を左側と右側の両方から移動手摺4に取り付けた様子を示す図である。
【0025】
第1保持部212を矢印X方向及び矢印Y方向に回動可能とするために、固定ネジ202を緩めて、図3に示されるように固定板210を回転させる。
【0026】
第1保持部212を矢印Y方向に回動した後に、図4に示されるように、移動手摺4の左側において、把持部30が移動手摺4に矢印R方向から係合部216と移動手摺4の端部43とが係合するように位置させる。そして、把持部30が移動手摺4の上側面42と平行な状態となるように移動させる。さらに、固定板210を元の位置まで回転させ、固定ネジ202を締め付けて固定板210の回転動作を停止する。同様の手順でエスカレータの移動手摺用冶具10を移動手摺4の右側からも取り付けて、移動手摺4を保持する。
【0027】
上記のような状態で、保守作業員が把持部30を持って移動手摺4を持ち運んで移動手摺案内レールに載せることで、移動手摺4と移動手摺案内レールとの間で指を挟んでしまうことを防止することができる。
【0028】
次に、図6,7を参照して本発明の第2実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具11について説明する。図6は、本発明の第2実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具11の上面図である。図7は、エスカレータの移動手摺用冶具11の側面図である。ここで、エスカレータの移動手摺用冶具11は、上記第1実施形態のエスカレータの移動手摺用冶具10とほぼ同様の構成を有するため、同一構成要素には同一符号を付して重複することとなる説明を援用によって省略し、異なる構成およびその作用について説明する。エスカレータの移動手摺用冶具11は、第1保持部412と、第2保持部414と、中継部401の部分が相違するため、以下では、特に、その内容について詳細な説明を行う。
【0029】
第1保持部412は、例えばステンレスで構成された部材である。第1保持部412は、第1保持部212と同様に長方形形状を有して幅Wを有する。また、第1保持部412は、第1保持部212と同様に長さLを有し、厚みDを有する。第1保持部412は、保守作業員が移動手摺4を持ち運ぶときに、移動手摺4の上側面42の上方に位置し、移動手摺4の上下方向への移動を規制する機能を有する。第1保持部412は、第1保持部212とは異なり、第2保持部414に向かう方向あるいは第2保持部414から離れる方向には回動しない。
【0030】
第2保持部414は、例えばステンレスで構成された部材である。第2保持部414は、図7においては略L字形状を有しており、側面部材414aと底面部材414bとを含んで構成される。側面部材414aは、第2保持部214の側面部材214aと同じ高さMを有する。底面部材414bは、移動手摺4の下側面44と下側面46とを支える程度に延伸した長さLを有する。第2保持部414は、保守作業員が移動手摺4を持ち運ぶときに、移動手摺4の下側面44と下側面46を支える機能を有する。
【0031】
中継部401は、把持部30と第1保持部412及び第2保持部414との間に設けられ、中継部201と異なり、第1保持部412及び第2保持部414と直接接続された部材である。
【0032】
続いて、上記構成からなるエスカレータの移動手摺用冶具11の動作について、図6,図7を参照して説明する。保守作業員は、把持部30を持って第1保持部412の上面と移動手摺4の上側面42とが平行になるようにして、図7に示されるように移動手摺4の左側から取り付ける。これにより、第2保持部414が移動手摺4の下側面44と下側面46とを支えており、上記エスカレータの移動手摺用冶具10と同様に保守作業員が把持部30を持って移動手摺4を持ち運び移動手摺案内レールに載せることで、移動手摺4と移動手摺案内レールとの間で指を挟んでしまうことを防止することができる。また、エスカレータの移動手摺用冶具11は、移動手摺4の下側面44と下側面46の両側の下側面を支えていることから、1つのエスカレータの移動手摺用冶具11のみで移動手摺4を持ち運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具の上面図である。
【図2】本発明の第1実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具の固定板を回転させて、第1保持部の回動動作が可能状態としている図である。
【図4】本発明の第1実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具を移動手摺に取り付けている様子を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具を左側と右側の両方から移動手摺に取り付けた様子を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具の上面図である。
【図7】本発明の第2実施形態であるエスカレータの移動手摺用冶具の側面図である。
【図8】エスカレータの移動手摺と移動手摺案内レールとを分離した状態を示す図である。
【図9】エスカレータの移動手摺を移動手摺案内レールに乗せている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
4 移動手摺、6 移動手摺案内レール、8 保守作業員、10,11 エスカレータの移動手摺用冶具、20 保持部、30 把持部、42 上側面、43,47 端部、44,46 下側面、45 湾曲部、201,401 中継部、202 固定ネジ、203 雄ネジ、204 切欠部、206 回動部、207 貫通孔、208 回転軸、210 固定板、212,412 第1保持部、214a,414a 側面部材、214b,414b 底面部材、214,414 第2保持部、216 係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの移動手摺と移動手摺案内レールとが分離された状態で移動手摺を持ち運ぶためのエスカレータの移動手摺用冶具であって、
エスカレータの移動手摺を保持する保持部と、
保持部から延設された把持部と、
を備えることを特徴とするエスカレータの移動手摺用冶具。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータの移動手摺用冶具において、
保持部は、
移動手摺の上側面側に位置する第1保持部と、
移動手摺の少なくとも1つの下側面を支える第2保持部と、
を含むことを特徴とするエスカレータの移動手摺用冶具。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータの移動手摺用冶具において、
第1保持部は、
移動手摺の上側面の全幅にわたって延伸していることを特徴とするエスカレータの移動手摺用冶具。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のエスカレータの移動手摺用冶具において、
第2保持部は、
移動手摺の端部に係合するための係合部を有することを特徴とするエスカレータの移動手摺用冶具。
【請求項5】
請求項4に記載のエスカレータの移動手摺用冶具において、
第1保持部を回動させるための回動部と、
第1保持部を固定する固定部と、
を備えることを特徴とするエスカレータの移動手摺用冶具。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載のエスカレータの移動手摺用冶具において、
第2保持部は、
移動手摺の2つの下側面を支えるように延伸していることを特徴とするエスカレータの移動手摺用冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−42878(P2010−42878A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206538(P2008−206538)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】