説明

エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含むポリマー

ポリマーは、エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含み、前記ポリマーは、13C核磁気共鳴(NMR)によって求められる、1000炭素原子当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年9月14日に出願され、参照により完全に本明細書に組み込まれる、米国特許仮出願第61/242133号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
通常の低密度ポリエチレン(LDPE)は、良好な加工性を示す。ポリ(アルコキシド)は、良好な加工補助特性を示す。これらの特性の組み合わせは望ましいが、相分離する傾向があるため、これらのポリマーのブレンドの使用は困難である。過酸化物/反応押出しを用いて、1つのポリマーをもう1つのポリマーにグラフト化することは公知であるが、この方法では相当な部分のLDPEがグラフト化されないまま残り、それが今度はグラフト化ポリマー及び非グラフト化ポリ(アルコキシド)から相分離する傾向がある。したがって、ポリ(アルコキシド)とLDPEのポリマー、及びそれを製造する方法が求められている。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態において、本発明は、エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含むポリマーであって、該ポリマーは、13C核磁気共鳴(NMR)によって求められる、1000炭素原子当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有する。ポリマーは、エチレン系ポリマー分岐を有するポリ(アルコキシド)を含む。1000炭素原子当たり0.15アミル基の計量は、ポリ(アルコキシド)の一部を形成する炭素原子を除いた、エチレン系ポリマー分岐の炭素原子の数に基づく。
【0004】
一実施形態において、本発明は、エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含むポリマーを形成する方法であって、該方法は、
A.第1反応器又は複数部分反応器の第1部分において、フリーラジカル開始剤の存在下、少なくとも1種のポリ(アルコキシド)をエチレンと接触させるステップ、及び
B.少なくとも1つの他の反応器又は複数部分反応器の後部において、フリーラジカル開始剤の存在下、ポリ(アルコキシド)を追加のエチレンと反応させて、ポリ(アルコキシド)に結合したエチレン系ポリマー分岐を形成するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】種々の分岐型に特徴的なピークの位置を示す、LDPEの13C NMRスペクトルである。
【図2】C5分岐/1000炭素の定量化の例を示す、LDPEの13C NMRスペクトルである。
【図3】C1分岐を含有するLDPEの13C NMRスペクトルである。
【図4】C3分岐を含有するLDPEの13C NMRスペクトルである。
【図5】ポリ(アルコキシド)の特徴的なピークを示す、代表的な本発明のポリマーの13C NMRスペクトルである。
【図6】実施例及び選択的比較例の分子量分布を示すグラフである。
【図7】市販のLDPE及び2種の本発明のポリマーのピーク溶融温度(Tm)と密度の関係を示すプロットである。
【図8】2つの実施例、市販のLDPE、及び比較ポリマーの融解熱と密度の関係を示すグラフである。
【図9】2つの実施例及び比較例のDMSオーバーレイである。
【0006】
詳細な説明
以下の考察は、開示される組成物及び方法を当業者が製造及び使用できるようにするために提示される。記載した一般的な原理は、開示される組成物及び方法の精神及び範囲から逸脱することなく、詳述した以外の実施形態及び応用例に適用することができる。開示される組成物及び方法は、示した実施形態に限定されることを意図せず、開示される原理及び特徴に矛盾しない最大の範囲に一致するものである。
【0007】
本発明のポリマー
用語「エチレン系ポリマー分岐」は、重合エチレンを含むポリマー単位を指し、これはポリアルキレンに結合している。一実施形態において、本発明のポリマー(「エチレンポリマー」と称されることもある)は、式1の構造式を含む。
【化1】

式1において、エチレン系ポリマー分岐は、ホモポリマー、例えばLDPE、又はインターポリマー、例えばエチレン−プロピレンコポリマー分岐であることができる。ポリマーは、主鎖炭素原子に共有結合したエチレン系ポリマー分岐を有するポリ(アルコキシド)単位を含む。語句「ポリ(アルコキシド)由来の単位」は、ポリ(アルコキシド)のオリゴマー又はポリマー単位を指すことができる。エチレン系ポリマー分岐は、ポリ(アルコキシド)上に直接形成される、すなわち、エチレンモノマー又はオリゴマーがポリ(アルコキシド)に結合し、続いて重合又は他のエチレンモノマーとさらに重合して(又は1つ又はそれ以上のオレフィンコモノマーと共重合して)エチレン系ポリマー分岐を形成するか、又はエチレン系ポリマーは独立して形成され、続いてポリ(アルコキシド)にグラフト化される。ポリ(アルコキシド)は、1つ又はそれ以上のエチレン系ポリマー分岐を含有することができ、任意のポリ(アルコキシド)上の分岐の数は、少なくとも一部には、ポリ(アルコキシド)の大きさ、及びエチレンが重合されるか、又はポリエチレンがポリ(アルコキシド)にグラフト化される条件に依存する。エチレン系ポリマー分岐の大きさ及び構造は多様であることができるが、典型的に及び好ましくは、1つ又はそれ以上の長鎖分岐(LCB、高圧LDPEの特徴である)を含む。エチレン系ポリマー分岐が由来するエチレン系ポリマーが高圧法によって製造されている、及び/又は長鎖分岐を含有する場合、時としてこのポリマー、又はこのポリマーに由来する分岐は、高度分岐エチレン系ポリマーとして公知である。
【0008】
現在、ポリ(アルコキシド)が、低結晶化度、高度分岐エチレン系ポリマーと共に用いられる場合、ポリ(アルコキシド)のすべての物理的性能上の利点と高度分岐エチレン系ポリマーのすべての好都合な加工特性を忠実に組み合わせるブレンドを作る機械的手段は存在しない。この欠点に対処する組成物及び方法が開示される。開示される組成物及び方法の利点は、ポリ(アルコキシド)に関連する物理的特性に類似した物理的特性と併せて高度分岐エチレン系ポリマーの加工性を有する、より高いポリマー密度を有する樹脂を通常の方法を用いて生成できることである。
【0009】
2つの構成成分、ポリ(アルコキシド)と高度分岐エチレン系ポリマーの共有結合は、高度分岐エチレン系ポリマー成分に類似した加工性の特徴を維持しながら、ポリ(アルコキシド)成分に類似した、又はより良好な物理的特性を有するポリマーをもたらす。
【0010】
開示される本発明のポリマーの物理的特性と加工特性の組み合わせは、ポリアルキレンと高度分岐エチレン系ポリマーの単なるブレンドでは観察されない。開示される本発明のポリマーの独自の化学構造は、ポリ(アルコキシド)と高度分岐エチレン系ポリマー置換基が共有結合しているため有利である。
【0011】
本発明のポリマーは、未反応ポリ(アルコキシド)を含む可能性がある。本発明のポリマーはまた、形成されたか、又は本発明のポリマーを製造する方法に導入されたが、ポリ(アルコキシド)と結合していない遊離又は非結合エチレン系ポリマーを含む可能性がある。エチレン系ポリマーに結合していないポリ(アルコキシド)、及びポリ(アルコキシド)に結合していないエチレン系ポリマーは、通常、低いレベルで存在するか、又は当業者に公知の様々な精製又は回収方法によって、低いレベルにまで除去することができる。
【0012】
一実施形態において、ポリマーは、エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含み、該ポリマーは、13C核磁気共鳴(NMR)によって求められる、1000炭素原子当たり少なくとも0.15、典型的に少なくとも0.5、より典型的には少なくとも0.8単位のアミル基を有する。典型的に、ポリマーは、下記の1つ又はそれ以上を有する:(1)13C NMRによって求められる、1000炭素原子当たり1、典型的に少なくとも1.2、より典型的には少なくとも1.4単位のC6+分岐、(2)13C NMRによって求められる、1000炭素原子当たり感知できるメチル分岐なし、(3)13C NMRによって求められる、1000炭素原子当たり感知できるプロピル分岐なし、及び(4)13C NMRによって求められる、1000炭素原子当たり5以下、典型的に3以下、より典型的には2単位以下のアミル基。一実施形態において、ポリマー、又はポリマーのエチレン系ポリマー分岐は、これらの特性の2つ、3つ、又は4つすべてを有する。
【0013】
一実施形態において、ポリマーは、ASTM D792によって測定される、密度0.90、又は0.91、又は0.92超、及び0.95、又は0.945、又は0.94g/立方センチメートル(g/cc又はg/cm)未満を有する。一実施形態において、ポリマーは、密度0.90から0.95、又は0.91から0.945、又は0.92から0.94g/ccを有する。
【0014】
一実施形態において、ポリマーは、ASTM 1238−04(2.16kg/190℃)によって測定される、メルトインデックス0.01から100、典型的に0.05から50、より典型的には0.1から20グラム/10分(g/10分)を有する。
【0015】
一実施形態において、本発明のポリマーを製造する方法で用いられる60、50、40、30、20、又は10重量パーセント未満のポリ(アルコキシド)は、ポリマーから溶媒抽出によって抽出可能である。
【0016】
一実施形態において、本発明は、エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含むポリマーを含む組成物であり、該ポリマーは、13C NMRによって求められる、1000炭素原子当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有する。一実施形態において、本発明は、そのような組成物を含む物品であり、一実施形態において、本発明は、そのような組成物を含む成分を含む物品である。一実施形態において、物品はフィルムである。
【0017】
一実施形態において、ポリマーは、ポリマーの重量に対して、過半数の重量パーセントの重合エチレンを含む。
【0018】
少なくとも1種のポリ(アルコキシド)と高度分岐エチレン系ポリマーの単なる物理的ブレンドを上回る物理的特性の改善を達成するために、ポリ(アルコキシド)の存在下、高度分岐エチレン系ポリマーの重合によって形成された共有結合は、高度分岐エチレン系ポリマー成分に類似した加工性の特徴を維持しながら、少なくとも1種のポリ(アルコキシド)ベースポリマー成分に類似した、又はより良好な物理的特性を有するエチレンポリマー材料をもたらすことが見出された。開示されるエチレンポリマー構造は、少なくとも1種のポリ(アルコキシド)ベースポリマーにグラフト化された高度分岐エチレン系ポリマー置換基、又は少なくとも1種のポリ(アルコキシド)ベースポリマーのラジカル化部位から生じる「フリーラジカル重合によって生成されたエチレン系長鎖ポリマー分岐」からなると考えられる。開示の組成物は、高度分岐エチレン系ポリマーの長鎖分岐を有する少なくとも1種のポリ(アルコキシド)ベースポリマーからなるエチレンポリマーである。
【0019】
開示のエチレンポリマーのメルトインデックスは、ASTM 1238−04(2.16kg及び190℃)によって測定される、約0.01から約1000g/10分であることができる。
【0020】
ポリ(アルコキシド)
適切なポリ(アルコキシド)ベースポリマーは、式2に例示される繰り返し単位を含み、
【化2】

式中、各R1及びR2は、独立して水素又はアルキルであり、ただしR1及びR2は同時に水素であることはできず、各m及びnは、独立して典型的に10以上、より典型的には50以上、さらに典型的には100以上の整数である。各m及びnの値の最大値は、コスト及び重合実施上の考慮すべき事柄に応じて変化する。一実施形態において、各R1及びR2は、独立して水素又はC1−C6アルキル、好ましくはC1−C3アルキル、より好ましくはメチルである。末端基は、典型的に独立してヒドロキシルである。
【0021】
本発明に用いることのできるポリ(アルコキシド)には、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、及び混合ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(プロピレンオキシド)化合物が含まれる。ポリ(アルコキシド)は、好ましくは、式PO−(CHCHO−)−(CHCHRO−)(CHCHO−)Qのものであり、式中、x、y、及びzは、独立して0又は正の整数であり、ただしx、y、及びzの少なくとも1つは0ではなく、Rは、H又はアルキル、例えばC1〜4アルキル、特にメチル基であり、Pは、キャッピング基又は標識(labeling)基であり、Qは、カップリングを可能にする基である。x、y、又はzが0でない場合、それらは典型的に1000までである。いくつかの実施形態において、xは、3から1000、例えば100から500であり、y及びzは共に0である。他の実施形態において、x及びyは、独立して3から1000、例えば100から500であり、zは0である。さらに他の実施形態において、x及びzは、独立して3から500、例えば100から300であり、yは、3から1000、例えば100から500である。好ましくは、ポリ(アルキレンオキシド)は、例えばC1〜4アルキル、特にメチル基によってキャップされている。
【0022】
用いられるポリ(アルコキシド)化合物は、一般にそれらのおおよその平均分子量及び短縮された化学名(例えば、PEG=ポリ(エチレングリコール)、PPG=ポリプロピレングリコール)によって特定される。ポリ(アルコキシド)は、線状又は分岐であることができ、一般に平均分子量0.2kDから60kD、例えば2kDから40kDを有する。ポリ(アルコキシド)が分岐している場合、カップリングを可能にする基Qは、2つ又はそれ以上のポリ(アルキレンオキシド)鎖を有することができる。例えば、Qは、リシン、又は2つのポリ(アルキレンオキシド)鎖を有する等価部分、及び活性化エステル、特にNHS基を表わすことができる。好ましくは、ポリ(アルコキシド)は、PEGである。
【0023】
高度分岐エチレン系ポリマー
高度分岐エチレン系ポリマー、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)は、エチレンモノマーを重合するためのフリーラジカル化学反応を用いる高圧法を用いて製造することができる。典型的なポリマーの密度は、0.91から0.94g/cmである。低密度ポリエチレンは、メルトインデックス(I)0.01から150g/10分を有することができる。高度分岐エチレン系ポリマー、例えばLDPEは、「高圧エチレンポリマー」と称することもでき、ポリマーが、フリーラジカル開始剤、例えば過酸化物を用いて、13000psigを超える圧力でオートクレーブ又は管型反応器において、部分的又は完全に単独重合又は共重合されていることを意味する(例えば、米国特許第4599392号(McKinneyら)を参照のこと)。この方法によって、モノマー/コモノマー材料から、長鎖分岐を含む、顕著な分岐を有するポリマーが作られる。
【0024】
高度分岐エチレン系ポリマーは、典型的にエチレンのホモポリマーであるが、しかしながら、少なくとも50モルパーセントの重合エチレンモノマーがポリマーに存在するかぎり、ポリマーは1種又はそれ以上のα−オレフィンコポリマー由来の単位を含むことができる。
【0025】
高度分岐エチレン系ポリマーの形成に用いることのできるコモノマーには、これに限定されるものではないが、典型的に20個以下の炭素原子を有するα−オレフィンコモノマーが含まれる。例えば、α−オレフィンコモノマーは、例えば3から10個の炭素原子を有することができ、又は別の場合には、α−オレフィンコモノマーは、例えば3から8個の炭素原子を有することができる。代表的なα−オレフィンコモノマーには、これに限定されるものではないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び4−メチル−1−ペンテンが含まれる。別の場合には、代表的なコモノマーには、これに限定されるものではないが、α,β−不飽和C−C−カルボン酸、具体的にはα,β−不飽和C−C−カルボン酸のマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸誘導体、例えば不飽和C−C15−カルボン酸エステル、具体的にはC−C−アルカノールのエステル、又は無水物、具体的にはメチルメタクリラート、エチルメタクリラート、n−ブチルメタクリラート、t−ブチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、t−ブチルアクリラート、無水メタクリル酸、無水マレイン酸、及び無水イタコン酸が含まれる。別の場合には、代表的なコモノマーには、これに限定されるものではないが、ビニルカルボキシラート、例えばビニルアセタートが含まれる。別の場合には、代表的なコモノマーには、これに限定されるものではないが、n−ブチルアクリラート、アクリル酸、及びメタクリル酸が含まれる。
【0026】
方法
ポリ(アルコキシド)は、高度分岐エチレン系ポリマーとの反応工程前、又は反応工程とは別に生成することができる。開示される他の方法では、ポリ(アルコキシド)は、十分に攪拌された反応器、例えば管型反応器又はオートクレーブ反応器において、in situで高度分岐エチレン系ポリマーの存在下、形成することができる。高度分岐エチレン系ポリマーは、エチレンの存在下形成される。
【0027】
エチレンポリマーは、エチレンの存在下で形成される。2つの方法−高度分岐エチレン系ポリマー分子をラジカル化ポリ(アルコキシド)分子にフリーラジカルグラフト化する方法、及びフリーラジカルエチレン重合してラジカル化ポリ(アルコキシド)部位から長鎖分岐を形成する方法は、実施形態エチレンポリマーを形成するために周知である。ポリ(アルコキシド)、置換基高度分岐エチレン系ポリマー、及び開示のエチレンポリマーへのそれらの組み合わせを形成するための他の実施形態方法も存在することができる。
【0028】
一実施形態において、ポリ(アルコキシド)はさらに、抽出可能な水素を含む。ポリ(アルコキシド)は、ある領域、例えば反応器に入り、そこでエチレンモノマーの高度分岐エチレン系ポリマーへのフリーラジカル重合が支持される。
【0029】
このステップのある時点で、フリーラジカルを有する分子、例えば過酸化物開始剤分解生成物又は成長高度分岐エチレン系ポリマー鎖は、抽出可能水素を抽出することによってポリ(アルコキシド)と相互作用し、フリーラジカルをポリ(アルコキシド)に移す。抽出可能水素をポリ(アルコキシド)から抽出する方法には、これに限定されるものではないが、分子(例えば、過酸化物含有化合物又はアゾ含有化合物)を均等開裂することによって、又は外部放射によって生じるフリーラジカルとの反応が含まれる。
【0030】
一実施形態において、ポリ(アルコキシド)はさらに、水素抽出後、ラジカル化部位を含む。工程のこの時点において、エチレンの存在下、成長高度分岐エチレン系ポリマー鎖又はエチレンモノマーは、ラジカル化部位と相互作用して、長鎖分岐に結合するか(終止を介する)又は長鎖分岐を形成する(重合による)。これらの反応は、同じポリ(アルコキシド)で数回起こることがある。本発明の方法は、本明細書に記載した1つ又はそれ以上の実施形態を含むことができる。
【0031】
一実施形態において、高度分岐エチレン系ポリマー及びポリ(アルコキシド)は、実施形態エチレンポリマーを形成するために用いる反応工程の外部で調製され、フリーラジカル重合条件下、エチレンの存在下で共通の反応器で化合され、2つのポリマーは工程条件及び反応物に供されて、実施形態エチレンポリマーの形成が達成される。
【0032】
別の実施形態方法において、高度分岐エチレン系ポリマー及びポリ(アルコキシド)は、いずれも同じ工程の異なる前方部分で調製され、その後、工程の共通の下流部分で、フリーラジカル重合条件下、エチレンの存在下で一緒に化合される。ポリ(アルコキシド)及び置換基高度分岐エチレン系ポリマーは、別個の前方反応領域又は帯域、例えば別個のオートクレーブ、又は管型反応器の上流部分で製造される。次いで、これらの前方反応領域又は帯域の生成物は移送され、実施形態エチレンポリマーの形成を促進するために、フリーラジカル重合条件下、エチレンの存在下で下流反応領域又は帯域において化合される。いくつかの方法では、反応を促進するために、フリーラジカル生成化合物が下流反応領域又は帯域に添加される。いくつかの他の方法では、下流反応領域又は帯域において反応を促進するために、触媒が添加される。いくつかの他の方法では、高度分岐エチレン系ポリマーの形成、及びポリ(アルコキシド)へのグラフト化、並びに開示のエチレンポリマーを形成するためのエチレンモノマーとポリ(アルコキシド)との直接反応を促進するために、追加の新鮮なエチレンが前方反応領域又は帯域の工程下流に添加される。いくつかの他の方法では、下流反応を阻害する可能性のある残留物又は副生成物を中和するために、前方反応領域又は帯域の生成物流の少なくとも1つは、下流反応領域又は帯域に到達する前に処理される。
【0033】
in situの方法では、ポリ(アルコキシド)は、第1又は前方反応領域又は帯域、例えば第1オートクレーブ又は管型反応器の上流部分で作られる。次いで、結果として得られた生成物流は、フリーラジカル重合条件でエチレンが存在する下流反応領域又は帯域に移送される。これらの条件は、高度分岐エチレン系ポリマーの形成、及びポリ(アルコキシド)へのグラフト化、並びにエチレンモノマーとポリ(アルコキシド)の少なくとも1つのラジカル化部位との直接反応を支持し、それによって実施形態エチレンポリマーが形成される。いくつかの実施形態方法では、グラフト反応を促進するために、フリーラジカル生成化合物が下流反応領域又は帯域に添加される。いくつかの他の実施形態方法では、下流反応領域又は帯域においてグラフト化及び反応を促進するために、触媒が添加される。いくつかの他の実施形態方法では、高度分岐エチレン系ポリマーの形成、及びポリ(アルコキシド)へのグラフト化、並びに開示のエチレンポリマーを形成するためのエチレンモノマーとポリ(アルコキシド)との反応を促進するために、追加の新鮮なエチレンが前方反応領域又は帯域の工程下流に添加される。いくつかの実施形態方法では、高度分岐エチレン系ポリマーの形成、高度分岐エチレン系ポリマーのポリ(アルコキシド)へのグラフト化、又は開示のエチレンポリマーを形成するためのエチレンモノマーとポリ(アルコキシド)との反応を阻害する可能性のある、前の反応からの残留物又は副生成物を中和するために、前方反応領域又は帯域の生成物流は、下流反応領域又は帯域に到達する前に処理される。
【0034】
ポリ(アルコキシド)を反応器に供給するために、任意の適切な方法を用いることができ、反応器でポリ(アルコキシド)は、高度分岐エチレン系ポリマーと反応することができる。
【0035】
高度分岐エチレン系ポリマーを生成するために、高圧フリーラジカル開始重合法が、典型的に用いられる。2つの異なる方式の高圧フリーラジカル開始重合法が公知である。最初の方式では、1つ又はそれ以上の反応帯域を有する攪拌オートクレーブ容器が用いられる。オートクレーブ反応器は、通常、開始剤若しくはモノマー、又は両方を供給するためのいくつかの注入ポイントを有する。第2の方式では、ジャケット付きの管が反応器として用いられ、ジャケット付き管は1つ又は複数の反応帯域を有する。これに限定するものではないが、適切な反応器の長さは、100から3000メートル、好ましくは1000から2000メートルであることができる。いずれの方式の反応器の場合も、反応帯域の始まりは、反応の開始剤、エチレン、テロマー、コモノマー(1種又は複数)、並びにそれらの任意の組み合わせのいずれかのサイド注入によって定められる。高圧法は、少なくとも2つの反応帯域を有するオートクレーブ若しくは管型反応器において、又はそれぞれ1つ又はそれ以上の反応帯域を含む、オートクレーブ若しくは管型反応器の組み合わせにおいて行うことができる。
【0036】
実施形態方法において、開始剤は、フリーラジカル重合が引き起こされる反応帯域より前で注入される。他の実施形態方法において、ポリ(アルコキシド)は、反応器系の最前部で反応に供給することができ、系自体の内部では形成されない。
【0037】
実施形態方法は、変換効率を向上させるために、工程リサイクルループを含むことができる。そのような実施形態方法において、下流反応領域又は帯域は、高度分岐エチレン系ポリマーがポリ(アルコキシド)から相分離する温度より低い温度で維持することができる。反応器中の重合可能な高度分岐エチレン系ポリマーの濃度を最大にするために、共重合が行われる反応器は、好ましくは、高いポリマー(「固体」)濃度を有する反応器、例えばループ反応器である。いくつかの実施形態方法において、リサイクルループは、ポリ(アルコキシド)若しくは高度分岐エチレン系ポリマーの重合を阻害するか、又は開示のエチレンポリマーを形成する反応を阻害する可能性のある、前の反応サイクルからの残留物又は副生成物を中和するために処理することができる。いくつかの実施形態方法において、この流れに新鮮なモノマーが添加される。
【0038】
高度分岐エチレン系ポリマーを生成するために用いられるエチレンは、精製エチレンであることができ、これはループリサイクル流から極性成分を除去することによって、又はポリ(アルコキシド)を製造するために新鮮なエチレンのみが使用されるような反応系構成を用いることによって得られる。典型的に、高度分岐エチレン系ポリマーを製造するために、エチレンは精製されない。そのような場合、リサイクルループのエチレンを用いることができる。
【0039】
実施形態方法は、ポリ(アルコキシド)存在下でのエチレンの単独重合、又はポリ(アルコキシド)存在下でのエチレンの1種又はそれ以上の他のコモノマーとの共重合のために用いることができるが、ただしこれらのモノマーは、高圧条件において、フリーラジカル条件下、エチレンと共重合して、高度分岐エチレン系ポリマーを形成することができる。
【0040】
フリーラジカル重合工程において、メルトインデックスを制御するために、連鎖移動剤又はテローゲン(telogen)(CTA)が典型的に用いられる。連鎖移動は、成長ポリマー鎖の終止を伴い、したがってポリマー材料の最終的な分子量を制限する。連鎖移動剤は、典型的に、成長ポリマー鎖と反応して、鎖の重合反応を停止する水素原子ドナーである。高圧フリーラジカル重合の場合、これらの作用剤は、多くの異なる種類のもの、例えば飽和炭化水素、不飽和炭化水素、アルデヒド、ケトン、又はアルコールであることができる。用いることのできる典型的なCTAには、これに限定されるものではないが、プロピレン、イソブタン、n−ブタン、1−ブテン、メチルエチルケトン、プロピオンアルデヒド、ISOPAR(ExxonMobil Chemical Co.)、及びイソプロパノールが含まれる。この工程に用いられるCTAの量は、全反応混合物の約0.03から約10重量パーセントである。
【0041】
ポリマーのメルトインデックス(MI又はI)は、分子量に反比例し、連鎖移動剤の濃度を操作することによって制御される。フリーラジカル重合の場合、水素原子を供与した後、CTAは、モノマー又はすでに形成されたオリゴマー若しくはポリマーと反応し、新しいポリマー鎖を開始することができる、ラジカルを形成する。これは、連鎖移動剤に存在する任意の官能基がポリマー鎖に導入されることを意味する。多数のCTA、例えば、オレフィン性不飽和結合を有するプロピレン及び1−ブテンは、共重合反応によって、ポリマー鎖自体に組み込まれることもできる。連鎖移動剤の存在下で生成されたポリマーは、いくつかの物理的特性、例えば加工性、光学特性、例えばヘイズ及び透明性、密度、剛性、降伏点、フィルム引出し強度及び引裂強度などが改質される。
【0042】
水素は、高圧フリーラジカル重合の連鎖移動剤であることが示されている。開示される方法の反応帯域で行われる分子量の制御は、触媒又は開始剤が注入される反応帯域に水素を供給することによって達成することができる。最終生成物のメルトインデックスの制御は、フリーラジカル重合が行われる反応帯域に、連鎖移動剤を供給することによって達成される。フリーラジカル連鎖移動剤の供給は、反応帯域に直接注入することによって、又は反応器の最前部にそれらを供給することによって達成できる。水素が反応器の最前部に供給される場合、開始剤が注入される反応帯域に入るまで、連鎖移動剤として作用することは予期されず、開始剤の注入時点で不飽和連鎖移動剤が成長ポリマー鎖と相互作用することが予期される。いくつかの実施形態方法において、工程の前端部でCTAの過剰な蓄積を防ぐために、リサイクル流から過剰のCTAを除去するか、又は注入を制限する必要のある可能性がある。
【0043】
開示の方法で用いられるフリーラジカル開始剤の種類は重要ではない。エチレン系ポリマーを生成するために一般に用いられるフリーラジカル開始剤は、酸素(管型反応器において、重合可能なモノマーの重量に対して0.0001から0.005重量%の通常の量で使用できる)、及び過酸化物である。好ましい開始剤は、t−ブチルペルオキシピバラート、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシアセタート、及びt−ブチルペルオキシ−2−ヘキサノアート、又はそれらの混合物である。これらの有機ペルオキシ開始剤は、重合可能なモノマーの重量に対して0.005から0.2重量%の通常の量で用いられる。
【0044】
過酸化物開始剤は、例えば有機過酸化物であることができる。代表的な有機過酸化物には、これに限定されるものではないが、環状過酸化物、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシジカルボナート、ペルオキシエステル、及びペルオキシケタールが含まれる。
【0045】
代表的な環状過酸化物には、これに限定されるものではないが、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナンが含まれる。そのような環状過酸化物は、例えば、商標TRIGONOX 301(Akzo Nobel;Arnhem、オランダ(Netherlands))として市販されている。代表的なジアシルペルオキシドには、これに限定されるものではないが、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシドが含まれる。そのようなジアシルペルオキシドは、例えば、商標TRIGONOX 36(Akzo Nobel)として市販されている。代表的なジアルキルペルオキシドには、これに限定されるものではないが、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、及びtert−ブチルクミルペルオキシドが含まれる。そのようなジアルキルペルオキシドは、例えば、商標TRIGONOX 101、TRIGONOX 145、TRIGONOX 201、TRIGONOX B、及びTRIGONOX T(Akzo Nobel)として市販されている。代表的なヒドロペルオキシドには、これに限定されるものではないが、tert−アミルヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが含まれる。そのようなヒドロペルオキシドは、例えば、商標TRIGONOX TAHP、及びTRIGONOX TMBH(Akzo Nobel)として市販されている。代表的なペルオキシカルボナートには、これに限定されるものではないが、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカルボナート、tert−アミルペルオキシ2−エチルへキシルカルボナート、及びtert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナートが含まれる。そのようなペルオキシカルボナートは、例えば、商標TRIGONOX 117、TRIGONOX 131、及びTRIGONOX BPIC(Akzo Nobel)として市販されている。代表的なペルオキシジカルボナートには、これに限定されるものではないが、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナート、及びジ−sec−ブチルペルオキシジカルボナートが含まれる。そのようなペルオキシジカルボナートは、例えば、商標TRIGONOX EHP、及びTRIGONOX SBP(Akzo Nobel)として市販されている。代表的なペルオキシエステルには、これに限定されるものではないが、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−アミルペルオキシネオデカノアート、tert−アミルペルオキシピバラート、tert−アミルペルオキシベンゾアート、tert−アミルペルオキシアセタート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシネオデカノアート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノアート、tert−ブチルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセタート、tert−ブチルペルオキシイソブチラート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノアート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、クミルペルオキシネオデカノアート、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、及びtert−ブチルペルオキシアセタートが含まれる。そのようなペルオキシエステル溶媒は、例えば、商標TRIGONOX 121、TRIGONOX 123、TRIGONOX 125、TRIGONOX 127、TRIGONOX 133、TRIGONOX 141、TRIGONOX 21、TRIGONOX 23、TRIGONOX 257、TRIGONOX 25、TRIGONOX 27、TRIGONOX 41、TRIGONOX 421、TRIGONOX 423、TRIGONOX 425、TRIGONOX 42、TRIGONOX 99、TRIGONOX C、及びTRIGONOX F(Akzo Nobel)として市販されている。代表的なペルオキシケタールには、これに限定されるものではないが、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及び2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタンが含まれる。そのようなペルオキシケタールは、例えば、商標TRIGONOX 122、TRIGONOX 22、TRIGONOX 29、及びTRIGONOX D(Akzo Nobel)として市販されている。フリーラジカル開始剤系は、例えば、前述の過酸化物開始剤のいずれかの混合物又は組み合わせを含むことができる。過酸化物開始剤は、フリーラジカル開始剤系の60重量パーセント未満を占めることができる。
【0046】
フリーラジカル開始剤系はさらに、少なくとも1種の炭化水素溶媒を含む。炭化水素溶媒は、例えば、CからC30炭化水素溶媒であることができる。代表的な炭化水素溶媒には、これに限定されるものではないが、無機質溶媒(mineral solvent)、ノルマルパラフィン溶媒、イソパラフィン溶媒、環状溶媒などが含まれる。炭化水素溶媒は、例えば、n−オクタン、イソ−オクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)、n−ドデカン、イソ−ドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)、及び他のイソパラフィン溶媒からなる群から選択することができる。イソパラフィン溶媒などの代表的な炭化水素溶媒は、例えば、商標ISOPAR C、ISOPAR E、及びISOPAR H(ExxonMobil Chemical Co.)として市販されている。炭化水素溶媒は、フリーラジカル開始剤系の99重量パーセント未満を占めることができる。
【0047】
いくつかの実施形態方法において、フリーラジカル開始剤系はさらに、極性共溶媒を含むことができる。極性共溶媒は、アルコール共溶媒、例えば、CからC30アルコールであることができる。さらに、アルコール共溶媒のアルコール官能性は、例えば、単官能又は多官能であることができる。極性共溶媒として代表的なアルコールには、これに限定されるものではないが、イソプロパノール(2−プロパノール)、アリルアルコール(1−ペンタノール)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,4−ブタンジオール、それらの組み合わせ、それらの混合物などが含まれる。極性共溶媒は、フリーラジカル開始剤系の40重量パーセント未満を占めることができる。
【0048】
極性共溶媒は、アルデヒドであることができる。アルデヒドは、一般に当業者に公知であり、例えば、プロピオンアルデヒドを極性共溶媒として用いることができる。しかしながら、そのようなアルデヒドを極性共溶媒として用いる場合、連鎖移動剤としてのアルデヒドの反応潜在性を考慮すべきである。そのような反応潜在性は、当業者に公知である。
【0049】
極性共溶媒は、ケトンであることができる。ケトンは、一般に当業者に公知であり、例えば、アセトンを極性共溶媒として用いることができる。しかしながら、そのようなケトンを極性共溶媒として用いる場合、連鎖移動剤としてのケトンの反応潜在性を考慮すべきである。そのような反応潜在性は、当業者に公知である。
【0050】
いくつかの実施形態方法において、フリーラジカル開始剤系はさらに、溶媒として、又は同時注入のブレンドとして、連鎖移動剤を含むことができる。前述のとおり、連鎖移動剤は、一般に当業者に公知であり、連鎖移動剤には、これに限定されるものではないが、プロパン、イソブタン、アセトン、プロピレン、イソプロパノール、ブテン−1、プロピオンアルデヒド、及びメチルエチルケトンが含まれる。他の開示の方法において、連鎖移動剤は、開始剤系とは別の注入口を介して、反応器に装填することができる。別の実施形態方法において、連鎖移動剤は、エチレンとブレンドし、加圧し、その後、独自の注入系で反応器に注入することができる。
【0051】
いくつかの実施形態方法において、過酸化物開始剤は、最初に炭水化物溶媒に溶解するか、又は炭水化物溶媒で希釈し、次いで、極性共溶媒を、過酸化物開始剤/炭化水素溶媒混合物に添加し、その後、フリーラジカル開始剤系を重合反応器に計量投入することができる。別の実施形態方法において、過酸化物開始剤は、極性共溶媒の存在下、炭化水素溶媒に溶解することができる。
【0052】
いくつかの実施形態方法において、この方法に用いられるフリーラジカル開始剤は、抽出可能な水素をポリ(アルコキシド)から抽出することによって、ポリ(アルコキシド)上にグラフト部位を創出することができる。フリーラジカル開始剤の例には、前に記載したフリーラジカル開始剤、例えば過酸化物、及びアゾ化合物が含まれる。いくつかの他の実施形態方法において、抽出可能な水素を遊離し、ポリ(アルコキシド)上にラジカル化部位を作るために、電離放射を用いることもできる。有機開始剤は、抽出可能な水素を抽出する好ましい手段であり、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾアート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトアート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、及びtert−ブチルペルアセタート、t−ブチルα−クミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、t−アミルペルオキシベンゾアート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、及び2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンの使用である。好ましいアゾ化合物は、アゾビスイソブチルニトリットである。
【0053】
いくつかの実施形態方法において、加工助剤、例えば可塑剤も、実施形態エチレンポリマー生成物に含むことができる。これらの助剤には、これに限定されるものではないが、フタラート、例えばジオクチルフタラート、及びジイソブチルフタラート、天然油、例えばラノリン、並びに石油精製から得られたパラフィン系、ナフテン系、及び芳香族系油、並びにロジン又は石油原料由来の液体樹脂が含まれる。加工助剤として有用な油の代表的な種類には、白色鉱物油、例えばKAYDOL油(Chemtura Corp.;Middlebury、Conn.)、及びSHELLFLEX371ナフテン系油(Shell Lubricants;Houston、Tex.)が含まれる。別の適切な油は、TUFFLO油(Lyondell Lubricants;Houston、Tex)である。
【0054】
いくつかの実施形態方法において、実施形態エチレンポリマーは、1種又はそれ以上の安定剤、例えば抗酸化剤、例えば、IRGANOX 1010及びIRGAFOS 168(Ciba Specialty Chemicals;Glattbrugg、スイス(Switzerland))で処理される。一般に、ポリマーは、押出し又は他の溶融工程の前に、1種又はそれ以上の安定剤で処理される。他の実施形態方法において、他のポリマー添加剤には、これに限定されるものではないが、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核形成剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、防煙剤、粘度調節剤、及びブロッキング防止剤が含まれる。実施形態エチレンポリマー組成物は、例えば、実施形態エチレンポリマーの重量に対して、合計重量10%未満の1種又はそれ以上の添加剤を含むことができる。
【0055】
実施形態エチレンポリマー(本発明のポリマー)はさらに、1種又はそれ以上の他のポリマー又は添加剤と配合することができる。いくつかの実施形態エチレンポリマー組成物において、1種又はそれ以上の抗酸化剤をさらにポリマーに配合し、配合されたポリマーをペレット化することができる。配合されたエチレンポリマーは、任意の量の1種又はそれ以上の抗酸化剤を含有することができる。例えば、配合されたエチレンポリマーは、ポリマー100万部当たり、約200から約600部の1種又はそれ以上のフェノール系抗酸化剤を含むことができる。さらに、配合されたエチレンポリマーは、ポリマー100万部当たり、約800から約1200部のホスフィット系抗酸化剤を含むことができる。開示される配合エチレンポリマーはさらに、ポリマー100万部当たり、約300から約1250部のカルシウムステアラートを含むことができる。
【0056】
用途
実施形態エチレンポリマーは、キャスト、インフレーション、カレンダー加工、又は押出しコーティング法によって調製された少なくとも1つのフィルム層、例えば単層フィルム、又は多層フィルムの少なくとも1つの層を含む物体、成形物品、例えばブロー成形、射出成形、又は回転成形物品、押出し物、繊維、及び織布又は不織布を含む、有用な物品を製造するための、多種多様な通常の熱可塑性物質製作方法に用いることができる。実施形態エチレンポリマーを含む熱可塑性組成物には、他の天然又は合成材料、ポリマー、添加剤、強化剤、耐燃性添加剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤、及び可塑剤とのブレンドが含まれる。
【0057】
実施形態エチレンポリマーは、他の適用例のための繊維の製造に用いることができる。実施形態エチレンポリマー又はそのブレンドから調製することのできる繊維には、短繊維、トウ繊維、多成分繊維、鞘/芯繊維、撚繊維、及びモノフィラメント繊維が含まれる。適切な繊維形成法には、米国特許第4340563号(Appelら)、同第4663220号(Wisneskiら)、同第4668566号(Nohrら)、及び同第4322027号(Reba)に開示されているスピンボンド(spin bonded)、メルトブロー技法、米国特許第4413110号(Kaveshら)に開示されているゲル紡糸繊維、米国特許第3485706号(May)に開示されている織布及び不織布、又は他の繊維、例えばポリエステル、ナイロン、又は綿とのブレンドを含む、そのような繊維から製造された構造体、熱成形物品、押出し形状(異形押出し物及び共押出し物を含む)、カレンダー加工物品、並びに延伸、撚り加工、又は捲縮糸又は繊維が含まれる。
【0058】
実施形態エチレンポリマーは、多種多様なフィルムに用いることができ、これに限定されるものではないが、透明収縮フィルム、コレーション(collation)収縮フィルム、キャストストレッチフィルム、サイレージフィルム、ストレッチフード、シーラント、及びおむつバックシートが含まれる。
【0059】
実施形態エチレンポリマーはまた、他の直接最終用途適用例にも有用である。実施形態エチレンポリマーは、ワイヤ及びケーブルのコーティング操作、真空形成操作のシート押出し、並びに射出成形、ブロー成形法、又は回転成形法の使用を含む成形物品の形成に有用である。実施形態エチレンポリマーを含む組成物はまた、通常のポリオレフィン加工技法を用いて、2次加工(fabricated)物品に形成することができる。
【0060】
実施形態エチレンポリマーの他の適切な適用例には、弾性フィルム及び繊維;ソフトタッチ製品、例えば歯ブラシの柄、及び器具のハンドル;ガスケット及び異形品(profile)、接着剤(ホットメルト接着剤及び感圧接着剤を含む);履物(靴底及び靴裏地を含む);自動車内装部品及び異形品;発泡製品(連続気泡及び独立気泡);他の熱可塑性ポリマー、例えば高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、又は他のオレフィンポリマーの衝撃改質剤;被覆繊維;ホース;チューブ;目張り;キャップ裏張り:床剤;並びに潤滑剤用の流動点改質剤としても公知である粘度指数改質剤が含まれる。
【0061】
実施形態エチレンポリマーを他の最終用途に適用するために、実施形態エチレンポリマーにさらなる処理を行うことができる。例えば、本発明のポリマー又はそれを含む製剤を用いて、分散体(水性及び非水性)を形成することもできる。PCT公開第2005/021622号(Strandeburgら)に開示されているとおり、実施形態エチレンポリマーを含む起泡発泡体を形成することもできる。実施形態エチレンポリマーはまた、任意の公知の手段によって、例えば過酸化物、電子ビーム、シラン、アジド、又は他の架橋技法を用いて、架橋することもできる。実施形態エチレンポリマーは、例えば、グラフト化(例えば、無水マレイン酸(MAH)、シラン、又は他のグラフト化剤の使用による)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン化、又は他の化学修飾によって、化学的に修飾することもできる。
【0062】
形成後、実施形態エチレンポリマーに添加剤を添加することができる。適切な添加剤には、充填剤、例えば有機又は無機粒子、例えば粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末金属、有機又は無機繊維、例えば炭素繊維、窒化ケイ素繊維、スチールワイヤ又はメッシュ、及びナイロン又はポリエステルコード、ナノサイズ粒子、粘土など;粘着付与剤、伸展油(oil extender)、例えばパラフィン系油又はナフテン系(napthelenic)油;他の天然及び合成ポリマー、例えば実施形態の方法に従って製造される、又は製造することができる他のポリマーが含まれる。
【0063】
実施形態エチレンポリマーと他のポリオレフィンとのブレンド及び混合物を実施することができる。実施形態エチレンポリマーとブレンドするのに適したポリマーには、天然及び合成ポリマーを含む、熱可塑性及び非熱可塑性ポリマーが含まれる。ブレンドするための代表的なポリマーには、ポリプロピレン(衝撃改質ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、及びランダムエチレン/プロピレンコポリマー)、様々な種類のポリエチレン、例えば高圧、フリーラジカルLDPE、チーグラー・ナッタLLDPE、メタロセンPE、例えば複数反応器PE(チーグラー・ナッタPE及びメタロセンPEの「反応器内」ブレンド、例えば、米国特許第6545088号(Kolthammerら)、第6538070号(Cardwellら)、第6566446号(Parikhら)、第5844045号(Kolthammerら)、第5869575号(Kolthammerら)、及び第6448341号(Kolthammerら)に開示されている生成物)、エチレン−ビニルアセタート(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、衝撃改質ポリスチレン、ABS、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、及びそれらの水素化誘導体(SBS及びSEBS)、並びに熱可塑性ポリウレタンが含まれる。均一ポリマー、例えばオレフィンプラストマー及びエラストマー、エチレン及びプロピレン系コポリマー(例えば、商品名VERSIFY(商標)プラストマー及びエラストマー(The Dow Chemical Company)、並びにVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能なポリマー)も、実施形態エチレンポリマーを含むブレンドの成分として有用であり得る。
【0064】
実施形態エチレンポリマーのブレンド及び混合物には、熱可塑性ポリオレフィンブレンド(TPO)、熱可塑性エラストマーブレンド(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)、及びスチレンポリマーブレンドを含むことができる。TPE及びTPVブレンドは、実施形態エチレンポリマー(それらの官能化又は不飽和誘導体を含む)と任意選択のゴム(通常のブロックコポリマー、特にSBSブロックコポリマーを含む)、及び場合により架橋剤又は加硫剤を化合することによって調製することができる。TPOブレンドは、一般に、実施形態ポリマーをポリオレフィン、及び場合により架橋剤又は加硫剤とブレンドすることによって調製される。前述のブレンドは、成形品の形成において、及び場合により得られた成形物品を架橋するのに用いることができる。様々な成分を用いる類似の手順は、以前に米国特許第6797779号(Ajbaniら)に開示されている。
【0065】
定義
反対のことが述べられるか、文脈から暗示されるか、又は当分野において慣例であるのでないかぎり、すべての部及びパーセントは重量に基づき、すべての試験法は本開示の出願日現在のものである。米国特許実施のために、参照したいずれの特許、特許出願、又は刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に示されるいずれの定義にも矛盾しない範囲で)、及び当分野における一般知識に関して、それらの全体を参照により組み込まれる(又は、その等価の米国版を参照によりそのように組み込まれる)。
【0066】
本開示において数値範囲は近似値であり、したがって別段の指示のないかぎり、範囲外の値を含む可能性がある。数値範囲は、任意の下方値と任意の上方値との間に少なくとも2単位の間隔があるならば、1単位の増分で、下方値及び上方値を含むすべての値を含む。例として、組成特性、物理的特性、又は他の特性、例えば分子量、粘度、メルトインデックスなどが100から1000である場合、すべての個々の値、例えば100、101、102など、及び部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200などが明確に列挙されているものであることが意図される。1未満の値を含有するか、又は1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する範囲の場合、1単位は適宜、0.0001、0.001、0.01、又は0.1とみなされる。10未満の1桁の数(例えば、1から5)を含有する範囲の場合、1単位は典型的に0.1とみなされる。これらは具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙される最小値と最大値との間の数値の可能なすべての組み合わせが本開示に明確に述べられているとみなされる。数値範囲は、特に密度、メルトインデックス、分子量、試薬量、及び工程条件に関して、本開示内で提供される。
【0067】
本明細書で用いられる用語「組成物」は、2種以上の材料の組み合わせを意味する。本発明のポリマーに関して、組成物は、少なくとも1種の他の材料、例えば、添加剤、充填剤、別のポリマー、触媒などと組み合わせた本発明のポリマーである。本発明において、式1に記載のとおり、これらの材料とポリマーとの関連が本発明のポリマーの定義に一部であるため、本発明のポリマーは、未反応ポリアルコ(キシド)及び/又はエチレン系ポリマーが存在するため組成物ではない。
【0068】
使用される用語「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーの緊密な物理的混合物(すなわち、反応を含まない)を意味する。ブレンドは混和性(分子レベルで相分離しない)であっても、混和性でなくてもよい。ブレンドは、相分離していても、相分離していなくてもよい。ブレンドは、透過電子顕微鏡法、光散乱、x線散乱、及び当分野で公知の他の方法によって決定される、1つ又はそれ以上のドメイン配置を含有していても、含有していなくてもよい。ブレンドは、マクロレベルで(例えば、樹脂を溶融ブレンドする、若しくは配合する)、又はミクロレベルで(例えば、同じ反応器内で同時に形成する)、2種以上のポリマーを物理的に混合することによって達成することができる。
【0069】
用語「ポリマー」は、同じであるか又は異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製された化合物を指す。したがって、一般的用語ポリマーは、用語ホモポリマー(微量の不純物がポリマー構造に混入してもよいという理解のもとで、単一の種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指す)、及び以下に定義される用語「インターポリマー」を包含する。
【0070】
用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。一般的用語インターポリマーには、コポリマー(2つの異なるモノマーから調製されたポリマーを指す)、及び2つを超える異なる種類のモノマーから調製されたポリマーが含まれる。
【0071】
用語「エチレン系ポリマー」は、ポリマーの重量に対して、過半数の量の重合エチレンを含み、場合により、少なくとも1種のコモノマーを含むことができるポリマーを指す。
【0072】
用語「エチレン系インターポリマー」は、インターポリマーの重量に対して、過半数の量の重合エチレンを含み、少なくとも1種のコモノマーを含むインターポリマーを指す。
【0073】
13C NMR分析においてアルキル分岐の報告の文脈で用いられる用語「感知できない」は、所与のシグナル対ノイズ比で、その分岐が検出できなかったことを意味する。
【0074】
本明細書で用いられる用語「複数部分反応器」は、複数の反応帯域を有する反応器を指し、反応帯域は、典型的に供給口及び/又は1つ又はそれ以上の物理的障壁を含む。
【0075】
追加の実施形態
本発明の一実施形態において、ポリマーは、エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含み、該ポリマーは、13C核磁気共鳴(NMR)によって求められる、1000炭素原子当たり少なくとも0.15、又は少なくとも0.5、又は少なくとも0.8単位のアミル基を有する。
【0076】
一実施形態において、本発明のポリマーは、1個又はそれ以上の炭素原子に結合したエチレンの一部分を含む。
【0077】
一実施形態において、本発明のポリマーは、主鎖炭素原子でポリ(アルコキシド)に結合した少なくとも1つのエチレン系ポリマー分岐を含む。
【0078】
一実施形態において、本発明のポリマーの主鎖炭素原子でポリ(アルコキシド)に結合したエチレン系ポリマー分岐は、長鎖分岐を含有する。
【0079】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、13C NMRによって求められる、少なくとも1、又は少なくとも1.2、又は少なくとも1.4単位のC6+分岐を含む。
【0080】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、13C NMRによって求められる、1000炭素原子当たり5以下、又は3以下、又は2単位以下のアミル基を含む。
【0081】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、密度0.95未満、又は0.94g/cm未満を有する。
【0082】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、メルトインデックス(I)100未満、又は50未満、又は20g/10分未満を有する。
【0083】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、メルトインデックス(I)0.1超、又は0.5超を有する。
【0084】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、メルトインデックス(I)1超、又は2超、又は5g/10分超を有する。
【0085】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、メルトフロー比(I10/I)少なくとも10、又は少なくとも15、又は少なくとも18を有する。
【0086】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、I10/I 50未満、45未満、30未満を有する。
【0087】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、I 50未満、40未満、30g/10分未満、及びI10/I10超、15超、又は18超を有する。
【0088】
一実施形態において、本発明のポリマーは、分子量分布(MWD)4から10、又は5から7を有する。
【0089】
一実施形態において、本発明のポリマーは、ポリマーの重量に対して、1から30、又は4から20重量パーセントのポリ(アルコキシド)を含む。
【0090】
一実施形態において、本発明は、前記ポリマー実施形態のいずれかの本発明のポリマーを含む組成物である。
【0091】
一実施形態において、前記実施形態の組成物は、1種又はそれ以上の添加剤を含む。
【0092】
一実施形態において、本発明は、前記組成物実施形態のいずれかの組成物を含む物品である。
【0093】
一実施形態において、本発明は、組成物実施形態のいずれかの組成物から形成された少なくとも1つの成分を含む物品である。
【0094】
一実施形態において、前記物品実施形態のいずれかの物品は、フィルムの形態である。
【0095】
一実施形態において、フィルムは、食品包装の改善のために、高いBeta比(酸素と二酸化炭素(CO)の相対拡散速度)を有する。
【0096】
一実施形態において、本発明は、エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含むポリマーを形成する方法であって、該方法は、
A.第1反応器又は複数部分反応器の第1部分において、フリーラジカル開始剤の存在下、少なくとも1種のポリ(アルコキシド)をエチレンと接触させるステップ、及び
B.少なくとも1つの他の反応器又は複数部分反応器の後部において、フリーラジカル開始剤の存在下、ポリ(アルコキシド)を追加のエチレンと反応させて、ポリ(アルコキシド)に結合したエチレン系ポリマー分岐を形成するステップを含む。
【0097】
一方法実施形態において、エチレン系ポリマー分岐は、エチレンモノマーをポリ(アルコキシド)と結合して、エチレン−ポリ(アルコキシド)部分を形成し、得られた部分を少なくとも追加のエチレンモノマーと重合して、エチレン系ポリマー分岐を形成することによって形成される。
【0098】
一方法実施形態において、エチレン系ポリマー分岐は、ポリ(アルコキシド)とは独立して形成され、その後、ポリ(アルコキシド)にグラフト化される。
【0099】
一実施形態において、本発明は、方法実施形態のいずれかによって製造されたポリマーである。
【0100】
一実施形態において、本発明のポリマーは、60、50、40、30、20、又は10重量パーセント未満の溶媒抽出によって抽出可能なポリ(アルコキシド)を含む。
【0101】
一実施形態において、本発明の組成物は、60、50、40、30、20、又は10重量パーセント未満の溶媒抽出によって抽出可能なポリ(アルコキシド)を含む。
【0102】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、下記の数学的関係を満たす、ピーク溶融温度Tm(℃)及び密度(g/cm)を有する:
Tm<771.5(℃・cc/g)×(密度)−604(℃)。
【0103】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、下記の数学的関係を満たす、ピーク溶融温度Tm(℃)及び密度(g/cm)を有する:
Tm<771.5(℃・cc/g)×(密度)−605.5(℃)。
【0104】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、下記の数学的関係を満たす、融解熱(H)(ジュール/グラム(J/g))及び密度(g/cm)を有する:
<2333(J・cc/g)×(密度)−2009(J/g)。
【0105】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、下記の数学的関係を満たす、融解熱(H)(ジュール/グラム(J/g))及び密度(g/cm)を有する:
<2333(J・cc/g)×(密度)−2020(J/g)。
【0106】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかの本発明のポリマーは、密度少なくとも0.93g/cmを有する。
【0107】
一実施形態において、本発明のポリマーは、粘度比(V0.1/V100)少なくとも8、好ましくは少なくとも10を有する。
【0108】
一実施形態において、本発明のポリマーは、粘度比(V0.1/V100)30未満、又は20未満を有する。
【0109】
一実施形態において、本発明のポリマーは、0.1rad/秒で粘度1400超、好ましくは1800Pa・s超を有する。
【0110】
一実施形態において、前記実施形態のいずれかのポリ(アルコキシド)は、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールの少なくとも1つである。
【0111】
一実施形態において、フィルムは、高いBeta比(酸素と二酸化炭素(CO)の相対拡散速度)を有する。
【0112】
一実施形態において、前記実施形態のエチレンポリマーは、
A.第1反応器又は複数部分反応器の第1部分において、フリーラジカル開始剤の存在下、少なくとも1種のポリ(アルコキシド)をエチレンと接触させるステップ、及び
B.少なくとも1つの他の反応器又は複数部分反応器の後部において、フリーラジカル開始剤の存在下、ポリ(アルコキシド)を追加のエチレンと反応させて、エチレンポリマーを形成するステップを含む方法によって製造される。
【0113】
一実施形態において、前記実施形態のステップ(B)は、グラフト重合によって起こる。
【0114】
一実施形態において、ポリ(アルコキシド)は、25℃で粘度200、500、又は1000センチストークス(cSt)を有する。
【0115】
一実施形態において、ポリ(アルコキシド)は、25℃で粘度100万、500000、100000、又は50000センチストークス(cSt)未満を有する。
【0116】
実験
参照樹脂
30種の市販のLDPE樹脂(「市販樹脂」又は「CAR」と称する)を、密度、メルトインデックス(I)、融解熱、ピーク溶融温度、g’、gpcBR、及びLCBfに関して、すべて以下に記載する、密度、メルトインデックス、DSC結晶化度、Gel浸透クロマトグラフィ、3D−GPCによるg’、及び3D−GPCによるgpcBR分岐指数法を用いて試験する。市販樹脂は、表1に記載した特性を有する。
【表1】

【0117】
試験法
密度
密度を測定するサンプルは、ASTM D1928に従って調製する。サンプルを、374°F(190℃)及び30000psiで3分間、次いで、70°F(21℃)及び30000psiで1分間プレスする。密度の測定は、ASTM D792、方法Bを用いて、サンプルをプレスして1時間以内に行う。
【0118】
メルトインデックス
メルトインデックス、すなわちIは、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定し、10分間当たりに溶出したグラムで報告する。I10は、ASTM D1238、条件190℃/10kgで測定し、10分間当たりに溶出したグラムで報告する。
【0119】
ポリ(アルコキシド)の粘度決定
100000センチストークスまでの粘度は、ASTM D−445、IP71(25℃、恒温水浴、平衡時間少なくとも15分)によって、ガラス細管粘度計、例えばUbbelohde粘度計を用いて測定できる。100000センチストークスを超える粘度は、回転粘度計、例えば、Brookfield Engineering Laboratoriesから入手可能な、Brookfield Synchrolectric粘度計又はWells−Brookfield Core/Plate粘度計を用い、25Cで試験法ASTM D−1084(カップ/スピンドル粘度計の場合)及び25CでASTM D−4287(コーン/プレート粘度計の場合)を用いて測定できる。
【0120】
示差走査熱量測定法(DSC)
示差走査熱量測定法(DSC)を用いて、広い温度範囲の所与の温度でサンプルの結晶化度を測定することができる。実施例では、RCS(冷蔵冷却システム)冷却付属装置及びオートサンプラモジュールを備えたTA Q1000型DSC(TA Instruments;New Castle、DE)を用いて、これらの試験を行う。試験中、50ml/分の窒素パージガス流を用いる。樹脂を、空気中1500psiの圧力下、350℃で5分間、厚さ3mm、1インチ円形プラークに圧縮成形する。その後、サンプルを圧縮機から取り出し、台上に置いて、室温(約25℃)に冷却する。冷却した材料の3〜10mgのサンプルを、直径6mmのディスクにカットし、秤量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)に入れ、圧着して閉じる。その後、熱的挙動に関して、サンプルを試験する。
【0121】
サンプルの熱的挙動は、サンプル温度を上下に変化させ、応答対温度プロファイルを作成することによって求める。最初に、サンプルを180℃に急速に加熱し、事前の熱履歴を除去するために、3分間等温に保持する。次いで、サンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃に冷却し、−40℃で3分間保持する。その後、サンプルを加熱速度10℃/分で150℃に加熱する。冷却及び第2加熱曲線を記録する。求められる値は、ピーク溶融温度(T)、ピーク結晶化温度(T)、融解熱(H)(J/g)、及び式1を用いて算出されるポリエチレンサンプルの結晶化度%である:
結晶化度%=((H)/(292J/g))×100(式1)。
【0122】
融解熱(H)及びピーク溶融温度は、第2加熱曲線から報告される。ピーク結晶化温度は、冷却曲線から求められる。
【0123】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
GPCシステムは、内蔵示差屈折計(RI)を備えた、Waters(Milford、MA)150℃高温クロマトグラフからなる(他の適切な高温GPC装置にはPolymer Laboratories(Shropshire、UK)210型及び220型が含まれる)。さらなる検出器には、Polymer ChAR(Valencia、スペイン(Spain))のIR4赤外検出器、Precision Detectors(Amherst、MA)の2角レーザ光散乱検出器2040型、及びViscotek(Houston、TX)150R 4キャピラリ溶液粘度計を含むことができる。これら後者の2つの独立した検出器及び少なくとも1つの前者の検出器を備えたGPCは、「3D−GPC」と呼ばれることがあり、用語「GPC」単独では一般に通常のGPCを指す。算出のために、サンプルに応じて15°角又は90°角の光散乱検出器を用いる。データ収集は、Viscotek TriSECソフトウエア、バージョン3及び4チャンネルViscotek Data Manager DM400を用いて行う。このシステムはさらに、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)のオンライン溶媒脱気デバイスを備えている。適切な高温GPCカラムを用いることができ、例えば4本の長さ30cmのShodex HT803 13ミクロンカラム、又は4本の30cm Polymer Labsカラム20ミクロン混合細孔径パッキング(MixA LS、Polymer Labs)である。サンプル回転(carousel)区画は140℃で操作し、カラム区画は150℃で操作する。サンプルは、溶媒50ミリリットル中ポリマー0.1グラムの濃度で調製する。クロマトグラフィ用溶媒及びサンプル調製溶媒は、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する。両方の溶媒を窒素でスパージする。ポリエチレンサンプルを、160℃で4時間、穏やかに攪拌する。注入容量は200マイクロリットルである。GPCを通る流量は1ml/分に設定する。
【0124】
GPCカラムセットは、実施例を流す前に、21種の狭い分子量分布のポリスチレン標準を流すことによって較正する。標準の分子量(MW)は580から8400000グラム/モルの範囲であり、標準は6種の「カクテル」混合物に含有される。各標準混合物は、個々の分子量の間に少なくとも1桁の間隔を有する。標準混合物は、Polymer Laboratories(Shropshire、UK)から購入する。ポリスチレン標準は、分子量1000000以上の場合、溶媒50ミリリットル中0.025グラムで、分子量1000000未満の場合、溶媒50ミリリットル中0.05グラムで調製する。ポリスチレン標準を80℃で30分間、穏やかに攪拌しながら溶解した。分解を最小限に抑えるために、狭い標準混合物を最初に、最大分子量成分が減少する順に流す。ポリスチレン標準のピーク分子量は、式2を用いてポリエチレン分子量に変換し(Williams及びWard, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621(1968)に記載のとおり)、
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン(式2)
式中、Mはポリエチレン又はポリスチレンの分子量であり(表示どおり)、Aは0.43の値を有し、Bは1.0である。分子量分布及び関連する統計値を得るためのこのポリエチレン較正法の使用は、Williams及びWardの方法として定義される。式3のA及びBの他の値は、ポリスチレン及びポリエチレンのMark−HouwinkのK及びa(αと呼ばれることもある)値の様々な選択によって得られる可能性があり、一般に、通常どおり較正された3D−GPCとされる。
【0125】
3D−GPCによって、絶対重量平均分子量(「Mw,Abs」)及び固有粘度も、前述と同じ条件を用いて、適切な狭いポリエチレン標準から独立して得られる。これらの狭い線状ポリエチレン標準は、Polymer Laboratories(Shropshire、UK;Part No.PL2650−0101及びPL2650−0102)から得ることができる。
【0126】
多検出器オフセットを決定するための系統的な手法は、Balke、Moureyら(Mourey and Balke, Chromatography Polym., Chapter12, (1992))(Balke, Thitiratsakul, Lew, Cheung, Mourey, Chromatography Polym., Chapter13, (1992))によって公表されているものに一致する様式で行われ、分布の広いDow1683ポリスチレン(American Polymer Standards Corp.Mentor、OH)又はその等価物から得られる3重検出器log(Mw及び固有粘度)の結果を、分布の狭いポリスチレン標準較正曲線から得られる狭い標準のカラム較正結果に最適化する。検出器の容量オフセット決定の理由となる分子量のデータは、Zimm(Zimm, B.H., J. Chem. Phys., 16, 1099 (1948))及びKratochvil(Kratochvil, P., Classical Light Scattering from Polymer Solutions, Elsevier, Oxford, NY (1987))によって公表されているものと一致する様式で得られる。分子量の決定に用いられる全体の注入濃度は、適切な線状ポリエチレンホモポリマー、又はポリエチレン標準の1つから導かれた質量分析器面積及び質量分析器定数から得られる。算出される分子量は、前述の1種又はそれ以上のポリエチレン標準から導かれた光散乱定数、及び屈折率濃度係数dn/dc、0.104を用いて得られる。一般に、質量分析器応答及び光散乱定数は、約50000ダルトンを超える分子量を有する線状標準から決定されるべきである。粘度計の較正は、製造業者によって記載された方法を用いて、或いは適切な線状標準、例えばStandard Reference Materials(SRM)1475a、1482a、1483、又は1484aの公表値を用いて行うことができる。クロマトグラフィの濃度は、第2ビリアル係数の影響(分子量に対する濃度の影響)への対処を排除できるほど低いことが想定される。
【0127】
3D−GPCによるgpcBR分岐指数
3D−GPC構成において、ポリエチレン及びポリスチレン標準を用いて、2種のポリマー型、ポリスチレン及びポリエチレンに関してそれぞれ独立してMark−Houwink定数K及びαを求めることができる。これらの値は、以下の方法の適用において、Williams及びWardのポリエチレン等価分子量を精密化するために用いることができる。
【0128】
gpcBR分岐指数は、最初に、前述のとおり光散乱、粘度、及び濃度検出器を較正することによって求められる。次いで、光散乱、粘度計、及び濃度クロマトグラムからベースラインを減じる。次いで、屈折率クロマトグラムから検出可能なポリマーの存在が示される、光散乱及び粘度計クロマトグラムのすべての低分子量保持容量範囲が確実に積分されるように、積分窓を設定する。次いで、線状ポリエチレン標準を用いて、前述のとおり、ポリエチレン及びポリスチレンのMark−Houwink定数を確立する。これらの定数が得られたら、2つの値を用いて、式3及び4に示すとおり、溶出容量の関数として、ポリエチレン分子量及びポリエチレン固有粘度の2つの線形基準常用較正(「cc」)を構築する。
【数1】

及び
【数2】

【0129】
gpcBR分岐指数は、長鎖分岐を特性化するための堅実な方法である。Yau, Wallace W., 「Examples of Using 3D-GPC-TREF for Polyolefin Characterization」, Macromol. Symp., 2007, 257, 29-45。この指数により、g’値の決定に通常用いられる断層毎の3D−GPC計算、及び全ポリマー検出器面積及び面積ドット積のための分岐頻度計算が回避される。3D−GPCデータから、ピーク面積法を用い、光散乱(LS)検出器によってサンプルのバルクMを得ることができる。この方法により、g’の決定に必要とされる、光散乱検出器信号と濃度検出器信号の断層毎の比率が回避される。
【数3】

【0130】
式5による面積の算出は、サンプル全体の面積として、検出器のノイズ並びにベースライン及び積分限界に関するGPCの設定に起因する変動に対してはるかに感受性でないため、より高い精度を提供する。さらに重要なことに、ピーク面積の算出は、検出器容量オフセットに影響を受けない。同様に、式6に示す面積法によって、高い精度のサンプル固有粘度(IV)が得られ、
【数4】

式中、DPは、オンライン粘度計から直接モニターされる示差圧力信号を表わす。
【0131】
gpcBR分岐指数を求めるために、サンプルポリマーの光散乱溶出面積を用いて、サンプルの分子量を求める。サンプルの粘度検出器溶出面積を用いて、サンプルの固有粘度(IV又は[η])を求める。
【0132】
最初に、線状ポリエチレン標準サンプル、例えばSRM1475a又は等価物の分子量及び固有粘度を、式7及び8によって、溶出容量の関数として分子量及び固有粘度の両方に対して常用較正を用いて求める。
【数5】

及び
【数6】

式9を用いて、gpcBR分岐指数を求め、
【数7】

式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]ccは、常用較正による固有粘度であり、Mは、測定された重量平均分子量であり、Mw、ccは、常用較正による重量平均分子量である。式(5)を用いる光散乱(LS)によるMwは、一般に絶対Mwと称され、常用のGPC分子量較正曲線を用いる式(7)によるMw、ccは、しばしばポリマー鎖Mwと称される。下付き文字「cc」を有する統計値はすべて、それらの値のそれぞれの溶出容量、前述の対応する常用較正、及び質量検出器応答から導かれた濃度(C)を用いて求められる。下付き文字のない値は、質量分析器、LALLS、及び粘度計面積に基づく測定値である。KPEの値は、線形基準サンプルがgpcBR測定値0を有するまで、反復して調整される。例えば、この特定の場合において、gpcBRを求めるためのα及びLogKの最終値は、ポリエチレンではそれぞれ0.725及び−3.355、並びにポリスチレンではそれぞれ0.722及び−3.993である。
【0133】
ひとたびK及びα値が求められたら、分岐サンプルを用いて手順を繰り返す。分岐サンプルは、最善「cc」較正値として最終Mark−Houwink定数を用いて解析し、式5〜9を適用する。
【0134】
gpcBRの解釈は単純である。線状ポリマーでは、式9から算出されるgpcBRは、LS及び粘度測定法によって測定される値が常用較正標準に近くなるため、ゼロに近くなる。分岐ポリマーでは、gpcBRは、特に高レベルの長鎖分岐を有する場合、測定されるポリマー分子量が算出されるMw、ccより大きくなり、算出されるIVccが測定されるポリマーIVより大きくなるため、ゼロより大きくなる。実際、gpcBR値は、ポリマー分岐の結果としての分子サイズ収縮作用によるIV変化率を表わす。gpcBR値0.5又は2.0は、同等の重量の線状ポリマー分子に対して、それぞれ50%及び200%レベルでのIVの分子サイズ収縮作用を意味することになる。
【0135】
これらの特定の例では、g’指数及び分岐頻度計算と比較して、gpcBRの使用が有利であるのは、gpcBRの精度が高いためである。gpcBR指数の決定に用いられるすべてのパラメータは、良好な精度で得られ、濃度検出器の高分子量での低い3D−GPC検出器応答によって悪影響を受けない。検出器容量のアラインメントにおける誤差もgpcBR指数決定の精度に影響を及ぼさない。他の特定の例では、Mwモーメントを決定する他の方法が、前述の技法より好ましい可能性がある。
【0136】
核磁気共鳴(13C NMR)
サンプルは、NORELL1001−7 10mmNMR管において、0.025MのCr(AcAc)(トリス(アセチルアセトナト)−クロム(III))を含有する約2.7gのテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物を、0.025gのサンプルに添加することによって調製する。加熱ブロック及びヒートガンを用いて、管及びその内容物を150℃に加熱することによって、サンプルを溶解し、均質にする。それぞれのサンプルを目視で検査して、均質性を確認する。
【0137】
BRUKER DUAL DUL高温CRYOPROBEを備えたBRUKER 400MHz分光計を用いて、データを収集する。データは、サンプル温度120℃で、データファイル当たり320トランジエント、6秒パルス繰返し遅延、90度フリップ角、及び逆ゲートデカップリングを用いて得る。すべての測定は、ロックモードでサンプルスピン無しで行う。データ取得に先立って、サンプルを7分間熱平衡させる。13C NMR化学シフトは、30.0ppmでEEE3連子を内部基準とする。
【0138】
LDPEの種々の分岐型の同定及び定量
図1は、LDPE(以下のサンプルC−3)の13C NMRスペクトルを示し、種々の分岐長に起因する特徴的なピークを表示する。もっとも重要な識別ピークのみを標識する。残りのピークの配置を表2に示す。C53は、炭素1とみなしたメチルを有する5−炭素分岐の第3炭素を指す。
【表2】

【0139】
C5(アミル)分岐の決定
C5(アミル)分岐は、32.7ppmのピークによって決定する。約40から5ppmの全LDPEスペクトルの積分値を1000の値に設定し、32.7ppmのピークを積分することによって、1000全炭素当たりのC5分岐の数を求める。32.7ppmのピーク積分値が、1000炭素当たりのC5分岐数の直接計量となる。図2の例は、1.67 C5分岐/1000Cを含有する。
【0140】
C1(メチル)分岐の決定
C1分岐は、約20、33.3、37.6、及び27.5ppmにピークを生じる。図3は、連鎖移動剤(CTA)としてプロピレンを用いて生成したサンプル384561の13C NMRスペクトルを示し、したがって、顕著なレベルのC1(メチル)分岐が示される。これは、プロピレンがCTA及びコモノマーの両方として作用し、エチレン−プロピレンLLDPEに認められるようにC1分岐を導入するためである。
【0141】
C3(プロピル)分岐の決定
C3分岐は、37.9、37.0、20.3、及び14.7ppm(並びに、LDPEスペクトルで不明瞭となる他の値)にピークを生じる。図4は、ペンテンコモノマーを用いて製造したHEPEの13C NMRスペクトルを示し、したがってC3分岐を含有する。この特定のサンプルは、非常に低いレベルのブテン由来のC2分岐も含有する。
【0142】
C6+分岐の決定
C6及びそれ以上の分岐(C6+)は、LDPEスペクトルで代数的に求める。これは、C4、C5、及びC6+分岐のピークのオーバーラップのためである。C4及びC5は独立して求めることができ、その合計をこれら2つ以上の寄与を含有するピークから減じる。C6+分岐は、LDPEの6+分岐の直接計量によって求めるが、長分岐は「鎖末端」と区別されない。6個以上の炭素のすべての鎖又は分岐の末端由来の第3炭素を表わす32.2ppmのピークをC6+決定に用いる。
【0143】
ポリ(アルコキシド)の抽出
100mLの広口瓶に、2.0gのLDPEグラフト化ポリ(アルコキシド)を0.0001g単位まで秤量した。この固体に50±1gのHPLCグレードテトラヒドロフランを添加し、混合物を48時間振盪した。混合物を、風袋計量した2ozの広口瓶に#41無灰濾紙で濾過した。溶媒を、窒素流下で一晩、蒸発乾固した。溶解していない固体も窒素流下で一晩、乾燥した。テトラヒドロフラン溶液の残留物を秤量し、乾燥した未溶解固体も秤量した。
【0144】
抽出した材料の割合を以下の式によって求めた:((残留質量/(残留質量+未溶解固体質量))100
【0145】
動的機械分光法(DMS)
樹脂を、空気中1500psiの圧力下、350°F(177℃)で5分間、厚さ3mm×1インチ円形プラークに圧縮成形する。その後、サンプルを圧縮機から取り出し、台上に置いて冷却する。
【0146】
溶融レオロジー、一定温度周波数掃引は、窒素パージ下、25mm平行プレートを備えたTA Instrumentsの「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて行う。サンプルをプレートに載せ、190℃で5分間溶融させる。その後、プレートを2mmまで閉じ、サンプルをトリミングし、試験を開始する。この方法はさらに5分間の遅延を組み入れ、温度を平衡させる。実験は、周波数範囲0.1から100rad/秒にわたって190℃で行う。歪み振幅は10%で一定である。振幅及び位相に関して応力応答を分析し、そこから貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、動的粘度η、及びtan(δ)を算出する。
【0147】
サンプル(本発明のポリマー)の調製
Aldrichから入手可能なPEGPG(ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、平均Mn12000、25Cの粘度35000cStを反応器に添加する。100mlの高圧ステンレス鋼バッチ式反応器を閉鎖した後、攪拌装置を1000rpm(毎分回転数)で作動させる。系を真空にし、窒素で加圧することによって、反応器の酸素を除去する。これを3回繰り返す。次いで、反応器を周囲温度において、エチレンで2000バールまで加圧し、その後排気する。これを3回繰り返す。反応器から最後にエチレンを排気すると、圧力はわずか約100バールの圧力まで降下し、ここで反応器の加熱サイクルが開始される。内部温度約225℃が得られたら、反応器を開始圧力までエチレンで加圧する。エチレン/PEGPG混合物を攪拌し、225℃で少なくとも30分間保持する。次いで、エチレンを用いて、n−ヘプタン中、連鎖移動剤として0.2395mmol/mlのプロピオンアルデヒド、0.00599mmol/mlのジ−tert−ブチルペルオキシド、及び開始剤として0.00239mmol/mlのtert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノアートの混合物1.32mlを反応器に掃引する。開始剤の添加に伴う圧力の上昇により、エチレンモノマーがフリーラジカル重合される。重合により温度が上昇する。反応器を継続して5分間混合し、225℃に冷却した後、n−ヘプタン中、0.00599mmol/mlのジ−tert−ブチルペルオキシド及び0.00239mmol/mlのtert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノアートの混合物1.32mlの第2回注入を、エチレンを用いて反応器に掃引する。開始剤の添加に伴う圧力の上昇により、エチレンモノマーがフリーラジカル重合される。2回目の重合により温度が上昇する。第2回と同じ供給条件で、第3回注入を行う。形成されたポリマーを反応器から、1600バールで5分間、エチレンでパージする。この手順で4種のサンプルを製造する。サンプルPEGPG−1と−2、及びサンプルPEGPG−3と−4を合わせ、より大きい2つのサンプルを形成する。工程条件を表3A〜3Dに示す。13C NMRプロファイルを図5に示す。
【表3A】

【表3B】

【表3C】

【表3D】

【表4】

【0148】
メルトインデックス、メルトインデックス比I10/I、及び密度
表5Aは、同等のメルトインデックスの市販LDPEと比較した、実施例の測定されたメルトインデックス(I)、メルトインデックス比(I10/I)、及び密度を示す。実施例は、比較例(I10/I=9.7−9.9及びI=11.7−24.7)と比較して、比較的高いメルトインデックス(I)13.7及び15.2においても、はるかに高いメルトインデックス比(I10/I)(19.1及び22.0)を示す。実施例の密度は高く(0.9349−0.9353g/cc)、これは市販LDPEで典型的に得ることのできる密度より高い。市販のLDPE比較例の密度は、0.9181−0.9226g/ccではるかに低い。
【表5A】

【0149】
表5Bは、実施例及び比較例のメルトインデックス(参考)及び分子量特性を示し、図6は、分子量分布のプロットを示す。所与のメルトインデックス(MI)に関して、比較例と比べて、実施例は、低い重量平均分子量M、低い分子量分布M/M、並びにLCB及びgpcBRによって示唆される低い長鎖分岐レベルを示す。図6はこの狭い分子量分布を視覚的に示す。
【表5B】

【0150】
表5Cは、実施例及び比較例のメルトインデックス及び密度(参考)、並びにDSC特性を示す。より低い密度を有する比較例と比べて、実施例は、同様の融点、低い結晶化度又は融解熱、同様又はより低い結晶点を有する。実施例、比較例、及び市販LDPEの融点と密度、及び融解熱と密度の関係をそれぞれ図7及び8に示す。所与の密度において、本発明のサンプルは、市販LDPE及び比較例より、低い融点及び低い融解熱を有する。
【表5C】

【0151】
密度に対する溶融温度を図7に示す。密度に対する融解熱を図8に示す。
【0152】
短鎖分岐
すべての値は、表6の記載を除いて、1000全炭素当たりの分岐数である。グラフト化サンプルの分岐の値は、グラフト化ポリマー(PDMS)のものを含めて、観察される全炭素に基づいて、及びLDPE炭素のみに基づいて算出される。C3(プロピル)分岐は、いずれのサンプルでも認められない。
【表6】

【0153】
表7は、本発明の実施例及び比較例の動的機械分光法によって測定された周波数及び粘度データを示し、図9は、このデータのプロットを示す。示されるとおり、実施例は、比較例(3.29−6.06)と比べて、高い粘度比(11.8−12.6)を有し、良好な剪断感度(剪断速度の増加につれて粘度低下)及び加工性を示唆している。図9は、実施例が、同様のメルトインデックスの比較例と比べて、より高い低剪断粘度、及びより低い高剪断粘度を有することを示している。
【表7−1】

【表7−2】

【0154】
本発明のポリマーは、比較ポリマーより高い粘度比を示し、これは良好な加工性を示唆している。データを図9にグラフで例示する。
【0155】
本発明を前述の好ましい実施形態の説明を通じてある程度詳細に述べたが、この詳細は主として例示を目的としたものである。当業者は、以下の特許請求の範囲に記載する本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの変更及び修正を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含むポリマーであって、前記ポリマーが、13C核磁気共鳴(NMR)によって求められる、1000炭素原子当たり少なくとも0.15単位のアミル基を有するポリマー。
【請求項2】
ポリ(アルコキシド)の1個又はそれ以上の主鎖炭素原子に結合したエチレンの一部分を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリ(アルコキシド)の主鎖炭素原子に結合した少なくとも1つのエチレン系ポリマー分岐を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーが、13C NMRによって求められる、感知できるメチル分岐を含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが、13C NMRによって求められる、感知できるプロピル分岐を含まない、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
密度少なくとも0.92g/cmを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリ(アルコキシド)の60重量パーセント未満が、溶媒抽出によって抽出可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
下記の数学的関係を満たす、ピーク溶融温度Tm(℃)及び密度(g/cm)を有する:
Tm<771.5(℃・cc/g)×(密度)−604(℃)
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
下記の数学的関係を満たす、融解熱(H)(ジュール/グラム(J/g))及び密度(g/cm)を有する:
<2333(J・cc/g)×(密度)−2009(J/g)
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の前記ポリマーを含む組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の前記組成物から形成された少なくとも1つの成分を含む物品。
【請求項12】
フィルムの形態である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
エチレン及びポリ(アルコキシド)由来の単位を含むポリマーを形成する方法であって、前記方法が、
A.第1反応器又は複数部分反応器の第1部分において、フリーラジカル開始剤の存在下、少なくとも1種のポリ(アルコキシド)をエチレンと接触させるステップ、及び
B.少なくとも1つの他の反応器又は複数部分反応器の後部において、前記フリーラジカル開始剤の存在下、前記ポリ(アルコキシド)を追加のエチレンと反応させて、前記ポリ(アルコキシド)に結合したエチレン系ポリマー分岐を形成するステップを含む方法。
【請求項14】
前記エチレン系ポリマー分岐が、エチレンモノマーをポリ(アルコキシド)と結合して、エチレン−ポリ(アルコキシド)部分を形成し、前記得られた部分を少なくとも追加のエチレンモノマーと重合して、前記エチレン系ポリマー分岐を形成することによって形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エチレン系ポリマー分岐が、前記ポリ(アルコキシド)とは独立して形成され、その後、前記ポリ(アルコキシド)にグラフト化される、請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−504666(P2013−504666A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529000(P2012−529000)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048821
【国際公開番号】WO2011/032174
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】