説明

エッチング部品の製造方法

【課題】長尺帯状の金属薄板にフレーム単位で多面付けされたエッチング部品を効率よく、安全に個々のフレーム単位に分離するエッチング部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】長尺帯状の金属薄板にエッチング部品を多面付けしたフレームあるいは枚葉状シート単位を多面付けし、各フレームあるいは枚葉状シート単位の間には分離するための切断領域を設け、金属薄板の表裏面を別々にエッチングする2段エッチングでエッチング部品を作製する工程と、エッチング部品が形成された前記長尺帯状の金属薄板をフレームあるいは枚葉状シート単位に切断領域で分離する工程とを少なくとも有するエッチング部品の製造方法において、切断領域の両側には貫通孔を線状に配置した切断線を設け、貫通孔は2段目のエッチングで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺帯状の金属薄板にフレーム単位で多面付けしてメッシュ、リードフレーム等のエッチング部品を作製した後、個々のフレーム単位に分離、分割するエッチング部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長尺帯状の金属薄板にメッシュ、リードフレーム等のエッチング部品をフレームもしくは枚葉状シート単位に多面付けして、メッシュ、リードフレーム等のエッチング部品を作製する際、まず、フォトエッチング加工によりメッシュ、リードフレーム等のエッチング部品を作製した後個々のフレームもしくは枚葉状シート単位に切断、分割してエッチング部品を製造する方式がもっぱら採用されている。
【0003】
メッシュ、リードフレーム等のエッチング部品が形成されたフレーム単位をブリッジ方式にて分離、分割するエッチング部品の製造方法について説明する。図2(a)に、メッシュ、リードフレーム等のエッチング部品が形成されたフレーム単位がブリッジを介して多面付されて配置され、エッチング加工されたエッチングシートの一例を示す模式平面図を、図2(b)に、ブリッジを鋏あるいは断裁機等で機械的に切断してフレーム単位に分離した状態を示す模式平面図をそれぞれ示す。まず、長尺帯状の金属薄板51に公知のフォトリソ法を用いたエッチング処理を行う。これにより、メッシュ、リードフレーム等のエッチング部品61が面付けして形成されたフレーム単位(50a、50b、50c、50d)となったエッチングシート50が得られる。各フレーム単位間にはブリッジ52を形成し、ブリッジ52にてフレーム単位を連結している(図2(a)参照)。次に、エッチングシート50のブリッジ52を鋏あるいは断裁機等で機械的に切断して、フレーム単位(50a、50b、50c、50d)のエッチング部品61を得る(図2(b)参照)。
【0004】
しかしながら、金属薄板の厚みが50μm程度以下になってくると、鋏による断裁時にブリッジ以外の部位にダメージを与え易くなる。また金属薄板の厚みが薄くなることでエッチングに要する時間が短くなる為、長尺帯状の金属薄板の送り速度を速くすることができる。その場合、鋏での断裁が困難になる場合が出てくる。
【0005】
また、金属薄板に微細な貫通孔を形成する場合には、例えば特許文献2で開示されているような金属薄板の表裏からエッチングを行う方法が採用され、2段階にわたってエッチングが施される。まず一面を途中までエッチングするハーフエッチングを行い(図3(a)、(b)参照)、その後、ワニスを用いてハーフエッチングした部分をニス止めして第一段階のエッチングを終了する(図3(c)参照)。その後、第二段階のエッチングとしてもう一面のエッチングを行い貫通孔を得る(図3(d)、(e)参照)。この第一段階のエッチング時に、フレーム単位に分離、分割するための弱め線をハーフエッチングにより形成するが、その後の巻き取り工程やワニスの塗布工程で、長尺帯状の金属薄板がテンションに耐え切れずに、ハーフエッチングした弱め線の部位で破断してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−49284号公報
【特許文献2】特開平6−260085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み考案されたもので、長尺帯状の金属薄板にフレーム単位で多面付けされたエッチング部品を効率よく、安全に個々のフレーム単位に分離するエッチング部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための手段として、請求項1にかかる発明は、長尺帯状の金属薄板に、エッチング部品を多面付けしたフレームあるいは枚葉状シート単位を多面付けし、前記各フレームあるいは枚葉状シート単位の間には分離するための切断領域を設け、金属薄板の表裏面を別々にエッチングする2段エッチングでエッチング部品を作製する工程と、エッチング部品が形成された前記長尺帯状の金属薄板をフレームあるいは枚葉状シート単位に切断領域で分離する工程とを少なくとも有するエッチング部品の製造方法において、切断領域の両側には貫通孔を線状に配置した切断線を設け、貫通孔は2段目のエッチングで形成することを特徴とするエッチング部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエッチング部品の製造方法を用いることにより、フレームあるいは枚葉状シート単位のエッチング部品の人手による切断、分離作業を安全に効率よく行うことができ、且つエッチング部品の変形不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、メッシュ、リードフレーム等のエッチング部品が形成されたフレームあるいは枚葉状シート単位が帯状の切断領域を介して多面付されてエッチング加工されたエッチングシートの一実施例を示す模式平面図である。(b)は、切断領域のタブを用いてフレームあるいは枚葉状シート単位に分離した状態を示す模式平面図である。
【図2】(a)は、メッシュ、リードフレーム等のエッチング部品が形成されたフレーム単位がブリッジを介して多面付されてエッチング加工されたエッチングシートの一実施例を示す模式平面図である。(b)は、ブリッジを鋏あるいは断裁機等で機械的に切断してフレームあるいは枚葉状シート単位に分離した状態を示す模式平面図である。
【図3】2段エッチングの説明図。(a)は、金属薄板の表裏に、シャドウマスクの小孔と大孔を形成するためのレジストパターンを形成した段階を示す断面図。(b)は、小孔部をエッチングした段階を示す断面図。(1段目のエッチング)(c)は、小孔部にワニスを埋めてニス止めした段階を示す断面図。(d)大孔部をエッチングした段階を示す断面図。(e)は、レジストを剥離した段階を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明では、長尺帯状の金属薄板をフォトリソ法を用いたエッチング加工をし、長尺帯状の金属薄板にフレームあるいは枚葉状シート単位で多面付けされたエッチング部品の面付け間に、帯状の切断領域を、貫通孔を一定間隔で形成することにより実現している。前記切断領域の両側は切断線としている。また、前記切断領域の両端部はタブを形成している。分離時、前記切断領域の前記タブを人手もしくは機械的に引っ張って前記切断線より切断して切断領域を金属薄板より除去し、フレームあるいは枚葉状シート単位に分離する。ここで、タブの引っ張り方向は、例えば、板の上方に向けるものであり、このとき、切断領域は弓状に曲がりながら板より切断されてゆく。かかる方法により、多面付けされたフレームあるいは枚葉状シート単位のエッチング部品はフレームあるいは枚葉状シート単位に安全に、効率よく分離される。
【0013】
図1(a)に、長尺帯状の金属薄板にメッシュ、リードフレーム等のエッチング部品をフレームあるいは枚葉状シート単位に多面付けしてエッチング加工したエッチングシートの一実施例を示す模式平面図を、図1(b)に、切断領域のタブを用いてフレームあるいは枚葉状シート単位に分離した状態を示す模式平面図を、それぞれ示す。
具体的には、まず、フォトエッチング法にて長尺帯状の金属薄板11をエッチング加工して、メッシュ、リードフレーム等のエッチング部品21が多面付けされたフレームあるいは枚葉状シート単位(10a、10b、10c、10d)を、金属薄板の長手方向に多面付けして形成する。ここで、フレームあるいは枚葉状シート単位間に帯状の切断領域12を形成する。帯状の切断領域12の両側には金属薄板の幅方向に延在させた切断線14a及び14bを形成し、且つ、帯状の切断領域12の両端にタブ12aが、タブ12aの両側にV字型の切り込み13がそれぞれ形成されたエッチングシート10を作製する(図1(a)参照)。ここで、切断線14a及び14bとしては、切断を容易とするため、易破断性の線とすることが望ましい。易破断線としては貫通領域が所定の間隔で形成された点線ラインを用いるのが望ましい。従来、易破断線としてハーフエッチングされた直線ラインもしくはハーフエッチング領域と貫通領域が所定の間隔で形成された点線ラインが用いられていた。しかし、ハーフエッチング領域のエッチングの不均一性から、エッチングされずに残った金属材料部の厚みが他のハーフエッチング領域の厚みより著しく薄い部分が形成され、その部位から長尺帯状の金属薄板が破断する事故に至ることがあった。その対策として、ハーフエッチング領域のエッチングの均一性を向上させることを検討したが、生産に使用しているエッチング装置はすでに様々なエッチングの均一性の改善がなされているため、著しい改善は期待できないことが分かった。さらに検討した結果、ハーフエッチング領域をなくし、貫通領域とエッチングされていない領域が交互に並んだ構成の易破断線を形成することにより、長尺帯状の金属薄板が破断する事故をなくすことができることを見出した。以下に2段エッチングの説明と共に更に詳しく説明する。
【0014】
図3は易破断線を構成するエッチング部位のうち、特に、2段エッチングで貫通領域を形成する方法について説明している。すなわち、まず、カゼインやポリビニルアルコールと重クロム酸アンモニウムなどからなる感光性樹脂液を塗布乾燥して、金属薄板1の両面に耐食性レジスト層を形成した後に、所定の露光用パターンを有する露光用マスクを介しての耐食性レジスト層へのパターン露光、耐食性レジスト層の現像、現像後に残存した耐食性レジスト層への硬膜処理などを行う。これにより、金属薄板1の所定の部位を露出させた、小孔部の耐食レジストパターン2、及び、大孔部の耐食性レジストパターン3を有する金属薄板1が得られる(図3(a)参照)。
【0015】
次いで、大孔部の耐食性レジストパターン3側に耐食性フィルム4を貼り付けた後に、小孔部の耐食レジストパターン2側から金属薄板1に1段目のエッチングを行い、金属薄板1に小孔部5を形成する。(図3(b)参照)このとき、小孔部5が金属薄、板を貫通しないよう、1段目のエッチングは適宜中途で止めることが肝要となる。
【0016】
次いで、1段目のエッチングで形成された小孔部5に耐食性ワニス6を充填形成する(図3(c)参照)。なお、図3(c)では、小孔部の耐食レジストパターン2を剥膜した後に耐食性ワニスを金属薄板1に塗り、小孔部5に耐食性ワニス6を充填しているが、小孔部の耐食レジストパターン2を剥膜することなく耐食性ワニスを金属薄板1に塗り、小孔部5に耐食性ワニス6を充填しても構わない。また耐食性ワニス6の形成面は、小孔側であっても大孔側であっても差し支えないが、多くの場合、小孔側に形成する。
【0017】
続いて、大孔側からのみ金属薄板1をエッチングする2段目のエッチングを行い、耐食性ワニスを露出する大孔部7を大孔側に形成する(図3(d)参照)。
【0018】
最後に、耐食性ワニス6および大孔部の耐食性レジストパターン3を剥膜し、貫通孔8
を有する金属薄板1とする(図3(e)参照)。 図3(d)では下側にある大孔がエッチングにより形成され、上側にある小孔とつながって貫通孔が形成される。本発明では、この大孔をエッチングする時に、同時に、易破断線を構成する貫通領域とエッチングされていない領域が交互に線上に並んだ構成の易破断線を形成する。この易破断線は、エッチングされて形成された貫通部とエッチングされていない領域が所定の間隔で形成される。易破断線を構成する領域にハーフエッチングされた領域が無いため、ハーフエッチングの深さのバラツキの要素を排除することができた。このため、易破断線がハーフエッチングで形成されたラインから構成されていたときに発生していた破断事故を無くすことが可能となった。破断事故をなくし、且つ、易破断性を維持できるための条件を、貫通領域とエッチングされていない領域の寸法の比率を、使用する金属薄板の板厚ごとに設定した。具体的には、金属薄板の板厚ごとに、矩形状の貫通領域の長さと幅とピッチを変えたサンプルを作製し、それらを用いてテンションに対する耐久性(サンプルに加えるテンションとサンプルの伸び)のデータを採り、サンプルが破断しない条件を実験的に明らかにすることで、破断事故を防止することができた。
【符号の説明】
【0019】
1……金属薄板
2……小孔部の耐食性レジストパターン
3……大孔部の耐食性レジストパターン
4……耐食性フィルム
5……小孔部
6……耐食性ワニス
7……大孔部
8……貫通孔
10、50……エッチングシート
10a、10b、10c、10d……フレームあるいは枚葉状シート
11、51……金属薄材
12……切断領域
12a……タブ
13……V字状の切り込み
14a、14b……切断線
21、61……エッチング部品
50a、50b、50c、50d……フレーム
52……ブリッジ
52a……ブリッジ残り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の金属薄板に、エッチング部品を多面付けしたフレームあるいは枚葉状シート単位を多面付けし、前記各フレームあるいは枚葉状シート単位の間には分離するための切断領域を設け、金属薄板の表裏面を別々にエッチングする2段エッチングでエッチング部品を作製する工程と、エッチング部品が形成された前記長尺帯状の金属薄板をフレームあるいは枚葉状シート単位に切断領域で分離する工程とを少なくとも有するエッチング部品の製造方法において、切断領域の両側には貫通孔を線状に配置した切断線を設け、貫通孔は2段目のエッチングで形成することを特徴とするエッチング部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−21246(P2011−21246A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167663(P2009−167663)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】